*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「6-319」で検索した結果

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  • 6-319
    バッドエンドフラグ成立の瞬間 「好きだったのになぁ」 そいつは起きて来るなり朝飯を食べていた俺の前に座ってそう呟いた。 好きって…このたらこがか? 「言っとくけどこれはやらないからな!」 「…ケチ」 たらこの乗った皿をそいつから遠ざけるように確保して威嚇する。 捨てられた仔犬みたいな目で見上げて来たが知ったこっちゃない。 「どうしてもダメ?」 いつもその手に引っ掛かって俺の好物ばかり巻き上げられているんだ。 今日こそは負けるものか。 「駄目!」 「…」 そんな沈黙されたって。 「……」 そんな潤んだ瞳を向けられたって。 「……だめ?」 「…一口、な…」 雨ニモマケズ風ニモマケズ。 でも宮沢賢治さん、俺こいつにだけは勝てる気がしません。 じゃあ出かけて来るけど…何か買って来るか?」 玄関で靴を履きながら、珍しく見送りに来たヤツに尋ね...
  • 6-319-1
    バッドエンドフラグ成立の瞬間 「でも俺、お前の絵は本気ですごいと思うんだよ!なんつーか…本物って感じ。」 俺の熱意に一瞬たじろいで、そのあと、初めてお前は笑顔を見せてくれた。 …あの時だっていうのか、お前の中で何かが蠢きだしたのが。 体が痺れて、触れられても感じ取れない。優しく掴まれたのか、乱暴に捻り上げられたのか。深皿にぽたりぽたりと溜まっていく赤い液体を見ても、それが自分の体から出ている感覚がない。 「だって…もう君しか残ってないんだよ。僕の大切なもの。」 お前の声が、やけにでっかく、頭に響いて聞こえる。 俺に褒められて、本当に嬉しかった。あの絵は自分の血を使って描いた初めての大事な絵だったから。でも、それからもさらに「本物」の絵を描き続けるためには、材料を追求し続けなければならなかった。… 「『痛み』を伴う材料じゃないと、本物にはならないんだ、どうしても。...
  • 16-319
    モラリスト不良×ドM優等生 「嗚呼、またこんなところにいたんですね」 また来た。俺が隠れてタバコを吸ったり、授業をさぼっていると、どこで嗅ぎ付けるのかいつもこいつがやってくる。 そして、いつも決まったことを言うのだ。 今回のように俺が体育館裏でタバコを吸っているとだ……。 「あ、タバコ……貴方のタバコ……羨ましい、実に羨ましいですよ、このタバコ! 貴方の口内に咥えられ、ジリジリとその身を焦がし、貴方の一部となっていく! なんて素晴らしいのでしょう……貸しなさい!」 こいつはものすごい変態だった。しかも俺にだけ。 無理やり俺が銜えていたタバコを奪い取ると、何故かこいつはフィルターではなく、煙の昇っている灰の部分を自分の口に銜えようとしている。 本当にこいつはバカだ。 放っておくと実際に火がついていようが構わず銜えてしまいかねないので、俺としては止めるしかない。 ...
  • 26-319
    踏み台 「おーい、写真取るぞ。早く来いよ。」 「ちょっと待って、すぐ行くから。」 「またそれか。好きだな、踏み台。」 「いいだろ、別に。」 あんたとの年の差はどうやったって埋まらない。 身長差も今のところ埋まりそうにない。 だからせめて、写真の中でぐらいは。 あんたと同じ位置に立つ夢を叶えたいんだ。 小さな踏み台を使えば届く数センチ先の世界が、今の俺にとってはとてつもなく遠い。 並んで歩く
  • 7-319
    連弾  僕はきどって燕尾服の襟をひき、フルコンサートのスタインウェイに向かい合った。 拍手が鳴りやみ、椅子を直すと、僕はすべてを予感させる最初のDを弾く。 雷のようなD。続いて異国的なアルペジオ。ああ、ハンガリア狂詩曲第二番! その神秘的な旋律にはやくも酔いながら、僕は独り、うっとりと指を動かしていた。  ──彼が現れるまでは。  彼はそのつぶらな瞳に満面の好奇心を湛えながら、実に嬉しそうに現れた。 音楽のことなんか何も分かっちゃいないのに、しかし彼は音楽が好きなのだ。 実に屈託のない無邪気な笑顔で、ムラヴィンスキーにでもなったつもりで、 彼は小憎らしく僕の後ろで指揮をとる。ああ、鬱陶しい。 僕が一瞥すると、彼も睨みかえした。 すっと横に移動し、驚く隙も与えずにひとのスケールを横取りして弾いてみせる。 半ば感嘆し、半ばイライラしながらも曲を続けていると...
  • 4-319
    「まさか私の為にあんなことしたって言うんですか!?」 「まさか私の為にあんなことしたって言うんですか!?」 今にも俺の襟首を掴みそうな勢いで、あいつがまくし立ててくる。 「この、バカッ!!」 「バカ…っておまえなぁ、俺が誰のためにあそこまで」 言い終わらないうちにあいつがまた猛烈な勢いで話し出した。 「だからバカだって言うんですよ!  大体何のために私が苦労してあそこまで話を進めたと思ってるんです!?  あなたが少しでも仕事がしやすくなるようにって、  嫌な相手にも頭下げて好きじゃない酒まで飲んで接待してまで必死に取り付けた話だったのに。  ただ、あんたに喜んでほしくて…。」 知ってるさ、お前が寝る間も惜しんで苦労してやってたことぐらい。 飲めない酒を無理やり飲まされて、次の日まで調子が悪くてこっそりトイレで吐いてたことも。 「それなのに、あんたって人は...
  • 3-319
    セクスィーなオカマキャラ先輩×可愛格好いい泣き虫後輩 「じゃあ、してみる~?」 媚びたような挑発するような、ふざけた声で部長が言った。 言われた一年生は、ちょっとわざとらしいくらいに目をまん丸にして、部長を見つめる。だいたい五秒。 「する、って何をですか?」 「何がいいかしら?」 言って部長は小首を傾げた。サラッと部長の半端に長い、黒髪が流れた。 部長はものすごく機嫌よく、にこにこしている。たれ目が細くなって、弧を描いてる唇は笑ってるせいで余計薄くなって、…なんでなのに可愛くみえるんだか、僕には分からない。 「ねえシーちゃん?」 いきなり部長は僕の方を向いた。目が全然、笑ってない。 なんだ、さっきまでにこにこしてたのに。 「シーちゃん言ったんだってね~?あたしと、ビーちゃんがデキてんじゃないかって ねえ」 ねえ、はビー村に対してである。『ねえ』、だけ、もの...
  • 1-319
    キスだけで受けをイかせてみて 「これで三度目ですか」 小さなテーブルを挟み、ほとんど埋められた調書を前に警察官の男は運転手の男に言う。 「はい。以前もお会いしましたね」 「ええ。前二回の聴取も自分が担当でした」 小さなテーブルに置かれた運転手の制帽の脇にある紙コップを口元に運び、運転手の男は冷めかけた中身を軽く啜る。 「全く、何を好き好んで電車とキスでもしたいんだか」 制帽の傍らに紙コップが注意深く置かれ、その右手が上までボタンでとめられた制服の襟元を投遣りな風に緩める。 「因果な商売ですね」 「まあそれは警察の方も。ああいったものを扱わなければならないお仕事なのですから」 「お互い様って奴ですか」 小さな部屋に二人の短い溜息の音がする。 「何ですかね、全国の電車の運転手一人が一生仕事をしていてこういうのに出くわすのは、平均していったい...
  • 5-319
    せめて今だけは抱き締めて  いつだって、精一杯を尽くしてきたつもりだった。  届かないのは、力不足だと分かっている。 「……泣くなよ」  じゃりっと音を立てて、彼の履き古したスニーカーが一歩を踏み出す。回される手。いつ もなら振り払うそれを、今は素直に受け入れてしまう。  広い胸。煙草の匂いが染みついたコートの中に俺を招き入れて。  泣くなよ、と何度も。 「泣いてなんか」  確かに泣きたい気分だった。あこがれていた場所。遠すぎた場所。  届かなかった夢。けれどそれは。 「んじゃ、泣けよ」  ぽんぽんと、大きな手が頭を軽く撫でていく。 「何でかな。あんたはいつも、タイミング、良すぎる……」  震えた声が、すすり泣きに変わるのはすぐ。泣きたくなんかないのに。優しい言葉なんて 掛けるからいけない……。  そんな風にいつも、彼は上手い具合に俺をどん底から掬い...
  • 2-319
    雨の中  雨音にまぎれるようにして、あの人を乗せたバスが走り去ってゆく。  ぼたぼたと傘にあたって流れ落ちる音のほかに音はなくて、隣に突っ立ったままあいつも 俺も何も言わずに、夜の中に遠ざかるバスの赤いランプを眺めていた。 「……あは、はー」  終わったなこれで、やっと。へんなことに付き合わせてごめんな。  そう言おうとしてわざとらしい笑い声を口にだしたとたんに、唇が震えた。  目の奥がたちまち熱くなってきた。泣くつもりはなかったのに。 「よっしゃぁ帰ろ。こんな日は雨に濡れて帰るのが一番だ」  明るい声を絞り出したら裏返った。気付かれてないといい。  傘をたたむと、大粒の雨がつむじにあたってひんやりと頭が濡れてゆく。  雨だと思うには、目から流れてくるものはあまりにも熱かった。  顔をみられないように、わざと明るい足取りで歩いた。 ...
  • 9-319
    クリスマス一週間前 思えば、思春期を経たあたりから、毎年12月はメールを待っていた気がする。 『今年もお前と過ごすことになりそう…』という文面と、泣き顔の絵文字のメール。 それは中学高校と一緒だったアイツからのメールで、大学が別になっても、 社会人でお互いいい年になっても、一年もかかさず続いている。 彼女ができないアイツと、アイツ以外特に友達がいない俺。 アイツは記憶を無くすまで、俺は昼間まで酔い潰れてしまうまで、酒を呑んで 騒ぐのが恒例のイベントだ。 しかし、今年はそのメールに答える気はなかった。 『残念ながら、今年は一緒に過ごせない』 何度も文面を読み直して、意味がきちんと伝わるかを考えて、彼に送った。 すぐにメールが返ってきた。 『マジで?! 誰かと過ごすのか!』 相変わらず打つのが早い。 予想していた答えに、すぐに返事を打つ。 『そうだ』 そ...
  • 8-319
    ツンギレと素直クール 唐突に差し出されたそれを反射的に受け取って、しげしげと眺めてみる。 薄いその冊子は学生である俺にはとても見慣れたもので、つまりノートという奴だ。 「これは?」 「・・っだよ、お前が三日も休むから取っといてやったんだろうがっ・・・」 ふん、と顔を逸らして、怒った顔を見せてお前は言う。 「大体なんだ、急に休んで、俺に断りもなく。びっくりして電話しかけたろーが!!」 怒られてるようだが、理由がよく解らない。でも。 「ありがとう」 「・・・え」 「ありがとう。助かる」 聞こえなかったのか。もう一度言うと、顔を真っ赤にしたお前は、 「うるせっ病み上がりは座ってろ!」 そういって、何故かいつも怒るのだ。 雨天順延
  • 19-319
    親友を好きなAとAを好きな親友の彼女 俺達三人は良く似ている。 我侭で自己中で思った事はすぐ口にする。 モラルや常識より自分の気持ちを優先する、傍からみたらどうしようも無い連中だろう。 「だからユウヤが消えればいいんだろ?俺とミサキは恋人同士なんだから」 いつもの居酒屋、6杯目のビールを飲み干したシュウヘイが据わった目で俺を睨む。 俺が好きなのはシュウヘイ、シュウヘイが好きなのはミサキ、 シュウヘイの彼女であるミサキが好きなのは俺。 「だからさ、シュウヘイも一回ガッツリ男と寝てみたら気持ち変わるって」 「それならユウヤだって女と寝てみたら変わるかもよ?」 「お前は黙ってろようるせーな俺はシュウヘイと話してるの」 「いやいやいや浮気は駄目だろ俺達付き合ってるんだから」 「じゃあ私シュウヘイと別れる」 「そうだよ別れなよ。そし...
  • 18-319
    新ジャンル ヘタレヤンデレ受け 顎痛い!腰痛い!攻めの馬鹿少しは手加減しろようわああん! …ごめんなさいごめんなさい2回戦は無理無理っていうか絶対無理! いやー!おかーさーん!!! って、冗談でも止めてくれ…お前の目本気すぎて分からねぇよ!! ん、ああ、その赤い糸、まぁ糸っていうより紐?もしろ縄? それ昨日買ってきたんだった。 これ何に使うかって? ほら、俺が前にさ、海行きたいって言ったじゃん。 そん時に使おうかなって…何にって? これをさ、俺とお前の手と足にぐるぐる巻いてガッチリ縛るの。 あ、手はもちろん繋いでてな。 で、一緒にキスしながら海に飛び込む。 にゅうすいじさつ、二人は死んでも離れない。 きっと呼吸できないから苦しんで苦しんで死ぬと思うんだけどさ。 一面真っ青で水泡が俺たちを包んで、お前の黒い髪の毛がゆらゆら揺れるんだ。 どんどん沈んで、...
  • 17-319
    兄貴に彼女ができました 兄貴に彼女ができた。 さすがに血は争えなかった。実に俺好みの女でくやしかった。 あの奥手が一体どうやって口説いたんだろうと不思議に思っていたある日、 メイド服でチラシを配っている彼女に出会った。 なんだ、そういう店で知り合ったのかと兄貴を多少軽蔑したが、 興味があったので、店に行きたいと言ったら喜んで案内してくれた。 そこには「女装男子バー」と書いてあった。 俺は即座にそいつの性別を確認し、自分の身元を暴露した。 ********* 「水越くんは、女装に慣れて外に出た時に、酔っ払いに絡まれたのを助けてくれて…。 私が女だって思ってるから…」 「そりゃ疑わないよ。声も高いし完璧だもん。でもいつまでも通用しないでしょ。 エッチしたくない男なんていないんだからさ」 「そんなことない! 水越くんは私が嫌だって言ったら何もしないもの」...
  • 21-319
    他の人には優しさを振り撒くけど、あの人だけは嫌がる顔が見たい 「は?どういうこと?要するに特定の個人に嫌がらせしたいわけ?」 「いや、そーじゃなくてだな…なんつーかこう…あるだろ?そういう心理」 「ないよ」 「あるって!あいつを泣かせていいのは俺だけだ!的な」 「なにその歪んだ願望」 「それにさ、相手も他の人には優しいのに何で自分だけ?って引っかかると思わねえ?」 「そうだね。僕だったら、ああ嫌われてるんだなと納得して君から距離を置く」 「いやいやいや!一人で納得すんなよ。そこで諦めんなよ」 「自分から嫌がることしておいて、相手にそういう要求するのはどうかと思う」 「わっかんねーかなー……誰にだってちょっとくらいあるだろ、そういう願望。  別の扱いしたいっつーか……そいつにも、俺は周りと違うと思われたいっつーか」 「同じ特別扱いなら、その人にだけ優しくして他の...
  • 22-319
    無気力系年下×おっとり系年上 おかえり、夕飯つくっといたよ。荻原さんが毎度の間延びした喋り方でそう言って、流しの前に戻った。 「俺もうやめます」 「学校?」 床に鞄を放り投げて椅子に座った。学校に通い始めた頃は目標があった、といえば嘘になる。 今はあの場所に行って、将来を語り合う友人たちの話を耳にするのも腹立たしく、 帰りの電車で広告を見ながら己の独創性のなさを思い知らされるのも苦痛だった。 「やめたらどうするの?」 荻原さんはこのアパートの二階に住んでいる。彼が昼間のバイトから帰ってきて時間に余裕のある日は、合鍵で部屋に入り、 簡単な食事を作っておいてくれる。「コンビニのばっかり食べてたらよくない」と荻原さんが眉をひそめながら提案してくれたことだった。 「わかんないよ」 いらいらして言い方が乱暴になった。頭の片隅で、荻原さんに悪いと思ったのに、その思いは口...
  • 25-319
    しまらない告白 噛んだ 盛大に噛んだ どうしてこうなの俺!馬鹿なのアホなの死ぬの!? ここはだなぁ、ビシッとかっこよく決めて「キャー英明くんカッコイイー」ってなる場面でしょ!? さんっざんイメトレして気合入れて、死ぬ気での告白で噛むとか… しかも我に返ってとっさに取った行動が逃走って…いかんだめだ俺の精神は痛恨の一撃を喰らってる ダメージ与えた馬鹿も俺なんだけどね! あー…もうどーしよー… これから俺が取る行動は… ①かっこよく再登場して素敵に華麗に告白する ②何事もなかったかの様に振舞い友情のまま現状維持 ③ゴッメーン☆さっきのは罰ゲームだったんだテヘペロ とお茶目に振舞いカワイ子ぶる …………どれも無理無理無理無理無理ぃぃぃぃぃ!!!!!!! まず①! 素敵に華麗にってどうやって!? んなもんできたらはなからやってるっつーの! で、②!...
  • 10-319
    兄(高2)×弟(中1)で無理やり→→→3年後下克上 若気の至りという言葉がある。自分の悪行は全てそれに内包してほしいな、と希望的観測をふと過去を思い出したときに考えることがある。 3年前の自分の誕生日に友人達に祝ってもらい、未成年にも関わらず飲酒をした。 酒を飲んで酔っぱらったあげく『今日は両親が旅行でいなくて弟が一人で寂しがってるから帰るぜ!』と普段なら家族思いの一面なんか決して見せたくないから言わない台詞をぶちかまし、ぎりぎり日付が変わる直前に帰ってきた自分を 弟は待ってましたとばかりに玄関に出迎えてくれた。 居間に並べられたケーキとケン○ッキー。スポンサーの両親がいないのだからケーキがカットケーキであることも、フライドチキン(4ピース)が晩ご飯であることも当然だ。俺はただただ中学生の弟が少ないお小遣いで買ってくれたのだ、という心遣いが嬉しくてたまらなかった。 しかし...
  • 23-319
    世間知らずの天然美人×面倒見のいいガテン系  お高いピアノでも弾いてそうな指が俺の頭に伸ばされる。 「アキラさん」  小奇麗な顔に似合いの澄んだ声が――今日は少し掠れて、俺の名前を呼ぶ。 「こっち、向いて」  俺は顔を俯かせたまま横に首を振った。細い指が俺の髪を優しく梳く。  掌に覆われた左耳が熱い。  床に転がったDVDのパッケージに目を走らせて、話題を逸らせないかと思考を回転させようとするけれども 混乱した頭は考えを纏めてはくれなかった。 「こういう時は相手の目を見ろ、って、アキラさんが教えてくれた」 「……そりゃ女相手の話だろ。俺は男だ」  口説き方を知らないと言われた時、こんだけ綺麗な顔してりゃ目ェ見るだけで一発だとは確かに言った。  その時は女に不自由しないとは嫌味な奴だとムカついたりしたもんだったが、抱き方も知らねェとかほざくから、 俺はいろん...
  • 28-319
    明日からずっと一緒 『 「明日からずっと一緒」 あらすじ 主人公の大学生、笹山はじめはある時から奇妙な夢を見るようになる。 その夢に出て来る少年は名前も顔も思い出せないが、どこか懐かしい感じがした。 そして偶然にもその少年―悠宇と出会うはじめだが、その頃から彼の周りに謎の現象が起こり始める。 混乱するはじめの傍に寄り添いながらも徐々に本性を現し始めた悠宇。 果たして彼の目的とは… 登場人物 笹山はじめ 優柔不断な大学生。押しが弱く、押し掛けてきた悠宇に流され同居をすることに。 夢に出て来た少年が本当に悠宇なのか未だ分からずにいる。 周囲で不可解な事件が相次ぎ、犯人が悠宇ではないかと疑いを持つ。  「君が本当にあの子なの?」「俺は君のことをどう思っているのか分からないんだ」 舟橋悠宇 はじめの前に突然現れた...
  • 14-319
    世界の恋人 「千早…お前、何で」 「風邪ひいたって聞いたから、お見舞いに来てみたよ」 弱冠24歳ながら、世界をまたにかけて活躍する名ピアニスト・神崎千早。 そのコンサート当日。風邪をひいて布団にこもる俺のもと、勝手に鍵を開けて勝手に部屋に上がり込んだ突然の訪問者は、まさにその神崎千早その人だった。 「来てみたって…お前、だって今日コンサートだろ!?開演まであと一時間しか――」 思わず身体を起こしかけ、くらりと視界が揺れる。俺の頭を撫でながら、千早は呆れたように言った。 「熱があるくせに、大声出すからだよ」 「誰のせいだよ…」 あはは、ごめんと悪びれた様子のない口ぶりで千早は笑う。 「でも、本当に心配だったんだよ。ちゃんとあったかくしてるかとか、ちゃんと食べてるかとか。悠也はそういうとこガサツだから」 「悪かったな」 「まったくだよ。おかげで僕はこ...
  • 24-319
    フェラにまつわるエトセトラ エトセトラですねー。 まあ、先ずはごっくん。 無理矢理飲ませるのは、鬼畜攻めは勿論、ピュアなヤンデレにも任せてみましょう。「僕の命たちが君の全身に廻ってるって考えるだけで嬉しい…」受けはこの辺から攻めの異常に気付いてる、けど離れたくない…ヤンデレ×ヤンデルいいよね。 次は、顔射。 エロばか×ツンデレ。 「やべーエロい!一度したかったんだよね!」「ふざけんな!」こんなやり取りは素敵だ。あと、この時の受けは色黒であってほしい。何でかって?分かるだろ。 最後に、受けが無理矢理。小悪魔→←真面目。 「ヤっていいんだよ?ほら、おっきくなった。だから、体だけでいいから…」って泣きそうに迫りなよ。幸せになれよ、すれ違いハッピーエンド万歳。 あと番外編では、バカップルのいちゃつきで読みたいな。ないんだよね、抜きっこはあっても、ふぇ...
  • 15-319
    ハリボテ完璧王子様と人畜無害なふりをした蛇 宮中晩餐会、歓待されるは隣国の王と麗しの姫。 饗応する我が国の王と王妃には、これまた白皙美貌の王子がおわした。 「本当に、殿下は御聡明でいらっしゃるのね。  まつりごとは言うに及ばず、書物にも星の読みにもお詳しい。馬術も剣もお強くって。  かと思えば、はやりの髪型、練り香の名もご存じ、  古詩をそらんじられたときは夢心地でしたわ、またその声のお美しいこと」 姫君はいたく王子をお気に召したようだ。 両国の間を強固なものとするため睦まじからんとするふたりの仲は、 周囲の思惑どおり順調に進んでいるようだった。 「わたくしに、もっと詩をお聞かせ願えませんか? 殿下。  そうだわ、殿下のお部屋のテラスには、夜に香る薔薇がおありだとか、そこで今夜……」 「どうだ、私は上手くやったろう?  次は何だ...
  • 20-319-1
    敵兵をお持ち帰り 燃えるような瞳が男を睨みつけている。 激情に揺れる、その両の目は、見慣れない色をしていた。男の故国で見かけることはほとんどない。異国の目だ。 黒曜石のような、漆黒の瞳を、男は美しいと思った。 美しい目が、憤怒と憎悪に激しく燃え盛っている。 「俺を殺したいか?それとも、死にたいか?」 視線の先の青年が、男の問いに答えることはない。青年の口には猿轡が回されている。手足を拘束された彼は舌を噛み切ろうとした。 言葉の代わりに、情念の灯った眼差しを向けられる。青年の瞳が何よりも雄弁に彼の心情を語っていた。 己が一方的に話し掛けるだけのやりとりに、いい加減飽きた男は、青年の口を塞ぐ轡に手を遣った。 「馬鹿なことはしないな?」 青年は返事のつもりか、ゆっくりと一度瞬きをする。 そのまま戒めを解いてやれば、猿轡の外れた口で、大きく息を吸い込んだ。 「殺せ」 ...
  • 12.5-319
    義兄 ―何故あいつだったのか。 姉貴に聞いたらはにかみながら 「あの人には私がいないと」 と、嬉しそうに答えた。 あいつは乱暴もので、優しさなんて知らない。 女の扱いだって最悪だし、仕事もろくにしない。 そんな奴と結婚したら、姉貴の人生めちゃくちゃだってわかってたのに。 けど、姉貴とあいつは籍を入れた。 二人は幸せそう。 なんだよ、あいつ。 今まで散々遊び呆けて、家庭なんかいらねーって言ってた癖に。 いつまでも馬鹿やってるつもりだったのに。 背伸びして悪ぶってたくせに弱い奴。 奥手で女とはまともに話せなかったのはまだ覚えてる。 そんな奴だったから俺が一生支えてやるって決めてたのに。 白い衣装に包まれた姉と義兄を眺め、俺は呪いの言葉を胸に秘めた。 「おめでとう」 口では祝いの言葉をつむぐ。 ...
  • 15-319-1
    ハリボテ完璧王子様と人畜無害なふりをした蛇 むかしむかしのお話です。 ある国に、王子様がおりました。 王子様はたいへん賢く、心優しい美しい方でした。 ある日、家来を連れて歩いていた王子様は、花の咲き誇る湖の畔で立ち止まりました。 「なんと綺麗な風景だろう!家来たちよ!私を一人にしておくれ!この美しさを心ゆくまで味わいたいのだ!」 利発そうな瞳をキラキラと輝かせて王子様は叫びました。 「かしこまりました、王子様。」 家来たちは思わず微笑んで、王子を残して去りました。 「……疎ましい…。」 どかっ、と王子は湖畔に腰をおろしました。 お尻の下では花がいくつも折れ、ぺちゃんこになってしまいました。 「…どいつもこいつも馬鹿ばかり。もうウンザリだ。」 それは低い低い、ヒキガエルの鳴き声のような声でした。 どんよりと淀んだ沼の面のような目は、なにも映して...
  • 22-319-1
    無気力系年下×おっとり系年上 電話が留守電になっていたけれど、どうせいるだろうなと思ったらやっぱりいた。 洗濯物が畳まれずにまだ山になっている。その横に灰色の塊が落ちていて、そよ風に前髪を揺らしながらべっとりと床に癒着している。 うつ伏せているのでよく分からないが多分まだ寝ているのだろう開きっぱなしの窓を閉める。風を含んでいたカーテンが音もなく戻ってくる。 昨日ぶりに洗濯物をたたみ始める。寝ている頭が洗濯を枕にしているのでちょっとやりづらい。そう思ってふと見ると、真っ黒な目が開いていた。 「プリン」 と口だけが動く。 「プリンくれ」 コンビニの袋がガサガサしていたので分かったのだろう。また袋をガサガサさせてプリンの蓋をむいてやる。 「あーん」 一口分救ったプリンを口元まで持って行って、食べようとした瞬間に手を引っ込める。 自分で口に含んでしまうと露骨に恨めしそう...
  • 6-359
    俺がおまえを好きになるわけがないんだ。 葉桜の影で薄青く染まった項を、斜め後ろから眺めている。  少し先を歩くおまえに声をかけられないのは、隣に彼女がいるからだ。  告白されたどうしよう、と相談されたのは先週の金曜日。  どんな子なのと訊いただけでおまえは頬を染めたから、背中を押されたいだけなのだと気づいて俺は答えた。 「いいんじゃない? 付き合ってみれば?」  俺の答えにおまえは、うろたえたように視線を宙に泳がせる。 「付き合う、って何すりゃいいのかな……」 「そうだな、待ち合わせて学校に来たり帰ったり、一緒に昼飯食ったり?」  素直なおまえが彼女を誘って登下校を始めてから、もうすぐ丸一週間になる。  俺たちがいつも乗っていた同じ電車に、今はおまえは彼女と乗っていて、俺は少しだけ遠慮をして別の車両に乗る。  そしてこんなふうに距離をおいて、おまえと彼女を眺めて...
  • 6-379
    鈍感←ツンデレ 「あ、お前のおかずロールキャベツ。俺好きなんだー、知ってた?」 「知らねーよ。キャベツ安かったから作ってきただけだし」 「へー。おいしそー」 「あ、こらつまむんじゃねーよ。死ね」 「んまいー。料理上手いなぁ~、お前。昨日のの鶏の唐揚げもうまかったし、その前のハンバーグもうまかったし、その前のおいなりさんもうまかったし、その前の大学芋もうまかった」 「お前俺の弁当つまんでばっかじゃねーかよ。死ね」 「だって、俺の好物ばっかり作ってくるんだもんよ。それに、お前細っこいのに重箱で作ってくるし」 「お前が無遠慮につまむからだろーがっ!死ねっ」 「ちぇー。お前の料理好きなのにー」 「……そこまで言うなら、まぁ食ってもいいけど」 「え、ホントに?」 「…ま、持って来すぎたしな。わ、がっつくなよ」 「あー幸せだ~。食べたいと思ったらお前弁当に入れてくるんだ...
  • 6-339
    ロボット×人間 「たまには怒れよ…」 いつも文句ひとつ言わず俺に従うあいつに、無駄だと知りながら言ってみた。 「私はユキト様に従うお世話ロボですから。仕事に邪魔な感情は備え付けられていないのです。」 見た目は人間とどこも変わらないのに、 温かみすら感じるこの肌の下には無数の機械が埋まっている。 この肌に傷がついたとき流れ出るのは真っ赤な血ではなく、機械油だ。 ロボットなのだ、この優しげな風貌の男は。 その証拠に、初めてあった子供の頃からこいつの見た目は1mmたりとも変化していない。 「おまえ、いいのかそれでも。ずっとこのまま俺に仕えるだけの一生でも。」 これも何度も繰り返した質問だ。答えもいつも同じ。 「私はそのために作られたのですから。」 でも、今日はその聞きなれたセリフに続きがあった。 「それに、私はこの生活に満足していますから。 あなた...
  • 6-389
    ブログ×日記帳 「お前、隠しすぎ」 「君は開けっ広げすぎ」 ブログが言い返そうとした時、コメントやトラックバックたちがわらわらと周囲に集まって来た。 「ブログー、今度の記事も面白かったよー」 「俺が思うに、あれはさー」 いちいち律義に返事するブログに、日記帳はぐっと唇を噛み締め、鍵を増やす。 「あー、やっと開放された。なー日記帳」 「……」 「まぁただんまりかよ。言ってるだろ。俺はお前のことをもっと知りたいんだ、って」 「……馬鹿じゃない?」 「え?」 「僕が好きだかなんだか知らないけど、あんな恥ずかしい告白文を記事にするなんて、愚の骨頂だよ」 言いたがり。露出狂。サトラレモドキ。 いつもよりも饒舌な日記帳に、ブログはぽかんと目を丸くする。 「馬鹿。考えなし。鈍感」 「ご、ごめん日記帳。あれが気に入らなかったんならすぐ消すから」 「……だから鈍感だっ...
  • 6-369
    最後のメール 『今日の夕飯どーする?』 いつもどおりに空はくすんでいて、いつもどおり町は無駄に賑やかで、 僕はいつもどおりくたくたで帰り道を行き、いつもと同じようにかれにメールを打つ。 当たり前で、ありふれた一日の終わり。 自分の家に帰る前に、僕は一人暮らしのかれのアパートに寄っていく。 赤貧イモ洗いなやつなので、弁当や、バーガーや、時には酒とつまみを差し入れにして。 それはかれに初めてであった、大学時代からの習慣だ。 大事なひと。大好きなひと。いやなことがあっても、かれに会えば全部吹っ飛ぶ。 かれに会いに行くことが、僕の一日のなかで一番の楽しみだった。 メールの返事を待つことなんてなしに、僕はコンビニで弁当をふたつと缶ビールを五本買った。 僕の分が二本、呑んべえのあいつには三本。アルコールの差し入れは珍しいから、きっと喜ぶだろう。 (今日は何を話...
  • 6-329
    ツンエロ 「……だっ、から、さぁ……」 「なに、さ?」 暗い部屋の空気がどんどん湿っていく。上昇する二酸化炭素濃度の中で、 俺たちがハイになるのは、けれど二酸化炭素のせいじゃない。 「たまには、言ってくれって……」 「『キスしろ』って? 冗談、だろ。キャラじゃないから。……ふっ」 だからって、ものも言わずに押し倒して乗っかるのは反則じゃないか? 「あ、あ、あ……」 お前が甘えてくれないと、俺は。 お前が眠った後じゃないと、抱きしめてやれないだろ。 「あれぇ? 先輩、その首のアトってキスマークじゃね?」 「……へ?」 「やーらしー。なんだよ。浮かない顔する割にはラブラブじゃねッスかー」 「ウソ、だろ?」 「あーヒマ。あいつバイト頑張ってっかなー……オレの印見せびらかしつつ」 ロボット×人間
  • 6-309
    浴衣でグチョグチョ GWにうちの田舎の祭りを見ないか?とあいつから誘われた。 かなりの田舎町だし、余り面白い祭りじゃねーけどなーと言われたが 画一的な団地育ちの俺には、田舎の祭そのものが未知の領域だ。 今の時期だと、田植えの祈願祭で、地元の乙女があぜ道で 豊作祈願を謳うのだろうか、それとも神社で祈願祭だろうか。 夜には屋台が出て、わたあめとかイカヤキを食べながら祭り見物だろうか。 やっぱりここは、浴衣がいるよなあ。 ワクワクして浴衣を着用して見に行った祭りはすごかった。 田んぼの泥ぶつけ祭りだとは思わなかった。 おろしたての浴衣は、泥にそまってしまった。 いや、それよりも。 村の外からのいけにえとやらは、普通女がなるものじゃないか? 浴衣は泥だらけだが、浴衣の下はもっとどろどろにされた。 田舎町は恐ろしいところだった。 浴衣でグ...
  • 6-399
    永遠に置き去り そのトランクの主は、もういない。 二人が亡命を計画していると知ったときに、僕は止めなかった。 むしろ、自分の立場を利用して、何かと便宜をはかってやった。 二枚の偽装旅券、秘密の地下ルート、月の出ない闇夜。 「ありがとう、君がいなければここまでの計画はできなかったな」 「全くだ。ついたら向こうから絵葉書を出すよ、もちろん変名でね!」 しかし僕は、土壇場で二人を裏切り、密告した。 いや、もとより、僕は亡命を手助けする気などなかったのかもしれない。 君が僕以外の男性に目をむけ、その人と男性同士が愛しあえる国へ逃げ、 永遠に僕から去ってしまうことが許せなかった。 闇夜を切り裂くジープのブレーキ、荒々しい軍靴の音、悲鳴と怒声。 そしてこの小さなトランクは、国境を越え、自由の国へ行くかわりに 永遠に置き去りになった。この地...
  • 6-349
    ボロ負け 「いま何回? え、もう8回裏か、今夜もダメだなぁ」 手にしたクリップボードを団扇代わりに振りまわしながら、 先輩は休憩室のドアを足で開けて乱入し、ひょいっとテレビを覗いてきた。 反対の手には、良く冷えて水滴のびっしりついた缶ビールが二本。 少人数でしこしこ残業をしていると、どこからともなくビールを持ってくるのだ、この人は。 画面では、先輩ご贔屓の地元プロ野球チームが9-1で負けている。 「まった今期も最下位が指定席だな。ほら、冷えてるぞ」 僕は唐突に投げられたビールを何とか受け止めた。 給湯設備の流しへ立って、プルトップを開ける。泡が勢いよく溢れ、僕の手を滑った。 先輩を見ると、もうあいている缶を机に置き、椅子に座って壮絶にクリップボードで自分を扇いでいる。 今日はたしかに暑いが、それにしても彼は暑がりだ。熱い彼の性格のせいかもしれな...
  • 26-359
    遊び人に遊んでもらえない あいつは男なら誰彼構わず寝た。 決して特定の相手を作らず自由気ままに遊んでる。 俺はそんなあいつを気になって仕方がなかった。 あいつとは部活が一緒でよく話すがタイプがまるで違った。 明るく誰とでも仲良く話すあいつに対し俺は勉強だけが取り柄のつまらない男だ。 あいつはいつも俺をからかった。 「あんた経験ないだろ」とか笑いながら言われる。 いつもは適当に流すが今日は虫の居所がわるかった。 なんせあいつの首もとには赤いしるしが着いていたから。 「経験はある」俺がそう言うと一瞬躊躇いながら「うそつけ」と笑った。 「試してみるか?」 「は?」 「だから俺と寝てみれば嘘かどうかわかるだろ?」 「…」 「誰でもいいみたいだし、俺でもいいだろ」 「…だ」 「あ?」 「あんたとは死んでもやだ」 「…俺ってそんな嫌われてたのか...
  • 26-399
    機械 罪悪感は吹っ飛んでいた。 欲望を満たして何が悪い。これは恋だ。そう思った。 ヒトの社会にロボットがあるのが当たり前の現代。 ロボットに対して性的関心を抱く若者の急増は、歪んだ社会現象として問題になっている。 僕に言わせれば、本来ロボットというものはヒトに心地よいデザインと役割を与えられているのだから、 好ましく感じて当然なのだ。 通信手段が発達して、コミュニケーションは希薄になる一方だ。 ろくに会えない異性を恋うより、身近な存在を大切に思うことのほうがむしろ自然ではないか。 僕の恋の相手は、ともに働く会社の同僚……だった。 物流会社の倉庫管理業務を、ヒトと組んで行う人間型のロボットだ。 なめらかで人工的な肌と瞳のない目をもつ彼は、汎用型ながら時に冗談も言えるこなれた機体だった。 もう十数年も稼働しているという。古いロボット、というより僕にはベ...
  • 16-379
    自己犠牲 --よだかの星は燃えつづけました。いつまでもいつまでも燃えつづけました。 今でもまだ燃えています-- 「鷹雄、お前家出ろよ」 広い背中に痛々しく残っている痣に軟膏を塗ってやりながら 決まり文句を投げかけると、鷹雄は目尻を僅かに下げるようにして笑った。 「まだ高校通わせてもらってる身だからなぁ」 この返事も幾度も聞いた。何年も前から繰り返している問答なのだ。 住むとこがなければ俺の家に来ればいい、うちの母ちゃんは鷹雄がお気に入りだし、 働くか大学進むまでの間だったらなんてことないだろ。 必死に理論武装しても、鷹雄の一言で俺は黙ることになる。 「母さんが驚くし、隼人が心配だからさ」 母親と幼い弟の幸福を守るためなら、彼は平気で自分の体を投げ出すのだ。 二人を守ってやるためだとしても、お前がこんなに 傷だらけにならなきゃいけない道理なんてあるか...
  • 16-399
    初めての逆転 「そろそろ俺が上に乗ってもいいと思う」 俺の体に跨ってパジャマのボタンをちぎりそうな勢いの奴が提案してきた。 そろそろってなんだ。そろそろって。 「俺もね、ずっと我慢してたんだ。体が小さいってだけで組み敷かれて」 組み敷くなんて人聞きの悪い。あれは立派な合意があっての行為だろ。 お前だって納得して、女役になってたわけだし。 第一、俺がお前に襲われるなんて喜劇以外の何者でもない。 「理解はしたが、納得はしてない。俺だって男だし、ムラムラしたらつっこみたい」 ツッコミは俺で、ボケはお前な気がする。…はい、すいません。冗談です。ごめんなさい。 とりあえず、話し合いがしたいので降りてもらえませんか? 「寝込み襲わないとヤれないから嫌だ」 やめて、襲わないで。そんな物騒なこと考えないで。 あのさ、まず言いたいこ...
  • 26-329
    並んで歩く 浮ついて惚れっぽいお前がまたフラれたと、ヤケ酒に付き合わされるのは何度目どころかもう何年越しの事だろうか。 「今度は絶対うまくいくと思ったのによー」 「そうだな」 「この俺のどこが悪いってーんだ」 「さあな」  したたかに酔って千鳥足で家路につく間も延々と愚痴をこぼすお前に、オレは短く相槌を打ち並んで歩く。  肩を貸すでも支えるでもなく、オレはただ肩を並べて歩くだけだ。 『お前を一番よく知っていて、お前に付き合えるのはオレだけだ』、と言えない臆病なオレはただ隣に並んで歩くだけしかできない。  きっとこの先も、お前に触れる事はないだろう。 ロマンチスト系電波受け
  • 16-339
    アスリートでライバル同士  その日、退部届けを出した。  玄関で靴を履いていると、いつの間にか杉田が俺のすぐ目の前に立っていた。  おい、まだ部活中の時間だろ? 陸上部期待のエースがこんなところで油売ってていいのかよ。 「なあ木下、お前……」  ぜいぜいと息を荒げているのは、きっと向こうのグラウンドから一直線に駆けてきたからなんだろう。  いつも後ろから見るしかなかった、流れるような綺麗なフォームで俺の所まで真っ直ぐに。 「ん?もう聞いたのか?」 「聞いたのか、じゃねーよ! 何で部活辞めちまうんだよ! もうすぐ県大会あるんだぞ! 俺とお前どっちが選手に選ばれるかって競い合ってた仲じゃねーか! なのに何で!」  真っ赤な顔で噛みつくように俺に向かって怒鳴る姿に、ああコイツ理由聞いてないんだなと気付くのは容易だった。 「……脚」 「え?」 「脚、怪我したん...
  • 16-389
    酌み交わす 「久しぶり」 とうとう来たか。できれば最後までお前とは話したくなかったよ。 内心の思いを隠して「よー」と応える。 部活の同窓会で、仲良かったメンツが14人も揃っている中なんだから、何食わぬ顔でスルーもできただろうに。 高校卒業以来6年ぶりに見る中谷は、仕事で鍛えた男の顔になっていた。 ……いやいや、単に老けただけだろう。こいつもおっさんになったもんだ、と思い直す。 「ビール?」 「いや、こっち」 あまり減ってない目の前の徳利を指し示すと、 「元気だった?」 慣れた仕草で熱燗をつがれる。 「まあね」 俺も、社会人の義務として、酌を返す。 嫌々なのを気取られないように、黙って酒をなめる。 まったく、こいつに酌をする日が来るなんて。 健全な卓球部員だった俺達は、飲酒とは無縁の真っ当な高校生だったから。 何より、もう二度と口をきくことはないと思...
  • 16-359
    いたずら 眠りこける友人の、耳の後ろに花を挿す。 机に伏せる見慣れた横顔、薄く落ちる睫の影、 日に当たる黒髪に鮮やかに映えるくれないの色。 いたずらをされたのはどちらだろうか、と思いつつ、 友人と思えなくなったそいつを起こす為に手を伸ばした。 いたずら
  • 16-329
    いい夢見ろよ 何かが布団の中に滑り込んできた気配に目が覚める。 玲人だ。 「どうした?」 尋ねる俺の体を、小さい手でぎゅっと抱きしめた。 両親が死んでずっと親代わりだった兄貴が、嫁さんと一緒に事故で死んで半年。 遺された小学3年生の玲人は他に引き取る人もなく、俺が面倒見ることになった。 幸い、賢明な兄貴達は合わせて6千万の生命保険をかけていたし、ローンを組んで 立てたばかりの家も団体信用生命保険のおかげで玲人に残された。 家もあれば当面の生活費養育費もあるので、金銭的には問題は無い。俺の職場に 通いやすい場所だったのも良かった。 兄貴が「この家はお前の実家でもあるんだ。ここがお前の部屋だからな。いつでも 帰ってきて良いんだぞ」と用意してくれていた部屋に少ない荷物を運び込み、玲人の 学校や俺の仕事を変えることなく、俺達は同居生活を始めることができ...
  • 26-369
    人間×触手 ※微グロ、変態プレイ注意 夕餉の膳を下げに来た女中の足音が十分に遠ざかったのを確かめると、立ち上がって部屋の隅へと向かう。 使用人には決して手を触れぬようにと言い含めてある鍵のかかった箱の中には、私が育てている盆栽の中で最も大切にしている一鉢がしまってある。 鍵を開けるために顔を近づけると、ほのかに甘い香りが鼻孔をくすぐる。箱を開けるとその香りはくらりと目眩がするほどに強くなる。 慣れているはずの私を酔わせるほどに香るのは花ではない。花というのにはあまりにも艶めかしすぎるそれは、まるで人の粘膜のように赤く濡れた蔓。茶色い幹から幾本も伸びた触手状のそれらは、まるで私の姿を認めて喜んでいるかのようにうねうねと蠢いている。 日の差さぬ山奥に生え、その甘い香りで牡の獣――時には人間の男を誘い、その精を搾り取るという妖樹を見ることが出来るならば、食われて...
  • 26-339
    ロマンチスト系電波受け 「○市へ行こう!  そこで運命の恋人が待ってるんだ」 土曜日の朝、待ち合わせの時間ちょうどに俺の部屋にやってきた坂下は、開口一番そう言った。 「○市って……お前、今日は映画見に行くんじゃなかったのかよ」 「映画はいつでも見られるけど、運命の恋人は今日行かなきゃ会えないんだよ!」 「運命の恋人って言ってもなぁ。  お前先月も同じこと言って×市へ行ったけど、結局見つからなかったじゃないか」 「今度は絶対会えるって!  昨日夢で死んだばあちゃんがそう言ってたから間違いないよ」 「お前先月はじいさんに同じこと言われたって言ってなかったか?」 俺の冷静なツッコミに坂下はむっとしたように頬を膨らませる。 「もういいよ。一人で行くから」 「待て待て。  お前一人で行かせて、またいつかみたいに夜中に電車になくなったって呼び出されるくらいなら、最初か...
  • 16-349
    もう許してください もう許してください。 やっぱり、これを言うのは最中の受だと思う。 自分が男に攻められて快感を感じてしまうことを受け入れられない受が、 じっくりねっとり攻められて、感じまくり、いかされまくり、挙句言葉責めを されて、顔を背け、涙を流しながら、消え入りそうな声で言うのが良い。 それを「嫌だね」と一蹴し、さらに攻め続ける鬼畜攻と組み合わされると さらに良し。 いたずら
  • 16-369
    盲目の正義 「私の弟はねぇ。私が稼いでやらないとねぇ。おまんまも食えずに死んでしまうんだよ」 痩けた頬に色素の抜けきった髪の毛、焦点が合わない真っ黒な瞳、はめ込まれた偽物の歯…屍と称して何ら間違いのない顔は、それでもひとつ言葉を語る度柔らかく歪められた。 その身は綺麗に清められ、香が焚かれ、成長の止まった不均衡な躯体のまま美しく飾りたてられている。 「弟はねぇ、とても賢くて、それはそれは可愛らしいんだよ」 「私しか、私の手しか、この世に生きる手段がないのだよ、だから」 「私は守らなくてはいけないし、稼がなければいけないし、そのためにはこうして旦那様に愛されなくちゃいけないよ」 「私が守らなくては弟は生きていくことができないのだよ」 「チビで歯の欠けた、可愛い弟、今もお腹を空かせて泣いているよ」 「泣いているのだよ、可愛い弟を、泣かせてはいけないよ、地獄のような世間...
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