*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「6-369-1」で検索した結果

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  • 6-369-1
    最後のメール いつもどおり、今日も日が暮れる。おれはそれを、ぼろアパートの二階からぼんやり眺めている。 こんな暇な時間を過ごせるほど経済的余裕はないけれど、でも、この時間は仕方ない。 だってあいつが来るから。 頼んでもいないのに、いつもいつもコンビニ袋に二人分の食料を詰め込んで。 へらへら笑って、ドアからひょっこり現れるのだ。 やかましいし、うっとうしいし、酒癖も悪いし、ちょっとうざいやつ。 だけどあの顔を見るたび、一日の鬱々とした気持ちが嘘みたいに晴れていく。 そしてそれが、とても、とても嬉しい。……若干餌付けされてる気もしないでもないけど。 かれが会いに来てくれることが、おれの一日の中で一番の楽しみだった。 ところが、その男が来るのが、今日はどうも遅い。 来ないなら来ないでいつもはうっとうしいくらいがっかりメールをくれるはずだけど、 それを忘れ...
  • 16-369-1
    盲目の正義 なんだかファンタジーな萌え語りここに置いてきますね 盲目の正義、ときめく響きです。 ヒーローでも革命の士でもむしろ悪役側でもとてもおいしくいただけます。 正義の名を借りて、自分のやっていることに何の疑いも持つことなく突き進む。 良く言えばとても素直でまっすぐな、悪く言えばとても愚かで意固地な人物だと思います。 私はそうして今まで信じてきたものが揺り動かされる瞬間というものがとても好きです。 敵役に自分の矛盾や見てこなかったものを指摘されて必死になって否定するのもいい。 (その際にお前らとは違う!などと、むしろ正義であるはずの彼のほうが酷い言葉を投げかけるのは多分お約束です) 彼を憎む人物がその坊ちゃんっぷりや偽善をせせら笑うのでもいい。 悪魔の誘惑のように感じられるそれらの台詞で、自分の基盤がぐらぐらになって、 荒れすさんだり、思い悩ん...
  • 6-369-2
    最後のメール 『別れたい。』 恋人からの突然の別れ。 なぜこんなことを言うのか・・・ それすら分からず、部屋の中に立ちすくむ。 理由を聞くことすら阻む、決定的な四文字。 電話することが震えて出来なかった・・・ 彼はいつでも俺を喜ばす言葉をメールで言う。 たとえば、デートの予定とか。 たとえば、好きとか愛してるとか。 俺だってまぁメールするけど、圧倒的に電話することが多かった。 彼にも、たまには電話しろとよく言った。 俺は感情が見え隠れする彼の声が聞きたかった。 だからメールは嫌いだった。 メールだと一切の感情を消してしまう気がするから。 それ故に、『別れたい。』の四文字が今、一層と際立った。 未だ立ち尽くしたままの俺はそれを感じて携帯を閉じた。 鈍感←ツンデレ
  • 1-369-1
    空手部部長×剣道部部長 まず両方強いというのが良い。見た目に体格も良くて、守り守られじゃなくて対等というのが良い。 空手部は豪気でちょっと強引。剣道部はストイックで天然だともう萌え。 お互い厳しい練習で精神力も強くって、部長だから他人に弱さも見せない。 何かあっても他人に見せないから一人でどんどん悩んじゃうけど、部員は誰も気づかない。 でも同じ場所(体育館)で練習してるから、指示の出し方声とか、些細な事で、相手には気づかれてしまう。 部活が終わってから、誰にも気付かせないようにしている剣道部から強引に悩みを聞き出す空手部。 何でもないと言いながら、「お前が心配なんだよ」と言う空手部の押しの強さと思いに負けてぽつりぽつりと語る剣道部。 それを真面目に聞いて包み込んじゃう空手部に超癒やされる剣道部。 逆に空手部の様子がおかしいと問いつめる剣道部。のらりくらり...
  • 16-369-2
    盲目の正義 真昼の病室に風が流れ、赤褐色の髪を遠慮がちに揺らした。 白いベッドに仰臥した青年は、目を閉じたまま、塑像のように動かない。 その冷たい手を取って、上から掌を重ねた。 大丈夫、眠っているだけだ。胸の内で繰り返しながら、昔のことを思い出していた。 ただ一度、心の底から愛した人を、理不尽なかたちで喪ったことがある。 当時はまだ年若く、状況に強いられ、納得のゆかぬ死をただ受け容れるよりなかった。 到底割り切れるものではない。無理と異物をのまされて、心のどこかが歪んだ。 力が欲しい。その一心で、ひたすらに権力の座を目指した。 いつしか位人臣を極め、手にした力で片端から不正を潰して回った。 そうしているときだけ、許されているような気がした。 復讐のつもりであったかも知れない。 厳しさのあまり、方々から恨みを買っていることは承知していたが、 自分の死を...
  • 24-369-1
    背中合わせ 「あらら、見事に囲まれてんな、俺ら」 「ざっと20頭はいますね。しかもみんな尻尾が赤いですよ。  レッドテイルキメラ、キメラの中でも一番どう猛な種類ですね」 「この辺りにはツノツノネズミしかいないって情報、やっぱりガセだったか。  どうもうさんくさいと思ったんだよな、あの商人…」 「まんまとはめられてしまいましたね。貴方は喧嘩っ早くて  すぐ手が出るからあちこちで恨みを買っていますものね」 「恨みを買ってるのはあちこちで毒舌吐きまくってるお前の方じゃねーの?」 「僕は正しいと思うことを正しい表現で伝えているだけですよ……って、  その話は後にした方が良さそうですね。 「だな。んじゃ、俺の右手の方向が若干手薄っぽいからあそこを突破しようぜ。  合図したら突っ込むから魔法で援護頼むわ」 「それはいいですけど、えーと、その…腰の方は大丈夫ですか?  ...
  • 13-369-1
    通り雨 通る頃には 通り過ぎ  掌を握っているとしっとりと湿った体温が伝わる。 外は相変わらずざあざあざあと雨が降り注いでいて俺達は此処半時間シャッターのしまったぼろい店の 看板のテントの下で難を逃れている。唯の友人同士だと、もしこの夕立の中側を通る人があれば思った かもしれない。しかし隣同士で立ち尽くしたまま、二人しっかりと手をとりあっている。胸に充満する 雨の匂いに満たされた学校の帰り。着込んだ制服は雨を含んで肌に張り付く。恋人同士のような格好で 、俺達はいる。  しかし握る力は俺のほうが甚大なのだ。  俺はお前が好きだった。だけどお前は俺のこと何かどうでもいい。  多分雨が降り終わる頃にはこの掌は俺のものではない。降り終ったねと笑うお前は俺の側を軽々と通 り過ぎて世界に紛れてしまうだろう。そう言う約束だった。お互いの世界だけで関係を完結させて、決 し...
  • 22-369-1
    yahho知恵袋 回答受付中の質問 僕は若い頃にモデルだった母に似て、いわゆるイケメンだそうです。 女顔なので自分ではコンプレックスがありますが、今は中性的な男がいいらしく、社内では多くの女性社員にアプローチをかけられます。 正直言って、僕は女性が好きではありません。特に恋愛に対しギラギラした人が嫌いです。 仕事に集中したいのに、暇な女子社員にやたら声をかけられて困ります。 こんな自分ですが、最近とても気になる人が出来ました。 総務部で地味に仕事をしている人です。 営業部にいた方ですが、大きな失敗の責任をとって飛ばされたようです。 でも僕は斬新な発想力が認められなかっただけだと思っています。 それなのに女性社員からはひどい扱いを受けていて、見ていてとても辛くなります。 この間は年下の女子社員から大声で怒鳴られていました。 それでもその人は黙って聞いています。そ...
  • 6-369
    最後のメール 『今日の夕飯どーする?』 いつもどおりに空はくすんでいて、いつもどおり町は無駄に賑やかで、 僕はいつもどおりくたくたで帰り道を行き、いつもと同じようにかれにメールを打つ。 当たり前で、ありふれた一日の終わり。 自分の家に帰る前に、僕は一人暮らしのかれのアパートに寄っていく。 赤貧イモ洗いなやつなので、弁当や、バーガーや、時には酒とつまみを差し入れにして。 それはかれに初めてであった、大学時代からの習慣だ。 大事なひと。大好きなひと。いやなことがあっても、かれに会えば全部吹っ飛ぶ。 かれに会いに行くことが、僕の一日のなかで一番の楽しみだった。 メールの返事を待つことなんてなしに、僕はコンビニで弁当をふたつと缶ビールを五本買った。 僕の分が二本、呑んべえのあいつには三本。アルコールの差し入れは珍しいから、きっと喜ぶだろう。 (今日は何を話...
  • 26-369
    人間×触手 ※微グロ、変態プレイ注意 夕餉の膳を下げに来た女中の足音が十分に遠ざかったのを確かめると、立ち上がって部屋の隅へと向かう。 使用人には決して手を触れぬようにと言い含めてある鍵のかかった箱の中には、私が育てている盆栽の中で最も大切にしている一鉢がしまってある。 鍵を開けるために顔を近づけると、ほのかに甘い香りが鼻孔をくすぐる。箱を開けるとその香りはくらりと目眩がするほどに強くなる。 慣れているはずの私を酔わせるほどに香るのは花ではない。花というのにはあまりにも艶めかしすぎるそれは、まるで人の粘膜のように赤く濡れた蔓。茶色い幹から幾本も伸びた触手状のそれらは、まるで私の姿を認めて喜んでいるかのようにうねうねと蠢いている。 日の差さぬ山奥に生え、その甘い香りで牡の獣――時には人間の男を誘い、その精を搾り取るという妖樹を見ることが出来るならば、食われて...
  • 16-369
    盲目の正義 「私の弟はねぇ。私が稼いでやらないとねぇ。おまんまも食えずに死んでしまうんだよ」 痩けた頬に色素の抜けきった髪の毛、焦点が合わない真っ黒な瞳、はめ込まれた偽物の歯…屍と称して何ら間違いのない顔は、それでもひとつ言葉を語る度柔らかく歪められた。 その身は綺麗に清められ、香が焚かれ、成長の止まった不均衡な躯体のまま美しく飾りたてられている。 「弟はねぇ、とても賢くて、それはそれは可愛らしいんだよ」 「私しか、私の手しか、この世に生きる手段がないのだよ、だから」 「私は守らなくてはいけないし、稼がなければいけないし、そのためにはこうして旦那様に愛されなくちゃいけないよ」 「私が守らなくては弟は生きていくことができないのだよ」 「チビで歯の欠けた、可愛い弟、今もお腹を空かせて泣いているよ」 「泣いているのだよ、可愛い弟を、泣かせてはいけないよ、地獄のような世間...
  • 24-369-2
    背中合わせ 扉をぶち破った俺の目に飛び込んできたのは、剥き出しの背中に焼印を押し付けられている彼の姿だった。 「他人の背中というものは、こんなにも温かかったのですね」 彼はそう言って、こちらに身体を傾けてきた。 俺は少しだけ前のめりになったが、ぐっと腹に力を入れて押し留まる。 すると彼はくすくす笑いながら、更に体重をかけてくる。まるで子供がふざけているようだ。 「おい」 軽く諌めると、背中から「すみません」と苦笑交じりの声が返って来た。 「こういう事は初めてなものですから、とても新鮮で」 「俺だってこんな状況ねえよ」 男二人、後ろ手に縛られてまとめて鎖でぐるぐる巻きに拘束される状況など。 目の前にある鉄の扉に思い切り蹴りを入れた。当たり前だがびくともせず、足に痺れがはしる。 全身に力を込めてみたが、鎖の戒めが緩むこともなかった。人の身ではどうすることも...
  • 9-369
    札幌×福岡 「徒歩暴走族っていうの、ほんとうに出ると?」 ネクタイをちょっとだけゆるめてから、差し出された熱燗に目をやる。 うまそうだ。 それにしても、「出ると」だって。そんな言葉、テレビでしかきいたことない。 これ、博多弁っていうのかな。生できけて少し感動してしまう。 「出るよ、出る出る。すすきのとかね、あの辺大声出しながら歩いてる」 出るってなんかそんな、幽霊みたいな言いざまは、ちょっと可笑しい。 そんなことを思いながら答えて、ちびちびと熱燗をすすった。 初めての味だ。地酒なのかな。 お任せで燗つけてって言ったらこれがでてきた。おいしい。 「えー、見てみたいかも。ていうかすすきの1回行ってみたい。 中洲とどっちがおおきい?」 なんて言いながら、彼は無邪気に笑う。 「どっちもいいところだよ」 答えにもなってないような答えを返してしまったけれど、 彼...
  • 6-169-1
    笑わない人 「なあ、俺そんっなにつまんないオトコ?」 「…は?」 自分で言うのもナンだけど、今言ったの俺の十八番のギャグ、伝家の宝刀よ?自信無くしちゃうなー。 おどけた口調で言うと、アイツはいつものしかめっ面を更に歪め「馬鹿」と一言で切り捨てた。 最初はただの興味。 校長のヅラが風に舞った時も体育教師のジャージのゴムが切れてズリ落ちたときも クスリともしなかったアイツは何をどうすれば笑うのかって。 顔面の筋肉おかしいんじゃないかと思って顔グリグリしたら殴られたこともあった。 ここ1年とちょっと、少なくとも学校にいる間は一緒に行動するようになって、 色々と知らなかった部分も見た。全く無表情ってわけじゃないんだよ、絶望的にわかり辛いだけで。 怒るし、睨むし、驚くし。悔し泣き寸前の顔も見た。 ―――でも、笑わないんだ。笑わないんだよ。 どんなに自...
  • 2-369
    酔っ払ってエチーー いつも滅多な事では酔わない受。 シラフの時もそりゃークールビューティ。 直属の部下である攻は、軽くあしらわれてばかりw 受、ここ数ヶ月掛かりきりだった大きなプロジェクトを終わらせて、 今夜は部下と無礼講。 何軒かハシゴするうち、充足感と疲労感とが相まって、 珍しくも酔いが回り、どんどん攻に気を許す受。 「送っていけー」とか甘えちゃったり。 気弱な性格の攻はドキドキしつつもワクワクテカテカ、 最終的にはマイルームにお持ち帰り。 シャワーなんか浴びたりして、あとはベッドに向かうのみw その後の事はご想像にお任せw 見かけほど酔ってるわけじゃない受がいつもどおり主導権握るも良し。 攻が思いっきり受を喘がせるも良し。 翌朝の会話が楽しみだwww 右手×左手
  • 1-369
    空手部部長×剣道部部長 「徒手空拳!己の肉体のみで戦う!これが漢の戦いではないか!」 「剣と向かい敵と向かいそして己と向き合う。そこから鍛錬される技と心の探求が剣の道、ひいては武士道にもつながるのではないか」 「むむ、そんなことを言って、お前が振り回しているのは竹刀ではないか!」 「真剣を振り回すだけで強くなれると思うとは笑止。剣は単なる武器ではない」 「何ぃ?!そんなひよひよした痩せた身体つきで何を言う!肉体を鍛え心を鍛えるのが空手だ!」 「なるほど君は鋼のような立派な肉体の持ち主だが、しかしこの竹刀の突きを受け止めることが果たしてどこまでできるかな」 「卑怯だぞ!単なる武器ではないと言っておいて、それではただの剣頼りではないか!それに防具に隠れ身を守るとは!」 「これらは人間が生み出した道具だ。それを使い強さを求めるのが人間だ!」 「なるほど、俺たちは全く立場を...
  • 7-369
    ああっ…中に出てるぅ… とても気持ちよくまどろんでいたのに、大きな物音で目が覚めた。 「………なに、いまの音」 ソファから身を起こして辺りを見渡すと、カウンターの脇でマスターが スツールの下敷きになって倒れていた。 「うわ、大丈夫…?」 「お、おお…ってててて……悪ぃな、おこしちゃってな。」 「うん…ううん、いいよ。それよりなんか、すっごくよく眠れた…。」 「そうか?つったって二時間も寝てないぞ。まだ開店まで時間あるし、いいから  もうちょっと寝とけや。」 マスターの言葉に甘えて、僕はもう一度寝転がる。 僕が最近眠れないことを話したら、マスターが店のソファを貸してくれた。 前に僕が、一度このソファを独り占めして昼寝したいって言ったのを 覚えていてくれたのだ。 「それにしてもロクちゃん…何の夢見てたの?」 「夢…ああ、なんか見てたけど、思...
  • 3-369
    鼻血を吹かんばかりに(吹いてるかも)受けにハアハアしている攻め 「ちょ、先生先生!」 「え?あ、どーしたのそれ!」 「判んね、逆上せたっぽい」 「上向いて上っ。はいこれティッシュ」 「すんませーん」 「あーあ、服に垂れてるよ‥」 「マジっすか」 「そのまま上向いてて」 「痛っ、先生叩きすぎ」 「我慢しなさい、暫くやったらすぐ止まるんだから」 「血の気多いんじゃないの、君」 「んなことねっスよ、普通普通」 「じゃなきゃ変なことでも考えてたか」 「俺先生のことしか考えてないからそれもないっス」 「は?」 「んー、やっぱ逆上せたんじゃん?多分」 「僕のこと考えて?(笑)」 「そ、先生のこと考えて(笑)」 「あははは」 「本気っス」 サボリーマン
  • 8-369
    友人以上恋人未満 「ねえキスしていい?」 「……ダメ」 小さく首を振られたことにがっくりとくるがその仕草にぐっとくる。 「なんで?」 「ダメなもんはダメ!」 「ちょっとくらいいいだろー」 「そ、そういうのは大人の恋人がするんだよっ」 頬が赤い。 堪らなく可愛らしいけどここは引きさがれない。 「えー!いっつもしてんじゃん」 「してねぇよ!」 「おじさんとおばさんに毎日されてるって言ってた!」 ピタッと動きが止まる。 あれ? 「…………ほっぺた?」 「そうだよっ!……もしかして」 「違うっ!オレは別にっ」 必死に否定しようとしているのか、もごもごと呟く。 顔を背けたまま視線はうろうろとさまよっている。 もしかしてこれはチャンスだろうか。 今なら不意打ちで出来るかもしれない。 善は急げ。 ドキドキとする間もなくぐっと顔...
  • 4-369
    あの楽譜は。 放課後、久し振りにピアノを弾きに来た。 今はテスト期間中だし、残っている生徒もほとんどいないだろうから誰にも邪魔されずゆっくりとピアノが弾ける。 意に反して音楽室のドアが薄く開いていた。 音を立てないように中を覗くと、クラス位置の優等生の彼がいた。 成績は常に学年トップ、休み時間も騒いでいる俺らを尻目に一人で本を読んでいる。 そんな彼が音楽室に? 彼はピアノの前に座って一心に何かを書き付けている。 勉強なら家か図書室でやれよ、と心の中で毒づいたときにペンを置く微かな音がした。 次いで流れて来る聴いた事のない旋律。 一通り引き終わって満足げな笑みを浮かべた。 笑っているところを見たのは恐らくこれが初めて。 そしてゆっくりと鍵盤に指を置き、最初から。 懐かしいような、暖かいような、ほっとする旋律。 鍵盤の上を跳ね回る白い...
  • 6-269-1
    グラサン×眼鏡 東京の川は汚いけれど、大きな橋の上から見れば大して気にならない。橋の真ん中で、欄干に寄り掛かってホットドッグを食べていた。そうしたら、黒いスーツにサングラスの長身の男に突然肩をつかまれた。鬼気迫る様子で僕の顔を覗き込んだあと、男は声を震わせてこう言った。 「…口の周りに、血が付いていますよ」 僕は…唖然とした。男の容姿は日本人と言われても通用するものだったが、言葉は明らかに外国人のアクセントだった。ごくん、と唾を飲み込んで、こう答えた。 「これは、血ではなくて…ケチャップです。このホットドッグの。でも、心配していただいたようで、ありがとうございます。」 僕は英語には自信があったので、できる限り正確な発音で、ゆっくりそう言った。 すると男は僕の腕を乱暴に引っぱって止めてあった車に押し込むと、僕が何かを言う間もなくすごい勢いで発進した。 「あの…!止め...
  • 6-869-1
    40年ぶりの再開 先に見つけたのは奴の方だった。 「有川?有川じゃないか?」 「う、植野?」 少し離れた、取引先からの帰り道。 直帰しようかなぁ、書類を取りに帰ろうか。そんなことをつらつら考えながら上っていた階段の途中。 呼び止められて振り返ると、そこには懐かしげに笑う、旧友の顔があった。 「久しぶりだなぁ」と言いながら俺の横に並ぶ。少しも変わらないその態度に戸惑った。 もう20年も前になるのか。俺と植野は、一人の女性を取り合った。 幼馴染の3人組。仲良く手をつないで歩いていた頃から続いていた争いは、 互いに大人になり、働き出し、それなりの蓄えと責任を持つ立場になって真剣なものとなった。 「みぃちゃん」が選んだのは植野。物静かに笑う、優しい植野を、彼女は望んだ。 転勤が決まっていた俺は、みぃちゃんが妊娠したのを聞いた頃に遠くに移った。 何だかんだと転勤...
  • 6-669-1
    福岡 デリヘル ヴィーナス に元アイドルが・・・? 「やあ。久しぶり」 待っていたよ、と彼は微笑んだ あなたを忘れられず、流れ流れて結局此処まで戻って来たよと 笑った目尻に時の流れを感じた。 世間体や不釣り合いだなんて言って、つまりあなたは逃げたんだよね、という言葉に、俺は何も言えず俯く 「会いたくなかった?」 落ちぶれたと思う? けどあの世界もこの世界も、似たようなもんだよ。 セックスも人の体温も、同じように気持ちいいもんだよ。 皮肉な声に、俺は彼の横に腰を下ろした 路上に座り込む俺達は、通り過ぎていく人の波にあの日を探した 彼と出会ったこの道 初めて唇を重ねたのもこの道 別れたのも、この道だった 今はもう無い、親不孝通りで 俺は彼を探し続けていた …俺達はまた親不孝を続けていくのだろうか あの頃よりずっと狡くなって、無力になったのに。 ...
  • 6-769-1
    思い出になった恋 別れを告げたあの日がよみがえる。 彼と、それまでの総てを思い出に変えてしまったあの日。 彼はいつもどこか線を引いていて、 俺がそれを踏み越えることを許してはくれなかった。 でも向こうが線を越えたときは、俺に思う存分甘えてきたりして。 そんな風に付いたり離れたりしながら俺達は過ごしていた。 出会って別れがくるまで、 俺が彼について知っていることが減ることは無く、また増えることも無かった。 彼は自分のことをあまり話さなかった。 それが表面化したとき俺達は衝突した。 彼は俺だけの彼ではなかった。 「俺以外の奴と…」 彼を責めたが彼は潔白を主張した。 その目に涙が浮かんで、静かに落ちた。 俺は彼が泣くのを初めて見た。 あのときの俺は経験も浅くて、若くて、子供だった。 ただ…許せなかった。 独占欲や未熟さを抱えながら...
  • 6-569-1
    勘違い 佐倉は俺を選んだわけじゃない。 男が切れて寂しかったから。 ルームメイトが俺だったから。 俺が佐倉の性癖を嫌悪しなかったから。 ほら、理由はいくらでもある。 だから、「もしかして佐倉も俺のことを……」なんて勘違いしちゃ駄目だ。 佐倉の好みは年上の渋いパパ。 間違っても俺みたいな青臭い同級生じゃない。 佐倉の基準はお金持ち。 自立もできていない俺なんて問題外だ。 佐倉が俺に目を向けるはずがないんだ。 勘違いしちゃいけない。 いくら俺が佐倉を好きでも、アイツにとって俺はセフレなんだ。 あぁだけど、分かってはいるけれど。 隣で眠る佐倉のあどけない顔を見ながら、思わずにはいられない。 大丈夫。分かってる。 梅宮は、ただ同情してくれてるだけ。 男が切れたなんて嘘。 誰かと付き合ったことすら、一度もない。 年上の...
  • 9-169-1
    年賀状を書きながら 「明けましておめでとう。今年も・・・よろしく・・・か。」 なんとも短く愛想の無い文面を見つめるが、他の言葉が浮かばない。 何故ならこの手塚智弥と俺は、今まで3回程度しか話した事がない。 同じバンドが好きで、同じクラス、席が斜め前って事くらいしか近しい記憶はない。 話しかけるタイミングだって逃してばっか・・・8ヶ月で話した記憶が3回て・・・ 「年賀状出しても、俺のこと知らないんじゃねぇか?」 最悪の予感がよぎる・・・っていうかあいつ、俺の名前知ってるのか? 俺なんて名前どころか顔すら思い出せない程度の存在なんじゃないかとも思う。 「あああああーーーー冬休み前にもっとアピっとけば良かったああああ・・・」 あのバンド、年明けにアルバム出すんだよな。 2月には武道館でライブもあるし、行けたらいいよなー・・・って、話題...
  • 6-339-1
    ロボット×人間 「ごめん、ごめんな…。」 お前の気持ちが恐かった。 …いや、『気持ち』としてプログラムされているという事実が。 何が起きても穏やかな笑顔で俺に「愛しています」と囁く不変さが。 後悔なんて、死ぬほどしている。 それでも俺は他の選択肢を選ぶことなんてできなかったし、もしやり直せたとしても、選べない。 横たわって目を瞑り、充電しているお前に足音を忍ばせて近寄った俺に「いいですよ」と一言言ったお前。 …穏やかにふんわりと笑いながら。 「ごめん、ごめんな…。」 熱を失いつつある、人の皮膚そっくりに作られた人工皮膚のお前の頬は、俺の涙を吸わずに俺の腿へ伝えた。 ボロ負け
  • 6-309-1
    浴衣でグチョグチョ  彼が私の秘書になって約三年、私達は共に数多くの非常に有益な事業を、着実に成し遂げてきた。それもひとえに彼の優秀さと鋭敏な感性と、真摯な人柄のおかげである。彼の仕事を一言で表すならまさに「かゆいところに手が届く」であり、まったく彼と出会えた事は私の人生の中でも最も大きな収穫の一つであると思う。  だから今日、彼の多少困った一面を見ることになったくらいで、私の彼に対する信頼が揺らぐわけは、もちろんない。 「ほら…白河君、そんなところにいたら危ないだろう。こっちにおいで。」 「…専務…っふ、くっくくっ……お、お父さんみたい……」 「ははは…。」 浴衣姿の優秀な部下に、温泉旅館の庭園にある松の木の上から見下ろされるというのはなかなかシュールな情景だが、いくら細身とはいえ男の体重をいつまで松の枝が支えられるかわからない。 「…部屋に戻ろう、白河君。ほら...
  • 6-399-1
    永遠に置き去り 『拝啓、お元気ですか。僕の方はぼちぼちやっています。  そっちはどうですか?変わりなくやっているでしょうか。  …堅苦しい文はやっぱり苦手です。  会いたい。会いたい。今どこにいますか。何をしてますか。  僕は相変らず、君を そこで僕は我に返って、便箋からペンを放した。これ以上、言葉になんて 出来ない。言葉にしたって、仕方ない。 あいつは僕を置いて、遠いところへと行ってしまった。 …それは少し語弊がある。僕たちは、別々の道を行くことにした。 今でも僕はかれのことを愛しく思っているし、かれも僕を嫌いになんてなっていない。 だけど、かれの目指す未来は、僕の横にはいてくれなかった。 「行きなよ。今しかないんだから」 笑ってそう言ってやれて、ほんとによかった。泣きながら送り出すなんていやだった。 分かってた。 ぼろぼろの男二人暮らし...
  • 6-319-1
    バッドエンドフラグ成立の瞬間 「でも俺、お前の絵は本気ですごいと思うんだよ!なんつーか…本物って感じ。」 俺の熱意に一瞬たじろいで、そのあと、初めてお前は笑顔を見せてくれた。 …あの時だっていうのか、お前の中で何かが蠢きだしたのが。 体が痺れて、触れられても感じ取れない。優しく掴まれたのか、乱暴に捻り上げられたのか。深皿にぽたりぽたりと溜まっていく赤い液体を見ても、それが自分の体から出ている感覚がない。 「だって…もう君しか残ってないんだよ。僕の大切なもの。」 お前の声が、やけにでっかく、頭に響いて聞こえる。 俺に褒められて、本当に嬉しかった。あの絵は自分の血を使って描いた初めての大事な絵だったから。でも、それからもさらに「本物」の絵を描き続けるためには、材料を追求し続けなければならなかった。… 「『痛み』を伴う材料じゃないと、本物にはならないんだ、どうしても。...
  • 10-369
    背中がかゆいが手が届かない 寝返りを打てないもどかしさに目を開けて、そのまま心臓が止まるかと思った。 目の前には見慣れた友人の顔。ただそれだけなら死に至るほど驚きはしないが、お互いの距離が5㎝ないというのはいくらなんでも異常だろ。ああ、でもこいつのまつげ長いなあってそうじゃなくて。 慌てて周りの状況を確認しようとしたが、何故か身体の自由が効かない。 そういえば、寝返りが打てなくて起きたんだった、と思うと同時に、ベッドの柵を通って自分の両手を戒める鎖に気がついた。 …………え?何で? いやいやいや、冷静になれよ俺!ってゆーか今更だけど、俺なんにも着てなくねえ?全裸じゃねえ? 恐る恐る隣の男の全身に目をやると……こいつも全裸か。 一つのベッドの上に、一糸纏わず密着した野郎が二人。しかも一人は鎖で拘束。 この状況はありえない。夢だろ、なっ、これって夢だろ!? あー良かっ...
  • 11-369
    愛してない 「先生、このメモ用紙に書いた言葉を声高にはっきりとちょっとネイティブな発音で 読み上げちゃって下さい」 「俺は先生じゃないし今は夜だから大きな声は出したくないし日本語をネイティブな 発音でってどうやるんだって話だし簡単に言えばお断りだ」 「うわーんお願いだよー俺の全財産でチロルチョコ(きなこ餅味)一個買ってあげる からー!!」 「全財産が二十円ってどれだけ切迫してるんだお前!というか何故よりにもよって その味をチョイスする!!」 「え、美味いじゃんアレ。…何か間違ってる気がするけど」 「まあ美味いよなアレ。…何か間違ってる気がするけど」 「ってそうじゃなくて!なあ俺達恋人だよね!?付き合ってるよね!?100万ドルの 夜景の下で病める時も健やかなる時もちょっとエッチなビデオを見る時も一緒にいる って誓い合った仲だよね!?」 「正直最後の誓いをし...
  • 22-369
    もてない男×もてる男で両片思い 相変わらず秀和はもてまくっている。童貞は中1で捨てたと聞いた。何て名前だったっけ・・・あの韓国の俳優・・・そうチャン・グンソクだ あれをもっとかわいくした感じの小顔。それに長めの髪形が絶妙にはまってやがる 男のロン毛なんてウザくて暑苦しいだけだと思っていたけど、秀和を見たら男のロン毛もありだなと認るしかなかった それでバスケ部に入っててスポーツ補正も加わるから、そりゃもてまくる。本当に嫌になる・・・苦しくなる・・・ そんなもてまくりでも秀和は男子の評判もいい。本人の弁によると男同士でワイワイ騒いだり遊んだりする方が女とデートするより楽しいらしい だからスケジュールは女より男優先。特に部活仲間には凄く義理堅い。3ヶ月くらい前にオレが部室の前に居たら馬鹿な女子たちが 「愛川くんが私たちにあんまり構ってくれないのはバスケ部の人たちと遊んでばっか...
  • 27-369
    ヤンデレを病ませない方法 語らせてください。 ヤンデレというのは、相手が好きだから 相手のために行動をすることで「相手に自分を好きになってほしい」んです。 行動は暗く思われがちですが、結局は相手への愛に基づいた行動・感情なのです。 相手あってこそのヤンデレ! だから、ヤンデレの思いを相手がどう受け止めるかによって ヤンデレが病んでしまうかが変わってくると思います。 ヤンデレが病まない相手で、私が思い浮かぶのは3タイプでした。 【①純愛系】 純愛系はヤンデレを一途に愛することで、ヤンデレの心を満たす 包容タイプですね。 (例) ヤンデレ「なんだよあいつ…なんで純愛君に近づくんだよ…純愛君は俺のものなのに…」 純愛「ヤンデレ君、僕が好きなのは君だけだよ?君以外目に入らないから安心して」 ヤンデレ「純愛君…」 ...
  • 21-369
    騎士と僧侶 「おまえなんか俺がいなきゃとっくに棺桶のくせに!」 「それはこっちのセリフです。すぐぼこすかやられるくせに」 ふん、とお互いに顔をそむけてそのまま逆方向に歩きだした。 魔物の巣窟である森の中は暗い。 「剣しか能のない馬鹿め。だいたい相手の攻撃全部もろにうけてるくせに何様ですか。私が回復魔法かけないとあなたこそ棺桶じゃないですか。だからもっと攻撃を避けることをしろと言っただけなのに、文句たらたらうるさいんですよ。私は」 もっとあなたの身を大切にしてほしいだけなのに。 あなたが守るべきは、何よりあなたであってほしいのに。 「っ……!」 茂みから突然あらわれた魔物に肩をおおきな爪でひっかかれた。 強い魔力を感じる。それも3体。 はたして自分ひとりで勝てるだろうか。 汗ばんだ手で杖を握りしめる。 1体の魔物が猛然と襲いかかってきた...
  • 18-369
    しつこくアピール なあケンジ、一緒にお昼食べようぜ! 「うるさいなぁ、読書の邪魔するなよ」 なんだよ冷たいな、ちょっとくらい構えよ。俺一人じゃ退屈なんだぜ。 「はいはいいい子だから巣に戻ろうね」 あ、こら、暴力反対! 俺はお前と違ってかよわいんだぞ! 「あーもううるさいな、腹減ってるのか? ほら」 いやお腹はそこそこ減ってるけどさ、お前と一緒に食いたいの! 「何だよ、わっかんない奴だな……あのな、俺は、この本を読みたいんだ。  だから、邪魔しないでくれ。な?」 ひ、ひどい……俺よりもそんな紙切れの束の方が大事だってのか!? いじめだ! 虐待だ! 俺はこんなにお前のことを愛してるのに! 「あーもう、言って聞くとは思わなかったけど……」 そうそう! 本なんか置いて、俺と一緒に遊ぼう! そして二人きりで…… バサッ。 鳥篭に黒い布をかける。やかま...
  • 24-369
    背中合わせ 背中合わせの何があれって、「命預けた」感と、「俺はお前を信頼してるぜ」感だよね。 ライバルや親友、特に、クールな受と熱血漢な攻が背中合わせで戦うとか、まじでご褒美です。 ツンデレ上司が、わんこ部下に「俺の背中は、お前にしか預けられないな」とか言われたら、見てるこっちも、一生その上司について行きたくなる。 背中合わせは燃えるし萌える。 あと、別れとか背徳的な関係もいい。 背中合わせになった瞬間、互いの気持ちを吐き出すんだ。 それも結婚前夜にだぜ。 もしくは、身分違いで両片想いの二人が、襖や扉越しに背中合わせになって告白。 これは、王様逃がしたい家臣でも、恋人逃がしたい王様でもいい。 つまり、背中合わせの可能性は無限だってこと。 背中合わせ
  • 23-369
    記憶喪失な攻め 「さて、良く聞いて」 目の前の白衣を着た男が優しげに微笑んだ。 「まず僕の家族構成。両親に兄が一人、姉が一人。ゴールデンレトリバーが一匹、オス。  実家は出て一人暮らしをしている。趣味は読書、というより活字中毒。なんでも読むよ。  本の読みすぎで、このとおり学生の頃から眼鏡を愛用している。コンタクトはどうも苦手でね」 そう言う男の顔には黒縁の眼鏡がかかっている。 俺がそれをじっと見つめると、男は少し眉尻を下げてこちらに笑いかけた。 「やっぱりおかしい?」 「いや。似合っていると思う」 感じたままを伝えると、彼は二、三度まばたきをしてから、嬉しそうな表情になった。 その表情のまま、彼は訥々と語る。 「僕は夜型なんだ。寝る前に本を読み始めると止まらなくてついつい、ね。だから朝は苦手で。  よく遅刻しそうになって飛び起きてバタバタして、寝癖をつけ...
  • 20-369
    はきだめの鶴 ああ、むさ苦しい。 溜息を吐いて机に突っ伏した。 パイプ椅子が地味に尻に痛い。が、今はそんなことがどうでもいいくらい、鬱々とした気分だった。 右を見ても筋骨隆々とした男。 左を見てもひげ面の男。 前を見てもゴリラ顔の男。 後ろを見ても―― 何を間違えてこんなところに迷い込んでしまったのだろう。 いや、自分が選んだ道なのだから仕方ないのだが、それにしても兵隊になろうという男はこんなむさ苦しい男ばかりなのか。 狭い天幕はむさ苦しい男の臭いが充満していて、それも気分をいっそう鬱にさせた。 まさか影で選考基準があって、むさ苦しさという点数が高い順に選ばれているのか。 馬鹿な考えが頭を占拠しだした時だ。 「番号012100から順に隣の天幕へ移動、そこで身体検査を受けた後、本館の大講義室へ移動しなさい」 天幕に入ってきたのは、年齢...
  • 15-369
    初エッチ いやあ、初エッチですか。 いいよね。初エッチは。何人、何度やっても初エッチはいつでも特別。 まず初という冠。限定なんて目じゃない。 かわいいショタっこもクールな眼鏡も陽だまりの匂いのガチムチも 白髪が混じり始めたナイスミドルだって、誰でも1回しかないの初めて! これが本当の一番出し、初摘みの美味しい生彼をいただきスイーツ。 それにエッチ、という言葉は本当にエッチな響きですよ。 元々の語源は変態の頭文字でHらしいですね。ええもう変態で結構! SEXの即物的な感じもいいがエッチが持っているほんのり昭和な感じがいい。 何だか初めてのエロ本を思い出すエロス。それが組み合わさったらもう無敵。 鬼に金棒、飲み込んで僕のエクスカリバーですよ 初めては何でも驚きの連続。 初めてなんだから失敗しても当たり前。 無理に脱がそう...
  • 17-369
    ゴッホが耳を切った理由 止めてくれ、と思った。 もう何も聞きたくない。批評する声も、 お前は才能がないと嘲笑う声も、女たちのくすくす笑いももう何もかも聞きたくない。 描けと脳の奥で木霊する自分じゃない誰かの声も。 指の先から溢れる色彩なんて持っちゃいない、真っ白なキャンバスの前で明確な デッサンが浮かぶわけでもない。 俺はお前の絵が好きだよと遠い記憶の向こうで、それだけを頼りにしてきた誰かの 声ももう聞きたくない。 聞きたくないんだ。 描き出した己の姿は、自分を肯定する声を拾うかの様に耳が歪で、それが心底惨めだった。 もう聞きたくない。 批評も、批判も肯定も否定も神の導きも全て要らない。 削ぎ落とした耳の向こう、歪な形の耳はそれでもまだ音を拾い続けた。 描けよと。 俺はお前の絵がとても好きだよと。 高すぎる腕枕
  • 25-369
    無口×饒舌  一応俺だってモテるんだぜ? お前はわかってないかもしれないけど! 時々不安になるわけだよ、俺だって。仁は俺に執着ないんじゃー、ってなるの! いつも何もいわねーし? 言わないとわかんないことだってたくさんあるから! ……なあ、聞いてる?  パフェをスプーンでつつきながら、良哉は俺をにらみつける。 彼の綺麗な顔にはたとえ眉間に皺が寄せられても綺麗だなあ、と思った。 アイスコーヒーをストローで啜りながら縦にうなづくと、ホントかあ? とあからさまに疑ったような声色。 実際聞いていたので、ちょっとムッとしてみたり。唇からストローを離して、小さく聞いてた、と今度は口にする。 「じゃあ俺なんていった?」 少しの間を置いて、深く息をつく。俺が愛情表現下手なこととか、それでも俺は良哉がいないと駄目なことなんて、 こいつはよくわかってると思ってたのに。そんなこ...
  • 13-369
    通り雨 通る頃には 通り過ぎ 「うげっ、雨」 そういえば今朝ニュースで梅雨前線がどうとか言ってたっけ。 それにしてはまだ梅雨には早いだろう。こないだ桜が散ったばっかりなのに。 なんだか最近季節感が狂っている気がする。 傘もささないままぼうっとしていたら、すぐ雨は止んでしまった。 ああ、こういうの通り雨って言うんだっけ。あいつから教わったなあ。 あいつもそんな風に消えちまったなあ。急に来て、急に消えて。 立つ鳥後を濁さずと言うが、あいつは思い切り俺の心を濁して行った。 だから俺もむかついて、すぐ別の男に恋をした、ふりをした。 ふりというか、恋をしたかったんだけど、出来なかった。 何でだろうと考えれば、やっぱりあいつの存在感のせいで。 いっそ死んでしまっていたなら吹っ切れたのに。 全てが遅すぎたのだ。恋をしたと気付いた頃には、通り雨は止んでいた。 そして...
  • 14-369
    想いは伝えたら壊れちゃう 「…何でいるの。」 「何でいきなりバイトやめたの。言ってくれても良いだろ」 「……。」 「俺は、バイト仲間だけじゃなくてもお前とは仲良くできそうだと思ったのに」 「…俺も、そう思ったよ。」 「なら何で辞めた?」 「べ…つに、そんなこと、関係ないだろ。忙しいんだよ学校とか」 「気ままなフリーターの俺には関係無い?」 「ち、違う!そういう意味、じゃない…」 「わかってるよ。…俺に、ゲイだって知られたこと気にしてるのか?」 「…それも、あるけど」 「別に、気にしないって言ったろ?俺万人に惚れられるって思うほど、自意識過剰じゃないし。」 「…だから」 「……え?」 「…初めてだったんだよ、知って離れていくでも、同類として割りきった触れ合いを強要するでもなくて…今までと、同じように…接してくれて」 「……」 「…だから!言いたく...
  • 28-369
    手の甲に口付ける 「しょっぺぇ」  アイツはそういって口を拭いながら笑う。 「いや、当然だろ」  オレは別に汗かきというわけじゃないが、汗をかかないわけでもない。 「そもそも何で俺なんだよ」 「お前だからだよ」  相変わらずのアイツの謎理論にオレは盛大にため息をついてやる。  するとアイツの目がどことなく自信がなくなることをオレは知っている。  だがそんな風な目で見つめられても申し訳なくとかなんない、オレは。  それどころかもっとしおしおにさせたくなる。 「相手役もいるんだろ、なんで俺なんだ」 「さっきから言ってるじゃん……お前だからって」 「いや、だからその相手役と練習すればいいじゃん」  アイツは演劇部、学園祭で出店をすることもなくただ舞台の上で演じる男。  ちいわけでもでかいわ...
  • 26-569-1
    今日から両思い 「――今日から、両思いだね」 フ、と唇の端で気障な笑いをして、奴は手の中のグラスを揺らした。氷が涼し気な音を立てる。 窓の外の三日月と同じ形に細められた流し目から、俺は顔を背けた。 「言葉は正確に使え。お前の今の台詞は明らかに間違っている」 「え? ……え? うそ? 違うの!?」 裏返った声と、グラスが乱暴にテーブルに触れる音が絶妙な不調和を生む。騒々しい。 「だって! 俺さっきお前が好きだって言って、お前だって頷いてくれたのに!」 「声の大きさを考えろ。個室とは言えこの店は貸切ではない」 「あ、はい」  大げさに肩を落としてしょぼくれたような顔をしてみせる、その様に少しだけ苛立った。 「……やっと言えたのに」 小さな子供がいじけるように口を尖らせて呟く。声は少し震えているようだった。 「ずっとずっと好きで、やっと両思いだと思ったのに……」...
  • 16-569-1
    君が好きだ 雨がざぁざぁと降っていた。 僕はそれを教室の窓から憂鬱な眼差しで眺めている。 ――傘がない。 今朝は寝坊をして天気予報がチェック出来ていなかった。 朝、家を出るときには晴れていたから、まさか夕方になって急激に天気が悪くなるだなんて思ってもみなかった。 そうして大降りの雨を見ながら溜め息をついていると、後ろで教室のドアの開く音がした。 「どうして、まだ残っているの」 「あぁ、君か」 振り向けばそこにはクラスメートの鈴木がいた。 少し大人しいけれども明るくてとても良い奴だ。 僕はあまりクラスメートのことに興味など持ったりしない、所謂『変わった奴』だ。 そんな僕が何故彼の印象だけは覚えているかといえば、単純な話、彼に好意を持っているからだ。 他のただ馬鹿騒ぎをしているだけの奴らと違って、彼は明るいのに控えめで空気の読めるお人よしだ。 だから僕がクラ...
  • 16-069-1
    自分も気圧の知識がなかったwでも文章とかの雰囲気は好き!お次どうぞ 「お前、気象予報士にでもなんの?」 うるさい奴が来た。どう考えても人種が違うのに しつこく絡んでくるこいつとは、入学式で隣だったというだけの関係だ。 「考え中」 短く言って、僕は奴を視界から追い出し、 『石原良純のこんなに楽しい気象予報士 (小学館文庫)』に視線を戻す。 「はっ、おまえ、良純って」 「うるさい」 「――前は『小説家になる方法』読んでなかったか」 そうなのだ、こいつはことごとく嫌なタイミングで現われる。 その時は、本を開きながら書いていた散文を読まれたのだった。 「あれは……いいんだ、もう」 ため息をつきながら言うと、 「なんだ、お前の書く文章の雰囲気、好きだったのに」と奴は言った。 思わず奴を見る。目が合って、しまった、と思った。 畜生、不意打ちだ、こいつはことご...
  • 26-869-1
    狸×狐 「あっはは、また騙されてやがる。無様なやつめ。気分が良いなあ。うすのろをからかうのは気分が良い!」 俺の腹の上に跨がって、目尻をきゅ、と細め、口角を吊り上げケラケラ笑う奴の顔を見上げ、溜め息をつく。 襦袢の裾から飛び出た奴の尻尾がぱたぱたと動いて俺の太ももの辺りを着物越しに掠めるのがこそばゆい。 「いい加減どいてくれないか」 「嫌だね」 「なあ、ならせめて、俺の腕を膝で抑えるのはやめてくれよ、痺れてきた」 「ふうん」 そう言うやいなや、ぴしゃりと俺の手の甲を叩く。 指先が痺れる感覚に眉をしかめると、奴は一層ニンマリと笑った。 「な、僕は綺麗だったかい?まったく綺麗な女だったろ?お前はいつも、あんな風に女を口説くの?お前なんかに着いてくる女なんて、いるの?答えてみてよ、さあさあ」 言い淀んでいると、またぴしゃぴしゃと痺れた手を叩いてくるので、仕方なく口を開...
  • 19-169-1
    あなたの子供が欲しいのに 「貴仁義兄さん。いきなりですが、今日は折り入って義兄さんにご相談が」 「まあ茶飲めや。しかしお前が俺に相談なんて珍しいなあ」 「あなたのお子さんを俺に下さい」 無情にも彼の率直な願いは、彼の義理の兄によるアッパーフックではね除けられた。 「義雄よ、俺は残念だよ。非常に残念だ」 「クッ……義兄さん、危うく脳震盪起こしかけるほど見事な攻撃でした……」 「誉めんなよ。照れんだろ?」 「誉めて無いですよ!」 「で、なんの話だったっけか」 「だからあなたの子供が欲しいからおくれって話……や、ちょっ構えを取らないで構え」 「ああ、スマンいつもの癖でイラッと来るとつい。……えっと何?お前ってホモだったの?」 「ええ。姉は知ってますよ。ちなみに俺の初恋兼恋人は義兄さんの同僚の義純さんです」 「マジでっ!?あ、あーでも確かにアイツボディ...
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