*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「8-139」で検索した結果

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  • 8-139
    永遠より永い一瞬。 「こっ…のボケ!!なにやってんだよあぶねぇじゃねえか!!」 「あー…ほんとやばかったねー…」 「やばかったねー…じゃねえよッ!!死ぬとこだったんだぞお前!」 「うん。もう走馬灯のように俺の一生がよぎった」 「てめ…っなにを呑気に…!」 「俺の一生全部お前の映像ばっか。俺ってお前しか見てなかったのなー」 「な…」 「あの瞬間ってちょー短いけどすげえお前ばっかり」 「…」 「へへ…あれだけお前見ながら死ねたら本望かな」 「ふざけんなボケ!死ぬなら俺に尽して尽して尽しまくって一生を全うしてから死にやがれ! 見るだけなんて許さねえッ!」 「…それって普通の老衰だよね?」 「…………てめえの突っ込み所はそこかボケナス…!」 この手を離したくない
  • 2-139
    熟年夫婦 大恋愛の末、いくつもの困難を乗り越えて一緒になった攻めと受け。 時代的にも男同士というのは世間の目が厳しかった。それでも二人で暮らした。毎日愛し合った。 ……そんな日々も今は昔。 かつての熱情は消え、今ではもう、受けにとって攻めは空気のような存在。 隣にいればいい、そう受けは思っていたし、攻めもきっと考えているんだろうと確信している。 相手のことは手に取るように分かってしまう。それだけの時間を共に生きてきた。 今更愛の再確認なんて気恥ずかしいし、かえって白けそうだった。 それでも知り合った日には、毎年ケーキを食べることが習慣になっていた。だから今年も用意している。 攻めはいつからか、その日を忘れるようになっていた。最近では受けが用意するケーキを見て思い出す始末。 それが少々気に入らない受けだった。自分だけ未だに思い出を引き摺って...
  • 4-139
    カードゲーム カードゲームというとポーカーがまず思い浮かぶね。 ババ抜きとか七並べしか知らないが萌えてみる。 ポーカーといえばギャンブル。そしてポーカーフェイス。 ヌッポンでは非合法ゆえにちょいと場末の秘密カジノあたりに設定。入り浸っている身を持ち崩したギャンブラー。 いつものように一人で遊んでいると、初顔の兄ちゃんがやってくるわけだ。 これが、どこの素人が間違ってきたんだというド下手。いい手悪い手モロ顔出し。賭けるお金も最低ランク。 くるカードごとにニコニコしたり顔に斜線を入れてみたり。 でもビギナーズラックかディーラーが情けをかけているのか、そう悪い成績ではない。 それに気を良くしたのか、ギャンブラーの座る高額台に来る。当然隣に。 おいおい身の程を知れよと内心思うギャンブラーを尻目に、素人は当然のように負け続ける。 見かねて安い台に移れと忠告...
  • 9-139
    慟哭 世界で一番大切な人を失った時、初めて声をあげて泣いた。 あの時抱き締めてくれた腕があったから、 僕は今、あなたと生きているんだと思う。 慟哭
  • 7-139
    わがままだけど常識人の「天才」×優しいけれど常識が身についていない「秀才」 初めて会ったときの笑顔が今でも忘れられない。 「ずっとずっと、あなたにお会いする事を夢見ていたんです!」 飛びつくように私の両手を握って、私の目を一心不乱に覗き込んで、そう言った。 私はそれまでこんなに無遠慮な笑顔がこの世に存在する事を知らなかった。 それは何か、向けられたこちらの方が不安に陥るような…そこまで無防備に親愛を、感情を さらけ出して大丈夫だろうかと戸惑いを覚えるような、そんな笑顔だった。 …ましてやその後、その笑顔が常に私の最も身近にあるようになるとは想像もしなかった。 私は頑固で気難しく扱い辛い偏屈研究者として有名だったが、私に言わせれば周囲の連中が あまりにも察しが悪く不勉強で使えない、お気楽者な烏合の衆だというだけの話だった。 しかしあの男はあらゆる意味で他...
  • 5-139
    保護者×被保護者(血縁じゃなく) 「はい、よくできました。お前は優秀だね」 「……あまり子供扱いしないでください」 「子供扱いなどしていないさ。褒め言葉は素直に受け取るものだ」 「……分かりました。努力します」 「うむ。そういう素直なところも素晴らしいな」 「そんなに乱暴に頭をなでないでください。というかやっぱり子供扱い しています」 「していないよ。ただお前を可愛いと思っているだけだ」 「男に対する可愛いは褒め言葉ではありません」 「おや、私は最大の賛辞を贈ったつもりだがな。大体お前が可愛いのは 事実なのだから仕方がないだろう。……初めて逢ったとき、どこのお姫様 が現れたのかと思ったぞ」 「今の日本は王位制ではありません」 「物の例えだ。……しかし、お前と逢ってから今日で丁度1年だな。雪の 中、薄手のコート一枚をブレザーの上に羽織って、大きなトランク...
  • 6-139
    入学式で あの日のことは、今でもよく覚えている。 桜が満開で、空が青く澄んでいて、本当に、よくできたドラマのような、きれいな一日だった。 母さんと並んで校門をくぐり、中学の頃の友達を見つけては、新しい制服の感想の言い合いをして。 親と別れてクラス発表の掲示に一喜一憂し、体育館で担任の先生からその日の予定を聞かされる。 そして僕はその日、運命のひとに出会った。 入学式を終えて教室に行って、僕は、同じクラスになった友達と昨日見たテレビ番組の ことなんかを話して過ごしていた。 ときどき声を潜めて、教室内のかわいい女の子について論議しあったりもしながら。 会話が一旦途切れたところで、僕は何気なく辺りを見渡した。 僕たちと同じように、昔なじみでグループになってはしゃいでいる連中と、もしくはそのどこにも 入れずに、ひとりでぼんやりとしている数人の生徒。 ...
  • 3-139
    青春の汗と涙 『若葉薫くん』 アナウンス係が、また、場違いなくらい少女漫画じみた名前を読み上げた。 と同時にバッターボックスに入ってきた小柄な男。なるほど、見た目もどこか 少女漫画を彷彿とさせる、整った顔だ。俺は何度目かになる感想を、もう一度 抱いた。 夏の甲子園予選、準決勝。俺たちの学校と、その学校の力は拮抗していて、 七回まではどちらも無得点。八回表でウチが一点、裏で向こうが二点入れ、九回 表でまた、ウチが二点入れた。 そしていま、九回裏。若葉薫とやらは、体格に見合わぬ痛烈なバッティングで セカンドゴロを決め、俺が守るファーストに飛び込んできた。 闘志に満ちた、獣のような目に、何故か俺は胸が高鳴った。 ツーアウト。 若葉がファーストに出たものの、向こうの攻撃は止まったままだ。当然 だが、こちらとて必死だ。ウチのキャプテン、兼エースピチャーであり...
  • 1-139
    ルーズリーフ×ファイル ファイルは云わば、ルーズリーフたちの大家のような存在。 日々、新しいルーズリーフ達がファイルの元へ集まる。 それぞれ違う仕事をかかえ、(ex国語/数学、専門/一般教養etc)、 個性あふれる性格をもつ彼らをまとめ、温かく見守るファイル。 しかし、そんな穏やかな生活は、長くは続かない・・・ ルーズリーフたちはいつかはファイルの元を去らねばならないのだ。 或いは試験、或いは進級 節目節目で己の役目を果たし、ゴミとして捨てられゆくルーズリーフ。 「待って下さい!あいつらは、、、あいつらは  ちゃんとそれぞれ、素晴らしいものを持っているんです!  (=ノートとして色々書かれてる)  用が済んだからって、捨てるなんて・・・!!」 「やめてくださいよ、ファイルさん。  所詮俺達は、使い捨てのコマですから。  いいんです。 ...
  • 13-139
    やらずの雨 ふたりで飲むのがよかった。 金はないからもっぱらお互いの家で、買ってきた総菜と菓子、発泡酒、焼酎。 つけっぱなしのテレビをBGMに、ダラダラ過ごす。 学科もバイトも出身県も同じで気が合う奴。 そんな相手に会えたことだけでも、この大学に来た甲斐があったというものだ。 あっちも同じように思っている。確信とかでなく、ごく当たり前のこととしてわかる。 ぶっちゃけ、こいつがいれば他には誰もいらない。そういう相手。 でもちょっと仲良くなりすぎたかもしれない。 「結構もててるみたいよ、おまえ」 そんな台詞で同じ講義のナントカちゃんの話なんかされても困る。なぜか困る。 それなのに妙にしつこく絡まれて、嬉しいか、なんて言われて、たまらずウゼェ、と呟いたのを聞きとがめられた。 「何、それ。なんで怒るわけ」 初めて暗い感じの喧嘩になった。 仲良くなりすぎた。女...
  • 11-139
    バカ二人 「あのな、恋人へのして欲しい服装のお願いで、ダボダボTシャツとか上だけ パジャマとか裸エプロンとか百歩譲ってネコミミミニスカニーソとかなら まだ理解できるんだ」 「うん。っていうかお前の趣味嗜好も結構マニアックだよな」 「お前、男のロマンを舐めんなよ!まあとりあえずそういう一般的なものを全て すっ飛ばして、何でいきなり『マワシをつけろ』なんだよ」 「…着物ってさ」 「あ?」 「あれ実は帯は腰周りを二周位しかしてないんだってな」 「ん?ああ、そういやそうだよな」 「それだと俺の夢の『よいではないかよいではないか』『あ~れ~お代官様~』が 出来ない事に気が付いた!」 「そんな夢は捨ててしまえ!」 「しかしマワシならばあの厚さから見て回すのに申し分ないはずだ!という訳でさあ早速… って何検索してるんだ?」 「マワシの締め方締め方…お、あったあった。...
  • 24-139
    ライバル同士 あーイライラする。なんなんだお前。 今日は俺が一人で所長から褒められるはずだったんだ。 半年前からずっと頑張って売上一位を独占して来て ようやくご褒美にって所長が飲みに誘ってくれたんだぞ。 それをお前……。ずっと最下位うろうろしてて 報奨が出るって分かったら同率一位とか。 あぁ知ってたさ。絶対お前の方が実力は上だって知ってた。 『目立ちたくないし』とかスカしたこと言って手を抜いてただろ。 昼行燈とか言って侮ってる奴らも居るが、お前がすげぇのは俺、知ってるんだ。 セールストークも上手いし服装は洗練されてるし 第一笑顔が爽やかすぎるじゃねーか。どこの映画俳優だよ。 ニヤニヤしてんじゃねーよ。 そうだよ。俺が営業成績上げるのは金の為じゃねぇよ。 所長を喜ばせたいからだよ。 俺は幼稚園の時に親父を亡くしたから、想い出ってそんな無いんだよ。 ...
  • 21-139
    ヤンキー君とメガネ君 「おいこら」 「僕の名前はおいでもこらでもありません」 「ちっ…な「あああ!顔!ほっぺケガしてるじゃんバカ!なんで早く言わないの、ほら手当てするからこっち座って」 「言おうとしたらおまえが名前どーこー言いだしたんだろうが」 「もー、またケンカ?いいかげんにしてよね」 「安心しろ。俺様が負った傷はふいうちのこの一発だけで相手は今ごろ病院だ」 「そういう問題じゃないでしょ。毎回毎回手当てするこっちの身にもなってよ」 「へいへい。どうもすいませんでしたね、毎度お勉強の邪魔しちゃって」 「…だから、そういうことじゃないって言ってんだろー!」 「…っ!いいいいってぇ!おまえ、腕」 「ちょっとつついただけでもそんな痛いんだろ?折れてるよそれ。ほら病院行くよ。さすがに骨折の手当てはできないからね」 「ちっ黒ぶちメガネはなんでもお見通しかよ」 「何年...
  • 25-139
    軽薄色男受けが本気になる瞬間 軽薄色男受けにも種類がありますよね 1:ビッチ受け  今まで快楽のためにとか、金のためにとかで気安く通りすがりの男と関係を結ぶ受け  そんなビッチ受けがある日、真実の愛に目覚めちゃうわけですよ!  その辺の男に対しては気軽に体を開いていたのに、本命攻めに対しては処女のようにウブになってしまう受けはもはや様式美ですよね 2:軟派受け  美男子で賢くて運動神経も良い受け。当然周りの女の子達が放おっておくわけがありませんよね  周りからキャーキャー言われてヘラヘラする受け  女の子をつまみ食いするもよし、ヘラヘラしているけれども誰とも付き合わないってのもいいですよね  で、モブとか当て馬から  「あんなに可愛い子達がいるのに、何で誰とも付き合わないんだよ」  とか言われちゃうわけですよね   可愛い女の子達に本気になれない受けが...
  • 17-139
    禁断の恋に走る者と愛より安定を選んだ者 「骨を拾ってくれないか」 口吻の合間にふと思い付いたので呟くと、どうでも良さそうに私の唇を吸っていた男は 瞳にほんの少し面白がる色を浮かばせた。 「断るよ。しゃぶり尽くされた骨に興味は無い」 にやりと口端を持ち上げた表情は美しいのに、返答はにべも無い。 しかし、男が私のシャツを脱がせる手付きはいつもより滑らかなものになった。 彼は優しいのだ、私と違って。 「誰もしゃぶってくれやしないさ。腐ってだらしなく溶けるんだ」 「なら、尚更要らないね。犬の餌にでもなればいい」 「それは犬が可哀想だろう」 取り留めもない言葉を連ねている内に上半身を裸に剥かれる。 あちこち傷だらけの肌は愛しい人にも見せられないほどみっともないが、 男は気にせず掌を這わせる。 綺麗な手だ。彼は神が芸術の極みを求め造りたもうた作品だと言われたら、 ...
  • 14-139
    守られてたのは俺だった 教室で突然、 「お前らってまるで付き合ってるみたいだよな。仲やたら良いし」 と言われた時は、心臓が止まるかと思うほど驚いた。 思わず『なに言い当ててんだよ!?』という心の声が、 口から滑り出すところだった。 ここは男の見せ所(いや、あいつも男だけど・・・)とばかりに 「そんな訳あるか!男同士で付き合うなんてありえねぇし!」 とすぐに言い返したが、若干声が裏返ってたような気がしないでもない。 でも俺がここは守りきらないと!あいつは学年一の秀才で通ってる優等生だし、 ホモ疑惑なんて消しとくに限る。 動揺しながらも更に否定の言葉を続けようとしたその時・・・ 「照れるなって。おれら相思相愛じゃんか」 突然あいつが口走った。何言っちゃってんのお前!?? 男が男好きとか、そう簡単にカミングアウトしていい事じゃないだろうが! もっと繊細な...
  • 20-139
    いたらいたでうざいけど、いなきゃいないで寂しい 明日の時間、あいつまた忘れてるだろう。 電話してやろうかな。どうせ直前になって「何時からでしたっけ……」なんて情けない声でかけてくるんだろう。 そういう甘やかしがあいつを作った、という自覚はある。 近所で幼なじみの腐れ縁、小学校の便所の世話から面倒見続けて中高、会社も同じになって、 彼女ができたら愚痴もデートも親への挨拶まで相談に乗って、どうにか式まで持ち込んだと安心したら 当日寝坊しやがった。 なんで俺がお前を礼服着て迎えに行かにゃならん。なんで一緒に新婦親に頭を下げんとならん。 お前の周りは俺のことをお前の世話係だと思ってる。 おかしい、と思う隙あらばこそ、もうそれが当たり前となっていた自分が恨めしい。 天才、というか紙一重なお前だから当然美智子さんはしょっちゅう怒って実家に帰る。 それを連れ戻しに行かせる、つ...
  • 16-139
    つ まとめBBSのチラシの裏 ソムリエスレのコピペ マンション一階の郵便受けを覗いたら見慣れたDMに混ざってチラシが入っていた。 近所のスーパーの安売りチラシ。 黄色いざらざらする紙は片面刷りで、裏には鉛筆で文字が書かれている。 【ゆーきくんがだいすきです。  おおきくなったらおれのおよめさんになってください。】 俺の名前はユウキだけれど平仮名の手紙を貰う覚えはない。 差出人の名を探したけれど、どこにも書かれてはいなかった。 「ゆーきくん、か……」 まだ俺が高校生だったとき、俺の名を優しく呼んでくれた人がいた。 近所に住んでいた松本さんを俺は愛していた。 松本さんは奥さんを早くに亡くされて、まだ二つの息子さん、あきらくんと二人暮らしだった。 その時の俺はとにかく夢中で松本さん以外は何も目に入らなかった。 だから近所や親が俺と松本さんの仲を疑ってるのに気づけな...
  • 15-139
    思い詰めて気が狂いそう 「どこに行くの?」 玄関で靴を履きかけていた俺は、体を強張らせた。 部屋で執筆をしていたはずの彼がいつの間にか俺の背後にいた。 「どこに行こうとしてたの? 僕に黙って」 こういう時の彼の様子は鬼気迫るものがある。 俺は無理やり笑顔を作って説明した。 「……料理の本を見ていたら作りたくなったレシピがあったんだ。 足りないものを買いに行こうと思って。それだけだよ」 「冷蔵庫にあるもので作ればいいじゃない。聡の作るものなら 僕はなんでもいいから」 その言葉は嘘じゃないのはわかっている。 この間はストレスのたまった俺が作った 火の通っていない固いパスタを文句も言わずに食べていた。 作家としての彼は世間で名が知られていて、印税でしばらく生活できるだけの財力がある。 俺は彼の秘書だ。 愛想がなく営業成績の...
  • 19-139
    好きな人に似た人 「そういえば大野が全然知らないヤツのことまさきと勘違いして話しかけようとしてたよ。俺が止めてなかったら確実話しかけてた。」 「またかよ!!さっきはるとにも「昨日理学部キャンパスいたよな?」って言われたんだけど。行くわけねーじゃん俺法学部よ。」 「マジでお前に似てる人多いんな。」 「毎日のように「まさきに似てるやついた。」とか「昨日○○で見た。」とか言われる。」 「いいじゃん。変なこと目撃されても「それちげーやつだよ。」っつっとけばお前の場合通じるし。」 「いや別にそこ嬉しくないでしょ。俺ってそんなどこにでもいそうな顔してんの?」 「そうなんじゃないの?」 「マジかよー。俺にも個性ってモンあるでしょーよ。みんなもっと俺を見ろ!そして気付け!!!」 「個性ねぇ…。」 「あ、でもそういえば」 「何。」 「お前は間違えな...
  • 9-139-1
    慟哭 「どうして…どうして君がっ」 血塗れの俺を見てやっと理解したのか、奴が叫んだ。 回りには奴の仲間の死体が転がっている。 「…それが、俺の任務だからだ」 俺は奴を正面から見据えた。 こんな小さなレジスタンス組織に何ができるというのか。 国お抱えの暗殺者が紛れ込んでも気付かないような間抜けな組織に、何が。 「お前を殺して、任務完了だ」 深い海の色をした瞳が。悲しみと憎悪を湛えて、俺を見詰め返してきた。 「…君の事、大好きだったよ」 奴が口を開くのと同時に、右腕が一瞬ブレて。 血を流して地面に倒れたのは俺のほうだった。 …虫も殺せない奴だと思ってたんだが、とんだ検討違いだ。 頬に熱い雫がポタポタと落ちてくる。 バカ、自分でやったくせに泣いてんじゃねぇよ。 奴が叫んでいる名前が、俺ではなく俺が殺した誰かの名前だったのが ひどく残念だ...
  • 9-139-2
    慟哭 最低の人だった。 俺のことは、商品としてしか見ていなくて。 「どうしたらあなたがもっと輝くか」とか歯の浮くようなことを、毎日毎日考えて。 俺のために身を粉にして営業して、仕事をひとつでも多く取ってきて。 いい大学出ているのに、中卒の俺の言うなりになって、頭下げて。 俺が仕事が多いからと機嫌を悪くすれば、何時間でも俺のワガママにつきあって。 俺が寝ている間も、経費削減とか言って、衣装をアレンジするのに徹夜したりして。 ラジオの時間姿が見えないと思ったら、車の中で聴衆者のふりして応援メール送ったりして。 「売れないアイドル」だった俺を、「世界一のアイドル」にすると息巻いていた人だった。 「俺のどこが好き?」と聞くと「全部」と言うくせに、俺の仕事しか見ていなかった。 「俺を俺自身として見てよ」というワガママに、いつも困っていた。 俺のワガママで、彼女と...
  • 19-139-1
    好きな人に似た人 「そういえばさー」 ようやく書き終わったレポートやその他諸々をバッグに入れて席を立とうとしたとき、 向かい側に座っていた雪也が口を開いた。 「ここのところ、先輩に似た人をよく見かけるんだよね」 『マックにでも寄って帰るか。レポートの面倒みてもらったし、今日は奢ってやるよ』 そう声をかけるつもりでいた俺は、不意をつかれて眉を寄せた。 「なんだよ、急に」 「最近、近藤先輩に似た人を見かけるって話」 雪也から『近藤先輩』の名前を聞くのは久しぶりだった。 久しぶりと言っても、雪也がその名前を口にすることを避けていたわけではない。 単に、俺が聞くのを避けていただけだ。 「……先輩に似た人?なんだそりゃ」 「なにって、まんまだよ。先輩によく似た人」 あの先輩のことを話す雪也はいつも嬉しそうで楽しそうで、俺はその度に複雑な気持ちになっていた。 今も...
  • 21-139-1
    ヤンキー君とメガネ君 屋上に来たのは初めてだった。 「げっ風紀??、何で」 多分彼、沢良(さわら)が壁際の死角にでも座り込んでいて、そういう事をしてるだろうと 今まで殆ど接触も無かった僕にすら想像出来る形で、やっぱり彼はそれをしていた。 「未成年の煙草は厳禁+校則違反レベル10因って」 「消す消す消す!ってか、何で品行方正なお前がこんな所いる訳?」 「今のは見なかった事にする・・・今そんな気分じゃないから」 溜息を吐きながら当初の目的だった彼に近づいた。 彼女のあんな告白を聞きさえしなければ、僕はこうして正反対のタイプの彼に会いに来る事なんて無かっただろう。 初めての屋上で感じる風はかなり冷たく、頭を冷やすには丁度良い場所だった。 「ふうん、じゃあまあ美味い空気でも吸っていけよ」 どこが美味い空気なんだか。沢良の周りは咽返るような煙草の匂いで充満している。 ...
  • 25-139-1
    軽薄色男受けが本気になる瞬間 トロトロ書いてたら被ったのでこっちで萌え語りさせて下さい 恋愛的な意味や性的な意味で本気になる軽薄受けも萌えますが 個人的には戦闘的な意味で本気になる受けを推したいと思います 軽薄で色男、きっと情報を仕入れたり助っ人にするには重宝するけど 一生背中を預ける相棒としては心もとない微妙な存在なのでしょう そしてそういう性格になったのにも暗い過去やらトラウマやらがあるのでしょう そんなめんどくさい受が本気になる程惚れるまで攻は相当苦労したと思います 「そいつは止めとけ」と周りに反対され、実際に何度か受けに裏切られ それでも受けを信じ背中を支え預ける事の出来る男前な攻めさん そんな攻が瀕死のピンチになり逃げる事も出来ない絶体絶命の時こそ受けが本気を出すのです 明らかに格上の敵に囲まれ、攻めに「僕なんか置いて逃げろ!」と言われ それ...
  • 17-139-1
    禁断の恋に走る者と愛より安定を選んだ者 勇者と村の司祭でどーぞ 「本当に行ってしまうのか」 「ああ、俺を待っている人が居る」 「行くなよ、この村にいてくれよ」 「すまない。俺が勇者である限り、俺は自分の運命に従う義務がある」 「お姫様か」 「ああ。魔王に囚われた姫君が、俺の助けを待っている」 「姫を助ければ、お前は間違いなく勇者から王子様へジョブチェンジだな」 「ああ。この運命からも解放される」 「その先に待っているのは輝かしい未来だな」 「そうだな。飢えも寒さもない、一生を保障された生活だ」 「そこに愛はないのか」 「えっ」 「見たこともない姫を愛しているという訳でもあるまいに」 「しかし運命から解放されるためだ、致し方あるまい」 「そうか、わかった。気を付けて行って来い」 「ああ。ところでお前はどうするんだ」 「この村で生活するさ」 ...
  • 12.5-139
    深爪 「…あっ!痛っ」 またやってしまった。 「気をつけろって言ってるだろ。ばか」 「ごめんごめん」 離れてしまった細くて長い指に再び触れる。 「今度は丁寧にするから」 もう一度ごめんと呟いて傷つけた指を口に含むと、君は真っ赤になった。 君は爪の手入れすら面倒臭がるからせっかくの綺麗な手が台無しだ。 清潔にしておくために短くしろよ、と言ったのが始まりで爪切りは僕の仕事になった。 いつも切りすぎて怒られる。 君は知らないだろう?伸びた爪が僕の背中に傷跡を残していると。 君は知らないだろう。爪痕を見るたび僕の心が痛むことを。 今日も僕は君の爪を切る。もう君が僕の背中に過去を刻まぬように。 むしろ僕が君に跡を残せるように。 「何笑ってんだよ。気持ち悪いな。早く切るなら切れよ…痛い!」 「ごめんってば」 「わざとかよ」 うん。わざと。 ...
  • 21-139-3
    ヤンキー君とメガネ君 「わりぃな。すぐ返すから」 嫌がるメガネ君の懐から無理やり財布を抜き取り、金を抜く。 返した事は一度もなかった。アイツはいつも何も言わずに泣いていた。男のくせに。  *** 「またメガネ君から金とったのかよ。悪い奴だね」 ギャハハと笑って煙草の火をつけながら東が言った。 「だってアイツうぜえし。金もってるし」 俺の手にはビール。堂々制服です。はい。 「メガネ君、家に金なんかねーだろ」 「んな訳ねーだろ。現に持ってるぜ」 「いや、その金ってさあ…」 東が何か言いたそうにしていたが、 道路の向こう側に先公が見えたので俺はすぐに立ち上がった。 「こら!お前ら!」 「うわっ、北野だ!やべっ!」 逃げようとしたが、東は悠然と座って俺をひきとめた。 「平気、平気。北野センセエお疲れ様でーす」 ニヤニヤしながら東は手に持った携帯を北野に振...
  • 21-139-2
    ヤンキー君とメガネ君 「ァンダマェ! ォンクアンノカゥラァ!」 「え、何? 僕? 僕に向かって言ってるの? うわ、目があっちゃった……参ったなぁ……」 「オゥ! ガンツケトンノカワレァ! ァニミトンジャコラァ!」 「おいおい、僕は何もしてないよ……ほーら、僕は君のことなんか見てません」 「ァニツッタッテンダコラァ! サッサトムコウイケヤッテンダォラァ!」 「はーいはいはい、大丈夫、見てないからね……っしゃ、捕まえた!」 「ウッコラキサッ……ッニシヤガルンダハナセ! ハナセッテイッテンダロガゴラァ! ナメトンノカ!」 「おーよしよし、大丈夫だからね……あー……やっぱり怪我してる、けんかしたのかな」 「タッ、タッ……ッテェーヨサワンナボケェ! テメェニハカンケーネーヨ!」 「泥が入り込んでる洗わなきゃだめだよ、よしよし」 「ッテェー! ツメテッ! ヤメ! コノ!」...
  • 8-159
    2人で一人前 「あんたなら、俺を“いかせる”と思ったんだよ」 「生命が惜しくないのか?」と問う俺に、 あいつはいつもそう言って笑ってかえす。 誰よりも速く、誰よりもワイルドに、誰よりも魅力的に、 風になる様に走らせたいが為に、俺が出す指示は危険極まりない。 本来コパイとしては許されない、ありえない奴だ。俺は。 分かっちゃいるのに、自分では走れない、このマシンを走らせることができない。 そんなドライブテクニックは俺には与えられなかった。 だからコパイの道を選んだ。些かの葛藤と、仄暗い感情と共に。 “ドライバー殺し”と言われる俺と組みたいという酔狂な奴。 絶妙なテクニックを持ちながら、勝てない男。 何で俺にはない技術を持ちながら、お前は今まで走れなかったのか。 その力が俺にあったなら、俺は風を見られただろう。 そんな嫉妬と葛藤に対し、奴は笑...
  • 8-149
    この手を離したくない ふわりと広がる薄茶色の髪に手を伸ばす。 柔らかな感触を甲に触れさせながら、金鎖に絡まる細い髪を丁寧に解いていく。 くすぐったさに震えている彼女の細い肩と白いうなじ。 その儚げな風情が思い出させるのは、彼女とは好対照に力強い生命力の塊のようなアイツ。 昔、肩を組んだ時に当たった硬い髪は、チクチクと腕を刺して痛痒かった。 でも、その刺激ですらも愛おしかった。 そして、中学に入学する頃にはこのまま二人でいたいと望むようになっていた。 だから、この手を離した。離すしか、なかった。 考え込んでいた間も休ませることなく動かしていた手が捕われた髪を解放する。 「外れたぞ」 「ありがとう。お兄ちゃん」 彼女が軽く会釈をしながら礼を言う。大人びた従妹が見せる笑顔が眩しい。 俺が彼女のように柔らかな少女だったなら、アイツか...
  • 8-119
    ビール×焼酎 俺よりずっと酒に弱いはずなのに、お前の手には氷の浮かんだ焼酎のグラス 俺はビールの泡を舐めながら、ほんのり色づくお前の横顔を、特等席で鑑賞する。 酒が入ると雄弁になり、涙もろくなり、しまいにはぶつぶつ文句を言いながら寝てしまうお前。 お前の身体に触れることができるのは、お前が酔った時だけだ。 徐々に減るグラスの中身と、酔いで虚ろなお前の瞳。 交互に眺めているうちに、ビールの気が抜けていく。 受けにデレデレドS攻め×ホントはベタ惚れ流し受け
  • 8-129
    受けにデレデレドS攻め×ホントはベタ惚れ流し受け 癒えはじめた傷を、もう一度、抉る。 決して癒えることのないように、何度も何度も繰り返し、 癒えはじめるたびに優しく抉る。僕の指先が、君の薄赤い血に染まる。 「よく、飽きないね」 傷つけるときにも、君は泣いてくれない。 ひどく冷たい目をして、血が流れる様を眺めるだけ。 泣いて欲しい、と思う僕の愚かさを君は僕に突きつける。 「……、そうだね、何度やっても飽きない」 「僕は飽きたよ。いつもいつも、同じところにだけ」 いつだって変わらずに、傷は君の躯にあり続ける。 君の躯の一番綺麗なところにあり続ける。 「だって、……」 僕が君の躯の一部分にこだわることを、きっと君は喜ばないだろう。 だから言いたくない。 君を傷つけることを少しもためらわないくせに、 自分が傷つくこと...
  • 8-109
    再試合 告白をした。 俗に言う『酒の勢い』ってヤツだ。俺もアイツもしこたま飲んで、べろんべろんに酔っ払って。 テーブルの上に片頬くっつけて、意味も無くケタケタ笑いながら他愛もない話をしていた時、出し抜けに俺は言った。 「なぁ、俺、お前のこと好きだぜぇ」 「おー、俺も俺も」 アイツは、やたらデカい声で答えた。 それで、俺は何か、酔いが醒めてしまって。 慌てて身を起こしてみれば、アイツは、早くも寝こけていて。 俺は呆然と、その寝顔を見ていた。 「……何やってんだ俺」 これじゃ、まるで無効試合じゃねーか。 情けないやら虚しいやら切ないやらで、もう一度テーブルに頬をくっつける。 目の前には想い人。 さっきの言葉を、聞いていたのかいないのか。 ……まぁ、とりあえず。 「……酒やめよ」 いつかくるかもしれない『再試合』を...
  • 8-199
    新学期 例えば小学校。 夏休みプールに通いつめて真っ黒になってた元気っ子 「おまえ何やってたんだよー?真っ白じゃん?」 内気インドア少年の腕を、幼いながらも逞しさを感じさせる手で引っ張って並べてみる どき、っと胸が鳴ったのは元気っ子なのか、インドア少年なのか 理由はその色のコントラストに驚いただけなのか 例えば中学校。 休み中も毎日みたいに部活で顔を合わせてたのに ジャージじゃない久しぶりの制服姿が何故か眩しくて そして背が伸びてたことに気が付いて 嬉しいヤツと、悔しいヤツ 「おめー、ずりぃ!」なんて八つ当たり 「大きくなれよ」と得意気な顔してグシャグシャと髪を撫でたり 例えば高校。 明らかに大人の階段を上がった彼 休み中のあんなことやこんなことを思い出して、にやけてたり赤面してる 教師ぶった表情を繕って教室に入って来た恋人が 自分を...
  • 8-189
    かぶとむしとくわがた かぶとむしといえば、昆虫の王様です 大きくて逞しくてとてもかっこいいですね 一方のくわがた もちろん、ノコギリクワガタのように大きくて立派なくわがたもいますが コクワガタのように小さくてかわいらしい子もいるわけです いつもどちらが強いか争うかぶとむしとノコギリ その理由がコクワガタの「僕のためにケンカはやめて!」とかだったら… そんな三角関係を想像しつつ、とりあえず木の幹に蜜を仕込みつつ鑑賞 新学期
  • 8-179
    ウォシュレット ウォシュレット付きトイレ。 「…おぉ…コレが噂のッ…!!」 たかが便器如きで思わず膝をつき観察する俺。 貧乏人な俺とはえらい違いだ。 「いまどき珍しくないっつーに」 「いーやッ、珍しいね! 一般家庭でこんなんがあるだなんて、ましてやお前、学生一人暮らしだろ!?」 お前は呆れながら無視。だけど俺はなんだか用を足してしまうのが勿体無くて、 便座くらい自分で上げろっつのなんて思いながら、便座をリモコンで上下させつつ遊んでいた。 「お、ウォシュレットボタンだ。押してみよ…」 俺は遂に床に座り込み、リモコンのボタンを押す。 ピッと機械音がして、便器の奥から細長い棒が出てきた。 なんだかこの時点で軽く感動。たかがケツ洗う道具に。 そして次の瞬間、先っぽから水が びしゃーッ! 「ぬおおおおおおッ!?」 水が、真上に飛び散りだした。...
  • 8-169
    花火大会 「花火は真下で見るのが一番きれいなんだぜ」 とお前は笑って言った。音も凄いし、火の粉も飛んできて大変だけど、 それでも真下が一番だと。 渋る俺の袖を引っ張り、火付け職人さんに挨拶し、自分の父親に俺を紹介する。 打ち上げが始まる、と聞いたお前はいきなりシャツを脱いだ。 心臓の音がうるさいのは花火のせいだ。 印半纏のお前がまぶしいのも花火のせいだ。 「なっ、キレーだろ!!」と俺を振り返って笑うお前を見て、 俺は花火大会なんかに来たことを後悔した。 ウォシュレット
  • 18-179-1
    冗談っぽく「好きなやついる?」と聞いたら真顔でうなずかれたorz 179 名前:相談したい名無しさん[sage] 投稿日:2010/01/14(木) 01 51 55 ID QSlQ0VRmO 冗談っぽく「好きなやついる?」と聞いたら真顔でうなずかれたorz 180 名前:相談したい名無しさん[sage] 投稿日:2010/01/14(木) 01 55 04 ID Gtr5sd23O kwsk 181 名前:相談したい名無しさん[sage] 投稿日:2010/01/14(木) 01 57 13 ID QSlQ0VRmO こんな時間にごめんな、飲み会の帰りなんだけど、その飲み会の席で言われた 真顔だぜ真顔、俺も真顔で「うん…、上手くいったら紹介しろよ」とかどもっちゃったよ スペックは当方フツメン、向こうイケメン。 182 名前:相談したい名無...
  • 8-199-1
    新学期 夏休みは終わった。 久しぶりの教室、俺の席……に、何故かすでに机に顔を伏せて寝ている奴がいる。 「どけ」 椅子を蹴ると、そいつはごろんとうつろな顔をこっちに向けた。 「おー……てっつん、おはよ。」 移動するどころか起き上がるそぶりすら見せないそいつを椅子ごと押しのけ、 代わりにまだ登校していない隣の奴の椅子を持ってきて、俺は席についた。 それでもそいつはまとわりつくように俺に倒れかかってきて、俺はそれを払いのける。 休み前と全く変わらない日常の光景だ。 「おれさぁ、けっきょく昨日もアレでさー、寝てねーんだよ。ねっむー。」 「アホか」 「……あ、てっつんはどうなった?」 「まだ。この前のあそこ」 「あー、あれは意外とヤバいよねー。」 「そういえばお前、この前言ってたアレ何なんだよ。どう見ても……」 「えー?ウソ違うって!何言ってんの!!絶対まじ...
  • 18-149
    寺、教会、神社の息子で三すくみ 「巫女服着ろよ。そんでそのままヤろう」 和装の青年はうんざりしたように竹箒の柄を振り上げると、少年の頭へ振り下ろした。 「仮にも寺の次代なら言葉を慎みなさい」 「比叡山が男色の総本山って知ってるだろ、お前。俺は歴史を受け継いでだな…」 「受け継いだ時点で貴方が末代です。歴史も何もあったものですか」 ぴしゃりと言い捨てると、やいのやいの言っている少年を微笑ましそうに見つめる金髪の 青年を見遣った。 金髪の青年はその視線に気づくと、ひらひらと手を振って寄越す。 咄嗟に振り返そうとしてしまい、慌てて竹箒を握り締めた。 「主は仰いました。”隣人を愛せよ”」 金髪の青年は、騒がしい少年をねっとりと愛おしそうに見つめる。 少年はうざったそうに近寄る金髪の青年を押し退けた。 「隣人って俺らただなんつーか...
  • 28-169
    この想いは墓まで持っていく たった一度だけ、キスされたことがある。 酔っ払って眠った彼のベッドの上で、それは触れるだけで離れていった。 あの時の事を、あの後一度も聞いたりしなかったことを、無かったことにしたことを、俺は今でも後悔していない。 友人、親友と呼ぶ誰かにそれ以上を望むなんてありえないことだと思っていた。 特に、彼は優しい人だから、俺が望めば大抵のことは叶えてしまう。 喉が渇いたと駄々をこねれば苦笑しながら水を、疲れたと文句を言えば一度休むか、と手を止める。 他の知人に散々甘やかすなと言われていたくせに。 俺のどうしようもないワガママに付き合って、今まで何度となく災難を被ってきたくせに。 俺はそんな彼に、ありがとうの一言だって、上手く伝えられた試しがない。 優しく手を取って「好きだ」と言ったあの顔を覚えている。 いつものよう...
  • 18-129
    行く年来る年 「やあ」 「グーテンアーベント。お久しぶりです」 「一昨日も電話したのに、お久しぶりはないだろう。それにこっちはまだ夜じゃないよ」 「ああ、時差あるんでしたね。今何時です?」 「じきに16時。妙に明るいと思ったら、雪が降ってる」 「へぇ、ホワイト大晦日ですか。そっちの雪景色はさぞ絵になるでしょうね」 「眺めはともかく寒いな。ちょうどホットワインがうまいくらいの寒さ」 「……そういえばその声、いくらか酔ってますね。またそっちの教授に迷惑掛けてるんじゃないですか?」 「失礼だな、君。こっちは順調にやってるよ。それに私とハロルドは十年越しの親友なんだ。  少々面倒かけたくらいで迷惑とはいわない」 「すごい自信ですね。その図々しさ、ちょっと羨ましいくらいですよ」 「図々しいんじゃない、私は自由人なんだ」 「"鳥のように"?」 「...
  • 28-149
    輪廻転生 「前世で俺とお前は夫婦だった」  克利が真顔でいうので、飲んでたビールを吹きだした。 「……なにそれ、前世とか信じてるの。霊感ありだったっけ、克利」  思わずからかい口調になったら、克利は口をとがらせて 「夢で見たんだよ、お前が俺の嫁さんでさ、どっかの外国でいっしょに暮らしてるの」 「どっかってどこだよ、なにそれ、全然なんにも具体的じゃないのな。どんな妄想だよ」  こいつさっきから結構な酔っぱらいだ。相手にしてられない。 「だって、夢だからよくわからないんだよ」 「じゃあ、ヨーロッパ? アメリカ? アジア? 時代は?」 「……さあ?」 「お前、もっと設定練っておけよ」 「だから、本当にわからないんだって」  克利はどこまでも引っ張るつもりらしかった。なんだかちょっと、俺はイライラしてきた。 「夫婦って、なんで俺が女なの...
  • 18-119
    今年最後の大告白 一昨年も恋をしていた。去年も恋をしていた。 それから今年も、ずっと。 2年参りである。今年も二人きりで。もはや恒例行事なのである。 「今年も野郎二人でお参りとか、寒いにもほどがあるよな」 「文句言うなら断ればいいだろが」 「だって、一人きりで年越し寂し過ぎるんだもん」 「…また降られたんだってな、ざまあ」 「どうしてもクリスマスから後が続かないんだよね、これが」 「ざまあwww」 恋をしていた。している。今年もずーーっと。叶わない恋を。 「つうかさ、お前もさ、彼女つくればいいのに。つくんないの?」 「……いらね」 いらない。お前がいればいいよ。 「いらねえ。面倒くせえし、ダチとつるんでるほうが楽だし」 「またまたー。そんなこと言って、イベントの度にこいびとほしー、って俺に言ってくんじゃーん」 こい...
  • 18-189
    堅物×飄々 「いつまでいる気だ」 視線もよこさずに冷たい声で俺に言い放った 少し暗い部屋の中でアイツの顔が青白い光を受けている 「そうだなー、お前の仕事が俺にかまってくれるまで、かな」 わざとアイツの声とは正反対の間延びした声で答えてやる 「それならお前はずっとここにいることになるな。いい迷惑だ」 相変わらずその視線はディスプレイへと向いたままだ 「そーんなつれない事言うなって。早くそれ終わらせて飲みにでもいこうぜ」 いつものように軽い口調で誘ってみた 「お前なら電話一本で相手してくれる奴が見つかるだろう」 「ばーか、今日はお前と飲みたい気分なんだって」 わざとアイツの台詞を否定しない そしてわざといい加減な理由で固める しばらくしてキーボードとマウスの音が止み、代わりに紙を捲る音が響いてきた 「なーなー」 ...
  • 28-199
    ハーゲ○ダッツを買い込む客とコンビニ店員 よれっ……と効果音の書き文字をつけたいような姿だった。 コートには雨が滲みて、髪もびしょびしょで、寒いのか顔色も悪くて、目の回りだけが赤い。 深夜2時過ぎの住宅街のコンビニに、客なんか滅多に来ない。ましてや今夜は雨だ。 そこへきてそのサラリーマンらしい男が棚のハーゲ○ダッツを全部、全種類カゴに入れて持ってきたので、普段客に干渉したりなんかしない松永だったが思わず「すごいっすね……」と話しかけてしまった。 「……大好きなんだよ、悪いか」 男が気分を害したようだったので、しまったと思い黙る。ピッ、ピッ、と次々にハーゲ○ダッツをレジに通すと 「……以上、37点で11273円です」 と男に告げた。 男は万札2枚を叩きつけると「釣りはいらない」といった。 「や……あの、困るんですけど」 「だっていらないもん」...
  • 28-159
    お菓子作りの上手い攻め 「今日はね、モンブランにしてみたんよ」 甘い香りを漂わせながら台所から出て来た武士の両手には、皿に乗った美味しそうなケーキが一つずつ。 見た目も綺麗で、店に出してもおかしくない出来に見える。 「おぉー!さっすがたけやん、天才!」 こいつは武士と書いて「たけし」なんて読むいかつい名前を持ち、いかにもスポーツマンですというごっつい風体をしておきながら、趣味はお菓子作りというちょっと変わった奴だ。 友人間のあだ名は「ぶし」。名前と見た目のせいか一部の人間には怖がられえている。 親友の俺は小学生の時から「たけやん」呼びを変えていない。多分今こう呼んでるのは俺一人だろう。 「や、褒めても甘いもん以外何も出んから」 あ、照れてる。何だかこっちもニヤニヤ笑いが止まらない。 この瞬間が一番好きだ。 だってこいつがお菓子を作ってる所を...
  • 18-199
    言い間違い んだから。 前から言ってる。 好きだと言ってる。 お前が信じてないだけ。 お前も周りも信じてないだけ。 つか、んだからさ。なんべんも言うわ。好きだよ。好きなんだよ。 身体はまぁもちろん欲しいですけど? んでも……んだから、心も欲しいんだよ。 お前の気持ち良さそな顔みたいけど、そんだけじゃイヤなんだよ。 や、気持ちいいと思ってくれるならいい。 でもんだから身体だけじゃイヤなんだって。 あー。 アホ臭い。 青臭い。青臭いですまんけど、アンタの心も欲しいんだ。 だから。 だからさ。 だから。 だから、こんな時ぐらい…っつーか、こんな時だけじゃイヤなんだけど、でも今だけでいいから。 今は、今だけでいいから。 今だけでもいいから、俺のこと好きって言ってくん...
  • 18-169
    破滅に向かう友人を止めようとする男 間に合え、間に合え、間に合え!! どうして携帯を買い換えたのがつい2日前なんだろう! マナーモードの故障なんかほっとけばよかった。 なれない機種に、たかが電話をかけるだけなのに妙にもたつく。 いつもよりも2倍くらい時間をかけて、あいつの携帯に電話をした。 間に合え、電話に出てくれ 心臓がバクバクと、音が聞こえそうなくらい激しく脈打つ。 普段、手に汗をかくどころか、体温が低すぎて汗が出なくて困ってるくらいなのに、携帯を握る手が湿っている。 二三度のコールの後、いつもの明るい調子とは打って変わった、重く沈んだあいつの声が聞こえた。 「…何だ、お前か。」 よかった、出た。 まだあいつを止められたわけじゃないのに、少しだけ希望が見えたような、明るい気持ちになった。 「お前何してんだ!馬鹿!やめろ!お前、自分が何をしようとしてるか...
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