*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「8-439」で検索した結果

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  • 8-439
    いぼ痔 いぼ痔になったので、貴方に会いに行けません。 年下の恋人から短いカードが届いてから一月が過ぎた。 今まで付き合ったどの相手より従順で、それでいて最も思い通りにならない男。 私が機嫌をそこねるのをわかっていながら、往来で跪いたり うっとうしいほど顔を覗き込んで料理の感想を尋ねたり 繊細そうな外見や柔らかな物腰と裏腹に、家具や車の扱いが荒い …そんな瑣末な奴の印象の断片で、今や私の頭は埋め尽くされている。 何故かいぼ痔の事にも、この一月でやたら詳しくなった。 一体どうしてしまったというのか、私は。 たかだか遊び相手の態度にこれほど気を煩わせた事なんてなかった。 つくづくあの男は、傍にいてもいなくても私の思い通りにならない…。 電話が鳴った。 フロントから、来客の知らせ。 ―薔薇の花束を抱えた色白の若い男だという。 通せと一言電話口に...
  • 18-439
    敬語紳士×ガテン系オヤジ 「まだ残っていたんですか」 「あ、先生」 「ノートを写しているんですね。それは誰の分ですか?」 「振生くんのです。最近、また学校に来なくなったから……」 「ノートを持っていってあげるんですね。しかし、彼は読んでくれるでしょうか」 「みんなそう言います。でも、僕、振生くんはきっと悪い子なんかじゃないと思うんです。こんなこと、僕が言うのもおかしいかもしれないですけど……」 「どうしてそう思うんですか?」 「今まで、彼の家には5回行きました。彼はいつも不機嫌な顔で、2回目なんか渡したノートをそのまま投げつけられました。3回目には、怖いお友達がいっぱいいて、指をさして笑われました。」 「それはそれは」 「僕もその時には、もしかしたら迷惑なのかもしれないって思いました。でも、やっぱり僕にはこれぐらいしかできないんです。だから、それからも、迷いなが...
  • 18-439-1
    敬語紳士×ガテン系オヤジ 「アイツはなぁ、いいヤツなんだよぉ」 「ええ、分かりました、分かりましたから…」 「ぅ…ぐす…アイツは、アイツは両親事故で亡くしてな、それでも頑張って高校行ってなぁ…」 「ええ、本当に、頑張ったんですね」  静かなジャズの流れるバーには、マスターのほかその2人しかいなかった。  片方は細身にグレイのスーツ、オールバックの髪に細縁の眼鏡と、公務員のようないでたちで、シックなバーの雰囲気に溶け込んでいる。  もう片方は連れ合いとは対称的で、髭面でさほど背は高くないが、ほの暗い照明にも薄いTシャツの下に逞しい筋肉が盛り上がっているのがわかる。アスリートというよりは、肉体労働で鍛えられたようだ、とマスターはグラスを磨きながら思った。ついでに、珍しい組み合わせだ、とも。その髭面が、顔中をくしゃくしゃにして泣いている。すっかり酔っ払っているのか、呂律も回...
  • 6-439
    ノン気×自称バリタチ 「一応言っとくけど、俺タチだから」 ベッドの上に正座で向かい合ってそう宣言する。 目の前の男は俺の魅力に参ったノンケだ。 まあ俺の美貌に掛かればそう珍しいことでもない。 「タチって何ですか?」 「そーんなことも知らないのかよ?こーれーだーかーら素人はぁ……」 大袈裟に溜息を吐いて見せたものの、人にモノを教えるのは嫌いじゃない。 何故ならば相手の圧倒的優位に立てるチャンスだからだ。だって俺タチだし。 「つまり、俺が上ってこと」 「ああ!成る程~」 何とも間の抜けた返事だ。もっとも、ネコとしてはこれが丁度いいのかもしれない。 ネコのことってあんま詳しくないんだよな…。だって俺タチだし。 「じゃあ早速お願いしますね!」 「おうよ」 その言葉と共に、相手の服を一枚ずつ脱がしていく。 間違っても手間取ってはいけない。 美しく優雅に且つ滑ら...
  • 2-439
    サラリーマン×宅配業者の攻め視点  最初は頼りないな、それだけの感想だった。  猫の手も借りたい時に、まさか子供相手なんてしてられる訳もなく。でも逼迫した状況 で他者の人間に依頼する訳だから、相手を責める訳にもいかない。まあ、慣れない子供を 寄越した責任者には多少の恨みを感じたのは否めないが。  しかし、予想を裏切りきっちり時間内に書類を届けたそいつに、感心した。よくもまあ 焦らずしてのけたものだと。 『いえ、高木さんのお陰です』  子供は何故か嬉しそうに、俺にそう言った。はにかんだ笑みが可愛くて……そう、可愛い という言葉を思い浮かべた時点で、まあ。こいつの事が気に入ったんだな、と気付いた。  思えばまぬけな始まりだったと言えよう。 「工藤君、もう少し待ってくれる?」 「はい」  笑顔で良いお返事。いつもながら全く可...
  • 4-439
    「一生あなただけを愛しています」 どうしてこんなことになってしまったんだろう。 「ハムレット様……」 ぐったりと横たわったこの人の体は、徐々に熱を失っていく。 心優しく、使命のために生きたこの人を、どうして助けることが出来なかったんだろう。 いつのまにか頬を涙が伝っていた。 なぜ、どうして。 この人の最後の言葉は、私の心を締め付ける。 ――このハムレットの物語を…… 私は、あなた無しでは生きていけない。 だが、生きねばならぬ。 「安らかにお眠りください……」 静かに、しばし平和の時を楽しんで。 そうして私があなたのもとに行くのを待っていてください。 私はあなたのために、生きます。 「私は一生、あなただけを愛しています」 クリスマスまであと1ヶ月
  • 5-439
    既婚者同士 「奥方はお元気か」 「……はい」 からころと先生の下駄が鳴る。僕の革靴が時折砂利を踏む。 「先生の奥様は」 「うちは相変わらずさ。家にも寄り付かないものだから、最近は顔さえ見ない。  まぁ、なんの知らせもないところをみると、困ってはいないのだろう」 いつまでも仲の良い君達が羨ましいよ、と言われて、僕は思わず目を伏せた。 結婚は本意でなかった。ただ、心伴わずとも、と慕ってくれた彼女と、孫を望む親の期待を裏切れなかっただけだ。 僕は先生の背中を見つめた。先生は僕を振り返らない。 「ときに、君のところは子供はまだかね」 「ええ。こればっかりは授かりものですから」 「そうか」 先生は少し笑ったようだ。 「うちにも子供がいれば、あれとの関係もまた違ったのかもしれないが」 僕は言葉を返すことができない。 二人の間に、からから、じゃり、と足音だけが響く...
  • 3-439
    ヒーローに倒されて、折り重なって倒れた戦闘員二人 なんかね、気が付けば戦闘員だったんですよ。 怪人が造られる度に出動要請。 でもやっぱ向こうはヒーローだし、無理なの勝てないの。 第一、良い加減に大人なんだから、自分の属する組織の悪行は知ってる。 やだなぁやめたいなぁとか思いつつ、でも戦闘員だし。辞め方わかんないし。 仲間もどんどんヒーローに倒されて、自分と同期の戦闘員なんて残り僅か。 Bは、そんな残り少ない同期の一人だったのね。 結構最初から意気投合して、親友だと思ってるわけよ、少なくとも俺は。 で、なんとなーく、戦闘中も一緒にいたりとかね。 なんかコイツなら背中を任せても安心できる、みたいな感じ。 だから、その日の戦闘でも一緒にいた。 ヒーローと直接対決しなきゃならなくなった時も、ずっと一緒だった。 やばい一撃を受けかけたのは俺の方だった。なのに倒...
  • 1-439
    枝豆×大豆 枝豆は、大豆が成熟する前の姿。 つまり新入生や、新入社員にあたり、大豆は枝豆の先輩、 または先生・上司になる。 畑の肉と言われるほど、栄養も年季も入った円熟した魅力の大豆。 ビールのつまみの代名詞であり、フレッシュな枝豆。 最高の年下×年上、しかも、血の繋がっているようなものだから 禁忌の恋じゃない? ボール×ゴールマウス
  • 9-439
    会社で年越し・上司と部下 「あーあ。。今年もまたすげえ雪だぜ」 「え。。」 「あ、そっか。お前、去年はいなかったよなあ」 「。。はい」 俺はコンビニのおにぎりを一口食べた。 上司は海苔巻きを口にほおりこんだ。 広い事務所に2人きりだった。 「聞いてると思うけどよお、これからだからな、忙しくなるのは」 他の連中の半分は自宅に帰り、残りは別の場所で待機していた。 チャイムが鳴ったそばが届いたようだ。 俺は玄関にいって出前のそばをもらった。 「やあ。。届いたな」 上司はうれしそうに割り箸を割り、そばを口にする。 俺もそばをすする。 大晦日だなあ、と思った。 「お茶、いれますか?」 「いやいい。水はもう控えとく」 「俺もそうしよう」 上司がひとなつっこそうに笑った。 「なあ。お前と組むのは、今年最後だな」 ...
  • 7-439
    鎖と手錠と流れた液体 文化祭のお化け屋敷など暗い室内にコンニャクでも敷き詰めれば出来上がるものなのに、わざわざ当番制でお化け役を置くことになった。 獄中で死んだゾンビ役をクジで引き当ててしまった運の悪い俺は、同じく運の悪い桐谷と一緒に客が来るのを待っている。 暗幕のおかげで直射日光が当たる事は無いのだが冷房が壊れたこの室内は蒸し暑く、雰囲気作りだと言われ後手に手錠をかけられ鎖で机に繋がれた俺たちは流れる汗を拭うことも出来ずにいた。 時折現れる客を待っていると突然桐谷が「あ。」と声を上げた。 「どうした?」 「目に汗が入って……ついでに血糊も入ったみたい。」 肩口で汗を拭こうと懸命に体をくねらせているのだがうまくいかないらしい。 「俺の衣装で拭けよ。」 「え、いいの?。」 「食紅でも目に入るのはやばいだろうし、交代来るまで後20分はあるだろ。」 「うん、あ...
  • 27-439
    老眼  鳩の鳴き声で、目が覚めた。いつもより少し早い時間だったが、のんびりするのも悪くないと思いおもむろに起き上がる。  眼鏡をかけ、髪をかき、腹もかきながら郵便受けに行って新聞紙を手に取る。見出しが興味のあるものだったので、リビングに行ってソファにどかりと座った。ばさりと音をたてて、新聞紙を開く。 「ん?」  文字がぼやけて、読みにくい。ああ、なるほど。とうとう自分にもやってきたのか、とため息ひとつ。眼鏡を下にずらし、新聞を離して読んでみると、ちゃんと読むことができた。  暫く集中して新聞を読んでいたら、頭に何かが乗っかった。 「おい、あんた。そのずらした眼鏡、爺くさいよ」 「……ずいぶんなご挨拶だな。頭の上、のけろよ」 「へいへい」  頭に乗っかっていたものは同居人の腕だった。素直に退けてくれたが、後ろを振り向くと同居人はにやにやと目を...
  • 23-439
    22歳の別れ、36歳の再開 『今日掘ってきたぞ、タイムカプセル』 起き抜けに見た安藤からのメール。 タイムカプセル…はて日本の地下に無数に埋まっているであろうそれらに、俺が関係するものがあるだろうか。 俺には小中高とタイムにカプセルしたいような熱狂した思い出や、当時の俺を物語るなにかなど無い。いつだって無い。 その点安藤は、きらきらとした思い出とその時々の情熱をめいっぱい詰め込むのだろうが。 …そういえばそんな話を誰かとしたような気がするが…あれはいつだったか。 ああそうだ、埋めたときだ、タイムカプセルを。 ここでやっと俺は、大学の卒業式の日に安藤と友人数人でタイムカプセルを埋めたことを思い出した。 そうか。もう十四年も前のことか。 ただのノリだった。 居酒屋でいつものメンツで飲んで、むさ苦しく泣くやつもいたりして。 その場のノリで、店主のおやじさんか...
  • 10-439
    先輩×後輩の後輩襲い受 「俺は先輩のことを先輩だなんて思ったこと一回もありません」 誰もいないオフィスの会議室。俺の目の前にいるこの若造はふんぞりかえってそんなことを言い放った 「ざけんなよお前!俺が先に入社してるんだから俺が先輩なのは当然だろうが!俺に跪け !崇めろ!奉れ!」 「先輩にそんな価値を見出せません」 初めてついたときからずっとこの態度のまま。仕事は出来るんだけど、根本的なビジネスマナーがなってねえ こういうトゲはさっさと排除してやらないといけないよな 「てめぇこのやろう実力でわからせて…うぉっ!」 足を払われ、尻からずっこける。 その上からナマイキな後輩の顔が近づいてくる 「何が実力ですか?こんなにあっさりと俺に押し倒されてるくせに」 「離せ!どけ!近づくな!って…!ちょ、なんで俺ひん剥かれてるんだよ!」 意味がわからない。 ...
  • 15-439
    誰も祝福してくれなくても 「なあ、本当にだいじょうぶか?」 「大丈夫だって。ちょっと腫れてるだけだから。ほら、すぐ治まるよこんなの」 「でも、お前ふっとんでただろ!まだ少し血も出てるし」 「…うん。でも一人息子を男に取られたんだから。そりゃ殴りもするさ。むしろ殴るだけなんて良い方だよ」 「まあ、そうかも…でもなあ、いたくね?」 「そんなことよりお前の方が大変じゃないの?」 「あー…勘当?まあ、されるとは思ってたから。親父厳しいしな。かえる家なくなっちまった」 「…ごめん」 「おまえのせいじゃねえよ。これは、おれが決めたの。お前と居るって」 「あ、あ…りがと、う」 「うん…って、うわ!なに泣いてんだよ。やっぱり痛かったんじゃねえかよ!ほら、鼻ふけw」 しょうがねえ奴だって笑っても、お前の涙はなかなか止まらなかった。 鼻血だらだらで...
  • 14-439
    きみといつまでも 「おーい、瀬!」 いつものように僕は君の名前を呼ぶ。 「・・・何ですか、バカ竜」 いつものように君は返事をする。 「瀬は本当にツンデレだなぁ。デレてよん。」 「嫌です。ていうか本当にうざいです死んでください。」 本当にいつものこと。 でも、前はこれがいつもじゃなかった。 僕は、数年前にこの子と出会った。 瀬は一人だった。家族は軍の奴等に殺されたらしい。 軍の奴等から逃げて倒れている時に、僕が助けた。 もう、最初の頃はとっても無口だったのに、今じゃこうさ。 まぁ、これはこれでいいけど。 「なに考えてるんですか、気持ち悪い。」 「もー、変なことなんて考えてないよ?」 「普段の行いが悪いんですよ。」 むぅ、せっかく助けてあげてるのにぃ! …本当はこんなくだらない事してないで、逃げなきゃなきゃないのにね。 僕らは一応軍に逆らったも...
  • 13-439
    目隠しの刑 「だーれだ!」 行きかう人の多い駅前のベンチでも待ち合わせ。 後ろからお決まりの行動をすれば、癖になるぐらいイイ反応を返してくれる君。 「男同士でこんなんしてもキモイだけだろうが!!」 そんな風に怒りながらも君の右頬が引きつっているのが、俺としてはたまらない。 俺は知っている。君が人ごみの中で無意識に坊主頭の男を目で追いかけているのを。 けれど俺は君の過去についてはあまり知らない。 なにかトラウマがあるみたいで、本当によくしゃべるものだと感心する君の口が 過去のことになるととたんに止まる。 元野球部だったって事は聞いた。その時に何かあったのかな?元彼かな? 別に話したくないなら無理に聞こうとは思わない。 今は俺と付き合ってくれてる。それで十分だ。 でも……。 ああ、まただ。道を歩きながら、俺の話に笑ってくれているけどその目は誰かを追...
  • 16-439
    性別受けっぽい×鬼畜攻めっぽい 「なあ、昨日来た転校生、超可愛くね?」 「見た見た!2組の奴だろ?ありゃすぐに食われるな」 男子校の会話として正しいかはさておき、授業中であることを思い出させる。 「渡辺と佐々木、前に来てこの問題を解け」 見せしめを作れば他の生徒はうつむくだけ。私と目が合わないように、と。 不愉快だ。 チャイムと共に安堵の表情を見せる生徒たちに明日までの課題を告げ、退室した。 廊下には2組の生徒がたむろしている。 「秋山、次の授業の資料を取りに来い」 「氷月先生」 「すぐにだ」 他からの非難の声など聞こえない。クラスメイトに手を振る秋山を連れ、数学準備室に入る。 「先生ってばヤキモチ?」 「違う。これを運べ」 「わかりました。また放課後来るね」 言葉と共に口づけを一つ落とされる。 睨むとごめ...
  • 19-439
    ぴしゃりと叱りつけた  例えば自分が機械であり彼とは違う次元違う存在のインプットにアウトプットを返すのみの存在であったなら。  そう思うことが何度もある。事実今目の前にある画面はそのためのものでありそれ以外の役目は自分に求められないものだというのにそれすら忘れ、そう思うことが本当に何度も何度も。  どうしてだろう、と思う。とてもとても、どうしてだろう、どうしてこんなことになったのだろう、と、何度も、何度も。  そう考えながらいつも思わず見つめ続けるのは目の前の特に高かったわけでもない――というよりはそれ以前にこれは支給されたものだ――1920x1200、22インチディスプレイなのだった。 「ねーねー、『センセ』? どうしたの」 そのディスプレイから聞こえる声に、は、と覚醒する。眉を寄せた様子の馴染みの顔がディスプレイから覗いていた。さあ――『仕事』の時間である。...
  • 17-439
    どちらかしか選べない 「ああああどうしよう! 俺選べないっ!」 アイスクリームのショウウインドウを前に、ユキオが頭を抱えてうんうん唸っていた。 ユキオは、二百円ちょいしか持ってない。俺はおごってやる気なんぞこれっぽっちもない。 だからコーンにアイスをダブルで盛るとか、ましてやトリプルにしてうはうはするなんてもってのほかだ。 ミントかチョコチップ。俺の隣で、彼はどっちにしようか決めかねている。かれこれ二十分。 店内に客は二人。そろそろ、店員さんの笑顔がある手前いづらくなってきた。接客ってなんて大変な仕事なんだ。 「河野ぉ、ねえどっちがいいかなあ。もうおまえ選んで!」 小動物みたいな目でユキオが俺に嘆願してくる。おおげさに肩を竦めて、じゃあミントにしなと頭をぽんぽんした。 素直にユキオがミントを注文し、受け取って隅っこの席に座った。 俺はそれを追わず、自分ぶんのアイ...
  • 25-439
    百戦恋磨  人の流れをよけて壁際に立ち、携帯を開く。メール画面を睨んだまま、数分。 どういう文面にしたら自然か、そんなことを考えていたら、何をどう書いていいか分からなくなってしまった。 「佐々!」  呼ばれて顔を上げれば、今メールを送ろうとしていた相手、黒田がこっちに向かって手を振っていた。 人の流れを器用に縫って、こっちにやってくる。 「今日はもう講義ないだろ? 少し早いけど、メシでも食いに行こうぜ」 「ん。僕も今、メールでそう誘おうかって、思ってたとこだった」  携帯を閉じながら言えば、黒田が破顔した。 「そっか。じゃぁ、どこ行こうか。なんか食べたいもんある?」 「ラーメンかな」 「なら來来亭だな。この前は臨時休業くらったもんなぁ」 「そ。それ以来行ってないから」 「もう開いてんだろうし、行くか」  肩に手をかけて促され、心臓が軽くはねる。黒田に好きだ...
  • 11-439
    コインランドリー ぐるぐる回る洗濯機を前に、あなたはいつも背筋を伸ばして文庫本を読んでいる。 視線はまっすぐページに注がれ、並ぶ丸椅子の一番端に座る俺には気付いていない。 ジーンズの裾から覗くくるぶしがやけに白い。 乾燥終了のアラームが鳴る。 蓋を開けると熱気の中にカラカラに乾いた衣服があったが、俺はもう一度ドアを閉めて財布を取り出した。 10分100円の追加料金で買える、週に二回の貧乏学生の幸せ。 プール脱衣所
  • 24-439
    いくら俺が鈍くても気づく 好きだと言われるまで、貴方が俺のことを好いているなんて思いもしなかった。 驚きのあまり固まってしまった俺を見て、貴方は言った。 「あんだけモーションかけてたのに気づかないとは、お前は鈍いなぁ」 そう笑いながら抱き締められた貴方の腕のなかで、 俺はようやく自分の中に恋心が芽生えているのを知った。 酷い夕立にあい、駅で立ち往生していると、 のっそりと此方へやってくる貴方の姿が見えた。 そんな筈はないと訝しげに顔を歪めた俺を見て、貴方は言った。 「居るはずがないって思っただろう? 俺がどれだけお前のこと考えているのか気づかないとは、お前は鈍いなぁ」 そう笑いながら俺を傘の中に迎え入れた貴方の体温を感じて、 俺はようやく貴方に思われることの喜びを知った。 熱にうなされ、苦しさのあまり寝るに寝れない状態に陥っていた。 ふと物音が...
  • 22-439
    お兄ちゃんの彼氏? 兄「なぜそう思う弟よ」 弟「え…だって。いつもお兄ちゃんその人のことしか話さないし。今日だって」 兄「あのなぁ。いくら俺様と言えど、彼女持ちの奴をたぶらかすほど悪人ではないぞ」 弟「えっ…う、嘘ばっかり。僕は騙されないかんね!」 兄「ほう、『嘘』だというのか。そうかそうか」 弟「う…ご、ごめん、なさい。だからその両手をワキワキさせるのやめて」 友「とりあえず俺を無視して話を続けるのは止めてくれないかな」 兄「おお、すまんな。どうもこいつを見てるとついイジりたくなってな」 友「あー何か分かる。お前の弟、なんかこう、小動物系? ついつい撫で回したくなる感じだわ」 弟「……っ!?」 兄「だろう?」 友「でもいいよなー、こういう可愛い弟がいて。なぁ、俺に一日くらい貸してよ」 弟「……」 兄「ははっ、一日と言わず、一週間位でもいいぞ? でもまぁ一...
  • 20-439
    スーパー受け様 こんなシチュな思い浮かんだ ガード下のおでん屋。 終電と共にくたびれたサラリーマンは去り、わずかばかりの収入があった日だけホームレスは飲みにいく。 いつものように空き缶拾いで得た折り目の入った千円札を握り締めて屋台に近づく。 いつもなら誰もいないのに今日はやけにお上品なスーツがいた。 つるしじゃなくてオートクチュールのもの、布はミラノのあのブランドのものだ。 そういう「お上品」なものを見るとあの子を思い出す。 酒を呑む気分じゃなくなって出直そうかと思った。 「おいアンタ、さっさと座れ」 寡黙な大将が珍しく声をかけてきて、背を押すように木枯らしが寒くて、ホームレスはのろのろとできるだけお上品スーツから離れて腰を下ろした。 こんな場末の屋台にお上品スーツが来るなよ。 落ちぶれたわが身の忸怩さ、あの子への郷愁と戒めで、八つ...
  • 26-439
    なかなか好きといえない あと一分しかない。 「あーあ、結局二十歳になるまで恋人も出来なかったよ」 その言葉を聞いた時から、あいつが二十歳になる前に、絶対に伝えると決めたのに。 文面は何度も何度も読み返して、完璧なはずだ。 あとはこの、送信ボタンを押すだけ……それだけが、どうして出来ない。 このまま言えずに明日を迎えるのかーー 指先の震えが大きくなる。いや、違う、着信だ。 「もしもし、慧ちゃん?」 もう時間はない。 なかなか好きといえない
  • 2-439-1
    お兄ちゃんの彼氏?  僕達兄弟は年が離れてるけど、とても仲がいいです。  弟の僕から見ても、お兄ちゃんは綺麗でよく女の人に間違えられています。  体もそんなに大きくないからかもしれません。  そのせいか彼女も居ません。  どうしてと聞くと、女の子はお兄ちゃんをペットのように可愛がるか一緒に歩くのを嫌がるかで、モテないと言ってました。  でもそれはどうでもいいです。  とにかく僕は、優しくて家事も得意なお兄ちゃんが大好きです。  そんなお兄ちゃんのキスシーンを見てしまいました。  しかも相手は男の人で、僕は二重に驚きました。  日焼けした体は縦も横もお兄ちゃんより大きくて、良く見えなかったけど顔もまあまあ格好良さそうです。  すぐにその相手が、最近よく家に来るお兄ちゃんより年上のお友達だと気が付きました。  その人の太い首にガッチリ両手を回して、嬉しそうに...
  • 9-439-1
    会社で年越し・上司と部下  そろそろ、疲労がピークだ。キーボードを叩く手を止め、片瀬はいい加減休ませろと疲れを訴える目元を押さえた。  大きく溜息を、一つ。そこから前方へと腕を伸ばし、伸びをする。途端、椅子がぎしりと悲鳴を上げた。人気のない室内にやけに大きく響き、片瀬は僅かに身を竦めた。普段は人がひしめくはずの場所に、一人きりという孤独感がそうさせるのか。暖房が効いているはずなのに、やけに薄ら寒い。 「あー、……疲れたっつーか、眠いっつーか、……早く帰りてェ……」  思わず、情けない声が出る。流石に部下の前では零せないが、今は一人きりだ。多少の愚痴も許されるだろう。  まったく何が悲しくて、この年末に居残って残業しなければならないのか。  納期が近いのは分かっている。思ったように進行しなかったのも、事実だ。そして、独身である身で、上司。残業に問題のない身であることも、十...
  • 7-439-1
    鎖と手錠と流れた液体 首に繋がれた鎖で逃げる事も叶わず、 昔抵抗したのがきっかけで暴れるといけないと手首には柔らかいタオルが巻かれた。 まるで手錠みたいだ…。恐怖に怯える僕をご主人はそっと抱きしめた。 「お前が悪いんじゃないんだよ…」 優しい顔で微笑むご主人。大好きな微笑みの筈なのに…この日ばかりは恨めしい。 「じゃあ我慢してね、ポチ」 ご主人の手に光る注射器からは予防接種の薬がキラリと一筋垂れた。 動物病院の飼い犬はこういう時損だ。 オプション0円
  • 14-439-2
    きみといつまでも ―――なんかさ、あいつって変に色白じゃん。 身体つきなんかは意外とがっしりしてたりするのにさ、あいつの印象っていうのがまた、 ニュルニュルっていうかニョロニョロっていうか… なんかとにかく掴みどころもないし、 すっごく変なヤツじゃね? 他のみんながそんな風に僕を噂してるのは知っている。 どうせね、そうさ。 色白なのは生まれつきだし、どうせニュルニュル?ニョロニョロ??どっちの表現でもいい けど、掴みどころなんてありませんよ。 なんだよ、みんなだってゴツゴツしてたりペラペラしてたりヒョロっとしてたり、どうせ 五十歩百歩のくせしてさ。 ―――まぁ、中には。とんでもなくカッコのいい、オイシイ奴だっていたりするけれど。 でも、彼らがすき好んでそういう風に生まれたわけじゃないのと同じに、僕だって望んで こんな風に生まれてきたわけじゃない。...
  • 19-439-1
    ぴしゃりと叱りつけた  広く暗い和室の中、二人の人間の周りだけは不自然に明るい。  その内の一人は、紅葉の川と金糸の鳥を施した赤い仕掛けを纏った、だが仕掛けの趣きとは相容れない精悍な顔つきの骨ばった美青年。 彼の名は――つまりは源氏名だ――仕掛けの通りに紅葉と言う。 紅葉は、もう一方の、青年と同じ位に逞しいはだけた洋服を纏った眼鏡の男を床に倒していた。 手つきは酷く危うく、そのまま胸に手をやる手つきも震えていた。 その手が胸の飾りに着いた時、紅葉の動作が停止する。 紅葉の艶のあるざんばら髪が揺れる。眼鏡の男、藤吉は紅葉の優柔不断な手を掴み上げて、もう片手で叩いた。 「うっ…」 「また最初からだね。まったく君は……何回やったらまともに出来るんだい。いい加減にしてくれないかな」 藤吉は起き上がり衣を正すと、ぴしゃりと叱りつけた。 「君だって、今まで散々客にされてきた...
  • 14-439-3
    きみといつまでも 「せんぱっ……卒業おめでとうございまっ……うえええええ」 卒業式の後、派手に泣き出した後輩を前に、俺は苦笑する。 卒業するのは俺で、コイツはまだあと1年この学校に通うはずで。 なのに、あまりに大泣きするものだから、俺の方は感傷やらなにやらは全てどこかに行ってしまった。 「コラ、泣くな。どっちが卒業生だか、分からないだろ」 「だって、だってぇ」 涙を隠そうともせず、鼻水まで垂らして泣いている後輩を、俺はずっと可愛がってきた。 そして、相手も慕ってくれていたことは、現在目の前に繰り広げられている光景からすれば、疑いようもない。 「たかが卒業だ。そんなに、大したことじゃないだろ?」 「大したことですよ!! 大したことなんですよ!! だって、俺、先輩の「後輩」ってポジションしかないのに!!」 「は?」 訳の分からない内容で食って掛かられて、思わず聞き...
  • 17-439-1
    どちらかしか選べない 神様、僕は何か悪いことをしたでしょうか。 思えば幼稚園から大学まで地方の中流を渡り歩き、我ながら何の変哲も無い人生でした。 それなのになぜ僕は今、見も知らぬ男に圧し掛かられているんでしょうか。 「突っ込みたい?突っ込まれたい?」 舌を噛んで死ぬべきか、なんていってもそんな根性僕には無い。 死ぬなら男とでもセックスしたほうが良いのか? どうなんだ?逃げるのか? ああ、けっきょくあまりにも平凡な僕はするかしないかではなくて、 ヤるかヤられるかしか選べないんだろう。 「突っ込みたい?突っ込まれたい?」 頬を吊り上げるようにして男が耳元で囁く。 答えはそのどちらかしか選べないだろうとばかりに、 手と手が触れた
  • 14-439-1
    きみといつまでも command:きみといつまでも Y/N? 801はファンタジーだ!! と割り切ってるがどうしてもNのルートに考えが行って しまう私を許してください。決して不幸話が好きなんじゃないんです。 仮にA君とB君がいるとしましょう。 この2人が「いつまでも」何かを共有または同じ状態(精神的なものも含む)に いられるでしょうか? 答えは圧倒的にNOだと思うんです。 たとえA君の隣にB君がいるのが当たり前の世界であっても 「いつまでも」そのままって言うわけには行きません。 歩き始めたならいつかは終点にたどり着きます。朝は夜になり、人は年老います。 感情が動かない人はいないでしょう。うつろうのが人の心。記憶もいつか薄れます。 A君は年をとっても「B君が好きだ」と思う、そこまでが事実だと仮定しても。 どちらかが先に死んだら? 社会的な圧力に...
  • 26-439-1
    なかなか好きといえない ■腐れ縁タイプ 「なに泣きそうな顔してんだよ。元気出せって。もう付き合ってる奴がいたんじゃしょうがねーよ。な。  で、どうせ今晩飲むんだろ?朝まで付き合ってやるよ。いいっていいって。明日休みだし。飲み明かそうぜ。  お前がフラれてヤケ酒なんていつものこと……って本格的に泣き出すなよ。ひどくねえよ。事実だろが。  ほら、行くぞー。お前んちでいいよな。途中でツマミ買ってくか。………。言っとくけど、奢らねーからなー」 ■『なぜ謝る』タイプ 「あの。あの………いえ、なんでもないです。すいません。てっ、天気いいですよね!ね!あはは…  はあ……え、いえっ、元気です!ほんとに、なんでもないんです。すいません。すいません!!」 ■好きの代わりに馬鹿と言っちゃうタイプ 「お前馬鹿だろ!?調子悪いのに出てきてんじゃねーよ。あとは俺がやっとくから。...
  • 8-449
    派閥対立 仮眠を取ろうと足を踏み入れた休憩室には、既に他の人間が居た。 眠そうな顔で目蓋を擦ってソファにどっかと腰掛けた俺に、向かいの椅子に座っていた相手が声をかける。 「あっ、あのっ! 斉藤先生ですよね!」 弾んだ声音は、随分と若々しい。 興奮しきった目でこちらに話しかけてきたのは、先日転任してきたたばかりの若い医師だった。 紅潮した頬を手で抑えると、勢い込んで俺に告げる。 「俺、学生時代に先生の論文を読ませていただいたんです。 それで、その……すごく感銘を受けて小児科に!お、お話できて光栄です!! 」 よほど緊張していたのだろう。 一息にそこまで言って、ふぅ~っと長い息を吐き出す。 顔は見る見る間にさっきの倍は赤くなり、その心臓の鼓動がこちらにまで聞こえてきそうだった。 俺なんかと話すのにこんなに真っ赤になるなんて、全く何て無駄なことを。 そう思いながら...
  • 8-459
    コスモス・時間旅行者 『――いつか、どこかで出会えるはずだから』 そう言って離した手のぬくもりを思い出す。 時間は差し迫っていた。 国は分裂し、同じ血で結ばれたはずの民族は 明日には武器と武器をつき合わせて睨み合う間柄に。 幼かった俺に、そんな事情を理解できるはずもなく ただ肩に置かれた父の手のいつにない力強さに震えていた。 あの人は最後も俺に笑いかけて、大きな手で俺を包んでくれた。 父は。 旧い名誉を重んじる家の跡継ぎとして、捨てるわけには行かなかった。 家を。そして俺を。 もしあの時、俺という存在がなかったら父はどうしていただろう。 何もかも捨ててあの人に着いていったんだろうか。 日々の糧も安寧すら保証されない放浪の旅に。 何度も父に問いかけようとして、口に出せなかった問いに 答えを出さないまま、今日父は逝っ...
  • 8-409
    典型的B型×典型的A型 「ああもう、何だよこれ!使い終わったもんは片付けろって言ったじゃないか!」 「えー、使い終わってねーよ!だから置いてある」 「その割には、お前はそっちの部屋でTV見てるようだけどな?」 「だって見たい番組はじまっちゃったんだもん。見ねえと」 地団駄を踏みたい気分だ。マンション住まいに不満はないが、こういうとき不便だ。 一年前、前の彼女と同棲していた際にも、十分思い知ったことだった。 「結局、他人だっていうのが問題なんだ。男だ女だのっていうのは問題じゃなかったんだな。  家族じゃない人間と一緒に暮らすなら、よっぽど慎重になって、  うまくやっていけそうな相手を選ばなきゃ駄目ってことなんだ…」 ぶつぶついいながら冷蔵庫をのぞいていると、いつのまにかBが背後に立っていた。 「他人なんて寂しいこと言うなよ。おれとAの仲じゃないか」 「ほ...
  • 8-489
    嘘でもいい あぁ。なんであんなヤツのこと好きなんだろう。 軽いし、嘘つきだし、時間にルーズだ。 今日だって、あいつから誘ってきたくせにもう30分以上、遅刻してる。 遅れるならメールのひとつ位入れやがれ! ありえない。本当に。 今日はおれの誕生日で、いつも通りなら家族で外食のはずだった。 でも、この年にもなって誕生日に家族で外食なんてダサいかなって思ったし、 なによりあいつが、この日に遊ばないかって言ってきたから……。 まぁ、あいつがおれの誕生日なんて知るわけないし。それでも、嬉しかったんだけど。 あーあ。 おれはみじめな気持ちでおろしたてのブーツのつま先を見つめた。 「いやぁ。遅れてマジごめん。」 軽く叩かれた肩。振り返ると、悪びれない笑顔のヤツがいた。 「……」 怒りのあまり、おれはリアクションもできない。 「いやぁ、おばあさんがペットボ...
  • 8-429
    年上ドジっ子 茶筒を開ければ茶葉をぶちまけ、 急須の蓋は閉めたままでお湯を注ぎ、 跳ねたお湯の熱さに驚いて急須を落す。 あまりに期待を裏切らない行為の数々に、俺は笑いを堪えることができなかった。 背後から突然聞こえた笑い声に、部長が振り向く。 「…黙ってみてるなんて人が悪いな」 ばつが悪そうにちょっと頬を赤らめて、俺を睨みつけた。 「すみません、部長がご自分でお茶を淹れるなんてあんまり珍しかったので」 「どうせお茶ひとつまともに淹れられない不器用者ですよ、俺は。お前代わりにやれ、笑った罰」 そう言って不貞腐れた顔をした部長は半歩身をずらして俺を呼び込んだ。 「はいはい、よろこんで」 「…みんなとメシ行かなかったのか?」 「給料日前の節約生活中でして…部長は弁当ですか」 「いや、俺もカップ麺」 珍しい、と思ったが何となく口には出さなかった。 ガサ...
  • 8-499
    夢見る頃をすぎても 「…終わったな」 疲れた顔をして帰ってくるなり一言つぶやいたあいつ。 あまりスポーツに詳しくないので判らんが、あいつの好きなチームがどうやら負けたらしい。 そういえば、今日は試合を見に行くとかいってっけな。 「負けたのか…ま、明日も試合とかあるんだろ?」 「…あるけど、後はもうだらだらやるだけに近いな。順位も決まったし」 「…じゃあ、どうして順位が決まったのに試合やるんだよ?なんか無駄じゃないのか?」 「無駄だけどな。消化試合というぐらいだし。」 「それでも、来年のために試合をするんだ」 そのあと、新人育成だとか、来期の構想とやらと、俺にはさっぱりわからないことを語りだしたが。 多分、今年の夢は潰えても、あいつの夢は続くんだろうな。 来年は、あいつと一緒に見に行くのもいいな、と、まだまだ語るあいつの口元を見て思った。 ...
  • 8-419
    同じ月を眺めている 眠れない。 自分の眠りがこんなにも浅かったのだと忘れていた。 いつも、アイツがいたから。 アイツの気配はいつだって心地よかった。 寒い季節、隣の温もりは自分を眠りに誘った。 いつだって一緒に夢を見た。 あの日までは。 いつもと同じようにアイツの横で眠りに落ちた。 けれど、何だかいつもとは違って。 顔に近づく気配にうっすらと目を開けた。 そして、唇に触れる何か。 目があった瞬間、アイツはビクリと体をこわばらせた。 何も言わずにアイツが立ち去った後で、ようやくキスだとわかった。 その日を最後にアイツはいなくなった。 アイツといるときはほとんど見ることのなかった月。 今は満ち欠けが追える程だ。 この月に願いが届けばいいのに。 アイツに、願いが届けばいいのに。 あの日、最後だと思って彼に触れた。 拒絶される...
  • 8-469
    人でなし×お人よし 畦道に沿うた人々の列は千々に乱れ、今や阿鼻叫喚の体を成している。その小柄な身体は暗雲と共に訪れたつむじ風に巻かれて宙に躍り上がり、今となっては、空の高きより、ただ呆然と事の成り行きを見守る他無かった。耳の側で哄笑が聞こえる。首を反らして、身の自由を奪っている者を怒鳴りつけた。 「何故、斯様な真似をするのだ!今すぐ私を下ろせ!」 罵声を浴びた異形の者は金色の瞳を大きく見開き、 「そんなにあの大仰な神輿が気に入っていたのか?」 とおどけた事を言う。ぎり、と歯を軋らせて睨みつけるものの、どこ吹く風といった様子だ。 初めは村に住む少年の一人だと思っていた。祭事を司る神職に有ると言えど若輩者、全ての民を把握してもおらず、 見知らぬ顔に戸惑いはしたものの、無垢な眼に、自然と微笑が浮かんだ。油断をしていた訳ではないが、 人柱としての定めを受け入れ、土牢の...
  • 8-479
    スーツアクター スーツアクターっていうのは、 特撮等でいわゆる変身後の姿を演じる役者さんのことなんですが、 普通のスタントととは違い彼らは前面に出ます。 彼らと、生身の姿を演じる役者さんが2人で1人の人間の役を作り上げるんですよね。 それも、1年という長い間かけて。 当然、役者とスーツアクターの絆は深くなります。 最近は新人の登竜門になりつつある特撮ですから、 演技経験のほとんどない役者さんも結構いたりします。 これで戦隊のレッド役だったり、ライダーの主役級の役だったりすると、 スーツアクターの方は経験豊富なその世界では有名な役者さんが演じたりします。 新人さんは大変です。 慣れない演技だけでなく、慣れないアクションに慣れないアフレコ。 慣れないお子様ファンへの対応なんかもあって、毎日くたくた。 そうなると、やっぱりミスも出てきます。 厳しい監督も...
  • 28-449
    リアリスト×オカルト好き 俺はオカルトなんてもの信じない。超常現象なんて言うが、そんなのいくらでも科学で説明できる。 幽霊?そんなもの有り得ないに決まってる。「幽霊の正体見たり、枯れ尾花」なんて言うし。 「カズ、見ろよこれ!ヤバくね?!」 それなのにこいつ、幼馴染み兼恋人の長谷川は大のオカルト好きときた。 今日も俺がそういうの信じてないって知ってる癖に、心霊写真だとか言って別に何ともないものを押し付けてくる。 「はぁ…どうせまたブレてるだけとか木の影とかだろ?」 「いやこれは本物だから!」 読んでいた本から顔を上げもせずに言い切った俺に長谷川は尚も食い下がる。肩に腕を回して、俺が開いていたページの上に写真を落とした。 「…邪魔なんだけど」 「まあまあそう言わずにぃ」 家だから許すけど、外でやったら怒るぞ。 「で?どれが何だって?」...
  • 18-449
    照れ隠しで抱きしめる リョウタはめったに喋らない。代わりにしょっちゅう俺を抱きしめる。 あいつが学校から持って帰った絵やら習字やらをほめると、黙って抱きつかれる。 上級生(俺のクラスのやつだった)とケンカをした時も、 その場では顔色ひとつ変えなかったのに、俺が後で「強かったな」と言った途端 くっついてきて、しばらく離れなかった。 この前なんか、二人で河川敷で遊んだ帰りに夕焼けを眺めていると、 いきなりギュウっとされて苦しいくらいだった。 そういえば引っ越してきたばかりのあいつに 「今日からお前俺の弟な」 と言った時も、うなずく代わりに抱きついてきた気がする。 ある日、いつものように寄ってきたリョウタを見てふっと気づいた。 こいついつの間にか俺よりデカくなってないか? 黙ってすがりついてくる仕草はまるで子供なのに、 俺の身体に回された腕も込められた力...
  • 28-469
    プリクラ 「よし、プリクラとろうか」 UFOキャッチャーに熱中していた俺を、アイツが引っ張ってきた。 「待てって、あのピ○チュウがあと2回で取れるんだってば」 「時間ないんだから急げって!」 脇から手を回されて強制送還。ああ、俺のピ○チュウが。 ……時間がないのは分かってる。電車の時間、あと30分だってことも。 だから何か記念になるものを残したいんだってこともわかってる。 あんなゴツイ面で可愛いもの好きだから、ぬいぐるみでもあげようと思ったのに。 アメリカでも人気なんだから話のとっかかりにはなるだろうに。 「ほらUFOキャッチャーなんていつでもできるんだから、入れって」 ぐいぐいと強引にプリクラの機械に押し込まれる。 「お前一期一会って知らないのかよ。ああいういいプライズはなかなかないんだぞ」 「あーもーうっさいなー、いいから撮るぞ...
  • 28-459
    罰ゲームをきっかけに変わった関係 ※女装注意 「まったく、まいったよ」 友人の柴本にそうこぼしたのは、別に奴に助けてもらおうと思ったわけではない。ただちょっと、愚痴を聞いてもらいたかっただけだ。 「どうしたの?」 「実は罰ゲームで今度のゼミ合宿の時に女装で歌わなきゃいけないことになってさ」 「……それは、大変だね」 そう答えた柴本の様子が少しおかしかったことに、その時の俺はちっとも気付かなかった。 「そうなんだよ。女装自体もあれなんだけど、それよりも服をどうするかが問題なんだよな。  誰かから借りるにしても、俺と変わらないくらいでかい身長の女の子の知り合いなんていないしさ。  着物だったらちょっと小さくてもなんとかなるだろうから、姉ちゃんの振り袖でも借りるかな」 「でも西田のお姉さんって西田の肩くらいまでしか身長ないって言ってなかったっ...
  • 18-479
    卒業 「卒業式でー泣かないーと冷たい人と言われそおー」  眼下に別れを惜しんで泣いている女子があちらこちらに見えた。  屋上から下を見ながら、あいつは古い歌を歌った。 「女って浸るなあ。会おうと思えばいつだって会えるくせにさあ」 「いいだろ別に。それより卒業ソングだったらいくらでも他にあるだろ。 そんな昔の曲、チョイスすんなよ。」 「お袋の十八番だよ。いいだろ。わかるお前もお前だけどな」  そういってあいつは笑った。 「お前、親とカラオケに行くのか。すげえな」 「俺しか相手いないじゃん。会社のストレス発散カラオケなんだから」 「それでも普通はいかねーよ」  卒業証書が入った筒を手に持ちながら、なんとなくこの場から離れがたくて、 俺達はさっきからなんでもない話をしていた。 「歌詞なんかみないで歌えるぜ。でもー、もおっとー」 「うわー、やめろー...
  • 28-489
    希望に満ちた朝 朝になって目覚めた。夜明け前の冬の朝、窓の外には真っ暗闇がまだ広がっているであろう時間。 片隅に押しやった一人用テーブルの上には、昨日の夜食べ散らかした弁当ガラとカップ麺の容器、ビールの空き缶なんかが そのまま雑然と影になっている。 寒くてたまらなかったから大智にくっついて寝た。それで間違いが起こった。 大学に入って初めて親友と呼んだ男の部屋へ、初めてのお泊まり。いったいどっちにより多くの下心があったのか。 飲んでるうちに好きな奴の話になって、お互いに試すような言葉を投げて確信を深めて、それでも勇気が無くてそのまま寝た。 『寒いからそっち行っていい?』は絶好の口実だった。肌が触れた途端二人ともが生唾を飲み込んで、 その音を聞いたせいで告白よりも衝動が先走った。 何も言わずに口づけあって、そのあとやっと「朋希が好きだ」と聞き取れ...
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