*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「9-429」で検索した結果

検索 :
  • 9-429
    おあいこな喧嘩 「早い!」 互いに果てた直後、まだそこから抜いてもいないうちにそう怒鳴りつけられ、鷹野は一瞬きょとんとした。 「え、はや、て」 「イくのが早ぇっつってんの!」 広瀬はいらいらと吐き、いまだのし掛かる鷹野を押し退ける。 勢いで、秘所から鷹野のモノがずるりと抜け落ちた。 「なっ、なに言ってんだよ。ヒロセだって一緒にイったじゃん」 「そりゃお前がガツガツ追い上げるからだろ! 俺はもっとゆっくり感じたいの!」 「追い上げるったって、俺ヒロセの前はほとんどさわってないよ。てか、ヒロセ自分で扱いてたし」 「だから! タカノががんがん突き上げて来るから!」 「だいたい、ヒロセは挿れる前に一回出してんじゃん。俺が一回イくまでに二回イってんだから、  早いってんならヒロセの方だよ」 「バカ、挿れてからの話だよ!」 「じゃあなに、ヒロセは俺とヤってて気持ち...
  • 19-429
    くっついたりはなれたりくっついたりはなれたり 「もーやだ!絶対別れる!あんな馬鹿女しらねえ!」 「そっすかー」 「なんだよおまえ!先輩に対して冷たくね!?冷たくね!?」 「ンな事言われても、その喧嘩何回目っすか」 「忘れた!」 「彼女が他の男と遊びに行ったら別れて、三日もしたらよりもどして。 先輩が記念日忘れたら別れて、その日のうちに電話で仲直りして」 いい加減、別れてしまえばいいのに。 別れたって俺にチャンスなんか無いのは知っているけど… 「先輩らが別れる度に泣き付かれる俺は迷惑っす」 「う…それは悪いと思ってるけど…」 別れてしまえばいいのに 何度も飲み込んだ言葉 「もう別れたらいいのに」 不意に口をついてしまった言葉に、先輩が驚いたように目を見開く 一度口にしてしまえばとまらない 「そんなに些細な事で...
  • 6-429-1
    vvvlove(ノ^^)八(^^ )ノlovevvv 「矢追君、この文字列の意味がわかるかね?」 教授が振りむいて言った。手には、今日回収した学部生の課題論文。 その一本の末尾にさりげなく印字されている絵文字に、僕は平静を装いながら説明した。 「ふむ、記号を組みあわせて絵に見立てているのだね」 成程、若者はいつも面白いことを考えるものだねえ。 そう言って屈託なく笑う教授に、僕も思わず頬が綻む。 しかし、内心はそんなに穏やかではない。 一緒に研究をつづけられるだけで、幸せ。 教授への、崇拝にも似た感情を見透かされつつ、 僕は彼の手管にいつしか溺れてしまっている。 彼の若い滑らかな肌が、瑞々しい指が、僕を優しく凶悪に捉えて離さない。 挙句、僕が指導した、教授が採点するこの論文にこの絵文字……。 「おや、矢追君、首筋は毒虫にでも刺されたの...
  • 7-429-1
    Mなのに攻×Sなのに受 「公の場で糞の匂い振りまいてんじゃねぇ。おとなしく下水を流れてろよ糞は」 初めて彼に出会ったとき、彼は俺(とその他数人)を睨みつけて、そう言った。 小柄でまるで地上に舞い降りた天使のようなその容貌と裏腹のクールな低音ボイス。 俺たちは、そう、確か4~5人いて、それなりにそれぞれ刃物などを隠し持っていて ちょうどその時小金を持ってそうなカモを路地裏に連れ込んで、圧倒的に優位な立場から 「交渉」を行っている最中だった。 にもかかわらず。 わけのわからぬ威圧感、有無を言わせぬ命令口調。…何よりそのあまりにも冷ややかな眼。 「本当に自分が糞であるかのような心地になった…」 と、後にその場にいた一人が語っていたが 俺はと言うと、まるで聖なる雷に心臓を貫かれたかのように…生まれて初めて味わう 甘美な痺れに、頬を染め、呼吸が浅く速く...
  • 6-429-2
    vvvlove(ノ^^)八(^^ )ノlovevvv 『☆* ・°★ * ・°やっほ~シマちゃん\(^O^)人(^O^)/起きてるー?(ρ.-) 俺は大学に遅刻しそう~ε=┌(; _ )┘ヒー いやー、昨日は飲み会★⌒(*^^)d_||_b(^^*)⌒☆が長引いちゃって(^_^;ゞナハハ おかげで二日酔い…{{{{(+_+)}}}}ズキズキ 寝起きにシマちゃんの顔を見たら♪( ^o^)\(^-^ )♪一発で治るo(゚ぺ)○☆んだけどなぁ|_・)チラッ うーん、早く会いたいよ~v⌒ヽ(^ε^*)チュッ(*^3^)ノ⌒vチュッ シマちゃーん、(^O^)ア(^o^)イ(^o^)シ(^o^)テ(^o^)ル(^O^)よーVvV vvvlove(ノ^^)八(^^ )ノlovevvv(*ノノ)キャーテレチャウ/// シマちゃん、今夜はうち来る?.....((((*^o^)...
  • 10-429
    うまカップ 「……なに食ってんだ?」 「うどん」 「はぁ?」 「だからさ、レトルトの皿うどん」 「そんなもんがあったのか…」 「今日初めて見つけたから買ってみた」 「ふーん。で、今日の夕飯は?」 「これ」 「ああ?」 「お前の分もあるから。なかなか旨いぜ?」 「……いらね」 「なんで。うどん好きだろ」 「レトルトなのが嫌だ」 「オレがいない時はカップ麺とコンビニ飯で生きてるくせに」 「るせ。お前がいんのになんでレトルト食わなきゃなんねぇんだよ」 431 : 風と木の名無しさん[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 01 39 42 ID JxzJ6LroO [2/2回(携帯)] 「コレだってちゃんとオレが用意した食事でーす。だから食え」 「やだ」 「自分で作らねぇくせに文句言うな」 「最近レトルトの飯食って旨いって思ったことない。だか...
  • 7-429
    Mなのに攻×Sなのに受 「お前を見てるとイライラする。俺のことをなんにも分かってないくせに分かった顔をして微笑む顔も  そうやってなだめる声も、俺の加虐心をかきたたせているのはお前であって  俺に手をださせてあるのはお前以外の何者でもない。  俺が悪いわけじゃない。俺のせいじゃない。」 俺が喋った後お前は4秒待ってごめんねと笑った。 ざまあみさらせ、その青タンお前にぴったりだ馬鹿野郎。 馬鹿野郎、今日どこいってなにしてた。誰と会った。誰と話した。 一秒ですら離れたくない俺の気持ちすらわかっちゃあいねえのに そんな顔でそんな声で大丈夫だなんて吐くな。 こんな感情を与えたお前が悪い。その青タンは俺のせいじゃない。 ああ、なのにこの罪悪感はなんだよ。 「僕が好きで好きでだからこそ気に入らないしムカつくのは分かっているから  いくらでも殴ってくれ...
  • 6-429
    vvvlove(ノ^^)八(^^ )ノlovevvv 「受け、愛してる」 攻めがいきなりそんな事を言うもんだから、俺は思わずタコさんウィンナーを地面に落としてしまった。 ああ、最後の一個だったのに勿体ない。 「……聞いてんのか?」 「えっ?あ、聞いてる!すっげぇ聞きまくってる!」 そうは言うものの、地面に転がっているタコさんが気になって仕方が無い。 恐らく攻めも気付いてるだろう。俺の目が泳ぎまくってることに。 「もう一回言うぞ」 「いやいや!いいって。遠慮しとくよ」 タコさんが気になるのも確かだが、「愛してる」なんてこそばゆい事をリピートされるのもなぁ…。 いきなり何をトチ狂ってるんだろう、攻めは。 「…だってさ。俺たち恋人同士なのに全然それっぽくないじゃん?」 俺の冷たい視線に気付いたのか、気まずそうに攻めが言った。 「まあ、確かにそうだけど…。でもい...
  • 8-429
    年上ドジっ子 茶筒を開ければ茶葉をぶちまけ、 急須の蓋は閉めたままでお湯を注ぎ、 跳ねたお湯の熱さに驚いて急須を落す。 あまりに期待を裏切らない行為の数々に、俺は笑いを堪えることができなかった。 背後から突然聞こえた笑い声に、部長が振り向く。 「…黙ってみてるなんて人が悪いな」 ばつが悪そうにちょっと頬を赤らめて、俺を睨みつけた。 「すみません、部長がご自分でお茶を淹れるなんてあんまり珍しかったので」 「どうせお茶ひとつまともに淹れられない不器用者ですよ、俺は。お前代わりにやれ、笑った罰」 そう言って不貞腐れた顔をした部長は半歩身をずらして俺を呼び込んだ。 「はいはい、よろこんで」 「…みんなとメシ行かなかったのか?」 「給料日前の節約生活中でして…部長は弁当ですか」 「いや、俺もカップ麺」 珍しい、と思ったが何となく口には出さなかった。 ガサ...
  • 5-429
    隠せなくなった気持ち 「ずっと好きでした」 そういう風に中学校の頃に女の子に告白された事がある。 俺はその子の事なんか全然知らなくて、制服のリボンの色で同じ学年 だと分かったくらいだった。 真剣な瞳を向けるその子を見ながら(「ずっと」っていつからだろう)と 思った。 十数年たって今更そんな昔の告白を思い出したのは理由があって。 俺が彼に会うのは今日で三回目で、まだ名前と役職と、あとは煙草を 吸う事と野球が好きな事以外知らない。 そんな彼が好き、で。 どうしようもなく焦がれてる自分に気づいたから。 何かを渡すとき、少し彼に触れる。話をするとき、彼と目が合う。仕 事とはいえ、彼と同じ事を考える作業が楽しい。彼の声が直接胸に飛 び込んでくる。 身体中が彼からの刺激を待っていて、俺はその状態が苦しくて嬉しい。 いつから好きなら「ずっと好き」でいつ...
  • 2-429
    マイペースなS気質×短気なM気質 「カレー食べたい」 「はぁ?」 「カレー。今日の晩ご飯はカレーがいいな。ね、決定」 「決定って、俺の目の前にある鍋の中身を言ってみて下さい」 「おーでーんー」 「わかりますよね」 「タマネギとジャガイモはあるからニンジンと肉買ってきて。うしがいいな」 「わかりますよね!?」 「プリンも食べたいプリンー」 「おでん食いたかったんでしょ!? それで俺を呼んだんでしょ!?」 「あと二時間くらいだったら待てるから焦らなくてもいいよ?」 「ねえ、聞いてるんですか? バ カ な ん で す か !?」 「うん、わざとに決まってるじゃん」 「……なんで」 「あ、涙ぐんでやんの。泣いてる顔かわいいなー泣いてるところが一番かわいい」 「っ、普通、笑ってる顔って言うんじゃないんですか、こういうときは!」 ...
  • 3-429
    慇懃攻め×俺様受け 慇懃攻めに俺様受け。 この組み合わせを生かす萌えは数多あれど、 ここは主従関係をプッシュしたいね。 王族と騎士、悪の大魔王と参謀、長官と次官、社長に秘書…(*´∀`*)モエー いつも強気でワガママで自信満々な俺様受けは、 慇懃攻めが自分のモノだと公言して憚らないんだよね。 上から見下ろす立場で、一見無茶苦茶な、 慇懃攻めの命を削りそうな命令を簡単そうな態度で出したりして。 「私を何だとお考えですか」とか冷静に言う慇懃攻めに、 鼻で笑って目を薄めたりしてさ。 「何か問題でも?」とか居丈高にサラリと言って。 結局、その一言だけで慇懃攻めは言う通りに動いちゃうんだよね。 一見がとても無茶苦茶な命令故に、 周りの臣下が「あまりにも…」とか少し言いかけたらさ、 欠伸する俺様受けの代わりに、自然に慇懃攻めが臣下Aを押し留めたりでさ。...
  • 4-429
    終わりなき不毛の地  枯れた草色の肌をした男が、日除け布の下から俺を振り返った。  轟。  延々と続く不毛の大地を、乾いた風が吹き抜ける。 「──本当に、良かったのか」  舞い上がる砂埃を吸わないよう、鼻上まで布を引き上げた俺に、微かな低音が届いた。  この大地を吹き抜ける風のような囁き。  眼に強い陽光を背に、佇む男の表情は見え難い。  双眸を薄め、俺はハン、と息を零した。  轟。 「世界の果てを見せてくれるのだろう」  風が吹き抜ける。 「──お前はそう、俺に言った」  日除けの布がはためく。  俺は、少し痩せて、しかし意志を宿した侭の片腕を差し出した。  あの旅立ちの日。眼前の男が俺に対してそうしたように。 『俺と共に来い。お前に、世界の果てを見せてやろう』  俺は、だから。お前と共に来た。  轟。 「──世界の果ては、まだ遠いぞ」 「...
  • 1-429
    ショートケーキ×ガトーショコラ あれだ、ショートって事は真っ白にポツンと苺があるわけだ。 それに対してガトーショコラはまっ茶色に上にぽふーって粉砂糖粉が乗ってるんだよな。 それを踏まえて萌えてみる! 「今月の売上も、お前が一位かよ。……売れてるやつはいいよなー?」 「……どうして君はいつも僕に突っかかるのかな。」 やたらに喧嘩腰なガトーショコラに、長年みんな愛され続けている人気ナンバーワンのショート君が困るわけ。 ショートに比べると人気の落ちるガトー君はヤケになっちゃってさ。 「うるせぇ!お前みたいな真っ白のヤツに、俺の…この汚れた俺の気持ちなんか分かるかよ…!」 汚れてんのはチョコの所為なんだけど、本人はそれが劣等感でさ。ジロリ、って心底憎憎しげにショート君を睨むのね。 でも実はガトーショコラは、ちょっとしたショートへの憧れから頭の上に砂糖の白い粉と...
  • 22-429-2
    紳士攻め×流され受け 「で、どう?」  急に話が核心に飛んで、きた、と内心胃が縮んだ。  今日は久々の同乗だったから、危ないとは思っていた。  一日店で疲れ、ようやく帰宅となったらまた難題をつきつけられる。  ハンドルに集中しながらでは、とても対応できそうにない。  うちみたいな地方の大型スーパーは、不規則な業務のせいで社員の離婚率が高い。  店長も俺もそのくちで、今はふたりとも社借り上げの同じアパートに入ってる。  自家用車に同乗して通勤するのは、店の駐車場が少ないという事情のため。  社員がまず率先してパートやアルバイトに示しをつけてるわけだから、簡単にやめられない。  ……たとえ、同乗相手が俺のことが好きだなんて言い出したとしてもだ。 「しばらく考えてみてよ、柔軟な思考の訓練だと思って、ね」  店長はいつぞやの社員研修を引き合いに出して笑った。 ...
  • 24-429-1
    満月手前 「淳くんはどの月が一番好き?」 授業が終わり、駅へ向かう夜道の上で、横を歩く慧に不意に尋ねられた。 「月?」 「ほら、半月とか新月とか色々あるじゃん」 月の好みなど考えたこともなかった。 慧と知り合ってもうすぐ一年だが、未だに彼の言うことはよくわからない。よくわからないが、面白い。 「んー……三日月?」 「へー、なんで?」 「まあ、なんとなく」 何故かすぐに思い浮かんだのだが、理由までは分からなくて言葉を濁した。 「僕はね、あのくらいが一番好き」 慧が指さした先には、青白い月が冴え冴えと浮かんでいた。 少し歪な輪郭は、満月手前といったところか。 「意外だ」 「なんで?」 「もっとはっきりした、わかりやすい形のが好きだと思った」 俺が言うと、慧は「なにそれ」と少し憤慨してみせた。 「……咲きかけの蕾と一緒だよ。今から満ちてくって希望があっ...
  • 11-429-1
    悪の組織の幹部×同組織の最下層 「大体いつもさ、作戦が悪いんだよ作戦が」 「はあ…」 「あと一歩って所で秘密兵器が出てくるのなんて分かりきった事だろ?  なに、それとも今回は出てこないとでも思ったわけ?  まさか出てこないといいな~とか希望的観測で作戦を進めたとかじゃないよな?」 「いや、そんなことは、…ないと思うんだが…」 「思うんっだがってなんだよハッキリしろよ!いつも現場で動くのは  俺たちなんだよ俺たち。それわかってんのか?」 「それは、申し訳ないと思っている」 もう小一時間説教を食らっている。その間正座させられっぱなしの私は しびれが足全体に渡ってすでに感覚はなかった。 おそるおそる手を挙げて提案してみる。 「すまない、次は善処したいと思うので、もうそろそろ、その…」 「お・ま・え・が言うなお・ま・え・が!」 ピシピシとプラス...
  • 22-429-1
    紳士攻め×流され受け 初めは彼女に連れられてやってきた。 あまりにも俺の服装がダサイといって、オーダーメイドの紳士服屋。 そうしてあれよあれよという間に仕立てることになったスーツは、 俺の手持ちで一番高い勝負服となり、彼女と別れた今も捨てられない。 「ネクタイですか」 そう言って声をかけてくれたのは、スーツの採寸もしてくれた檜山さんだった。 今の給料じゃとても二着目は仕立てられないが、檜山さんに会いたくて、 俺はちょくちょくこの店に小物を買いに来るようになっていた。 「今日のお召し物はとても良くお似合いですね。今日のものに合わせるタイなら、こちらの臙脂も宜しいかと」 「じゃぁ、それを」 褒めてもらったスーツも、実は檜山さんの見立て。 この店に通うようになっても一向にセンスが磨かれない俺を見かねたのか、 檜山さんが「買い物につき合って頂けませんか」と言...
  • 11-429
    悪の組織の幹部×同組織の最下層 哀れな存在が、私の前に転がされていた…何時もの事だ。年は18~20か。 上物、とまでは行かないがそこそこには見られる若者だ。今は薬で蕩けているが、 普段はいかにも意志が強いであろう黒い瞳も、肩まで伸びた、染めていない濃い栗色の柔らかそうな髪も、良い。 「名前は?」私は目の前の贄に、何時ものように訊ねた。 「なまえ…ない…れふ…ここにくる…とき…すて…まひた」 私は密かに心底驚いた。…1mg錠で媚薬、10mg錠は自白剤、原末1gなら一包で廃人。 私の相手をさせるべく、手錠足錠をかけこの部屋に通す時には、10mg錠2つで処置させておく。 …元々、戸籍上の名前が無いような存在でも、必ず「通り名」程度は吐くはずなのだ。 「…そうか、まぁよい」 私は驚きを隠しながらもそう言うと、彼の双丘を開かせる。 そしてその奥の小さな腔に、麻酔薬...
  • 23-429
    なんちゃってSF 簡単ワープ装置が一家に一台。 気がつけば隣に居る友人は宇宙人だし、飼ってるペットは絶滅したはずの日本狼。 子供も、どちらかといえば優秀な人物のクローンを作る方に切り替わっている、そんな未来。 勿論アンドロイドは闊歩してるし、月まで行くのに、一日もかからない。 宇宙船も、頑張れば車と同じ値段で変えて、某ロボットアニメのような改造が出来る。 テレビや映画は、ホログラムでより立体的な映像で見れる。 そんな、昔俺がノートに書きなぐった黒歴史そのものな世界が、目の前にあった。 「何が、どうなって……?」 呆然とする俺の肩を、宇宙人(見た目はただのイケメン)が爽やかな表情で叩いてきた。 「よくわかったね、僕が宇宙人だって」 差し出された黒歴史ノートに驚いていると、更に宇宙人な友人は続けた。 「面白そうな設定だったから、ちょっとだけ世界をいじらせて...
  • 21-429
    真の勝者 「いいから行けよ、バカ幸人。」 「え?でも大和!お前怪我が…。」 「そんなのアイツも同じだろ、いいから行けっつの。」 「で、でも、そしたらお前一人n「あ゛~~~!!」 「譲ってやるって言ってんの! てめえ を アイツ に!  俺だって、こんな台詞臭くて恥ずかしいんだよ!  ホント早く行けバカ!」 「……ごめん大和、行ってくる。」 …フー、やっと行ったか。無駄に渋りやがって。 本当に俺を看病すんのかと思って若干焦ったじゃねーか! お見舞い&看病なんて美味しいシチュ、逃したら堪ったもんじゃねえ。 ふふふ、でもこれで俺の「幸人×京矢BLアルバム」が一歩完成に近づくな。 リアルBLの為なら、骨の一本や二本安いもんだぜ。 ああ!ホント腐男子で良かったぁ! 破れ鍋に閉じ蓋
  • 14-429
    犬型獣人 俺が二十歳を過ぎた頃、義父が死んだ。 施設から買い取った俺を押し倒し、好きなだけ弄んだ義父。 笑顔がなくなり、表情は固まり、感情は消え失せ、最後には声も奪われた。俺から全てを奪った義父は金欲にまみれた親戚たちに見送られて地獄へ旅立った。 金目のものは、全て親戚たちが平らげ、俺に残されたのは、片田舎の小さなお寺兼別荘だった。親父の祖父が親父の精神修行のために、この寺を建築したと聞いた時は流石に呆れた。 農業、簡単な修理、炊事等、生活に必要な文献を買いあさり、人目を避けて自給自足の生活を始めた。 寺に住み始めた三年目の秋、野生の柿を発酵させた酒が良い出来になった。 ほんの気まぐれで、寺の前に置かれているお稲荷さんの石像の足下に、赤カブの煮物と飲み口が少し欠けた湯呑みに柿酒を注いで置いた。 その日の晩、柿酒をあおり、胡座をかく。落ち葉の落ちる音が心地よ...
  • 27-429
    新婚旅行 私が彼に出会ったのは、『元妻』との新婚旅行の時だった。 泊まったホテルのドアボーイに、私は一目で心を奪われたのだ。 妻との関係は一瞬で冷めた。新婚旅行からひと月も経たない内に私達は離婚した。 妻は私が他所の誰かに心惹かれていることを薄々気づいていたらしい。私が離婚を切り出しても 彼女は何も言わず、ただ全てを諦めたような顔で離婚届けに印を押した。 彼女との離婚が済んですぐに私は彼のいる地へと足を運んだ。 一刻も早く彼の顔が見たかった。 彼が私のことを覚えているとは到底思えなかったが、それでもいい。 私は彼をずっと見ていたい。彼の美しい顔、柔らかい微笑み、精錬された言動。 その全てを始終目に焼き付けておきたかった。 「お忘れ物ですか?」 私の予想に反して、彼は私のことを覚えていた。 なんて素晴らしいことだ。私...
  • 20-429
    独り言から始まる恋 おれとおーたが友達かっていうと、多分ちがう。 おれは友達だと思ってるけど、おーた的にはちょっと話すクラスメイトって感じ。だと思う。 おーたは根暗っぽい外見で、見たまんま大人しいけど、おもしろいこと言うし、色々ヘンなこと知ってる。 だからおれはおーたに話しかける。おーたはウザそうにしてるけど、無視しないで相手してくれる。 何でかなーって思って訊いてみたら、今のクラスになってすぐ、イジメの一歩手前みたいな嫌がらせがあったんだけど、 おれがおーたと仲良くなったらなくなったから、おれはイジメっ子避けらしい。 おーたが仲いいっていったのが嬉しかったから、くわしい内容は覚えてない。 二月に入るとみんながバレンタインの話をしだした。 おれは女子の友達がけっこう多い方だと思う。生チョコねだってみたらめんどいからヤダって言われた。 や、板...
  • 15-429
    親友だった2人が恋人になる瞬間 「ひどいよな、『実験、実験って、ちっとも会ってくれない!』って、電話でいきなりだもん」 「まあねぇ、4年生のこの時期、理学部なら誰でも卒論の追い込みだわな」 「でしょ!? 今も日付も変わろうかってのに、研究室に缶詰だよ?」 「森本んとこ、先生厳しいもんな」 「もう必要ないと思うんだけどな、この検証はさ。……ああ、ごめん、安田、それ5mlずつ分注な」 「ラジャ。優美ちゃんもな……美人だったんだけどな」 「わがままだよな……せめて、こうして安田みたいに実験を手伝ってくれればさ」 「そりゃ無理でしょう、学部が違う」 「気持ちの問題だよ。俺に会いたいって言うんならさ」 「つきあいたいって言い出したの、優美ちゃんからだもんな」 「3ヵ月か……初詣デートくらいしかやらなかったな」 「クリスマスはドタキャンだったな、そ...
  • 18-429
    どう見ても中学生です。本当にありがとうございまs(ry 「初体験かー……ミチノリ君はいつ?」 何の気なしに投げた言葉で、彼の動きはぴたりと止まった。 居酒屋の貸し切り一部屋。すっかり出来上がった一角では、サークルの同期と先輩達が下ネタで盛り上がっている。 「あ、ありますよ……初体験ぐらい」 あるなしじゃなくて時期を聞いたんだけどなぁ、とは言えなかった。かわいそうに、彼はもう氷しか入ってないグラスに口をつけたまま、気まずそうに俯いている。 これから先輩になる自分にぐらい、正直に本当のことを言えばいいのに。いや、まだ心を開いてないうちに突っ込みすぎてしまった自分の失敗か? 下ネタは万国共通のATフィールド中和ツールだと思っていたのだが、そんなこともないらしい。人間色々だ。そこんとこ、ちゃんと見極めようよ俺。何やってるんだ俺。何やってるんだ、新歓隊長。 ささいな自己嫌悪に...
  • 13-429
    気づくのが遅すぎた 「ボールに卵を二つ割ってください。」 「……ん、こうか?」 「はい。殻が入ってますが、まあ取ればOKですね。」 「はっはー!俺様すげー!よし、次だ。」 「次に塩と旨み調味料を入れて泡立て器でよく混ぜてください。」 「おう!えーと、塩をパパッ、味の○をササッ。で、行くぜ!」 「ちょ、待ちなさい!ゆっくりでいいんですよ。ほら飛び散ってるじゃないですか。」 「こ、こうか?こうでいいのか?」 「はい、OKです。あ、そのくらいでいいですよ。じゃあ次は醤油を回す程度に。」 「ん?ん?まわす程度ってなんだ?どんくらいだよ、それ。」 「そうですね。卵液に直径3センチほどの円を二秒で描くようにイメージしてみてください。」 「……わかんねー。まあこんな感じでいいか。」 「少し入れすぎな気もしますが、まあいいでしょう。では箸で軽く混ぜてください。」 「軽く...
  • 26-429
    存在を刻む 例えば、携帯の着信に残るお前の名前とか。 例えば、ずぼらな俺に代わってお前が直していったスリッパの並びとか。 例えば、いつの間にか本棚に入ってる俺のじゃない漫画とか。 例えば、洗面所の一角を占めるお前の石鹸類とか。 例えば、前よりも消費が著しくなった調味料とか。 例えば、お前があちこちつけていったキスマークとか。 例えば、お前が泊って行った翌日の身体のだるさとか。 例えば、ベッドに残るお前の整髪剤の香りとか。 日々の生活の中に、お前の存在を刻んでいくのが幸せでしょうがない。 なかなか好きといえない
  • 24-429
    満月手前 「足りないなぁ」 車窓の外を見上げて木原がぼやいた。 白けた宵闇に星と月。電信柱の切っ先に、千切れた薄雲が引っかかっている。 下には建造物と人工の光が群をなして、一通り揃ったいつもの夜だ。 「何が」 「月。満月にはまだ少し足りないでしょう。せっかく晴れてるのに」 信号が青に変わって、静かに車が走り出す。 横に首をひねって、ハンドルを握る部下をちらりと見遣った。 鋭角的に整った横顔は成程、いくらか不満げな色を帯びている。 何百年に一度の天体ショーではないのだ。 幾望だろうが満月だろうが、眺める分にはたいした違いもないだろうにと思う。 どうにも不可解な男だというのが、二年半組んできた部下に対する感想だ。 冷静なようで、どこかしらズレている。有能なことは認めるが、時々突飛だ。 この間など、酔っ払った勢いか何かでキスされた。 取り押さえら...
  • 25-429
    薄くなったカレンダー 別れの時間が、近づいている。  野江が今月末に転校するんだ、といったあの日からもう2週間が経つ。 祖母の家の日めくりカレンダーはどんどんと薄くなっていって、 それは同時に彼との別れが近づいていることを示していた。  2週間前のあの日から、俺と野江は口をきいていない。 もっともっと最初のほうに教えてくれるべきだったんじゃなかったのか、とか、 ……俺っていう存在があるのに、するりと消えることに抵抗はなかったのかな、とか。  わかっている。彼が、そんな簡単な想いで俺に告げたわけではない、ということ。 でもやっぱりくるしくて、つらいのは、……俺がどうしようもなく野江が好きだから、ってだけで。 「はあ」 五度目、かな。それくらいになるため息がつくと同時に、携帯電話が震える。画面を見る。 野江祐介。意地でも話してこなかったのに、限界だったのか...
  • 16-429
    いつも貧乏くじを引く人 いつも欲しいものは手に入らない。 サンタクロースに1000ピースのジグソーパズルを頼んだときは当時の最新ゲーム機が送られてきた。 小学校の時に好きだった大人しめの女の子に告白しようとしたら、その前にクラスで一番人気の女の子に告白された。 商店街の福引で3等のカップめん3ダースを狙ったときは特賞のハワイ旅行が当たった。 就職活動で第一志望の中小企業からお祈りメールを貰い、記念で受けた誰もが知ってる大企業から内定を貰った。 人からは贅沢だとか勝ち組だと言われるが、本当に欲しいものが手に入らなければ意味がない。 どんなに周りが羨んでも、自分にとってはただの貧乏くじ。 楽しくないゲームよりも、好きでもない女の子よりも、行きもしない旅行よりも、興味のない職よりも、自分が望むことが欲しいのに。 いつからか、何も欲しがらなくなった。 ...
  • 12.5-429
    二十年後 「あなたとこうしてると、幸せってこういうことだって思うよ」 一つ年下の彼は、コーヒーカップを口元に運びながら笑顔を見せた。 厳しい寒さもようやく和らいで、暖かい日差しが極上の毛布のようにオレたちを包んでいる。 こうやって彼とゆっくりできるようになったのは、ごく最近のことだった。 くり返される謀略。強制的に連れ出される戦場。殺さなければ、殺されていた。 その間も彼とは、ずっと一緒にいた。 「この幸せが二十年後も続いてたらいいな」 なんてね、と冗談めかして彼が笑う。 「……バーカ。二十年なんて、甘いこと言ってんじゃねーよ」 顔が赤くなるのを見られたくなくて、そっぽを向いたオレを、しなやかな腕が抱きしめる。 それから、初めてのキスをした。 人一倍寂しがりの癖に他人と関わりを持とうとしない受け
  • 22-329-4
    理性×本能 or 本能×理性 「だっかっら!! どうしてそうすぐに暴走させるんだお前は!!」 「あっれー、これはイケると思ったんだがなー」 「“恋人”逃げたじゃないか! 貸せ、俺が操縦する!」 「据え膳食わぬは男の恥とか言うじゃん?」 「黙れ。おら“本体”、呆けてないで追いかけろ」 「…あ、“恋人”発見」 「よしよし、近づいて肩を…」 「うりゃ」 「あ! おっ前、また邪魔しやがって…!」 「ここは抱きつかせた方がいいんだって。ほら、セリフはお前が指示しろよ」 「ったく…謝らせて、素直に告白させて、と…」 「お、いい感じいい感じ」 「お前が暴走させなけりゃ最初から上手くいったんだけどな」 「それだとつまんないだろー」 「うるさい」 「…んー、なんかこれいいムードじゃね?」 「……まぁ」 「俺操縦しようか?」 「お前は大人しくしてろ、俺がやる」 ...
  • 9-489
    冬のバーゲン 急がないとバーゲンが終わっちゃう! こういうときにかぎって、電車が遅延するんだろう。僕は不幸だ。 駅から駆けて閉めるぎりぎり、やっと到着した。 そのまま会場内を走って目当ての店に行くと、 もう店じまいを始めていた。 「ごめんねー。かんばいしちゃったわぁ」と うれしそうに店員さんに言われた。 がっくり。 ああ、これが僕の運命なんだろうか。 会場を出ると外は日が落ちていて、寒々としている僕に 冷たい空気が追い討ちをかけてきた。 「あれ?」 聞き覚えのある声がした。 「あ、きてくれたんだ」 「こ、こ、こんばんは!」 店長さんだ!! 「あの、あの、お疲れ様です。  冬のバーゲンは今日でおわりなんですよね?!」 「うん」 店長さんはにっこり笑った。 「さっき行ったら完売してま...
  • 9-459
    初日の出 初日の出に起こしてくれと言われてたのに、一緒になって爆睡した。 目が覚めたらもう9時半だった。 今更起こしても怒られるのが目に見えていたし、疲れていた様だったからそのまま寝かしておいた。 お昼のニュースでやってた、初日の出の模様をひたすら録画して、編集してから起こして その映像を見せたら、それまで大爆発寸前だった顔が、大爆笑に変わった。 ギターとドラム
  • 9-419
    相手を「さん」づけで呼ぶ 「あのさぁ、もう付き合って半年になるんだし先生はやめようよ。  だいたい俺、別にお前の先生じゃないし。好きに呼んでいいからさ。」 ある日突然、俺の恋人がそういった。 確かに、彼の言うことは正しい。 俺たちの出会いが医者と看護師なんて立場だったから、ついそう呼んでしまうんだけど。 職場でならともかく、普段そう呼ぶのはおかしいってのはわかってた。 でも、外で呼ぶ機会がそうあるわけでもないし、ついそのままになっていた。 そもそも、何て呼べばいいんだ? 「もう、呼び捨てでもいいって。」 悩みが顔に出ていたらしく、彼にはそう言われたけど。 俺より年上で、キャリアなんてずっと上で。 憧れと尊敬の入り混じった想いを抱えている相手を、呼び捨てになんか出来るわけがない。 でもなぁ、苗字で呼ぶのは他人行儀だしなぁ。 あとは、「くん」づけか...
  • 9-449
    番長×生徒会長 すっかり暗くなった学校からの帰り道、僕は少しだけ遠回りをして土手の道を通る。 いつも取り巻きのような連中に囲まれている彼が、たまに、そこに一人でいることを知っているからだ。 いた。 何をするでもなく、少年はうっすら雪の積もった河川敷を眺めている。 「よう、会長さん」 音に気付いた彼が振り向き、声を掛けられて、僕は自転車を降りた。 「こんなところに座っていたら冷えるだろう」 「別に」 「…僕を待っていた?」 「俺に会いに来たんだろ?」 あっさりと返される。顔色ひとつ変えない彼に、こっそり舌打ちする。 「随分遅いお帰りなんだな」 「生徒会の仕事で」 「こんな時間までよくやるもんだな。…ゴッコ遊びみたいなモンをさ」 「……まるで」 「あん?」 「いや、」 「言えよ」 「…まるで、君らのやっていることは、ゴッコ遊びじゃないような...
  • 9-479
    攻めが浮気 あれはいつもの事だ。だから気にしても仕方がない。 「友美ちゃんってかわいいよね、一緒にいると楽しいから好きだな」 「この間早紀ちゃんとラブホ行ってさ、俺はダメだって言ったんだけど」 「悪い、明日佳那子がどうしても付き合ってくれって言うから」 それでも、心が折れてしまうということはあるもので。 俺は何百回も書いては消していたメールをとうとう送信して、 知久の前から姿を消した。 と言う事が2ヶ月前のあらましな訳だが、 朝アパートの扉を開けると、足下に土下座して背中を見せている知久がいた。 「……なにやってんのお前」 「俺が悪かった、もう一度やり直したい」 なにを今更、お前に反省なんて言葉があるわけない。 「一哉がいなくなって考えたんだ。友美や早紀も大切だけど、 やっぱり一哉がいないと、俺…」 当時もよくそう言われた。しかし彼...
  • 9-499
    もういかなくちゃ 来る気はしていた。 だから今日だけは、部屋で一人待っていた。 気がつけば、俺の前にヤツは立っていた。 「…最後だから」 つぶやくようにヤツは俺にそう言った。 「うん」 色々言いたいことはあったのに、何も言葉にはならず、胸の中で溶けて消えて、 体の隅に黒く暗く溜まっていった。俺は手を伸ばすこともできず、ただ目の前に 出てきたその姿を見ていた。 ちょっと悲しそうな顔。丸めた背中。落ちた目線。 そんな顔するな、と言いそうになって、やめた。 「…あと何時間かいるんか?」 「いや、一言だけ言いにきただけ」 「何?」 俺の声は震えてなかった。 ただただ静かに、俺達は向かい合っていた。 「ありがとう」 あいつは笑顔を作ってそう言った。 「…最後にそんなこと言うな」 「俺、お前に会えて良かったわ」 「その言葉は、俺じゃないやつに言え」 ...
  • 9-469
    ギターとドラム スタジオの重いドアを開けると、ドラムセットの前に直人がいた。 真剣な表情で、神経質にシンバルの位置を調整している。 「お疲れ」と声をかけてから「ああ」と返事らしきものが返ってくるまで十秒。 「調子どうだ?」と問いかけてから「うん」と返事になってないものが返ってくるまで三十秒。 ここで構って欲しいからとちょっかいをかけても、冷たい視線が返ってくるだけなので 俺は大人しくケースからギターを取り出して、壁際に座り込む。 外の音が遮断されているから、スタジオの中はしんとしている。 もう少ししたら他のメンバーが来て騒がしくなるが、今はドラムの音が微かに響くだけだ。 そのまま約十分間、直人は黙々と叩いては再調整を繰り返していたが、 不意にこちらを見て「アンプ、繋げば」と言った。 「この間も言ったけど、神崎が俺に遠慮する必要はないよ」 ...
  • 9-409
    ツンバカ 川上はちょっと面白い。好きな子いじめをしてしまう小学生が、 そのままでかくなったようなヤツだ。好きだからついツンツン してしまう、わかりやすくて面白い。 俺は、川上にツンツンされている。 一回生の時サークルの飲みではじめて顔を合わせたとき、 川上は俺を見ていきなり真っ赤になった。 それからずっと、俺は川上にツンツンされているのだ。 ツンツンする割に、川上は、なにかっていうと俺にひっついている。 履修だって合わせてくるし、合宿の班だって同じにしたがる。 飲み会の席でも近くに陣取る。俺の部屋は三次会あたりの会場になることが 多かいんだけど、川上は絶対ついてきた。そして、ツンツンする。 出会って三年、俺はツンツンしながら側にいる川上と、なんとなく過ごしている。 川上と喧嘩をした。 喧嘩なんかするつもりじゃなかったんだけど、いつものように ツン...
  • 9-439
    会社で年越し・上司と部下 「あーあ。。今年もまたすげえ雪だぜ」 「え。。」 「あ、そっか。お前、去年はいなかったよなあ」 「。。はい」 俺はコンビニのおにぎりを一口食べた。 上司は海苔巻きを口にほおりこんだ。 広い事務所に2人きりだった。 「聞いてると思うけどよお、これからだからな、忙しくなるのは」 他の連中の半分は自宅に帰り、残りは別の場所で待機していた。 チャイムが鳴ったそばが届いたようだ。 俺は玄関にいって出前のそばをもらった。 「やあ。。届いたな」 上司はうれしそうに割り箸を割り、そばを口にする。 俺もそばをすする。 大晦日だなあ、と思った。 「お茶、いれますか?」 「いやいい。水はもう控えとく」 「俺もそうしよう」 上司がひとなつっこそうに笑った。 「なあ。お前と組むのは、今年最後だな」 ...
  • 9-439-1
    会社で年越し・上司と部下  そろそろ、疲労がピークだ。キーボードを叩く手を止め、片瀬はいい加減休ませろと疲れを訴える目元を押さえた。  大きく溜息を、一つ。そこから前方へと腕を伸ばし、伸びをする。途端、椅子がぎしりと悲鳴を上げた。人気のない室内にやけに大きく響き、片瀬は僅かに身を竦めた。普段は人がひしめくはずの場所に、一人きりという孤独感がそうさせるのか。暖房が効いているはずなのに、やけに薄ら寒い。 「あー、……疲れたっつーか、眠いっつーか、……早く帰りてェ……」  思わず、情けない声が出る。流石に部下の前では零せないが、今は一人きりだ。多少の愚痴も許されるだろう。  まったく何が悲しくて、この年末に居残って残業しなければならないのか。  納期が近いのは分かっている。思ったように進行しなかったのも、事実だ。そして、独身である身で、上司。残業に問題のない身であることも、十...
  • 9-499-1
    もういかなくちゃ ドアを開けて1歩踏み出し、直後戻ってきた。 「寒い」 「……学校行け」 寒いのは分かる。 今お前がドアを開けた瞬間一気に廊下が冷えたし。 路面も凍ってる見たいだし? 「転んだ事は黙っててやるからさっさと行けよ」 「嫌だ。こんな道歩いて行けるか」 「寒くても世の中動いてんだよ。可哀想な受験生はさっさと勉強しに行け」 「……家でもできる」 確かにこんなに寒い日くらいはと思うけれど ここで甘やかす訳にはいかない。 今まで頑張ってる事を知ってるから。 後悔はしてほしくないし。 ……それ以上にオレが困る。 「……バカ兄貴」 「バカで結構」 「なんで兄貴は休みなんだよ」 「大学生は休みが多いの。……お前も大学生になるんだろうが」 お前、オレのところに来るんだろ? 「なる。なってラブラブキ...
  • 9-489-1
    冬のバーゲン 新年の挨拶でもしてやるかと訪れた古道具屋の店先には、 「冬のバーゲン開催中」と毛筆で書かれた半紙が貼られていた。 店に入ると、店主である男が俺に気づいて片手をあげた。 「おう、あけましておめでとう」 部屋着にどてらを羽織って椅子に座り、ストーブにあたっている。店の中に俺以外の客はいない。 「外のあれは何だ?書初めか?」と聞いたところ、 「見たまま。バーゲンを開催中」と、なぜか自慢げに言われてしまった。 なんでも、有名百貨店の初売りバーゲンの様子をテレビで見たそうだ。それで「ぴーんときた」らしい。 「すげーんだよ。福袋買うための行列ができてたりしてさ。お客さんが大勢押し寄せてんの」 「それで自分の店でもバーゲンやろうって?」 「そうそう。気合い入れて福袋も作った」 見ると、店の隅に風呂敷包みがいくつか並べてある。 そのう...
  • 19-449
    田んぼにダイブ 「おめーそういや、ここに髭さ生えてんのな」 「おー? まあなあ」 夏休みの宿題を二人で片し、駄菓子屋へ向かう道、照り返る陽光にほわほわと揺れる髭が目立った。 明は自分の未だ生えない鼻の下を撫でて、それから佳樹の髭を触る。 「なんだあ、こすぐってぇ」 「俺にゃまだ生えてねえど」 「そのうち生えっぺ。おめげの顔はガキくせえからな。まだなんだろ『せーちょーき』が」 明はムッとした。 顔つきは確かに佳樹のほうが大人びているし、最近とみにゴツくなったが、それでもまだ明のほうが身長が高いのだ。 「どん口でそれを言うだ」 「こん口だ」 にししと笑う佳樹の顔が許せなくて、そのまま髭を一本抜いた。 「っいっで!!!何すっだか!!!」 「ざまあ見さらせっ。舐めた口きくからこうなんだ。ガキの癖して」 「へん!んじゃおめーのが大人だ...
  • 19-409
    お兄ちゃんと兄貴の境界線 ちいさい頃は、お兄ちゃんお兄ちゃんと自分の後ろをついてまわっていた年の離れた可愛い弟 女の子みたいにかわいくて、でもそんな可愛い可愛い最愛の弟に、自分でも気付かないうちに 兄弟以上の感情を持っていることに気付いてしまった兄 一緒にお風呂に入っているときにも、あらぬ場所へと目が行ってしまう ああもうマジ可愛い。抱きしめてちゅーして舐めまわしてぇ… そんな悶々とした思春期を過ごした兄は、高校進学を期に寮に入り弟から離れようとする なんとか幼い弟に手を出す変質者の烙印を押されることなく、無事に高校卒業。大学も一人暮らし 無事に就職できたと思った矢先、会社は倒産。次の仕事も無く、家賃も払えなくなり実家に帰ることになってしまう 7年ぶりに再会する天使のように可愛いかった弟は今では高校生。 さぞかし美人に育っているだろうと思っていた...
  • 19-499
    女の子が大好きです 「決めた、俺やっぱ彼女作るわ」 騒がしい昼休みの食堂。向かいに座る林に井上はそう宣言した。 「なにを言ってるんですか井上さん…既に僕と付き合ってるくせに」 後半は小声でそう続ける林の落ちついた態度が井上には余計にしゃくに障った。 ―俺が折角衝撃の告白してるんだから、少しは驚けよ そういう態度だから俺も女の子と付き合いたくなるんだよ 「うるさい。それは何かの間違いだ、そもそも俺別に男好きなわけじゃないし」 「僕も男好きじゃないですよ井上さんだから好きです」 「あ…今はそういう話はしてないだろ」 「はいはい」 「ほら、純情可憐な女の子と付き合う方が絶対楽しいし」 「僕は井上さんと付き合うまでに何人か女性とお付き合いしましたけど 素直とか純情な女の子なんて都市伝説でしたよ。井上さんの方がよっぽど可愛い」 お前は...
  • 19-419
    似た者カップルと正反対カップル 「俺は辛いのダメだって、何度も何度も!何度も!!伝えてんだよ。  そろそろ通じたかなって思ってたのにさ、あいつ昨日の夕飯何出したと思う。  カレー、それもド辛口!口入れた瞬間、火花散ったよ、目の前で」 「君のド辛口は、世間的には中辛だと思うけどな。食べられたの?」 「あんなの食える訳ないじゃん!牛乳で薄めて…、そんでも辛かったから、あと半熟卵作って貰って……」 「結局食べてるじゃない」 「……腹減ってたし、どうにか食ったけどさあ」 「うち、二人ともカレーにはチーズ派だなあ。とろけるチーズ試した?」 「試した試した。美味しかったから勧めたんだけどさ、何なのあいつのカレーに対する情熱。  『カレー様にトッピングなんて失礼だろ!』って頑なに拒否。意味分からない」 「あー……、今すごくイメージ湧いた」 「あんたんトコは良いよね。俺、味覚...
  • 19-439
    ぴしゃりと叱りつけた  例えば自分が機械であり彼とは違う次元違う存在のインプットにアウトプットを返すのみの存在であったなら。  そう思うことが何度もある。事実今目の前にある画面はそのためのものでありそれ以外の役目は自分に求められないものだというのにそれすら忘れ、そう思うことが本当に何度も何度も。  どうしてだろう、と思う。とてもとても、どうしてだろう、どうしてこんなことになったのだろう、と、何度も、何度も。  そう考えながらいつも思わず見つめ続けるのは目の前の特に高かったわけでもない――というよりはそれ以前にこれは支給されたものだ――1920x1200、22インチディスプレイなのだった。 「ねーねー、『センセ』? どうしたの」 そのディスプレイから聞こえる声に、は、と覚醒する。眉を寄せた様子の馴染みの顔がディスプレイから覗いていた。さあ――『仕事』の時間である。...
  • @wiki全体から「9-429」で調べる

更新順にページ一覧表示 | 作成順にページ一覧表示 | ページ名順にページ一覧表示 | wiki内検索