*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「9-459」で検索した結果

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  • 9-459
    初日の出 初日の出に起こしてくれと言われてたのに、一緒になって爆睡した。 目が覚めたらもう9時半だった。 今更起こしても怒られるのが目に見えていたし、疲れていた様だったからそのまま寝かしておいた。 お昼のニュースでやってた、初日の出の模様をひたすら録画して、編集してから起こして その映像を見せたら、それまで大爆発寸前だった顔が、大爆笑に変わった。 ギターとドラム
  • 10-459-1
    10-459-1 君が代 体育館で彼は言った。君が代を聞いたことがないのだと。 これからこの地域に越してきて初めて聞くのだと。 唖然とした僕を見つめて広島出身なんだ、と笑った。 その歌は彼の親や彼の教師、彼の故郷によって禁忌とされ、どのような歴史があり、 どんな意味でどんな風に国民が歌ってきたかを知っているからこそ歌えないし 絶対に歌いたくないのだと言った。 僕はそのような環境には育っていないし、ましてやその歌を憎んでもいない。 何故歌うのかもその意味も考えたこともない。 無知な自分を環境の違いだ、と恥じもしなかったが、普段共にふざけあい笑う彼の真剣な眼差しに小さな隔たりを感じた。 そっと隣にいる彼をみるとその顔はぐっと口をつぐみ、まっすぐ前を見据えていた。 騙す人騙される人
  • 8-459-3
    コスモス・時間旅行者 風のない穏やかな秋の日に一人、思い出の丘の上にあるコスモス畑。 立てかけた画架に白いカンバスを置いて、それを少し離れた木陰からいつかのように眺めてみる。 ちょっとだけ視線を逸らせ遠くの雲を見るふりをすると、目の端にお前の姿を捉えることができた。 ぬるい陽射しを受けてコスモスたちは時間などないのだよとばかりに、ただそこにいつまでも。 一枚の絵ハガキが届いたのだ。 見覚えのあるその風景を描いたのが誰なのかは、すぐにわかった。  このハガキが届く頃には帰る  会って話したいことがたくさんあるんだ 描かれていたのは、上京するまで共に過ごした故郷のコスモス畑。 お前はよくそこで、時間を忘れて絵を描いていた。 俺はその側で何をするでもなく、ただそんなお前をいつまでも見ていたっけ。 今でもその風景は同じくここにあり、コスモスは今日...
  • 8-459-2
    コスモス・時間旅行者 彼の実験室には用途の不明瞭な、奇妙としか言いようのない物が多い。 と言うよりも、奇妙な物しか無いのではなかろうか。 目に付く物で奇妙でない物なんて、古びたテーブルに飾られた小さな花ぐらいのものだ。 薄暗い部屋に不釣合いに揺れる白い花は、まるで逆境に置かれているようでいじらしく、愛しく思えた。 ……まあ、この部屋にある以上はただの花でない可能性の方が高いのだが。 「あまり触らないでくれよ。危ないからね」 奇妙な陳列物を物色していた私に、彼の柔らかな声が注意を促す。 しかしそうは言ってもせっかく招かれたのだから、このチャンスをのうのうと見過ごす手は無い。 御婦人方との話の種として少しでもこの部屋を見て回るのが今の私の義務であろう。 激しく燃え上がる使命感に駆られた私は、耳が聴こえなくなった振りをして物色を続ける事にした。 数十分後、私は...
  • 8-459-1
    コスモス・時間旅行者 現在ではコンピューター制御されたホログラムの中でしか見ることのできないコスモス。 しかし今、獄中で俺が見つめているのは紛れもなく清楚な一輪のコスモスだ。 まるで昨日手折ったばかりのような鮮やかさでそこにある。 タイムトラベルが特権階級のものだけではなくなった今でも、 平行世界を極力作らないためにトラベルの規制は厳しい。 旅先の人物との交流はもちろん、いかなる事物も損壊持ち帰りは厳禁、 そこに存在した痕跡を最小限に留めなければならず、 違反すればパスポートは剥奪され厳罰に処せられる。 『滞在日数超過罪』 『人物事象に係る痕跡残留罪』 それが俺の罪状だ。まもなく刑期を終え自由の身となる。 文明開化の波が押し寄せ、着物姿の中にちらほら似合わぬ洋装の人々が混じり始めたあの時代に 長く短い1年間、俺とおまえは深く静かに愛し合...
  • 5-459
    意地 「気持ちイイって言いなよ?」 「ぜってーいわねー!」 「イキたいならとっととイけば?」 「おまえの方が、もうヤバいクセに?」 …そんな風に戯れ合えたなら。 女の代わりに俺を抱くアイツには言えない。 絶対に。 …仕方ない、って表情を隠さず、俺に体を投げ出したこいつ 優しくしたいのに、出来ない なぁ その腕を、俺の背中に回してくれよ シーツじゃなくて 俺の体に、その爪を立てろ ねるねるねるね
  • 7-459
    浮気がばれた瞬間 「おい、お前! 何やってるんだ!」 朝、起きたばかりのあいつは、俺を見たとたんに血相を変えて俺を怒鳴りつけた。 怒鳴られる理由はうすうす感づいている。だが、ここまで怒られるのは心外だ。 寝起きが悪いのか、と思っていたらいきなり手首をつかまれて上に捻りあげられた。 大変な事になった。 「目玉焼きにはソースだって言っていたじゃないか!  お前、何で目玉焼きに醤油をかけているんだ!」 「悪かった。ただ、たまには醤油をかけてみたかったんだ。  とりあえず、離してくれないか」 醤油差しを持っていた手を捻りあげられてしまったせいで、Yシャツに醤油がかかってしまった。 今日着るシャツは新しいものを出せばいい。だが、このシャツについた染みは取れるだろうか。 俺たちは二人とも目玉焼きにはソース派ではあったが、たまに浮気をして醤油をかけたくな...
  • 4-459
    叔父×甥 「馬鹿か、おい!」 焦った俺の声に良夫がニヤリと口元を歪める笑いを浮べる。 「だって、叔父さん言ったじゃん、俺が18になったら…って」 ベットの上に寝転んだ俺。 俺の上に重なる良夫。 確かに言った覚えのある台詞に俺はぐうの音も出ない。 あれは、まだ幼稚園の可愛い「よっちゃん」良い子の「よっちゃん」だった時代の話。 「俺を、貰ってくれるんだろ?」 夕焼け空の下、帰ってこない俺の兄貴を待つ間に交わした約束。 寂しい子供が零す、うちの子になりたい、の台詞に 18歳になったらうちにおいで、と答えた。 お前をうちの子にしてあげるから、と。 …確かに答えたけど。 「叔父さん、言ったろう?男は約束を守るもんだって」 耳元に熱く、吐息と共に注がれる言葉に、腰が浮き立つように熱を持つ。 そう、俺が言った。 俺が、兄...
  • 8-459
    コスモス・時間旅行者 『――いつか、どこかで出会えるはずだから』 そう言って離した手のぬくもりを思い出す。 時間は差し迫っていた。 国は分裂し、同じ血で結ばれたはずの民族は 明日には武器と武器をつき合わせて睨み合う間柄に。 幼かった俺に、そんな事情を理解できるはずもなく ただ肩に置かれた父の手のいつにない力強さに震えていた。 あの人は最後も俺に笑いかけて、大きな手で俺を包んでくれた。 父は。 旧い名誉を重んじる家の跡継ぎとして、捨てるわけには行かなかった。 家を。そして俺を。 もしあの時、俺という存在がなかったら父はどうしていただろう。 何もかも捨ててあの人に着いていったんだろうか。 日々の糧も安寧すら保証されない放浪の旅に。 何度も父に問いかけようとして、口に出せなかった問いに 答えを出さないまま、今日父は逝っ...
  • 1-459
    シアン×マゼンタ シアン「色の三原色って知ってるか?」 マゼンタ「ああ俺とお前と、あとイエローもだっけ?」 シアン「そうだ。知っていてくれて嬉しい。じゃあさっそく混ざろう」 マゼンタ「あ?」 シアン「混ざって一緒に紫になろう」 マゼンタ「い、いや、ちょと待て」 シアン「じゃ緑でもいい」 マゼンタ「緑っておまえとイエローだろーが」 シアン「イエローも読んだほうがいいのか。そうか3pもいいな」 マゼンタ「落ち着け、おまえ目がおかしい!」 シアン「平常だ。はやく混ざろう」 マゼンタ「絶対おかしいって…うわあああ脱がすな」 シアンは無表情熱愛攻め、マゼンタはよくわからないまま流され受。 兵庫県民×大阪府民
  • 6-459
    理不尽なわがまま 薄暗い病室のベッドに、叔父さんは横たわっていた。 もう、ろくに身体を起き上げる事も出来ないらしく、 入り口に突っ立ったままの俺を、弱弱しい手つきで何とか手招きする。 「何だよ、幽霊みたいな顔しやがって」 どっちがだ、と言いたくなる。 自分こそ、見てるこっちが辛くなるくらいに顔面青白くしてるくせに。 俺の好きだった綺麗な長髪が無惨に抜け落ちて、頬もげっそりとこけている。 数ヶ月前とはまるで別人みたいで、俺は思わず息を呑んだ。 「叔父、さん……?」 「おう。何だ?そんなに変わっちまったかよ?」 その口調はいつもの軽快なそれと同じで、けれどそれが逆に空しさを漂わせている。 「変わりすぎだよ、ボロボロじゃ、な……」 普段と変わらぬ憎まれ口を叩こうとして、その声が震えているのに気付く。 駄目だ。泣いちゃいけない。叔父さんを心配させちゃいけない。 ...
  • 2-459
    「あ……、兄上ぇ……」 いろんなシチュが考えられますね。 まず、弟受けの場合、初めての剣術稽古で、木刀が重過ぎて持てずに 兄の方を涙目で振り返る弟だったら萌えます。 それか初めての夜の稽古?で、初体験の射精感に驚いて 助けを求めるように腕の中で見上げられても萌えます。 弟がある程度成人になっている場合には これは怒りに任せての呟きだったらそれも萌え。 裏切った兄の行為に怒りを隠せず、信じられないような目を向けて 悔しげにつぶやいてもらうと萌え。 もしくは戦場で、兄をかばって敵の流れ矢を受け、 最愛の兄の腕の中で笑いながらつぶやいてもらうと萌える。 そのとき手が震えながら、それでも兄に触れようとしていたら萌え泣ける。 これは受けだろうが攻めだろうがどちらでも良し。 病院と注射
  • 3-459
    和風×洋風 衣装で言うなら和風は粋で洋風はピシっとしたエリートって気がする。 それを踏まえて遊び人の呉服屋若旦那と洋行帰りの政治家の坊ちゃんとかいい。 (個人的な萌えで時代設定も追加で申し訳ない) 若旦那は男ぶりも良くモテモテ(死語) それを見てお坊ちゃんは「破廉恥な!」とかいつも怒ってる。 それは半分ヤキモチでもちろん若旦那も知っててからかってる。 たいてい吠えさせとくけどたまに気向くと若旦那も反撃。 「破廉恥なのはお前さんの服の方だよ。何だい、この弄ってくれと言わんばかりの穴は…」とか 今で言うジッパー部分に指を入れたりするエロセクハラ。 (確か昔はあそこはボタン一つしかなかった) アンアン言わされて服まで汚してしまい泣き出したお坊ちゃん(エリートは打たれ弱い)を 適当に宥めつつ売り物の和服を貸してあげる若旦那。 大き過ぎてぶっといお端折り作った...
  • 22-459-1
    俺は忘れた、だからお前も忘れろ あいつはあの時正体不明なくらい酔っ払っていて、俺はドラッグでぶっ飛んでた。 ちょっと多い量をキメて、つうかキめちまって結構血管が膨れ上がる感じに吐き気までもよおしてたとこだ。 ゲロと一緒に全部出ちまったさ。だから忘れちまったよ。と俺は言った。 言ったんだが。 「なぁ、マジで?マジで覚えてねぇの?」 なんでコイツはこんなに食い下がってくるんだ。 欠食児童みてぇなガリガリの体にありえない力を込めて俺の腕を掴む。 あんまり邪魔だったんで持っていたジャックダニエルでこめかみを押しのけた。 「覚えてねぇっつってんだろ」 その夜俺が、クラブのトイレに女を連れ込んでヤった後、 カウンターにいた馴染みの売人からいつものを買ってそれを吸って、それで部屋に帰ってきた。 そうすると俺と入れ違いに2人の女が部屋から出て行って、て事はだ。 汚ねぇ...
  • 14-459-1
    こういう、お題になる予定じゃなかったネタでもさらりとまとめて萌えさせてくれるお姉さん方が大好きです。踏んで 「…で、どうしてお前がここにいるんだ」 「…それ、俺が一番言いたい台詞」 ほんの好奇心だった。 ほら、あるだろ、少し前に流行ったメイドリフレってやつ。メイドさんがマッサージしてくれるやつ。 可愛くてうまい娘いるって後輩から聞いて、ちょっとだけ興味沸いたわけよ。 …まさか、昔からずっとつるんでるこいつ(もちろん男)が出てくるなんて予想もしてなかったわけよ。 「人手が足りないと頼まれたんだ。こんな制服だけど、給料がよくて助かる。何より腕を買っていただいた。それだけでありがたいよ」 整体師として開業するのがこいつの夢だ。そういやこないだ、新しい仕事先ができたと言っていた。力を発揮できると嬉しそうにしていた。真面目なこいつらしくて微笑ましかった。 …が、よ...
  • 18-459-1
    割烹着が似合う攻め 「おっはよー」  朝っぱらからやたらテンションの高い声に起こされて不機嫌なところへ、はた迷惑な声の主の現れた姿にぎょっとした。 「…なんだ、それ」 「タクちゃんほんまお寝坊さんやなぁ。そんなんやとお仕事大変やん」 「いやだから」 「あ、この割烹着? 俺が東京出てきたときにオカンがくれたんよ」  似合てるやろ、とくるりと回って見せる。  顔はいいくせに妙に庶民的なせいか、似合ってはいる、と思う。 「…お前、料理できたのか」 「できるわぁ! 俺のたこ焼きは天下一品やったやろ!」 「ああ……そうだったか」  そういえば、先日目の前の奴が押し掛けてきて作っていったたこ焼きは美味しかった。  天下一品かどうかはともかく。 「タクちゃん、朝ごはんできてるで。俺桃子ちゃん起こしてくるわー」 「あ、ああ……」  二階の子供部屋に上がっていく長身を...
  • 25-459-1
    京都人×東京人 地元の人から見たら京都弁が間違ってる感じがありまくりですが 脳内補正していただけると助かります。 ========== 出会ったのは夏の頃、その1年後に同棲することになった2人。 「食事の支度は交代で」というルールになり、最初のうちは 「はぁ? なんでお出汁取るのに昆布使わへんの?」 「えー、そんな薄い色の醤油使った煮物なんて美味しくなさそう」 とか言いつつ少しずつ妥協点を見出してきたのだけど、 大晦日の晩に正月用の雑煮の仕込みをしているときに 作り方の決定的な違いに気がついてケンカになった。 「嫌やわぁ、切り餅なんてめっそうもない。  ましてやお醤油色の雑煮なんて絶対あきまへんえぇ!」 「おい、それ味噌汁に餅入れただけだろ、  そんなの正月じゃなくても食えるじゃねーか!」 そのままケンカは互いの実家のお節料理の違いにまで発展し、...
  • 10-459
    君が代 「君が代、俺すごい好き」 床に座り込んで、せんべい食いながらの、奴の台詞。 目の前のテレビの画面では、学校行事で国旗の掲揚と国歌斉唱をするのしないのと教師が角つき合わせている。 「僕は嫌い。難しくて歌いにくい」 サッカーの国際試合とか見てみろ。プロの歌手が歌ったってなかなか上手く歌えてない。 あんな難しい歌を歌わせるなと言いたい。 それに、あれって天皇を褒め称えた歌じゃないか。 戦争に使った歌だ。 そう言ったら、奴はせんべいを口に銜えてクスリと笑った。 ラブソングなんだよ。と。 「え? 」 「だからね、本当は君が代はラブソングなんだよ。 『君が代』の『君』は妻のこと。 愛しい我が妻よ、いつまでもあなたと共に生きていこう。 って、そういう歌なんだ。本当は」 歌詞の意味はうろ覚えなんだけどさ、って笑う。 君が代がラブソング...
  • 13-459
    猫属性×犬属性 「絶対猫の方がいいですよ~」 「いいや、犬の方がいいに決まってる」 「猫の方がいいですよ~上田さんは猫の魅力を全く分かってないです!」 「はあ?犬の方が魅力あるに決まってるだろ。大体猫のどこがいいんだよ」 「あの気分屋さんなところです!自分から構ってくれることもあれば  こっちには見向きもしない時もあるのがたまらないじゃないですか~」 「お前…相当なMだな。それ重症だわ」 「猫の魅力のせいです!上田さんこそ犬のどこが好きなんですか?」 「飼い主に忠実なところ。尻尾振ってすぐ寄ってくるところ。」 「ええ~いつも向こうから来たら、嬉しさ半減じゃないですか!」 「なんでだよ。来るから構ってやろうと思うんだろ。ウザ可愛いんだよ」 「違います、むしろ放っておかれるから構ってほしくなるんですよ~!」 「うわ…お前趣味悪すぎ」 「上田さんだって変ですよう...
  • 20-459
    永遠の3位争い あいつの一番は親父だ。 普段変わらない表情が父親の前じゃコロコロ変わる。 悩み相談なんてするたちでもないのに父の日にそわそわしながら近づいてきた時があった。 「なぁ……親父のプレゼント、何がいいと思う?」 頼られた嬉しさから顔が締まらないながらなんて返そうか思案する。 なんて聞かれたときにはお前の父さんなら何貰っても喜ぶと思うけど……って言いたい気持ちをグッと抑えて具体的なモノを考える。 「普段使うネクタイとかよくね?」 「それ、いいかも……」 なんて満面の笑顔で返すあいつにちょっと自尊心をくすぐられたりして。 いい気になって「だろー?」って緩みっぱなしの表情でじゃれついた。 長年の付き合いでわかってる……あいつの父親に嫉妬しても仕方ない。あいつの一位はたぶん一生変わらない。 その次がかわいい妹。 妹ちゃんには申...
  • 18-459
    割烹着が似合う攻め 「あ、おかえりなさい」 いい匂いに導かれるようにして玄関から直接台所へ向かうと、 同居人は振り返ってにっこりと微笑んだ。 手にはお玉。コンロの上では鍋がくつくつと音を立てている。 「腹へったー。今日なに?」 「風呂吹き大根と、牛肉の甘辛炒めと、あとスーパーに菜の花が出てましたから  和え物にしてみました。おみおつけの具は新たまねぎとしめじ。  すぐ食べられますから、手を洗ってきてくださいね」 素晴らしい。なんて素晴らしい。 用意された食事はどれもおいしそうで――実際とても美味い事を俺は知っている―― それを整えてくれている手は白くて器用だ。 いっそ古臭いくらいな黒ぶち眼鏡もこいつにはよく似合っている。 気はきくし、家の中にはホコリひとつ落ちてないし、近所の奥様方にも可愛がられているらしい。 仕事で疲れて帰ってきたあと...
  • 27-459
    実体の無いものが人間に恋い焦がれる 夢を見た。三年前は老人で、その前の七年くらい前は男児だった気がする。何度目の出会いかわからない。でも、確かに同じ彼。 最近の仕事の話、好きな食べ物、心地よい沈黙。何度目だろうか?彼と過ごすのは。 今日の彼は青年。今の俺にとっては年下で。 きみは、おぼえてるかい? 何を? はじめまして、のすがたを。 ああ、確か今の姿だった。俺より少し年上のお兄さんだ。 おぼえてくれていたんだ。 何時の間にか、白の部屋は黒に変わる。彼だけが薄く光る。 ほんとに、おとなになった。 すっかり草臥れたおっさんだ きみは、もうないてない? ああ。大丈夫だ。 ねえ、 うん? きみは、しあわせになれた? …ああ。少なくとも今は幸せだ。生きる選択してよかったと。 よかった。きみにはしあわせ...
  • 15-459
    外国人×日本人 家の内外は掃き清め、打ち水をした。 茶菓子は以前美味いと言っていた物を探し出し、夕飯は和食だけ ではなく彼の国の口慣れたおかずも一、二品入れる。 風呂場を磨き布団は天気のいい日に干した上等の客用布団を用意し、 お気に入りの飼い犬の毛並みも整えておいた。 準備は万全とはいかないが、一通り済んだところで縁側で一息入れる ことにする。 『歓迎』とは、読んでそのまま相手を歓び迎えるという意味である。 そういう意味であるのならば、俺は確かに彼の訪問を歓迎している のであろう。 どうせ気付かれないと分かっているのに、こうしてこまごまとした 気遣いをもって迎える準備をしてしまうのだから。 それでも、たとえ気付かれなくても準備に心を砕いてしまうのは、 「Hey、輪之助!ヒサシブリ!」 っておいこ...
  • 11-459
    全然違う 眠れない。 眠くないわけではない。体は疲労を訴え思考は霞み手足は熱くなっている。 それでも眠りの気配は訪れない。 1523匹目のカラスを数え終わったところで抵抗を諦め、俺は寝台を抜け出した。 いつの頃からか、周りに人の気配があると熟睡できなくなっていた。 それは多少大きな家に生まれた者の宿命だったのかもしれないし、単にそういう 気質なだけだったのかもしれない。 だがそういう理屈を考える間もなく俺は部屋に刺客が現れれば跳ね起き、隣に誰 かが居れば身じろぐだけで目を覚ますような体になっていた。 この体質がいいものか悪いものかは分からなかったが、一人で眠る暗く静かな眠 りの安らかさに俺はいつも思考を放棄し暗いまどろみに身を任せていた。 この静かな眠りを妨げられてしまう位なら、どんなに愛しい相手であっても隣で 眠って欲しくは無いと。 そう、思ってい...
  • 22-459
    俺は忘れた、だからお前も忘れろ 一度唇を重ねたら止まらなくなった。乱暴にベッドの上に押し倒しても、竹下は拒絶をしなかった。 ただ蒼白な顔をして俺を見つめ、やがて観念したように固く目を瞑った。 乱されたシャツの下の身体は火がついたように熱く蕩けたけれど、その腕が俺をかき抱くことは最後までなかった。 翌朝、俺たちは何食わぬ顔で同じオフィスに出社し、すぐにいつも通りの日常に埋没した。 ちらりと観察すると、竹下は相変わらず凄まじいスピードで業務をこなしているようだった。 きれいな横顔からは何も読み取ることができなかった。 俺には、なぜ竹下が俺の行為に答えてくれたのかがわからなかった。 竹下には、己を失うということがない。人当たりは総じてよく、有能で同僚からの信頼も厚いがそのくせ誰からの距離も遠い。 近寄ると逃げていくこの男の心を知りたいと思ったのはいつからのことだろう...
  • 28-459
    罰ゲームをきっかけに変わった関係 ※女装注意 「まったく、まいったよ」 友人の柴本にそうこぼしたのは、別に奴に助けてもらおうと思ったわけではない。ただちょっと、愚痴を聞いてもらいたかっただけだ。 「どうしたの?」 「実は罰ゲームで今度のゼミ合宿の時に女装で歌わなきゃいけないことになってさ」 「……それは、大変だね」 そう答えた柴本の様子が少しおかしかったことに、その時の俺はちっとも気付かなかった。 「そうなんだよ。女装自体もあれなんだけど、それよりも服をどうするかが問題なんだよな。  誰かから借りるにしても、俺と変わらないくらいでかい身長の女の子の知り合いなんていないしさ。  着物だったらちょっと小さくてもなんとかなるだろうから、姉ちゃんの振り袖でも借りるかな」 「でも西田のお姉さんって西田の肩くらいまでしか身長ないって言ってなかったっ...
  • 16-459
    携帯が水浸し! 公園の大きな噴水の縁で、俺はかがみこんだまま凍りついた。 胸ポケットから滑り落ちた携帯が、浅い水盤の底で揺らめいている。 袖が濡れるのも構わず、慌てて水の中に手を突っ込んで助け上げた携帯は、 完全にお亡くなりになっていた。 あいつと喧嘩をして、携帯だけを引っ掴んで飛び出した。一刻も早くあいつ から離れたくて、上着も鞄も置いて、靴のかかとを踏んだまま走った。 むかついて、悲しくなって、あいつとよく昼休みを一緒に過ごした公園に 電車に乗って来て、噴水の縁石に座った。そこまでは良かったんだ。 何の気なしに水面を覗き込んだのが間違いで、いつもは着ているジャケットの 中で大人しくしている携帯は、初めて入れられた胸ポケットからぽちゃんと 水中にダイブしやがった。 踏んだり蹴ったりだ。 俺はため息をついた。 頭も冷えたし帰るかとピッピと携帯の...
  • 17-459
    同僚カップルとその片方に片思いする後輩 「大槻さんってえ、ほんっと超かっこいいすよね。出来る男って感じでえ」 「もっと褒めていいよ」 大分酔ってたけど向こうも酔ってたみたいで、普段真面目な大槻さんが冗談めいたことを言っていた。 俺が注ぎすぎてこぼして、すいませんと言ったのも気に留めてないようだった。 何話したかよく覚えてないけど、とにかく大槻さあん大槻さあんと言っていたら先輩が来た。 「お前どんだけ飲んでんだよ、後輩に情けないとこ見せんな」 大槻さんはふいと顔を背けて、先輩を故意に無視している。まあ二人はそれだけ気安い仲なのだ。 俺は大槻さんの仕草が子供っぽすぎてちょっと笑った。 「早く帰れ。陣内さん一緒の方だろ、今帰るとこだから」 「帰らねーよ」 「帰れアホ」 先輩は口汚くそう言いつつもかいがいしく大槻さんの世話をして、酔ってふらふらな身体を引っ張り上げた...
  • 14-459
    こういう、お題になる予定じゃなかったネタでもさらりとまとめて萌えさせてくれるお姉さん方が大好きです。踏んで 「これはもう恋だろ!と俺はようやく悟ったわけだ。一度認めればスッキリするもんだな」 「うーん…相手が誰かは知らないけど…それ、成就しそうなの」 「いや、無理。俺が一方的に好きなだけ。そいつは俺のことなんか眼中にないしな。それでいいんだよ」 「うん。まあ、君はそういう奴だよね。凄く単純で正直」 「お前に言われたくねーよ。お前はどうなんだよ。あっちの方は進んでんのか」 「題材が見つからないから何も進んでない。描きたくないものを描いたって仕方が無い」 「にあわねー。お前が『新進気鋭の芸術家』だなんて全然にあわねー」 「なんとでも言えば。君に僕の絵を理解してもらおうなんて思ってないから」 「るせーな。どうせ俺は頭悪いよ…っと。俺そろそろ帰るわ」 「予定でもあるの?」...
  • 21-459
    たまにはお兄ちゃんって呼んでくれたっていいじゃない Q 溺愛する弟にカレシができた。どうすればいいか。 A 1.邪魔する 2.邪魔する 3.邪魔する 「…で、その結果弟さんに嫌われたと」 「もうずっとまともに口もきいてくれないんだが……。これがアレか?反抗期ってやつか?」 「いやちがうでしょ、ソレ」 「けど!あいつ何かおかしいんだ。メールも電話も無視されるし、 もしかしたらあの何とかってクソヤローに邪魔されてるのかもしれん」 「フツーに今が兄離れの時期なんじゃないすかね」 「兄離れってお前……!俺に死ねって言ってるのと同じだぞそれ!」 「ハイハイ、つか先輩ちょっと飲みすぎ」 「あー何でこうなったんだろ。昔のあいつはもっと素直で、天使みたいにかわいかったのに。 俺の言うことは何でもきいて、『お兄ちゃん、お兄ちゃん』ってトコトコ俺の後をついてきて」 「先輩...
  • 12.5-459
    ずっと敵同士だったのに、急に仲良くしなければならなくなりました。 「いいかテメー。仲良くしてやってもいいが、この線からこっちに入ってくるんじゃねェぞ」 「うえうせぇ。テメェのクセェケツ、こっちに向けんじゃねぇぞ」 「…テメー、このやろう、上等じゃねェか」 「ア?その線からこっちに入ってくんじゃねェっての、テメェこそ」 「…いいか、坊主。ここでは俺が先輩だろうが」 「俺は坊主なんて名前じゃねェな。まァ、俺のテツという名前を呼ぶのは愛しい貴之だけでいいが」 「ふざっけんじゃねェよ!貴之が愛してんのはこのジョン様だけだ!」 「ハ、ジョンってツラかよテメェ。純日本産じゃねェか」 「うるせぇえ!表に出ろ!!」 「おとなりのみっちゃんがひっこす先では犬がかえないので、シベリアンハスキーのテツは、ぼくの家族の一員になりました。 でも、うちにずっといるしば犬のジョンは...
  • 9-489
    冬のバーゲン 急がないとバーゲンが終わっちゃう! こういうときにかぎって、電車が遅延するんだろう。僕は不幸だ。 駅から駆けて閉めるぎりぎり、やっと到着した。 そのまま会場内を走って目当ての店に行くと、 もう店じまいを始めていた。 「ごめんねー。かんばいしちゃったわぁ」と うれしそうに店員さんに言われた。 がっくり。 ああ、これが僕の運命なんだろうか。 会場を出ると外は日が落ちていて、寒々としている僕に 冷たい空気が追い討ちをかけてきた。 「あれ?」 聞き覚えのある声がした。 「あ、きてくれたんだ」 「こ、こ、こんばんは!」 店長さんだ!! 「あの、あの、お疲れ様です。  冬のバーゲンは今日でおわりなんですよね?!」 「うん」 店長さんはにっこり笑った。 「さっき行ったら完売してま...
  • 9-419
    相手を「さん」づけで呼ぶ 「あのさぁ、もう付き合って半年になるんだし先生はやめようよ。  だいたい俺、別にお前の先生じゃないし。好きに呼んでいいからさ。」 ある日突然、俺の恋人がそういった。 確かに、彼の言うことは正しい。 俺たちの出会いが医者と看護師なんて立場だったから、ついそう呼んでしまうんだけど。 職場でならともかく、普段そう呼ぶのはおかしいってのはわかってた。 でも、外で呼ぶ機会がそうあるわけでもないし、ついそのままになっていた。 そもそも、何て呼べばいいんだ? 「もう、呼び捨てでもいいって。」 悩みが顔に出ていたらしく、彼にはそう言われたけど。 俺より年上で、キャリアなんてずっと上で。 憧れと尊敬の入り混じった想いを抱えている相手を、呼び捨てになんか出来るわけがない。 でもなぁ、苗字で呼ぶのは他人行儀だしなぁ。 あとは、「くん」づけか...
  • 9-449
    番長×生徒会長 すっかり暗くなった学校からの帰り道、僕は少しだけ遠回りをして土手の道を通る。 いつも取り巻きのような連中に囲まれている彼が、たまに、そこに一人でいることを知っているからだ。 いた。 何をするでもなく、少年はうっすら雪の積もった河川敷を眺めている。 「よう、会長さん」 音に気付いた彼が振り向き、声を掛けられて、僕は自転車を降りた。 「こんなところに座っていたら冷えるだろう」 「別に」 「…僕を待っていた?」 「俺に会いに来たんだろ?」 あっさりと返される。顔色ひとつ変えない彼に、こっそり舌打ちする。 「随分遅いお帰りなんだな」 「生徒会の仕事で」 「こんな時間までよくやるもんだな。…ゴッコ遊びみたいなモンをさ」 「……まるで」 「あん?」 「いや、」 「言えよ」 「…まるで、君らのやっていることは、ゴッコ遊びじゃないような...
  • 9-429
    おあいこな喧嘩 「早い!」 互いに果てた直後、まだそこから抜いてもいないうちにそう怒鳴りつけられ、鷹野は一瞬きょとんとした。 「え、はや、て」 「イくのが早ぇっつってんの!」 広瀬はいらいらと吐き、いまだのし掛かる鷹野を押し退ける。 勢いで、秘所から鷹野のモノがずるりと抜け落ちた。 「なっ、なに言ってんだよ。ヒロセだって一緒にイったじゃん」 「そりゃお前がガツガツ追い上げるからだろ! 俺はもっとゆっくり感じたいの!」 「追い上げるったって、俺ヒロセの前はほとんどさわってないよ。てか、ヒロセ自分で扱いてたし」 「だから! タカノががんがん突き上げて来るから!」 「だいたい、ヒロセは挿れる前に一回出してんじゃん。俺が一回イくまでに二回イってんだから、  早いってんならヒロセの方だよ」 「バカ、挿れてからの話だよ!」 「じゃあなに、ヒロセは俺とヤってて気持ち...
  • 9-479
    攻めが浮気 あれはいつもの事だ。だから気にしても仕方がない。 「友美ちゃんってかわいいよね、一緒にいると楽しいから好きだな」 「この間早紀ちゃんとラブホ行ってさ、俺はダメだって言ったんだけど」 「悪い、明日佳那子がどうしても付き合ってくれって言うから」 それでも、心が折れてしまうということはあるもので。 俺は何百回も書いては消していたメールをとうとう送信して、 知久の前から姿を消した。 と言う事が2ヶ月前のあらましな訳だが、 朝アパートの扉を開けると、足下に土下座して背中を見せている知久がいた。 「……なにやってんのお前」 「俺が悪かった、もう一度やり直したい」 なにを今更、お前に反省なんて言葉があるわけない。 「一哉がいなくなって考えたんだ。友美や早紀も大切だけど、 やっぱり一哉がいないと、俺…」 当時もよくそう言われた。しかし彼...
  • 9-499
    もういかなくちゃ 来る気はしていた。 だから今日だけは、部屋で一人待っていた。 気がつけば、俺の前にヤツは立っていた。 「…最後だから」 つぶやくようにヤツは俺にそう言った。 「うん」 色々言いたいことはあったのに、何も言葉にはならず、胸の中で溶けて消えて、 体の隅に黒く暗く溜まっていった。俺は手を伸ばすこともできず、ただ目の前に 出てきたその姿を見ていた。 ちょっと悲しそうな顔。丸めた背中。落ちた目線。 そんな顔するな、と言いそうになって、やめた。 「…あと何時間かいるんか?」 「いや、一言だけ言いにきただけ」 「何?」 俺の声は震えてなかった。 ただただ静かに、俺達は向かい合っていた。 「ありがとう」 あいつは笑顔を作ってそう言った。 「…最後にそんなこと言うな」 「俺、お前に会えて良かったわ」 「その言葉は、俺じゃないやつに言え」 ...
  • 9-469
    ギターとドラム スタジオの重いドアを開けると、ドラムセットの前に直人がいた。 真剣な表情で、神経質にシンバルの位置を調整している。 「お疲れ」と声をかけてから「ああ」と返事らしきものが返ってくるまで十秒。 「調子どうだ?」と問いかけてから「うん」と返事になってないものが返ってくるまで三十秒。 ここで構って欲しいからとちょっかいをかけても、冷たい視線が返ってくるだけなので 俺は大人しくケースからギターを取り出して、壁際に座り込む。 外の音が遮断されているから、スタジオの中はしんとしている。 もう少ししたら他のメンバーが来て騒がしくなるが、今はドラムの音が微かに響くだけだ。 そのまま約十分間、直人は黙々と叩いては再調整を繰り返していたが、 不意にこちらを見て「アンプ、繋げば」と言った。 「この間も言ったけど、神崎が俺に遠慮する必要はないよ」 ...
  • 9-409
    ツンバカ 川上はちょっと面白い。好きな子いじめをしてしまう小学生が、 そのままでかくなったようなヤツだ。好きだからついツンツン してしまう、わかりやすくて面白い。 俺は、川上にツンツンされている。 一回生の時サークルの飲みではじめて顔を合わせたとき、 川上は俺を見ていきなり真っ赤になった。 それからずっと、俺は川上にツンツンされているのだ。 ツンツンする割に、川上は、なにかっていうと俺にひっついている。 履修だって合わせてくるし、合宿の班だって同じにしたがる。 飲み会の席でも近くに陣取る。俺の部屋は三次会あたりの会場になることが 多かいんだけど、川上は絶対ついてきた。そして、ツンツンする。 出会って三年、俺はツンツンしながら側にいる川上と、なんとなく過ごしている。 川上と喧嘩をした。 喧嘩なんかするつもりじゃなかったんだけど、いつものように ツン...
  • 9-439
    会社で年越し・上司と部下 「あーあ。。今年もまたすげえ雪だぜ」 「え。。」 「あ、そっか。お前、去年はいなかったよなあ」 「。。はい」 俺はコンビニのおにぎりを一口食べた。 上司は海苔巻きを口にほおりこんだ。 広い事務所に2人きりだった。 「聞いてると思うけどよお、これからだからな、忙しくなるのは」 他の連中の半分は自宅に帰り、残りは別の場所で待機していた。 チャイムが鳴ったそばが届いたようだ。 俺は玄関にいって出前のそばをもらった。 「やあ。。届いたな」 上司はうれしそうに割り箸を割り、そばを口にする。 俺もそばをすする。 大晦日だなあ、と思った。 「お茶、いれますか?」 「いやいい。水はもう控えとく」 「俺もそうしよう」 上司がひとなつっこそうに笑った。 「なあ。お前と組むのは、今年最後だな」 ...
  • 9-439-1
    会社で年越し・上司と部下  そろそろ、疲労がピークだ。キーボードを叩く手を止め、片瀬はいい加減休ませろと疲れを訴える目元を押さえた。  大きく溜息を、一つ。そこから前方へと腕を伸ばし、伸びをする。途端、椅子がぎしりと悲鳴を上げた。人気のない室内にやけに大きく響き、片瀬は僅かに身を竦めた。普段は人がひしめくはずの場所に、一人きりという孤独感がそうさせるのか。暖房が効いているはずなのに、やけに薄ら寒い。 「あー、……疲れたっつーか、眠いっつーか、……早く帰りてェ……」  思わず、情けない声が出る。流石に部下の前では零せないが、今は一人きりだ。多少の愚痴も許されるだろう。  まったく何が悲しくて、この年末に居残って残業しなければならないのか。  納期が近いのは分かっている。思ったように進行しなかったのも、事実だ。そして、独身である身で、上司。残業に問題のない身であることも、十...
  • 9-499-1
    もういかなくちゃ ドアを開けて1歩踏み出し、直後戻ってきた。 「寒い」 「……学校行け」 寒いのは分かる。 今お前がドアを開けた瞬間一気に廊下が冷えたし。 路面も凍ってる見たいだし? 「転んだ事は黙っててやるからさっさと行けよ」 「嫌だ。こんな道歩いて行けるか」 「寒くても世の中動いてんだよ。可哀想な受験生はさっさと勉強しに行け」 「……家でもできる」 確かにこんなに寒い日くらいはと思うけれど ここで甘やかす訳にはいかない。 今まで頑張ってる事を知ってるから。 後悔はしてほしくないし。 ……それ以上にオレが困る。 「……バカ兄貴」 「バカで結構」 「なんで兄貴は休みなんだよ」 「大学生は休みが多いの。……お前も大学生になるんだろうが」 お前、オレのところに来るんだろ? 「なる。なってラブラブキ...
  • 9-489-1
    冬のバーゲン 新年の挨拶でもしてやるかと訪れた古道具屋の店先には、 「冬のバーゲン開催中」と毛筆で書かれた半紙が貼られていた。 店に入ると、店主である男が俺に気づいて片手をあげた。 「おう、あけましておめでとう」 部屋着にどてらを羽織って椅子に座り、ストーブにあたっている。店の中に俺以外の客はいない。 「外のあれは何だ?書初めか?」と聞いたところ、 「見たまま。バーゲンを開催中」と、なぜか自慢げに言われてしまった。 なんでも、有名百貨店の初売りバーゲンの様子をテレビで見たそうだ。それで「ぴーんときた」らしい。 「すげーんだよ。福袋買うための行列ができてたりしてさ。お客さんが大勢押し寄せてんの」 「それで自分の店でもバーゲンやろうって?」 「そうそう。気合い入れて福袋も作った」 見ると、店の隅に風呂敷包みがいくつか並べてある。 そのう...
  • 19-449
    田んぼにダイブ 「おめーそういや、ここに髭さ生えてんのな」 「おー? まあなあ」 夏休みの宿題を二人で片し、駄菓子屋へ向かう道、照り返る陽光にほわほわと揺れる髭が目立った。 明は自分の未だ生えない鼻の下を撫でて、それから佳樹の髭を触る。 「なんだあ、こすぐってぇ」 「俺にゃまだ生えてねえど」 「そのうち生えっぺ。おめげの顔はガキくせえからな。まだなんだろ『せーちょーき』が」 明はムッとした。 顔つきは確かに佳樹のほうが大人びているし、最近とみにゴツくなったが、それでもまだ明のほうが身長が高いのだ。 「どん口でそれを言うだ」 「こん口だ」 にししと笑う佳樹の顔が許せなくて、そのまま髭を一本抜いた。 「っいっで!!!何すっだか!!!」 「ざまあ見さらせっ。舐めた口きくからこうなんだ。ガキの癖して」 「へん!んじゃおめーのが大人だ...
  • 19-409
    お兄ちゃんと兄貴の境界線 ちいさい頃は、お兄ちゃんお兄ちゃんと自分の後ろをついてまわっていた年の離れた可愛い弟 女の子みたいにかわいくて、でもそんな可愛い可愛い最愛の弟に、自分でも気付かないうちに 兄弟以上の感情を持っていることに気付いてしまった兄 一緒にお風呂に入っているときにも、あらぬ場所へと目が行ってしまう ああもうマジ可愛い。抱きしめてちゅーして舐めまわしてぇ… そんな悶々とした思春期を過ごした兄は、高校進学を期に寮に入り弟から離れようとする なんとか幼い弟に手を出す変質者の烙印を押されることなく、無事に高校卒業。大学も一人暮らし 無事に就職できたと思った矢先、会社は倒産。次の仕事も無く、家賃も払えなくなり実家に帰ることになってしまう 7年ぶりに再会する天使のように可愛いかった弟は今では高校生。 さぞかし美人に育っているだろうと思っていた...
  • 19-499
    女の子が大好きです 「決めた、俺やっぱ彼女作るわ」 騒がしい昼休みの食堂。向かいに座る林に井上はそう宣言した。 「なにを言ってるんですか井上さん…既に僕と付き合ってるくせに」 後半は小声でそう続ける林の落ちついた態度が井上には余計にしゃくに障った。 ―俺が折角衝撃の告白してるんだから、少しは驚けよ そういう態度だから俺も女の子と付き合いたくなるんだよ 「うるさい。それは何かの間違いだ、そもそも俺別に男好きなわけじゃないし」 「僕も男好きじゃないですよ井上さんだから好きです」 「あ…今はそういう話はしてないだろ」 「はいはい」 「ほら、純情可憐な女の子と付き合う方が絶対楽しいし」 「僕は井上さんと付き合うまでに何人か女性とお付き合いしましたけど 素直とか純情な女の子なんて都市伝説でしたよ。井上さんの方がよっぽど可愛い」 お前は...
  • 19-419
    似た者カップルと正反対カップル 「俺は辛いのダメだって、何度も何度も!何度も!!伝えてんだよ。  そろそろ通じたかなって思ってたのにさ、あいつ昨日の夕飯何出したと思う。  カレー、それもド辛口!口入れた瞬間、火花散ったよ、目の前で」 「君のド辛口は、世間的には中辛だと思うけどな。食べられたの?」 「あんなの食える訳ないじゃん!牛乳で薄めて…、そんでも辛かったから、あと半熟卵作って貰って……」 「結局食べてるじゃない」 「……腹減ってたし、どうにか食ったけどさあ」 「うち、二人ともカレーにはチーズ派だなあ。とろけるチーズ試した?」 「試した試した。美味しかったから勧めたんだけどさ、何なのあいつのカレーに対する情熱。  『カレー様にトッピングなんて失礼だろ!』って頑なに拒否。意味分からない」 「あー……、今すごくイメージ湧いた」 「あんたんトコは良いよね。俺、味覚...
  • 19-429
    くっついたりはなれたりくっついたりはなれたり 「もーやだ!絶対別れる!あんな馬鹿女しらねえ!」 「そっすかー」 「なんだよおまえ!先輩に対して冷たくね!?冷たくね!?」 「ンな事言われても、その喧嘩何回目っすか」 「忘れた!」 「彼女が他の男と遊びに行ったら別れて、三日もしたらよりもどして。 先輩が記念日忘れたら別れて、その日のうちに電話で仲直りして」 いい加減、別れてしまえばいいのに。 別れたって俺にチャンスなんか無いのは知っているけど… 「先輩らが別れる度に泣き付かれる俺は迷惑っす」 「う…それは悪いと思ってるけど…」 別れてしまえばいいのに 何度も飲み込んだ言葉 「もう別れたらいいのに」 不意に口をついてしまった言葉に、先輩が驚いたように目を見開く 一度口にしてしまえばとまらない 「そんなに些細な事で...
  • 19-439
    ぴしゃりと叱りつけた  例えば自分が機械であり彼とは違う次元違う存在のインプットにアウトプットを返すのみの存在であったなら。  そう思うことが何度もある。事実今目の前にある画面はそのためのものでありそれ以外の役目は自分に求められないものだというのにそれすら忘れ、そう思うことが本当に何度も何度も。  どうしてだろう、と思う。とてもとても、どうしてだろう、どうしてこんなことになったのだろう、と、何度も、何度も。  そう考えながらいつも思わず見つめ続けるのは目の前の特に高かったわけでもない――というよりはそれ以前にこれは支給されたものだ――1920x1200、22インチディスプレイなのだった。 「ねーねー、『センセ』? どうしたの」 そのディスプレイから聞こえる声に、は、と覚醒する。眉を寄せた様子の馴染みの顔がディスプレイから覗いていた。さあ――『仕事』の時間である。...
  • 19-479
    元カレの葬式で元カレの今カレと初対面 その子は冷めかけたコンビニのスパゲティーを困ったようにつついていた。 フォークに巻きつけるのがとてもへたくそで、それを自分に見せまいとしているようだった。 しかし見れば見るほど、自分とは正反対の容姿だ。 少しだらしのない格好をしていたが、気の強そうな黒目がちの目に健康に焼けた肌をして、活発で利発そうだった。 「俺、この人が中嶋さんなんだなって見てすぐ分かりましたよ」 急に話しかけられて、中嶋は皿から目を上げた。 けれどその子の方は俯いたまま、相変わらず皿の中のスパゲティーをかき回していた。 「だって、色白で、目が垂れてて、口が小さくて、とってもきれいな人だったって……」 会ったばかりのその子の口から、ふいに自分のことが話され始めたのを、中嶋は驚いて聞いていた。 そんな中嶋の態度に気付かないまま、その子――達也が死ぬ前まで付き合...
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