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**第27話 その男、変質者につき―― 波頭が断崖に当たり、白くしぶきを上げ砕ける。 海の独特の匂いを孕んだ風が、彼のごわごわとした黒い長髪をさわさわとなぶる。 生気のない土気色の肌に包まれた筋肉。 異形の存在にのみ放つことを許される、禍々しい眼光が双眸から溢れる。 鋼鉄の鎧すら引き裂くその豪腕は、がっぷりと胸の前で組まれている。 命なき者達の王(ノーライフキング)の異名を抱く男、ブラムスはその断崖の上に佇んでいた。 (あのルシファーとやらもまた、随分と酔狂な真似をやらかしてくれたものだな) 心中呟くブラムス。陽光を受けきらめく波が、長らく己が居城を出ることのなかった瞳に眩しい。 この光は、力のない同族であればとてつもなく不快に感じるどころか、 下手をすれば瞬時に灰になりかねないほど危険な光であるが、彼にはどうということはない。 不死王たる彼の体内に蓄積されてきた長年の魔力は、直射日光ごときでどうにかなるほど脆弱ではないのだ。 だが―― (…やはり日の光の下では、我は全力を出すことかなわず、か) ブラムスはその拳を何度か開閉し、やがて視線をそこに落とした。 たとえ高位とは言え、ブラムスもまた己の血の宿命から完全に逃れることはかなわない。 夜の闇から生まれ出でた存在である不死者は、太陽の光を忌み嫌うことを先天的に義務付けられているのだ。 それゆえの、ブラムスの心中の呟きである。 無論、相手が常人であればこの程度のハンデなどどうということはない。 魔力の練り込みがこの程度でも、一撃で並みの人間の肉体くらいなら軽く挽き肉に出来る。 だが、これがレナス・ヴァルキュリアのような強敵を相手にするのであれば、このハンデは命取りになりかねない。 (願わくば、日の光の届かぬ夜か、さもなくば何らかの建物の中で敵と合することが出来ればよいのだが) 日の光の下でも活動が出来るとは言え、あえて自ら不利な選択をする必要もあるまい。 我は不死王、決して愚かではないのだ。ブラムスは、言い聞かせる。 (さて、ひとまず今は何をなすべきか…) 決まっている。手持ちの情報の整理。 ブラムスはその場でかがみこみ、ルシファーから持たされた荷物をほどいてみる。 地図、方位磁針、参加者の名簿。食料と水―― (そして、問題はこれだ) ブラムスはそれを手に取った。 一まとめにされた小袋。ルシファーの言っていた「人殺しに役立つ道具」とやらが、この中に入っているはず。 その袋の表面は妙につるつるしており、そのくせごわごわする。 表面には倭国のものと思しき言語と、ミッドガルドの共通語によく似た緑色の文字が、併せて描かれている。 (この文字は……) たとえ己の居城に閉じこもってはいようと、伊達に幾星霜もの年月を生きてきたわけではない。 ブラムスには、若干の倭国の言語の知識もまた、持ち合わせているのだ。 (…ふむ……この文字は…『東』…『急』…『ハ』…『ン』…『ズ』…… 繋げて読めば、『トーキューハンズ』……これは一体何を意味するのだ?) そう、もしここにクロードらのような地球人がいたなら、その袋の正体をたちまちに看破してみせていただろう。 その袋の正体はビニール袋であることを。 そして、ビニール袋の表面に描かれた文字は、地球に存在する量販店の名称であることを。 しかし、『トーキューハンズ』の意味など露知らぬブラムスには、全くもって関係ない話であった。 (妙な物を掴まされていなければいいのだが) ブラムスは『トーキューハンズ』の袋を止めていた、緑色のテープを強引に引きちぎり、封を解く。 中に何らかの武器が入っていることは期待しない。どの道己の武器は、もとより拳一つ。 武器などなくても、それほど困りはしない。困るのは、呪いの品物でも入っていた場合だ。 ブラムスは警戒心を胸に、袋を逆さにしてみる。 どさどさと、中身がこぼれ出て… 転がり出てきたものは、合わせて2つ。 鬘(かつら)。 イチジクのような形をした何か。 (ふむ、見たこともない品物ばかり。かねてより我は津々浦々に配下の不死者を偵察に出し、 報告は細大漏らさず聞いてきたつもりだが、所詮座学で得られる知識など限度はある、か。 我も未だ、博覧強記の士を名乗るわけにはいかぬな) ひとまずブラムスは、その中の鬘を手に取ってみた。 糊のようなものが裏に塗られた小さい紙が、その拍子にぺろりと剥げ落ちる。 その紙切れには、先の「トーキューハンズ」の文字と共に、「特価¥980」の印刷がなされていた。 そして、その鬘の内側には、折り畳まれたもう一つの紙束が存在している。おそらくは、説明書。 (この鬘、どの国の役人が着けているものとも異なった形をしているな…) 一言で言えば、その鬘は頭頂部が完全に禿げ上がり、側頭部にのみ髪の毛が残った老年男性の髪型を模している。 しかしながら、何故か頭頂部には一本だけ毛が残り、実に不可解というほかない。 ブラムスは、その鬘に付属していたもう一つの折り畳まれた紙を開き、読んでみる。 倭国の言葉で、そこには「説明書」と書き込まれていた。 (どれどれ…『波』…『平』…『の』…『ヅ』…『ラ』……やはり繋げて読めば、『ナミヘーノヅラ』か) そう、そしてここにやはりクロードらのような地球人がいたなら、 その言葉の意味をたちまちの内に理解していたはずである。 その鬘は、20世紀後半期より続いているとある物語に出演している、 頑固な昔気質の老人のヘアスタイルを模していたことに。 そしてこれもまた、『ナミヘーノヅラ』の意味など露知らぬブラムスには、全くもって関係ない話であった。 (しかし、これが人殺しの役に立つ道具だというのか?) 一瞬、ブラムスの脳裏に疑問符が浮かぶ。 だが、次の瞬間その疑問符は、彼の長年の生とその知識により解消されることになる。 強大な力のこもったアーティファクトは、その外見が常にその性質を反映したものであるとは限らない。 どこにでもありそうな古ぼけた杖が、実は大魔法の使用さえも可能にする強大な杖であった…などという話は、 ブラムスもよく城の書物などで読み知ったことである。 すなわち、この奇怪なヘアスタイルの鬘もまた、見た目のみでその性能を判断することは禁物である。 これが強大な魔力を秘めたアーティファクトである可能性も、決して否定は出来ない。 「鬘がなければ即死だった」などという事態も、絶対にありえないと言い切ることは出来ない。 この鬘からは禍々しいオーラも感じられない。呪いの品である可能性は恐らくないだろう。 ブラムスは鬘を手に取り、それをうやうやしい動作で頭部に持っていく。 自らのもともとの髪が若干邪魔になるが、鬘自体もある程度伸び縮みするため、そこまで着用感は悪くない。 ブラムスは、しっかりとその鬘を頭に被った。 ―――― (さて、これより向かう先は――) 配られた品物の物色を終え、ブラムスは歩き出した。ひとまず向かう先は、西北西。 ルシファーに与えられた地図に描かれた「鎌石村」なる村に出かける。 (恐らく村のような施設は、他の参加者も拠点にしやすかろう。 敵対的でない参加者がそこに集まっていたなら、彼らから何らかの情報を得ることも、あるいは可能かも知れぬ) 出来れば、同じくこの酔狂な劇に巻き込まれたレナスと接触を取りたい。 かつてラグナロク直前に、アーリィに器を奪われかけた一件の貸しも彼女にはある。 いきなり切りかかるような真似は、恐らくしてこないであろう。 何よりブラムスは、自身の姿が普通の人間に与える印象をきちんと理解している。 いかに高貴なる不死王も、普通の人間の感覚からしてみればゾンビに毛が生えた程度にしか映るまい。 ゆえに、ブラムスの正体を知らぬ人間と接触した際に比べれば、 レナスなど己の素性を理解している者と接触した方がリスクは低い。 それを見越しての判断である。 (まあ昼間の内は戦闘を避けたいとは言え、 さすがに我に率先して剣を向けてくるような輩に慈悲をかける理由はないがな) そんな輩がいたなら、この命なき者達の王(ノーライフキング)にみだりに剣を向けたその愚行、 冥界(ニヴルヘル)への招待状をもってして、とくと後悔させてやるまで。 (我の拳とそしてこれで、な) ブラムスは、先ほど配布されたイチジクのような形をした「それ」を軽く握りこんだ。 その拍子に、先端から不気味な色彩をした液体がぴゅっと一筋吹き出る。 もしここにその液体の正体を知る者がいたなら、たちまちの内に青ざめていただろう。 その液体の正体はバブルローション。十賢者すらも恐怖するほどの、激烈な毒性を秘めた液体である。 幸か不幸か、しかしブラムスはその事実を知らない。イチジクの形をしたそれの、中身の液体の正体を。 (この液体の正体は良く分からないが、ひとまず使わせてもらうとする。 さて、日の光を避けながら鎌石村なる村へと向かうとするか) 街道沿いに並ぶ樹の木陰を縫うようにして、ブラムスは西北西へと歩を進める。 この酔狂な催しの、真実を知るために。 ―――― ブラムスは、確かに自身の姿が普通の人間に与える印象を、きちんと理解はしていた。 しかし、ブラムスはその一点だけ。一点だけを見落としていた。 ルシファーから与えられたアイテムの外見が、通常の人間にどのような印象を与えるのか、という一点を。 今、鎌石村に向かう、一人の不死者が居る。 彼は、頭に老年男性の禿げ鬘を着け、片手に握り締めるは浣腸。 そして街道の木陰を縫うようにして進む、その怪しげな足取り。 事情を知らぬ者がその光景を眺めたら、たちまちの内にブラムスは正体を誤解されていただろう。 その姿は、どう見てもスカトロプレイを強要する変質者です。本当にありがとうございました。 【C-07/朝】 【不死王ブラムス】[MP残量:100%] [状態:正常。本人は大真面目に支給品を着用] [装備:波平のヅラ@現実世界] [道具:バブルローション入りイチジク浣腸@現実世界+SO2、荷物一式] [行動方針:ひとまず情報を収集し今後の方針を決定する(特に夜間は積極的に行動)] [思考1:鎌石村に向かい、他の参加者との接触を試みる] [思考2:敵対的な参加者は容赦なく殺す] [思考3:可能であればレナスと接触する] [思考4:直射日光下での戦闘は出来れば避ける] [現在位置:C-07 断崖付近] ・ブラムスの特殊ルール(の提案) ブラムスは高位の不死者ゆえ、いわゆるヴァンパイアなどとは違い、直射日光下でも行動ペナルティはなく、 日光によるダメージなども特になし。ただし全戦闘力を解放して戦うことは出来ない。 決め技「ブラッディカリス」も、直射日光下では使用不能。 作者註: バブルローションは、原作では用いたキャラの攻撃に、一定確率で敵即死の効果を付与する毒液です。 「昂翼天使の腕輪」などのような多段ヒットアクセサリーと併用すると極めて凶悪なコンボになります。 ロワ中では、単なる致死性の毒薬として扱ってもいいかもしれません。 なお、バブルローションが万一直腸投与された際の具体的作用は、後の書き手に一任します。 【残り56人】 ---- [[第26話>決して怖じ気づいた訳じゃねぇぜ]]← [[戻る>本編SS目次]] →[[第28話>コイントス]] |前へ|キャラ追跡表|次へ| |―|ブラムス|―|
**第27話 その男、変質者につき―― 波頭が断崖に当たり、白くしぶきを上げ砕ける。 海の独特の匂いを孕んだ風が、彼のごわごわとした黒い長髪をさわさわとなぶる。 生気のない土気色の肌に包まれた筋肉。 異形の存在にのみ放つことを許される、禍々しい眼光が双眸から溢れる。 鋼鉄の鎧すら引き裂くその豪腕は、がっぷりと胸の前で組まれている。 命なき者達の王(ノーライフキング)の異名を抱く男、ブラムスはその断崖の上に佇んでいた。 (あのルシファーとやらもまた、随分と酔狂な真似をやらかしてくれたものだな) 心中呟くブラムス。陽光を受けきらめく波が、長らく己が居城を出ることのなかった瞳に眩しい。 この光は、力のない同族であればとてつもなく不快に感じるどころか、 下手をすれば瞬時に灰になりかねないほど危険な光であるが、彼にはどうということはない。 不死王たる彼の体内に蓄積されてきた長年の魔力は、直射日光ごときでどうにかなるほど脆弱ではないのだ。 だが―― (…やはり日の光の下では、我は全力を出すことかなわず、か) ブラムスはその拳を何度か開閉し、やがて視線をそこに落とした。 たとえ高位とは言え、ブラムスもまた己の血の宿命から完全に逃れることはかなわない。 夜の闇から生まれ出でた存在である不死者は、太陽の光を忌み嫌うことを先天的に義務付けられているのだ。 それゆえの、ブラムスの心中の呟きである。 無論、相手が常人であればこの程度のハンデなどどうということはない。 魔力の練り込みがこの程度でも、一撃で並みの人間の肉体くらいなら軽く挽き肉に出来る。 だが、これがレナス・ヴァルキュリアのような強敵を相手にするのであれば、このハンデは命取りになりかねない。 (願わくば、日の光の届かぬ夜か、さもなくば何らかの建物の中で敵と合することが出来ればよいのだが) 日の光の下でも活動が出来るとは言え、あえて自ら不利な選択をする必要もあるまい。 我は不死王、決して愚かではないのだ。ブラムスは、言い聞かせる。 (さて、ひとまず今は何をなすべきか…) 決まっている。手持ちの情報の整理。 ブラムスはその場でかがみこみ、ルシファーから持たされた荷物をほどいてみる。 地図、方位磁針、参加者の名簿。食料と水―― (そして、問題はこれだ) ブラムスはそれを手に取った。 一まとめにされた小袋。ルシファーの言っていた「人殺しに役立つ道具」とやらが、この中に入っているはず。 その袋の表面は妙につるつるしており、そのくせごわごわする。 表面には倭国のものと思しき言語と、ミッドガルドの共通語によく似た緑色の文字が、併せて描かれている。 (この文字は……) たとえ己の居城に閉じこもってはいようと、伊達に幾星霜もの年月を生きてきたわけではない。 ブラムスには、若干の倭国の言語の知識もまた、持ち合わせているのだ。 (…ふむ……この文字は…『東』…『急』…『ハ』…『ン』…『ズ』…… 繋げて読めば、『トーキューハンズ』……これは一体何を意味するのだ?) そう、もしここにクロードらのような地球人がいたなら、その袋の正体をたちまちに看破してみせていただろう。 その袋の正体はビニール袋であることを。 そして、ビニール袋の表面に描かれた文字は、地球に存在する量販店の名称であることを。 しかし、『トーキューハンズ』の意味など露知らぬブラムスには、全くもって関係ない話であった。 (妙な物を掴まされていなければいいのだが) ブラムスは『トーキューハンズ』の袋を止めていた、緑色のテープを強引に引きちぎり、封を解く。 中に何らかの武器が入っていることは期待しない。どの道己の武器は、もとより拳一つ。 武器などなくても、それほど困りはしない。困るのは、呪いの品物でも入っていた場合だ。 ブラムスは警戒心を胸に、袋を逆さにしてみる。 どさどさと、中身がこぼれ出て… 転がり出てきたものは、合わせて2つ。 鬘(かつら)。 イチジクのような形をした何か。 (ふむ、見たこともない品物ばかり。かねてより我は津々浦々に配下の不死者を偵察に出し、 報告は細大漏らさず聞いてきたつもりだが、所詮座学で得られる知識など限度はある、か。 我も未だ、博覧強記の士を名乗るわけにはいかぬな) ひとまずブラムスは、その中の鬘を手に取ってみた。 糊のようなものが裏に塗られた小さい紙が、その拍子にぺろりと剥げ落ちる。 その紙切れには、先の「トーキューハンズ」の文字と共に、「特価¥980」の印刷がなされていた。 そして、その鬘の内側には、折り畳まれたもう一つの紙束が存在している。おそらくは、説明書。 (この鬘、どの国の役人が着けているものとも異なった形をしているな…) 一言で言えば、その鬘は頭頂部が完全に禿げ上がり、側頭部にのみ髪の毛が残った老年男性の髪型を模している。 しかしながら、何故か頭頂部には一本だけ毛が残り、実に不可解というほかない。 ブラムスは、その鬘に付属していたもう一つの折り畳まれた紙を開き、読んでみる。 倭国の言葉で、そこには「説明書」と書き込まれていた。 (どれどれ…『波』…『平』…『の』…『ヅ』…『ラ』……やはり繋げて読めば、『ナミヘーノヅラ』か) そう、そしてここにやはりクロードらのような地球人がいたなら、 その言葉の意味をたちまちの内に理解していたはずである。 その鬘は、20世紀後半期より続いているとある物語に出演している、 頑固な昔気質の老人のヘアスタイルを模していたことに。 そしてこれもまた、『ナミヘーノヅラ』の意味など露知らぬブラムスには、全くもって関係ない話であった。 (しかし、これが人殺しの役に立つ道具だというのか?) 一瞬、ブラムスの脳裏に疑問符が浮かぶ。 だが、次の瞬間その疑問符は、彼の長年の生とその知識により解消されることになる。 強大な力のこもったアーティファクトは、その外見が常にその性質を反映したものであるとは限らない。 どこにでもありそうな古ぼけた杖が、実は大魔法の使用さえも可能にする強大な杖であった…などという話は、 ブラムスもよく城の書物などで読み知ったことである。 すなわち、この奇怪なヘアスタイルの鬘もまた、見た目のみでその性能を判断することは禁物である。 これが強大な魔力を秘めたアーティファクトである可能性も、決して否定は出来ない。 「鬘がなければ即死だった」などという事態も、絶対にありえないと言い切ることは出来ない。 この鬘からは禍々しいオーラも感じられない。呪いの品である可能性は恐らくないだろう。 ブラムスは鬘を手に取り、それをうやうやしい動作で頭部に持っていく。 自らのもともとの髪が若干邪魔になるが、鬘自体もある程度伸び縮みするため、そこまで着用感は悪くない。 ブラムスは、しっかりとその鬘を頭に被った。 ―――― (さて、これより向かう先は――) 配られた品物の物色を終え、ブラムスは歩き出した。ひとまず向かう先は、西北西。 ルシファーに与えられた地図に描かれた「鎌石村」なる村に出かける。 (恐らく村のような施設は、他の参加者も拠点にしやすかろう。 敵対的でない参加者がそこに集まっていたなら、彼らから何らかの情報を得ることも、あるいは可能かも知れぬ) 出来れば、同じくこの酔狂な劇に巻き込まれたレナスと接触を取りたい。 かつてラグナロク直前に、アーリィに器を奪われかけた一件の貸しも彼女にはある。 いきなり切りかかるような真似は、恐らくしてこないであろう。 何よりブラムスは、自身の姿が普通の人間に与える印象をきちんと理解している。 いかに高貴なる不死王も、普通の人間の感覚からしてみればゾンビに毛が生えた程度にしか映るまい。 ゆえに、ブラムスの正体を知らぬ人間と接触した際に比べれば、 レナスなど己の素性を理解している者と接触した方がリスクは低い。 それを見越しての判断である。 (まあ昼間の内は戦闘を避けたいとは言え、 さすがに我に率先して剣を向けてくるような輩に慈悲をかける理由はないがな) そんな輩がいたなら、この命なき者達の王(ノーライフキング)にみだりに剣を向けたその愚行、 冥界(ニヴルヘル)への招待状をもってして、とくと後悔させてやるまで。 (我の拳とそしてこれで、な) ブラムスは、先ほど配布されたイチジクのような形をした「それ」を軽く握りこんだ。 その拍子に、先端から不気味な色彩をした液体がぴゅっと一筋吹き出る。 もしここにその液体の正体を知る者がいたなら、たちまちの内に青ざめていただろう。 その液体の正体はバブルローション。十賢者すらも恐怖するほどの、激烈な毒性を秘めた液体である。 幸か不幸か、しかしブラムスはその事実を知らない。イチジクの形をしたそれの、中身の液体の正体を。 (この液体の正体は良く分からないが、ひとまず使わせてもらうとする。 さて、日の光を避けながら鎌石村なる村へと向かうとするか) 街道沿いに並ぶ樹の木陰を縫うようにして、ブラムスは西北西へと歩を進める。 この酔狂な催しの、真実を知るために。 ―――― ブラムスは、確かに自身の姿が普通の人間に与える印象を、きちんと理解はしていた。 しかし、ブラムスはその一点だけ。一点だけを見落としていた。 ルシファーから与えられたアイテムの外見が、通常の人間にどのような印象を与えるのか、という一点を。 今、鎌石村に向かう、一人の不死者が居る。 彼は、頭に老年男性の禿げ鬘を着け、片手に握り締めるは浣腸。 そして街道の木陰を縫うようにして進む、その怪しげな足取り。 事情を知らぬ者がその光景を眺めたら、たちまちの内にブラムスは正体を誤解されていただろう。 その姿は、どう見てもスカトロプレイを強要する変質者です。本当にありがとうございました。 【C-07/朝】 【不死王ブラムス】[MP残量:100%] [状態:正常。本人は大真面目に支給品を着用] [装備:波平のヅラ@現実世界] [道具:バブルローション入りイチジク浣腸@現実世界+SO2、荷物一式] [行動方針:ひとまず情報を収集し今後の方針を決定する(特に夜間は積極的に行動)] [思考1:鎌石村に向かい、他の参加者との接触を試みる] [思考2:敵対的な参加者は容赦なく殺す] [思考3:可能であればレナスと接触する] [思考4:直射日光下での戦闘は出来れば避ける] [現在位置:C-07 断崖付近] ・ブラムスの特殊ルール(の提案) ブラムスは高位の不死者ゆえ、いわゆるヴァンパイアなどとは違い、直射日光下でも行動ペナルティはなく、 日光によるダメージなども特になし。ただし全戦闘力を解放して戦うことは出来ない。 決め技「ブラッディカリス」も、直射日光下では使用不能。 作者註: バブルローションは、原作では用いたキャラの攻撃に、一定確率で敵即死の効果を付与する毒液です。 「昂翼天使の腕輪」などのような多段ヒットアクセサリーと併用すると極めて凶悪なコンボになります。 ロワ中では、単なる致死性の毒薬として扱ってもいいかもしれません。 なお、バブルローションが万一直腸投与された際の具体的作用は、後の書き手に一任します。 【残り56人】 ---- [[第26話>決して怖じ気づいた訳じゃねぇぜ]]← [[戻る>本編SS目次]] →[[第28話>コイントス]] |前へ|キャラ追跡表|次へ| |―|ブラムス|[[第38話>明後日の方向]]|

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