「Bが知らせるもの/この夜に夢を見る暇は無い」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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トーマス・ベイカーと鏑木シリカの2人はE-4,井戸の家から出発しようとしていた。
「さて、次の目的地だが……」
「南東の集落じゃないんですか?」
トーマスの言葉に疑問を呈すシリカ。
彼女はトーマスの目的である人喰いをする為に、参加者が集まりやすそうな集落を目指すと思っていた。
「いや、私はここを目指そうと思っている」
そう言ってトーマスは持っている地図を広げ、目的地を指差す。
そこはシリカが考えていた場所とは真逆だった。
「座礁船、ですか……」
「ああ、私はそこを目指す」
A-1にある座礁船、それがトーマスの目的地だった。
それを意外だとシリカが思っていると、トーマスはそれを見破ったのかなぜそこを目指す理由を説明し始めた。
「私がここを目指そうと思った理由は簡単だ。ここには何かある、そう考えたからだ」
「……簡単すぎます」
一言で説明され、思わずツッコミを入れるシリカ。
勿論トーマスもこれで説明を終わらせる気はなく、詳しい説明を始めた。
「そもそも私は最初から疑問だった。
資源開拓プラントはまだしも、座礁した船を地図に乗せていることが。
それも島から数百メートルは離れた位置にある船をだ。
殺し合いなら島の中だけで完結させても問題ないだろう、あのナオ=ヒューマが参加者を海に出す意味も無い」
「そうですね……」
トーマスの言葉に同意するシリカ。
それを背に受けながら説明は続く。
「ミス鏑木、私にはこの座礁船と資源開拓プラントは、殺し合いに乗る者の為にある訳では無い様に見えるのだよ」
「え?」
殺し合いに乗る者の為ではない、ならば誰の為に船やプラントはあるのか。
そのシリカの疑問にトーマスは答える。
「考えられる可能性は3つ。
まず1つ目はナオ=ヒューマの為にある」
「はぁ……」
「船やプラントがこの会場に置いてあるのはナオ=ヒューマにとって置かなければならない事情がある、という考え方だ。勿論理由は分からないがな」
「勿論、なんですか……」
「勿論だ、我等には情報が無さすぎる」
「なら、2つ目は何ですか」
勿論を付ける意味はあるのか、そう思いながらシリカは1つ目の可能性には納得できた。
だからこそ次に聞く事になる、2つ目が理解できなかった。
「2つ目は殺し合いに抗う我らの様な者の為だ」
「は?」
トーマスが何を言っているのか、シリカには理解できなかった。
なぜナオ=ヒューマが反抗する相手の為に物を置くのかがシリカの頭では思いつかないからだ。
「何で、ナオ=ヒューマがそんな事……」
「いや、ナオ=ヒューマでは無いかもしれんぞ」
「……どういう事ですか?」
「簡単だ。
ナオ=ヒューマには仲間なり部下なりがいて、その中に反逆者が混じっていると考えれば納得出来るだろう」
「な、成程……」
獅子身中の虫、という奴だろうか。
まあ確かに、ナオ=ヒューマは他人に好かれ無さそうだな。とシリカは思う。
トーマスのいう反逆者がこっそり私達の様な参加者に力を貸すのなら、殺し合いに乗る者の為にある訳では無いというにも納得はいく。
もしそうなら、そこから殺し合いを脱出する手がかりがあるのでは、とシリカは考えた。
「もっとも、現状では3つ目のナオ=ヒューマの気まぐれという可能性が一番高いがな」
「そうですか……」
しかしトーマスは容赦なくシリカの希望を打ち砕く。
そして
「まあこれで理解できただろう、私が座礁船を目指す訳が」
「分かりました。じゃあどちらにしろ集落に行って港から出発ですか」
「それは確かめてからだな」
「……何をです?」
トーマスの言葉の意味を問うシリカ。そして答えはすぐに帰ってくる。
「もしナオ=ヒューマが座礁船に行かせたくないなら、諦めて集落を目指しそこから出発することになる。
だがナオ=ヒューマにとって行くことが問題ないのであれば、おそらくC-3辺りに座礁船に行く方法があるはずだ」
「船や橋、とかですか?」
「いや、船ならともかく橋なら地図に書くはずだ。私は地下通路だと思っている」
「地下通路ですか……」
確かに地下通路なら地上の地図に掛かれていないのはおかしくない、のかな。
そう思いながらシリカは聞く。
「じゃあ直接C-3に?」
「いや、その前に神社に行っておこうと思う。
そこに通路があるかもしれんし、無いとしても人がいるなら情報交換もできる。
それに直接行くより道筋が分かりやすいだろうからな」
「分かりました」
こうして2人は神社をめざし歩き出した。
◆
「ぬわあああああん疲れたもおおおおおん」
亜希を背負いD-4から歩いてC-4の神社まで歩いてきた恋矢は、亜希を床に降ろしながらぼやく。
無理もない。距離こそ決して長くは無いが、歩きにくい森の中でなおかつ気絶した人間を運んできたのだから。不満の一つも言いたくなるだろう。
とはいえこのまま亜希を床の上で寝かせるのはいかがなものか、と恋矢は思った。
何か掛ける物をと思うが、自分の服はTシャツと短パンでこいつの服は現状ピッチリと着こんでいるし脱がすわけにもいかない。
仕方ないので亜希のデイバッグを枕代わりに頭の下に敷いた。
「これで少しはマシだろ」
多分、と後ろにつけて恋矢は亜希を寝かせる。
この時点で亜希を見捨てても良かったが、今更別れるのも嫌だった恋矢は亜希の横に座る。
そうして座りながら亜希が起きるのを待っていたが、しばらくして恋矢は心から思った。
「暇だ」
暇だった、凄く暇だった。
普段なら空き時間が出来たなら、スマホで音楽を聴くなりゲームするなり暇つぶしの手段がある。
が、現状スマホは取られている上に殺し合いという異常な環境だ。
この状況で暇つぶししている場合ではない、とは思う。
思うのだが、殺し合いが始まってから2時間以上経ち、C-4とD-4の間をウロウロしているだけとはいえ未だ亜希以外の参加者と会っていない事を考えると、この辺りは人がいなくて安全なのではと考えてしまう。
だから油断が生まれ、暇だなと思うのだった。
しかし恋矢の心を油断が支配しようとするまさにその時。
ギィ
神社の入口の床が軋む音がした。
「ファッ!?」
恋矢が驚きの声を上げながら入口の方を見る。
だが入口は閉めていて、暗闇の中では何も見えず、やむを得ず入口の方へ向かおうとする。
「すまない、誰かいないか」
すると神社の扉の向こうから男の声がする。
恋矢はそれに返答せず、音をたてないようにしながら―最初の時点で驚きの声を上げた時点で遅い気もするが―扉の前に立つ。
「誰も居ないんじゃないですか?」
更に扉の向こう少女の声が聞こえてきた。
恋矢はそれを聞いてやりすごせる、と安心した。
「いや、中に誰かいるのは確実だ。
小さいが男の声が聞こえたし、僅かだが足音もした」
「はぁ……?」
しかしその希望は一瞬で崩れ去る。
男は恋矢が出した足音や声を聞いていたのだ。
「という事だ、聞こえているのだろう。
我らが信用できないというのならそれもいい、だが情報交換位はしてくれないだろうか」
恋矢は考える、この申し出を受けるか否か。
受けないデメリットは少ない、無言を貫くなら何も言わず彼らは去るだろう。
受けるメリットは多い、こっちはほぼ情報が無い。何せ自分たちはC-4とD-4をうろうろしてただけでロクに他の参加者と会っていないのだから。
恋矢は考えた結果
「しょうがねぇなぁ(悟空)、じゃけん情報交換しましょうね~。
とはいっても俺、大した情報持ってないけどいいすか?」
「それは構わんよ。
だが情報交換の前に自己紹介でもしようか、私はトーマス・ベイカーだ」
「私は鏑木シリカです」
「田所恋矢、学生です」
情報交換を受け入れた。
恋矢が渡した情報は少ない、精々この辺りには蜂が居るから気を付けろ位だ。
異能や気絶している亜希の事は言わなかった。気絶している人間を抱えている事を言いたくは無かったし、異能に関しては向こうも言うとは思っていないからだ。
一方、恋矢が受け取った情報も決して多くは無い。だが有益だった。
「E-4の井戸の家に殺し合いに乗っていない参加者、すか……」
「うむ、君は乗っていないのなら会いに行くといい。彼、ミスタ島原なら君を拒絶したりはしないだろう」
「そ、そうすか……。でもいいんすか?」
「何がだね?」
恋矢の疑問の声に、何を言っているのか分からないとトーマスは返す。
「いや、俺大したことない情報しか渡せてないのに他の参加者の情報貰っちゃって……」
「大したことないだと? いやいやとんでもない、我等にとってはとても有益だ」
「「え?」」
トーマスの発言に恋矢とシリカの声がダブる。
「ミス鏑木は思い出してほしい。我らが出会ったのはG-2、山の中腹だ。だがそこに虫はいたかね?」
「……いませんでした」
「やべぇよやべぇよ……」
2人の会話に思わず口を出す恋矢。
森の中に虫がいるのだから山の中にも普通は虫位いるだろう。
たまたま見なかっただけならともかく、もし1匹もいないとしたら……。
「他の場所も回らないと何も言えないが、もし虫がいるのがこの辺りだけならば……」
「ここには何かあるという事ですか?」
「そうだ。そして一番怪しいのはやはり――」
「座礁船……」
「うむ、おそらくな」
そこでトーマスはシリカとの会話を打ち切って、恋矢に話しかける。
「と、いう訳だ。これより我らはA-1の座礁船を目指す、手伝ってくれるのなら後からでもいいから来てくれ」
「……申し訳ないが同行はNGさせて下さい」
「……まあ仕方あるまい」
そう言うと2人分の足音が遠ざかっていくのが恋矢には聞こえた。
それを聞いて恋矢はこれからどうするか考えようとするが
「何するにしても、まずは千原が目覚めるのを待つべきだよなぁ……」
その前に、同行者の回復を待つことにした。
◆
田所恋矢との情報交換は、トーマス達にある種の指針こそ得たものの大したことはお互い言っていない。
それは同行者の存在や異能、そしてもう1つ
「良かったんですか、怪しいと思っている丹美君のことは言わなくて」
「下手に何か言うとミスタ丹美に気付かれるかもしれないからね。何も言わない方が良いだろう。
嘘や確証の無い情報をまき散らすようなメディアリテラシーの無い真似はしたくないのでね」
「……そう言う問題ですか?」
怪しさを覚えている参加者、丹美寧斗について。
彼らは寧斗について何も言わなかった。容姿どころか存在すらも。
こうすれば実際に会った時寧斗と出会う事で何らかの違和感を覚えてくれるのではないか、とトーマスは考えたのだ。
「でも下手すれば田所さんがこっちに疑いの目を向けますよね?」
「それならそれで仕方のないことさ」
このトーマスの行動が誰にとっての吉で、誰にとっての凶になるか。
それは誰にも分からない。
【一日目・3時00分/C-4・神社】
【トーマス・ベイカー@バクバクの実/ワンピース】
[状態]:健康
[装備]:グイード・ミスタの銃(6/6)@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2(確認済み、着替えになりそうなもの、剣無し)
[思考・行動]
基本方針:ナオ=ヒューマを倒し殺し合いから脱出する
0:A-1の座礁船を目指す、その為にC-3へ行く
1:殺し合いに乗った人間は殺し、食す
2:この辺りには何かある、かもしれない
3:ミスタ田所は割と妥当な考え方をするね
[備考]
※自身の異能を『何でも食べる事が出来る能力』と認識していますが、それだけではないと考えています。
ただし、確信はしておらず食べる以外の能力は分かっていません。
※鏑木シリカの異能の一部(螺湮城教本)について知りました
※丹美寧斗は異能で子供に成りすましている成人男性だと推測しました
※田所恋矢と情報交換をしましたが、一緒に居た千原亜希の事や異能の事は知りません。
【鏑木シリカ@キャスター(ジル・ド・レェ)の宝具・スキル/Fate/】
[状態]:健康
[装備]:セイバーのスーツ@Fate/Zero、螺湮城教本@Fate/
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~1(確認済み、着替えになりそうなものは無し)、トーマス・ベイカーの誓約書
[思考・行動]
基本方針:死にたくない。生きて幸せになりたい
1:この人(トーマス・ベイカー)に付いていく。
2:この辺りにはなにかある……?
[備考]
※自身の異能の一部(螺湮城教本)について把握しました
※螺湮城教本を読んで正気度が喪失するかは次の書き手にお任せします
※丹美寧斗は異能で子供に成りすましている成人男性だと推測しました
※田所恋矢と情報交換をしましたが、一緒に居た千原亜希の事や異能の事は知りません。
【千原 亜希@スパイダーマン/スパイダーマン(サムライミ版)】
[状態]:失神、スカート膝下、襟までボタンを閉めたマジメスタイル、殺し合いへの恐怖
[装備]:七味唐辛子、ミケル、ミケルの入ってる虫カゴ
[道具]:支給品一式
[思考・行動]
基本方針:不明(ドッキリではないのはわかった)
0:失神中
1:虫怖い虫怖い虫怖い蜘蛛怖い蜘蛛怖い蜘蛛怖い
2:恋矢と一緒に行動
3:殺し合いや異能への恐怖感
※異能がスパイダーマンであることを理解しました
※漫画、特撮に対しての知識は「ワンピース」と保育園の時に見ていた「魔法戦隊マジレンジャー」
「仮面ライダー響鬼」「ふたりはプリキュア」のみ
【田所 恋矢@仮面ライダービースト/仮面ライダーウィザード】
[状態]:精神疲労(小)、混乱気味、空腹度5%
[装備]:仮面ライダービーストの装備一式
(ビーストドライバー、ファルコリング・カメレオリング・ドルフィリング・バッファリング、
ハイパーリング、ダイスサーベル、ミラージュマグナム、グリーングリフォン@仮面ライダーウィザード
[道具]:支給品一式、サバイバルナイフ、日本刀、プラモンスター
[思考・行動]
基本方針:すいません許してください、何でもしますから……
0:亜希が目覚めるのを待つ
1:本気で早く家に帰りたい
2:亜希が目覚めたらE-4の井戸の家にに行くかA-1の座礁船に行くか決める
※異能が仮面ライダービーストであることを知りましたが、知識が無いので具体的に何ができるのかわかっていません。
※仮面ライダービーストの装備一式は制限により田所恋矢にしか触る事ができません。
また、何かしらの能力で触れたとしても、使用できるのは田所 恋矢のみです。
この制限は田所 恋矢が死亡しても解除されません。
※長時間魔力を得なかったり、ビーストの能力を使うたびに副作用として空腹感が高まっていき、100%になると死亡します。
食事で空腹感を抑え、他の参加者を殺害して魔力を吸収するなどで空腹を満たすことができます。
※トーマス・ベイカーと情報交換をしましたが、丹美寧斗の事や異能の事は知りません。
島原翼については男子高校生である事は聞いています。
|[[ヒーローの資格]]|時系列順||
|[[図書館についたぞ]]|投下順||
|[[対ちょっぴり怖い資産家]]|トーマス・ベイカー||
|[[対ちょっぴり怖い資産家]]|鏑木シリカ||
|[[ギャルと見るはじめての異能]]|千原 亜希||
|[[ギャルと見るはじめての異能]]|田所 恋矢||
トーマス・ベイカーと鏑木シリカの2人はE-4,井戸の家から出発しようとしていた。
「さて、次の目的地だが……」
「南東の集落じゃないんですか?」
トーマスの言葉に疑問を呈すシリカ。
彼女はトーマスの目的である人喰いをする為に、参加者が集まりやすそうな集落を目指すと思っていた。
「いや、私はここを目指そうと思っている」
そう言ってトーマスは持っている地図を広げ、目的地を指差す。
そこはシリカが考えていた場所とは真逆だった。
「座礁船、ですか……」
「ああ、私はそこを目指す」
A-1にある座礁船、それがトーマスの目的地だった。
それを意外だとシリカが思っていると、トーマスはそれを見破ったのかなぜそこを目指す理由を説明し始めた。
「私がここを目指そうと思った理由は簡単だ。ここには何かある、そう考えたからだ」
「……簡単すぎます」
一言で説明され、思わずツッコミを入れるシリカ。
勿論トーマスもこれで説明を終わらせる気はなく、詳しい説明を始めた。
「そもそも私は最初から疑問だった。
資源開拓プラントはまだしも、座礁した船を地図に乗せていることが。
それも島から数百メートルは離れた位置にある船をだ。
殺し合いなら島の中だけで完結させても問題ないだろう、あのナオ=ヒューマが参加者を海に出す意味も無い」
「そうですね……」
トーマスの言葉に同意するシリカ。
それを背に受けながら説明は続く。
「ミス鏑木、私にはこの座礁船と資源開拓プラントは、殺し合いに乗る者の為にある訳では無い様に見えるのだよ」
「え?」
殺し合いに乗る者の為ではない、ならば誰の為に船やプラントはあるのか。
そのシリカの疑問にトーマスは答える。
「考えられる可能性は3つ。
まず1つ目はナオ=ヒューマの為にある」
「はぁ……」
「船やプラントがこの会場に置いてあるのはナオ=ヒューマにとって置かなければならない事情がある、という考え方だ。勿論理由は分からないがな」
「勿論、なんですか……」
「勿論だ、我等には情報が無さすぎる」
「なら、2つ目は何ですか」
勿論を付ける意味はあるのか、そう思いながらシリカは1つ目の可能性には納得できた。
だからこそ次に聞く事になる、2つ目が理解できなかった。
「2つ目は殺し合いに抗う我らの様な者の為だ」
「は?」
トーマスが何を言っているのか、シリカには理解できなかった。
なぜナオ=ヒューマが反抗する相手の為に物を置くのかがシリカの頭では思いつかないからだ。
「何で、ナオ=ヒューマがそんな事……」
「いや、ナオ=ヒューマでは無いかもしれんぞ」
「……どういう事ですか?」
「簡単だ。
ナオ=ヒューマには仲間なり部下なりがいて、その中に反逆者が混じっていると考えれば納得出来るだろう」
「な、成程……」
獅子身中の虫、という奴だろうか。
まあ確かに、ナオ=ヒューマは他人に好かれ無さそうだな。とシリカは思う。
トーマスのいう反逆者がこっそり私達の様な参加者に力を貸すのなら、殺し合いに乗る者の為にある訳では無いというにも納得はいく。
もしそうなら、そこから殺し合いを脱出する手がかりがあるのでは、とシリカは考えた。
「もっとも、現状では3つ目のナオ=ヒューマの気まぐれという可能性が一番高いがな」
「そうですか……」
しかしトーマスは容赦なくシリカの希望を打ち砕く。
そして
「まあこれで理解できただろう、私が座礁船を目指す訳が」
「分かりました。じゃあどちらにしろ集落に行って港から出発ですか」
「それは確かめてからだな」
「……何をです?」
トーマスの言葉の意味を問うシリカ。そして答えはすぐに帰ってくる。
「もしナオ=ヒューマが座礁船に行かせたくないなら、諦めて集落を目指しそこから出発することになる。
だがナオ=ヒューマにとって行くことが問題ないのであれば、おそらくC-3辺りに座礁船に行く方法があるはずだ」
「船や橋、とかですか?」
「いや、船ならともかく橋なら地図に書くはずだ。私は地下通路だと思っている」
「地下通路ですか……」
確かに地下通路なら地上の地図に掛かれていないのはおかしくない、のかな。
そう思いながらシリカは聞く。
「じゃあ直接C-3に?」
「いや、その前に神社に行っておこうと思う。
そこに通路があるかもしれんし、無いとしても人がいるなら情報交換もできる。
それに直接行くより道筋が分かりやすいだろうからな」
「分かりました」
こうして2人は神社をめざし歩き出した。
◆
「ぬわあああああん疲れたもおおおおおん」
亜希を背負いD-4から歩いてC-4の神社まで歩いてきた恋矢は、亜希を床に降ろしながらぼやく。
無理もない。距離こそ決して長くは無いが、歩きにくい森の中でなおかつ気絶した人間を運んできたのだから。不満の一つも言いたくなるだろう。
とはいえこのまま亜希を床の上で寝かせるのはいかがなものか、と恋矢は思った。
何か掛ける物をと思うが、自分の服はTシャツと短パンでこいつの服は現状ピッチリと着こんでいるし脱がすわけにもいかない。
仕方ないので亜希のデイバッグを枕代わりに頭の下に敷いた。
「これで少しはマシだろ」
多分、と後ろにつけて恋矢は亜希を寝かせる。
この時点で亜希を見捨てても良かったが、今更別れるのも嫌だった恋矢は亜希の横に座る。
そうして座りながら亜希が起きるのを待っていたが、しばらくして恋矢は心から思った。
「暇だ」
暇だった、凄く暇だった。
普段なら空き時間が出来たなら、スマホで音楽を聴くなりゲームするなり暇つぶしの手段がある。
が、現状スマホは取られている上に殺し合いという異常な環境だ。
この状況で暇つぶししている場合ではない、とは思う。
思うのだが、殺し合いが始まってから2時間以上経ち、C-4とD-4の間をウロウロしているだけとはいえ未だ亜希以外の参加者と会っていない事を考えると、この辺りは人がいなくて安全なのではと考えてしまう。
だから油断が生まれ、暇だなと思うのだった。
しかし恋矢の心を油断が支配しようとするまさにその時。
ギィ
神社の入口の床が軋む音がした。
「ファッ!?」
恋矢が驚きの声を上げながら入口の方を見る。
だが入口は閉めていて、暗闇の中では何も見えず、やむを得ず入口の方へ向かおうとする。
「すまない、誰かいないか」
すると神社の扉の向こうから男の声がする。
恋矢はそれに返答せず、音をたてないようにしながら―最初の時点で驚きの声を上げた時点で遅い気もするが―扉の前に立つ。
「誰も居ないんじゃないですか?」
更に扉の向こう少女の声が聞こえてきた。
恋矢はそれを聞いてやりすごせる、と安心した。
「いや、中に誰かいるのは確実だ。
小さいが男の声が聞こえたし、僅かだが足音もした」
「はぁ……?」
しかしその希望は一瞬で崩れ去る。
男は恋矢が出した足音や声を聞いていたのだ。
「という事だ、聞こえているのだろう。
我らが信用できないというのならそれもいい、だが情報交換位はしてくれないだろうか」
恋矢は考える、この申し出を受けるか否か。
受けないデメリットは少ない、無言を貫くなら何も言わず彼らは去るだろう。
受けるメリットは多い、こっちはほぼ情報が無い。何せ自分たちはC-4とD-4をうろうろしてただけでロクに他の参加者と会っていないのだから。
恋矢は考えた結果
「しょうがねぇなぁ(悟空)、じゃけん情報交換しましょうね~。
とはいっても俺、大した情報持ってないけどいいすか?」
「それは構わんよ。
だが情報交換の前に自己紹介でもしようか、私はトーマス・ベイカーだ」
「私は鏑木シリカです」
「田所恋矢、学生です」
情報交換を受け入れた。
恋矢が渡した情報は少ない、精々この辺りには蜂が居るから気を付けろ位だ。
異能や気絶している亜希の事は言わなかった。気絶している人間を抱えている事を言いたくは無かったし、異能に関しては向こうも言うとは思っていないからだ。
一方、恋矢が受け取った情報も決して多くは無い。だが有益だった。
「E-4の井戸の家に殺し合いに乗っていない参加者、すか……」
「うむ、君は乗っていないのなら会いに行くといい。彼、ミスタ島原なら君を拒絶したりはしないだろう」
「そ、そうすか……。でもいいんすか?」
「何がだね?」
恋矢の疑問の声に、何を言っているのか分からないとトーマスは返す。
「いや、俺大したことない情報しか渡せてないのに他の参加者の情報貰っちゃって……」
「大したことないだと? いやいやとんでもない、我等にとってはとても有益だ」
「「え?」」
トーマスの発言に恋矢とシリカの声がダブる。
「ミス鏑木は思い出してほしい。我らが出会ったのはG-2、山の中腹だ。だがそこに虫はいたかね?」
「……いませんでした」
「やべぇよやべぇよ……」
2人の会話に思わず口を出す恋矢。
森の中に虫がいるのだから山の中にも普通は虫位いるだろう。
たまたま見なかっただけならともかく、もし1匹もいないとしたら……。
「他の場所も回らないと何も言えないが、もし虫がいるのがこの辺りだけならば……」
「ここには何かあるという事ですか?」
「そうだ。そして一番怪しいのはやはり――」
「座礁船……」
「うむ、おそらくな」
そこでトーマスはシリカとの会話を打ち切って、恋矢に話しかける。
「と、いう訳だ。これより我らはA-1の座礁船を目指す、手伝ってくれるのなら後からでもいいから来てくれ」
「……申し訳ないが同行はNGさせて下さい」
「……まあ仕方あるまい」
そう言うと2人分の足音が遠ざかっていくのが恋矢には聞こえた。
それを聞いて恋矢はこれからどうするか考えようとするが
「何するにしても、まずは千原が目覚めるのを待つべきだよなぁ……」
その前に、同行者の回復を待つことにした。
◆
田所恋矢との情報交換は、トーマス達にある種の指針こそ得たものの大したことはお互い言っていない。
それは同行者の存在や異能、そしてもう1つ
「良かったんですか、怪しいと思っている丹美君のことは言わなくて」
「下手に何か言うとミスタ丹美に気付かれるかもしれないからね。何も言わない方が良いだろう。
嘘や確証の無い情報をまき散らすようなメディアリテラシーの無い真似はしたくないのでね」
「……そう言う問題ですか?」
怪しさを覚えている参加者、丹美寧斗について。
彼らは寧斗について何も言わなかった。容姿どころか存在すらも。
こうすれば実際に会った時寧斗と出会う事で何らかの違和感を覚えてくれるのではないか、とトーマスは考えたのだ。
「でも下手すれば田所さんがこっちに疑いの目を向けますよね?」
「それならそれで仕方のないことさ」
このトーマスの行動が誰にとっての吉で、誰にとっての凶になるか。
それは誰にも分からない。
【一日目・3時00分/C-4・神社】
【トーマス・ベイカー@バクバクの実/ワンピース】
[状態]:健康
[装備]:グイード・ミスタの銃(6/6)@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2(確認済み、着替えになりそうなもの、剣無し)
[思考・行動]
基本方針:ナオ=ヒューマを倒し殺し合いから脱出する
0:A-1の座礁船を目指す、その為にC-3へ行く
1:殺し合いに乗った人間は殺し、食す
2:この辺りには何かある、かもしれない
3:ミスタ田所は割と妥当な考え方をするね
[備考]
※自身の異能を『何でも食べる事が出来る能力』と認識していますが、それだけではないと考えています。
ただし、確信はしておらず食べる以外の能力は分かっていません。
※鏑木シリカの異能の一部(螺湮城教本)について知りました
※丹美寧斗は異能で子供に成りすましている成人男性だと推測しました
※田所恋矢と情報交換をしましたが、一緒に居た千原亜希の事や異能の事は知りません。
【鏑木シリカ@キャスター(ジル・ド・レェ)の宝具・スキル/Fate/】
[状態]:健康
[装備]:セイバーのスーツ@Fate/Zero、螺湮城教本@Fate/
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~1(確認済み、着替えになりそうなものは無し)、トーマス・ベイカーの誓約書
[思考・行動]
基本方針:死にたくない。生きて幸せになりたい
1:この人(トーマス・ベイカー)に付いていく。
2:この辺りにはなにかある……?
[備考]
※自身の異能の一部(螺湮城教本)について把握しました
※螺湮城教本を読んで正気度が喪失するかは次の書き手にお任せします
※丹美寧斗は異能で子供に成りすましている成人男性だと推測しました
※田所恋矢と情報交換をしましたが、一緒に居た千原亜希の事や異能の事は知りません。
【千原 亜希@スパイダーマン/スパイダーマン(サムライミ版)】
[状態]:失神、スカート膝下、襟までボタンを閉めたマジメスタイル、殺し合いへの恐怖
[装備]:七味唐辛子、ミケル、ミケルの入ってる虫カゴ
[道具]:支給品一式
[思考・行動]
基本方針:不明(ドッキリではないのはわかった)
0:失神中
1:虫怖い虫怖い虫怖い蜘蛛怖い蜘蛛怖い蜘蛛怖い
2:恋矢と一緒に行動
3:殺し合いや異能への恐怖感
※異能がスパイダーマンであることを理解しました
※漫画、特撮に対しての知識は「ワンピース」と保育園の時に見ていた「魔法戦隊マジレンジャー」
「仮面ライダー響鬼」「ふたりはプリキュア」のみ
【田所 恋矢@仮面ライダービースト/仮面ライダーウィザード】
[状態]:精神疲労(小)、混乱気味、空腹度5%
[装備]:仮面ライダービーストの装備一式
(ビーストドライバー、ファルコリング・カメレオリング・ドルフィリング・バッファリング、
ハイパーリング、ダイスサーベル、ミラージュマグナム、グリーングリフォン@仮面ライダーウィザード
[道具]:支給品一式、サバイバルナイフ、日本刀、プラモンスター
[思考・行動]
基本方針:すいません許してください、何でもしますから……
0:亜希が目覚めるのを待つ
1:本気で早く家に帰りたい
2:亜希が目覚めたらE-4の井戸の家にに行くかA-1の座礁船に行くか決める
※異能が仮面ライダービーストであることを知りましたが、知識が無いので具体的に何ができるのかわかっていません。
※仮面ライダービーストの装備一式は制限により田所恋矢にしか触る事ができません。
また、何かしらの能力で触れたとしても、使用できるのは田所 恋矢のみです。
この制限は田所 恋矢が死亡しても解除されません。
※長時間魔力を得なかったり、ビーストの能力を使うたびに副作用として空腹感が高まっていき、100%になると死亡します。
食事で空腹感を抑え、他の参加者を殺害して魔力を吸収するなどで空腹を満たすことができます。
※トーマス・ベイカーと情報交換をしましたが、丹美寧斗の事や異能の事は知りません。
島原翼については男子高校生である事は聞いています。
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