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 激しい頭痛を感じるのを防ぐ為の失神だったのだろう。 
 目覚めても意識は混濁し、鼓動と同調した痛みが僕を苦しめた。 
 不覚だった。 
 野営地から離れて僕は夜の散策を一人楽しんだ。 
 賊に出会す危険を軽視して。 
 己の実力を過信した結果がこれだった。 
 不意の一撃を頭に受けて僕は気を失ったのだ。 
 相手は相当な手練だったと思いたい。 
 
 格子の張られた薄暗い洞窟の中に僕は居た。 
 手足の自由は無く、口は塞がれていた。 
 向かいの格子にも人影が見える。 
 もがく僕の姿に気が付いたのか、その人影が動いた。 
 「嗚呼…ラムザ…無事なのね!」 
 格子に近付いたその姿は僕を驚愕させた。 
 「私が分かるでしょう?」 
 分からない筈が無い、 
 そしてこんな場所にいる筈が無い人だった。 
 僕と違い、身体の拘束はなかった。 
 「私…もう誰も信用出来なくて… ずっと ずっと…」 
 混乱する僕に彼女は訴えかけてきた。 
 「貴方に 逢いたかったのよ!」 
 (何で何で… オヴェリア様がこんな所に…) 
 「私を大切にしてくれるのはもうラムザだけだから…」 
 (僕ハ誰ニ倒サレテココニ!?) 
 「貴方に会わせると言われて私は…なのにこんなのって!」 
 「…だから逢えたでしょうに」 
 
-洞窟の奥から現れた人影は僕をさらに驚愕させた。 
+洞窟の奥から現れた人影は僕をさらに驚愕させた。
+ 
 「はいカット!」 
 タオルを手に松野監督が嬉しそうに駆けて来た。 
 「おかげでいい絵が撮れたよラム~」 
 ずぶぬれのスター俳優ラムザに手渡す。 
 「か 監督… 自分の演技はどうだったでしょうか?」 
 遅咲きの俳優ガフが監督に恐る恐る伺う。 
 「ガフさん…ようやくだ これはアンタの出世作になる」 
 ガフは言葉もなくペコペコ頭を下げた。 
 「二人の騎士の価値観の対立がメインテーマだ 頼むよ?」 
 「松野!」 
 遠くから女帝の声が監督を呼んだ。 
 松野はダッシュだった。 
 「ど どうしたのアグちゃん?」 
 「あのジジイを外しなさい」 
 「は!? む 無茶言わないでよ」 
 「さもなくば私が降りるわ」 
 「もう撮影はじまってるのに外せないでしょう?」 
 「なら早期に物語から退場させて 脚本を変えなさい」 
 「無茶苦茶だ… 二人の長期に渡る対立が見せ場なんだよ?」 
 「……」 
 「君の見せ場も無くなってしまうんだよ?」 
 (このままでは私が食われてしまうのよ!!) 
 殺気の篭ったアグリアスの視線に松野は怖じけづいた。 
 
 自分の見せ場が消えても自分以上の存在感を見せる役者は許さない。 
 その後もアルマやメリアドールなどがその毒牙にかかり 
 女帝アグは獅子戦争という物語を大いに迷走させたと言う。