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AVQ外伝 -風と大地の神話-

この世界が生まれる前の世界に、一国の王子と奴隷が駆け落ちした語られぬ歴史がある
これはその途轍もなく過去の物語

「かなり遠くまで来たな、」

砂の混じる風が吹く丘で、少年と少女は歩いていた。

「王子、良かったのですか?、こんな奴隷と、」

少女は申し訳なさそうに彼に問う

「何を言っている!我はそなたと生きる道を歩みたいと願っているのだ」
「もう決めたことだ、気にするでない」

少年は少女に優しく語りかけ、少女が微笑むとても微笑ましい光景だった。
だがその次の瞬間、彼らの運命は朽ち果てる音で満ちた。

「王子殿、こんな所にいらしたのですか!」

背後からとても通る軽くも重い声が聴こえてくる、
直ぐに振り返った少年は圧感した。

「騎士王ヘルレーン、なぜここに、」

現れた男は漆黒の鎧に身を包み白いマントを靡かせた姿、そして兜は被っておらずぐじゃぐじゃの崩れた黒髪でモノクルを付けていた。

「なぜと問われましても?王子殿が消えたと言うことで国王から探索の依頼が来ましてねぇ?」

男は首を傾げ不安定な声で語った。

「つまり我を連れ戻しに来たのか、」

少年は悔しさに顔を歪めながら、その中で少女への申し訳なさも感じていた。
そうしていると少女が少年に対して口を開く

「王子、私は大丈夫です、戻りましょう」

少年はすかさず言葉を返す

「だめだ!このまま戻れば其方はこの事件の原因と見なされ殺されてしまう!」

少女は涙を零し少年の手を握る

「良いのです、貴方様と過ごした時間は私には勿体ない程の十分過ぎる時間でした。私は悔いなどなく死ねます。」

だがその言葉と裏腹に少女の声は小刻みに震え、恐怖を耐えているのは少年にもわかった。
そう話しているところに男が割り込んだ

「あのぉー申し訳ないのですが、私は連れ帰る気などさらさらありません」

少年と少女は驚かされたように男を見た

「どう言うことだ?」

そう少年が問うと、その問いの答えに自らが最悪の事態に置かれているのだと理解させられた。

「だってぇ?私にとって貴方は邪魔なんです。そもそも探すつもりなんてなかったんですが偶然見つけてしまったんですもん、」

「どうせ見つけたなら、消してしまった方が確実ですよねぇ?」

少年はその言葉を聞きすかさず少女の手を取り走り出す、それは正に弓から放たれた矢のように、考える暇もなく身体がそうしろと動いたのだろう

「私から逃げられると?」

男はそう問いかける、少年は逃げられないことは重々承知していた。
何故なら男は騎士王の身分を持つ最高峰の騎士ヘルレーン、世界最強の武神の恩恵すら持つとされる化け物であったがため、
だが走ること以外に少年は最善の策など思いつかなかった。
それもそのはず、この状況を打開する術などないのだから、そのため少女の手を握り走るしかなかった。
その次の瞬間、少女は止まった。
驚きのあまり少年の声は荒くなる

「何をしているのだ!」

少女は言葉を返す

「このまま逃げても無駄です。」

少年は事実を突きつけられ涙を目に溜め声を荒げて叫んだ

「そんなの分かっている!!ならどうすれば良いのだ!!!」

少年は既に動揺していたが少女の次の言葉によって更に動揺させられた。

「私が時間を稼ぎます。その間にできるだけ遠くに」

何故そんなに落ち着いていられる、少女に対して少年はそう考えを抱いた。
だが目を下にやるとまるで立っていられるのが奇跡のように震える少女の脚が見えた。

「そんなの無理だ!時間なんて稼げるはずがない!それに君が死んだら、我は!」

少女は少年に笑いかけた。

「私は王子の為に死ねて、王子の記憶に生き続けれるのならばこれほど嬉しいことはありません、わがままを聞いてくださいませんか?」

少年は顔を涙でぐちゃぐちゃにし答えた。

「だめだ!!許さない!!」

少女は少し悲しそうな顔をした後少年に背を向けた。
それは、ヘルレーンの方を向いたのか、将又涙で濡れる顔を隠したかったのか
そんな事は誰にもわからない、だが次の言葉はしっかりと聞こえた

「ごめんなさい」

その擦り切れそうな小声が響いた後、誰も予想しなかった奇跡が起きた。
次の瞬間少女の身体を神々しく光を超越した輝きが纏った。
その光は次に波動となりその姿を現した。少女の身体が光の化身に飲まれたのだ

「なんだ、あれは、」

驚きのあまり少年は絶句する、そして直ぐにヘルレーンが口を開いた。

「おぉおぉおぉ!素晴らしいです!これは<世界概念>クラスの魔法オールドワールドリンク!!!!!」

そう、男はたしかに言ったのだ、
世界概念クラスの魔法とは、神すらも詠唱することの出来ない、おとぎ話の魔法、
世界の意思によって生み出される魔法である
その魔法によって生み出された化身は神と言われるにふさわしい姿とオーラを纏っていた。
全長は200mを優に越しているだろう、神は次の瞬間ヘルレーンに向かって魔法の詠唱を開始した。

「おやおやおや!それは七曜クラスの魔法ですねぇ!!しかも一度に10回以上も詠唱するなんてぇ!!すんばらしぃ!!!」

全てを焼き切る巨大な無数の雷撃がヘルレーンを襲う、

(これなら行ける!)

少年に希望が見えかけた時、それは直ぐに儚いものと理解させられた。
直撃後の爆炎の中からヘルレーンが現れたのである

「うーん、なかなか刺激的ですねぇ、私も本気を出さねばまずいかもしれません」

神の魔法を受けて死なない人間がいる、そんな訳のわからない真実を見せられた少年は更に絶句した。奴は何者なのか、それしか考える余裕などなかっただろう

「これから死ぬ王子殿には話して起きましょうか」
「私、実は人間じゃないんです。」

確かにそうだろう、奴が人間だと信じろという方が難しい、では奴は何者なのだろうか

「私ィ、実はグリムリーパーなんです。」

そう言い渡された時、全てに絶望した。
グリムリーパーという種族は言うなれば「神」、正確に言うところの死神だ。神が冥界に汚染されて生まれる種族だ

「武神なんて恩恵を持ってるとか噂されてるんですけど私が持っているのは死神の恩恵、」
「つまり、私と戦ったものは確実に死ぬんですゥ!!」

「それがたとえ、神、でも」

だめだ、勝てないかもしれない、奴も流石に
無傷では済まないと思うが、倒しきれるとも思わない
大量の神の雷が飛び交う中、ヘルレーンが腕を構えた。
そして直ぐにその構えた手に黒いオーラが集まりだした。
いや、正確に言うならば黒ではない色だ、黒より深い黒い、光の概念すらないと言わんばかりの"漆黒"である
そのオーラは一つの塊として集まりだした。そして一瞬にして神の大きさと同格までに膨れ上がり神を飲み込む
辺りを声と呼ぶことの出来ない不思議な音が鳴り響く、恐らく神の悲鳴である
そのオーラを近くに少年は気が狂いそうなほどの恐怖を与えられていた。
オーラに直接接触したわけではない、だがそれを目にしただけで自分の死を幾度と経験させる程の恐怖が襲った。

「もしかしてェ、これ私が勝つんじゃないですかねェ」

ヘルレーンは不気味な笑みを浮かべて神を攻撃する。

(俺は何も出来ないのか、)

少年は四つん這いになり絶望していた。
だが次の瞬間確かに、自分の身体を光が包むのを確認できた。

(なんだ、これは、)

自身に起きて居ることを理解できなかったが、次のヘルレーンの言葉で理解できた。

「はぁぁぁあ!?連続でオールドワールドエンド!?!?そんなことありえますかァ!!!?」

少年も神を召喚する魔法を詠唱したのである
そして少年は納得して口を開いた

「世界概念が世界の意思なら、世界の思惑が達成されない運命など許さない」
「つまり最初からお前が死ぬのは確定していたんだ」
「殺す!!」

「なるほどォ、、流石にまずいですねェ、」

新たな2体目の神がヘルレーンに神の雷を落とし始めるそしてヘルレーンが神の雷を撃ち落とす。
そうこうして居るうちに1体目の神が再生する

「これは私ィ、万事休すって奴ですねェ」

次の瞬間2体の神が集団詠唱を始める、
それはあまりにも神々しくそこに何も見えないのにもかかわらず光が幻影として現れるほどの神聖であった。
そのオーラは光の線を描きヘルレーンを追尾する。
それは正に神話の領域の魔法であることは一目瞭然であった。

「神話級の攻撃魔法ですか、厳しいですねェ」
「では来世で会いましょう皆さん!解散!」

ヘルレーンを眩いばかりの光が包む、それはもう目を閉じていても視界が白くなるほどの眩さであり、熱も恐ろしいほどであった。

(やった、)

少年がそう考えた次の瞬間、光は突如として消え、漆黒の世界が広がった。
そう、それは世界概念魔術の代償。
少年がこれから光を拝むことは決してないのだ、
少年は目も見えず耳も聞こえず感覚もなく何もかもを失ったのだ、
しかもその呪いは死ぬことの出来なず、少しずつ記憶が消えて行くものだった。
そして少年と少女は世界が終わるまで、互いのことを少しずつ忘れ嘆きながら自らが選んだ漆黒の世界で自分が誰なのか何者なのかもわからなくなり、残酷な時を過ごした。