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375 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/01(火) 22:18:04.19 0 &color(blue){>>374 } 第291回 「世話?いや、あいつか勝手に付いて来るだけです。」 「中学生の妹をよく深夜まで引っ張りまわしてくれたね。」 「え?なにそれ」 「あの子、最近帰りが遅いことが多いから何してるんだと思って問い詰めたら・・・ ○○高校の村上ってやつに毎晩連れまわされてるって。危ないこともさせられたって。」 「はぁ?なにそれ・・・あいつがそう言ったの?」 「そうよ。なに、あんたあの子がウソついてるとでも?」 「いやだって・・・・」 「ま、あんたには聞きたいことあるからちょっと来てよ」 そいつはあたしの腕を掴んで歩き出した。そんなのおかしい、違う。 そう言いたくて私は逃げなかった。でも、今思えば逃げるべきだった。 絶対にそうするべきだったんだ。 427 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/03(木) 22:36:10.83 O &color(blue){>>375 } 第292回 連れて来られたのは、川沿いにある、暗い高架下。 川沿いは寒い。さっきよりずっと寒い。 空もなんだか不穏な色。雪でも降ってくるのかな・・・そんな空。 ベタな場所だなぁ、と思った。 少年漫画で、主人公がイジめられてカツアゲでもされているような場所。 あれ、もしかしてヤバイ、と思ったのはもうそこに着いてからだった。 だって、目の前にいるのはざっと10人以上のお姉さんたち。みんな同じ制服。 「村上に無理やり引っ張りまわされたんだって。あの子そう言ってたよ? 泣きながら、ごめんなさいって。ずっと泣きっ放しだった。 あの子はウソはつかないし、普段夜遊びするような子じゃない。 マジメで私なんかよりよっぽど賢くて、高校だって進学校に推薦で行くのが決まっているの。」 それは、知らなかったなぁ。いや、知らないことばかりだ。 実のところ、あの子のことは何も知らなかった。名前と歳くらいしか、知らなかった。 その、名前も、今じゃ思い出せないんだけれど。 あたしに好きと言った少女が「無理やり」と言ったらしい。 自分で、金魚のフンをやっていたくせに。ウソはつかない、なんて。 大嘘じゃんか。どういうことなんだろう。この女がウソを?それとも・・・いや、信じたくない。 「迷惑なのよ、もうあの子に絶対に近づかないで。推薦が取り消し、なんてことになったら あんたのせいよ?何のために世間知らずのうちの子を巻き込むわけ?」 「・・・・別に近づいてなんかない。あいつが勝手に来てるだけ。 あいつ、私が悪いってそう言ったんだ?泣きながら?へぇ・・・・」 「あの子はウソなんてつかない。あんたが悪いんでしょ!?いい加減に謝りなさいよ!」 428 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/03(木) 22:37:43.43 O &color(blue){>>427 } 第293回 怒りが沸々とわきあがってくる。何を言っているのかわからない。 自分から、「好きです」と言い出した女が「私のせい」だと言ったらしい。 それはどういう意味?怒られたから、「私のせい」にした? そして、それは目の前にいるあいつの姉が私の頬を平手打ちしたことで始まった。 乾いた音。冷たい手。熱くなる頬。すごく印象的な、出来事。 「あんた聞いてんの!?」 「・・・・・・・・・・・・」 何も悪いことはしていないのに。そりゃちゃんと早く家に帰らせればよかった。 でも、帰りたくないといったのはあの子のほうで。あたしは、気ままに夜の街をブラついていただけ。 なのに、あの子の夜遊びはあたしのせいになっている。あたしが、連れまわしたことにされている。 ・・・・あたしは、悪いことなんてしていないのに。 握った拳にぎゅうっと力を入れる。暴力は好きじゃない。 でも、叩かれたことで私の中にあった理性が吹き飛んだ。 次の瞬間、私の放った拳は目の前の女のお腹を捉えていた。 鈍い音がして、「うぅっ」と小さく呻いて、あいつの姉はあたしの目の前で崩れ落ちた。 その瞬間周りでずっと様子を伺っていた大人数の女たちが あたしに殺気を含んだ視線を送ってきたことには気付いた。 その時数えたら、目の前で蹲っている女を含めて15人もいた。大勢でご苦労なこった。 言うことを聞かなかったらあたしをヒドイめに合わせて「身体でわからせる」つもりだったのか。 15人対1人ってほんとバカだよね。 ・・・・そこに立ち向かっていったあたしがバカなのか、 15人も用意したあいつの姉がバカなのかはわからないけど。 429 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/03(木) 22:38:56.68 O &color(blue){>>428 } 第294回 自信なんてなかった。ケンカらしいケンカもしたことがなかった。 いろいろ危ない場面に遭遇したことはあったけどいつも逃げ回っていた。 でも、このときそはそうしようと思わなかった。逃げようと思えばできたのかもしれないんだけど。 ただ、むかついてた。あの子に?この、自分の妹を絶対に信じている姉に? それとも、目の前にいる15人もの女たちに?・・・・きっと、全部だ。 私は、とにかく腹を立てむかついていた。私のパワーの源は、そのときばかりは、すべてそこにあった。 ◆ そこから先はあんまり覚えていない。 ただ、あのときの強烈な血の匂いだけははっきりと覚えている。 拳が赤く染まっていたこともなんとなく、覚えてる。 頭から流れ落ちていた温かい血の感触も覚えてる。 あれなんだっけな・・・・石で殴られたんだっけ、鉄パイプだっけ。どっちか、もしくは、どっちも。 場所といい、武器といい、なんていうか・・・ベタだよねぇ。 ふと、気がつくと目の前には血を流した、もしくは気を失った女ばかり15人がいた。 みんな倒れこんでいる。でも、私は立っていた。勝った、そのときようやくそう思った。 そう思った瞬間、ふらっと力が抜けてその場にへたりこんだ。 でも、絶対寝転んだりはしない。それは勝った事にならない。 スカートのまま、砂利の上であぐらをかいていた。 血が滴り落ちるのも無視して、しばらくそこでじっとした。 そのうち、人が来て大騒ぎになって・・・・あとは、あんまり記憶にない。 だけど、はらはらと空から降ってきた雪のことは覚えている。 冷たかったっけ。寒かったっけ。白くて、綺麗だったなぁ・・・・。 そのあとの、「めぐ!めぐ!」と言うみやの声もかすかに覚えている。 次に記憶があるのは、白い、消毒液の匂いがする場所だった。 466 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/04(金) 22:11:04.47 0 &color(blue){>>429 } 第295回 その先は、どこか他人事で、自分のことだと理解するのに時間がかかった。 確か、警察が来た。先生も来た。親も来た。みやも、ももちゃんも来た。 でも、何を聞かれたのかあんまり覚えていない。 ただ、「私は悪くない」とそう繰り返したような気がする。 腹が立つとか、そういう感情はもうなかった。なんだろう、何を考えていたのかな。 なんだか抜け殻みたいになってしまったんだっけ。 あいつらがどうなったか、聞いたような気がするけど詳しくは知らない。 でも確か大した怪我はしてなかった・・・と思う。血はいっぱい出てたけど。 でも、私は全治3ヶ月以上の重傷で、しばらくベッドから動けなかった。 そりゃあちこち折れてんだもんねぇ。腕使えなかったのがちょっと辛かったなぁ。 結局、あたしは無期限の停学処分を受けた。日ごろの行いの悪さも加味されたらしい。 でも、それでも退学にならなかったのは成績がいいことと、今回の状況が 一歩間違えばリンチになっていたかもしれないと親が訴えたおかげだった。 幸い、あたしは「勝った」けどそうならなかった可能性のほうが大きいのは言うまでもないよね。 あぁ、あと相手が大した怪我をしなかったっていうのも一応関係あるのかな。 向こうの学校は、15人に対して卒業まで自宅謹慎処分としたと言ってた。 ちょっと甘いんじゃないの、とは思ったけど オトナの事情もいろいろあるみたいで、別にそれにとやかく言うつもりはない。 謝罪の書面が送られてきて、こっちも送って、それで終わった。 あぁ、それであたしの治療費を持つ代わりにこのことはなかったことにして欲しいといわれたんだっけ。 そりゃそっか。手を先に出したのはあっちだもんね。 噂は一気に広まったみたいだけど、もちろん誰も何も言わないから詳細な話は勝手に消えていった。 そしていろいろ改変されて、「村上愛が15人を相手にして勝った」という話だけが残った。 オイオイ、それじゃマンガだよと思ったけど別に訂正することもないし、特に間違ってもないし黙ってた。 467 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/04(金) 22:11:50.22 0 &color(blue){>>466 } 第296回 ・・・まぁ、とにかくそれですべて終わった。 当然、いろいろむかつくことはあるけどでも、終わった。 だけど結局アイツ・・・あの子がなぜウソをついたのかはわからなかった。 姉や親に怒られるのが怖くて私のせいにしたのかな・・・やっぱり。 好きだって言われたのって、あれ夢だったのかな。 今はそうとしか思えない。全部、悪い夢・・・だったのかもしれない。 ◆ 退院をして、家に帰った日のこと。みやが、わざわざ訪ねてきた。ももちゃんも一緒に。 「これからどうするの?」 「んー・・・・おじいちゃんとこに行けって言われてる」 「え?」 「外界との接触させない・・・・とかなんとか言われたよ。ま、反省しろってことかな。」 机に散らかした参考書を整えながら、そう言った。 「そっか、めぐのおじいちゃんって山奥に住んでるんだっけ」 「そそ。ケータイも繋がらないド田舎で、テレビもなーんにもないとこ。 ほんと何にもないの。何もなさすぎて逆に新鮮なレベル。」 「めぐちゃん耐えられるの?」 ももちゃんが心配そうな顔でそう言ってくれる。ももちゃんはいっつもそうだ。 みやは、あたしのすることやしたことに心配なんかしない。 めぐの責任じゃんってそういう言い方をする。まあさすがに、今回は 何度もお見舞いに来てくれたけど・・・でも、本質では、みやのスタンスは変わらない。 だけど、ももちゃんはさすがに年上だから・・・優しくて、大好き。 468 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/04(金) 22:13:02.99 0 &color(blue){>>467 } 第297回 いや、別に優しくして欲しいわけじゃなくて・・・・ 期待していないときの優しさほど嬉しいものはないってことで。 「どうかなぁ・・・街が恋しいなぁ。でも、ま、当然の報いだよ。って諦めてる」 って言って笑うと、ももちゃんは 「もう・・・そんな寂しそうに笑わないの。」 ってあたしのほっぺをつねった。ももちゃんの優しさが胸にしみる。 「勉強していい大学でも目指そうかなぁ・・・」 ・・・なんて、本音か冗談か。自分でもよくわからないことをつぶやく。 二人に聞いて欲しかったのかな。自分でも、ずっと迷っていることだったから。 「めぐ、うちはめぐのこと責めない。でも、慰めもしない。 だってめぐの責任だもん。・・・・だけど、待ってる。めぐのこと待ってる。」 みやの言葉で泣いてしまったのをよく覚えている。 みやらしい言葉で、ももちゃんみたいな包みこむような優しさはない。でも、・・・・ なんであんなことで泣いたのかな。二人が困っていたっけ・・・。 おじいちゃんの家で何ヶ月かの時を過ごした。 いろんなことを考えて、反省して、ふと浮かぶあの子を打ち消して その繰り返しの日々だった。 もちろん、勉強もした。だって、それくらいしかすることがないんだもん。 ・・・でも、今まで真剣にやってこなかったから、・・・・実はちょっと楽しかった。 469 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/04(金) 22:18:37.50 0 &color(blue){>>468 } 第298回 そして、やっと復帰のお許しが出たというわけで。期末テストを受けろって言われんだよね。 気持ちの変化とか、そういうのは言い出したらきりがないから言わない。 でも、今は学校に行きたくてしょうがなかった。みやとか、ももちゃんに会いたかった。 嫌いだった学校に行きたいなんて、ちょっと笑えるけどでも素直にそう思ってた。 あの子の事はもう忘れた。名前もやっぱり出てこない。 結局、会いにも来なかったし・・・って来るわけないか。もういい・・・考えたくない。 そしてあたしの、新しいスタート。 ◆◆ 「ってことなの。」 友理奈先輩の話は結構長かった。 ・・・ちょっと要点のわかりにくい話は相変わらずだから・・・。 っていうと泣かれそうだから言わないけど・・・。 「・・・・そんな。」 優しそうな人だなって思ったのになぁ。ちょっとチャラそうだけど。 みやにそんな友達がいたなんて知らなかった。 なんで話してくれなかったのかな、ももだって・・・。 私たち、たった3人の文芸部だったのになぁ・・・。 私はカヤの外で、ちょっと面白くない。 「愛理、わかる?あいつヤバイんだよ。近づいちゃだめだよ?」 先輩の話はあんまり聞こえていなかった。村上さんのこともだけど、 みやとももに隠し事されてたみたいで・・・ちょっと悔しかった。
375 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/01(火) 22:18:04.19 0 &color(blue){>>374 } 第291回 「世話?いや、あいつか勝手に付いて来るだけです。」 「中学生の妹をよく深夜まで引っ張りまわしてくれたね。」 「え?なにそれ」 「あの子、最近帰りが遅いことが多いから何してるんだと思って問い詰めたら・・・ ○○高校の村上ってやつに毎晩連れまわされてるって。危ないこともさせられたって。」 「はぁ?なにそれ・・・あいつがそう言ったの?」 「そうよ。なに、あんたあの子がウソついてるとでも?」 「いやだって・・・・」 「ま、あんたには聞きたいことあるからちょっと来てよ」 そいつはあたしの腕を掴んで歩き出した。そんなのおかしい、違う。 そう言いたくて私は逃げなかった。でも、今思えば逃げるべきだった。 絶対にそうするべきだったんだ。 427 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/03(木) 22:36:10.83 O &color(blue){>>375 } 第292回 連れて来られたのは、川沿いにある、暗い高架下。 川沿いは寒い。さっきよりずっと寒い。 空もなんだか不穏な色。雪でも降ってくるのかな・・・そんな空。 ベタな場所だなぁ、と思った。 少年漫画で、主人公がイジめられてカツアゲでもされているような場所。 あれ、もしかしてヤバイ、と思ったのはもうそこに着いてからだった。 だって、目の前にいるのはざっと10人以上のお姉さんたち。みんな同じ制服。 「村上に無理やり引っ張りまわされたんだって。あの子そう言ってたよ? 泣きながら、ごめんなさいって。ずっと泣きっ放しだった。 あの子はウソはつかないし、普段夜遊びするような子じゃない。 マジメで私なんかよりよっぽど賢くて、高校だって進学校に推薦で行くのが決まっているの。」 それは、知らなかったなぁ。いや、知らないことばかりだ。 実のところ、あの子のことは何も知らなかった。名前と歳くらいしか、知らなかった。 その、名前も、今じゃ思い出せないんだけれど。 あたしに好きと言った少女が「無理やり」と言ったらしい。 自分で、金魚のフンをやっていたくせに。ウソはつかない、なんて。 大嘘じゃんか。どういうことなんだろう。この女がウソを?それとも・・・いや、信じたくない。 「迷惑なのよ、もうあの子に絶対に近づかないで。推薦が取り消し、なんてことになったら あんたのせいよ?何のために世間知らずのうちの子を巻き込むわけ?」 「・・・・別に近づいてなんかない。あいつが勝手に来てるだけ。 あいつ、私が悪いってそう言ったんだ?泣きながら?へぇ・・・・」 「あの子はウソなんてつかない。あんたが悪いんでしょ!?いい加減に謝りなさいよ!」 428 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/03(木) 22:37:43.43 O &color(blue){>>427 } 第293回 怒りが沸々とわきあがってくる。何を言っているのかわからない。 自分から、「好きです」と言い出した女が「私のせい」だと言ったらしい。 それはどういう意味?怒られたから、「私のせい」にした? そして、それは目の前にいるあいつの姉が私の頬を平手打ちしたことで始まった。 乾いた音。冷たい手。熱くなる頬。すごく印象的な、出来事。 「あんた聞いてんの!?」 「・・・・・・・・・・・・」 何も悪いことはしていないのに。そりゃちゃんと早く家に帰らせればよかった。 でも、帰りたくないといったのはあの子のほうで。あたしは、気ままに夜の街をブラついていただけ。 なのに、あの子の夜遊びはあたしのせいになっている。あたしが、連れまわしたことにされている。 ・・・・あたしは、悪いことなんてしていないのに。 握った拳にぎゅうっと力を入れる。暴力は好きじゃない。 でも、叩かれたことで私の中にあった理性が吹き飛んだ。 次の瞬間、私の放った拳は目の前の女のお腹を捉えていた。 鈍い音がして、「うぅっ」と小さく呻いて、あいつの姉はあたしの目の前で崩れ落ちた。 その瞬間周りでずっと様子を伺っていた大人数の女たちが あたしに殺気を含んだ視線を送ってきたことには気付いた。 その時数えたら、目の前で蹲っている女を含めて15人もいた。大勢でご苦労なこった。 言うことを聞かなかったらあたしをヒドイめに合わせて「身体でわからせる」つもりだったのか。 15人対1人ってほんとバカだよね。 ・・・・そこに立ち向かっていったあたしがバカなのか、 15人も用意したあいつの姉がバカなのかはわからないけど。 429 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/03(木) 22:38:56.68 O &color(blue){>>428 } 第294回 自信なんてなかった。ケンカらしいケンカもしたことがなかった。 いろいろ危ない場面に遭遇したことはあったけどいつも逃げ回っていた。 でも、このときそはそうしようと思わなかった。逃げようと思えばできたのかもしれないんだけど。 ただ、むかついてた。あの子に?この、自分の妹を絶対に信じている姉に? それとも、目の前にいる15人もの女たちに?・・・・きっと、全部だ。 私は、とにかく腹を立てむかついていた。私のパワーの源は、そのときばかりは、すべてそこにあった。 ◆ そこから先はあんまり覚えていない。 ただ、あのときの強烈な血の匂いだけははっきりと覚えている。 拳が赤く染まっていたこともなんとなく、覚えてる。 頭から流れ落ちていた温かい血の感触も覚えてる。 あれなんだっけな・・・・石で殴られたんだっけ、鉄パイプだっけ。どっちか、もしくは、どっちも。 場所といい、武器といい、なんていうか・・・ベタだよねぇ。 ふと、気がつくと目の前には血を流した、もしくは気を失った女ばかり15人がいた。 みんな倒れこんでいる。でも、私は立っていた。勝った、そのときようやくそう思った。 そう思った瞬間、ふらっと力が抜けてその場にへたりこんだ。 でも、絶対寝転んだりはしない。それは勝った事にならない。 スカートのまま、砂利の上であぐらをかいていた。 血が滴り落ちるのも無視して、しばらくそこでじっとした。 そのうち、人が来て大騒ぎになって・・・・あとは、あんまり記憶にない。 だけど、はらはらと空から降ってきた雪のことは覚えている。 冷たかったっけ。寒かったっけ。白くて、綺麗だったなぁ・・・・。 そのあとの、「めぐ!めぐ!」と言うみやの声もかすかに覚えている。 次に記憶があるのは、白い、消毒液の匂いがする場所だった。 466 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/04(金) 22:11:04.47 0 &color(blue){>>429 } 第295回 その先は、どこか他人事で、自分のことだと理解するのに時間がかかった。 確か、警察が来た。先生も来た。親も来た。みやも、ももちゃんも来た。 でも、何を聞かれたのかあんまり覚えていない。 ただ、「私は悪くない」とそう繰り返したような気がする。 腹が立つとか、そういう感情はもうなかった。なんだろう、何を考えていたのかな。 なんだか抜け殻みたいになってしまったんだっけ。 あいつらがどうなったか、聞いたような気がするけど詳しくは知らない。 でも確か大した怪我はしてなかった・・・と思う。血はいっぱい出てたけど。 でも、私は全治3ヶ月以上の重傷で、しばらくベッドから動けなかった。 そりゃあちこち折れてんだもんねぇ。腕使えなかったのがちょっと辛かったなぁ。 結局、あたしは無期限の停学処分を受けた。日ごろの行いの悪さも加味されたらしい。 でも、それでも退学にならなかったのは成績がいいことと、今回の状況が 一歩間違えばリンチになっていたかもしれないと親が訴えたおかげだった。 幸い、あたしは「勝った」けどそうならなかった可能性のほうが大きいのは言うまでもないよね。 あぁ、あと相手が大した怪我をしなかったっていうのも一応関係あるのかな。 向こうの学校は、15人に対して卒業まで自宅謹慎処分としたと言ってた。 ちょっと甘いんじゃないの、とは思ったけど オトナの事情もいろいろあるみたいで、別にそれにとやかく言うつもりはない。 謝罪の書面が送られてきて、こっちも送って、それで終わった。 あぁ、それであたしの治療費を持つ代わりにこのことはなかったことにして欲しいといわれたんだっけ。 そりゃそっか。手を先に出したのはあっちだもんね。 噂は一気に広まったみたいだけど、もちろん誰も何も言わないから詳細な話は勝手に消えていった。 そしていろいろ改変されて、「村上愛が15人を相手にして勝った」という話だけが残った。 オイオイ、それじゃマンガだよと思ったけど別に訂正することもないし、特に間違ってもないし黙ってた。 467 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/04(金) 22:11:50.22 0 &color(blue){>>466 } 第296回 ・・・まぁ、とにかくそれですべて終わった。 当然、いろいろむかつくことはあるけどでも、終わった。 だけど結局アイツ・・・あの子がなぜウソをついたのかはわからなかった。 姉や親に怒られるのが怖くて私のせいにしたのかな・・・やっぱり。 好きだって言われたのって、あれ夢だったのかな。 今はそうとしか思えない。全部、悪い夢・・・だったのかもしれない。 ◆ 退院をして、家に帰った日のこと。みやが、わざわざ訪ねてきた。ももちゃんも一緒に。 「これからどうするの?」 「んー・・・・おじいちゃんとこに行けって言われてる」 「え?」 「外界との接触させない・・・・とかなんとか言われたよ。ま、反省しろってことかな。」 机に散らかした参考書を整えながら、そう言った。 「そっか、めぐのおじいちゃんって山奥に住んでるんだっけ」 「そそ。ケータイも繋がらないド田舎で、テレビもなーんにもないとこ。 ほんと何にもないの。何もなさすぎて逆に新鮮なレベル。」 「めぐちゃん耐えられるの?」 ももちゃんが心配そうな顔でそう言ってくれる。ももちゃんはいっつもそうだ。 みやは、あたしのすることやしたことに心配なんかしない。 めぐの責任じゃんってそういう言い方をする。まあさすがに、今回は 何度もお見舞いに来てくれたけど・・・でも、本質では、みやのスタンスは変わらない。 だけど、ももちゃんはさすがに年上だから・・・優しくて、大好き。 468 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/04(金) 22:13:02.99 0 &color(blue){>>467 } 第297回 いや、別に優しくして欲しいわけじゃなくて・・・・ 期待していないときの優しさほど嬉しいものはないってことで。 「どうかなぁ・・・街が恋しいなぁ。でも、ま、当然の報いだよ。って諦めてる」 って言って笑うと、ももちゃんは 「もう・・・そんな寂しそうに笑わないの。」 ってあたしのほっぺをつねった。ももちゃんの優しさが胸にしみる。 「勉強していい大学でも目指そうかなぁ・・・」 ・・・なんて、本音か冗談か。自分でもよくわからないことをつぶやく。 二人に聞いて欲しかったのかな。自分でも、ずっと迷っていることだったから。 「めぐ、うちはめぐのこと責めない。でも、慰めもしない。 だってめぐの責任だもん。・・・・だけど、待ってる。めぐのこと待ってる。」 みやの言葉で泣いてしまったのをよく覚えている。 みやらしい言葉で、ももちゃんみたいな包みこむような優しさはない。でも、・・・・ なんであんなことで泣いたのかな。二人が困っていたっけ・・・。 おじいちゃんの家で何ヶ月かの時を過ごした。 いろんなことを考えて、反省して、ふと浮かぶあの子を打ち消して その繰り返しの日々だった。 もちろん、勉強もした。だって、それくらいしかすることがないんだもん。 ・・・でも、今まで真剣にやってこなかったから、・・・・実はちょっと楽しかった。 469 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/04(金) 22:18:37.50 0 &color(blue){>>468 } 第298回 そして、やっと復帰のお許しが出たというわけで。期末テストを受けろって言われんだよね。 気持ちの変化とか、そういうのは言い出したらきりがないから言わない。 でも、今は学校に行きたくてしょうがなかった。みやとか、ももちゃんに会いたかった。 嫌いだった学校に行きたいなんて、ちょっと笑えるけどでも素直にそう思ってた。 あの子の事はもう忘れた。名前もやっぱり出てこない。 結局、会いにも来なかったし・・・って来るわけないか。もういい・・・考えたくない。 そしてあたしの、新しいスタート。 ◆◆ 「ってことなの。」 友理奈先輩の話は結構長かった。 ・・・ちょっと要点のわかりにくい話は相変わらずだから・・・。 っていうと泣かれそうだから言わないけど・・・。 「・・・・そんな。」 優しそうな人だなって思ったのになぁ。ちょっとチャラそうだけど。 みやにそんな友達がいたなんて知らなかった。 なんで話してくれなかったのかな、ももだって・・・。 私たち、たった3人の文芸部だったのになぁ・・・。 私はカヤの外で、ちょっと面白くない。 「愛理、わかる?あいつヤバイんだよ。近づいちゃだめだよ?」 先輩の話はあんまり聞こえていなかった。村上さんのこともだけど、 みやとももに隠し事されてたみたいで・・・ちょっと悔しかった。 564 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/07(月) 23:34:08.29 0 &color(blue){>>469 } 第299回 「よ、佐紀ちゃん」 「・・・・また、あんた?」 「そういう顔しないでよ」 「・・・はぁ」 ため息をつく。だって朝、家を出たら腕組みした茉麻が目の前にいるんだよ? 気が重いよ。まったくもう。 「ところで、とあることを耳にしまして」 「なに?また嗣永のこと?」 「え?違うよ、なに、佐紀ちゃんそんなにもも先輩のこと好きなの?」 「は、はぁ!?ち、違うよ。なに、とあることって」 …なんか悔しい。嗣永の名前なんて出すんじゃなかった。 だけど、意識していたのは事実で。・・・否定はしない。 この間から、嗣永のことばかり考えている。茉麻のせい、なんてもう言わない。 考えるってことは、気になるって事でしょ?と諦めたから。 …昨日一昨日、必死に考えた答え。 気になる、がどういうことなのかはまだわからないけど。 でも、これで自分の気持ちに一区切りをつけられた気がする。 だから勉強頑張るぞ・・・・と気合を入れた朝、茉麻がとんでもないことを言った。 「あの、村上愛が今日から帰ってくるらしいよ。」 「・・・え?村上って・・・あの?」 「そう、15人対1人で勝っちゃった人。」 「うそ?」 「ほんと。熊井ちゃんからメール来たの。」 「・・・そう、あいつが」 565 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/07(月) 23:34:48.73 0 &color(blue){>>564 } 第300回 村上愛、学園1の問題児といわれた村上か・・・。 「制服ちゃんと着な。だらしないよ」と言ったら 「はぁ?関係ないでしょ?あなたに迷惑かけました?」 とキレられたことを思い出す。いや、それだけじゃない。 もう語り尽くせないほど暴言を吐かれた。年下のクセに。 そう、あいつ戻ってくるんだ。・・・ふん、どれだけまともになったか見てやろうじゃないの。 生徒会長としての、私の心に火がつくのを感じていた。 ◆ めぐちゃんが学校に帰ってきたという話は一気に広まった。 お昼休みには、全校生徒が知っちゃったくらいの速さで。 「あたしちょー人気者じゃん」 って、例のごとく屋上にいるめぐちゃんはそう言った。 「あ、授業は出てるよ?ここに来るのは休み時間だけだよ?」 なんて言ってる。のん気だけよね、相変わらずだけど。 「わかってるよぉ。あ、みやは?クラス違うんだっけ?」 「うん。待ってるよーってメールしたけど。」 「そっか。クラスではどう?」 「うーん・・・・誰も喋ってくれない」 「だろうね、しょうがないよ。」 「まあね。でも、友達なんて別に。あたしにはももちゃんがいるから、別にいいの。」 「なにそれ、告白?」 「なわけないでしょー・・・っと、みやー!こっち!」 めぐちゃんとじゃれ合っていたら、みやがやって来た。手にはお弁当。 そう、3人でお弁当タイムなのである。

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