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暴漢×消失古泉 - (2007/10/27 (土) 21:18:32) の編集履歴(バックアップ)


「離しなさいよ!」
黒いブレザーを着た少女の怒鳴り声が路地裏に響く。
「ぶつかってきたのはそっちだろぉ?」
柄の悪い男が数名、少女の手を掴みながら小さな体を取り囲んでいた。

「周りも見ずに勝手にぶつかってきて良く言うわ!その目ん玉は何の為についてるのかしらね!
 しかもこんな所まで連れ込んで何様のつもり!?
 あたしは忙しいんだから!無駄な時間とらせないでくれない!?」
黄色いカチューシャから伸びるリボンを靡かせ少女が言うも
男達はにやついた表情のまま手を離さない。
焦れた少女が腕を掴む男の脚を蹴り上げ、逆上した男が腕を振り上げた。
「涼宮さん!」
勢い良く駆け込んで来た黒い学ランの少年が、そのまま男に体当たりをする。
男がよろけた隙に少女の手を取り、逃げ出すベく踵を返そうとして──。
狭い路地を塞ぐように立つ男達の前に足を止めた。

「えらいかわい子ちゃんだと思えば、こんなイケメン彼氏付きとは。なぁ……?」
「……別に彼女とはそういう間柄ではありませんが。しかし女性を誘うのならそれ相応の誘い方と言……」
言い終える間も無く再び振り上げられた拳に、少年が慌てて身を避ける。
「古泉くん!こんな奴ら人の話なんて聞きやしないんだから!相手するだけ無駄よ!」
涼宮と呼ばれた少女が少年の名を呼んで注意を促すも、道を塞ぐ男達を突破は無理と判断し、
二人は逆に路地の奥へと駆け出した。
しかし駆け込んだ先は行き止まりで。
壁を背に二人は追って来る男達へと向き直る。
「僕が彼らに突っ込むので、その間に逃げる事は出来ますか?」
涼宮を庇う様に立ちながら古泉が問う。
「だめよ。そんなの絶対許さないんだからね!」
あくまでも気丈な返事に、古泉は整った容貌を初めて微苦笑に崩して困ったように眉尻を下げた。
「残念だったなぁ行き止まりでさ」
「やっぱ彼女の前では良いカッコしたいってか?」
相談しあう二人に、追いついた男達が口々に囃し立てる。
「……逃げてくださいね」
そう呟いて古泉は男達の方へ足を踏み出した。

男達からすれば、古泉という少年は背丈こそあるものの、そこまで体格が良い訳でもなく。
その隅々まで手入れされていそうな風貌からして、大した事が無いと踏んでいた。
しかしながら殴りかかってくれば、注意はそちらに引かれるもので。
暴れる古泉を多勢に無勢で押さえつけるも、その背後から強烈な一撃を食らい、彼らは意識を改めた。
実は少女の方が手に負えないと。
「す、涼宮さん!」
地べたに押し付けられながら、古泉も驚いたのか目を丸くして涼宮を見ている。
「古泉くんをいじめたら許さないわよ!」
制服のスカートが捲れ上がるのも気にせずに、涼宮がしなやかな脚で男の頭に蹴りを入れる。
古泉を押さえつけていた男が地面に伏せた。

このまま直ぐ逃げ出さなかったのが二人の不幸と言える。

体を押さえつける手が減り、古泉がもがきながら身を起こしかけた時
それまで動き回っていた涼宮が高い声を上げて地に崩れ落ちた。
「涼宮さん!?」
何が起きたのか理解出来ない古泉に、涼宮の側に居た男が掌を向ける。
そこには小さく黒い器具が有った。
「まさか女の方にコレを使うとは思わなかったぜ」
それは電気ショックを与える器具。スタンガンだった。