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射手座の日 敵軍×古泉 - (2008/02/28 (木) 19:01:26) のソース

「作戦参謀大変です!古泉幕僚総長が!」 
そう叫んだのは誰だったか。 
作戦参謀であるキョン艦隊のメインモニターに 
火の手に包まれた艦隊が映し出された時、皆が言葉を失った。 
「古泉!古泉!返事をしろ!」 
キョンがモニターを叩き付けながら声を荒げる。 
だが、古泉くん艦隊直通の画面は砂嵐に塗れ 
何も返事は無かった。 

その日舞い込んだのは、まさかの古泉くん艦隊撃墜の報。 
温厚ながらもやり手だった幕僚総長の艦が 
簡単に落とされた事に軍内部は混乱の極みだった。 
また古泉幕僚総長の生死も不明で。 
艦内に内通者が居たのでは無いか。 
そんな噂までもが、まことしやかに囁かれるようになった──。 



古泉は唇を噛み締めていた。 
「……僕もまだまだでしたね」 
艦内のあちこちで爆発音が聞こえていた。 
先程動力源が落とされ、船がただの鉄の塊になるのも時間の問題と言える。 
外部への連絡も絶たれ、この状態から立て直すのは、正直難しかった。 
「艦内全員に告ぐ!緊急退避!急いで下さい!」 
こうなったからには、犠牲者を少しでも減らす事が最優先だった。 
「しかし総長…!」 
傍らに居た補佐官が声を上げる。その顔は緊張に強張っていた。 
「この船はもう落ちます。この場に居ても死ぬだけです。 
死んだら全てが終わります。逃げて生き延びましょう」 
補佐官の物言いたげな視線を感じながらも 
古泉は騒然とする艦内へと指示を飛ばしていく。 
「総長も早くお逃げ下さい。手遅れになります」 
「僕ももう逃げますよ。まだ死にたくないですしね。 
そう言うあなたも早くした方が良いと思いますよ」 
補佐官を伴い古泉も司令室を出て廊下へと走り出す。 
既に人気の無い廊下は、非常灯の明かりに赤く染まっていた。 
時折爆音と衝撃に揺れる艦内を二人で駆け抜けていく。 
「しかし。こうも簡単に落とされるとは予想外でしたよ」 
今日の敵軍の規模からして、ここまでの損害を被るとは考えられなかった。 
確かに本艦に多数の被弾はしたが、あちこちで上がる爆発はそれ以外の何かを感じさせた。 
だがその違和感を突き止める余裕すら既に無い。 
古泉の愚痴に答える事もなく、硬い表情のまま後を付いてくる補佐官を見て、古泉は苦笑を浮かべた。 
「これで脱出用ポッドが残っていなかったら困りますね」 
「……我々が最後ですか」 
「指示に背く者が居たら、その限りでは無いですが。 
船と心中しようとする者が居ない事を祈るばかりです」 
その時、艦内が大きく揺れた。つい足を取られて二人は足を止める。 
「いよいよ時間が無さそうですね。急ぎましょう」 
「しかし外に逃げても敵艦に狙われたら」 
「先程ダミー隕石を多数撒かせておきました。多少の誤魔化しは出来るでしょう」 
「しかし」 
それでも動こうとしない補佐官に、古泉は苛立ちを覚えた。 
「一体どうしたんですか。時間が無いんですよ」 
強引に手を引きながらハッチへと辿り着く。幸いにしてポッドはまだ残っていた。 
乗り込もうとする古泉に声が掛かった。 
「総長、投降してはどうでしょうか」 
「何を言い出すんです」 
古泉は補佐官へと向き直った。彼の手を見て動きを止める。 
「……それは何のつもりですか」 
補佐官の手に握られた拳銃が、赤い光を反射していた。 
「敵軍……いえ、我が軍への古泉幕僚総長の投降を求めています」 
「……成る程。拒否しても、このままここに残っても死ぬだけ、ですかね」 
「そうなりますね」 
「解りました。応じましょう」 
「話が早くて助かります」 
銃を背に付けられながら、古泉は補佐官と共にポッドに乗り込む。 
「教えて下さい。全部あなたの仕業でしたか?」 
「私一人では無く、協力者が居た事は確かです」 
「……やれやれ、と言うべきでしょうかね。これは」 

頼りない脱出用ポッドが暗黒の空へと飛び立つ。 
炎は船を包み込み、やがてそこにはダミーの隕石と鉄屑と化した戦艦だけが残った。 



暗闇の虚空に浮かぶ鉄屑近くに陣取るキョン艦隊は、多忙を極めていた。 
古泉くん艦隊からの脱出者の保護、現場の調査、古泉の行方。 
加えてSOS帝国主星からひっきりなしに届く涼宮の怒声に 
キョンも余裕を無くしつつあった。 

「キョン、無理しすぎだよ」 
焦りを隠し切れないまま数多の処理に追われているキョンに、副官の一人である国木田が言う。 
「……まあな」 
SOS帝国にとって、温厚且つ冷静で、時に大胆な戦術を用いる 
古泉くん艦隊を失った痛手は大きかった。 
その痛手は戦力的な物だけでは無い。 
「ほんと、人間いつどうなるかわかんねぇよな」 
キョンの傍らに居た谷口が口を開いた。 
いつもなら、単なる愚痴の一つとして受け止められただろうそれが 
キョンの神経を逆撫でた。 
「まだ死んだと決まった訳じゃない」 
怒気を帯びた声で低く答える。残された艦内に古泉らしき遺体は見つからなかったのだ。 
古泉の采配か、犠牲者よりも脱出者の方が多く、また彼らの話を聞いても 
古泉があの中で死んだとは思えなかった。 
希望的観測に過ぎないのはキョンもよく解っている。 
仮に逃げ出せたとして、敵に撃墜されていたら。 
宇宙に単身放り出されたとしたら。遺体などを見つける事は不可能だった。 
「……あいつの事を言ってるんじゃねぇよ。 
今まであんまり苦戦したりとか痛手を負うとか無かっただろ。 
だからさ。ああ、こういうのが戦争なのかなーってな」 

確かにこれは何処か現実味の欠ける戦争だった。 
まるでゲームか何かのように、ボタン一つで敵艦隊を撃破するのだ。 
そして見知った中での犠牲者は今まで出なかった。 
何隻かが大破されたとして。敵味方の推測死亡者数を聞いたとして。 
数字上だけの事のように思えていたのは否めなかった。 
後方での補給活動を主にする朝比奈みくるは前線にはまず出ない。 
狙われる率も高いため、仮に前線に出たとしても常に護衛が有る。 
それは立場上涼宮も同じだ。長門の艦隊はそれこそ無敗を誇る。 
古泉だって長門には敵わぬものの、その判断力、そして統率力は充分過ぎる物だったはずだ。 
それなのに。何故こんな事になったのか。 

「何で戦争なんてしてるんだろうな。俺たち」 
冷めた目で呟く谷口は、目前にあるパネルでは無く、遠くを見ているようだった。 
パネルには、開戦の火蓋となったSOS帝国が占拠したコロニー「PC-ヴィスタ」が映し出されていた。


 
捕虜として敵艦隊の一隻に着いて早々に、古泉はある部屋へと引き立てられた。 
そこには数人の軍人と、正面に巨大なモニターが古泉を待っていた。 
両手を前で繋がれた程度の軽い拘束だったが、もし怪しい動きでもしようものなら 
即座に撃たれると言う事なのだろうと古泉は思う。 

暫くして、モニターに人影が映し出される。 
尊大な態度で笑みを浮かべる男の姿があった。 
「我が艦へようこそ。SOS帝国軍幕僚総長、古泉一樹。 
私はコン・ピケン・ブチョウシ総統。コン・ピケン独立共和国を治めている。 
話すのは初めてだが、君の噂はかねがね耳にしているよ。 
この度は交戦時に隕石群に見舞われ、動力部を破壊されたと実に悲運な事だが 
しかし、君が我が艦に迎えられた事が素直に嬉しい。私は君の能力を評価している。 
出来るならこのような形では無く、直接会ってみたいものだ。 
どうだろう、暫く留まってはみないか。このままその艦を本艦隊へと合流させたい。 
敗戦の将とは言え、悪いようにはしない」 

反論の間も無く続けられた言葉に、古泉は目を細めた。 
つまり、古泉の艦隊は正々堂々とコン・ピケン艦隊と戦い、運悪く敗戦した。 
そこには内通者も何も無かったと。そういう事にしたいのだろう。 
しかし幾ら罠に掛かったとは言え、古泉が負けたのは事実だった。 
「総統が自らそう仰るのであれば従いましょう」 
恭しく古泉は頭を垂れた。元より敗者に拒否権は無いのだ。 
文句があるのなら戦いに勝つしかない。 
「そうか、それは嬉しい事だ。ならば私は君を客人として扱おう。 
ああ、見知らぬ者ばかりに囲まれては不自由も多いだろう。 
君の知己となる人物を側に付けようでは無いか」 
この敵艦内に居る古泉の知人など限られている。 
古泉が静かに目を走らせると、部屋の片隅に共和国の制服を見につけた補佐官の姿を見つけた。 
補佐官は、以前からその服を着ていたかのように卒のない態度で、じっと古泉を見ていた。 



客人として扱うと言う総統の話は本当だったらしい。 
古泉に宛がわれた部屋は、何不自由なく過ごせるだけの広さと内装を備えていた。 
足りない物は外部への連絡手段と、行動の自由だった。 

古泉は軽く溜息を付いて、柔らかなベッドへ腰掛けた。 
総統の艦隊に合流しては、きっと逃げる事は出来なくなるだろう。 
ずっと逃げる算段を考えていた。 
自分の生死は表向きどうなっているのかも心配ではあった。 
敬愛する上官、親しい同僚たち、愛すべき部下。 
彼らは今どうしているのだろうか。 
考えても詮無い事だと、古泉が顔を上げると、壁際に静かに立つ男が目に付いた。 
「……総統は側に付けるとは言っていましたが 
何もずっとそこに居なくても良いのでは無いですか」 
無意識に咎めるような口調になってしまうのは、仕方の無い事と言えるだろう。 
「しかしこれが、新しく仰せつかった任務ですから」 
「……寝返ってまでも僕の近くに居るとは、あなたも災難ですね」 
「私の何処が災難なんですか?」 
しれっと答える元補佐官に、古泉は眉を寄せる。 
「災難はあなたの方でしょう。部下に裏切られ捕虜となった挙句 
その裏切り者に監視されているのですから」 
そう、客人などと言われても、捕虜である事には何も変わらない。 
何もせずに過ごす分に不自由は無いが、何も出来ないまま無為に時は過ぎていくのだ。 
「…………」 
古泉は黙って目を伏せる。毛足の長い絨毯の上を歩く音、人が近寄る気配がした。 
「気落ちされていますね」 
目の前に補佐官が立っていた。 
長い前髪の隙間から、ベッドに腰掛けたまま古泉は彼を見上げる。 
「……何度考えても、あなたが今回の行動に至った理由が解りません」 
落ち着いた優秀な補佐官だった。 
このような事を起こす程に、思いつめているとも思えなかった。 
それとも、古泉や周りの者が気付かなかっただけで 
最初から共和国側の手の者だったのだろうか。 
幾ら考えても堂々巡りで答えが見えなかった。 
「……おそらく、あなたには解りませんよ」 
補佐官の手がゆっくりと上げられる。 
つい先日、古泉に拳銃を突きつけたその手が 
壊れ物に触れるかのように、そっと古泉の肩に添えられた。 
次の瞬間には体が揺らぎ、視界には天井と、古泉を見下ろす補佐官の顔が有った。 

ベッドに倒れた拍子に、被っていたベレー帽が音もなくと落ちたが 
古泉は押し倒されながらも補佐官から目を逸らさなかった。 
暫し無言で見詰め合う。 
やがて沈黙に耐えられなくなったのか、補佐官が口を開いた。 
「抵抗しないんですね」 
「あなたの出方を見ようかと思いまして」 
「そんなだから私などを相手に、後手に回ってしまうのですよ」 
「そうかも知れませんね」 
淡々と述べる古泉は、ただ静かに補佐官を見つめていた。 
「随分と落ち着いていますが、諦めているんですか?」 
「いえ、違います。あなたが僕に危害を加えるような事は 
無いと踏んでいるから、でしょうか」 
「……何故そう思うんです?」 
「僕は言わばコン・ピケンへの手土産なんじゃないかと思いましてね。 
過大評価かも知れませんが、あなたが単身寝返るよりも、僕が居た方が付加価値が付く。 
ならば、あなたがここで僕を殺すなりして自らを不利にするとも思えない。 
それにあなたにそのような意図があったとしたら、既に僕の命は無いはずです」 
「流石幕僚総長、と言うべきでしょうかね。 
しかし本当にそうでしょうか。人は案外簡単に心変わりするものですよ。 
ほら、このように」 
補佐官の手が古泉の首に掛かり、力が込められた。 
「……仮に心変わりをするとしても、あなたは損得勘定のできない人では無い。 
投降中の不慮の事故ならいざ知らず、今僕に手を掛けては、 
あなたも唯では済まないのではないでしょうか」 
首を絞められながらもあくまで気丈な古泉に 
補佐官はアッサリと手を緩めて小さく笑う。 
「お綺麗な総長殿には解らないかも知れませんが、 
人を傷つける方法は、何も命を奪うだけではないのですよ」 
その口調に今までと違う物を感じ、古泉は僅かに眉を顰めた。 
「先程あなたが問われた離反の理由、ですが。 
そうですね。自分を認めさせたかったとでも言いましょうか」 
誰に、とは補佐官は言わなかった。 
それが自分以外を指していると思いながらも古泉は答える 
「……僕はあなたを評価していたつもりですが」 
「総長殿はそうでしたね。しかし私はそれ以上の物が欲しかった」 
「それ以上……?」 
「満たされないと知りつつも、乾きを癒そうとするのは当然でしょう? 
地位や名誉や権威欲。誰しも持つ欲望です」 
「……そんな物の為に……」 
「そう言い切れるのは、あなたが既に満たされているからですよ。 
選ばれた一人だからです。今の帝国の欠点にも気付いているでしょうに 
目を背けている。それはあなたの怠慢だ。 
このままでは、私のような者が相次ぐだろう事は必然です」 
不吉な予言めいた物言いに古泉の目が揺らぐ。 
「……閣下ですか」 
「ほら、ちゃんと解っていらっしゃる」 
「……あなたは僕を買い被り過ぎです」 
「そうでしょうか。ああ、あと私は他にも欲しい物が有りまして」 
冷たい笑みを浮かべたまま、補佐官は言葉を続ける。 
「以前からあなたが欲しかった──そう言ったら、どうしますか?」 
古泉の目が驚きに大きく開かれた。 
それまで然程気にしていなかった体勢の不利を痛烈に感じ、古泉は体を強張らせる。 
「……この部屋には監視カメラや盗聴器が仕掛けられているはずでは」 
「知っていますよ。何か問題でも?」 
平然と肯定し、補佐官は古泉へと顔を寄せた。 
「な……。やめ……っ」 
嫌悪感に顔を背ける古泉の耳元で小さく囁く。 
「もう作戦参謀殿には抱かれたんですか?それともあなたが抱く側ですか?」 
その言葉に、古泉は制止の声を上げる事を止めた。 
反射的に湧き上がった怒りに任せ、補佐官の頬を勢い良く叩く。 
「それは僕だけならのみならず、作戦参謀への侮辱と取ります」 
きつい眼差しで自分を睨め付ける古泉に 
補佐官は叩かれ朱に染まった頬も気にせずに笑みを深めた。 
「そう。思った通り良い顔です。笑み以外のあなたを見てみたかった」 
「……っ」 
乗せられたのかと怒りと羞恥に憤る古泉を他所に、補佐官は身を起こした。 
「私も衆人環視の趣味は有りません」 
補佐官の意図が理解し切れない古泉は 
戸惑を隠し切れないままに跳ね起きて距離を取る。 
あからさまな警戒の様子に、補佐官は満足そうに笑った。 
「今のあなたに手を出しても、あまりにも面白くない。 
ですので、一つ賭けをしませんか。 
先程私の言った事柄が、自明の理となったならば 
その時はあなたを私の自由にさせて頂きたい」 
「……馬鹿な事を」 
「これでも元上官に敬意を払っているのですよ。 
ああ、私だけが賭けては不公平ですね。 
では逆に、あなたが私と大差ない立場だと公表されたのならば 
私の出来る範囲であなたの希望をお聞きしましょう」 
何も言い返さない古泉を承諾したと受け取ったのか、少しの間を置いて 
補佐官は慇懃無礼に退出の辞を述べて部屋から出て行く。 
一人残された古泉は、深い溜息と共に項垂れた。 



元々SOS帝国は、宇宙の片隅に在る弱小国家の一つだった。 
しかし突如として、近隣に在るコン・ピケン独立共和国の 
技術の粋を集めた最新型コロニー「PC-ヴィスタ」を強襲。見事制圧。 
総指揮をとった涼宮ハルヒ上級大将は、天性の機転と機知、 
そして幸運に恵まれては居たが、その行動には他者から見て不可解な点も多く 
指導者として致命的な欠陥を抱えても居た。 
軽率な行動だと非難の声も在ったが、それらは少数派として掻き消された。 
しかし、コン・ピケン独立共和国が多大な労力の元作り上げたコロニーを 
奪われたままで泣き寝入りをするはずも無く。 
やがて全面戦争へと移って行った。 



捕虜となったSOS帝国軍古泉幕僚総長を乗せた 
コン・ピケン独立共和国艦隊、ルペルカリア艦長は 
そのメインブリッジで旗艦ディエス・イラエに乗る 
コン・ピケン・ブチョウ総統と通信の最中にあった。 
「成る程。つまり君は捕虜の扱いに不満が有ると?」 
「そうです総統。折角の捕虜なのです。 
悠長に監禁などせず、尋問を用いて敵軍の機密を吐かせるべきでは」 
血気盛んな部下の態度に、総統は苦笑を浮かべ宥めるように言う。 
「確かに彼らような野蛮な者達には尋問もお似合いかも知れないが。 
捕虜は幕僚総長一人では無いでは無いか。 
あの投降してきた元補佐官とやら。有る程度の情報なら彼から聞き出せる。 
それに幕僚総長ランクでしか知らない事など、そう簡単に口を割る訳も無いだろう。 
不用意に捕虜の価値を落とすよりは、扱い易い方を使うべきだ」 
「それはそうですが……しかしあの男は信用なりません」 
「勿論信用などしないさ。 
だが現にSOS帝国軍は、初期と打って変わって静観に徹している。 
こちらから行動を起こす頃合とは思わないかね。 
君の艦隊が使えないのなら、そちらの空域近くに居る 
ムスペルヘイム艦隊を使おうではないか。君は捕虜と共に後方に居たまえ。 
安全を確保するのも立派な仕事だ」 
名案が浮かんだかのように総統は言い。通信は終わった。 
ルペルカリア艦長は、自分が総統の期待に添えなかった事に気が付いた。