第63話 橘の正義

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「剣崎さん達、大丈夫なんでしょうか……」
上城睦月が不安そうに尋ねた。
「大丈夫だよ。剣崎君達だけじゃないんだ。すぐに帰ってくるよ」
白井虎太郎はそう言いながら牛乳を飲んでいる。すでにスーツを脱ぎ、ラフな格好にくつろいでいる。
睦月、虎太郎、そして橘朔也の三人は、攫われていた子供達を無事家まで送り届けた後、再び白井牧場に集まっていた。
「そうだ睦月。あの二人を信じよう」
橘の言葉に睦月もしぶしぶ頷いた。
と、その時。誰かがドアを開けて家の中に入ってくる気配がした。
「誰だっ!まさか敵!?」
「あ、来た来た」そう言うと虎太郎は席を立ち上がった。
「待て!鍵を掛けてなかったのか」
「うん。だってもう鍵は持ってないから開けておかなきゃ……」
「誰が来たんです?」
一同が話している間に、その人物は部屋の中に入ってきていた。
「あっ」「お前は……」
「久しぶり~」
入ってきたのは、かつて彼らと共にアンデッドと戦った女性、広瀬栞だった。
「広瀬、お前……」
「驚いた?人手が必要だと思って連絡しておいたんだ」虎太郎が二人に告げる。
「しかしお前、家庭は……」
「旦那は長期出張で海外。だから別に気にしなくていいわよ」
広瀬は軽くそう告げる。
「そうか……、だが広瀬が来てくれたのは丁度いい。悪いがすぐ手伝ってほしいものがある」
「何です?」
橘はその疑問に対し、ある物を懐から取り出した。
その場にいた全員がそれを凝視する。それは、一つのベルトと一枚のカードだった。

「それって……」
橘が出したベルト。それは紛れも無く、ニュージェネレーションの一人、仮面ライダーグレイブのものだった。
「そう、これは志村が使っていたものだ。あの後回収しておいたんだが……」
「でも橘さん。これってやっぱり適合者じゃないと変身できないんじゃ……」
虎太郎の疑問に橘が答える。
「出力を落とす。そうすれば適合者じゃなくても変身は可能だ」
そしてAのカードを見ながらこう続けた。
「この人造アンデッド・ケルベロスのカードは元々高い戦闘能力を持っている。多少出力を落としても充分戦闘には対応できる」
だからその作業のために広瀬、手を貸してくれ。そう橘は広瀬に向かって言った。
「事情は分かったけど……でもそれ相応の設備のある場所じゃないと無理よ」
「旧BOARD施設跡に行ってみよう。あそこなら……」
二人が話し合っている間、一人虎太郎がニヤニヤしている。自分が仮面ライダーに変身した姿を夢想しているのだ。
その時、割れた窓の外から仮面ライダーの名を呼ぶ声がした。
広瀬と虎太郎を家の中に残し、外へ出る橘と睦月。彼らの目の前には、怪人を引き連れた異様な風体の男が立っていた。
「誰だ、あんた達は!」
睦月の質問に男が答える。
「俺の名はサー・カウラー。お前達仮面ライダーの首を頂きに来た」
「敵か!」「橘さんは下がっていて下さい!変身!」『オープンアップ』
レンゲルに変身した睦月がカウラーに向かって突撃する。
「お前達は下がっていろ」
エイリアンハンターを下がらせたカウラーは、レンゲルの戦力を測るべく自ら鞭を手に前へと出た。
レンゲルラウザーでカウラーに襲い掛かるレンゲル。だがカウラーはそれを全て紙一重でかわした。
「パワーはあるようだ。だがキャリアが違う。戦い方を見せてやろう、小僧」
「誰が小僧だあ!」
だがカウラーが振るう鞭で迂闊に接近できなくなってしまう。さらに鞭は的確にレンゲルの体を打ち据えていった。
「睦月!」
「この程度か。エイリアンハンターよ、奴らを皆殺しにしろ」
カウラーの号令に従い4人のエイリアンハンターが動き始めた。

「やめろ!変身!」『ターンアップ』
橘はギャレンへと変身した。
「変身したか……仮面ライダーギャレン」
「橘さん!無茶です!」
そう、確かにレンゲルの言うとおりだ。今の傷を負った橘ではギャレンとしてまともに戦うことはできない。
だが……。
(やるしかない!)早期決着をつけるべく、ギャレンは2枚のカードを引き抜いた。QとK。
「見せてやる。俺の、キングフォームを!」
しかし、アブゾーバーにラウズするよりも早く、カウラーが持つ何かの装置から光線が放たれカードを直撃した。
その瞬間……。
「馬鹿なっ!」
それぞれのカードに封印されていたギラファアンデッドとサーペントアンデッドが復活したのだ!
「そんな!リモートのカードは間違いなくここにあるのに……」
レンゲルが慌てて自分のカードを確認する。
「ふふふ……この装置はリー・ケフレンが開発したものだ。この大きさでこの性能、大したものだよ」
そう言いながらカウラーは手の中の、テレビのリモコンサイズの装置を弄んだ。
「あははははは!久しぶりの外の世界はいいわぁ!」
「久しぶりだな橘。一つ言っておこう。三度目は無いと思え」
復活した2体のアンデッドがレンゲル達の方を見ながら言う。
「どうした?形勢逆転のつもりがますます不利になったな」
カウラーが冷たく言い放つ。返す言葉も無い。
そして、2体のアンデッドと4人のエイリアンハンターが一斉に2人のライダーへと襲い掛かった。

「くっ!」
サーペントアンデッドの攻撃をかわすレンゲル。だが、いざ反撃に転じようとしたところをケラオとハグの射撃に阻まれる。
一方、ギャレンもギャレンラウザーで攻撃を行うがギラファアンデッドのバリアで防がれ、さらにその背後から飛び出してきたバウラとホウの攻撃を食らってしまう。
そこへ追い討ちをかけるように急接近してきたギラファが、2本の刀、へルター&スケルターで斬りつけてきた。
エイリアンハンターの援護を受けた2体のアンデッドの猛攻によって、ギャレンとレンゲルは劣勢に立たされていた。
(何故だ。この強さ、4年前の時と同じ……)
アンデッドは封印が解かれてからしばらくの間は全ての能力を出しきる事はできない。アルビノジョーカーの一件でそれは橘も知っていた。例外だったのはジョーカーぐらいである。それなのに……。
(あの装置のせいだとしたら……あれを作ったリー・ケフレンという男、紛れも無い天才だ)
「ふふふ……さて、一ついい事を教えてやろう。今お前達が戦っている姿はリアルタイムで日本中のテレビ画面に映っている」
「何だと!?」
あまりにも意外なカウラーの発言にギャレンもレンゲルも面食らってしまった。
「出鱈目を言うな!どこにもカメラなんて無いじゃないか!」
「た、橘さん!そいつの言ってる事はホントだよ~!」
家の中から虎太郎が大声で橘に知らせる。どうやら今の話を聞いて慌ててテレビを点けたらしい。テレビ画面には、ボロボロになったギャレンとレンゲル、そして対峙するアンデッド達の姿が映っていた。

その時、カウラーの言葉通り日本中のあらゆるテレビ画面には彼らの戦う姿が映し出されていた。
今重要なのは電波をジャックしているその方法についてではない。仮面ライダーの負け姿が日本中に流れているという事実である。
虎太郎が書いた大ベストセラー「仮面ライダーという名の仮面」、それは老若男女全てが読んでいた。テレビや雑誌でも取り上げられ、読んでいない人間でもある程度の知識はあった。
当然仮面ライダーの名前や姿についても記述があり、そのため誰もが会った事はなくても知っていた。その彼らがテレビの中で、今巷を騒がせている怪物達の仲間と思しき連中にやられているのである。
「仮面ライダーが助けてくれる」、そう信じていた人達の希望を打ち砕くには充分過ぎる演出だった。そしてそれは各地で戦っているヒーロー達の士気を下げ、バダム側の士気を上げる事をも意味する。
これこそがサー・カウラーの狙いだったのだ。
「さて。一つ提案がある。我々エイリアンハンターの仲間になるつもりはないか?」
「な、何を……」
「それともここで戦って無駄死にをするつもりか?勝ち目の無い戦いをして死ぬよりは賢い選択だと思うがね」
カウラーがさらに仕掛けてくる。ここで拒否すれば彼ら二人は間違いなく死ぬ。解放される危険性を考慮して、ラウズカードを使った戦いができないからだ。
そして申し入れを受け入れた場合。それは仮面ライダーという名のシンボルが悪に屈したことを意味するのだ。
どちらを選んでも人々に絶望が訪れることは必至である。
カウラーはさらなる駄目押しをしてきた。
「お前達は何のために戦っている。正義のためとでも言うかね。そのような形骸化した概念のために戦うつもりか?正義とはお前達が思っているほど……」
綺麗なものではない。そうカウラーは強く、はっきりと言い切った。
その一部始終はテレビで流された。誰もがテレビの前で固唾を飲んで成り行きを見守った。中には、すでに絶望しかけている者達もいた。
「……そうだな。貴様の言うとおりかもしれん」
「た、橘さん!?」
ギャレンの発言にレンゲルが声を上げる。だがギャレンは、橘はそのまま話し続けた。


一方その時、地球の某所でサー・カウラー一味の電波ジャックをモニターしていた人物がいた…。

「将軍、サー・カウラー殿が超時空ネットワークを始動させた模様です…」
「ほぉー、とうとう『あの機能』を使ったか…」
 将軍と呼ばれた男は、ジャングルの如く蓄えた顎鬚をいじりながら、サー・カウラー一味の電波ジャックを、薄ら笑いを浮かべながら見ていた。
将軍と呼ばれた人物は、派手な黒い軍服にコブラのリストバンドを身に付けており、その地位が高い事を伺わせていた。
中でも特徴的なのはその頭部で、後頭部が異様に長く伸びた独特の顔を持ち、一度見ただけでトラウマ同然のインパクトを残す物であった…。

「貴様達、よく見ておけ…。明日この私が行う作戦はこんな物ではない…、世界中のテレビ、ラジオ、無線、携帯電話、インターネットがこの私の掌に握られるのだ…!」
「その時こそルチ将軍、貴方がバダムのNO.1に君臨する時です…!」
「その通りだ!この私ルチ将軍がぁ~、知能指数1300の頭脳で世界を…、そして全宇宙を支配する時なのだぁ~!
 弟カイロンが行えなかった全世界同時通信ジャックをこの私が行い、そして愚かな人間どもに鉄槌を下すのだぁ~!ホッホッホッホッ…!!」

その人物の名はルチ将軍と言った…。
ドクターQやプロフェッサーK、果てはアイアンクローやギルハカイダーを操り、高倉長官をも抱き込んでTAC、TPC、地球防衛軍を乗っ取った黒幕であった。

その黒幕がついに、蠢動を始めようとしていた…。


「確かに正義のための戦いは綺麗なものなんかじゃない。犠牲の出ない戦いなんか無い。4年前も、沢山の血が流れた。沢山の人を救えなかった……」
「橘さん……」
ギャレンの、橘の脳裏には4年前の戦いの時、救えなかった人達の顔が浮かんでいた。BOARD職員、連日のようにニュースで流れた被害者達、桐生さん、そして……。
小夜子……。
「だからこそ!力を持つ俺達は戦わなければならない!貴様らのような連中がいる限り!」
語気がどんどんと荒くなる。
「全ての命を救えるなんて思い上がっちゃいない!それでも、少しでも犠牲を少なくするために戦い続けるんだ!この力はそのためのものだ!これが……」
最後の一言を、ギャレンは、橘は一層大きな声で叫んだ。
「これが俺の正義だ!!!」
そのギャレンの、橘の魂の叫びは、テレビを介して全ての人へと届けられた。
「言いたいことはそれだけかね」
カウラーが一歩前へ出る。
「つまり我々の仲間になるつもりは無いということか。ならば……死ぬがいい」
「俺は死なない!人を守るために!この命に代えても貴様らを倒す!」
そう言うとギャレンはギャレンラウザーをカウラー目がけて発砲した。だが、その弾は前に割り込んできたギラファによって全て防がれてしまう。
「お前の相手はこの俺だ」

その時、ギャレンの魂の叫びを聞いていたテレビの前の人々がある行動を取り出した。
最初にその行動を取ったのはまだ無邪気な子供達であった。
「頑張れ……」どこかのテレビの前で一人の子供がそう言った。ほとんど呟きのようなものでしかなかった。
だが、まるで示し合わせたかのように、日本中の子供達が、場所を選ばず「頑張れ」のコールをテレビに向かって行なった。
それは大人達にも伝播していった。一人、二人と。徐々に、徐々に。
「頑張れ……」「そうだ負けるな!」「頑張れ仮面ライダー!」
その声はどんどん大きくなっていった。街で、家庭で、全ての場所で、叫び声のような応援が行なわれた。
誰もが二人の仮面ライダーの勝利を祈った。そして信じた。
絶望は今、希望へと変わった。

日本中の声援がギャレンとレンゲルに届くはずはない。だが、それでも二人は持てる力を振り絞ってその戦いに臨んだ。
「どけぇぇぇぇぇぇ!」
ギャレンが気合でギラファを押しのけ、カウラーを狙って撃つ。
「睦月、今だ!」
ギャレンの合図とともにレンゲルが2枚のカードを取り出し、さらに「リモート」のカードをラウズする。
「手を貸して下さい、嶋さん……そして姐さん」
リモート能力によってそれぞれのカードに封印されていたカテゴリーKとQ、タランチュラアンデッドとタイガーアンデッドが復活する。
「久しぶりだね、睦月君」
「嶋さん……僕の事が分かるんですか」
「当然だ。それより行くぞ、睦月」
答えたのはタイガーアンデッドだった。
「……はい!」
ライダー側の戦力が増え、4vs7のバトルとなった。まずタイガーがサーペントに飛び掛っていく。
「あなた、人間に味方するの?同じカテゴリーQとして情けないわ」
「黙れ。私にとってお前は敵、ただそれだけだ」
一方タランチュラはギラファへと挑んでいく。
「何故戦う。君も気付いているだろう。すでに統制者はこの世から消えた。我々が戦う意味は無い」
「仲間のクワガタと森で静かに暮らすことはできん、ただそれだけだ」
そしてギャレン・レンゲルはそれぞれ2人のエイリアンハンターと戦っていた。だが、ただでさえ怪我をしているギャレンにとって状況はそう芳しくない。
「くっ、だが、ここで負けるわけには!」
「その通りです、橘さん!」
ギャレンははっとして声のする方を見やった。大空に、急降下してくるブレイドJフォームの姿があった。

「奴らめ、もう戻ってきたか!」カウラーが苦々しげに言う。
「剣崎ぃ!飛び道具を持っている奴から倒すんだ!」
「はい、橘さん!」
ブレイドJフォームは空中で「スラッシュ」のカードをラウズした。
それに気付いたケラオが銃を乱射してくるが、ブレイドJフォームは素早い動きでそれらを全て回避し、目にも止まらぬ速さでケラオの体を切り裂いた。
ハグが慌てて弓矢で撃ち落とそうとするが、その瞬間背後から狙撃され弓を落としてしまう。
振り返って見ると、シャドーチェイサーに跨ったカリスがカリスアローを構えながら突撃してきていた。
カリスはそのまま「トルネード」のカードをマシンにラウズすると、トルネードチェイサーでハグを撥ね飛ばした。
「懐かしい顔ぶれが揃っているようだな」
そう言いながらカリスがマシンから降りてくる。
起き上がったハグがカリスへと襲い掛かるが、今度は「チョップ」のカードをラウズしたカリスによって息の根を止められてしまった。
その間、ギャレンはずっとカウラーに向けて威嚇射撃を行なっていた。
形勢を逆転するには充分な面子が揃った。

雨が降り出した。強くもなく弱くもなく、だが地面をぬかるませるには丁度良い雨だった。
「あの黒い男に気をつけろ!奴はアンデッドを解放することができる!」
ギャレンがブレイドとカリスに向かって叫んだ。
「成る程。なら……」
カリスがカウラーに向かっていく。カウラーは鞭を巧みに操り攻撃を仕掛けてくるが、カリスは一瞬の隙を衝きカリスアローで泥を掬ってカウラーの顔面にぶちまけた。
カウラーに隙が生じるが、流石は数多の修羅場を潜っているだけあって、すぐに間合いを取りカリスの追撃から逃れた。
「今だ!」
カリスの合図にまずブレイドJフォームが動く。タイガーとサーペントの戦いに割って入ると、サーペントに切りつけた。
それをホウがブーメランを投げて阻止しようとしたが、一足早くカリスがラウズした「バイオ」のカードによって現れた触手に動きを止められてしまう。
そこへすかさずレンゲルが「スタッブ」のカードで強化した突きを叩き込んだ。腹部を貫かれ絶命するホウ。
さらにカリスは「エヴォリューション」のカードでワイルドカリスに変身すると、すかさず「ワイルド」のカードをラウズし、サーペントを狙い撃ちにする。
放たれたワイルドサイクロンがサーペントアンデッドを粉砕した。
「馬鹿な。私が、また封印される……」
バックルを開き、動かなくなったサーペントアンデッドにカードを投げつけ封印するブレイドJフォーム。
そしてギャレンはバウラと戦っていた。怪我を負った体のためか動きも鈍く、バウラの大鎌攻撃に苦戦するギャレン。見る間にボディが切り裂かれていく。
(くっ、こうなったら……)
ギャレンは「ラピッド」のカードをラウズするとぬかるんだ地面に向けて一斉に発射した。泥が舞い上がり目の前に迫っていたバウラの視界を塞ぐ。
バウラが動きを止めた瞬間……。
「俺はここだ!」3枚のカードを一気にラウズしたギャレンが、側面からバウラに向けてバーニングショットを撃ち込む。絶叫とともに爆発四散するバウラ。
「残るはカテゴリーKと……お前だけだ!」
ギャレンがカウラーを指しながら叫んだ。

雨は、ひとしきり降った後ぱったりと止んでしまった。まるで人々の祈りが天に届き、ライダー達を救うために降ったかのように……。
そんな中泥まみれになりながら2体のアンデッドが戦っている。タランチュラとギラファだ。
タランチュラが糸を放ち動きを止めようとするが、ギラファはへルター&スケルターでこれを裁ち切った。さらにタランチュラにも一撃を加える。
「嶋さん!」
慌てて駆け寄るレンゲルにタランチュラは一言「大丈夫だ」と言うと再びギラファに向かっていった。
そしてカウラーの前には、ブレイドJフォーム、ギャレン、ワイルドカリス、タイガーアンデッドが戦闘態勢のまま立っていた。
それはカウラーにとってあまりにも分が悪い状況だった。
「おのれライダーども。今回は引き上げるが、次は必ず貴様らのその首、貰い受ける!」
そう言うとカウラーは踵を返し撤退した。
「待て!逃げるのか!」
「よせ剣崎。まだギラファがいる。それにアンデッド解放能力がある以上、下手に戦いを仕掛けるわけにはいかない」
逸るブレイドをカリスが止めた。
「そうだ、ギラファは!?」
ギャレンの声に皆一斉にギラファの方へと向く。いつの間にかギラファは戦闘を止め、人間の姿になっていた。
「どうしたんだ、戦え!」
「悪いが遠慮しておこう。さっきの彼同様、このままではあまりにも分が悪い」
レンゲルに対し、ギラファ=金居は冷静にそう答えた。
「では大人しく封印されたまえ」
タランチュラもまた、嶋昇の姿となり金居にそう告げる。だが金居は静かに首を横に振った。
「確かに、この戦いに勝利したところで意味は無い。しかし人間どもへの敵意は消えることはない」
「お前っ!」
掴みかかってくるレンゲルを軽やかな身のこなしでかわすと、金居はカウラーと同じ方向へと走り去っていった。
「俺はこれから人間狩りを行う。いずれまた会うことになるだろう」
「待て!」
だが金居の姿はあっという間に見えなくなってしまった。
戦いが終わり、変身を解く4人のライダー。タイガーアンデッドもまた、人間態である城光の姿へと変わった。
しかし次の瞬間……。
「橘さん!」
ボロボロに傷付いた橘が音を立ててぬかるんだ地面へと倒れこんだ。

虎太郎と広瀬の手を借りて橘を家の中へと運び込んだ後、一同は今後について話し合うことにした。
「…そうか、橘さんはあのベルトを改良するつもりなのか」
そう言うと剣崎は机の上に置かれたグレイブのベルトとケルベロスのカードを見やった。
「その前に橘さんを病院に運ばないと。ここじゃ応急手当しかできないわ」
広瀬が深刻な顔で全員に告げる。
「でもさ、普通の病院じゃまたあんな奴らが襲ってきた時まずいんじゃないかなぁ」
「それなんだよなぁ……あっ!」
虎太郎の疑問に対し考え込んでいた剣崎がふいに声を上げた。
「そうだ、ルルイエで会ったあの人達。彼らなら手を貸してくれるかもしれない」
そう言うと剣崎は部屋の中にある電話を手に取り、メモを見ながらダイヤルを押した。
待つこと数秒で電話は相手へと繋がった。電話口に出たのは渚さやかだった。ひょっとしたら彼女のプライベートな番号だったのかもしれない。
「もしもし、剣崎です。すいません実は……」
剣崎は自分達の今の状況を事細かに伝えた。
「それで、そのアンチ・バダム同盟って所へ俺達も行ってみようかなと思って……」
「それなんだけど、ここの諜報部が警視庁経由で得た情報だと詳しい所在地までは分からないの。瀬川さんにもそう伝えて詳しい場所が分かるまでここで待つよう言ったんだけど……」
どうやら瀬川は、警視庁から出発したヒーロー達が向かった方角から大体の場所を予想して一人で出発したらしい。
「それに同盟は組織と言っても小さいものだと聞いているわ。怪我人の治療やそのベルトの改良に必要なだけの施設は無いはずよ」
剣崎は落胆した。しかし渚の次の言葉に再び希望は湧いた。
「……もし良かったらバルカンベースに行ってみない?そこには今、優れた科学者が会議のためにたくさん集まっているはずよ」
「バルカンベースですか?」
「ええ。本当なら私達も行くべきなんだろうけど、今ちょっと立て込んでいて……」
そういえばさっきからずっと後ろの方が騒がしい。何かあったのだろうか。
剣崎はバルカンベースの詳しい場所を渚から聞き、丁寧に礼を述べた。最後に渚はこう言った。
「その橘って人に言っておいて。あの魂の叫び、胸を打たれたって」
どうやら彼女達も中継を見ていたらしい。電波ジャックは、カウラーの撤退とともに終了したという。

これで行く先は決まった。一同が移動のための準備をしようとする中、嶋が口を開いた。
「その前に一つだけ聞いておきたい。君達は今いるこの世界が我々の住む世界であってそうではないという事に気付いているかね」
「どういう事です?」
「ジョーカー、君も気付いているのではないかね」
そう言われ、始もまた喋りだした。
「ああ。ここはおそらく幾つもの並行世界が合わさりあった世界。そうでなければ説明できない部分がある」
「そうなのか……?俺には実感できないけど、でも始や嶋さんがそう言うのなら……」
正直剣崎には、否、他の者達もまたその言葉の意味が上手く理解できなかった。
「まあでもさぁ、そのバルカンベースって所には偉い科学者がいっぱいいるんだよね?だったらその人達に説明してもらえばいいじゃない」
虎太郎が楽観的な事を言う。顔がにやけている。虎太郎は今、バルカンベースに着いた自分がサイン攻めに遭う姿を想像していた。
「さて、では私達はカードに戻ろう。また何かあったら呼んでおくれ」
嶋はそう言うと、光とともに席から立ち上がった。
「え、そんな……」
「私達が一緒だと移動に手間がかかるだろう?それに、元々私達の今の復活はイレギュラーなものだからね」
さあ早く、そう嶋は睦月に言った。睦月は意を決し、カードを手に嶋へと近づいていった。そしてカードを嶋の体に翳す。
「カテゴリーK、最後に一つだけ言っておく。俺はもうジョーカーじゃない。相川始だ」
始のその言葉に嶋はにっこり微笑むとカードの中へと再封印された。
「次は私だな」
言われるがままに睦月は光の前に立つと、彼女の体にカードを翳した。
「睦月」「はい……」「立派な男の顔になったな」「……はい!」
そう言うと光もまたカードの中へと再封印された。

出発の準備は意外と早く終わった。気を失ったままの橘をそっと車の後部座席に乗せる。
橘のレッドランバスは広瀬が乗っていくことになった。
車のトランクに色々と荷物を積み込んでいる間、虎太郎は剣崎を呼び出しある相談をしていた。
「実はさ、剣崎君。これから先、僕が君達に付いていって迷惑をかけるんじゃないか心配でたまらないんだ」
「どうしたんだ虎太郎。いつものお前らしくないぞ」
「うん。でもさ、広瀬さんみたいに研究の手伝いができるわけじゃないし、剣崎君達みたいに戦えるわけでもないだろ?だからさ……」
「だったらさ、俺が後で橘さんに頼んでやるよ。虎太郎をグレイブにしてくださいってな」
剣崎の言葉に虎太郎は吃驚した。
「え、でも、そりゃあ僕だって仮面ライダーに変身してみたいけど、でも訓練も何もしていない僕が変身したって……」
「いいか虎太郎」
剣崎は虎太郎の肩に手を置くと、話しを続けた。
「人はな、誰でも心に剣を持っているんだ。それを輝く勇気に変えられるか、そのまま放っておくかはその人次第なんだ」
「心に剣……輝く勇気……」
臭いこと言っちゃったな、そう言うと剣崎は頭を掻きながら照れ笑いをした。
「つまりだ。戦うための勇気があればそれだけで充分なんだ。何も恐れる事はない」
戦うための勇気。虎太郎の頭の中では、剣崎のその言葉と、先ほどの橘の魂の叫びが繰り返されていた。
「二人とも何してるのぉ?早くしてよ」
広瀬が呼んでいる。剣崎と虎太郎は車とバイクに向かって歩き出した。
ブルースペイダーに跨る前に、剣崎は始に尋ねた。
「始、……天音ちゃんには会わなくていいのか?」
「今はその時ではない。だが、全てが終わったその時には必ず……」
「そうか」剣崎は笑顔で始の肩を軽く叩くと、ブルースペイダーに跨った。

サー・カウラーは円盤を着陸させてある雑木林の中を歩いていた。その後ろからは金居が付いてきている。
「どこまで付いてくるつもりだ?」
カウラーが後ろを見ずに金居に向かって言う。金居はさも当たり前のように答えた。
「しばらくの間あんたと手を組みたい。それがお互いのためだと思うが」
「……勝手にしろ」
表情にこそ出していないが、内心カウラーは焦っていた。電波ジャック作戦は結局茶番に終わった。自分はいい笑いものだ。
(これではバダムへの手土産どころではない。今連中と接触してもいいように扱われるのがオチだ)
一度に部下を4人も失ってしまっている。この苛立ちはブレイド達を倒さないことには治まらないだろう。
(あれを使うか。このままではあれもバダムの連中にいいように使われるだけだ)
洗脳作業さえ終わればあれは自分にとって最高の部下となるだろう。そうなればブレイド達とて倒せるはずだ。
「これからどうする?」
金居が尋ねてきた。
「本来ならばバダムを構成する組織の一つと接触する予定だった。だが今はブレイド達を倒す方が先決だ」
「このままだと返り討ちに遭う可能性が高いと思うが?流石の俺も奴らを一度に相手にするのは避けたいな」
確かに。こちらにはあれがあるとはいえ油断は禁物だ。そういえばルルイエで誰かがクトゥルーを旧支配者の一柱だと言っていた。
(つまりあんなのがまだこの惑星の何処かに封印されているということか……)
それを探すという手もある。しかしケフレンのように何か手掛かりを持っているわけでもない。骨が折れる仕事になるだろう。
(やはりここはバダムと接触を……しかしそれでは俺のプライドが……)
悩んでいるうちに円盤へと着いた。金居とともに中へ入ろうとする。と、そこへ……。
「ガルダン!」
傷付き、息も絶え絶えのボー・ガルダンが木陰から歩み寄ってきた。

「誰だ、こいつは?」
「ボー・ガルダン。俺の片腕だ。しかし一体何が……まさか!」
カウラーは慌てて円盤内へ駆け込むと、とある場所へと向かった。そこは牢獄のような狭い部屋だった。しかし今は扉が無残にも破壊されている。
「やはり!まさかあの麻酔がもう切れるとは……。迂闊だった」
後ろからガルダンに肩を貸した金居がやって来て尋ねる。
「何事だ。一体そこには何がいたというのだ」
カウラーは苦々しげにこう言った。
「ユニットシリアル04……ゼイラム」

切り札であったゼイラムの逃亡、これはカウラーにとって最大の痛手であった。最早カウラーに残された道は一つしかない。
「……ガルダンの怪我が治り次第、バルカンベースとやらに襲撃をかける」
ケフレンが調べた我々にとって敵となる地球側の勢力。その中にバルカンベースの名があった。なんでも高名な科学者達が集まっている最中だという。
そこから科学者を攫い、各地に眠る邪神どもを調査・復活させ手駒にする。それがカウラーの次なる狙いだった。
「貴様にも働いてもらうぞ。その不死身の体が勝利の鍵だ。……それと、変な気は起こすなよ。こっちはいつでも貴様をカードにすることができるのだからな」
そう言ってカウラーは例の装置を取り出し、見せた。
「分かった。俺としても人間狩りができるのならそれでいい」(あの装置、解放だけでなく封印もできるのか。厄介だな……)
善と悪、2つの勢力がこれからバルカンベースへと向かおうとしていた……。


サー・カウラー一味の電波ジャックの顛末は、日本全国に様々な波紋を及ぼした…。
暗黒秘密結社連合であるバダムと戦う者達にとっては、4人の仮面ライダーの戦いに勇気づけられた形になり、バダム側にとっては脳天に水爆を叩き落とされたようなショックを与えるのには十分過ぎる結末であった。
バダム側は超時空ネットワークで各組織が繋がっているため、そのショックの度合いは凄まじいものがあった…。
当然、サー・カウラー一味の醜態は超時空ネットワークを通じて地球各地、果ては月を含む太陽系は勿論の事、太陽系外の各惑星に散らばるバダムの同志に広まっていた…。

「全く…、何と言うザマだ…!所詮は知能指数100未満の戦バカと言う事か…!!」
今まで、TAC南太平洋国際本部のある人工島でサー・カウラー一味の実況生中継の一部始終を観戦していたルチ将軍は、割れんばかりの声を上げながら座っていた椅子を叩き壊した。
しかも、自分の提供した超時空ネットワークで日本全国のお茶の間と、バダムの同志達に自分たちバダムの醜態を晒したと言う、これまでに無い屈辱であったから当然ともいえた…。
最も、サー・カウラーが知能指数100未満と言うのは詞の綾だが、これがルチ将軍をしてそこまでの暴言を吐かせるほどの精神的ショックだったと言う事である。

勿論、地球各地で…さらには月や太陽系外で活動しているバダムの同志、そしてこれからバダムに参加しようとする者達もルチ将軍と同じ思いを抱いているに違いなかった。

「どうやら決起を早める時が来たようだな…。」
ルチ将軍は眼をギラつかせながら呟いた。

確かに、現在の戦局はバダムに有利である。
各地では超時空ネットワークと大いなる意思の呼びかけで同志達は増えつつあり、地球各国でもメルカ共和国のように国家ぐるみでバダムに参加を表明するものまであった…。
バラノイアからは緯度0で量産されているジャンボー級の万能戦艦を含む超兵器が量産体制を整え、高倉長官とヤプールの手引きでTAC、TPC、防衛軍の各組織は傘下に入り、
それらの武器はアクタ王国でテロ活動を行っているシンパ達やメルカ共和国等に流れており、バダムの地球制圧は時間の問題とも言えた…。

が、それもサー・カウラー一味のミスと言うアリの穴を通じて、バダムと言う名の巨大なダムが崩れようとしているのである…。
このまま放置すれば、いずれバダムが崩壊する…。否、自分の描く地球征服が台無しになる…。
ルチ将軍の頭脳は…仮面ライダー1号こと本郷猛の2倍強の知能指数の頭脳はそう判断したのであった…。

「月の冴島を呼び出せ!」
「イエッサー!」
オペレーターが超時空ネットワークを起動させ、ムーンタウンに待機している冴島を呼び出した。
すると、冴島の姿がスクリーンに映し出される。

ルチ将軍「貴様も例の放送は見ているだろうな?」
冴島「ええ、全くなんて茶番です…?」
冴島も顔をしかめっ面にしている。彼もまた、例の放送で気分を害したクチであった。

ルチ将軍「良いか?これより私はあの目障りな砂上の楼閣…空中都市008に総攻撃をかける!!」
冴島「総攻撃ですか?」
ルチ将軍「その通りだ!!奴らが静かにしている内に宣戦布告を行い、世界中の面
前であの街を消滅させてくれる…!!!」
冴島「こちらの方も、将軍の送ったジャンボーが到着次第作戦を開始いたします…」
ルチ将軍「そうか、後は太陽フレアの方だな…。冴島…、私の送ったジャンボーには太陽フレア増幅装置が積んである…。場合によってはこれを使っても良いぞ…」
冴島「有り難うございます、ルチ将軍…。」
そう言うと冴島の姿がスクリーンから消えた…。

「008の沖に待機している高倉の奴に暗号文を送れ…!『リンゴハオチタ』とな!!」
「イエッサー!」
オペレーターが暗号を、高倉長官のジャンボーに送る。
決起の時来れりと…。


ゴメスがバダム本部に戻ったのと時を同じくして阿蘇山から前世魔人4人衆が戻ってきた。
「おや、何か騒がしいぞ」
ヒトデツボが基地内の喧騒に気づく。
「おい、何があったのか教えろ?」
「ひ、ひぃ、実はサー・カウラーって奴が電波ジャックやったけど、失敗に終わったんだよ!」
モージンガーが戦闘員を掴まえ聞き付ける。
「電波ジャック?そんなのが成功すると思っているのか?」
「そうなんだよ、相手はあの仮面ライダーなんだよ!」
ケラリンが戦闘員に怒鳴りつけるが、戦闘員はありのままに真実を話した。
「おい、仮面ライダーって九州にいるぞ」
「そいつらは4年前にアンデットって奴らと戦っていたライダーなんだよ」
サタンバットが更に言うが、戦闘員は丁寧にあせり声で説明する。
「どうやら仮面ライダーはワシらの知る10人だけでは無いようだぞ」
「そうなのか、事の真相が分かればお前に用は無い、行くぞ」
モージンガーは自分の知らないライダーがまだいる事を悟る。そしてサタンバットに言われ一同は何処かへ向かって行った。
「あ、あいつら何者だ…」
一人残された戦闘員は前世魔人に唖然としていた。


ルチ将軍の決起により世界が大きく動き出そうとしたとき、ゴラスとキングジョーの爆破エネルギーにより時限の歪みができていた。
そこから金色に光る鳳凰が地球に向かっていた。自分を抹消するために。
同時刻地球では、何者かに覗かれるような感覚を訴える者。
または、殺気を感じる者達がいた。
その現象は一部の者達に起こったが、気にとめる者は誰もいなかった。

しかし、この現象が起こった者達の体からは、一筋の光が天に向けられていた。
光は一箇所に集まり増殖し、何重にも輪を描きながら空中に滞留し始めた。
やがて、光は寄生していた者達の 「感情」「精神」といったモノを学習し、遂には、共通の自我を取り戻した。

それは、負のエネルギー、負の感情を理解し、以前より賢く残忍に生まれ変わり、復活を遂げたのだ。
光はうなり声とも雄叫びともいえない声を発した。
「ウルトラマンコスモス」
カオスヘッダーの復讐が始まったのだ。
最終更新:2013年03月05日 20:03
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