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心地良い鳥の鳴き声を聞きながら、セリア・ローレライはどこまでも続く草原を歩いていた。 もう夏も近いというのに、この地方は割と涼しい。そよ風も吹いているのがそれに拍車をかけているのだろうが、 それにしてもセミの声が僅かでも聞こえないのは、少し意外だった。 尤も、暑さを嫌うセリアにとっては全く不満ではなかった。この心地良い気温がしばらく続くというのなら是非もない。 セリアは大きく口を開けて欠伸をすると、代わりに新鮮な空気を思う存分吸い込んだ。肺の奥まで清々しい。 「いやー、良い感じに過ごしやすいね、セリア」 セリアのすぐ後ろから、少年のような、なんとも気の抜けた声がした。 セリアは振り向かないまま、「そうだね」とだけ返し、景色のはるか向こうに広がる青い空を見つめた。 「ボクも眠くなってきちゃった。ねえ、ちょっと休憩しようよ」 「昼寝でもするの?この前だって、花畑で寝てたら賊に襲われて、荷物盗られかけたでしょ」 「でもボクとセリアで全員皆殺しにして、逆に持ってた金品とかをありがた~く貰えたからいいじゃん。それに、あれは罠をしかけて警戒しなかったセリアが悪い」 「じゃあ今からでも罠しかけて寝るの?面倒くさいよ。それに、あまり昼に寝ると夜寝れなくなるし」 「ちぇ」 セリアの後ろにいる声の主は、少しいじけたような声を出すと、その大きな身体を気合を入れ直すように揺らした。 胴体は丸みを帯びたような形をしていて、その四方から脚が伸びている。全身は灰色と銀の装甲で覆われ、動くたびに僅かに擦れる音がした。 胴体正面についている頭部には透き通った瞳があり、セリアの背中を見つめていた。 「で?今日はどこまで行く予定なの?」 モノトーンの怪物が、やはり少年のような声でセリアに話しかけた。 セリアはポケットから小さく折りたたまれた地図を取り出すと、背後の怪物にも見えるように地図を頭上に広げた。 怪物の瞳が、地図に焦点を合わせる。 「今私達が歩いてるのがこの草原。次の目的地は、この50キロ先のオールドエリア"水中庭園"だから、とりあえずそこに向かってとにかく歩く。今日中には絶対辿りつけないから、のんびり行くよ」 セリアが地図を再び折りたたんでポケットにしまうと、怪物がはあ、と息をついた。 「50キロかー、歩くと遠いなー」 「乗せていってくれると有難いんだけどね、タオル」 振り返ったセリアの言葉に、"タオル"と呼ばれた怪物が「それは無理だ」と言わんばかりに頭部を背けた。 「あれさ、地味に疲れるんだよねー。セリアだって無駄に体力使うの嫌でしょ」 「そうだけど……そっちのほうが早いじゃない」 「駄目駄目。お互い体力が尽きてきた頃に、また賊でも出たらどうするの?負けないだろうけど、怪我するよ」 「役に立たないね、タオルって」 「失礼な」 タオルがふん、と鼻を鳴らしたような声を出すと、セリアはまた前を向いた。 そして、少し間を置いて後ろから響き始めた鼻歌を聞きながら、まだまだ続く草原の向こうを見つめた。 心地良い風、香る草の臭い、どこまでも続く広い空。 穏やかに響く鳥の鳴き声と、決して上手とはいえない相棒の鼻歌。 セリアは小さな声で「いい人生じゃない、なかなか」と呟くと、背中の荷物を背負い直した。
心地良い鳥の鳴き声を聞きながら、セリア・ローレライはどこまでも続く草原を歩いていた。 もう夏も近いというのに、この地方は割と涼しい。そよ風も吹いているのがそれに拍車をかけているのだろうが、 それにしてもセミの声が僅かでも聞こえないのは、少し意外だった。 尤も、暑さを嫌うセリアにとっては全く不満ではなかった。この心地良い気温がしばらく続くというのなら是非もない。 セリアは大きく口を開けて欠伸をすると、代わりに新鮮な空気を思う存分吸い込んだ。肺の奥まで清々しい。 「いやー、良い感じに過ごしやすいね、セリア」 セリアのすぐ後ろから、少年のような、なんとも気の抜けた声がした。 セリアは振り向かないまま、「そうだね」とだけ返し、遠くにいくにしたがって青からうっすら白くグラデーションのかかる広い空を見つめた。 「ボクも眠くなってきちゃった。ねえ、ちょっと休憩しようよ」 「昼寝でもするの?この前だって、花畑で寝てたら賊に襲われて、荷物盗られかけたでしょ」 「でもボクとセリアで全員皆殺しにして、逆に持ってた金品とかをありがた~く貰えたからいいじゃん。それに、あれは罠をしかけて警戒しなかったセリアが悪い」 「じゃあ今からでも罠しかけて寝るの?面倒くさいよ。それに、あまり昼に寝ると夜寝れなくなるし」 「ちぇ」 セリアの後ろにいる声の主は、少しいじけたような声を出すと、その大きな身体を気合を入れ直すように揺らした。 胴体は丸みを帯びたような形をしていて、その四方から脚が伸びている。全身は灰色と銀の装甲で覆われ、動くたびに僅かに擦れる音がした。 胴体正面についている頭部には透き通った瞳があり、セリアの背中を見つめていた。 「で?今日はどこまで行く予定なの?」 モノトーンの怪物が、やはり少年のような声でセリアに話しかけた。 セリアはポケットから小さく折りたたまれた地図を取り出すと、背後の怪物にも見えるように地図を頭上に広げた。 怪物の瞳が、地図に焦点を合わせる。 「今私達が歩いてるのがこの草原。次の目的地は、この50キロ先のオールドエリア"水中庭園"だから、とりあえずそこに向かってとにかく歩く。今日中には絶対辿りつけないから、のんびり行くよ」 セリアが地図を再び折りたたんでポケットにしまうと、怪物がはあ、と息をついた。 「50キロかー、歩くと遠いなー」 「乗せていってくれると有難いんだけどね、タオル」 振り返ったセリアの言葉に、"タオル"と呼ばれた怪物が「それは無理だ」と言わんばかりに頭部を背けた。 「あれさ、地味に疲れるんだよねー。セリアだって無駄に体力使うの嫌でしょ」 「そうだけど……そっちのほうが早いじゃない」 「駄目駄目。お互い体力が尽きてきた頃に、また賊でも出たらどうするの?負けないだろうけど、怪我するよ」 「役に立たないね、タオルって」 「失礼な」 タオルがふん、と鼻を鳴らしたような声を出すと、セリアはまた前を向いた。 そして、少し間を置いて後ろから響き始めた鼻歌を聞きながら、まだまだ続く草原の向こうを見つめた。 心地良い風、香る草の臭い、どこまでも続く広い空。 穏やかに響く鳥の鳴き声と、決して上手とはいえない相棒の鼻歌。 セリアは小さな声で「いい人生じゃない、なかなか」と呟くと、背中の荷物を背負い直した。

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