ここは放棄された工場、白樺財団とトンドル連合が新兵器の研究を行なっていたが、謎の事故により閉鎖、傭兵団ロデオ・スターズはその調査を依頼され、とある新入りがその任務にあたった。 『もう、なにか喋らないの?』 オペレーターがスイートピーのパイロットに話しかける。 『……』 彼は押し黙ったままだ。 『初めてだから緊張してるのかな、頑張って!』 『……』 工場は広く十メートル近いアームヘッドが自由に動ける大きさだ、天井や壁には大きなパイプが這うように巡らされている。薄暗い照明に照らされ、まさに何かがいるようなそんな感じであった。 『あ・・・あそこになにかいない?』 黒い影が隅のほうを動いたように見えた。スイートピーがフィジカルライフルを構える。スイートピーは特にあまりの特徴のない普遍的なアームヘッドである。しかし肩から生えた一対の羽がそれが血染めの天使の血族であることを誇示しているようだった。 『来る・・・』 『……』 短い黒い棒が目の前に飛び出した。 『アームコア反応!こいつはアームッドですよ!』 (チョゲップリィィ) 黒い棒が呻く。スイートピーはフィジカルライフルを黒い棒目掛けて放った。 (ピョピョピョ) 当たる、だが効いていない。スイートピーは腰の超振動兵器を左手で取り、黒い棒に振り下ろす。だが黒い棒はその攻撃を難なく躱す、しかしそこはスイートピーの足元だ。スイートピーはためらうことなく踏み潰す。 (モルスァ) 黒い棒は力なく息絶えた。 『油断しないで!アームコア反応が3!』 同じような黒い棒が3体。だが先程の数倍の長さだ。 (((ピョピョピョピョ))) 謎の呻き声を上げ黒い棒が近づいてくる。超振動兵器を振りかざす。3体が同時に切断、すべてが力なく倒れる。だが切られたそれらは再び半分の長さになって6体の黒い棒となって起き上がった。 ((((((ピョピョピョピョ)))))) (モルスァ) 最後の黒い棒をスイートピーは踏みつぶした。 『何あのおぞましい生き物、一体ここで何をやっていたの?』 スイートピーは更に奥へと進む。そして幾つかの扉を越えある部屋にたどり着いた。 ((((((((((((ピョピョピョピョ)))))))))))) 恐るべき光景だった。何体かの動かなくなったアームヘッドの中に黒い棒が侵入し、数を増やして出てくる。 『これって食べてるの?アームヘッドを食べて、自分たちを増やしてるの?』 (カゾクガフエルヨ) (ヤッタネ) 黒い棒の群れにスイートピーはフィジカルライフルを乱射する。混乱しているのではない。黒い棒の更に奥にあるパイプを狙っているのだ。 『そうか!あれは有毒ガス!』 やがて弾丸の火花に引火し爆発が起こる。 (モ・・・モルスァ) 工場から脱出したスイートピーは基地へと帰還を開始した。 『なんというおぞましいアームヘッド、あんなのが逃げ出していたら大変ね』 『……』 完 &bold(){シャドウバグ} 村井研究所が開発した新兵器、アームヘッドを食らって自己増殖する調和能力『家族が増えるよ』を使用し繁殖する。だが戦闘能力は皆無。トンドル各地で野生化しているらしい。見た目は黒い棒であり切れるとそれぞれが個体として活動するが限界がある。工場には万が一に備えて引火するゆ毒ガスが張り巡らされていた。