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4. BONESCRAPER - (2016/02/03 (水) 01:09:47) の編集履歴(バックアップ)


辛太郎は鈍痛の中で目を覚ます。
瓦礫の波に飲まれたが奇跡的に隙間に挟まり一命を取りとめていた。
だがその代償に身動きが取れず周囲は闇という状況。

「くそっ・・・いきなり何だ!アカリは・・・・・・?」
呼んでもやはり、返事は返ってこない。

このまま何も出来ず無力感と孤独の中で死んでいくのかと思った矢先、周囲の瓦礫に動きを感じた。
視界の隅が明るくなり、圧し掛かる物体を弾き飛ばす音が聞こえ、身体が軽くなり、やがて完全に開放された。
仰向けの状態から起き上がり、救い主の方向に振り向くと、そこには再び灰色のセイントメシアが仁王立ちしていた。
「・・・また助けられてしまったな、アカリさん!」
辛太郎が半涙目でグレイサードへと向かい、ふらつきながらハッチに乗り込む。

しかし、そこに彼女の姿は無かった。
「!?・・・・・・そうかセメントイシヤ、お前もあの娘を探して・・・我が強くなったな」
辛太郎はメシアの目を通して周囲を見渡す。そして把握する。
瓦礫の山には既に掘り返された跡があり、そこは恐らく崩壊が起こる前にアカリがいた地点なのだ。
グレイサードが歩を進めて見下ろす。そこには砕け散った赤いゲームボーズだけが残されていた。
そしてその周辺には、すぐ近くまで戦車が来ていた事を示す、キャタピラ跡が確かに刻まれていた。
「連中め、アカリを連れ去りやがったのか・・・・・・!
 だが戦車?敵はピーマーンでなく人間?何処の誰だ!」

彼らは轍をたどって中空飛行!やがて街と荒地の境に見えてくる戦車の姿!
戦車群は二台の深緑車両の後ろに十台の砂色車両がボーリングピン陣形で続き退却している。
それらの背後を守るように深緑・砂色戦車一台ずつが未だ街中を走る。

「あ?バゲットにアインバックだと!リズの戦車が何故ここにッ?」
辛太郎が驚く間にそれらは砲塔を振り向かせ、旋回しこちらを狙ってくる。

砂色の車両は、DHグループの企業・ベッカライ技研の開発した、CM2バゲットと呼ばれる戦車でアームヘッド登場以前の量産兵器だ。
つまり通常はアームヘッドへの対抗手段など皆無に等しく、ヘブン傭兵が持ち込むことなどほぼ有り得ない。
深緑の車両は、同じくベッカライ技研の対アームヘッド戦車・CAA1アインバックだ。
こちらはバゲットより素早い上アームヘッド対策武器を持つものの、月に持ち出すにあたりアームヘッドより利点がある程の性能ではない。
何故そんなものがトンドルにあるのか?考えるよりも乗っている奴を締め上げ聞き出すのが早い!

殿のバゲットとアインバックが同時精密砲撃!グレイサードは瞬間サイドブーストで何とか避けつつ直進!
飛行態勢で両腕を前に突き出し指先レーザーを連射!鋼鉄の装甲を射抜いてキャタピラ部を破壊!
「死にたくなければ大人しくするんだな!」
アインバックの砲塔関節がアームヘッドに匹敵する速度で稼働し狙いを付ける!
だがグレイサードはそれ以上の速度で接近し、指からのレーザーレイザーで砲身を切り裂く!
遅れて向けられたバゲットの砲塔は蹴りでひね曲げ、発射と共に内部で爆発!
そして光刀はアインバックの風防を焼き切り、バゲットの屋根を刎ね飛ばす!
「貴様ら!アカリを何処に・・・・・・!?」
辛太郎は言いかけて異常に気付いた。
二台の戦車には搭乗者の姿は無く、操縦系統に何らかの機器が刺さっていることしか認められなかった。
「無人戦車だとッふざけやがって!!」
グレイサードは二台のコクピットを踏み台に飛び上がり残りの戦車へ向かう!

バゲット群は前進しつつ砲塔だけを振り向かせグレイサードを撃つ!
対しサードはラックに吊るった大剣を振り回し弾きながら接近!
「セメントイシヤ!アカリがどれに乗ってるか分かるか?」
砲口を真上に向けたバゲットが踏みつけられ圧潰爆破!
その前方の二台のアインバックに対し、グレイサードは回り込み立ちはだかる!
「そこかッ!」
セメントブレードで一台の砲を弾き、素早くキャノピーを抉じ開ける!
果たしてその戦車はもぬけの殻ではなかったが、乗っていたのは人間ではなくノミめいた印象の異形存在であった。
「こいつもアームヘッド!?」
『そっとしておいてくれ・・・・・・明日につながる今日くらい』
ノミ・アームヘッドが言った途端に辛太郎を襲う衝撃!
残りのバゲットが放物線を描く軌道で正確に弾を撃ち込んできたのだ。
その砲弾も正規のものとは異なりナパームめいて着弾発火爆発を浴びせるものだった。
「ちィ・・・!」
更なる炎上を避けるべく退くグレイサードに対し、バゲット群は尚も集中砲火で押し続ける!
その爆煙に紛れるようにして二台のアインバックは加速し撤退していく。
「この"藍染めの翼"が戦車ごときに!」
グレイサードはびっくりバズーカから捕縛用ネットを発射!
それはナパームを包んで送り返し、その間にサードは射線を避けてバゲット隊列の側面へ!
爆発に怯む戦車群に襲いかかる高熱レーザーの雨!

やがてバゲットの全てがキャタピラーが崩壊し砲首も切断された残骸となり荒野に広がっていた。
どれも屋根の乗降扉が開かれていたが、中は遠隔装置だけが残ったがらんどうで、貫かれた傷から煙だけが空に立ち登っていた。

セイントメシアグレイサードは、アインバックの残した轍を追い砂の壁を抜ける。
「あのノミ野郎もピーマーンなら・・・何故アカリを拐う?俺を倒すのは目的じゃなかった?」
進むたびすれ違う、砂塵に隠れる岩礁、その陰から撃ち込まれてくる大砲!
グレイサードは別の岩を盾に、不意討ちバゲット隊を蹴倒していく。
そして辿り着いたのは、先日にも訪れた廃宇宙港であった。
キャニスターが並びトンドルアームヘッドの見張るあの場所だ。
辛太郎は再び付近の岩陰から様子を伺った。


@
『シュッ、シュッ、シュッ』
俺の名はK1T3K2、リングネームは"マサッジハンマー"。
かつては俺も、数々の輝かしい功績を残し名を馳せたプロのマッサージ師だった。
全盛期の頃は100人蘇生伝説とか大げさな噂が纏わりつくほど派手にやっていた。
だが張り切りすぎちまったのがいけねえ。親分の肩を叩いてるときに関節がイッちまった。

それからが転落人生よ。肩パルトの関節は二度と元通りには再生しなく、肩パンチの力加減が自分の意思では調整出来なくなった。
俺のマッサージの腕は強いだの弱いだの文句ばかり言われるようになり、結局マッサージ屋を続けることは俺のプライドが許さなかった。
引退してからは落ちぶれて、今じゃ無名のボクサーだ。挙句ピーマーンなんかに雇われて番犬代わりの用心棒。
・・・・・・数々の疲れを癒してきたあの日の栄光は、もう戻らないのさ。

しばらくして二台のアインバックが連なってK1T3K2の元に現れた。
『コードネーム"ぼっち軍隊"パラサフィクサさん、上手くいったか?』
K1T3K2が戦車に対し問う。
『さよならは言ったはずだ別れたはずさ』
戦車からノミアームヘッドが答える。
『おう目標を確保してヘブンの猿にもサヨナラできた訳か、おつかれさん』
するとK1T3K2の背後の地面がせり上がり、アインバックが口を開けた地下への門の中へ消えていった。

「何ッ、地下だと!」
その様子を見ていた辛太郎は思わず身を乗り出した。
あれは恐らく元々ロケットの爆炎を逃がすための通路、ピーマーンはパプリカーンよりもかっこいい秘密地下アジトを持っていたのだ。
「奴ら残党の残党のくせに基地あるしアカリを拐うし俺はついでに殺しといた程度の存在みたいだし変なコードネームで呼びあってるし許せん、滅ぼす」
グレイサードは身を隠す岩に足を叩きつけ飛翔!

『シュッ、シュッ・・・・・・あん?』
シャドーボクシング中のK1T3K2が振り向くと、迫る灰色の弾丸!
着弾するよりも速く、肩パルトより放たれる鉄塊の拳!セメント弾を正面から霧散させる!

「ここが貴様らの本拠地か?ピーマーン!!」
着地したセイントメシアグレイサードは、バズーカとスマートガンを両手に構える!
『何?”ぼっち軍隊”に倒されたんじゃなかったのか?ヘブンズモンキー?』
「この俺が戦車ごときで倒せる訳ないだろ、トンドルモンスター!」
『”ビビッと来たアベック”ロンリーアンドさんも倒したらしいな?だがそれは慢心だ』
「そんな奴はどうでもいい!アカリを返せ!ついでに発射台も貰うぞ」
するとK1T3K2は僅かに俯いて笑った。
『アカリ?そうか貴様はあの方をそう呼んでるのか。残念だが返すも何も、もともと我々の物だぞ』
「何を言ってる?あの娘はちょっと変わってたがれっきとした人間だったぞ!お前らのことも嫌ってたし」
『ふっ、話せば長いし言っても分からんだろ。貴様は死んだことになってるし大人しく帰れば見逃してやるが?』
「フッ、追い返そうったってこの俺は下がらない、長居して全部聞き出してやるぜ」

吹きすさぶ砂塵の中で二機のアームヘッドは睨み合った。

『・・・それが貴様の選択なら仕方ない、俺の心無いマッサージで骨の髄まで解消してやる』
K1T3K2の脚部ローラーが高速回転!グレイサードへ向け一直線に!
「まさに無鉄砲だな!」
グレイサードは両手の銃砲を連射!K1T3K2に対し余すことなく集中砲火を浴びせる!
接近する”マサッジハンマー”に飛び道具は無い。受け続ければ辿り着く前にセメントの塊となり停止する筈だった。
『シュッ!シュッ!』
K1T3K2は今まで同様にひたすら虚空に拳を弾きだした。
だが殴られた虚空は衝撃波を生み、空中のセメント弾を停止させ、続く第二波の衝撃がそれを霧散させた。
このボクサーにとっては武器も防具も、ただ二つの拳があれば十分だった。

「何ーッ!?」
ギリギリ跳び退るグレイサード、先程までの足元に叩きつけられる鉄塊!
鉄板の地面を抉ってクレーター状に凹ませる!
「だったらジャスティコンディショナルビーム!!」
サードはセイギマンポーズで腕から光学レーザーを放つ!
だがそれもK1T3K2の拳の前で湾曲!目下の鉄を焼く!
「ジャスティコンディショナルビームが効かない!?」
バチンッ!自らの関節を軋ませるほどの豪速鉄槌!地面を貫くほどの威力!
『おっとここでやりあったら基地を崩しちまう、場所を変えようぜ』
「調子に乗っているな!俺はここを動かないからな!」
辛太郎は言いながらも更に後退し岩場地帯へ!
そこで両腕を突き出し敵に狙いを定める!
「じゃ、ジャジャジャスジャジャジャス・・・・・・」
グレイサードの両手首が回転し指先からガトリングガンめいた小刻み単発レーザー!
数撃てば当たりやすくノーガードで受ければ当然蜂の巣になる確実だが姑息な戦法!
K1T3K2は瞬く間に閃光と白煙に飲まれた。
「・・・ビームッ!・・・・・・や、やったか・・・・・・?」

だがやはり”マサッジハンマー”は煙の中を無傷で飛び出してきた!
グミ撃ちと同数の打撃を放ってその全てを受け流したのだ!
『骨が無いのか、貴様?マッサージにならんな』
ガリガリ・・・ギュウイイン!!K1T3K2の脚部ローラーが鉄床を降り土を噛み始める!
「クッ、とことんまで飛び道具が効かない事を証明したいらしいな!だったら接近戦にしてやる!」
グレイサードはセメントブレードを抜き挑む!K1T3K2もそのまま猪突猛進!
『勇気ある決断をするぜ。だがそれは俺に負けた者たちと全く同じ発想だ』
二体の正面衝突直前!サードは剣を振り下ろす!ボクサーは刀身目がけ掌打!
「ヒッ!?」
辛太郎は歴戦のブレードが折られるのを恐れ手を放す!空中に弾け飛ぶ愛刀!
K1T3K2の牙が笑うように動く!もう一方の肩パルト関節が軋み始めた!
バチッ、ゴオウウーン!異音と共に放たれる大質量鉄塊パンチはグレイサードの胴体を確実に捉える!
「うぐわあああああ!?」
ボッグン!空間に鈍く響き渡る鋼鉄同士の衝突音がそのまま全身に染み込むようにして、喰らった鉄拳と同じ速度で吹き飛ぶグレイサード!

「・・・・・・かはっ・・・」
辛太郎の意識が戻ると、彼の機体は背中から大の字で巨岩に食い込んでいる有様だった。
前に目をやると、最初と同じ定位置でK1T3K2がシャドーボクシングしている光景が見える。
どのくらい気を失っていたのかも分からなかった。グレイサードは肩ブースターを吹かし何とか脱する。
『シュッ・・・おっ起きたか?まだ向かってくるか?逃げるチャンスを逃すことないぜ?シュッシュッ』
だが尚も辛太郎は向かっていった。
「お前・・・・・・本当は戦いたくないんだろ?」
『あん?何でそう思う?』
「何でってお前・・・この”藍染めの翼”が怖いからなんでしょ!」
@
グレイサードが左肩ラックから手甲クライムクローを装着!そのまま殴りかかる!
K1T3K2も遅れ気味に右肩パンチを撃ち出す!正面からクローを無残に粉砕!
『お前さんのどこを怖がれというのだ?』
続く二撃目の鉄塊打撃がグレイサードの腹部を襲う!
「うぬわあああああ!?」
ゴガーーン!高層ビルを積んで走る新幹線を積んで走るトラックが高層ビルを積んで走る新幹線を積んで走るトラックと正面衝突したような衝撃!

「・・・・・・ごはっ・・・」
辛太郎の意識が戻ると、彼の機体は背中から大の字で巨岩に食い込んでいる有様だった。
前に目をやると、最初と同じ定位置でK1T3K2がシャドーボクシングしている光景が見える。
どのくらい気を失っていたのかも分からなかった。グレイサードは肩ブースターを吹かし何とか脱する。
『シュッ・・・おっ起きたか?もうマッサージを受けることない、ずっと寝てた方が癒しだぜシュッシュッ』
「くっ・・・・・・くっ、ちゃ、茶番は終わりだ・・・俺の本気を見てビビれし」
グレイサードはびっくりバズーカを地に置くと、その砲口の上に焚き火めいて手をかざした。
そして片手ずつセメント弾を浴びせて手先を岩塊に変えたのである!
『おう?・・・ハハハ、俺の強さに感銘を受けて拳を使う気になったか!当然ながら力の差が広がっただけだがな』
「フン、ゲンコを振り回すくらい誰だって出来るぞ!一発KOにしてやる」
『ハハハ、そうだ振り回すくらいならな、だがその重りを武器にするには・・・』
「うおお!!」
両翼のブースターを噴射し直進するグレイサード!セメント塊グローブを振り上げ迫る!
K1T3K2は姿勢を僅かに下げた後は微動だにしない!気づけば無鉄砲な行動が逆転している。
前進の速度と全体重をかけた右拳を叩きつけんとするグレイサード!
セメント塊がK1T3K2を目がけ迫る!だがそれは殴打となる寸前、瞬く間に砕け散る!
『・・・マッサージの修行が必要だ』
その時起こったことを正確に捉えられる者はそういないだろう。
K1T3K2の左ショルダーパンチャーは瞬間的に小刻みなジャブを数十回放ち、
セメントに振動を与えることで軟化崩壊を招いたのだ。これがマッサージ技術の応用である。
「なっ・・・・・・!?」
衝撃に怯んだが辛太郎は左腕セメントグローブを構える。
だが既に敵の右肩パルトは胴体の直線上にセットされていた!超短射程大質量砲弾発射!
「ほおわあああああ!?」
K1T3K2の右ストレートが容赦なくグレイサードに叩きつけられる!
やはり吹き飛ばされるが、今度は背後の岩に辿り着くことなく踏みとどまった。
『ほう?堪えたか。まあ俺の拳の強さはもう自分では調節できない。こういう事もある』

辛太郎とグレイサードはよろめきながら敵を見据えた。
(くッ、撃っても効かないし近くで殴り合ったら更にボコボコだ、地味に強い、強すぎるぞ)
だがここで大人しく逃げるのも流石に気が引ける。あるいは一度退いて不意打ちしに戻るか。
「いや・・・まだだァーッ!」
ブースター再点火!グレイサードは向かいながらも左腕グローブを引いたかと思うと、
その勢いのまま回転しK1T3K2に突っ込む!敵は未だノーガード!
遠心力によって運動エネルギーを得たセメント塊がK1T3K2の顔面へ!
ゴウッ!超硬質同士のぶつかる衝撃が両者を襲う!弾き飛び仰け反ってよろめく二機!

『やれば出来るじゃあないか。だがその一撃が限界ならマッサージ師は務まらんぜ、俺が言ってもしょうがないが』
K1T3K2の頭部装甲は僅かにひび割れている。
「俺は別にマッサージ師なんてなりたかねーよ!」
グレイサードが再び左腕を引き絞る!
『俺はなりたくても戻れんのだ!』
二機の拳が交錯!
セメントパンチは流線形ボディの表面に受け流される。
一方マッサージ鉄拳はグレイサードの左肩に捻り込む!
「おああああーーッ!」
辛太郎にまで反映されるほどのサードの痛み!
肩叩きの衝撃は腕中に伝播し、肘間接と手首から飛び出て、あらぬ方向へと折り曲げたのだ。

「くうっ・・・・・・なんてこった、俺はどうすれば・・・」
辛太郎が肩口を押さえながらK1T3K2を睨む。
『心配するな、次の一撃で終わりだ』
その前でフットワークを見せる敵は、容赦なく鉄槌を下す!
「ごああああー!?」
マッサージ鉄拳がグレイサードの左肩に捻り込む!
ゴキゴキッ!肩叩きの衝撃は腕中に伝播し、肘間接と手首から飛び出て、元の方向へと戻したのだ。
「・・・うおーっ!」
辛太郎はここぞとばかりにセメント塊殴打!K1T3K2の頭部が凹む!
だが次のショルダーパンチャー!再びグレイサードの肩を射抜き間接をあらぬ方向へ折り曲げる!
「どあーー!」
痛がる辛太郎をよそに、"マサッジハンマー"は追い討ちの鉄槌パンチを構え、放つ!
ゴキッ!再び曲がった腕が元に戻る!
『ん?』
何かに気づいたK1T3K2をよそにセメントパンチが顔面にぶちこまれる!
殺人元マッサージ機は頭部の損傷を無視して次なる肩叩き!グレイサードの腕がひね曲がる!
「グワーッ!」
K1T3K2の次の一撃!グレイサードの腕が戻る!
『おお?』
「イヤーッ!」
辛太郎の反撃がクリーンヒット!だがK1T3K2はグレイサードの左肩だけを見据えている!更なる殴打!腕が曲がる!
『そうか!これは?』
肩叩き!腕が戻る!
『ではこれは!』
肩叩き!腕が曲がる!
『こうか!?』
腕が戻る!
『・・・・・・これか!』
次なる肩パンチ!グレイサードの腕が・・・折れ曲がらない!
ボロボロだった腕が引き締まり活力を取り戻す!
「はあああーーッ!」
辛太郎の叫び!グレイサードの再活性セメント拳がグローブと共にK1T3K2の頭を砕く!!

装甲の破片を散らしながらたたらを踏むK1T3K2!そして満足げに笑った!
『ハハハ、思い出した、取り戻したぞマッサージを!これだ!この感覚こそ我が拳!壊す拳より治す拳!これが俺の真髄!』
「そりゃよかった」
気づけばK1T3K2の背後にグレイサード!両手にセメント銃砲!脚部ローラーに向け集中砲火!
下半身がセメント塊と化したK1T3K2を蹴倒す!
『な・・・待て!もっとマッサージさせろォ!まだ完璧かは分からん!』
「もうサンドバッグにされるのは御免だ、他を当たってくれ」
グレイサードは先程アインバックが入っていった地下入り口の蓋をブレードで抉じ開け、ピーマーンの本拠地アジトへと下っていく。

『ちッ・・・まあいい、マッサージ師に戻った今、ピーマーンがどうなろうと知らねえ。しかし、俺が思い出したのも事実だが、ヤツが俺の打撃に順応して鍛えられてるとすれば・・・・・・?』


一方でピーマーン・アジト最深部。
『首領、あの方のご調子はいかがです』
『なにごとも案ずることはなし、全てわらわの思い通りじゃ』
話すアームヘッドの更に奥、闇に浮かぶ水槽がある。

『・・・・・・グレイ・・・サードくん・・・シンタロ・・・・・・』


<続>