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= R END = - (2015/02/12 (木) 20:09:40) のソース

アプルーエ周辺・北東群島近海。
深い霧に包まれた空間を突き進む、蝙蝠のような影があった。
無人アームヘッドのイヴィレンデシアである。
しかしてその中にもアームヘッドが乗っている、人間型ファントムの遠藤だ。

彼らは、かつての自分たちの世界と同時代の痕跡に、ふと興味を持ち、
北東群島のアームコア採掘遺跡などを観光して周った。その帰り道であった。

”似ていたがやはり、我々のいた世界とは別の星であるのは確かのようだ”
”そーなんかー?正直あんまりかわらんでわからんぜー?”
”まあ方言くらいの違いだったと思うけど?あと壁画がちょっとヘンだわね”
イヴィレンデシアの独り言。

「遠藤です」
遠藤の独り言・・・。

黒い悪魔は淀んだ海を目下に冷たい靄の中を駆ける。

”しかしよーくっそ寒いんだけどよーなんとかならねえの?”
”フン、この程度で音を上げるか”
”そりゃーおまえ、元・氷のトーアならなんともねえだろうけどよー”
”なんかアタイらいっつも寒いところに居ない?”

「・・・遠藤です・・・」
遠藤も寒気に身を震わせる。

しかし彼は、突然イヴィレンデシアのコクピットハッチを開き、身を乗り出して海面を覗き込んだのだ。

”ウオアーッ!?さみいいいいいい!!”
”ねえ!遠藤、今誰が動かしてるの?”


”待て遠藤!勝手な行動は・・・”

#ref(re01.png)

ダッバアアアアア!!

イヴィレンデシアの真下の水面が破裂!
海中から飛び出す黒い影!!

「!?」

謎の強襲存在は、終世主の足を鋭利な鎌で捕える!

そして有無を言わせぬ勢いで極寒の海に引きずり込んでいく!

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	北の海の亡霊
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「遠藤でrrrrr・・・・・・」

黒い海底へと一直線に引き寄せられるイヴィレンデシア!
開いたコクピットから遠藤が投げ出され、暗黒の海中に消える!

”此奴・・・・・・何者だ?”

すぐさま闇へ溶け込んでいく終世主の眼光。

ようやく拘束が解かれたと思った矢先、溶岩石のように厳つい海底に叩きつけられる!

”がふっ!!”
衝撃で無理矢理コクピットが閉じる!
イヴィレンデシアが見上げると、闇に浮かぶ襲撃者の姿。


#ref(re02.png)

「・・・シュー・・・・・・シュー・・・・・・・・・キュー・・・・・・」
海中に響き渡る、歪なシュノーケル呼吸のような音。

海藻を身に纏った深緑の怪物が見下ろしていた。


”この感覚・・・・・・アームヘッドではないようだな”

怪物の赤い目が静かに消えていく!
遥か遠い日光だけが光源の暗闇。

”でもアタイらを食べようとする生き物って感じでもなくない?”
”オバケかな?”

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イヴィレンデシアは僅かな光を頼りに、周囲を見渡す。
時折赤みを帯びた光がよぎるように見え、襲撃者が近くにいるように想起させる。

”遠藤の反応はあるか?”
”わからねーな”
”あやつが来るのに気づいていたのじゃろうか?”
”だとしたら、居ないと困るわね・・・・・・”

「キュー・・・・・・キュー・・・・・・」
不気味な呼吸音が近づいたり消えたりしている。
それはあらゆる方向から来るように思え、恐怖を煽り立てているようだった。

”こっこわくなんかねえぞ”

終世主の右側で急激な発光!
振り向こうとしたその時、前方から迫る巨影!

「シュゥゥゥーーーーッ!!」



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一方別の暗闇。

群青を裂く電灯の光!
#ref(re04.png)
四本の腕に採掘クローと巨大な銛を備えた異形の潜水艇!
頭部のサーチライトで海底を照らし出し、辺りを探っている。

その目下にはカッパグソクムシ、巨大カブトエビ、クラーケンなどの群れが蠢き、光に驚いたり誘われたりしている。

「魚群探知。採集を開始します」
潜水艇から女性の声!

黄色いマシンは採掘クローを海底に突き立て停止!
そして顎についた細い作業アームを格納する。
アームが取りだしてきたのは液体を振りまく固形物。
バイオニクルフレームの一部だ!

「魚群の移動を確認」
暗がりから魚雷のように迫る複数の影!
不気味な容姿をした吸血イカ!
一斉にバイオニクルフレームに群がり、円形の歯で抉り散らす!

そこへ潜水艇の尻尾が伸びて襲いかかる!
その先端は掃除機の吸い込み口のようだ。採集用チューブである。
気色悪い吸血イカが次々に、潜水艇の腹部にある水槽に蓄えられていく。

「採集終了」
潜水艇は爪を引き抜き再びスクリューを回転させる。

「遺跡および現生バイオニクルの存在は探知できません」
マシン内の女性が呟き、何者かに定期報告。

潜水艇は岩礁地帯を過ぎ、マリンスノーの積もる青白い平原へ。
そこには分解されずに残る巡洋艦の残骸や、食われかけのアームヘッドの死骸も突き刺さっている。

「微弱ながらアームコア反応を探知。回収してもよろしいですか?」


一方周辺の暗闇!

「えんどrrrr・・・」

黒ジャージの人影が、沈没した巡洋艦の舳先にぶつかる。
そこからゆっくりと転がり、アームヘッド水無月のグロテスクな死骸に突っ込む。
老朽化し砕けるコクピット。遠藤はその中に、吸血イカとカッパグソクムシの群れを見た。
イカは遠藤にやや反応を示したものの食事を続け、カッパグソクムシは泳いで逃げる。
遠藤はそれを観察した後、犬かきで泳ぎ脱出。学習!

犬かきで海底を泳ぐ黒ジャージ。
彼は僅かな光の元、掃除屋の群れが集まっていない残骸を見止める。
周辺のマリンスノーが掘り返したような形状で固まっている。
遠藤は近づき、散らばる部品を物色してみる。
白粒の中に丸いものが埋まっていた。僅かな光に当てる。
球体には、真ん中に矢の刺さった的の絵と「完▒▓▒寸手」の文字が描かれていた。
中から青白い頭蓋骨が零れ落ちる。視線を感じた。

遠藤はヘルメットを手放し、砂に埋まった円筒の残骸を手に取る。
覗くとそれもこちらを覗いていた、巨大な赤い眼球・・・・・・

そこへ背後から白光!
採集チューブに吸い込まれていく遠藤!
「えnrrrrr・・・・・・」


「アームコア回収・・・・・・しかしヒトガタ?詳細確認します」
潜水艇の女性が、水槽内の様子をドーム状モニタに投影!
吸血イカの隣の部屋に漂う黒ジャージ!

「!?」
パイロットはコクピット下部に潜り込み、第二水槽の水を抜いて蓋を開く。
底にへばりついている灰色の人物!
「これは・・・・・・」
「え・・・・・・遠藤です・・・」

パイロットは遠藤を引き上げる。
「アンタ、やっぱり遠藤?久しぶりね・・・・・・なんでこんな所に?」
遠藤が見ると、その顔は案山子マスクの上に潜水ヘルメットを被った様相。
彼女はそれらを外して見せる。その下はそれほど美人ではない。

「まあ見せてもアンタは知らないか。エンデシアはどうしたの?捨てられた?」
「遠藤です」
「あそ。私は今セツザ様の代わりに、現生バイオニクルの調査をしてるのよ。何か見なかった?」

それほど美人ではない女性がおしゃべり!
この潜水艇こそセツザ・グウィンガムの一派が開発した資源採掘用深海探査潜水艦、レックスデックス!

二人はレックスデックスのコクピットへと戻る。頭上にはドーム状ガラスと外に流れる闇。
「遠藤です」
遠藤がべちゃべちゃになった生物図鑑を精密に開いて指をさす。
「何?ワカメ?それがどうかしたのよ?」
パイロットは言いながら、再び案山子顔に戻る。
その時コンソールから検知音!
「な、なに?・・・・・・海底にアームコア反応複数。探りを入れます」

レックスデックスはサーチライトで水底を舐めるようにする。
マリンスノーに浮かび上がるのは、ヴァンデミエールや高機動型弥生などの残骸。
飛行型アームヘッドのものだ。それも形を保っており比較的新しい。
ホグウィード社の粗悪品コピーメシアと思しき影もある。

「やはり噂は本当・・・・・・」
上空を通るものが片っ端から消失するという海域・・・・・・
奇跡的に生きて通った輸送機のパイロットなどは、護衛機体が何者かに引き込まれるのを見たと言う。
セツザの一派は僅かな目撃情報から、現生バイオニクルの関与を考え調査していたのだ。

「遠藤です」
突如遠藤が暗闇の先を指し示す。

「何か分かったの?行ってあげるわ」

レックスデックスは機体を傾け、暗礁群の狭間へ消える!


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一方イヴィレンデシアは!
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”ぬわーーーっ!”

深海の亡霊が両腕の鎌を振るい、終世主に押し付けながら突進!岩礁に叩きつける!
イヴィレンデシアがふと敵の腕を見る。刃は巻き付いた海藻で腕と結ばれており、最初から生えているものではないようだった。
そんな暇はない!亡霊は鎌で、首・目・関節を執拗に狙う!

”弱点を探っている!?”
「シューーーッ!!」

深緑の怪物が急所を狙った連撃!イヴィレンデシアは頭部ホーンを振るって捌く!
持ち上げた大鎌から血の刃が飛ぶ!気づいた亡霊は翼のようなヒレを叩きつけ回避!
再び闇に消える襲撃者。赤い光を追って一閃する終世主!しかし手ごたえは無い。
「キューーーッ!!」
死角から迫る亡霊!首筋を切り裂いて遠ざかる!
”クッ、この視界では追いきれん!”

海藻を翻し幾度も交差する深緑!すれ違いざまに目を突き、足をすくい、関節に噛みついていく!
急所に対する軽ダメージの蓄積で、まず精神的に疲弊させようとしているようだ。
迫る亡霊の牙!イヴィレンデシアはとっさに大鎌の柄でそれを受け、顔面に血の刃を噴射!
液圧の剣が怪物の顔を裂く!傷から漆黒の液が伸びる。いや新たに生み出された海藻だ!

亡霊の赤い瞳が怒りに輝き、腕から伸ばした海藻で終世主の足を絡めとる。
泳いで岩礁の上を引きずり回した後、より深い海溝へと急降下!

”コイツ・・・どうやらアタイらをいたぶるのが目的みたいね”

イヴィレンデシアは大鎌で足の海藻を切断!
切り離した反動で岩壁にぶつかり、背を削りながら沈んでいく。

気づいた深緑の亡霊は上昇し、ヒレを頭に叩きつけて加速衝突させようとする。
だが亡霊の腰に刺さる大鎌!終世主が血刃を飛ばすも、切断には至らず。

二つの悪魔じみた影は溝の底で砂を巻き上げる!

しばしたじろいで睨み合う終世主と亡霊、だがイヴィレンデシアが脇見!

”遠藤か?”


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二つの影を照らし裂く光!
二本足に変形した潜水艇、レックスデックスが海底を踏みしめる!

「遠藤です」
「現生バイオニクルと思しき未確認存在を確認!エンデシアと交戦中!捕獲作業に入ります!」

スクリュー加速したレックスデックスが、亡霊へ向け巨大採掘クローを繰り出す!

”遠藤が乗っているのか?こちらに渡してもらおうか”

イヴィレンデシアは潜水マシンのドームガラスに迫る!

「キューーーー・・・・・・シューーーーーッ!!」

深海の亡霊は新手の存在に目もくれず、終世主へ向け飛びかかる!


イヴィレンデシアは大鎌で亡霊を叩き落とす!
レックスデックスはもう一方のクローで終世主を払いのける!
亡霊は攻撃に怯んだ隙に、尻尾をクローに捕えられる!

”どわーーっ!”
海溝の岩壁にめり込まされるイヴィレンデシア。

「毎度セツザ様の邪魔ばかり!そこで眠ってなさいよ!」
潜水マシンの怪力腕は、深緑の怪物を掴んで離さない。

「シューーー・・・・・・」
お楽しみの切り苛みを邪魔された亡霊は、憎悪の対象を一時的に移行する。

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深海の亡霊は突如激しく暴れ出し、レックスデックスに切りかかる!
だが潜水マシンの爪は一向に離す気配なし!
「やはり大人しくは捕まってくれないのね」
怪力アームで顔面を殴りつけるレックスデックス!更に銛アームも起動!
巨大銛の刺突でヒレにダメージ!
「キシューーーーッ!!」
亡霊も負けじと海藻を伸ばし、アームの関節に巻き付き動作を阻害!
更には首を絞めつつ、頭部の目のようなサーチライトを幾度も突く!
だがレックスデックスの急所は生物とは違うのだ。
潜水マシンは至近距離でコルダック・トーピードを発射!
対バイオ魚雷が亡霊の身体を軋ませる!
「今のはちょっとやりすぎかしら」


その様子を伺うイヴィレンデシア。
”あのワカメ野郎にこのままやられっぱなしじゃ気が済まねーぜ”
”しかし奴と戦える性能に戻るには遠藤を乗せねば”
”とりあえずどっちにも一泡吹かせんのよ!!”
黒い翼を叩きつけ岩壁を脱出!

レックスデックスは、意識の混濁する亡霊を拘束しようと準備に取りかかったが、
そこへ飛び来る血刃!潜水マシンを邪魔し亡霊に追い討ち!

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「ちょっと!生け捕りにしないとダメだってのに!」
レックスデックスの怪力クローが、止めを刺さんとする終世主の大鎌を阻止!
尚も放たれる血刃は、亡霊の鎌によって裂かれる!
今の隙に怪物は全身から海藻の影を伸ばし傷を修復していた!
「あーッ!また振り出し!」
レックスデックスは対バイオ魚雷をエンデシアにも向け発射!
そして銛アームを脇腹に突き立てると、そのまま加速延長!刺し飛ばし遠ざける!
”ひでえことしやがる!”
イヴィレンデシアは大鎌を円形に振り回す!バネ状でウミヘビのごとき連鎖血刃!
潜水マシンの装甲を裂くが、二体の足に迫る海藻!
終世主は足をすくわれ引き寄せられる!レックスデックスには無害!

「エンデシアを餌に捕まえる?しかし弱らせたら止めを刺そうと・・・やはり邪魔ね!」
レックスデックスは亡霊を捨て置き、イヴィレンデシアの足の海藻を切断!
そして黒い翼を掴み背後へ放り投げる!亡霊に背を向けコルダック弾で追撃!
「さて私がエンデシアを倒そうとしたら、彼はどちらを狙うかしら?」
潜水マシンがスクリュー加速!亡霊放置!

#ref(re09.png)
グァッコン!!
”ぶぎゃーーーっ!!”
レックスデックスの剛腕が怪力掘削衝突!イヴィレンデシアを殴り飛ばす!
更に銛アームの射突連撃!力なく海中を漂う終世主!

「遠藤です」
その時である。遠藤は何を思ったか、突如潜水艇パイロットのヘルメットと案山子マスクを脱がし始めたのだ。
「ちょっと何すんのよ!」
それほど美人ではない!パイロットが取り返そうとするも遠藤は回避!

そんなことをしている内に意識が戻るイヴィレンデシア。
”よくもやってくれたわね!”
終世主の蹴りがレックスデックスの顎を蹴り上げる!
衝撃をスクリュー噴射で堪える潜水マシン!前進に移る!
「いい加減邪魔だって言ってるでしょ!」
四本腕で連続ギミック攻撃!イヴィレンデシアも全身の刃で対抗!

ムキになっていた両者はやがて訝しんだ。亡霊は?
ふと気づくと頭上で佇む影!離れて様子を伺っていたようだった。
その赤い眼は嘲笑うように歪んでいる。余裕!

”何を見ているか!”
血刃と魚雷が亡霊を撃つ!
頃合いと見たか、二者の間に割り込むように下降する亡霊!
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深緑の亡霊は闇に隠すようにして影のような海藻を伸ばす!
”今度こそ仕留めてやる!”
イヴィレンデシアが意気揚々と鎌を振るも足に違和感。
背後の暗黒に引きずり込まれる!亡霊が手綱を引く海藻が釣瓶めいて作用!

亡霊は残ったレックスデックスの上方に陣取る!
「ここまで近づく?ようやく捕まる気になって・・・・・・」
潜水マシンは四本のアームとコルダック砲で包囲捕獲を狙う!
が、思うように動かない!各関節に複雑に絡み合う海藻!
その隙に推進スクリューを破壊!
知能の無い怪物ならばおよそ出来ない芸当だ。

「アンタは一体・・・・・・何を?」
亡霊は次に、レックスデックスの頭部を執拗に攻撃!
深海活動が出来る堅牢さを持つといえど、無抵抗で攻撃を受け続ければ只では済まない。
次第に頭部カメラ映像が途切れ、サーチライトも明滅し始める。
そして亡霊の硬質ヒレの一閃!遂に破壊されるレックスデックスの首関節!
「ああっ!?そんなバカな!」
マシンの頭部は海底に転げ、未だ力ない点滅を繰り返している。

次に亡霊が狙うのは?ドーム状ガラスに覆われたコクピットを執拗に攻撃!
亡霊は、彼は生物的弱点でなく機械的な弱点の存在を思い出し探っていたのだ!
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「なんてこと!」
亀裂!やはりガラスコクピットでは頭部の強度に劣る!
周辺の装甲も歪み出し、次第に始まる浸水!
「・・・・・・ふ、ふん!映像もばっちり送り続けてるし、今回は負けを認めてあげてもいいわ!
 別に外に出されたってスーツもボンベも潜水メットも・・・・・・」

「遠藤です」
メットとマスクを被った遠藤が開閉ボタンに手を!

「アアーッ!?」

その瞬間砕け散るドームガラス!
泡と共に犬かきで飛び出す遠藤!
邪魔者を倒した亡霊は、闇の向こうより迫るイヴィレンデシアを見据える!

”来い、遠藤!”
コクピットを開き、暗い水と共に遠藤を飲み込むイヴィレンデシア!
紅い軌跡を描く大鎌!しかし亡霊はいち早く高速上昇回避!

#ref(re12.png)
力を取り戻した終世主渾身の一撃!
レックスデックスの胴体を破壊!腹部水槽も微塵に砕ける!

遂に海底に倒れこむ潜水マシン!
しかしその腹から飛び出す複数の影!

”!?”
弾丸のように泳ぎ来る吸血イカの群れ!
イヴィレンデシアの撒く体液に誘われ、有機部分を齧り取っていく!

「キューーー!?シューーーーッ!!」
一方、背後から襲い掛かろうとしていた亡霊も、吸血イカの存在に気づき停止!
恐怖を覚えたのか、反転し遠ざかろうとする。そして彼も半有機生命!イカの群が追跡!

”クッ!こんなものを隠し持っているとはな!”
”あーあーあのセツザとかいうじじいに教えなきゃよー”
”貴様が教えたようなものだろうが!!”
終世主は言いながら、全身の刃でイカを捌く!
しかし再び足に違和感!

「・・・・・・」
見ると、レックスデックスの万力クローが足首を捕えている!
更なる出血!このままでは周辺に潜むイカさえも呼び起こしてしまう!

「シューー・・・・・・」
亡霊を追っていた吸血イカも終世主へ向かう!
その様子を見た亡霊!再びその眼が愉悦に歪む!
メシアに対する更なる残虐な処刑方法を思いついたのだ!
全身を引き裂き、より多くの吸血イカを呼び集めるべく、イヴィレンデシアに迫る!
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拘束されていない上半身だけで何とかイカを退けた終世主!
しかし次の波が来るのは時間の問題!
「キュー!キュー!」
そして奇怪な笑いを上げながら迫る深海の亡霊!
八つ裂きにされるだろうことを予感するイヴィレンデシア!

”最早、これまでか?”
”こんな負け方かっこわるすぎるぜ・・・・・・”
「遠藤です」

”・・・・・・アタイに任せなよ”

採掘クローの締め付けが増す!
「キシューーーーーッ!!!」
それに呼応するように飛びかかる亡霊!
迫る海藻と二つの刃!
イヴィレンデシアの眼を光がよぎる!海面に射す光のような青!
瞬間、周囲を包む泡の粒!すぐさま消えるが一部が残る!
亡霊のヒレと潜水マシンの爪に泡!それらが弾けて氷結!

ザグンンンッッ・・・・・・

海底に木霊する斬響。


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「キューー・・・!・・・シューーーー・・・・・・!」

闇の中にあったのは、クローの拘束を脱し亡霊を両断した、イヴィレンデシアの姿!
第3コアの調和能力・・・・・・。

切断された亡霊の下半身がレックスデックスの残骸の上に沈む。
漂う上半身・・・・・・。


「キューーー・・・・・・シューー・・・・・・」

「・・・キュー・・・セー・・・・・・キュー・・・・・・セー・・・・・・シュー・・・・・・」

「・・・・・・キュー・・・セー・・・シュー・・・救・・・・・・救世主・・・・・・

 救世主に・・・・・・私は・・・・・・・・・私こそが・・・・・・救世主に・・・・・・」


暗闇に染み渡る亡霊の呪詛・・・・・・。


”フン、貴様が救世主だと?”
”おめーはワカメ野郎だろ!!!!”

イヴィレンデシアは一言、冷たく嘲り、海底を飛び立つ!
追い来るイカの群れに、全身の隙間から血刃を噴き出し撃墜しながら上昇!

赤黒い軌跡を残しながら、薄明るい海面へと消えていく終世主・・・・・・。



「シューーッ・・・・・・貴様は・・・・・・メシア・・・・・・?・・・逃しは・・・しない・・・貴様も・・・・・・」

亡霊の上半身は、呻きながら、終世主のあとを追おうともがく。
崩れていく翼。手のように、暗黒の海藻を伸ばす。もう届かない。
それでも、最後に残された意志の力で、救世主へ向かい飛翔しようとする。

亡霊の、後ろ髪のように伸びた海藻が掴まれる。


”・・・・・・アンタ・・・・・・行かせないよ・・・!・・・せめて・・・・・・アンタだけでも・・・!・・・”


下にあったはずのレックスデックスは既に風化した廃墟のような残骸と化している。
ではこの声は・・・・・・?


亡霊を、更なる深淵へと引きずり込む触手。

沈んでいくその姿を、待ちきれんと言わんばかりに追いかける、吸血イカの大群・・・・・・。



「キューーー!キューーーーーっ!救ーーーーーーーーーーーーーーーー





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その後、この海域の上空を生きて通ることは困難だという噂は、より確固たるものとなり、
離れて撮影したという画質の悪いうさんくさい合成映像などによると、
海藻のような怪物だけでなく、それほど美人ではない海尼(ウミボウズの雌)のような妖怪のしわざということになっている。

世界が終われば、恨みの連鎖を断ち切ることも出来るのだろうか?
世界が終われば、そんなことは誰にも分からない。


END



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