ミート・ザ・オフィサーズ2

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ミート・ザ・オフィサーズ2」を以下のとおり復元します。
<hr /><dl id="thread-body"><dt>面接の時間が刻一刻と迫ってきている。<br /></dt>
<dt>僕は、逃げだしたい衝動に駆られていた。<br /></dt>
<dt><br /></dt>
<dt><br /></dt>
<dt><a href="http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/51762/1416393675/496">496</a>:<font color="#008800"><b>ちかぽよ</b></font>:2014/12/03(水)
13:56:11 ID:cZ/A0XVA0</dt>
<dd>家から出たくねぇ<br /><br /></dd>
<dt><br /></dt>
<dt>誰かに相談するでもないつぶやきを掲示板に吐露する。<br /></dt>
<dt><br /></dt>
<dt>久しぶりに袖に腕を通すジャケットは、心なしか以前よりも少し重くなった気がした。<br /></dt>
<dt>机の上に目をやると、昨日やっとの思いで仕上げた履歴書が置いてある。<br /></dt>
<dt>今は、そのたった紙切れ1枚を封筒に入れることすら億劫だ。<br /></dt>
<dt><br /></dt>
<dt>準備できた?と普段よりも上機嫌で尋ねてくる母。<br /></dt>
<dt>僕は首を横に振り、すっとネクタイを手渡し、締めてもらう。<br /></dt>
<dt>ぎゅっときつく結ばれたそれは、まるで奴隷になれ、と僕に強要してくる怪物のように思えた。<br /></dt>
<dt><br /></dt>
<dt>出かける前に、化粧台の鏡で自分の姿を確認する。<br /></dt>
<dt>スーツの自分も、渋くて、かっこいい。<br /></dt>
<dt><br /></dt>
<dt>髪の毛を七三に分けながら、僕はあることに気が付いた。<br /></dt>
<dt>すかさず、掲示板の同志たちに相談してみる。<br /></dt>
<dt><br /></dt>
<dt><br /></dt>
<dt><a href="http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/51762/1416393675/497">497</a>:<font color="#008800"><b>ちかぽよ</b></font>:2014/12/03(水)
14:40:23 ID:cZ/A0XVA0</dt>
<dd>封筒入れる鞄がねぇ<br />
ジャケットのポケットに入れてっていいの?<br /><br /></dd>
</dl><p>返信は、なかった。</p>
<p>午後2時55分。ぴったり面接の5分前に郵便局前についた僕は、自分の社会人ぶりに少しうっとりする。<br />
深夜に見たまとめブログにも、5分前行動が社会人のマナーだと書いてあった。<br />
これで、採用間違いなしだろう。</p>
<p>高鳴る鼓動を抑えて自動ドアのボタンを押すと、<br />
窓口に座っていた目尻の皺の深い女性がこちらをちらっと見て、会釈した。<br />
バイトの面接に来た者なのですが、と伝えなければ。</p>
<p>心から絞り出した勇気が、胃袋のあたりにぽた、ぽた、と垂れ落ち始める。<br />
それと同時に、急にお腹がきりきりと痛みだし、足は錆びついた鉄のように固くなった。<br />
入口で茫然と立ち尽くす僕を、女性は怪訝そうな目で見つめる。<br />
いや、怪しんでるのではない、きっとジャケット姿の僕に一目ぼれしてるのだ。<br />
僕は、罪な男だ。</p>
<p>後ろで自動ドアの開く音がした。別の客が僕の横を通り過ぎていく。<br />
さっと踵を返し、僕は近くのコンビニへと向かった。<br />
前に貼られた注意書きを無視し、店員に声をかけることもなく化粧室に入る。</p>
<p>どうしよう。<br />
逃げ出したい。<br /><br />
深いため息を肺の底から吐き出すと、腕時計を確認する。<br />
午後3時きっかりだ。<br />
このまま1時間ほどここで時間をつぶして、家に帰ろう。<br />
母には、面接は受けたけど、不合格だったと説明すればいい。</p>
<p>何をするでもなく、おもむろに携帯を取り出し画面を見ると、一通のメールが来ていた。</p>
<p>母からだった。</p>
<p>もしかして心配で後ろをつけてきたのだろうか。<br />
郵便局で立ち尽くす僕を見ていたのだろうか。<br />
何もせずに、哀れにコンビニに逃げた僕に失望したのだろうか。<br /><br />
また、母を失望させてしまった―――。</p>
<p>一気に様々な考えが脳内を錯綜し、額から冷たい汗がぶわっと噴き出る。<br />
深呼吸をして覚悟をきめ、僕は、そのメールを、確認した。<br /><br /><br /><br />
なんてことはなかった。そこには、面接がんばりなさい、の一言しか書かれてなかった。<br />
だけど、その一言が、今の僕には一隻の助け舟だった。<br /><br />
そうだ。<br />
あれほど、もう逃げないと決めたのに、社会に出ることを楽しみにしてたのに、<br />
結局僕は、また同じ過ちを繰り返すところだった。<br />
もう、大学受験で舐めた辛酸は二度と味わわないつもりだったのに。</p>
<p>すくっと立ち、鏡で容姿の乱れがないかを確認すると、<br />
僕は風を切りながら一直線に郵便局を目指した。</p>
<p>肌寒い冬の日差しが、今の僕にはちょうどよかった。</p>
<p> </p>
<p> </p>
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