行動の一般化(AASC)

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行動の一般化(AASC) - (2014/07/04 (金) 22:25:06) の編集履歴(バックアップ)


行動適応基準レベル(action adaptation standard class=AASC)


hIEの動きは、超高度AI《ヒギンズ》によって、事故を起こすことがないようとりはからっています。

hIEは、多数の機体が、多数の人間に取り囲まれる状況になったとしても、人間に危害を加えるようでは社会の中で人間と同じように使うことができません。
たとえば、日本の通勤電車の朝のラッシュのような人間だらけの環境に巻き込まれたとしても、異常行動を起こして人間に怪我をさせてしまっては製造者責任を問われます。
hIEは人の中で扱うものであるため、あらゆる機体がこれを現実的な価格で達成できる必要がありました。

これはhIEの数ある制御方式の中で、《ヒギンズ》のみが達成できたことで、これによってミームフレーム社は90%もの圧倒的なシェアを獲得しました。

hIEの協調行動は、「世界を箱庭とみなし、その内部をhIEからのフィードバック情報で詳細計算し、異常行動を起こさないよう人形(hIE)を動かす」というかたちで、保たれています。
hIEがそれぞれセンサの集積体であることから、このフィードバック情報を元に「巨大な頭脳」が世界の模式図をイメージして、その内部に動かすべきhIEを仮想配置しているのです。このイメージはリアルタイム更新され、その中で共通の制御方式を持ったhIEが協調行動を執り行っていることを監視しています。
これに失敗したデータが上がってきた場合は、すぐさま「巨大な頭脳」が自ら作った制御方式を再検証し、必要があれば即座に修正パッチを開発します。

hIEの行動はネットワーク上にあるクラウドのプログラムで制御しています。このため、常に新しく起こる問題や変化に、あらゆる機体が最速で適応できます。
「巨大な頭脳」=超高度AI《ヒギンズ》の能力に頼る方式ですが、hIEの行動制御方式としては、これが『BEATLESS』世界での他律方式制御の最先端です。

この仕組みは行動適応基準レベル(action adaptation standard class=AASC)と呼ばれ、これが制御言語の名前としても取り扱われています。

AASCでは、《ヒギンズ》がミドルウェアとして制御言語を提供し、この万全な協調行動環境を達成しました。
ミドルウェアのかたちで提供されることで、末端の業者がこれを使って行動制御プログラムを書き、クラウドにアップロードし続けています。こうして、hIEの行動のミームは、日々豊かになりながらも、常に同じ質の協調行動環境が保たれています。
《ヒギンズ》は、新技術が世界に現れるなど、新しい環境変化が起こるたびにAASCを更新します。これによってhIEのユーザーは、環境変化に心配することなくその利便性を享受できるのです。
ASSC自体が、《ヒギンズ》のみが完全な管理と更新を行える人類未到産物です。

ただし、人間自身が開発したものではなく超高度AI《ヒギンズ》が作ったものであることから、人間側の管理はゆるみがちです。
AASCと呼ばれるものは、正式には「行動適応基準」「行動適応基準レベル対応ミドルウェア」で、どちらも違うものです。ですが、AASCで通るので、専門家同士の情報のやりとり以外ではAASCでまとめられています。
重要技術でありながら、取扱の厳密性がゆるいことは人間から技術開発への動機が奪われつつあるからだと危惧する人々もたくさんいます。




基準としての行動適応基準レベル(action adaptation standard class=AASC)


《ヒギンズ》は、AASCによってhIEを管理するとき、個々に能力の違いがあるhIEを5段階の能力レベルに割り振りました。
hIEの機体個々の能力の差を考慮に入れていると、協調行動のために行動管理クラウドが処理しなければならないデータが膨大になってしまうためです。

このため、《ヒギンズ》は、処理を簡略化するべく、hIEがそれぞれ従うべき能力規格を設定しました。
つまり、行動管理クラウドは「5段階の能力のいずれかをすべてのhIEが持っている」として、この五種類に対応するように行動プログラムを送るのです。

これが行動適応基準レベル(action adaptation standard class=AASC)で、レベル数値を見ればどの程度のことができるかユーザーにも判別できるようになっています。

AASCは、これにに沿ってhIEを動かすために、全能力が定められた基準以上である必要があるものです。
このため、レベルごとに感覚能力や運動能力などに最低限度基準が設けられています。
AASCに常に機体が対応できるよう、オーナーは、hIEに一定年ごとにかならず検定を受けることを義務づけられています。

[AASCレベル対応能力目安]


AASC1
基本的には協調行動に入れない故障状態の機体。

AASC2
子どもなど身体的弱者のかたちをしている機体。

AASC3
一般成人男性レベルの能力を持っている機体。もっとも一般的な機体基準にあたり、代理労働契約はAASC3が普通は要求されています。

AASC4
人間の限界能力レベル(アスリートレベル)。

AASC5
ライフセーバー、消防士、ボディガードなど特定の専門職hIEとして、人間以上の能力を持っていることを前提にしている機体。
AASC5を満たす機体は、5F(消防士),5B(ボディガード),5P(パイロット)など何の専門職基準を満たしているかが記載されます。
機体に対する行動管理プログラムは、それぞれの専門職に必要な、特殊なものが用いることができます。たとえば、銃器の取扱が2105年でも制限されている日本では、銃器の取扱技術のクラウドに接続してよいのは、AASC5Bの基準を満たしている機体だけです。
専門用途で人間以上に有能でなければならないAASC5を取得した機体では、格闘戦などコンマ一秒を争う状況のために、主機判断系でも自律的な反射行動を許されていることも特徴です。
ただし、こうした各種例外のため、レベル5機体として登録すると、毎年オーナーが特別に登録料を支払う必要があります。登録料を支払わない場合は、機体能力を満たしていてもレベル4に一時的に落とされます。
これらレベル5の機体に対しては、非常時には行動クラウド側から、機体に対して非常事態に対処するよう救援を求められることがあります。この場合は、適宜必要に応じてカスタムクラウドが機体に提供されます。この要請を受けるかどうかはオーナーの選択にまかされます。
最高級機はAASC5の基準を満たすことが、ひとつのステータスシンボルになっています。

AASC5+
本来、明らかに人間を遥かに動きを企図したレイシア級の諸機体はAASC6を割り振るべきですが、《ヒギンズ》がそれを割り当てなかったためAASCは現行レベル5が最高です。
ただし、AASCレベル5を明らかに超越する動きをhIEにさせるには、それだけ高度な行動管理クラウドを自前で持つ必要があります。クラウド自体が違法なものになるため、公式に提供してくれる業者はありません。
ただし、このハードルを乗り越えれば、hIEは《ヒギンズ》が実質的に制約している機体能力を完全に発揮することも可能です。たとえばレイシア級type005《メトーデ》の動きは、機体性能・行動管理プログラムの質がAASC5のレベルから完全に隔絶していて、AASCの枠内で動く手段しか持っていない機体では、接近戦での勝利が不可能な水準に達しています。




AASCにおける故障機体の取扱


AASC基準を満たさない機体や、機体検定を通っていない機体、違法改造を施されていると通報された機体は、自動的に「レベル1(故障機レベル)」が割り振られます。
レベル1機体に行動管理クラウドが与えるプログラムは「邪魔にならない場所へ移動して駐機」です。この性質があるため、機体検定を通っていないhIEは、公共の場所で扱うことができません。

この協調行動から強制排除する働きのため、「レベル1を割り振る」というのは、hIEのよく知られている安全装置でもあります。
レベル1を割り振ることを申請し、これが受諾されるとあらゆるhIEは停止してしまいます。
ただし、これはむやみに停止されるとかえって非常に危険であるため、制限は多くかかっています。実行には「正確な機体の登録ナンバーを知っていて」、かつ「オーナーまたは正式に管理契約を結んだ機体管理者本人からのものであり」かつ「停止パスワードが発行される」である必要があります。

レベル1の機体が、強制駐機をまぬがれる例外は、おもに2パターンあります。
カスタムクラウドが一般のクラウドをまったく通さずに全行動をカバーしている場合。そして、レベル送信をごまかしている場合です。
後者のレベル送信不正は、免許偽造と同じ私文書偽造に問われます。
前者のカスタムクラウド使用については違法ではありません。自宅内のような公共の場所ではない場所、あるいは特殊な認可のある場所では、フルカスタムのクラウドを使ったhIE運用が認められています。AASCはレベル1を送信していても、カスタムクラウド側の設定でこれを動かすようにしておけば、正常に運用することができます。ただし、この場合、どのような結果が起こってもメーカー保証はありません。

公共の場所にカスタムクラウドで運用している機体を持ち込む場合、私有地以外の場所では50%以上は一般クラウドを使うことが法律で決められています。
このせいで、違法改造機体であると検知されてレベル1を割り振られると、例外措置を失って駐機状態になってしまいます。