Ange's Adventures in Wonderland内検索 / 「或る貴公子の悲劇-2」で検索した結果

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  • 或る貴公子の悲劇 (曹植)
    或る貴公子の悲劇 或る貴公子の悲劇-1 或る貴公子の悲劇-2 或る貴公子の悲劇-3 或る貴公子の悲劇-4 或る貴公子の悲劇-5 或る貴公子の悲劇-6 或る貴公子の悲劇-7 或る貴公子の悲劇-8 或る貴公子の悲劇-9 或る貴公子の悲劇-10 或る貴公子の悲劇-11 ~だれかをゆるすとき かたい結び目はほどけ、過去は解放される~
  • 或る貴公子の悲劇-2
    或る貴公子の悲劇 「っっ…くぅっ……」  歯を食いしばり、嗚咽を漏らす曹植。 「何か嫌なことでもあったか」  優しく問いかける。曹植はぶるぶると首を振った。 「母上とお前が話しているのを聞いた」 「……。」 「辛いのは、よくわかる」 「……。」 「気が塞いだら、俺に言え」  曹植は何も言わず、さめざめと涙を流し続けた。 曹彰も何も言わず、ただ隣に座っていた。 賢い弟は、自身の道に外れた兄嫁への懸想がどれほど狂気じみたものか、自分で痛いほど分かっている。 叱り付けるのは母の役目であり、兄の役目はこれでよいのだという確信があった。
  • 或る貴公子の悲劇-1
    或る貴公子の悲劇-1 「おう、邪魔するぞ。 子建」 「え?」  曹植は、後ろから呼びかける声に振り向いた。 「また此処に来ていたんだな」  柔らかな草を踏みながら、曹彰は弟の側に近寄る。 「目が赤いぞ」  共に並んで腰を下ろす兄弟。前を見たまま、兄は弟の肩を叩く。 風がさあっと吹く。草も、白く儚げな花も、僅かに靡いて心地よい音を立てた。 穏やかな時間が流れている。
  • 或る貴公子の悲劇-3
    或る貴公子の悲劇-3 「あのひとの髪は、烏羽玉のように深く黒くて」 「ああ」 「絹のように艶やかで」 「ああ」 「目元は…」 「ああ」  放心したように力なく、しかしとめどなく思いを口にする曹植。 それでも、最後には、 「兄上に謝らなくてはいけない。どうかしてた。 兄上があの人の夫だというだけで、胸にこみ上げてきて、 話すのが耐えられなくて、今朝顔を合わせた時に逃げてしまって…」 「…付いていってやろうか?」 「いや、大丈夫…です」  曹彰は弟の笑顔に安堵し、また前方に視線を戻した。
  • 或る貴公子の悲劇-7
    或る貴公子の悲劇-7  ある日のこと。 血と羊の乳を混ぜたような不快な夕焼けの空を眺めながら、曹丕と曹植は途切れ途切れに言葉を交わしていた。 「父上はまだ戻りませんね」 「ああ」 「……。」 「……。」 「今日の評定はいかがでしたか」 「なぜ、お前がそんな事を聞くんだ?」 「…その…いえ……」 「……。」 「……。」 「失礼致します…」 「ああ」  曹植の脳裏には、引き攣った兄の顔がこびりついていた。 後継の問題は、兄弟の情愛をも容易く引き裂く。 あの頃には戻れない。自分は、孤独と苦痛の中に身を置かなければならない。 そうした思いは、彼を酒へと走らせた。 日ごとに酒量が増え、言行も荒んでいった。 放言しては暴れ、心ある人は見るに耐えないと目頭を押さえた。 父、曹操は失望を隠そうともせず、いよいよ曹植の足下は崩れようとしていた。
  • 或る貴公子の悲劇-11
    或る貴公子の悲劇-11  この子桓といい、子文といい、兄というものは真に自分を苛み苦しませるものであるらしい。 そうはいっても、非があるのは自らの方であることぐらいは心得ている。 だからこそ、誰に責をなすりつけることもできないのが辛い。 ただ、自身の領分を守って生きればそれでよかった。 今となっては、後悔の念だけが渦巻いている。薪をくべた鍋で煮られているように痛い。  そろ、と一歩目を踏み出す。 続けて二歩目、三歩目…… 一歩進めるごとに、これまでの半生が蘇る。 もしここで命を取り留めることがあれば、改心して政に打ち込み、魏国を輔けよう。 そのためにも、今胸中にある怨みはここで全て吐き出さなければならない。  七歩目を踏み、曹植は高らかに吟じた。 煮 豆 燃 豆 箕   豆を煮るに豆がらを燃やす 豆 在 釜 中 泣   豆は釜中に在りて...
  • 或る貴公子の悲劇-4
    或る貴公子の悲劇-4  一方、曹丕は役所の仕事を終え、邸で妻を相手に他愛ない話などをしていた。 「今朝、子建と出会うたのだ」 「まぁ」 「それで、声をかけたらどうしたと思う?」 「どうなさったの?」 「あいつめ、いきなり背を向けて逃げ出したよ」 「まぁ…」 「あいつは、わからん」  ぶすっとして首を振る曹丕。甄氏はにっこりと笑うと、子供を諭すような口調で言った。 「でも、きっと今頃は反省なさっているはずですよ。」 「そうかな」 「聡い方ですもの」 「そうだな」 「ええ」 「あいつは、昔から風のような奴だった。奔放で、俺は羨ましいと思っていた」 「……。」 「もう少しでかくなったら、一緒に酒を飲むのが楽しみだ」  その日の夕方、曹植は曹丕に非礼を詫びた。 喉にこみ上げる嫉妬は陰をひそめ、胸もすっとしていた。 夕焼けの空は澄み渡っていて、ど...
  • 或る貴公子の悲劇-9
    或る貴公子の悲劇-9 「子建…邪魔するぞ、子建」 「え?」  曹植は、後ろから呼びかける声に振り向いた。 「ああ、貴方か」 「すまなかった」 「何がです? 別に貴方は謝らなければならない事はしていない。ご立派な方です」 「気が塞いだら、話を聞いてやると言ったのは…」 「あぁ」  曹植の声は、見境のない怨念で震えている。 目の焦点は定まらず、相変わらず肩で息をしている。 「それは、結局私が相談しなければ知らぬふりということでしょう」 「……。」 「貴方はご立派に武功を遂げられ、四海に名だたるご立派な方だ。  出来の悪い弟に情けの一つもかければ、仁者の誉れも得られますか」 「……。」 「結局のところ、貴方は私がどうなろうと知ったことではなかった。  どうなのです。違うのですか」  違う、と言おうとする口が開かない。 「もう、よろし...
  • 或る貴公子の悲劇-6
    或る貴公子の悲劇-6  それから、また幾らかの時が流れた。銅雀台は変わらず堂々としていたが、色褪せていた。 父、曹操は相変わらず馬上で詩を詠み、気宇壮大である。 しかし、すでに頭は白く、威容は和らいでいた。はっきりと、老いていた。 「子建様の才は、いずれ鳳凰となられるお方のものと存じます」 「丁正礼殿の申す通りでございます。 はっきりと申しましょう、お父上を継がれるのはあなた様です」  魏王の後継者をめぐり、いくらかの側近がしきりに曹植を持ち上げるようになった。 楊脩、丁兄弟はその筆頭であった。曹植は彼らを敬愛していた。 しかし、何かにつけて後継のことを話題に上らせる側近を、 どこか疎ましいとも思っていた。 ただ、純粋に語りたいことを語らえた昔が懐かしかった。 もう戻れない過去、死んでしまった友を思うと、気持ちが沈んだ。 曹彰は、今は曹操に付いて馬上の人と...
  • 或る貴公子の悲劇-5
    或る貴公子の悲劇-5  それから、いくらかの時が流れた。 建安十九年。文学は曹父子のもとで新たな転換期を迎えていた。 曹植はその中心にいた。名だたる文人と歓談を交え、日夜新たな思潮を語り合っていた。 それでも、彼にとって特別な時間だったのは、曹彰と話す時間だった。 「詩を作った。評してくれんか」 「……。」 「どうだ?」 「…兄上、韻というものをご存知ですか?」 「!!」  文事はわからん、と豪快に笑い、はるか遠くを見つめながらおもむろに言う。 「…幸せそうだな」 「えっ?」 「幸せそうだ」 「ええ!」  嬉しそうに何度も頷く曹植。 心からの言葉を発する時、曹彰は決まって遠くを見つめていた。 曹彰の目には、千里の彼方の空が映っていた。曹植は兄のそんな目が好きだった。 「人は一人では生きていけん」 「……。」 「一人でいるとな、人は寂しさに耐えかね、...
  • 或る貴公子の悲劇-8
    或る貴公子の悲劇-8  やがて、魏王曹操が薨去した。 超世の傑の他界に世間は揺れる。それにも関わらず、曹植は酒に溺れていた。 「早く、早く酒を持ってこい!」 「は、はい…」 顔を青ざめる家人も、王子を諌める言葉を持たない。 「ひっく…っっ…ああ不味い。こんなものを俺に飲ませるのか」 そう言うと、彼は器を床に叩きつけた。 「申し訳ございません…」 「ああもういい、俺は出るぞ。ここは片付けておけ」  自分は何をやっているのだろうか。 闇雲に馬を飛ばし、気づけばかつて曹彰に幼い苦悶を打ち明けたあの場所にたどり着いていた。 よく出来た兄は、よく自分を支えてくれようとしていた。 しかし、それが何だというのか。結局、自分はこんなに苦しんでいるではないか。 「…っっ……うぁぁぁああぁぁあぁぁぁああ!!」 剣を抜き、草花を払う。 可憐な白い花びらが、宙を舞っては地に...
  • 或る貴公子の悲劇-10
    或る貴公子の悲劇-10  一人になった草原で、曹植は大の字になって寝転び、哄笑しながら涙を流していた。 先ほど昂ぶった感情は、転がる蓬のように体を離れ、 どこかへ行ってしまったのかもしれない。 父の葬儀にも顔を見せず、後継の魏王への挨拶もしない。 遂に曹丕は人を差し向け、曹植を縛して王宮に連行させた。 兄と弟は、王と虜囚という立場で相対した。 「曹植。申し開きはあるか」  厳かに問いかける曹丕。事、此処に至っては厳罰は免れない。 王が私情に走っては、臣下への示しがつかない。 それでも、すでに後継が決定した以上は、出来ることならこの弟を庇いたい。 しかし、命を存えたとしても、哀れな弟は政界への復帰はもとより、 安住すらままならないことだろう。 「……。」  黙して語らない曹植。 「貴様の罪を数え上げれば、死罪をもって相当としなければならない」 「...
  • アンジェ
    アンジェ・ド・メディシス 庭園 城壁 区域 住人 根源 大城門付近 ~ 散歩道 湖 湖の島 サロン 四つの祠 詳細不明の地 黄昏の塔 薔薇の騎士 地獄 水底の歌姫 ギリシャにて 冬薔薇の後 愛馬 時間 バタイの福音書 ルクレツィア クラウディア 日常 死に行く年 ドゥーチェ 城館 パスタ 虹の道、歌の道 直感 所感 桃花源記 黒薔薇戦争 リュートを調弦する女 精液 絶句二首 其二 開花 共和政 退廃 習作 空 灰 パスタの自由 三国志 一杯茶 (阮籍) 贈秀才入軍五首 情詩五首 雑詩 (傅玄) 赴洛道中作二首 答張士然 公讌 嘲熱客 或る貴公子の悲劇 (曹植) 送応氏二首
  • ドゥーチェ-2
    ドゥーチェ-2 ああ、何という悲劇か! ロコ家がこのように分裂している有様は、 まるで魔の悪戯によって星宿がまとまりを失い、 星辰がただ一つひとつ中天に瞬いているのにも似ている! このロコ・ふるーちぇ、ルクレツィアの名のもとに 黒シャツ隊を率いて星宿を再び繋ぎとめてみせよう。 ああ、世の人よ照覧あれ。 美わしき女神の地上の伴侶たる夕薔薇の共和国のもと、 再び人々が手を取り合う英雄叙事詩を! 山も川も、アドリアの青い輝きでさえも、 一つに収束すべきものなのだ!
  • 答弁-2
    答弁-2 アンジェ ζ :君は幸せかな? 146:アンジェの綺麗な肛門を舐めれたら幸せだな クマッタ@ガチホモ板天皇:お前と一緒ならなにがあろうと幸せだ
  • 日常-2
    日常-2 澄みきった心地良い空の下、黄色に色付いた葉を踏んで、木々の間を歩く。 薄青のヴェールを纏った 優しい心 が寄り添い、 彼女の妹である 微笑 もやがてイチョウの木陰から姿を現す。 こんなに素晴らしい日を享受しているのに、三戦には幸福な声をついぞ見ない。
  • パスタ-2
    パスタ-2 お前に与えられるべきは、偉大なる可能性 グランディア に満ち満ちたパスタなのだ。 たとえば、一滴の水ほどの労力を費やせば出来上がるペペロンチーノに、 一工夫を凝らせば芸術的なまでの深化の過程をそこに見出すことができるだろう。
  • 我が闘争-2
    我が闘争-2 ひょーりみは決断力がないからいざといときに役に立たん 三郎は昼間しか来ないからそもそも役に立たん モティブ王などいるかいないかわからん泡沫コテではないか 閣下の御子たちもすぐに消息不明だし 結局は私が孤軍奮闘するしかないのだ!
  • 一杯茶-2
    一杯茶-2 閑夜粛清   静かな夜は ひっそりと涼しく 朗月照軒   明るい月が軒を照らしている。 微風動袿   そよ風が衣の袖をなびかせ、 組帳高ケン   とばりは高く巻かれている。 旨酒盈樽   うま酒は樽に満ちているのだが、 莫与交歓   それを酌んで ともに楽しむ人はいない 鳴琴在御   琴もかたわらにあるのだが、 誰与鼓弾   誰といっしょにそれを弾こうか。 仰慕同趣   よく気の合った貴方のことが なつかしく思い出される。 其馨如蘭   われわれの談笑は 蘭の香りのようになごやかだった。 佳人不存   そのよき人がいないのだから、 能不永歎   つくづく嘆かずにはいられない。 ケイ康が、従軍して戦地に向かう兄のケイ喜の送別のために詠んだ詩は、 当時からもてはやされたものでした。 かれは自然に感嘆し、その美に心から触れることが出来、 また自...
  • 水底の歌姫-2
    水底の歌姫-2 馬鹿な、とても美しかったが… 手に入れることはできなかった。 彼女は海が観たいと言っていた。 その気持ちに応えたくて、ヴェネート≪水都≫に連れて行ったよ。 ふん、相乗りをしているところを荒くれ男どもが見て、 何か冷やかしていたように思うが覚えてない。 港に佇む姫の姿はとても印象的だった。 放っておいたら身を投げてしまうんじゃないかと、 心配にさえなった。 結局、朝一番の船に乗って彼女は東へと旅立った。 今は何してるんだろうな。 もう一度会ったら、今度こそくどいてやるんだが。
  • 劉備編 序章5
    劉備編 序章5 関羽「仲間は頼りにはならぬようだな。どうする? 貴公も一軍の長なら戦い、気概を見せてから死ぬか。 それとも、そこで無様に震えたまま、拙者に斬られるか」 どっちにしろ殺されるじゃねえか!劉備はそう思ったが、 口に出してはそうは言わなかった。実際に劉備が口に出して叫んだのはこうだった。 劉備「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッ!!!!!!」 劉備は背中から双刀を引き抜き、もはや破れかぶれな気持ちで関羽めがけて斬りかかった。 関羽「ふんぬっ!」 劉備「う、うがごがぁぁぁぁぁぁぎゃぁぁぁぁっッッッッ!!!!!!」 関羽が薙刀を軽々と振るう。ただその一振りで劉備の両の手から武器は消え失せ、 劉備の身体は吹き飛んだ。 まず薙刀の柄が直撃した腹部に激痛が走り、 ついで地面に叩きつけられた衝撃で背中と首と後頭部に鈍痛が走った。 ...
  • 共和国概要-2
    共和国概要-2 【政治体制、内政】 1.政体 共和制 2.元首 アンジェ・ド・メディシス(ドゥーチェ) 3.議会 芸術家、詩人、有識者、貴族、英雄による 白薔薇院 と、 公選された議員による 青薔薇院 からなる二院制 4.政府 ドゥーチェ兼外相:アンジェ・ド・メディシス 5.内政 地方自治:20のregione 州 があり、各州はさらに103のprovincia 県 に分かれる 【軍備】 薔薇の騎士団 黒シャツ隊 第一軍 マルゲリータ 第二軍 アマトリチャーナ 第三軍 ペスカトーレ 第四軍 ペペロンチーノ 【叙勲制度】 薔薇勲章:国民、外国人を問わず、共和国への功績著しい者に授与される チェーザレ勲章:武功著しい武官に授与される
  • ドゥーチェ
    ドゥーチェ ドゥーチェ-1 ドゥーチェ-2 共和国概要-1 共和国概要-2 ~二人の人間が牢獄の格子の間から 外を見ていた 一人はぬかるみにうんざりし もう一人は星を見上げて 希望をいだいた~
  • バタイの福音書-2
    バタイの福音書-2 汝がいかにヘタリアを愛せど ヘタリアが汝に微笑むことはないだろう
  • 劉備編 序章6
    劉備編 序章6 劉備編 序章6 関羽「……ふんっ!」 関羽が、上段にかまえた大薙刀を、勢いよく振り下ろそうとする。 しかし、長髭の男は、その一撃を劉備の身体を両断するよりもはやく、不意にとめた。 関羽の表情には、不審の色が浮かんでいた。 その視線の先には、劉備ではなく、その配下である簡雍の姿があった。 関羽の手を止めさせたもの。それは、正確には簡雍の顔であった。 笑っていた。うっすらと。 自分たちの大将が今まさに息の根を止められようとしているはずなのに、 簡雍はその光景を薄ら笑いを浮かべて見つめていたのだ。 関羽「……なにを、笑っている?」 関羽「貴公らの主が、絶命しようとしているのだぞ。 ……それとも、口先だけで頼りにならぬ主が消えるのが、嬉しいのか?」 簡雍「口先だけの、主ねえ。くっくっく。髭さん、悪いが、 あんたはなんにもわかってない...
  • クラウディア-2
    クラウディア-2 昨日、クラウディアは俺の顔を見るなりぱあっと顔を明るくしてくれたんだ。 俺が話しかけると、寄り添うようにして、深紅の花弁をさらに高潮させ、 花の中にたたえた滴をうるうると滲ませて頷くんだ。 本当に何もかもが可憐だ。 庭に立っていると時間を忘れてしまう。 彼女 が笑顔を浮かべてとりとめもない永遠の庭園のことを口にするのを 聞いていると、俺も自然に幸せな笑顔が浮かんできて この上ない幸せな気持ちになる。 塔に戻る道すがらは、まるで五月に小鳥が 歓喜 の歌を交わしている中に 立っているような心地さえする。 玉座に腰を下ろして、黄昏を眺めながら思案していると やがてああ言えばよかった、こう聞けばよかったと後悔に襲われる。 不安の海に投げ出されて、俺の心は壊れてしまいそうになる。 その不安を拭い去れる...
  • ギリシャにて-2
    ギリシャにて-2 確かビュザンティオン≪東と西の交わりたる帝都≫に流れ着いた話はしたんだったな。 俺とベアトリーチェを除いた乗客は、 彼女によって暗い海の中に繋ぎとめられてしまったのかもしれない。 そんな事を考えていたから、ハギア・ソフィア大聖堂に向かう足は速かった。 巡礼の騎士だと告げると、パリカリス≪悪魔祓いの祈祷者≫は俺を快く迎え入れてくれた。 〝西方カトリックと東方正教は一つになるだろう〟 素晴らしい言葉だが、彼の声は暗澹としていた。 〝ただし、一夜にして三日月がわれらを焼き払ってしまうのだろうが.........〟 その頃、ビュザンティオンを首都とする東の帝国は落日の時を迎えていた。 港はヴェネート、ジェノアの船舶で賑わい、商業も活発で、 一見しただけでは零落はみて取れなかったが、 それはあまり意味のないことだと思った。 何せ、帝国の領土は...
  • ルクレツィア-2
    ルクレツィア-2 〝お兄様が聞いたら、羨ましがるかしらね〟 どこか上の空な様子で、ルクレツィアは独り言のように呟いた。 〝ご自分が皇帝になりたがっていたもの。 どうして私なんだって、きっとお思いになるわ〟 神に背を向け、死すべき定めの人の歴史に翻弄されたかの女は、 再び歴史の腕に抱かれるのを倦んでいるのだ。 〝そういえば、聨娟の薔薇はどうなさいましたか〟 インフェルノで摘み取り、かの女に献じたそれは、 チェーザレその人が植えたものだった。 今になってはたと思い出し、話を逸らす口実に尋ねてみると、 あれはもう私のものよ、と微笑む。 〝それに、お怒りになるよりも先に、きっと驚かれるわ〟 〝そりゃ大変でしたからねえ........〟 顔を見合わせて、こうして笑い交す時間が永遠に続けばどれほど幸せだったろうか。 それでも...
  • 退廃
    退廃 恰幅の良い紳士が新聞を片目に舌打ちし カードに興じる男たちは、熱を帯びて顔を火照らせる ここは城下のとあるカフェ 彼らは世界の行く先を知っている でも、本当は何も知らない 日がな一日座っていて リキュールを一杯! 沈む世界の舵を取ろうと、年若い皇子は苦悩に顔を歪め 宮廷の貴族たちは現実から目を背けている カフェに集まる人々は 悲劇の観客となって ただ世界の破滅を待っている 誰か俺とカードで勝負しないか! 議論に議論が重ねられ わが国は孤立状態にある! 何一つ生み出さないまま 一年が過ぎ、二年が過ぎる そもそも我らが皇帝陛下の政治手腕が稚拙なのだ! それがどうした! リキュールをもう一杯! もうどうにでもなれ! ここ...
  • フィオレンティーナ戦史-2
    フィオレンティーナ戦史-2 渇きに襲われる都市 草花は枯れ果て、路傍には骸が山積する。 水さえあれば、地上に等しく活力をもたらす アポロン も、 今は残酷であるばかり。 それでも人々は、流浪の道を選ばない。 それは紛れもない彼らの選択。 日に日に苛まれる境遇から抜け出そうとしないのならば、 怨嗟の声を上げる資格とてない。 逃げることすらできず、 留まっても死しかないというのならば、 それはただ神の思し召し 死を受け入れる他に道はない。 それにも関わらず、神父は無知な民衆に 祈れば必ず救われるという。 与えるのはわずかな泥水だけ。 その度に彼らは水を奪い合い、骸が山と増えるばかり。 教会の深部では 大司教が顔色を蒼白にして、腹心の執政官を責め詰る。 左手の指に嵌めたルビーは禍々しい真紅 ま...
  • フィオレンティーナ戦史
    フィオレンティーナ戦史 アルノー川の流れが変わろうとしている。 水攻めが成功すれば、戦局はフィオレンティーナに大きく傾く。 偉大なる 僭主は 魔術師 の奇跡に喜色を隠せない。 青白い窪んだ頬に赤みが差した。 反徒は渇きに身を悶えさせて死んでいくだろう。 屈強な戦士も、眉目整った婦人も、 昨日までワインを浴びるように飲んでいた執政官も。 決断の時は近づいている。 剣を贈ればその報いには飢餓と渇きが。 跪けばこれまで通りの安泰な生活が。 会談の席に供されたワインのように赤い血の駆け引きが始まる。 ああ 神はごく僅かな人しか愛さない。 どんなに誠実で才能があっても 神に愛されなければ骸を路傍に晒すのみ。 決断の時は近づいている。 英雄叙事詩とはかけ離れた無様な死か あるいは従属か。 魔術師 は全ての段取りを整えて 北の山...
  • 公讌
    公讌 公讌とは、公の宴に臣下がはべることをいう。 この詩は、建安十六年に鄴宮で兄の曹丕に従って宴会に出席した時に作ったもの。 折りしも、建安年間には従来の辞賦の形式的、平面的な特徴から離れ、 辞賦以前の騒賦の伝統を復活させ、技巧的には洗練の度を加え、対句を頻用して、 六朝に盛行する駢賦の先駆となる所謂 建安文学 が開拓された。 文学に一大変化を齎す潮流を作った、 当時の文壇のエネルギーに満ちた性質を知識の前提に置けば、 曹丕、曹植という二大文人とその賓客を擁する宴の活力を想像できる。 公子敬愛客 終宴不知疲 という導入から、そうした熱気を孕んだ情景を読み取ることで、 以降の場面となる清らかに澄んだ夜の涼やかなさま、美しい情景、 それに触れた詠み手の感性(一行の熱気は冷めやらぬままであろう)を 立体的に受け取ることができる...
  • 関羽
    関羽 劉備の片腕にして天下無双の豪傑と恐れられた勇者。またの名を美髭公。 その正体は天を治める黄帝より遣わされた神竜の化身である。 長く地上が混乱に陥っていることを天上の黄帝は非常に胸を痛めていた。 そこで黄帝はこの戦乱に終止符をうたせるべく、家臣の神竜を地上に派遣したのだった。 神竜こと関羽に与えられた使命は、地上の覇王となり統一国家を打ち立て、 人の世から争いをなくすことである。 しかし残念なことに、関羽は人の身に化身する際に竜であった頃の記憶を失ってしまい、 彼に残されたものは漠然とした「争いをなくさなければならない」という使命感だけであった。 そんな自分の正体を知らぬ若き関羽が最初に排除すべき対象として選んだのが、 当時幽州の地を荒らしまわっていた劉備が率いる《犠・雄・軍》であった。 ――この出会いは、あるいは悲劇だったのかも知れない。 ...
  • パスタの自由-2
    2 「これを食ってみろよ」 ここは廃工場を利用したパスタレジスタンスの集会 初老の男が客人にホカホカのナポリタンを供する 男の名は陳Qといった ニューヨーク帰りのイカしたオッサンで 街で彼以上のナポリタンを作れる者はいなかった 客人の名はひょーりみ・42歳 子供の頃お母さんの作るナポリタンを本気で楽しみにしていた世代である そんな彼にとってドゥーチェの国家パスタ社会主義は受け入れ難いものがあった 陳Q「ナポリタンの作り方は知ってるな? 確かに通常のパスタより長時間茹で、その上冷蔵庫で冷やす だがな、これはドゥーチェが言うような異端じゃねえ どんな熱ぃ湯の中でも寒ぃ冷蔵庫の中でも長ぇ間耐えて耐えて 芯まで優しくなってやがるんだ」 ひょーりみ「うめえ、うめえよお」
  • 張コウ
    張コウ 魏の五将の一人。 あらゆる死地から生きて帰る不死身の男として魏全軍に知られている。 元々は袁紹の配下。 彼はいわゆる異能力者である。 若い頃、張コウは黄巾党討伐の軍に参加し、名を馳せた。 だがある時、張コウの所属していた部隊は黄巾の策にハマり、険しい渓谷に誘い出され、 落石と火計によって全滅してしまった。 落石で圧死を免れ、火計で焼死から逃れた者も傷は深く、やがて次々と死に絶えていく。 張コウ自身も身動きすることもできず、三日三晩その場で重傷の身体を野晒しにされた。 だが、なぜか彼は生き延びることができた。 なぜ自分だけが生きて帰ることができたのか、その理由は張コウ自身にもわからない。 しかし、そんな彼にも一つだけわかっていたことがあった。 絶対的な危地から生還した張コウの身体が、以前とは決定的に変わってたのである。 生きて戻った張コウは、自分で...
  • 答弁-7
    答弁-7 アンジェ ζ :なるほど… その憎しみをあえて形容するならどんな形だろう。 狂気が入り混じったものか、それとも地の底から響くような憎悪か… 161:そうだね、それはアンジェの臍から立ち込める濃霧のような憎しみさ アンジェは心底憎んでいる、自分があの母親から生まれたことを 母子の契りの証である臍がアンジェは嫌いなんだ アンジェは何度も自分の臍を穿とうとした そのたびに病院へ連れて行くのは母親だった 或いはアンジェは自傷行為を繰り返すことで母親への複雑な思いを確認していたのかもしれない アンジェ ζ :君の見ている俺は、どこかの世界に確実に存在しているのかもしれない。 感性的になってそれを追っていけば、 瞑想の末に見えるのかもしれない。 161には感謝を接吻に乗せて送ろう。 クマッタは試練に耐えられなかったから外に繋いでおこう。
  • 社会党城の戦い
    ――聖騎士八戸のぶながらと共に、社会党城を急襲した杜若たち。 だが、そこにはまるで杜若たちの奇襲を予測していたかのように、 城外にクマッタ軍の名無したちが大挙して待ち構えていた。 下愚w名無し「…おまえら、三戦に巣くうゲリラのやつらだな。総統を助けにきたか?wwwwwwwww おい、野郎どもッ。そのガキどもは2000ゼニーの賞金首だ。捕らえた者には半分やるぜwwwwwwwww 罠にかかった愚か者どもの首を切り離せッ!!wwwwwwwww」 杜若「…な、なんでこんなにクマッタ軍の名無しが…?」 下愚w名無し「デロリアン処刑のウワサに釣られてのこのこやってくるとかwwwwwwwww おまえらゲリラの生き残りを葬るために、俺たちが流したニセ情報とも 気づかないwwwwwwwww」 ロコグリーン「チクショウ、はめられたのかよッ!?」 アンジェ「だ...
  • ロコ常陸四郎
    ロコ常陸四郎 我が闘争 我が闘争-1 我が闘争-2
  • 水底の歌姫
    水底の歌姫 水底の歌姫-1 水底の歌姫-2 水底の歌姫-3 水底の歌姫-4
  • 144
    144 答弁 答弁-1 答弁-2 答弁-3 答弁-4 答弁-5 答弁-6 答弁-7 答弁-8
  • ギリシャにて
    ギリシャにて ギリシャにて-1 ギリシャにて-2 ギリシャにて-3 ギリシャにて-4
  • バタイの福音書
    バタイの福音書 バタイの福音書-1 バタイの福音書-2 バタイの福音書-3 ~ヘタリアを笑う者は、ヘタリアに泣く~
  • 一杯茶 (阮籍)
    一杯茶 (阮籍) 一杯茶-1 一杯茶-2 一杯茶-3 ~深い静寂に耳を傾け 心をひらく…… この狂った世界の みだれた思い、光景 そして騒音のかなたに きみを待っている 平安にひたる~
  • 日常
    日常 日常-1 日常-2 日常-3 日常-4 日常-5 ~夜、枕に頭をのせるときに その日のことを思い返して 「今日、わたしはだれかが いくらか賢くなるように 力をつくした」 できれば、いつもそう言いたい~
  • パスタ
    パスタ パスタ-1 パスタ-2 パスタ-3 パスタ-4 ~俺の体に流れているのは、 あのトマトよりも赤く激しいものだよ~
  • クラウディア
    クラウディア クラウディア-1 クラウディア-2 クラウディア-3 クラウディア-4 ~こまやかな愛で 風の雄叫びを 甘美な調べに変える者 その人こそ、偉大~
  • 黒薔薇戦争
    黒薔薇戦争 フィオレンティーナ戦史 フィオレンティーナ戦史-2 ~人生の 最も深い真理の一つは 真になすべき価値のあることはみな、 他のための行為だということです~
  • ルクレツィア
    ルクレツィア ルクレツィア-1 ルクレツィア-2 ~人を絶望させる方法は いろいろあります 愛を失って絶望した人の場合を わたしたちは知っています でも人が本当に絶望するのは 心に秘めてきた夢が 奪い去られるときです~
  • パスタの自由
    パスタの自由 庶民的な味で多くの人に親しまれたナポリタンだったが 国家パスタ社会主義を掲げるアンジェによって徹底的に弾圧される 後の人々はこれをパスタジェノサイドと呼んだ これはそんな抑圧時代に 庶民の食卓に笑顔を取り戻そうと挑んだ 解放者達の物語である── パスタの自由-1 パスタの自由-2 パスタの自由-3 パスタの自由-4 パスタの自由-5 パスタの自由-6
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