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影日向 - (2021/08/10 (火) 21:50:51) のソース
*影日向 ◆M91lMaewe6 空に浮び上がったギガゾンビの姿がゆっくりと消えた。 彼の哄笑が木霊し大気を微かに震わせる。 それとほぼ同時にグリフィスは無感情に小さく呟いた。 「19人か……」 主催者は予想よりも死者が多いと言っていた。 なら、ゲームに乗った人間も多く、 大破壊を起こせうる参加者も1人や2人ではないなとグリフィスは考察した。 彼は腕を上げ、左掌を握り締める。 内側から力が溢れて来るような感覚が沸き起こった。 一年前までのもっとも強かった己の肉体。 ゲームが始まる前まででは、決してそれを再び実感できなかっただろう。 無傷の勝利も得、本来なら内心喜ぶべき状況だ。 だが彼の口からは緊張も含んだ呟きがもれた。 「足りないな」 それは剣を手に入れた場合における、自らの戦闘力を予測した上での発言だ。 彼は自らも認める対等の存在――友であり、宿敵でもある男の名を呼んだ。 「ガッツ……」 彼に敗北を喫した段階での自分では及ばない。 一年の月日の間にガッツは更に強くなっていたからだ。 あいつが武器を持つ前に、支給された飛び道具と併用して戦えば勝てるのか? それでも困難だろうとグリフィスは思う。 だが、それでもガッツと出会ったなら、自分は今度は命尽きるまで戦いを続けざるを得ない。 そうなるなら意地にかけて。今度こそ勝たねばならない。 これからどう戦おうか? 「………………」 しばしの時間が流れ、グリフィスは口元に笑みを浮かべ、小声で言った。 「何も変わりはしない」 ここにおいてさえ、彼の答えは同じだった。 今も昔も己の夢を叶えるために手段を選ばなかったではないか。 神々しいまでのあの光景へ続く路地裏には敵味方、関係無関係問わず幾多の骸が積み重ねられてきた。 それに心を痛めたのは一度や二度ではない。 それをも糧にして、夢を叶えるために進まなければならなかったのだ。 「バトルロワイヤルか」 彼は生涯使うことはなかったであろう単語を口に出した。 己の生き方を通した結果、五体満足でここにいるならば……。 間違ってなどいなかったことだ。 オレはこれまで通りのやり方を通せばいい。 戦場では何も闇雲に敵を屠り、無意味に敵を増やす必要などない。 グリフィスは視線をやや下に下げた。 太陽の薄オレンジ色の光が眼前の道を照らす。 「ふ……」 (キャスカを探すか) 鷹の団結成初期からいる彼女は、自分の為なら自ら駒になろうとするぐらいの忠誠心を持っている。 見知らぬ他人よりもずっと使える。 手段を選ばないとはいえ、ゲームに反対する参加者の集団に潜り込むつもりは今はない。 身動きが取りにくくなるからだ。 むしろ、自分と同じ狙いを持っている敵は確実に数人はいると、彼は予測していた。 そういった輩の正体を暴くのも面白いかも知れないなと思った。 グリフィスは遊園地がある方角と、山がある方角とを交互に見た。 「……?」 向こうに人影が見えた気がした。 再び目を凝らす。 人影らしきものはもう見えなかった。 彼は一瞬、行こうかと思った。 だが彼は気のせいだと自制し、再び足を遊園地の方へと向けた。 ★★★ 自らが吐く息が荒く感じた。 あの時、何故か嫌な予感がした。 だから、向こうの人影から思わず急いで離れてしまった。 人影……音無小夜もグリフィスを向こうに見えた人影として確認していた。 不甲斐ない自分にあせりながら、小夜は刺された左脇腹に手を当てる。 傷は大分塞がったが、まだ痛い。 同時に小夜はさっきの放送を思い出してしまい、苦痛に顔を少し歪めた。 「19人……」 思ったよりも多い。急がなきゃと彼女は思った。 小夜は回収した首輪をどうするかを再び考える。 ただ漠然と技術者探しをしても埒があかない。 もたついてる間に、技術者がみんな死んでしまったら終わりだ。 この際、技術者でなくとも首輪を預けられる信用できる人を探す必要がある。 小夜はそう思った。 『……化け物……』 「くぅ……」 自分が殺めてしまった少女の最期の言葉が脳裏に重く響いた。 自分なんか信用してくれる人がここにいるのか? 何で首輪を持ってるのか? そもそも自分に人を見る目があるのか? また裏切られるんじゃないのか? 小夜の脳裏に色んな迷いが言葉となって浮かぶ。 「………………」 小夜は気を落ち着かせようと深呼吸をした。 あえて疑問は頭から取り払わずに。 時間にして数分流れた後、小夜は視線を上に上げた。 向こうには山が見えた。 怯えて隠れている人はいるんだろうか? そう思いながら、彼女は知り合いのソロモンのことを想う。 彼の名は呼ばれなかった、優勝を目指してなければ信用できる。 信用できる人……。 (あの時、仮面の男に食って掛かった男の子や、戦い慣れた人なら……) 小夜は思案を重ねながら、足早に北へと進んだ。 【F-7 南西部・1日目 朝】 【グリフィス@ベルセルク】 [状態]:普通 [装備]:マイクロUZI(残弾数18/50)・耐刃防護服 [道具]:予備カートリッジ(50発×1)・ターザンロープ@ドラえもん・支給品一式(食料のみ二つ分) [思考・状況] 1:午前中は遊園地内で様子見 2:手段を選ばず優勝する。殺す時は徹底かつ証拠を残さずやる 3:剣欲しい 4:午後からキャスカを探して、協力させる。 【E-7 1日目 朝】 【音無小夜@BLOOD+】 [状態]:左脇腹に刺し傷(再生中)、ほぼ回復 [装備]:ハンティングナイフ [道具]:支給品一式、ウィンチェスターM1897の予備弾(30発分) 首輪、ウィンチェスターM1897(残弾数4/5) [思考・状況] 1:警戒しつつ北へ向かう 2:首輪を解析できる人物の所に持って行く 3:自分をある程度受け入れられそうな人、及び眼鏡の少年(のび太)を探す。 4:可能であればPKK(殺人者の討伐)を行う 5:SOS団のメンバーに謝りたい 6:元の世界に戻ってディーヴァを殺して自分も死ぬ *時系列順で読む Back:[[幸運と不幸の定義 near death happiness]] Next:[[仕事]] *投下順で読む Back:[[幸運と不幸の定義 near death happiness]] Next:[[仕事]] |73:[[老兵は、]]|グリフィス|157:[[いつか見た始まり]]| |96:[[「過ぎ去った日常」]]|音無小夜|149:[[約束された勝利/その結果]]|