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「THE TOWER~"塔"」(2021/10/06 (水) 04:57:58) の最新版変更点
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*THE TOWER~"塔" ◆TIZOS1Jprc
密室に、女が三人固まっている。
そのうち二人はティーンエイジにすら達していないような、年端も行かぬ少女。
もう一人もどこにでもいそうな主婦然とした三十歳位の女だ。
いずれの顔にも、緊張感はない。
もし、ここに自動小銃ででも武装した者が乱入し、その引き金を引けばどうなるだろうか?
抵抗する間もなく、全滅するだろう。
そして、彼女たちはここがそんなことが起こり得る場所だということを忘れていた。
電光表示版が"3"を表示する。
ぽーん、と軽快な音を立ててエレベータの扉が開く。
男が一人、待ち構えていた。
「9秒04……」
男は……その紅い髪を尖らせた奇妙な男は、エレベータの前で珍妙なポーズを決めた状態でみさえ、光、なのはの三人を待ち構えていた。
「また一つ世界を縮めた……。何というスピード。俺は間違いなく宇宙最速……」
どうやら三人が乗り込むと同時に非常階段を駆け上がって、一人先行していたらしい。
エレベータと競争するつもりで。
「「ガキみたい」」
みさえと光の言葉が同時に突き刺さり、クーガーはぴしり、と音を立てて石化する。
彼の価値観の全てが否定されてしまった。
「おい、てめえら。勝手に先行するんじゃねえよ」
ガッツが遅れて階段を登って来る。彼が見慣れないエレベータを前に戸惑っている間に女三人でさっさと上にあがってしまったからだ。
『三階で待ってるわよ』
『みさえさん、クーガーさんとガッツさんがまだ……』
ポチッ
『上へ参るギガ~』
以上、回想終了。待ち伏せがあるかもと止める暇もなかった。
「あんた、もってたあのデカい剣はどうしたの?」
「あんなモン狭い室内で振り回せるか。それよりここで敵が待ち伏せしてたらどうするつもりだったんだ、お前等」
「いいじゃん、疲れてるんだし。それに急ぐんでしょう?」
「そう! 急いでいるなら早い方が便利! 快適! 有効!」
石化していたクーガーが割り込んでくる。
流石宇宙最速の男クーガー。回復するのも早い。
「それよりもひばるちゃん、約束の件は覚えてるんだろうね?」
「ひかるだ」
「わかってるってひばるちゃん。そんなことより!皆の探し人を見付けてくれば、
約束通りこの俺と宇宙最速の座をかけた勝負の決着を付けるんだよ!」
「だからあれはヘンな道具のせいだって……」
二人の話をまとめるとこういうことらしい。
『クーガーが人探しのために物凄いスピードで走っていた』
『たまたまその進路上に居合わせた光がうっかりデンコーセッカなる道具を暴発させて、クーガーを上回るスピードで逃げ出した』
『スピードのみに価値を見出すクーガーは自分より速い者の存在に我慢が出来ないので光に再挑戦したい』
『……………………………………………………。
……アホか』
それが光、みさえ、ガッツの感想だった。
つまりこういうことか?こいつは己の自己満足の為に貴重な支給品を使いきってくれと、そう頼んでいるわけか?この殺し合いの真っ最中に?
こいつはバカだ。真性の。
結局、彼の能力、ラディカルグッドスピードの力を借りる代わりに、ある程度状況が落ち着いたところで彼との勝負に応じてやるということに落ち着いたらしい。
光もどちらかと言えば、売られたケンカは買うタイプ。
しかし、この状況でなりふり構わず何の利にもならないバトルを繰り広げて消耗するような余裕はない。というかそんなことするバカはクーガー以外いない……多分。
勝負に応じてやらないことには、協力を得るどころか光を誘拐しかねない。
つくづく先が思いやられる。
「ところで私があの道具を使った時、クーガーの後ろに誰かいたよーな気がしたんだけど」
「ああイオンさんのことか」
「イオンさん?」
「ええ。美しくかつなかなかに気丈で仲間想いなお嬢さんだった……」
「え? じゃ、じゃあその人は今どこ?」
「ハッハッハッ、何を言っているんだい。最速を目指すのに余計なデッドウェイトは足枷となるだけ。ウェイトアミニッウハサムッ。あの地点に置いて来たに決まってるじゃないか」
バシ――――――――ン!
クラッシュシンバルで思いっきり殴られていた。
「バカなッ!? この俺の回避が0.03秒も遅れたッ!? まさか君ッ俺の思考を読んで……」
「クーガーのバカッ! 女の子一人置いてきぼりにしてどうするつもりなんだッ!」
「いやはや俺としても痛い所を。しかし心配はナ――――ッシング!俺の支給品を全て差し上げておいた!俺の見込んだ女性だ、きっとうまくやってるに違いない!」
崩れた髪型を瞬時に直しながら言いきる。その自信は一体どこから出てくるのだろう。
「あ、あのクーガーさん」
「なんだいなのかちゃん?」
「……そ、その支給品って何だったんですか?それがあんまり役に立たない物だったら心配ですし……」
「うーん。ビミョーなラインだね。斧とヘンな形をした篭手だったかな」
「……篭手?」
「ああ、赤い宝石がはめられていて炎を模したようなデザインの……」
「私のエスクードじゃん……」
光は頭を抱えた。どうやら彼女にとって大事な物だったらしい。
「と、とにかく部屋に入りましょう! 早く怪我した人の治療をしないといけませんし!」
「そ、そうだね!ゲインとセラスが待ってるし!」
光は305号室の前に立つと呼び鈴を押した。
◇ ◇ ◇
セラスは元警察官だ。
訓練の一環として、初歩的な応急処置の実習は受けている。
しかし吸血鬼となってヘルシング機関に配属されてからは、その再生能力ゆえに無用の長物となって、以降全くおさらいしていない。
いまさらながら、まじめに復習しておけばよかったと瀕死で呻くゲインを前に後悔する。
セラスに出来ることといえば、ガーゼと共に包帯を巻いて、時々上から傷口を氷水で冷やす事くらい。
止血しようにも、動脈がどこか判らない。
あとは縄梯子などといった非常脱出用の道具の位置を確認する程度しか出来ない。
セラス自身の傷もいつもと比べると回復が遅い。
放っておけば治るだろうと一切処置をしていないが、自分の怪我にもなんらかの措置が必要かもしれない。
再び傷口を冷やすために氷を取りに冷凍庫に向かおうとした時、部屋の呼び鈴が鳴った。
足音を忍ばせて扉の前まで寄り、ドアスコープを覗く。
一時間ほど前に別れたばかりの少女が立っていた。
本人だとは思うけど、まあ一応確認。
『誰だ』
「セラス! 光だよ! 治療が出来る人を連れてきた!」
ガチャガチャと音を立ててながら鍵とチェーンを外し、少女を招き入れる。
「ヒカルちゃん! よく無事で……で、後ろの人達は?」
「セラス、話は後でするよ。それより早くゲインを!」
光に続いてぞろぞろと人が入ってくる。
紅い髪を逆立てた伊達男を先頭に、主婦っぽい東洋人の女、光よりもさらに幼そうなツインテールの髪型の女の子、そして前のマッチョマンよりもイカツイ顔をした隻眼の大男……。
?
隻眼の男が持つ装飾が施された剣に既視感を覚える。
しかし、またずいぶんと人が増えたものだ。
「自己紹介は後回しにするとして。で、治療できる人ってのは?」
「俺が薬を持ってる」
大男が背負っていた三つのデイバックを下ろして、その内の一つの中を探る。
始めに出て来たのが剣と言うにはあまりにも大きすぎな鉄塊。
そして次に出て来たのは人形だった。
背丈20cm足らずの褐色の肌の女で甲冑を着て……。
「あのー。この人形と良く似た人をさっき見たよーな気がするんですが」
「人形じゃねえよ。おまえの仲間を斬り殺した本人だ。ヘンな道具で一時的に小さくしてある」
「え。じゃ、じゃあどうしてこんな奴を」
「俺の仲間だ」
次の瞬間、セラスは彼に向かって襲いかかっていた。
光が止める間もなく、前に立つ三人をすり抜けて掴みかかろうとしたその時、セラスの体が宙に浮き、床に叩きつけられた。
「やれやれ、せっかちなお嬢さんだ。嫌いじゃないがね、そう言うの」
見上げると伊達男がセラスの上で足四の字固めをかけている。
力を込めても起き上がれない。
常人離れしたパワーを持つ吸血鬼が完全に押さえ込まれていた。
「糞ッ! はなせッ!」
「待ってセラス! そいつは怪我してる!」
よく見ると確かに小さくなった女の左脚があらぬ方向に折れ曲がっていた。
「でもッ! そいつはみくるちゃんとゲインさんを!」
光以外の女二人はおろおろするばかり。
女を持つ隻眼の男が溜息をつく。
「おまえはそいつをどうするつもりだ?」
簡単には起き上がれそうにないので、セラスは取り合えず自分の殲滅対象に男が入っているかどうかを確認した。
「守る」
抹殺確定。セラスは渾身の力で伊達男ごと宙に跳び上がると、その勢いで彼を天井に叩きつける。
天井に人型の穴が開いて、伊達男は四階に投げ出された。
そのまま一気に隻眼の男に向けて必殺の右ストレートを……。
「待って!」
三十歳位の女が男の前に立ちはだかる。
顔面を殴り飛ばす寸前でセラスは止まった。
「……どいてください。あなたもそいつの仲間なんですか?」
「協力者よ、男の方の。女の方がここで何をしたか知らないけど、彼はゲームに乗ってないと証言するわ」
場が膠着状態に陥る。
セラスに拳を収めるつもりはない。
隻眼の男もうかつに動けないので、いまだに女を抱えたままで居る。
しかし、それも数秒の間。
おずおずと言った感じで女の子が割って入った。
「あの……セラスさん……でしたよね?わたしたちがここに来たのはゲインさんを治療するためと、もうひとつ、E-4エリアが閉鎖される前にみんなの探してる人を確認しあおうっていうためなんです」
「協力してるって事?」
「はい。手分けして探すのに人手が必要ですから。この男の人には、殺し合いに乗っちゃったこの女の人を小さくして無力化する道具を借りる代わりに、人探しに協力してもらっているんです」
「……」
ゆっくりとセラスは拳を下ろした。
褐色の肌の女と隻眼の男を睨み付ける。
「別にお前達を信用した訳じゃない」
「ああ、お互い様だ」
「さあ!話がまとまった所で迅速に本題に移ろう!E-4閉鎖までもうすぐ一時間!時は金なり!タイムイズマネー!」
いつのまにか四階に投げ飛ばしたはずの伊達男が戻ってきている。
どうやって戻ってきたか気にはなったが、セラスは一応謝っておく。
「あの~~。すみません、さっきは投げつけちゃって」
「ハッハッハッ!ノープロブレムだよお嬢さん! この神速の男にかかればどのようなダメージであろうとたちどころに回復!」
「は、はぁ……」
またヘンな人だと、セラスは思った。
◇ ◇ ◇
大男の持っていた傷薬は素晴らしい効果をあげたと言えるだろう。
腹部からの出血は止まり、左手足の切り傷に至っては殆ど塞がってしまった。
だが、外傷を塞いだだけであって、体内の損傷にはあまり効いていない。
顔の血色も依然悪いまま。
放っておけば感染症の恐れもある。
出来れば光の友人である風の能力の助けが欲しいところだ。
ゲインの治療と全員の自己紹介を終えた後、皆はそう結論付ける。
「OK! ひばるちゃんの友達くーちゃんにみなえさんの御子息じんのすけとセナスさんの仲間ノグサそしてなのかちゃんの友達のフェムトちゃんをここに集めてくれば良い訳だ!
ハハハハ! その程度宇宙最速たるこの俺にかかれば朝飯前! いや今だったら昼飯前!
みなさんがゆっくりランチを楽しんである間にラディカル・グッドスピードで縦横無尽右往左往東奔西走南船北馬に一っ走りして疾風迅雷一朝一夕電光石火速戦即決で全員の雁首そろえてみせよう!
それではストレイト・クーガー今から早速行って参り……」
「待て」
ガッツに足を引っかけられ華麗に転倒する。
即座に起き上がった、同時に崩された髪型を直しながら。
「待て!? この俺に待てと!? 止まれと!? それは無理だナッツ駄目だ不可能だ! 何故なら俺は決して止まれない男!
マグロが何故泳ぎつづけるか判るか!? 泳いでいないと酸欠になるばかりか水深を維持できないからだ! 沈むのが嫌なら泳ぎ続けるしかない! そう俺は……!」
「……誰かこいつを黙らせろ」
「バルディッシュ、お願い」
"Yes Sir!"
なのはの手にあった金色の宝石が黒い戦斧の様な形状に変化する
"Assault Form"
「レストリクトロック!」
斧から放たれた光の輪がクーガーを拘束する。
「ノォォォォォォ――――――――ウ! オーブストラクショ――――ン!!」
バルディッシュに付いていた説明書はデタラメではなかったらしい。
クーガーさんごめんなさいと謝るなのはを尻目に今後の予定を確認する。
中心に地図を広げ、五人で車座に座る。
時計を見ながらセラスが言う。
「十二時には戻ってくると言っていたトグサさんはいまだ音信不通。しかし彼の名前は正午の死亡者発表で呼ばれなかった……」
「そいつがホテルを襲撃したメイドとグルでないと仮定すると、仮面の野郎が言っていた"身動きの取れない参加者"がそいつである可能性は高い……」
「みんなで脱出するためにも、彼が持っている"技術手袋"は何としても回収しないといけないわね」
ガッツとみさえも合いの手を打つ。
「たとえそれがトグサって人じゃなくても私達で助けないと」
「他人の心配なんてしてる余裕ねえぞ」
「でもフェイトちゃんや風さん、しんのすけ君もその人を助けに向かっているかもしれません。動けないのが本人の可能性もあります」
光となのはからも積極意見。
B-1エリアはもう封鎖されているが残りの二つならまだ間に合う。
「トグサさんは私にここを動くなと言っていたから、少なくとも誰かはここに残しておきたいけど……」
「先ほどの術でこのガキが戦力になることが判った。俺とクーガー、光、セラスを加えて戦えそうなのはキャスカを除いて五人。
時間も迫っているしE-4方面とF-8方面の探索組を二組と居残り組の計三組に別れる」
「どう人数を振り分けるんだ?」
光が尋ねる。
いつのまにかこの場のガッツがまとめ役になっていた。セラスも渋々と言った感じでそれに合わせている。
頼りになりそうな大人はガッツを除けばセラスとみさえくらい。
みさえは非常事態には慣れていないし、セラスは集団の上に立って指揮した経験がない。
「俺以外の戦力四人を二人ずつ、探索組と居残り組に割り振る。みさえはホテルに残れ。俺は単独で別の方に探索に出る」
それを聞いた四人は戸惑う。
「ここに残すのはみさえさんとあとひとりにして、探索組を二人二組にした方が良いんじゃないですか?」
「いや、俺一人の方が都合が良い。この中では俺が一番信用されてないし、俺もお前達を信用してねえ」
「待ってよガッツ、一人で出歩くのは危険だ。動けない人を襲おうとする奴だっているかもしれない」
「相手の身動きが取れないからってわざわざ出向いて止め刺す奴なんざ、実力もたかが知れてる。それにどちらかと言えばホテルの方が危険だ。
崩落する危険性もある上に、六時間の間に二回も強力な実力者の襲撃を受けている。デカくて目立つから集合場所として使われることが読まれてるんだよ」
彼の言うことに一理がある。
E-4エリアの閉鎖まで後一時間ほどとなった今、余計な議論で時間を浪費する訳には行かない。
「待って」
声をあげたみさえに注目が集まる。
「ホテルにはガッツ、あんたが残りなさい。探索組は残りの四人を振り分けるといいわ」
「おい……」
「ちょ、ちょっと待ってみさえさん!」
ガッツに対する不信が残っているセラスがクローゼットの上に置かれているキャスカを指さしながら反論する。
「この女の仲間と一緒になんてゲインさんを置いていけないよ!」
「それにホテルに残る方が危険って言うなら、探索組を減らしてでもホテルの戦力を増強した方が……!」
「駄目よ」
光の意見も聞き入れない。
「あなたにとって風ちゃんって子が大切なのと同じ。わたしは一刻も早くしんのすけを見付けて守ってやりたい。でもそれは私が死んでしまったら元も子もないわ。それにわたしだけだったら、きっとこの状況でしんのすけを守り通せない。
だから怪我人を守れるギリギリの妥協点までホテルの防衛を絞って、残りは全て探索に当てたいとそう言っているのよ」
「ガッツさんはそれでいいんですか?」
「こいつは私に借りがあるからいいのよ」
「……」
みさえはガッツとキャスカを見比べた。
「それにゲームに乗ったって言うこの女の人を止められるのは、たぶん彼だけよ」
「おい、俺はまだ認めて……」
「あんたも、ちゃんと彼女と話し合いなさいよ。逃げてばっかじゃ何も解決しないんだから」
「おい……」
この中で一番ガッツと信頼関係があるのはおそらくみさえだろう。
ガッツの仲間であるらしいキャスカと、いまだに意識を回復していないゲインを一緒にしておくのは気がかりだが、これ以上問題が少ない組合せはセラスらには考え付かない。
ガッツもあきらめた。いずれにせよいつかはキャスカと向き合わねばならないのだ。
「……他にもゲームからの脱出に役立ちそうな奴を知ってたら、ここで言っとくといい。誰か心当たりはないか?」
とりあえず使えそうな道具を交換しながら最後に声をかけておく。トランシーバーの機能を持っているらしい糸電話に似た道具と、銃器類の弾薬、予備の支給品をデイバックに仕舞いながらセラスが考える。
「あの真っ青なジャック・オー・フロストならなんか知ってるんじゃないかな」
「ジャック・オー・フロスト?」
「ああ、そういえばいましたよね、お面のひとに話しかけてた雪ダルマみたいな……ひと?それともロボットかなぁ?」
と、テキオー灯を貰ったなのは。
「雪ダルマかなぁ、あれ。私にはパンダに見えたよ」
スペツナズナイフとオペラグラスを受け取りながら光がそう反論する。
「ドジョウじゃないかしら?」
と、もう一方の糸電話と石ころ帽子を手に取ったみさえ。
ああでもないこうでもないと参加者の一人らしき青い何かの正体について議論になる。
「あのー、みなさーん。そろそろ俺動いてもよろしいでしょーかー」
魔法で拘束されたクーガーの存在は完全に忘れ去られていた。
【D-5/ホテル3階の一室/1日目/日中~午後】
[共有道具]:
バトーのデイバッグ:支給品一式(食糧ゼロ)、チョコビ13箱@クレヨンしんちゃん、煙草一箱(毒)、
爆弾材料各種(洗剤等?詳細不明)、電池各種、下着(男性用女性用とも2セット)他衣類
茶葉とコーヒー豆各種(全て紙袋に入れている)(茶葉を一袋消費)
ロベルタのデイバッグ:支給品一式(×6) マッチ一箱、ロウソク2本、
9mmパラベラム弾(40)、ワルサーP38の弾(24発)、極細の鋼線@HELLSING、医療キット(×1)、病院の食材
ドラムセット(SONOR S-4522S TLA、クラッシュシンバル一つを解体)、クラッシュシンバルスタンドを解体したもの
【ガッツ@ベルセルク】
[状態]:全身打撲(治療、時間経過などにより残存ダメージはやや軽減)
精神的疲労(小)
[装備]:エクスカリバー@Fate/stay night、ハンティングナイフ、ボロボロになった黒い鎧
[道具]:カルラの剣@うたわれるもの、スペツナズナイフ×1、銃火器の予備弾セット(各120発ずつ)
首輪、支給品一式、デイバック2人分
[思考]
1:ホテルでセラスらの帰りを待つ。
2:契約により、出来る範囲でみさえに協力する。
他の参加者と必要以上に馴れ合う気はない。
3:まだ本物かどうかの確証が得られてないが、キャスカを一応保護するつもり。
キャスカに対して警戒、恐怖心あり。
4:殺す気で来る奴にはまったく容赦しない。
ただし相手がしんのすけかグリフィスなら一考する。
5:ドラゴンころしを探す
6:首輪の強度を検証する。
7:ドラえもんかのび太を探して、情報を得る。
8:沙都子の事がやや気にかかる 。
9:グリフィスがフェムトかどうか確かめる。
基本行動方針:グリフィス、及び剣を含む未知の道具の捜索、情報収集
最終行動方針:ギガゾンビを脅迫してゴッド・ハンドを召喚させる。
【ゲイン・ビジョウ@OVERMANキングゲイナー】
[状態]:腹部に重度の損傷(外傷は塞がった)、峠は越した
[装備]:パチンコ(弾として小石を数個所持)、トンカチ
[道具]:支給品一式×2、工具箱 (糸ノコ、スパナ、ドライバーなど)
[思考・状況]
1:まだ安静にすべき。
2:市街地で信頼できる仲間を捜す。
3:ゲイナーとの合流。
4:ここからのエクソダス(脱出)
【野原みさえ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:軽度の疲労
[装備]:スペツナズナイフ×1、悟史のバット@ひぐらしのなく頃に、ウィンチェスターM1897(残弾数3/5)
[道具]:基本支給品一式、糸無し糸電話@ドラえもん、銃火器の予備弾セット(各40発ずつ)、ウィンチェスターM1897の予備弾(30発分)、石ころ帽子@ドラえもん、スモールライト@ドラえもん(電池切れ)
[思考]
1:本心では居ても立ってもいられない。
2:ホテルでセラスらの帰りを待つ。
3:契約によりガッツに出来る範囲で協力する。
4:しんのすけ、無事でいて!
5:しんのすけを見つけたら、沙都子の所に戻る。キャスカを監視。グリフィス(危険人物?)と会ったらとりあえず警戒する
基本行動方針:ギガゾンビを倒し、いろいろと償いをさせる。
【キャスカ@ベルセルク】
[状態]:気絶、左脚複雑骨折+裂傷(一応処置済み)、魔力(=体力?)消費甚大
10分の1サイズ、鼻血(鼻穴に布を突っ込んで処置している)、両手を縛られている。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(一食分消費)
[思考・状況]
1:不明
2:混乱
3:他の参加者(グリフィス以外)を殺して最後に自害する。
4:グリフィスと合流する。
5:セラス・ヴィクトリア、獅堂光と再戦を果たし、倒す。
【D-5/ホテル】
【セラス・ヴィクトリア@HELLSING】
[状態]:腹部に裂傷(傷は塞がりましたが、痛みはまだ残っています)、日中は少し不調
[装備]:AK-47カラシニコフ(29/30)、スペツナズナイフ×1、食事用ナイフ×10本、フォーク×10本、中華包丁
[道具]:支給品一式(×2)(バヨネットを包むのにメモ半分消費)、糸無し糸電話@ドラえもん、バヨネット@HELLSING、AK-47用マガジン(30発×3)、銃火器の予備弾セット(各40発ずつ)
[思考・状況]
1:二手に別れE4かF8を捜索。その後一旦ホテルに帰還。
2:時々糸無し糸電話でみさえと連絡をとる。
3:キャスカとガッツを警戒。
4:ゲインが心配。
5:アーカードと合流。
[備考]:※セラスの吸血について。
大幅な再生能力の向上(血を吸った瞬間のみ、)若干の戦闘能力向上のみ。
原作のような大幅なパワーアップは制限しました。また、主であるアーカードの血を飲んだ場合はこの限りではありません。
【獅堂光@魔法騎士レイアース】
[状態]:全身打撲(歩くことは可能)軽度の疲労 ※服が少し湿っている
[装備]:龍咲海の剣@魔法騎士レイアース
[道具]:鳳凰寺風の剣@魔法騎士レイアース、エスクード(風)@魔法騎士レイアース、スペツナズナイフ×1、支給品一式(×2)、デンコーセッカ@ドラえもん(残り1本)、オモチャのオペラグラス
[思考・状況]
1:二手に別れE-4かF-8を捜索。その後一旦ホテルに帰還。
2:風と合流。
3:キャスカを警戒。
4:ゲインとみさえが心配。
5:状況が落ち着いたら、面倒だがクーガーの挑戦に応じてやる。
基本:ギガゾンビ打倒。
【ストレイト・クーガー@スクライド】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:二手に別れE-4かF-8を捜索。その後一旦ホテルに帰還。
2:そのあと宇宙最速を証明する為に光と勝負さしてくださいおながいします。
3:なのはを友の下へ連れてゆく。
4:証明が終わったら魅音の下へ行く。
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:健康、悲しみ、友を守るという強い決意
[装備]:バルディッシュ・アサルト@魔法少女リリカルなのは
[道具]:グルメテーブルかけ@ドラえもん(回数制限有り:残り18品)、テキオー灯@ドラえもん、支給品一式
[思考・状況]
1:二手に別れE-4かF-8を捜索。その後一旦ホテルに帰還。
2:フェイトと合流。 フェイトにバルディッシュを届けたい。
3:はやてが死んだ状況を知りたい。
4:カズマが心配。
[備考]
シグナム、ヴィータは消滅したと考えています。
-エルルゥの傷薬@うたわれるもの を使いきりました
-捜索対象はドラえもん、フェイト、トグサ、しんのすけ、風、(魅音)、技術手袋@ドラえもん、スモールライト用の電池などです。
-情報交換は短時間に終わったので他の知り合いの情報は満足に行き渡っていない可能性があります。
-キャスカ以外で今まで食糧を消費した者はバトーのデイバックから食糧を補給しました。
*時系列順で読む
Back:[[ヒステリックサイン]] Next:[[「ミステリックサイン」]]
*投下順で読む
Back:[[どうしようか]] Next:[[「救いのヒーロー」(前編)]]
|172:[[契約しよう]]|ガッツ|194:[[復讐少女 ~rachen Sie Madchen~]]|
|139:[[恋のミクル伝説(後編)]]|ゲイン・ビジョウ|194:[[復讐少女 ~rachen Sie Madchen~]]|
|172:[[契約しよう]]|野原みさえ|194:[[復讐少女 ~rachen Sie Madchen~]]|
|172:[[契約しよう]]|キャスカ|194:[[復讐少女 ~rachen Sie Madchen~]]|
|139:[[恋のミクル伝説(後編)]]|セラス・ヴィクトリア|200:[[へんじがない。ただのしかばねのようだ。]]|
|172:[[契約しよう]]|獅堂光|190:[[魔法のジュエル ほしいものは]]|
|172:[[契約しよう]]|ストレイト・クーガー|200:[[へんじがない。ただのしかばねのようだ。]]|
|172:[[契約しよう]]|高町なのは|190:[[魔法のジュエル ほしいものは]]|
*THE TOWER~"塔" ◆TIZOS1Jprc
密室に、女が三人固まっている。
そのうち二人はティーンエイジにすら達していないような、年端も行かぬ少女。
もう一人もどこにでもいそうな主婦然とした三十歳位の女だ。
いずれの顔にも、緊張感はない。
もし、ここに自動小銃ででも武装した者が乱入し、その引き金を引けばどうなるだろうか?
抵抗する間もなく、全滅するだろう。
そして、彼女たちはここがそんなことが起こり得る場所だということを忘れていた。
電光表示版が"3"を表示する。
ぽーん、と軽快な音を立ててエレベータの扉が開く。
男が一人、待ち構えていた。
「9秒04……」
男は……その紅い髪を尖らせた奇妙な男は、エレベータの前で珍妙なポーズを決めた状態でみさえ、光、なのはの三人を待ち構えていた。
「また一つ世界を縮めた……。何というスピード。俺は間違いなく宇宙最速……」
どうやら三人が乗り込むと同時に非常階段を駆け上がって、一人先行していたらしい。
エレベータと競争するつもりで。
「「ガキみたい」」
みさえと光の言葉が同時に突き刺さり、クーガーはぴしり、と音を立てて石化する。
彼の価値観の全てが否定されてしまった。
「おい、てめえら。勝手に先行するんじゃねえよ」
ガッツが遅れて階段を登って来る。彼が見慣れないエレベータを前に戸惑っている間に女三人でさっさと上にあがってしまったからだ。
『三階で待ってるわよ』
『みさえさん、クーガーさんとガッツさんがまだ……』
ポチッ
『上へ参るギガ~』
以上、回想終了。待ち伏せがあるかもと止める暇もなかった。
「あんた、もってたあのデカい剣はどうしたの?」
「あんなモン狭い室内で振り回せるか。それよりここで敵が待ち伏せしてたらどうするつもりだったんだ、お前等」
「いいじゃん、疲れてるんだし。それに急ぐんでしょう?」
「そう! 急いでいるなら早い方が便利! 快適! 有効!」
石化していたクーガーが割り込んでくる。
流石宇宙最速の男クーガー。回復するのも早い。
「それよりもひばるちゃん、約束の件は覚えてるんだろうね?」
「ひかるだ」
「わかってるってひばるちゃん。そんなことより!皆の探し人を見付けてくれば、
約束通りこの俺と宇宙最速の座をかけた勝負の決着を付けるんだよ!」
「だからあれはヘンな道具のせいだって……」
二人の話をまとめるとこういうことらしい。
『クーガーが人探しのために物凄いスピードで走っていた』
『たまたまその進路上に居合わせた光がうっかりデンコーセッカなる道具を暴発させて、クーガーを上回るスピードで逃げ出した』
『スピードのみに価値を見出すクーガーは自分より速い者の存在に我慢が出来ないので光に再挑戦したい』
『……………………………………………………。
……アホか』
それが光、みさえ、ガッツの感想だった。
つまりこういうことか?こいつは己の自己満足の為に貴重な支給品を使いきってくれと、そう頼んでいるわけか?この殺し合いの真っ最中に?
こいつはバカだ。真性の。
結局、彼の能力、ラディカルグッドスピードの力を借りる代わりに、ある程度状況が落ち着いたところで彼との勝負に応じてやるということに落ち着いたらしい。
光もどちらかと言えば、売られたケンカは買うタイプ。
しかし、この状況でなりふり構わず何の利にもならないバトルを繰り広げて消耗するような余裕はない。というかそんなことするバカはクーガー以外いない……多分。
勝負に応じてやらないことには、協力を得るどころか光を誘拐しかねない。
つくづく先が思いやられる。
「ところで私があの道具を使った時、クーガーの後ろに誰かいたよーな気がしたんだけど」
「ああイオンさんのことか」
「イオンさん?」
「ええ。美しくかつなかなかに気丈で仲間想いなお嬢さんだった……」
「え? じゃ、じゃあその人は今どこ?」
「ハッハッハッ、何を言っているんだい。最速を目指すのに余計なデッドウェイトは足枷となるだけ。ウェイトアミニッウハサムッ。あの地点に置いて来たに決まってるじゃないか」
バシ――――――――ン!
クラッシュシンバルで思いっきり殴られていた。
「バカなッ!? この俺の回避が0.03秒も遅れたッ!? まさか君ッ俺の思考を読んで……」
「クーガーのバカッ! 女の子一人置いてきぼりにしてどうするつもりなんだッ!」
「いやはや俺としても痛い所を。しかし心配はナ――――ッシング!俺の支給品を全て差し上げておいた!俺の見込んだ女性だ、きっとうまくやってるに違いない!」
崩れた髪型を瞬時に直しながら言いきる。その自信は一体どこから出てくるのだろう。
「あ、あのクーガーさん」
「なんだいなのかちゃん?」
「……そ、その支給品って何だったんですか?それがあんまり役に立たない物だったら心配ですし……」
「うーん。ビミョーなラインだね。斧とヘンな形をした篭手だったかな」
「……篭手?」
「ああ、赤い宝石がはめられていて炎を模したようなデザインの……」
「私のエスクードじゃん……」
光は頭を抱えた。どうやら彼女にとって大事な物だったらしい。
「と、とにかく部屋に入りましょう! 早く怪我した人の治療をしないといけませんし!」
「そ、そうだね!ゲインとセラスが待ってるし!」
光は305号室の前に立つと呼び鈴を押した。
◇ ◇ ◇
セラスは元警察官だ。
訓練の一環として、初歩的な応急処置の実習は受けている。
しかし吸血鬼となってヘルシング機関に配属されてからは、その再生能力ゆえに無用の長物となって、以降全くおさらいしていない。
いまさらながら、まじめに復習しておけばよかったと瀕死で呻くゲインを前に後悔する。
セラスに出来ることといえば、ガーゼと共に包帯を巻いて、時々上から傷口を氷水で冷やす事くらい。
止血しようにも、動脈がどこか判らない。
あとは縄梯子などといった非常脱出用の道具の位置を確認する程度しか出来ない。
セラス自身の傷もいつもと比べると回復が遅い。
放っておけば治るだろうと一切処置をしていないが、自分の怪我にもなんらかの措置が必要かもしれない。
再び傷口を冷やすために氷を取りに冷凍庫に向かおうとした時、部屋の呼び鈴が鳴った。
足音を忍ばせて扉の前まで寄り、ドアスコープを覗く。
一時間ほど前に別れたばかりの少女が立っていた。
本人だとは思うけど、まあ一応確認。
『誰だ』
「セラス! 光だよ! 治療が出来る人を連れてきた!」
ガチャガチャと音を立ててながら鍵とチェーンを外し、少女を招き入れる。
「ヒカルちゃん! よく無事で……で、後ろの人達は?」
「セラス、話は後でするよ。それより早くゲインを!」
光に続いてぞろぞろと人が入ってくる。
紅い髪を逆立てた伊達男を先頭に、主婦っぽい東洋人の女、光よりもさらに幼そうなツインテールの髪型の女の子、そして前のマッチョマンよりもイカツイ顔をした隻眼の大男……。
?
隻眼の男が持つ装飾が施された剣に既視感を覚える。
しかし、またずいぶんと人が増えたものだ。
「自己紹介は後回しにするとして。で、治療できる人ってのは?」
「俺が薬を持ってる」
大男が背負っていた三つのデイバックを下ろして、その内の一つの中を探る。
始めに出て来たのが剣と言うにはあまりにも大きすぎな鉄塊。
そして次に出て来たのは人形だった。
背丈20cm足らずの褐色の肌の女で甲冑を着て……。
「あのー。この人形と良く似た人をさっき見たよーな気がするんですが」
「人形じゃねえよ。おまえの仲間を斬り殺した本人だ。ヘンな道具で一時的に小さくしてある」
「え。じゃ、じゃあどうしてこんな奴を」
「俺の仲間だ」
次の瞬間、セラスは彼に向かって襲いかかっていた。
光が止める間もなく、前に立つ三人をすり抜けて掴みかかろうとしたその時、セラスの体が宙に浮き、床に叩きつけられた。
「やれやれ、せっかちなお嬢さんだ。嫌いじゃないがね、そう言うの」
見上げると伊達男がセラスの上で足四の字固めをかけている。
力を込めても起き上がれない。
常人離れしたパワーを持つ吸血鬼が完全に押さえ込まれていた。
「糞ッ! はなせッ!」
「待ってセラス! そいつは怪我してる!」
よく見ると確かに小さくなった女の左脚があらぬ方向に折れ曲がっていた。
「でもッ! そいつはみくるちゃんとゲインさんを!」
光以外の女二人はおろおろするばかり。
女を持つ隻眼の男が溜息をつく。
「おまえはそいつをどうするつもりだ?」
簡単には起き上がれそうにないので、セラスは取り合えず自分の殲滅対象に男が入っているかどうかを確認した。
「守る」
抹殺確定。セラスは渾身の力で伊達男ごと宙に跳び上がると、その勢いで彼を天井に叩きつける。
天井に人型の穴が開いて、伊達男は四階に投げ出された。
そのまま一気に隻眼の男に向けて必殺の右ストレートを……。
「待って!」
三十歳位の女が男の前に立ちはだかる。
顔面を殴り飛ばす寸前でセラスは止まった。
「……どいてください。あなたもそいつの仲間なんですか?」
「協力者よ、男の方の。女の方がここで何をしたか知らないけど、彼はゲームに乗ってないと証言するわ」
場が膠着状態に陥る。
セラスに拳を収めるつもりはない。
隻眼の男もうかつに動けないので、いまだに女を抱えたままで居る。
しかし、それも数秒の間。
おずおずと言った感じで女の子が割って入った。
「あの……セラスさん……でしたよね?わたしたちがここに来たのはゲインさんを治療するためと、もうひとつ、E-4エリアが閉鎖される前にみんなの探してる人を確認しあおうっていうためなんです」
「協力してるって事?」
「はい。手分けして探すのに人手が必要ですから。この男の人には、殺し合いに乗っちゃったこの女の人を小さくして無力化する道具を借りる代わりに、人探しに協力してもらっているんです」
「……」
ゆっくりとセラスは拳を下ろした。
褐色の肌の女と隻眼の男を睨み付ける。
「別にお前達を信用した訳じゃない」
「ああ、お互い様だ」
「さあ!話がまとまった所で迅速に本題に移ろう!E-4閉鎖までもうすぐ一時間!時は金なり!タイムイズマネー!」
いつのまにか四階に投げ飛ばしたはずの伊達男が戻ってきている。
どうやって戻ってきたか気にはなったが、セラスは一応謝っておく。
「あの~~。すみません、さっきは投げつけちゃって」
「ハッハッハッ!ノープロブレムだよお嬢さん! この神速の男にかかればどのようなダメージであろうとたちどころに回復!」
「は、はぁ……」
またヘンな人だと、セラスは思った。
◇ ◇ ◇
大男の持っていた傷薬は素晴らしい効果をあげたと言えるだろう。
腹部からの出血は止まり、左手足の切り傷に至っては殆ど塞がってしまった。
だが、外傷を塞いだだけであって、体内の損傷にはあまり効いていない。
顔の血色も依然悪いまま。
放っておけば感染症の恐れもある。
出来れば光の友人である風の能力の助けが欲しいところだ。
ゲインの治療と全員の自己紹介を終えた後、皆はそう結論付ける。
「OK! ひばるちゃんの友達くーちゃんにみなえさんの御子息じんのすけとセナスさんの仲間ノグサそしてなのかちゃんの友達のフェムトちゃんをここに集めてくれば良い訳だ!
ハハハハ! その程度宇宙最速たるこの俺にかかれば朝飯前! いや今だったら昼飯前!
みなさんがゆっくりランチを楽しんである間にラディカル・グッドスピードで縦横無尽右往左往東奔西走南船北馬に一っ走りして疾風迅雷一朝一夕電光石火速戦即決で全員の雁首そろえてみせよう!
それではストレイト・クーガー今から早速行って参り……」
「待て」
ガッツに足を引っかけられ華麗に転倒する。
即座に起き上がった、同時に崩された髪型を直しながら。
「待て!? この俺に待てと!? 止まれと!? それは無理だナッツ駄目だ不可能だ! 何故なら俺は決して止まれない男!
マグロが何故泳ぎつづけるか判るか!? 泳いでいないと酸欠になるばかりか水深を維持できないからだ! 沈むのが嫌なら泳ぎ続けるしかない! そう俺は……!」
「……誰かこいつを黙らせろ」
「バルディッシュ、お願い」
"Yes Sir!"
なのはの手にあった金色の宝石が黒い戦斧の様な形状に変化する
"Assault Form"
「レストリクトロック!」
斧から放たれた光の輪がクーガーを拘束する。
「ノォォォォォォ――――――――ウ! オーブストラクショ――――ン!!」
バルディッシュに付いていた説明書はデタラメではなかったらしい。
クーガーさんごめんなさいと謝るなのはを尻目に今後の予定を確認する。
中心に地図を広げ、五人で車座に座る。
時計を見ながらセラスが言う。
「十二時には戻ってくると言っていたトグサさんはいまだ音信不通。しかし彼の名前は正午の死亡者発表で呼ばれなかった……」
「そいつがホテルを襲撃したメイドとグルでないと仮定すると、仮面の野郎が言っていた"身動きの取れない参加者"がそいつである可能性は高い……」
「みんなで脱出するためにも、彼が持っている"技術手袋"は何としても回収しないといけないわね」
ガッツとみさえも合いの手を打つ。
「たとえそれがトグサって人じゃなくても私達で助けないと」
「他人の心配なんてしてる余裕ねえぞ」
「でもフェイトちゃんや風さん、しんのすけ君もその人を助けに向かっているかもしれません。動けないのが本人の可能性もあります」
光となのはからも積極意見。
B-1エリアはもう封鎖されているが残りの二つならまだ間に合う。
「トグサさんは私にここを動くなと言っていたから、少なくとも誰かはここに残しておきたいけど……」
「先ほどの術でこのガキが戦力になることが判った。俺とクーガー、光、セラスを加えて戦えそうなのはキャスカを除いて五人。
時間も迫っているしE-4方面とF-8方面の探索組を二組と居残り組の計三組に別れる」
「どう人数を振り分けるんだ?」
光が尋ねる。
いつのまにかこの場のガッツがまとめ役になっていた。セラスも渋々と言った感じでそれに合わせている。
頼りになりそうな大人はガッツを除けばセラスとみさえくらい。
みさえは非常事態には慣れていないし、セラスは集団の上に立って指揮した経験がない。
「俺以外の戦力四人を二人ずつ、探索組と居残り組に割り振る。みさえはホテルに残れ。俺は単独で別の方に探索に出る」
それを聞いた四人は戸惑う。
「ここに残すのはみさえさんとあとひとりにして、探索組を二人二組にした方が良いんじゃないですか?」
「いや、俺一人の方が都合が良い。この中では俺が一番信用されてないし、俺もお前達を信用してねえ」
「待ってよガッツ、一人で出歩くのは危険だ。動けない人を襲おうとする奴だっているかもしれない」
「相手の身動きが取れないからってわざわざ出向いて止め刺す奴なんざ、実力もたかが知れてる。それにどちらかと言えばホテルの方が危険だ。
崩落する危険性もある上に、六時間の間に二回も強力な実力者の襲撃を受けている。デカくて目立つから集合場所として使われることが読まれてるんだよ」
彼の言うことに一理がある。
E-4エリアの閉鎖まで後一時間ほどとなった今、余計な議論で時間を浪費する訳には行かない。
「待って」
声をあげたみさえに注目が集まる。
「ホテルにはガッツ、あんたが残りなさい。探索組は残りの四人を振り分けるといいわ」
「おい……」
「ちょ、ちょっと待ってみさえさん!」
ガッツに対する不信が残っているセラスがクローゼットの上に置かれているキャスカを指さしながら反論する。
「この女の仲間と一緒になんてゲインさんを置いていけないよ!」
「それにホテルに残る方が危険って言うなら、探索組を減らしてでもホテルの戦力を増強した方が……!」
「駄目よ」
光の意見も聞き入れない。
「あなたにとって風ちゃんって子が大切なのと同じ。わたしは一刻も早くしんのすけを見付けて守ってやりたい。でもそれは私が死んでしまったら元も子もないわ。それにわたしだけだったら、きっとこの状況でしんのすけを守り通せない。
だから怪我人を守れるギリギリの妥協点までホテルの防衛を絞って、残りは全て探索に当てたいとそう言っているのよ」
「ガッツさんはそれでいいんですか?」
「こいつは私に借りがあるからいいのよ」
「……」
みさえはガッツとキャスカを見比べた。
「それにゲームに乗ったって言うこの女の人を止められるのは、たぶん彼だけよ」
「おい、俺はまだ認めて……」
「あんたも、ちゃんと彼女と話し合いなさいよ。逃げてばっかじゃ何も解決しないんだから」
「おい……」
この中で一番ガッツと信頼関係があるのはおそらくみさえだろう。
ガッツの仲間であるらしいキャスカと、いまだに意識を回復していないゲインを一緒にしておくのは気がかりだが、これ以上問題が少ない組合せはセラスらには考え付かない。
ガッツもあきらめた。いずれにせよいつかはキャスカと向き合わねばならないのだ。
「……他にもゲームからの脱出に役立ちそうな奴を知ってたら、ここで言っとくといい。誰か心当たりはないか?」
とりあえず使えそうな道具を交換しながら最後に声をかけておく。トランシーバーの機能を持っているらしい糸電話に似た道具と、銃器類の弾薬、予備の支給品をデイバックに仕舞いながらセラスが考える。
「あの真っ青なジャック・オー・フロストならなんか知ってるんじゃないかな」
「ジャック・オー・フロスト?」
「ああ、そういえばいましたよね、お面のひとに話しかけてた雪ダルマみたいな……ひと?それともロボットかなぁ?」
と、テキオー灯を貰ったなのは。
「雪ダルマかなぁ、あれ。私にはパンダに見えたよ」
スペツナズナイフとオペラグラスを受け取りながら光がそう反論する。
「ドジョウじゃないかしら?」
と、もう一方の糸電話と石ころ帽子を手に取ったみさえ。
ああでもないこうでもないと参加者の一人らしき青い何かの正体について議論になる。
「あのー、みなさーん。そろそろ俺動いてもよろしいでしょーかー」
魔法で拘束されたクーガーの存在は完全に忘れ去られていた。
【D-5/ホテル3階の一室/1日目/日中~午後】
[共有道具]:
バトーのデイバッグ:支給品一式(食糧ゼロ)、チョコビ13箱@クレヨンしんちゃん、煙草一箱(毒)
爆弾材料各種(洗剤等?詳細不明)、電池各種、下着(男性用女性用とも2セット)他衣類
茶葉とコーヒー豆各種(全て紙袋に入れている)(茶葉を一袋消費)
ロベルタのデイバッグ:支給品一式(×6) マッチ一箱、ロウソク2本
9mmパラベラム弾(40)、ワルサーP38の弾(24発)、極細の鋼線@HELLSING、医療キット(×1)、病院の食材
ドラムセット(SONOR S-4522S TLA、クラッシュシンバル一つを解体)、クラッシュシンバルスタンドを解体したもの
【ガッツ@ベルセルク】
[状態]:全身打撲(治療、時間経過などにより残存ダメージはやや軽減)
精神的疲労(小)
[装備]:エクスカリバー@Fate/stay night、ハンティングナイフ、ボロボロになった黒い鎧
[道具]:カルラの剣@うたわれるもの、スペツナズナイフ×1、銃火器の予備弾セット(各120発ずつ)
首輪、支給品一式、デイバック2人分
[思考]
1:ホテルでセラスらの帰りを待つ。
2:契約により、出来る範囲でみさえに協力する。
他の参加者と必要以上に馴れ合う気はない。
3:まだ本物かどうかの確証が得られてないが、キャスカを一応保護するつもり。
キャスカに対して警戒、恐怖心あり。
4:殺す気で来る奴にはまったく容赦しない。
ただし相手がしんのすけかグリフィスなら一考する。
5:ドラゴンころしを探す
6:首輪の強度を検証する。
7:ドラえもんかのび太を探して、情報を得る。
8:沙都子の事がやや気にかかる 。
9:グリフィスがフェムトかどうか確かめる。
基本行動方針:グリフィス、及び剣を含む未知の道具の捜索、情報収集
最終行動方針:ギガゾンビを脅迫してゴッド・ハンドを召喚させる。
【ゲイン・ビジョウ@OVERMANキングゲイナー】
[状態]:腹部に重度の損傷(外傷は塞がった)、峠は越した
[装備]:パチンコ(弾として小石を数個所持)、トンカチ
[道具]:支給品一式×2、工具箱 (糸ノコ、スパナ、ドライバーなど)
[思考・状況]
1:まだ安静にすべき。
2:市街地で信頼できる仲間を捜す。
3:ゲイナーとの合流。
4:ここからのエクソダス(脱出)
【野原みさえ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:軽度の疲労
[装備]:スペツナズナイフ×1、悟史のバット@ひぐらしのなく頃に、ウィンチェスターM1897(残弾数3/5)
[道具]:基本支給品一式、糸無し糸電話@ドラえもん、銃火器の予備弾セット(各40発ずつ)、ウィンチェスターM1897の予備弾(30発分)、石ころ帽子@ドラえもん、スモールライト@ドラえもん(電池切れ)
[思考]
1:本心では居ても立ってもいられない。
2:ホテルでセラスらの帰りを待つ。
3:契約によりガッツに出来る範囲で協力する。
4:しんのすけ、無事でいて!
5:しんのすけを見つけたら、沙都子の所に戻る。キャスカを監視。グリフィス(危険人物?)と会ったらとりあえず警戒する
基本行動方針:ギガゾンビを倒し、いろいろと償いをさせる。
【キャスカ@ベルセルク】
[状態]:気絶、左脚複雑骨折+裂傷(一応処置済み)、魔力(=体力?)消費甚大
10分の1サイズ、鼻血(鼻穴に布を突っ込んで処置している)、両手を縛られている。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(一食分消費)
[思考・状況]
1:不明
2:混乱
3:他の参加者(グリフィス以外)を殺して最後に自害する。
4:グリフィスと合流する。
5:セラス・ヴィクトリア、獅堂光と再戦を果たし、倒す。
【D-5/ホテル】
【セラス・ヴィクトリア@HELLSING】
[状態]:腹部に裂傷(傷は塞がりましたが、痛みはまだ残っています)、日中は少し不調
[装備]:AK-47カラシニコフ(29/30)、スペツナズナイフ×1、食事用ナイフ×10本、フォーク×10本、中華包丁
[道具]:支給品一式(×2)(バヨネットを包むのにメモ半分消費)、糸無し糸電話@ドラえもん、バヨネット@HELLSING、AK-47用マガジン(30発×3)、銃火器の予備弾セット(各40発ずつ)
[思考・状況]
1:二手に別れE4かF8を捜索。その後一旦ホテルに帰還。
2:時々糸無し糸電話でみさえと連絡をとる。
3:キャスカとガッツを警戒。
4:ゲインが心配。
5:アーカードと合流。
[備考]:※セラスの吸血について。
大幅な再生能力の向上(血を吸った瞬間のみ、)若干の戦闘能力向上のみ。
原作のような大幅なパワーアップは制限しました。また、主であるアーカードの血を飲んだ場合はこの限りではありません。
【獅堂光@魔法騎士レイアース】
[状態]:全身打撲(歩くことは可能)軽度の疲労 ※服が少し湿っている
[装備]:龍咲海の剣@魔法騎士レイアース
[道具]:鳳凰寺風の剣@魔法騎士レイアース、エスクード(風)@魔法騎士レイアース、スペツナズナイフ×1、支給品一式(×2)、デンコーセッカ@ドラえもん(残り1本)、オモチャのオペラグラス
[思考・状況]
1:二手に別れE-4かF-8を捜索。その後一旦ホテルに帰還。
2:風と合流。
3:キャスカを警戒。
4:ゲインとみさえが心配。
5:状況が落ち着いたら、面倒だがクーガーの挑戦に応じてやる。
基本:ギガゾンビ打倒。
【ストレイト・クーガー@スクライド】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:二手に別れE-4かF-8を捜索。その後一旦ホテルに帰還。
2:そのあと宇宙最速を証明する為に光と勝負さしてくださいおながいします。
3:なのはを友の下へ連れてゆく。
4:証明が終わったら魅音の下へ行く。
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:健康、悲しみ、友を守るという強い決意
[装備]:バルディッシュ・アサルト@魔法少女リリカルなのは
[道具]:グルメテーブルかけ@ドラえもん(回数制限有り:残り18品)、テキオー灯@ドラえもん、支給品一式
[思考・状況]
1:二手に別れE-4かF-8を捜索。その後一旦ホテルに帰還。
2:フェイトと合流。 フェイトにバルディッシュを届けたい。
3:はやてが死んだ状況を知りたい。
4:カズマが心配。
[備考]
シグナム、ヴィータは消滅したと考えています。
-エルルゥの傷薬@うたわれるもの を使いきりました
-捜索対象はドラえもん、フェイト、トグサ、しんのすけ、風、(魅音)、技術手袋@ドラえもん、スモールライト用の電池などです。
-情報交換は短時間に終わったので他の知り合いの情報は満足に行き渡っていない可能性があります。
-キャスカ以外で今まで食糧を消費した者はバトーのデイバックから食糧を補給しました。
*時系列順で読む
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*投下順で読む
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|172:[[契約しよう]]|ガッツ|194:[[復讐少女 ~rachen Sie Madchen~]]|
|139:[[恋のミクル伝説(後編)]]|ゲイン・ビジョウ|194:[[復讐少女 ~rachen Sie Madchen~]]|
|172:[[契約しよう]]|野原みさえ|194:[[復讐少女 ~rachen Sie Madchen~]]|
|172:[[契約しよう]]|キャスカ|194:[[復讐少女 ~rachen Sie Madchen~]]|
|139:[[恋のミクル伝説(後編)]]|セラス・ヴィクトリア|200:[[へんじがない。ただのしかばねのようだ。]]|
|172:[[契約しよう]]|獅堂光|190:[[魔法のジュエル ほしいものは]]|
|172:[[契約しよう]]|ストレイト・クーガー|200:[[へんじがない。ただのしかばねのようだ。]]|
|172:[[契約しよう]]|高町なのは|190:[[魔法のジュエル ほしいものは]]|
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