答えはどこに

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答えはどこに - (2009/08/05 (水) 18:59:42) の1つ前との変更点

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「何や、ワイ生きとんのか……?」 煌びやかな光を放つ様々なアトラクション。 見た事もないそれらに顔をしかめながら、男は小さく呟いた。 その表情には困惑が映し出されている。 突然巻き込まれたこのゲームに困惑しているのか? いや、違う。 彼が感じている疑問はそこではない。 ただ自分が元気な、傷一つ無い姿で動き回っている事――ただ、それだけが疑問であった。 何故なら彼――ニコラス・D・ウルフウッドは死んだはずだったから。 家族、故郷を、守る為に凄惨な戦いを続け、そして全てを守り抜く事に成功し、盟友に見取られ死んだ筈だった。 だが、気が付けばあの部屋に座っていた。そして気味の悪い爺さんから語られた、意味不明な殺し合いへの強制参加。 あの場で爺さんを叩きのめしてやろうとも考えたが、一人の男が首輪を爆破され死んだ瞬間、その気も失せた。 今の自分は四方八方から銃を突き付けている状態と同じ――要するに絶対絶命。 生殺与奪の権利を持っているのはあの爺さんだ。命賭けてまで反抗する気にはなれない。 「……ホンマに生きとる見たいやけど……どないなっとんのや?」 思考を打ち切り、適当に辺りを見回すが人っ子一人見当たらない。 ウザったい程にド派手な装飾品が、ウザったい騒音を鳴らし続けているだけだ。 (近所迷惑やろ、全く……) ウルフウッドは大きくため息をつき、近くのベンチに腰掛ける。 正直、訳の分からない事ばかりだ。 自分が生き返った事も、このゲームというには悪趣味すぎる殺し合いも、何もかもが理解できない。 「ゲームは始まってるみたいやけど……」 幸運な事に戦闘をしているらしき音は全く聞こえない。 まぁ、銃声がしたところで、この騒音の中では気付けないだろうが。 「……そういや、支給品がどうとか言うてたな」 答えの出ない思考をひとまず中断し、支給品の確認を始めるウルフウッド。 数分後、彼の眼前に食料やら地図やらが列を作る。 「おお、拳銃が入っとるやないけ。ラッキー、ラッキー」 見た事の無い形の拳銃だったが、付属の説明書を見る限り用途は変わらない。多分、何処かしらカスタマイズされているのだろう。 パニッシャーが無いのは残念だが、拳銃一丁でもそこいらのゴロツキ相手だったら瞬殺できる。 それに予備弾薬まで付属されている。当分武器に困る事はない。 初っ端からの幸運に頬を弛ませながら、ウルフウッドは拳銃を懐に差し込んだ。 「何やこれ、参加者名簿?」 次に彼が興味をそそられたのは、長々と文字が続く一枚の紙。 彼はそれを掴み上から順に、ゆっくりと目を通していく。 そして―― 「何やと……」 ――ある一つの名前を発見し、彼の表情が絶望に染まった。 「……何でコイツまで参加しとんねん……」 ウルフウッドの視線の先、そこには一人の男の名前。 人知を越えた『力』を持ち、そして確実に殺し合いに乗る男――ミリオンズ・ナイブズの名前。 その存在の前には人間など塵も同然。奴の能力を持ってすればこの会場内全てが攻撃範囲内だろうし、下手したら会場ごと破壊だって有り得る。 「アホか! 少しは考えて参加者選ばんかい! 出来レースにも程があるで!」 ここには居ない主催者に愚痴を叫びつつ、荷物を纏め立ち上がるウルフウッド。 ――何処に逃亡しようと結果は変わらない。 リアリストとしての自分が頭の中でそう告げるている。 だが、そんな事実を受け入れられる訳がない。 折角手に入れた二度目の生なのだ。 生きたい。 生き抜いてこの会場に居るらしい盟友と会いたい。 生き抜いて砂の惑星に居る家族の元へと帰りたい。 願望が心の中で暴れ回り、体を動かす。 「頼むで、神さま……。会いたいんや、嬢ちゃん達に、リヴィオに、ガキらに、トンガリに……!」 行く宛もなく、ただ人知を越えた力から逃亡する為、生き延びる為、ウルフウッドは全力で駆け始め―― 「おい、そこのお前。話がある」 ――ようとしたところを、一人の青年に声を掛けられた。 □ 「はぁ、デュフォー、ね。まぁ、よろしく頼むわ」 数分前の焦りが嘘のように、落ち着いた様子でウルフウッドは手を差し伸べた。 向かい合うように立っている青年も、差し伸べられた手を握る。 その表情は無表情の一言だが、ウルフウッドはあまり気にしなかった。 ウルフウッド自身、そのような事を気に止める性格ではないし、何よりそれ以上に気になる事がある。 「なぁ、それよりデュフォーよ。ホンマに攻撃はないんか?」 「お前の言ってた、ナイブズとやらの超長距離攻撃の事か?」 「ああそうや」 彼の気掛かりとは、つい数分前に青年が発した一言。 『大丈夫だ、その男がそのような攻撃をする事は、十中八九ない』 挨拶もそこそこにウルフウッドが語ったナイブズの危険性、能力。 その答えが上記の一言だった。 その時の確信に満ち、焦りの色など欠片も無いデュフォーの瞳を見て、ウルフウッドは何故かその言葉を信じてしまった。 そして自己紹介の後、今に至る。 「なんでオンドレはナイブズからの攻撃が無いと思うんや?」 ズイと顔を寄せ、問い掛けるウルフウッド。 比喩なしで生死に関わる問題だ。その顔には何時もの気さくな雰囲気は無く、真剣そのものであった。 そんなウルフウッドを一瞥し、銀髪の青年は口を開く。 「……お前の言うその男、ナイブズと同様に、俺はある能力を持っている」 ハ?と口が開き、ウルフウッドの動きが止まる。 いきなりのカミングアウトに思考が静止したようだ。 「……能力ってのは、何や?オンドレがそないなゴッツい力持ってるようには見えへんけどな」 たっぷり数秒間、間を置いた後にウルフウッドが呟く。その顔には疑心が浮かんでいた。 「能力といっても、ナイブズのような破壊をもたらす物では無い。『答えを出す者(アンサートーカー)』。 一言で言うなら全ての疑問に一瞬で答えを導き出せる、ただそれだけの能力だ」 「……言うてる意味が良く分からんのやけど」 その時、一貫して無表情だった青年――デュフォーの表情に呆れたような色が灯った。 そして一言。 「お前、頭悪いな。言葉のままだ。全ての答えが分かる、ただそれだけだ」 ポツリと、だがしっかりと告げた。 にこやかな微笑みを張り付けたまま、ウルフウッドの表情が、体が固まる。 そして固まったまま、その表情に青筋が浮かび、ヒクヒクと口元が引きつり始めた。 なんだこの糞ガキは? 目上の者に対する礼儀は持っていないのか? 今すぐボコボコに、もとい教育を施してやろうか。 そんな物騒な考えがウルフウッドの頭をよぎった時、再びデュフォーが口を開く。 「分かったか?」 「…………ああ、よーく分かったで。それであれか? そのあんさーとーかーっちゅう力でナイブズが攻撃しない事が分かったんか?」 彼自身、正直に言えばアンサートーカーについて全く理解していなかったが、此処で質問しても再び同じ言葉が返ってくるだけだろう。 一度ならまだしも、二度言われるとプッツンする自信がある。 理性を総動員し怒りを押し込め、ウルフウッドが聞いた。 「いや、違う」 「そうか、違うんか…………って違うんかい!」 相変わらずの無表情で即答するデュフォー。 だが、その返答はウルフウッドの斜め上を行っていた。……悪い意味で。 「ふざけんな! あんだけ馬鹿にしておいて何言っとんのや! ボケ! 早くその能力使わんかい!」 「無理だ、そのナイブズの思考や場所に関する答えが出ない。恐らく制限かなにかだろう」 馬鹿にされながら能力の説明を受け、その結果が『能力は使っていない』、挙げ句に『使えない』だ。 元々そこまで気の長くない彼が怒るのも仕方がない事だろう。 (そもそもあんさーとーかーっちゅうのも怪しい臭いがプンプンやん。実際あったら最強過ぎるやろ、そんな能力。 どんな疑問に対しても答えが分かるってことは、こっちの攻撃だって全部読まれる訳やろ?ないない。そんなんあり得へんから。どんだけ化け物やねん) 「……なぁ、ならその能力使って制限解く方法とか分からへんのか?」 「お前本当に頭悪いな」 「は?」 「それが分かっているのならとっくのとうに実行している」 ――結局分からんのかい! 口から飛び出そうになる言葉を飲み込み、ウルフウッドは地面に視線を落とした。 (何やねん、この男……) 目の前に居る男と会話していると、異常なまでに疲れる。 電波なのかマジなのかは知らないが、厄介な人間には違いない。 「……分かったで、おんどれが物凄い能力を持っていて、それは制限されているんやな? 決して電波ではない、と」 皮肉まじりの本音が出てしまったが、デュフォーは気にする様子は見せない。 相変わらずの無表情で頷くだけ。 ……なんかどうでも良くなってきた。 実際にナイブズの攻撃もないし、恐らく奴も奴で楽しみながらゲームを進めるのだろう。 自分に出来る事は、ナイブズが本気を出さないよう祈るだけだ。 「さて、これからどうする? おんどれの知り合いも参加させられてんやろ?」 「ああ、高嶺清麿、ガッシュ、ゼオンの三人が居る」 「その三人も何か特殊な力でも持っとんのか?」 「高嶺清麿は俺と同じ能力を持っている。俺よりも不完全だがな。それとゼオンとガッシュは魔物の子だ。殺し合いに乗る奴は……いないはずだ」 ――ようするに電波仲間ってことやな。 出掛けた言葉を飲み込み、名簿へとマークをつける。○は仲間になってくれそうな参加者、×は殺し合いに乗るだろう参加者だ。 今のところ○は自分らを含めて六人、×は一人。 ……まぁ、情報交換はこんなとこだろう。 「そんじゃ、取り敢えず動くか。ここら辺には誰も居ないようやし」 「そうだな」 流石にこんなガチャガチャした所じゃ会話も不便だし、不意打ちにも対処し辛い。 しかも地図でいうと此処は大分端っこの方らしい。 中心地行った方が人とも遭遇しやすいだろう。 「仲間……」 「は?」 「お前の仲間は居ないのか?」 「……おるな。メッチャ面倒くさい奴やけど、仲間や」 仲間という言葉に、無表情を続けていたデュフォーに変化が起きた。といっても僅かに目を見開いただけだが。 「……そうか。そいつの名前は?」 「ヴァッシュ……ヴァッシュ・ザ・スタンピードや。クソ甘くて意地っ張り、そのくせ泣き虫なアホタレや」 「…………お前とそいつは、余程仲が良いんだな」 「はぁ? 寝言は寝ながら言ってくれ」 皮肉で返してやったのにも関わらずデュフォーの顔には笑顔があった。まるで全てを見透かしているかのような微笑みだ。 何や鉄仮面かと思ってたけど笑えるんやないか……ボンヤリとそんな事を考えながらウルフウッドは歩き出す。 すぐ隣にデュフォーの姿。 凸凹コンビは最悪のゲームへと足を踏み入れた。 【一日目/深夜/C-7・遊園地】 【デュフォー@金色のガッシュ!!】 [状態]健康 [装備]なし [道具]基本支給品一式、ランダム支給品×1~3 [思考]  基本:ゲームから脱出する。  0:ウルフウッド……こいつ頭悪いな  1:ウルフウッドと共に、脱出に協力してくれる参加者を探す  2:ゼオン、高嶺清麿、ガッシュと合流したい  3:制限を解きたい  4:ヴァッシュとも合流をしたい  5:ナイブズを警戒 【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン・マキシマム】 [状態]健康 [装備]ソードカトラス@BLACK LAGOON [道具]基本支給品一式、予備弾薬×2 [思考]  基本:ゲームを脱出して元の世界に帰りたい  0:何やねん、この電波君は……  1:デュフォーと共に、脱出に協力してくる参加者を探す。  2:ヴァッシュと合流したい  3:デュフォーの仲間も探してやるか  4:ナイブズを警戒 |Back:[[海賊狩りと人造人間、そして少年]]|時系列順で読む|Next:| |Back:[[海賊狩りと人造人間、そして少年]]|投下順で読む|Next:| |&color(cyan){GAME START}|デュフォー|Next:| |&color(cyan){GAME START}|ニコラス・D・ウルフウッド|Next:|
「何や、ワイ生きとんのか……?」 煌びやかな光を放つ様々なアトラクション。 見た事もないそれらに顔をしかめながら、男は小さく呟いた。 その表情には困惑が映し出されている。 突然巻き込まれたこのゲームに困惑しているのか? いや、違う。 彼が感じている疑問はそこではない。 ただ自分が元気な、傷一つ無い姿で動き回っている事――ただ、それだけが疑問であった。 何故なら彼――ニコラス・D・ウルフウッドは死んだはずだったから。 家族、故郷を、守る為に凄惨な戦いを続け、そして全てを守り抜く事に成功し、盟友に見取られ死んだ筈だった。 だが、気が付けばあの部屋に座っていた。そして気味の悪い爺さんから語られた、意味不明な殺し合いへの強制参加。 あの場で爺さんを叩きのめしてやろうとも考えたが、一人の男が首輪を爆破され死んだ瞬間、その気も失せた。 今の自分は四方八方から銃を突き付けている状態と同じ――要するに絶対絶命。 生殺与奪の権利を持っているのはあの爺さんだ。命賭けてまで反抗する気にはなれない。 「……ホンマに生きとる見たいやけど……どないなっとんのや?」 思考を打ち切り、適当に辺りを見回すが人っ子一人見当たらない。 ウザったい程にド派手な装飾品が、ウザったい騒音を鳴らし続けているだけだ。 (近所迷惑やろ、全く……) ウルフウッドは大きくため息をつき、近くのベンチに腰掛ける。 正直、訳の分からない事ばかりだ。 自分が生き返った事も、このゲームというには悪趣味すぎる殺し合いも、何もかもが理解できない。 「ゲームは始まってるみたいやけど……」 幸運な事に戦闘をしているらしき音は全く聞こえない。 まぁ、銃声がしたところで、この騒音の中では気付けないだろうが。 「……そういや、支給品がどうとか言うてたな」 答えの出ない思考をひとまず中断し、支給品の確認を始めるウルフウッド。 数分後、彼の眼前に食料やら地図やらが列を作る。 「おお、拳銃が入っとるやないけ。ラッキー、ラッキー」 見た事の無い形の拳銃だったが、付属の説明書を見る限り用途は変わらない。多分、何処かしらカスタマイズされているのだろう。 パニッシャーが無いのは残念だが、拳銃一丁でもそこいらのゴロツキ相手だったら瞬殺できる。 それに予備弾薬まで付属されている。当分武器に困る事はない。 初っ端からの幸運に頬を弛ませながら、ウルフウッドは拳銃を懐に差し込んだ。 「何やこれ、参加者名簿?」 次に彼が興味をそそられたのは、長々と文字が続く一枚の紙。 彼はそれを掴み上から順に、ゆっくりと目を通していく。 そして―― 「何やと……」 ――ある一つの名前を発見し、彼の表情が絶望に染まった。 「……何でコイツまで参加しとんねん……」 ウルフウッドの視線の先、そこには一人の男の名前。 人知を越えた『力』を持ち、そして確実に殺し合いに乗る男――ミリオンズ・ナイブズの名前。 その存在の前には人間など塵も同然。奴の能力を持ってすればこの会場内全てが攻撃範囲内だろうし、下手したら会場ごと破壊だって有り得る。 「アホか! 少しは考えて参加者選ばんかい! 出来レースにも程があるで!」 ここには居ない主催者に愚痴を叫びつつ、荷物を纏め立ち上がるウルフウッド。 ――何処に逃亡しようと結果は変わらない。 リアリストとしての自分が頭の中でそう告げるている。 だが、そんな事実を受け入れられる訳がない。 折角手に入れた二度目の生なのだ。 生きたい。 生き抜いてこの会場に居るらしい盟友と会いたい。 生き抜いて砂の惑星に居る家族の元へと帰りたい。 願望が心の中で暴れ回り、体を動かす。 「頼むで、神さま……。会いたいんや、嬢ちゃん達に、リヴィオに、ガキらに、トンガリに……!」 行く宛もなく、ただ人知を越えた力から逃亡する為、生き延びる為、ウルフウッドは全力で駆け始め―― 「おい、そこのお前。話がある」 ――ようとしたところを、一人の青年に声を掛けられた。 □ 「はぁ、デュフォー、ね。まぁ、よろしく頼むわ」 数分前の焦りが嘘のように、落ち着いた様子でウルフウッドは手を差し伸べた。 向かい合うように立っている青年も、差し伸べられた手を握る。 その表情は無表情の一言だが、ウルフウッドはあまり気にしなかった。 ウルフウッド自身、そのような事を気に止める性格ではないし、何よりそれ以上に気になる事がある。 「なぁ、それよりデュフォーよ。ホンマに攻撃はないんか?」 「お前の言ってた、ナイブズとやらの超長距離攻撃の事か?」 「ああそうや」 彼の気掛かりとは、つい数分前に青年が発した一言。 『大丈夫だ、その男がそのような攻撃をする事は、十中八九ない』 挨拶もそこそこにウルフウッドが語ったナイブズの危険性、能力。 その答えが上記の一言だった。 その時の確信に満ち、焦りの色など欠片も無いデュフォーの瞳を見て、ウルフウッドは何故かその言葉を信じてしまった。 そして自己紹介の後、今に至る。 「なんでオンドレはナイブズからの攻撃が無いと思うんや?」 ズイと顔を寄せ、問い掛けるウルフウッド。 比喩なしで生死に関わる問題だ。その顔には何時もの気さくな雰囲気は無く、真剣そのものであった。 そんなウルフウッドを一瞥し、銀髪の青年は口を開く。 「……お前の言うその男、ナイブズと同様に、俺はある能力を持っている」 ハ?と口が開き、ウルフウッドの動きが止まる。 いきなりのカミングアウトに思考が静止したようだ。 「……能力ってのは、何や?オンドレがそないなゴッツい力持ってるようには見えへんけどな」 たっぷり数秒間、間を置いた後にウルフウッドが呟く。その顔には疑心が浮かんでいた。 「能力といっても、ナイブズのような破壊をもたらす物では無い。『答えを出す者(アンサートーカー)』。 一言で言うなら全ての疑問に一瞬で答えを導き出せる、ただそれだけの能力だ」 「……言うてる意味が良く分からんのやけど」 その時、一貫して無表情だった青年――デュフォーの表情に呆れたような色が灯った。 そして一言。 「お前、頭悪いな。言葉のままだ。全ての答えが分かる、ただそれだけだ」 ポツリと、だがしっかりと告げた。 にこやかな微笑みを張り付けたまま、ウルフウッドの表情が、体が固まる。 そして固まったまま、その表情に青筋が浮かび、ヒクヒクと口元が引きつり始めた。 なんだこの糞ガキは? 目上の者に対する礼儀は持っていないのか? 今すぐボコボコに、もとい教育を施してやろうか。 そんな物騒な考えがウルフウッドの頭をよぎった時、再びデュフォーが口を開く。 「分かったか?」 「…………ああ、よーく分かったで。それであれか? そのあんさーとーかーっちゅう力でナイブズが攻撃しない事が分かったんか?」 彼自身、正直に言えばアンサートーカーについて全く理解していなかったが、此処で質問しても再び同じ言葉が返ってくるだけだろう。 一度ならまだしも、二度言われるとプッツンする自信がある。 理性を総動員し怒りを押し込め、ウルフウッドが聞いた。 「いや、違う」 「そうか、違うんか…………って違うんかい!」 相変わらずの無表情で即答するデュフォー。 だが、その返答はウルフウッドの斜め上を行っていた。……悪い意味で。 「ふざけんな! あんだけ馬鹿にしておいて何言っとんのや! ボケ! 早くその能力使わんかい!」 「無理だ、そのナイブズの思考や場所に関する答えが出ない。恐らく制限かなにかだろう」 馬鹿にされながら能力の説明を受け、その結果が『能力は使っていない』、挙げ句に『使えない』だ。 元々そこまで気の長くない彼が怒るのも仕方がない事だろう。 (そもそもあんさーとーかーっちゅうのも怪しい臭いがプンプンやん。実際あったら最強過ぎるやろ、そんな能力。 どんな疑問に対しても答えが分かるってことは、こっちの攻撃だって全部読まれる訳やろ?ないない。そんなんあり得へんから。どんだけ化け物やねん) 「……なぁ、ならその能力使って制限解く方法とか分からへんのか?」 「お前本当に頭悪いな」 「は?」 「それが分かっているのならとっくのとうに実行している」 ――結局分からんのかい! 口から飛び出そうになる言葉を飲み込み、ウルフウッドは地面に視線を落とした。 (何やねん、この男……) 目の前に居る男と会話していると、異常なまでに疲れる。 電波なのかマジなのかは知らないが、厄介な人間には違いない。 「……分かったで、おんどれが物凄い能力を持っていて、それは制限されているんやな? 決して電波ではない、と」 皮肉まじりの本音が出てしまったが、デュフォーは気にする様子は見せない。 相変わらずの無表情で頷くだけ。 ……なんかどうでも良くなってきた。 実際にナイブズの攻撃もないし、恐らく奴も奴で楽しみながらゲームを進めるのだろう。 自分に出来る事は、ナイブズが本気を出さないよう祈るだけだ。 「さて、これからどうする? おんどれの知り合いも参加させられてんやろ?」 「ああ、高嶺清麿、ガッシュ、ゼオンの三人が居る」 「その三人も何か特殊な力でも持っとんのか?」 「高嶺清麿は俺と同じ能力を持っている。俺よりも不完全だがな。それとゼオンとガッシュは魔物の子だ。殺し合いに乗る奴は……いないはずだ」 ――ようするに電波仲間ってことやな。 出掛けた言葉を飲み込み、名簿へとマークをつける。○は仲間になってくれそうな参加者、×は殺し合いに乗るだろう参加者だ。 今のところ○は自分らを含めて六人、×は一人。 ……まぁ、情報交換はこんなとこだろう。 「そんじゃ、取り敢えず動くか。ここら辺には誰も居ないようやし」 「そうだな」 流石にこんなガチャガチャした所じゃ会話も不便だし、不意打ちにも対処し辛い。 しかも地図でいうと此処は大分端っこの方らしい。 中心地行った方が人とも遭遇しやすいだろう。 「仲間……」 「は?」 「お前の仲間は居ないのか?」 「……おるな。メッチャ面倒くさい奴やけど、仲間や」 仲間という言葉に、無表情を続けていたデュフォーに変化が起きた。といっても僅かに目を見開いただけだが。 「……そうか。そいつの名前は?」 「ヴァッシュ……ヴァッシュ・ザ・スタンピードや。クソ甘くて意地っ張り、そのくせ泣き虫なアホタレや」 「…………お前とそいつは、余程仲が良いんだな」 「はぁ? 寝言は寝ながら言ってくれ」 皮肉で返してやったのにも関わらずデュフォーの顔には笑顔があった。まるで全てを見透かしているかのような微笑みだ。 何や鉄仮面かと思ってたけど笑えるんやないか……ボンヤリとそんな事を考えながらウルフウッドは歩き出す。 すぐ隣にデュフォーの姿。 凸凹コンビは最悪のゲームへと足を踏み入れた。 【一日目/深夜/C-7・遊園地】 【デュフォー@金色のガッシュ!!】 [状態]健康 [装備]なし [道具]基本支給品一式、ランダム支給品×1~3 [思考]  基本:ゲームから脱出する。  0:ウルフウッド……こいつ頭悪いな  1:ウルフウッドと共に、脱出に協力してくれる参加者を探す  2:ゼオン、高嶺清麿、ガッシュと合流したい  3:制限を解きたい  4:ヴァッシュとも合流をしたい  5:ナイブズを警戒 【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン・マキシマム】 [状態]健康 [装備]ソードカトラス@BLACK LAGOON [道具]基本支給品一式、予備弾薬×2 [思考]  基本:ゲームを脱出して元の世界に帰りたい  0:何やねん、この電波君は……  1:デュフォーと共に、脱出に協力してくる参加者を探す。  2:ヴァッシュと合流したい  3:デュフォーの仲間も探してやるか  4:ナイブズを警戒 |Back:[[海賊狩りと人造人間、そして少年]]|時系列順で読む|Next:[[「雷帝」]]| |Back:[[海賊狩りと人造人間、そして少年]]|投下順で読む|Next:[[「雷帝」]]| |&color(cyan){GAME START}|デュフォー|Next:| |&color(cyan){GAME START}|ニコラス・D・ウルフウッド|Next:|

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