A foolish man

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13話 A foolish man


断崖絶壁――下はごつごつとした岩が突き出た浅瀬。
落ちれば確実に命は無い危険な場所を、覗き込む一人の鮫獣人の少女。
潮風が強く吹き、それに身体を揺られながらも彼女――最上佳奈は、
尚も崖下を覗き込んでいた。

「高いなぁ……落ちたら死ぬよね、絶対に」

自分は普通の高校に通う普通の女の子なのに、どうして殺し合いなど
しなければいけないのか、佳奈は何度も心の中で主催者のブライアンに
問い掛けていたが当然答えなど返ってくる筈も無い。

デイパックの中に入っていた、地図や名簿といった基本支給品、
そして、折畳傘と、軍手。殺し合えと言っていたが傘と軍手で、
一体どう戦えと言うのか。確かに「当たり外れはある」といった事は言っていたが。
佳奈自身には、この殺し合いに乗る気は無かったが、それでも、
自分の身を守れるぐらいの武器は欲しい所だった。

きっと自分は最後まで生き残るなんて事は出来ないだろうと、佳奈は思う。
参加者は自分を含めて60人もおり、しかもあの開催式の場には、見た目で人を
判断するのは良く無いが、危ない雰囲気の人間、獣人、獣も大勢いた。
自分のように殺し合いを拒否する人もいれば、喜んで殺し合いを始める者も多いに違い無い。
そんな状況で、自分が生きていけるとは到底思えない。ましてやこんな貧弱な支給品で。

それならばいっその事、自ら人生の幕を――引こうと思ったが、無理。

怖い。死にたくない。痛いのは嫌だ。

「やめよ……」

後ずさりして崖から離れる佳奈。その時背後は地面が広がっている。落ちる事は無い。
落ちる事は無いが、誰かがいる可能性までは考えていなかった。
冷たい銃口が、佳奈の後頭部に向けて突き付けられる。
銃の持ち主が引き金に掛けた人差指をぐっ、と引く。

「あれ?」

佳奈が気付いて振り向いたと同時に、銃口から火が噴き、佳奈の左目から脳髄を弾丸が貫通した。
衝撃で数歩下がり、ゆっくりと、佳奈は崖から天を仰ぎつつ、落下していった。



拳銃――スミスアンドウエスンM29を携えた、銀色の長髪を持った色黒のエルフの男、
ダーエロは、脈拍数が平時より何倍も上がっている心臓の辺りを撫で下ろす。

「やっちまったな……も、もう、後戻りは出来ねぇ……」

ダーエロは、開催式で自分の魔法や特殊能力が残らず封じられている事を知り、
また、首輪の爆破実演を、しかも自分も良く知る人物で行われた時、
自分が今、絶望的な状況に置かれている事を理解した。
この殺し合いには、自分と同じく魔王軍四天王の一人、ムシャや、
主催者のブライアンとも関りの深い勇者アレックスとその仲間数人、魔法具現化の二人も
呼ばれている。それ故彼は最初はこの殺し合いに乗るかどうか酷く迷った。
仲間であるムシャは勿論の事、仮に敵対関係にある勇者勢とは言え、
たまに共闘したり、時には共に悪事を働いたりする仲間と同等の存在。魔法具現化もまた然り。
もし、彼らと戦う事になったら、自分はその時冷静でいられるだろうか。
出来る事ならば戦いたくも無いし殺したくも無い。それが余りに甘い考えだと言う事も、
ダーエロはしっかり理解していた。だからこそ迷った。
しかし、この殺し合いで生き残れるのはたった一人だけ。
自分はまだ死にたくはない。だがそれは仲間や知人、他の参加者も同じであろう。
ダーエロは、悩みに悩み抜いたが――。

たった今、見知らぬ鮫獣人の少女を殺害した事により、
彼の中で何かが吹っ切れた。

少女の物と思われるデイパックを漁るが、目ぼしい物は無かった。
仕方無くデイパックはそのまま放置する事にした。
そして、ダーエロは海沿いを走る道路に目を付け、地図を取り出す。
自分から見て右手方向の遠方に、和風の寺社のような建物が木々に囲まれて見える。
となると今自分がいるのはC-7エリアだろう。近くに観音堂という表記がある。

「観音堂……行ってみるか」

ダーエロは地図をしまい、観音堂に向けて歩き出した。
心にはまだ迷いがあった、信頼する仲間、関わりのある知人達、
彼らと戦いたく無い、殺したく無いという思い。

しかし、それを必死に押し殺し、ダーエロは歩みを進めて行く。


&color(red){【最上佳奈@オリキャラ・再戦組  死亡】}
&color(red){【残り52人】}


【一日目/朝方/C-7崖付近】
【ダーエロ@VIPRPG】
[状態]健康、C-6観音堂へ移動中
[装備]S&W M29(5/6)
[所持品]基本支給品一式、.44マグナム弾(18)
[思考・行動]
 基本:殺し合いに乗る。優勝を目指す。だがまだ迷っている。
 1:観音堂へ向かう。
 2:ムシャやアレックス達には出来れば会いたく無い。
[備考]
 ※魔法に制限が掛かっている事を知りました。


※C-7一帯に銃声が響きました。
※最上佳奈の死体はC-7崖下へ落下しました。また、C-7崖付近に、
最上佳奈のデイパック(基本支給品一式、折畳傘、軍手)が放置されています。


≪支給品紹介≫
【折畳傘】
コンパクトに折り畳めるように作られた傘。

【軍手】
手袋の一種。主に作業時の保護用に使用される。
伸縮性に富み、左右の区別がない。

【S&W M29】
1956年にS&W社が開発した強力な.44マグナム弾を使用する大型リボルバー拳銃。
威力は大きいが、拳銃としては大きく重く、携帯にはやや不便。
某映画の主人公が使用し一躍有名になった。



|[[狼少女は罪を感じ、氷女は獲物を捜す]]|時系列順|[[ひとりでできるもん]]|
|[[狼少女は罪を感じ、氷女は獲物を捜す]]|投下順|[[ひとりでできるもん]]|

|&color(aqua){ゲーム開始}|&color(red){最上佳奈}|&color(red){死亡}|
|&color(aqua){ゲーム開始}|ダーエロ|[[]]|

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