烏に単は似合わない

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&font(#6495ED){登録日}:2021/10/24 (日曜日) 18:10:00 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 10 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- &i(){&small(){―山神さまがこの地にご光来ましました時、山の峰からは水があふれ、たちまち木々は花を付け、稲穂は重く頭を垂れた。&br()豊かな山内をごらんになった山神さまは、自らに代わり、この地を整えることを金烏にお命じになったという。&br()そこで金烏は四人の子どもたちに、それぞれ、四つに土地をお分けになった。}} #hr() 『&ruby(からす){烏}に&ruby(ひとえ){単}は似合わない』は、阿部智里による和風ファンタジー小説作品、およびそれを原作とした同名のコミカライズ作品である。 *概要 作者のデビュー作であり、大学在学中に執筆したこの作品が2012年度の松本清張賞を史上最年少で受賞し話題となった。 『八咫烏シリーズ』の1作目という位置づけで、その後も順調に巻数を重ね、2021年8月時点で累計170万部を超えるベストセラーとなっている。 日本の平安時代のような社会で暮らす八咫烏の一族を描いた和風ファンタジーであり、この1作目では皇太子の妻になるために集まった四人の姫を中心に、政治的な思惑、忠誠心、そして恋心が絡み合い、表層的な豪華さと内面的な悲劇が対になった物語が描かれる。 タイプの異なる四人の美女からの后選びという導入は少女漫画的ではあるが、話が進むにつれ、登場人物たちの印象や宮中の様相ががらりと姿を変えていく、サスペンスの色が強くなっていく。 なお、シリーズ2作目である『[[烏は主を選ばない]]』とは、同じ時間軸で動いている別の話を描いた、表裏一体の物語となっている。 また、2024年4月からは、『烏は主を選ばない』のタイトルで、同作と一体となったシリーズ構成としてアニメが放送される。アニメ情報の詳細については、[[同作の項目>烏は主を選ばない]]にて。 *用語 **八咫烏 この物語で描かれる人間はすべて八咫烏の一族であり、人間の姿と、人間大の三本足の烏の姿の二つの姿に転身できる。 重要な事実をひとつ述べると、&bold(){卵生}である。 **&ruby(やまうち){山内} この物語の舞台となる世界であり、宗家の本邸がある中央の山と、その周囲にある東西南北の四領とで成り立つ。 **&ruby(きんう){金烏} 作中では3つの意味で使われているため、それぞれ解説する。 ***八咫烏の始祖としての金烏 項目冒頭の神話で語られる存在であり、神にかわって山内を開き、自らの子孫である八咫烏の一族に治めさせた。 ***種族としての金烏 始祖である金烏は、八咫烏と同じように人と烏の二つの姿をとることができるが、生きものとしては全く別の存在であったと言われている。 ただ、八咫烏の宗家には何代かに一度くらいの頻度で、先祖返りした金烏が産まれることもある。 ***族長・皇としての金烏 本来であれば、八咫烏の族長は(種族としての)金烏が継承するのだが、先述のように何代かに一度しか現れないため、通常は宗家の長子が族長である金烏となる。 その場合の厳密には呼び名は『&ruby(きんうだい){金烏代}』である。 **&ruby(ひつぎ){日嗣}の&ruby(みこ){御子}・桜の&ruby(きみ){君} 次代の金烏(代)となる者すなわち皇太子を『日嗣の御子』、その妻すなわち皇太子妃を『桜の君』と呼ぶ。 **四家 金烏の子孫であり、&ruby(とうりょう){東領}を治める&ruby(とうけ){東家}、&ruby(なんりょう){南領}を治める&ruby(なんけ){南家}、&ruby(さいりょう){西領}を治める&ruby(さいけ){西家}、&ruby(ほくりょう){北領}を治める&ruby(ほくけ){北家}の四つの家の総称。 **&ruby(おうかぐう){桜花宮} 宗家本邸の中に建てられている、日嗣の御子が桜の君を選ぶための宮殿で、四領四家の姫がそれぞれ&ruby(はるどの){春殿}、&ruby(なつどの){夏殿}、&ruby(あきどの){秋殿}、&ruby(ふゆどの){冬殿}と名付けられた殿で暮らす。 また、桜花宮全体の管理をするために宗家の女宮が住むための&ruby(ふじのはなどの){藤花殿}もある。 桜花宮に住む者は主人も使用人もすべて女性であり、男性は宗家からの使者であっても藤花殿以外に立ち入ることはできない。 (当然ながら、后を選ぶという立場の日嗣の御子は制限なしに立ち入り可能) **&ruby(とうでん){登殿}・&ruby(じゅだい){入内} 四家の姫が桜の君候補となるため桜花宮に移り住むことを『登殿』、そして御子に見初められて正室(または側室)として迎えられることを『入内』という。 ある家の姫が入内し長子が産まれれば、宗家においてその家の発言力が高まることになるため、登殿は四家による代理戦争という面もある。 **宮烏・山烏 宗家や四家の者といった、いわゆる貴族は『&ruby(みやがらす){宮烏}』と呼ばれ、それ以外の庶民は『&ruby(やまがらす){山烏}』と呼ばれる。 山烏は宮烏に仕えることを喜びとする一方で、宮烏は人格に優れた者もいるが山烏を同じ&ruby(にんげん){八咫烏}だと思っていない者も多い。 また、宮烏は十二単をはじめとした豪華な着物をまとっているのに対して、山烏は粗末な衣服を着ている。その中でも特に貧しい者は、黒一色の着物を常に着ているようである。 ただし、山烏でも能力があれば、宮烏に直接仕えるような身分に取り立てられることもある。 *登場人物 (CVは、アニメ『烏は主を選ばない』でのもの) **東家・春殿の関係者 ***あせび (CV:本泉莉奈) 東家の二の姫&footnote(次女)にして、薄い色の髪にやや幼い顔立ちの少女らしい美しさを持った人物。 物語の大半は、彼女の目線で語られる。 本来は登殿する予定ではなかったのだが、姉の双葉が疱瘡によって顔にあばたができたことから、その代わりに桜花宮へ赴くことになる。 それもあって物語の開始時点では『あせび』という&ruby(かりな){仮名}&footnote(女性が使う個人名。真名は婚姻の際に夫にだけ教えるのがならわしであるため、本作中でもほとんど出てこない。)はなく、登殿の際に大紫の御前から名付けられた。 東領で自由奔放に育てられたため、宮烏としての常識に疎く性格もおっとりとしており、桜花宮では他の姫に圧倒され気後れすることも多い。 しかし、持ち前の素直な性格もあり、実際に触れあった者からは好印象を向けられるようである。 加えて、&bold(){良くも悪くも}穏やかで&bold(){受け身}な部分も多いこともあり、自らは誰かと積極的に対立しようとはしない。 涙もろく、言ってしまえば典型的な古い少女漫画の主人公的性格の女性。 幼いころに一度だけ出会った初恋の少年こそが皇太子たる若宮であることを知り、その成就のために入内したいと強く願うようになる。 #region 終盤では「ある事件」から絶望し嘆く白珠に(そんな状況ではないのに)「美しさ」を感じたのを最後に、なぜか彼女視点のシーンが消失。 そして最終章では他の姫達と若宮とのやり取りの中で&bold(){若宮の結婚観がかなりズレている}事や&bold(){宗家を巡る陰惨な企み}が聞こえてきても&bold(){それに構わず}、彼から対話を誘われた際ついに告白するが…。 #endregion ***うこぎ あせびの筆頭女房&footnote(宮烏に仕える女官)である中年女性。 あせびに対して厳しくも愛情を込めて育ててきた。 **南家・夏殿の関係者 ***&ruby(はまゆう){浜木綿} (CV:七海ひろき) 南家の一の姫にして、背が高くすらりと長い手足に豊満な胸、目鼻立ちのはっきりとした気の強そうな麗人といった印象の人物。 十二単を着崩す、単一枚で夏殿の外に出るなど良家の娘としては眉をひそめるような格好をすることもあるが、それも含めて似合わせてしまう強さがある。 性格は皮肉屋であり、歯に衣着せずに物言うタイプであるが、そんな自分に対しても変わらず接するあせびのことは気に入っているようである。 若宮のことを愛していると言いながらも、本気で入内を狙っていないかのような言動もする、謎のある人物。 ***&ruby(からむし){苧麻} 浜木綿の筆頭女房である女性。 主であるはずの浜木綿のことを良く思っていないふうであり、何か事が起きたときにも、浜木綿に知らせずに自分だけで納めようとすることもある。 **西家・秋殿の関係者 ***&ruby(ますほ){真赭}の&ruby(すすき){薄} (CV:[[福原綾香]]) 西家の一の姫にして、それぞれに美しい他の三家の姫と比べても別格の女性らしい美しさの人物。 ただ美人なだけでなく、自分が最も美しいと思うプライドと、それを支えるだけの努力を有する、浜木綿とは違った意味で&bold(){強い女性}。 あせびに対しては、最初は競争相手にすらならないという認識もあり、どこか見下したような印象で接するが、本質的には悪い人間ではない。 また桜花宮で起こる様々な出来事の中で自身の世間知らずさも自覚し、一女性としてもより強く、真面目な方向に成長していく。 #region だが真面目なせいで、最終章では若宮の結婚観や桜花宮での事件の真相に一番真っ当な憤りをあげていた。 #endregion ***菊野 真赭の薄の筆頭女房である女性。 四家の筆頭女房の中では最も若いようで、他家の女房と言い争いになるときにも熱くなりやすい。 **北家・冬殿の関係者 ***&ruby(しらたま){白珠} (CV:[[釘宮理恵]]) 北家の三の姫にして、真っ白い肌に大きな瞳、まっすぐ長い黒髪と人形のような美しさの人物。 内向的で控えめな性格だが、北家の威信を背負って入内を狙っており、目的意識の弱いあせびに対する当たりは他家の姫の中でも最も強い。 ***茶の花 白珠の筆頭女房であり、老人に届いているくらいの外見。 北家のため白珠を入内させることが第一であり、場合によっては他家の姫を貶めるようなことも口に出す。 **藤花殿・宗家の関係者 ***&ruby(ふじなみ){藤波} (CV:[[青山吉能]]) 若宮の妹である内親王。あせびの母が教育係を務めた縁があり、あせびを「お姉さま」と慕う。 桜花宮での再会を喜び、あせびが兄に選ばれることを望んでいる。 ***滝本 藤波の筆頭女房。 桜花宮の警護を行う『&ruby(ふじのみやれん){藤宮連}』の一員でもあり、宮中で起きた変事を取り締まる立場である。 ***&ruby(さもも){早桃} 宗家の女房であるが、四姫の登殿に際して夏殿付きとなった。 本来の主人である藤波とは歳が近いこともあって仲が良く、形式上の主人である浜木綿ではなく藤波の願いを叶えるため、また「政治の道具ではなく、純粋な恋による入内」があってもいいとの想いから、あせびに協力することを誓う。 ***&ruby(おおむらさき){大紫}の&ruby(おまえ){御前} (CV:[[田中敦子]]) 金烏代陛下の正妻であり、皇后陛下。 もともとは南家の出で、前回の登殿の折に当時の若宮である金烏と子を為して入内した。 本来ならばその子が日嗣の御子となるはずであったが、側室との間に産まれた子が真の金烏であったためにそちらが正当な後継者である若宮となってしまった。 建前上は若宮を尊重しているが、彼を亡き者として自らの子を金烏とする企てを持つとされる。 ***&ruby(わかみや){若宮} (CV:[[入野自由]]) 真の金烏であり、次代の金烏陛下。 本邸から出て暮らしていた彼が戻ってくることが、この物語の発端となっている。 通常であれば、若宮は折々の催しで桜花宮を訪れて自らの后候補を選ぶのだが、今回に限っては春先に桜を見るために近くを通って以来、所用があると欠席を繰り返す。 幼い頃に、「すみ」という名の親友に連れ出された先であせびと出会っており、彼女の美しさに目を奪われた。 #region 最終章でようやく桜花宮に姿を現し、ついに妻となる姫を指名。 そしてその姫を選ぶに至るまでのやり取り等で、四家の姫や周囲の人々とそれぞれ対話を行うとき、&bold(){この物語に隠されていた姿が明らかとなる}。 #endregion ***&ruby(すみお){澄尾} (CV:竹内栄治) 山内衆&footnote(宗家の近衛であり、御所全体の警護を行う。)の一員である精悍な青年。 山烏の生まれながら、才能があったために若宮の側近まで上り詰めた人物。 若宮とは幼なじみで親友といってもいい間柄であり、彼をこっそりと屋敷から連れ出して遊びに行くこともざらにあった。 *コミカライズ コミカライズ版が、講談社のイブニング誌にて連載され、全4巻が発売されている。 作画は松崎夏未。 概ね原作に沿って描かれているが、一部省略されている部分もある。 一方で、原作では明記されていなかった&footnote(推測は可能。)内容が描かれているところもあり、両方をあわせて読むことを推奨。 時代がかった少女漫画風の絵柄ではあるが、表現力そのものは洗練されており、作風ともマッチしている。 特にクライマックスにおける、ある人物のその性質が明らかになるシーンは、漫画ならではの表現が映えた名シーン。 講談社系の漫画アプリであるコミックDAYSとマガポケに収録されており、どちらも時間経過の無料チケットでラスト数話を除いて読むことができるので、気になったWiki篭りは是非読んでいただきたい。 追記・修正は桜の君に選ばれてからお願いします。 #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,2) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - おっとりした世間知らずだが恋を秘めたヒロインの東、男勝りな麗人の南、ザ・ライバル令嬢な西と、概要だけ読むとテンプレ的な後宮物語に見えるんだよな…しかしこのシリーズは全体を通して「終盤における視点のちゃぶ台返し」を持ち味としているので読みたくなった人はくれぐれも注意を。 -- 名無しさん (2021-10-24 19:44:40) - 白珠が壊れてきたあたりからどんどん引き込まれていった -- 名無しさん (2021-10-25 00:57:14) #comment(striction) #areaedit(end) }
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時代がかった少女漫画風の絵柄ではあるが、表現力そのものは洗練されており、作風ともマッチしている。 特にクライマックスにおける、ある人物のその性質が明らかになるシーンは、漫画ならではの表現が映えた名シーン。 講談社系の漫画アプリであるコミックDAYSとマガポケに収録されており、どちらも時間経過の無料チケットでラスト数話を除いて読むことができるので、気になったWiki篭りは是非読んでいただきたい。 追記・修正は桜の君に選ばれてからお願いします。 #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,2) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - おっとりした世間知らずだが恋を秘めたヒロインの東、男勝りな麗人の南、ザ・ライバル令嬢な西と、概要だけ読むとテンプレ的な後宮物語に見えるんだよな…しかしこのシリーズは全体を通して「終盤における視点のちゃぶ台返し」を持ち味としているので読みたくなった人はくれぐれも注意を。 -- 名無しさん (2021-10-24 19:44:40) - 白珠が壊れてきたあたりからどんどん引き込まれていった -- 名無しさん (2021-10-25 00:57:14) #comment(striction) #areaedit(end) }

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