ネコ(星新一)

登録日:2016/10/08 (土) 21:45:29
更新日:2019/08/04 Sun 08:53:58
所要時間:約 5 分で読めます







あたしたちの、ドレイの役をする生物よ。




【概要】



「ネコ」とは、星新一による短編小説である。
『きまぐれロボット(角川文庫)』などにSSとして収録されている。

ペットを家族として飼っていても、ペットから見た飼い主が必ずしもそう思われているとは限らない……?


【あらすじ】



林の奥で暮らすエス氏は、猫をとても寵愛していた。

猫と日々を過ごすある日、自宅の外に何者かがやってくる。
外にそれを確認しに出るエス氏だが、その来訪者の姿を見た瞬間に気を失って倒れてしまった。
来訪者の正体は、常識を超えた奇妙な姿を持つ宇宙人・カード星人なる存在だったのだ。

そんな一大事のなか、退屈そうな鳴き声を出す飼い猫を見たカード星人は、猫とテレパシーで会話を交わすが……。


【主な登場人物】



エス氏

星新一作品恒例の名前の人で、本作の主役の猫をペットにしている男性。

郊外の林の奥の家に一人で住んでいる…正確に言えば、猫と一緒に住んでいる。
一緒に暮らしているペットの猫を心から可愛がり、何より大切にしている。

かなりの愛猫家で、猫についての本を買い漁り、何度も読み返して内容を全て暗記している。
猫の好きな食べ物についても研究していて、それを元に毎日食事を自作して猫に食べさせる力の入れっぷり。
ちょっとでも猫が体調を崩すと医者をすぐに呼び、人がテレビを見る時間を猫を撫でるのに費やしている。

そんなエス氏はある夜、猫と遊んでいたところに玄関を叩く音に気が付く。
そしてドアを開けて外を見るが、そこには手ではない薄茶色の細長い物を目撃する。

いたずらかと思いながら相手を見たところ、その姿を見て気絶する。


ネコ

エス氏と一緒に暮らしている猫。

高価で毛並みの良い容姿を持ち、飼い主であるエス氏からは特に可愛がられている。
エス氏に手作りの餌を毎日与えられたり、少し体調が悪いと医者を呼ばれるという手厚い待遇を受けている。

ガード星人が気絶した飼い主を他所に自宅に侵入したにも関わらず、退屈そうな様子を見せていた。
ガード星人のテレパシー能力の際の会話から察するに、如何やら雌猫の可能性が濃厚。

星人と会話が可能だと知った猫は、早速会話を交わしていくが……。


カード星人

星新一お得意の宇宙人で、エス氏の家に来襲してきた(以下「星人」呼称で統一する)。

人間と同じくらいの体のサイズだが、容姿はトランプのシンボルが融合したような形を持つ。
前から見ると『クラブ』、横から見ると『スペード』、上から見ると『ハート』の形に近いらしい。
一本足で飛び跳ねているが、足跡はダイヤの形かもしれないとのこと。
ドアをノックした薄茶色の細長い物は体の一部である腕であり、頭のてっぺんから生えている。

星人の自分語りによると、大抵の星の住民は自分の容姿を見て喚いたり逃げたりする模様。
どうやら気持ち悪いと感じているのは地球人だけではないという、読者に微妙な安心感を覚えさせる。
そんな体験を重ねているためか、自分を見ても逃げない猫の姿勢には感心していた。

さらに特殊な能力として、異星のどんな生物ともテレパシーで話し合える力を持つ。
星人の説明から察するに、どうやらカード星ではこの能力は学校で習って取得しているようだ。

エス氏の家に訪問したこのカード星人は、故郷の星から調査員としてやってきた。
星人曰く、数々の星を巡って、その星が平和か否かを判別して記録する仕事を行っているとのこと。
どこぞの星の人々もしてそうな仕事であり、実際ウルトラシリーズに出てきても違和感はない設定である。

邪悪な思想の持ち主ではなく、作中でも敬語を使う丁重な態度で猫に接していた。
ただし、描写から推測するに奴隷などの存在にも特に否定的ではない。

嘘発見器や小型の宇宙船など、技術的にも地球人や猫よりも高度な文明を築いているようだ。


【ストーリーの結末(ネタバレ注意!)】







ガード星人は猫に自身の目的を語りかけるが、自分を見て落ち着いているネコを見て敬服する。

彼の問いに対して、ネコ曰く「いちいち驚くようでは支配者としての地位は保てない」と返しだした。
その台詞から、ガード星人は猫が地球を支配している種族なのだと思い込む。
星人は倒れている二本足の飼い主(人間)が支配者だと推察していたため、その事を謝罪する。
では、この倒れている二本足の生物は何かと長い腕を気絶した飼い主に向けてネコに質問した。

するとネコは、あっさりとその質問に答えを出した。

飼い主の事を「自分を人間と呼んでいて、自分たちの世話をする奴隷」だと回答する。
真面目によく働いてくれると褒め(?)、その働き具合を聞く星人。

その問いかけに対して、全部話すのは面倒だと言いながら、まず家を例に出す。
この家は自分の為に作ってくれたとネコは解釈したらしい。
それから人間は牛という動物を飼い、乳を搾って毎日自分たちに持ってきてくれると話した。

人間のその働きぶりを聞いて、利口な生物じゃないかと感心する星人。
しかし、奴隷の地位に不満を持って反逆するのではないのかと疑問を持つ。
その疑問に対しても、ネコは「そこまで知恵のある生物じゃない」と言い返した。

星人はネコの話を聞いて感心し続けていたが、変な形の装置を取り出した。
ネコに対して、失礼な話だが正確な調査の為に嘘発見器を使わせてもらいたいと頼みだす。
ネコは「どうぞ、ご自由に」と了承したが、その姿は面倒そうだった。

星人は器械の一部をネコの頭の上に乗せ、いくつかの質問を開始した。
そして、今までのネコの語りが本当かどうかを確かめた。
また、平和的な心の持ち主かどうかを特に念を入れて調査した。

すると、星人は「恐れ入りました」とネコに畏敬の念を表す。
このように平和的な種族が支配する星は今まで見たことがないと感心の意を伝える。
どうぞいつまでも支配し続けるようにと、祈りを見せた。

その星人の一連の言葉を聞いて、「そのつもりよ」とネコは答える。
ネコと別れた星人は、不格好な動きで飛び跳ねながら家のドアから出ていった。
それから、林の中に置いていた小型の宇宙船に乗り込んで夜の空に消えた。


しばらくして、エス氏は気を取り戻した。

ごわごわ辺りを見回しながら、ネコに話しかけ始める。

なにも見なかったかい。みょうな形をしたやつが、いたような気がしたが

ネコはいつものように「にゃあ」と鳴いた。
その様子を見て、エス氏は頷きながら「見なかったんだな」と解釈する。
薄茶色で、クラブの形をした生物などいるわけないと、錯覚だったのだろうと自問自答する。
自身の自問自答に対して、ネコにも同意を求めながら、再びネコの背中を撫で始めた。

猫は何事もなかったように、また「にゃあ」と鳴くだけだった。








追記・修正は、ペットに奴隷扱いされてからお願いします。

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