大回転(パタリロ!)

登録日:2018/01/31 Wed 15:53:08
更新日:2018/03/31 Sat 20:06:48
所要時間:約 8 分で読めます




「大回転」とは、パタリロ!のエピソードの一つ。単行本51巻に収録。
中期らしい破天荒なギャグと作者の落語知識、それにSF要素がミックスされた盛りだくさんのエピソードとなっている。
骨子となっているのは落語「持参金」と「回向(野ざらし)」。これらの落語を知っているとより笑えることだろう。

あらすじ

ある日突然G国の大使がパタリロの元を訪れて言った。
「500万ドルを返していただきたい」
その要求にギョッとするパタリロ。もちろんG国大使の要求は別に不合理なものでもなんでもなく、こんな裏事情があった。

ストーリー開始の1年前、世界王様会議でパタリロはG国の国王と会っていた。
互いに独裁政権を敷いている国王同士、和気藹々と物騒な会話を交わす二人だが、その時突然パタリロがこんな提案をする。
「マリネラにG国大使館を作りませんか?」
マリネラほどではないが、G国でもダイヤモンドが採掘されるので、大使館があれば互いに便利だろう、という提案だった。
特に拒否するほどでもなかったG国国王はこれを快諾。かくしてマリネラにG国大使館ができたのだった。

…さて、もちろんパタリロはただ交流のために大使館を建てたわけではない。その目的はお金儲けである。
パタリロは早速赴任してきたG国大使にこう要求する。
「保証金500万ドルを預けていただきたい」
これはG国の人間がマリネラ国内で問題を起こした時にその保証に当てるための費用であり、基本的には形だけのものであった。
パタリロも「形だけなので1年経ったら返すから」と言い、G国大使も不思議に思いながらもあっさりと500万ドルを預ける。
そして、この500万ドルこそがパタリロの狙いだった。
1年経ったら返さなければいけないが、その1年の間に10%年利の定期預金をしておけば、何もせずに50万ドルが手に入る、という計算だったのだ!(どうでもいいが、年利10%と言うあたりにパブルの価値観が出ている)

……で、ようやく時間は本編に戻る。要は赴任から1年経ったので約束通り500万ドルを返してもらいたい、というのがG国大使の要求であったのだ。
大使が後日受け取りに来ると帰った後、なぜか困惑するパタリロ。「返せばいいでしょう」と言うタマネギに対し、パタリロはなんと 「使っちゃった」 と言う。
実はマリネラ周辺の海底でパタリロが「ダイヤモンドが出そうな気がする」と言って採掘作業を行おうとしたのだが、タマネギからも猛反対されて議会からも予算が下りるわけがなかったので、保証金を使って採掘してしまったのだ。
当たり前だが、勘なんぞで掘れるわけもなく、海底鉱山からはダイヤの「ダ」の字も出なかった。
ダイヤが出たらその売り上げで保証金を補おうと考えていたパタリロは、頭を抱えて悩む。

と、そこに全身を布に包んだ怪しげな人物が登場。パタリロはその人物を見た途端、急にタマネギたちを下がらせる。
怪しい人物はパタリロと二人きりになるとその正体を現す。彼はパタリロの悪口を言った人間を探ったり、お金儲けの話を集めたりするタマネギの精鋭部隊「影タマ」の一員だったのだ!
いつも通りのパタリロのおちょくりにイライラしながらも影タマが持ち込んで来たのはお金儲けの話。
なんととある国が核廃棄物をこっそり処理してくれるところを探しているらしい(その国では今まで核廃棄物は地面に適当に埋めていたが、国連の査察が入りそうなので慌てているらしい)。
流石に核処理の技術はないので渋るパタリロだったが(しかし、マリネラにも原子力発電所はあるはずだが…)、報酬が「500万ドル」と聞いて途端に飛びつく。

「引き受けたはいいが、どうやって処理するのか?」と疑問に思うタマネギたちだったが、パタリロは 「鉛の箱に納めて海底鉱山の中に埋めてしまえばいい」 と簡単に言う。
ちなみに「200年ぐらいすると箱が劣化して放射性廃棄物が漏れるかもしれない」とのこと…。

さて、とりあえず運ばれてきた核廃棄物は倉庫の中にしまっておいて、海底鉱山の視察に向かうパタリロとタマネギ(こういうところで自分から動く辺り地味にいい上司である)。
ひとまず用事は済んだのだが、そこでパタリロ達は海底の岩陰に落ちているあるものに気付く。
それはなんと しゃれこうべ
珍しく仏心を出したパタリロは、そのしゃれこうべを拾って地上に戻り、簡素ではあるが供養してやることにした。

で、その夜。
惰眠を貪るパタリロをそっと起こす半透明の女性。それは昼間のしゃれこうべ(の幽霊)だった!
彼女は昔ある船に乗って航海していたのだが、その船が沈没してしまい、骨は長く海底に残されていた。しかし、パタリロのおかげで成仏することができた、何かお礼をしたいと言う彼女。
少し考えた後、パタリロは彼女の乗っていた船の沈んだ場所を尋ねる。

その場所に行ってみると、財宝というほどではないが、多少の銀食器などの高価なものをサルベージでき、そこそこの儲けになった。

それに何を思ったかパタリロ、核廃棄物の処理は後回しにしてタマネギたちにこう命じる。
「とにかく海底を探って野ざらしの骨を集めるのだ!」
疑問に思いながらもそれに従うタマネギたち。すると出るわ出るわ、山積みになるほどたくさんのお骨が引き上げられた。中にはどう見ても人間のものとは思えない奇妙なものまで…。
そしてその大量の骨をまとめて合同葬儀にかけるパタリロたち(ちなみに仏式)。

するとパタリロの目論見通り、その夜供養に感謝した骨の主たちが大挙してやってきた。
京都で心中した若夫婦(なんでマリネラまで流れてきたんだ…)、永遠の少年に突き落とされてワニに食われた海賊船の船長などに交じってあの奇妙な骨の主もいた。
なんとあの骨の生前の姿は 宇宙人 (仏式で大丈夫なのか!?)。この星に生態調査にやって来たが、動物に食われて命を落としたらしい。

宇宙人の弁によると、彼の乗って来た宇宙船はきっとマリネラのどこかに埋まっているはずとのこと。宇宙人の技術が手に入れば大儲けだと思ったパタリロは、宇宙船を探してやることにする。
様々な情報を駆使して たった2コマ で掘り当てられた宇宙船の葬儀台に彼はお骨を移してほしいと頼む。
その頼みに従うと突然激しい電流が走り、宇宙人は生身の肉体を取り戻した! 実はこれは葬儀台でもなんでもなくその正体は蘇生装置。一人で来たために使用できなかったが、地球人を騙して使用することに成功したのだった!(宇宙人の本星も、ちゃんと同行者つけてやれよ…)
そして生態調査というのは嘘で、その真の目的は 侵略のための下調べ 。地球が豊かな惑星であると判断した彼は、ワープドライブですぐに本星に戻り侵略部隊を連れてくると宣言する。

この突然の事態に混乱するパタリロだが、急にタマネギたちに指示を飛ばす。
「倉庫の中の荷物を守れ!」
突然の命令だったが、それに応じて倉庫を守ろうとするタマネギたち。だが、宇宙船のパワーには敵わず倉庫の中の荷物( 放射性廃棄物 )は宇宙人に奪われてしまう。
なんだかよくわからないが、地球人が必死で守ろうとしていたということは大事なものなのだろうと判断して奪って行った宇宙人だったが…

「3、2、1……」


ピカッ


パタリロ曰く、
「ワープドライブというのは超光速で次元の壁を破る技術だ。そんなところに不安定な放射性物質なんて積んで行ったら大爆発するのは当たり前だ」
……宝物だと思って持って行った大荷物が突然爆発して、あっという間に宇宙の藻屑になった宇宙人は泣いていい。

かくして何がなんだかわからないうちにパタリロの悪知恵によって地球の危機(と未来のマリネラ国民の健康)は救われたのだった。

さて、懸念だった核廃棄物も無事処理でき、ご機嫌なパタリロは影タマが依頼人を連れてくるのを待つ。
影タマに連れられてやって来た依頼人は……なんと G国大使

G国大使は500万ドルをパタリロから受け取ってそれを影タマに支払うつもりだったらしい。
そして影タマはもちろん500万ドルを大使から受け取ったらそれをパタリロに渡す。
影タマからもらう500万ドルを当てにしていたパタリロはそれを大使に渡すつもりだったわけで…。

「金は天下の回り物どころじゃない
 これじゃあ金は天下の大回転だー!」

チャンチャン

余談

  • 本エピソードが収録されている文庫版31巻には感動系エピソードの傑作遥かなる旅路も収録されているので、オススメ。 

  • パタリロはG国だけでなく他の国も集めて大使館を建造しようと計画していたが、結局それがどうなったのかは不明。
    • ちなみにG国大使館のデザインはなぜか スーパーマリオブラザーズのゴールに激似

  • サラッと流されているが、G国は相当ヤバイ国である。国王が独裁政権を敷いて国民を弾圧していたり、核廃棄物を雑に処理していたり…。

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