忍法・ハナちょうちん!(世界忍者戦ジライヤ)

登録日:2019/11/13 Wed 01:11:4
更新日:2020/04/30 Thu 13:41:50
所要時間:約 5 分で読めます





ある日、山地家を訪れた変なおじいちゃん
頻発する事件の陰に隠された忌まわしい過去とは?
忍びの世界を引退した師匠と、心を捨てケダモノになった弟子とが、死を覚悟した最後の戦いに臨んでゆく。

世界忍者戦ジライヤ!

忍法・ハナちょうちん!

みんな、見るでヤンス!


本話は『世界忍者戦ジライヤ』の第30話(脚本:扇澤延男、監督:辻理)。
1988年8月14日。


【概要】

本エピソードでは、戸隠流第三十四代宗家・山地哲山の知人とその弟子がゲストキャラとして登場している。
なお、ユニークなサブタイトルとは裏腹に内容がシリアスである。



【あらすじ】

国の重要施設が何者かに次々と爆破されるという事件が起きた。
現場を訪れていた山地闘破と弟の学が現場に落ちていた珍しい黒の茨を発見。すると突然、謎の老人が現れて黒い茨を見るなり、「黒い茨…やっぱり奴が」と意味深な言葉を口にしていた。
その様子を不審に思いつつもその場を後にした闘破と学がブラックセイバーに乗り込んだ瞬間、いつの間にか老人が後部座席に座っており、驚いた闘破達に「哲山のところへと連れてってくれ」と頼んだ。
師の名を知っている老人に頼まれた闘破達は、哲山のいる「戸隠流忍法 武神館」へと帰宅。

老人の正体は哲山の知り合いであり、忍びの世界の長老と評される老忍者・越村玄斎であった。
そして、各地で発生した謎の連続爆破事件の犯人は愛弟子の “黒い茨”であり、現場に残っていた茨は彼の所持品であった。
かつて玄斎と修行していた黒い茨は闘破のような曇りの無い若者であったが、母親である藤山清子の死をキッカケに邪忍となってしまった。

黒い茨「お袋は死んだんだ…病院にかかる金が無かったばかりに。
それでわかったんですよ。貴方の教えなんかただのお題目だと。…世の中全て金なんだ!」
玄斎「黒い茨、それは違う!」
黒い茨「俺は決めたんだ。身に付けた忍びの技で金をつかみ幸せになるってね。」

貧しさ故に家族を失った事から金に対する執着心を抱くようになり、4年前に自身を説得しようとした玄斎に対し、強盗で手に入れたであろう札束を見せびらかしていた。

黒い茨「誰が泣こうと構わない。この俺だけが笑えばいいんだ!」
玄斎「罪を償うんだ。そして昔のお前に戻ってくれ…!」
黒い茨「邪魔する奴は師匠でも斬る!」

心を捨てて闇に堕ちた弟子に何を言っても無駄と悟った玄斎は始末をつけるために黒い茨を斬って滝の底に落とした。
その時は黒い茨が死んだと思い込んでいたが、実は玄斎の無意識に僅かな情で切っ先を鈍らせた事によって黒い茨は一命を取り留めており、以後玄斎への復讐を兼ねてテロ活動を行なっていたのであった。
玄斎の推測によれば政府に対する脅迫も目論んでいるらしく、爆破事件の犯人を知った闘破達は怒りを露わにし、黒い茨から玄斎を守る事を申し出た。
だが、カラス天狗達がその会話を盗み聞きしており、黒い茨の情報を手に入れた妖魔一族は漁夫の利を得る形で手柄を横取りしようと画策。

その頃、山地家で居候している玄斎はケイ達とトランプで遊んだり鼻ちょうちんを出しながら昼寝したりとのんびり過ごしていたが、ほどなく黒い茨がTV局に犯行予告のビデオを送りつけたというニュースが流れた。
ビデオに映っていた黒い茨は「東京の水がめである村山貯水池に『絶対に浄化できない毒薬』を流す」と脅迫し、計画中止の交換条件として政府に20億円を要求していた。
さっきまでくつろいでいた玄斎が前述のニュースを観た途端に真面目な態度になり、黒い茨が映っている洞窟がかつての修行場所だと見抜いて闘破を連れてその場所へと向かった。
目的地に到着した闘破と玄斎はちょうどそこで待ち構えていた黒い茨と対峙。

黒い茨「老いるとは醜いことだな」
玄斎「ケモノのごとき目になりおって…!」
黒い茨「地獄を見せてもらったからな。4年前に…!」
闘破「黒い茨…! 己の欲のため平和を乱す所業、許せん!」

忍びを悪用する行為を糾弾してきた闘破を「もう1人の時代遅れ」と一蹴。ジライヤに変身した闘破と戦闘を繰り広げたところを妖魔一族が20億円を横取りしようと乱入。
闘破と黒い茨はやむなく一騎打ちを中断して妖魔一族と戦い、襲いかかるカラス天狗達を次々と倒して撤退させた。

水が入った。今度こそ4年前の仇を取る。…ジライヤ、貴様の命もな!

興醒めした黒い茨も妖魔一族に続いて撤退。ちなみに玄斎も妖魔一族の奇襲を受けたが、得意技である「やられたフリ」でやり過ごしていた。
武神館に戻った闘破は玄斎のボディガードをしながら一晩過ごした。翌朝、ケイと学が玄斎のためにご馳走を作ると約束して学校へと行った。
闘破達が外出した後、朝食を食べていた玄斎に対して哲山が「玄斎殿、ここで一緒に暮らしませんか?」と話しかけた。
当の玄斎は唐突だと苦笑しながら哲山の提案を保留した。だが、既に「独りで生まれ、独りで死ぬのが忍びの定め」と心に決めていた玄斎は山地家の優しさに感謝しつつも、弟子の不始末にケリを着けるために置き手紙を残して姿を消してしまった。

哲山が目にした手紙には玄斎の想いが綴られていた。
闘破が命をかけて自分を守ってくれた事、ケイと学が遊び相手になってくれた事、哲山の一言で思わず心の中で激しく泣いた事。
そして最後に「その涙の温もりが消えぬうちに最期の仕事をやり遂げるつもりだ」という一文で締め括られていた。
単身で黒い茨のところへ向かった玄斎は「お前1人のせいとは言わぬ。ワシが育て損なったのだ」と懺悔の言葉を口にして自らの命を投げうってでも始末する事を決意。
一方、帰宅した闘破達は玄斎を止めなかった哲山を責めていたが、忍びと人情との間で葛藤していた玄斎の想いを理解していた哲山には止める事ができなかったのである。それでも闘破達は…

闘破「親父!」
学「でも、おじいちゃんはおじいちゃんなんだ」
ケイ「そうよ、忍びだから好きになったわけじゃない」

玄斎を本当の家族のように接していた闘破達の熱意が伝わった哲山は「そうだな」と聞き入れた。
闘破達3人はブラックセイバーに乗り込んで玄斎のいる場所へと急行したが、到着した頃には時既に遅く玄斎は黒い茨の手にかかって力尽きていた。

闘破「社会を不安に巻き込み、恩師までも手にかける黒い茨… 許せん!」
学「おじいちゃんをよくも!」
ケイ「必ず倒す!」

堕ちるところまで堕ちた黒い茨に怒りが爆発した3人は変身して戦闘開始。
茨でがんじがらめにされながらも力を合わせて黒い茨を徐々に追い詰め、最後は「磁光真空剣・真っ向両断」で撃破した。

俺の…夢が…! 俺の…明日が!!

道を誤って外道に成り下がった黒い茨は最期まで欲望への執着を叫びながら、その咎に相応しい地獄へと消えていった。
黒い茨を倒した闘破達は倒れている玄斎の元へと駆けつけると…

大丈夫だよ、やられたフリはワシの得意技…

玄斎に意識があった事に安堵した闘破達は黒い茨を倒した事を報告した。だが…

そうか…奴もやっと眠りについたか。ありがとう…

闘破達の健闘もむなしく玄斎は致命傷を負って既に助からない状態であり、仇を取ってくれた3人に感謝した直後に黒い茨の後を追うかのごとく息を引き取った。
玄斎の死を看取った闘破達はその場で慟哭。息絶えた玄斎の手からはトランプのジョーカーが落ちていた。
その後、闘破達は橋の上で玄斎の墓標となった渓谷を見つめており、玄斎が落としたトランプを拾った学はそれをちぎって散骨するように渓谷に撒き、悲しみを堪えきれずに泣き崩れてケイに抱きしめられる。
そして、師弟揃って哀れな最期を遂げた結末を目の当たりにした山地兄妹がブラックセイバーに乗ってその場を後にしたところで物語の幕を閉じた。


老忍者・越村玄斎はこの世を去った。
しかし、闘破達の心からは決して消えることはないであろう
闘破よ、ケイよ、学よ。この悲しみを乗り越え、更に逞しくなるのだ。



【登場人物】

  • 山地闘破/戸隠流正統・磁雷矢
山地家の長男。
忍術を悪事に利用する黒い茨に対しては怒りを露わにしていたが、妖魔一族が乱入したシーンでは(成り行きとはいえ)結果的に黒い茨と共闘しており、劇中で玄斎が語ったように黒い茨も道を誤らなければ闘破の良いライバルになれたのかもしれない。


  • 山地哲山
戸隠流第34代宗家にして闘破達を導く父であり、忍者道場「武神館」を運営する師。
玄斎を尊敬しており、天涯孤独である彼を家族として迎え入れようとした気持ちは本物であった。


  • 山地ケイ/姫忍・恵美破
闘破の妹である女子高生。
中盤では玄斎のために手料理をご馳走しようと学校帰りに買い物をしていたが、その望みが叶う事はなかった。


  • 山地学
山地家の末っ子の小学生。
当初は玄斎を変な老人と思っていたが、一緒に暮らすうちに「おじいちゃん」と呼んで懐くようになり、彼の似顔絵を描いていた。
ちなみに劇中ではケイと一緒に自宅で『超電磁ロボ コン・バトラーV』を観ていた。


  • 邪忍 黒い茨
演:河合宏(現・和興)
玄斎の弟子だった悪の忍者。本名は不明だが苗字は藤山と思われる。
名前通りの黒い茨の鞭を操り、トゲトゲした黒いアーマーを身に纏っている。戦闘時には狼のような仮面を被る。
剣の腕前にも優れ、また煙玉を使いアーマーのスパイクをミサイルのように飛ばすこともできる。
かつては「悪い奴に茨の鞭をくれてやるように」との願いを込めて玄斎に「黒い茨」という発音しづらい名を授けられ、忍法の全てを教え込まれた。
修業時代は真面目で優秀な忍者だったようであるが、母親の死をキッカケに心が歪んでしまい、家族すら守れなかった忍びの教えに失望した末に「この世は金が全て」と考えるようになってしまった。
欲望に目がくらんで力の使い方を間違えた彼は、言うなれば「正義を見失って闇に堕ちた闘破のIFの姿」なのかもしれない。



  • 越村玄斎
演:多々良純
忍びの世界の長老である老忍者。
普段は笑顔を絶やさない温和な好々爺であるが、忍びの腕前は健在で人の虚を突く心理系の術を得意とし、分身の術や変わり身の術もこなす。
武神館で暮らすうちに家族の温かさを知り、「このままずっと一緒に暮らしませんか」という哲山の申し出に戸惑いながらも喜びを隠せなかったが、黒い茨を正しく導けなかった責任を取るために命と引き替えに黒い茨を倒す覚悟を決めていた。
最後の最後まで弟子の心を救えなかったものの、正しき心を持った闘破達に出会えた事が玄斎にとってはせめてもの救いであろう。

かつてはアバロン乗馬クラブのオーナーであり、別の世界では不思議仙人になっていた。
そこで指導した戦士達の中には、学によく似たダイム族ナイトがいたかもしれない。


  • 鬼忍・毒斎
  • 蝶忍・紅牙
  • 星忍・烈牙
妖魔一族の面々。
今回は黒い茨がメインであるせいか、微妙に出番が少なかった。



【余談】

のちのエピソードでは闘破が後輩の忍者達に「忍法とは、心と体を鍛錬し、正義を守るための武芸だ」と諭していた。
黒い茨の件が関係しているかどうかは不明であるが、おそらく数々の邪忍と戦ってきた経験があったからこそ、次世代の忍者達を正しく導こうとしたのだろう。





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