人間花火(Q.E.D. 証明終了)

登録日:2020/01/27 (月曜日) 14:25:36
更新日:2020/01/27 Mon 22:08:51
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闇を殺すには名前を与えてやればいい
そうすれば闇は闇でなくなる


「人間花火」とは、Q.E.D. 証明終了のエピソードの一つ。単行本第28巻に収録。同時収録作は「ファラオの首飾り」。
2011年に作成された項目「ツポビラウスキー症候群」*1の元ネタとなったエピソードである。
以下、ネタバレにご注意ください。



【ストーリー】
燈馬は知人の民俗学者、高柳国雄からある奇妙なスケッチブックを見せられる。
それは女性の死体が徐々に腐敗していき最終的には消えてしまうまでが描かれた絵だった。
その絵を描いた花火師は後に美しい花火を追い求めるあまり人を花火に括りつけて爆殺したらしいのだ。
彼の息子で高柳の知人、奥元大二郎もその絵を見てからおかしくなってしまったかもしれないらしく、
可奈は高柳と共に絵のルーツを辿っていく事になった。
その調査の過程で可奈は「ツポビラウスキー症候群」という病気の存在を知る。




【事件関係者】
闇を恐れる必要はありません
闇を殺すには名前を与えてやればいいのです
  • 高柳国雄(たかやなぎ くにお)
民俗学者。
初江から相談を受け、スケッチブックをきっかけに大次郎に異変が起こってないかを調査する事になった。
念のため大次郎からスケッチブックを預かったものの、彼もまた闇に魅入られていくかのように絵の調査にのめり込んでいく。
特に真夜中の研究室でスケッチブックを見つめている時の顔が怖い。
絵のルーツとなった家を探し出し、当時の隣人を訪ねるために可奈たちと別れ別行動を取る。
助手の柏木が調査を終えて研究室に戻って来た時には入れ違いに車でどこかに行こうとしていた。
しかし「あれは恐ろしい絵だ!!また誰か死ぬかも…」と柏木に何かを伝えようとした瞬間、乗っていた車が爆発炎上を起こし死亡してしまう。

ちなみに冒頭で開催していた市民セミナーでは
「昔の人は闇の中にいるかもしれない妖怪に名前やストーリー等のキャラクター性をつける事で得体のしれない物への恐怖を無くしていた」
と語っていたが、この辺は現代でいう「妖怪のせい」で有名なアレにも通じる所があるだろう。



あんな絵に関わっちゃいけなかったのよ!!
あれは普通じゃない
見る人を闇に引き込むのよ!
  • 柏木千夏(かしわぎ ちなつ)
高柳の助手。
高柳と共に善次郎について調査し、彼と別行動を取っていた時は可奈と図書館で当時の新聞を調べて安西医院へと取材に行った。
その一方で絵の素性を調べるのにのめり込み過ぎるあまり高柳もまた闇に飲まれてしまっていないかと心配していた。
しかし研究室に戻って来たところで目の前で恩師を喪ってしまい、「あの絵に関わってはいけなかった」と涙する。



えーっ!!
女房の奴 お前の大学まで行ったの?
あいつの心配性にも困ったもんだ
  • 奥元大二郎(おくもと だいじろう)
花火職人。初江の夫で高柳とも親しい。
幼少時に父親の暴力が原因で両親が離婚し奥元姓となったが、後継ぎがいなかった父の頼みで奥元姓を名乗ることを条件に彼の花火工場を継いだ。

妻の初江によればスケッチブックを見た時に様子がおかしかったらしく「気味が悪い」と言った彼女に対して静かに「 殺すぞ 」と言い、
怖がって絵を取り上げようとしたら怒り出した事もあったらしい。回想中でのその時の顔が怖い。
ただ彼によれば最近スランプ続きであまり夫婦でも会話が無かったからうっかりそんな事を言ったのではないかとの事らしい。
スケッチブックを預かると言った高柳にも反対するかと思いきやあっさりOKを出すなど絵に対しても特に執着している様子はなかった。
絵の素性を調べたい高柳のために善次郎の日記を見せ、更に生家を調べたいという頼みに応じて父の生家の住所も教えてくれた。
可奈が柏木と再度来た時には次の作品の方向性が見えてきたのか気持ちも落ち着いたようで、夫婦仲良く家庭菜園に精を出していた。



夫はその絵を見つけ毎日眺めてました
でも様子がおかしくて…
  • 奥元初江(おくもと はつえ)
大次郎の妻で高柳の高校時代の友人。
過去に人を殺した事がある善次郎の描いた絵を見たせいで夫の人格が変わってしまわないかと心配して高柳に相談した。
しかし大次郎の回想にて、父の形見の絵にもかかわらず「そんなもの燃やして!!」とヒステリックに叫ぶ時の顔が怖い。
その後は彼女の心配と裏腹に夫が無事にスランプから抜け出せた事もあり、後日やって来た可奈たちには「もう大丈夫だと高柳に伝えてくれ」と言っていた。



  • 五色善次郎(ごしき ぜんじろう)
故人。大次郎の父で元花火職人。
名人級の花火を創り上げていた事で有名だったが、仕事に行き詰った末に納品の催促に来た業者を捕らえ、巨大な花火玉に括りつけて多数の野次馬が集まる中で公開爆殺した。
その後逮捕されたものの拘置所内で自殺を図り、安西医院に担ぎ込まれたが死亡する。

少年時代の彼の日記によると、身近に病気の人がいながら病院に連れて行けないほどの極貧生活だったらしい。
その少年時代を通じて「 人のすぐ側には死があり、人は死と背中合わせに生きている。だから世界は美しく見えるのだ。 」という独特の感性になった事が窺える。
4月半ばの記述では隣の家の2階の部屋に死体が見えたようで、その写真を撮り死体の絵を描き続けて命を踏み越える力を得られれば
自分も美しい花火を創り出せるかもしれないという考えに至ったようだ。



ツポビラウスキー症候群とはな
闇を封じ地獄に落とすまじないだ
  • 安西東悟(あんさい とうご)
元医師であり、安西医院の元院長。
現在は引退して娘婿(彼曰く「顔はマズくブサイクだが、腕は良く責任感がある奴」)に任せている。
元々善次郎とは顔見知りだったようで、彼が独特の美意識を手に入れるために死体をスケッチしたという話も知っていたらしい。

拘置所で自殺を図って担ぎ込まれた善次郎に「お前はツポビラウスキー症候群だ」と診断したらしい。
しかしどういうつもりでそんな事を言ったかは語らず、代わりに可奈たちには善次郎が犯した公開爆殺の詳細を語る。
その話を終えた時の、逆光で影になった顔が怖い。



あの家の2階はオレの仕事場だった
通夜だってやったこたァねェよ!!
  • 斉藤修二(さいとう しゅうじ)
元表具屋。
かつて善次郎の生家の隣に住んでいたが、現在は引っ越して違う家に住んでいる。
日記を見る限り善次郎は当時の斉藤の家の2階に死体が見えたそうだが、
彼の家の2階はふすまを作るための仕事場で、死体の放置どころか通夜をやった事すらなかったらしい。
しかし現役時代、日が暮れた夕方頃に隣の家の少年が自宅の2階からこちらの家の2階をカメラで撮っている所を見た事はあったらしい。

高柳にも同じ事を話したそうなのだが彼は斉藤と話している間中、
穴が開くほどに顔を見つめてきたかと思うと血相を変えて帰ってしまったらしい。




ツポビラウスキー症候群?
僕も初めて聞きました
あんたが知らないとなるとこの世にないのかな?
そこまで極端にとられても困るんですけど…
  • 燈馬想
この漫画の主人公兼ホームズ役。高柳とはHPを通じて知り合ったらしい。
彼から絵について意見を求められた時には「自分は絵から影響を受けてないのだから絵に原因を探すより影響を受けた本人を調べるべき」と提言する。
しかし絵に対して興味を抱く素振りはなく、むしろあまり深入りしない方が良いと可奈に忠告する。
今回の話には怖いシーンが多数あるが、ぶっちゃけ 知り合いが死んでも眉一つ動かさず、真犯人が計画を完遂しそうだと気づいていながら一切慌てず、それどころか可奈にクイズ感覚で呑気にヒントを出しているコイツが一番怖いような気がしないでもない。


  • 水原可奈
この漫画のヒロイン兼ワトソン役。
彼女もまたスケッチブックの絵が気になった事もあり高柳、柏木と共に善次郎について調査をする。



【キーワード】
  • スケッチブック
善次郎が少年時代に描いたという、女性の死体が腐敗していき終いには消えてしまう様が描かれた絵。
燈馬は最初に見せられた時に、九相詩絵巻*2に例えた。
初江曰く、大次郎はこれを見ていた時様子がおかしかったらしい。
しかし高柳が預かると言った時には反対するかと思いきや意外にあっさりと渡してくれた。
高柳の爆死後、警察により遺留品として回収される。



  • 写真
善次郎の日記に挟み込まれていた写真。
布団に横になり顔に布をかけられた女性の死体が写っている。
布団の柄が同じためこの女性は絵の死体と同一人物と思われる。



  • ツポビラウスキー症候群
善次郎は拘置所で自殺を図り安西医院に搬送されたのち、安西から「お前はツポビラウスキー症候群だ」と診断されたらしい。
燈馬すらも聞いた事がなかった上に、インターネット検索にすら引っかからなかった。
それもそのはず。安西本人によればそもそもそんな病気は存在しないのだそうで、彼はそれを「 闇を封じ地獄に落とすまじない 」とだけ語った。












以上……証明終了です。


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