赤か、青か(古畑任三郎)

登録日:2020/05/29 (金) 07:26:38
更新日:2020/06/30 Tue 00:05:24
所要時間:約 13 分で読めます





缶ジュースの自動販売機、
どうしても欲しいものが2つあったとします。

ホットコーヒーと烏龍茶、
どっちを飲もうかって迷ってしまう時ってありますよね。

そういう時はこうやって2つのボタンを同時に押す。

すると無意識のうちに本当に欲しいほうのボタンを先に押してしまうって言うんですが…
んふふ、まあお試しください。

二者択一と言えば…


『赤か、青か』とは『古畑任三郎』のエピソードの1つである。
第2シーズン第4話。初回放送は1996年1月31日に放送。
映画『ジャガーノート』をベースとしたサスペンスもので、時限爆弾の解除に重点を置いているため他のエピソードと比べると謎解きの要素は少なめである。
今回の犯人は極めて身勝手な動機で事件を起こしているため、ラストで古畑はシリーズでただ一度の行動に出ている。


※以下ネタバレが含まれますのでご注意ください。


ストーリー

天神大学電子工学部の大学助手・林功夫は、深夜に近くの遊園地・エキサイトパークに侵入。
警備員に見つからずに観覧車に辿り着くと、ゴンドラの座席に時限爆弾を設置して立ち去った。
だがその後で自転車の鍵を紛失した事に気づき、心当たりを探し回るも鍵は見つけられなかった。
仕方なくチェーンを切っていると、見回りをしていた警備員・真鍋茂に声をかけられてしまう。
真鍋に顔を見られたうえに自転車の登録番号も控えられてしまったので、林は持っていたマグライトで真鍋を撲殺し逃走した。

翌日、真鍋殺害事件の捜査を担当した古畑は、遺体の状況から殺害される寸前まで自転車の登録番号を見ていたと推理。
その頃、林はエキサイトパークの管理事務所に「正午までに3000万円を用意しなければ観覧車を爆破する」と脅迫電話をかけ、嘘ではない証拠としてチケット売り場を爆破してみせた。

その直後、爆弾が仕掛けられているゴンドラに今泉が乗っている事が判明。
すぐに警視庁から爆弾処理班が到着し、古畑も殺人事件の犯人と爆弾犯は同一人物と考え捜査に協力する事となる。
一方林は爆弾処理の専門家として警察に協力を求められ、現場で古畑と対面するが…。


登場人物


【ゲスト】
  • 林功夫(はやし いさお)
演:木村拓哉
天神大学電子工学部助手。
電子工学を専門としているが、その応用で爆発物に関しても非常に高い知識を持っており、学内では自分以上に高い知識を持つ人間はいないと豪語している。
移動には自転車を使用。止めておく際には必ずチェーンで鍵をかけるようにしている几帳面な性格だが、人間性に難があるようで友達は1人もいないらしい。

時限爆弾を自作し、深夜にエキサイトパークに侵入して観覧車のゴンドラに時限爆弾を仕掛けようとする。
だが持ってきたドライバーでは座席のネジを外せなかったので、自転車の鍵を使ってネジを回し、座席の下に時限爆弾を仕掛けて立ち去った。
その後で自転車の鍵を紛失していた事に気づき、観覧車まで戻って探すもどこにも落ちていなかった。
仕方なくペンチで鍵のチェーンを切っていると、そこに巡回に来た真鍋が現れる。
真鍋に顔を見られ自転車の登録番号も控えられてしまったので、口封じのために彼を懐中電灯で殴って殺害した。

翌日、エキサイトパークの管理事務所に「正午までに現金で3000万円を用意しろ。用意しなければ観覧車を時限爆弾で爆破する」と脅迫電話をかけ、イタズラではない証拠として園内のチケット売り場を爆破する。
その後は研究室に留まり次の脅迫電話をかけようとしていたが、左門からの推薦で事件の捜査協力をする事となり、エキサイトパークで古畑と対面する事となった。

観覧車に仕掛けた爆弾は座席に誰かが座ると起動するような仕組みとなっており、1989年のコロンバス・アベニューのテロで使われた爆弾と同じ構造となっている。
だが完全に解除するには最後に赤と青のコードのどちらかを切らなければならなかった。

今泉の酷い説明だけでつい爆弾の正確な図面を描いてしまい、その直後から古畑にマークされる。
古畑に疑われていると気づき、彼に面と向かって犯人だと断言されると、これ以上捜査協力は出来ないと怒り研究室へ帰った。

  • 真鍋茂(まなべ しげる)
演:金井大
エキサイトパーク警備員。
老眼であり、物を見たり書く時には眼鏡を上に上げている。
深夜の見回りの際に林の姿を見かけ、不審者だと思い声をかける。
最近周辺で自転車の盗難が多いので、念のために林の自転車の登録番号を控える事にする。
だがその直後に林に2度殴られ殺害されてしまった。

  • 暮陸(くれむつ)
演:大谷亮介
警視庁警備部機動隊爆発物処理班班長で階級は警部。
時限爆弾解体のために部下を引き連れてやってくる。
古畑とは署内ボウリング大会の決勝戦で対決した仲。あえなく負けているが彼の独特なフォームは今でもよく覚えている。
非常に怒りっぽい性格であり、今泉が電話で頓珍漢な事を言ったり、こんな状況にも関わらず長電話するなどしたので、その度に激怒して声を張り上げていた。
ちなみに彼を演じる大谷は、『相棒』の三浦信輔役でもおなじみ。

  • 左門(さもん)
爆発物処理のベテランである警視庁の捜査官。
最近起きたブリタニカ号の爆弾事件で耳を負傷し療養中だったので、自分の代わりとして林を推薦する。


【レギュラー陣】

朝に弱いのに早朝から殺人事件の捜査をする事となったので、かなりやる気のない登場の仕方をする。
向島からおみくじクッキーを貰い、見事大吉を引き当てる。ちなみにラッキーカラーは赤。
真鍋の遺体を見てすぐに、彼が死亡する間際まで自転車の登録番号を見ていたと推理する。
その直後に爆弾事件が発生し捜査に協力する事となるが、現場にやってきた林の言動から彼が犯人だと確信しマークする。
爆弾解体まであとひといきという時に林に向かって犯人であると明言。この発言に林は怒って研究室に戻ってしまうが、これは古畑が彼に仕掛けたブービートラップだった。

少し前に巻き込まれた事件がまだ尾を引いているらしく、昨日まで病院にいた。
今日から現場復帰し向島からおみくじクッキーを貰うが、中身は大凶でラッキーカラーも無かった。
その後はなぜか観覧車に乗って遊んでいたが、その直後に自分の乗るゴンドラに爆弾が仕掛けられている事が判明。
爆弾の解体をする羽目となり、暮陸達から指示を貰い半泣きになりながら爆弾を解体していった。
暮陸達に電話で爆弾の構造を話していた時には「赤と青の線が仲良く並んでいる」と頓珍漢な事を言ったり、タイムリミットが迫っていた時にはその事を知らされていなかったとはいえ行きつけのスナックに長電話をしたりして、暮陸を激怒させていた。
長電話のせいで携帯電話の電池がなくなってしまう。

  • 向島音吉
古畑に妻が作ったというサンドウィッチやおみくじクッキーを差し入れする。
この事が後に重要な意味を持つ事に。

  • 芳賀啓二
今泉がまだ以前の事件から立ち直っていないため、古畑のサポートのために捜査に加わる。
自転車のチェーンから犯人を特定するのは難しいと古畑に報告。
だが古畑に林の前で「チェーンからメーカーを特定するのは時間の問題」と言ってほしいと頼まれ、林の前でそのとおり報告するふりをした。


以下、事件の真相。さらなるネタバレにご注意ください























真相


えー今回は緊急事態です。

えー犯人は間違いなく林君ですが、追いつめるだけの証拠もなければ時間もない。

ここは1つ、罠を仕掛けるしか手がありません。
そう、ブービートラップ。

今日はちょっと見ててください。

えー、古畑任三郎でした!


  • 林功夫
研究室に戻るとすぐに自転車の鍵のチェーンを処分しようとする。
だがそこに古畑が暮陸・芳賀・向島を連れてやって来たので、咄嗟にチェーンを隠して彼らを研究室に迎え入れた。
まだタイムリミットまで時間があったはずなのでつい腕時計で時間を確認し、彼らに爆弾はどうなったかを尋ねる。
すると古畑はコーヒーを1杯頂きたいと言った後で無事取り外したと答えた。
その答えについ「嘘だ」と言うが、古畑は「外してなかったらこんなに悠長にしていられない」と返した。
そこで「赤と青のコードのどっちを切ったかを言ってみろよ」と訊くと、古畑は暮陸の指示で青のほうを切ったと答えた。

その際に今泉は男だという事を初めて知る。
林は今泉が持っているものを電話で聞いていた時に「ヘアピンや髪留めは持っていないか」と言っていた。
この事が引っかかっていた古畑は、林は今泉の事を女だと勘違いしていると考え、その理由を推理する。
そして今泉の下にあるゴンドラに女性が乗っていた事を知ると、林は彼女の事を今泉だと誤解していると考えた。

ではなぜ林は今泉を女性だと勘違いしたのか?
昨夜管理人室に電話があり、2号機に財布を忘れたのでどうしても夜のうちに調べてほしいと言われる。
そこで警備員の金井は深夜の2時に観覧車を調べに行き、その際に観覧車を動かしていた。
普段は1号機が真下に降りているが、昨夜は金井が2号機を調べるためにゴンドラをずらし、2号機を真下へと持ってきていた。
そしてゴンドラを調べた後は、2号機を真下へ降ろしたままの状態で持ち場へと戻っていた。
つまり、林が爆弾を仕掛けたのは太陽の絵が描かれていた1号機で、戻ってきて2度目に潜り込んだのは月の絵が描かれていた2号機だったのである。
そのためいくら鍵を探しても見つける事が出来ず、探していた時にゴンドラの月の絵が印象に残り過ぎていたため、月のゴンドラに乗っていた女性を今泉と勘違いする事となってしまった。

古畑はゴンドラから見つけた「あるもの」を鑑識に回せば事件は解決すると断言。
その際に「こんなものを現場に残すなんてあなたも間の抜けた人だ」「長年この仕事をしてますが、犯人としては最低の部類です」と罵ってきたので、ついイラつきながら「もういいよオッサン!」と呟いてから「爆弾はまだ解除されていない」と断言する。
すると、古畑は引っかかったとでも言うかのように「という事は切るのはブルーではない?」と追及してくる。
だがこの事は林も想定済みであり、先程から古畑達の挙動がおかしい事を理由に「起爆装置はまだ解除されてないし、鍵はまだゴンドラの中です」と再度断言した。
全ては古畑達の作戦だと考えてそのまま古畑達を研究室から追い出そうとするが、実は先程の発言で致命的な失言をしてしまっていた。

古畑が「あるもの」について言っていた時に、彼は一言も「鍵」とは言っていなかった。
確かに古畑の手の中にあったのは林の鍵ではなかった。にも関わらず林は「鍵」だと断言したので、古畑からなぜその事を知っているのかと追及される事となる。
その際に「自転車の鍵が少しだけ見えた」と声を荒げて答えるが、古畑が握っていたのはエキサイトパークのマスコット・エキサイトくんのキーホルダーであった。

確かにゴンドラには自転車の鍵が落ちており、それを見つけた今泉は充電の切れかかった最後の電話で古畑達に証言していた。
この事を知るのは警察関係者以外では犯人しかいないので、「自転車の鍵がゴンドラにある」と言った林はとうとう言い逃れが出来なくなってしまった。

ちなみに林が隠した自転車の壊れたチェーンは証拠能力がない代物であった。
古畑はどうしても林を現場から遠ざけたかったので、芳賀に頼んで一芝居打ってもらったのである。

…そう!

これが私のブービートラップというわけです。

古畑が今までわざと下手な芝居をしていたと知ると、「くそっ…」と悔しそうに呟いて椅子に座る。
そこでようやく爆弾がまだ解除されていない事に気づいた。

タイムリミットまであと2分を切っていたので、古畑に赤と青のどちらのコードを切れば解除出来るかを尋ねられる。
するとブルーを切れ」と答えてつい笑みを浮かべるが、古畑はを切るよう指示をする。
指示を聞いた警官は今泉に見えるように赤旗を振り、それを見た今泉は赤いコードを切った。
それにより起爆装置は完全に停止し、間一髪のところで観覧車爆破は阻止されたのだった。

あなたはメカのプロかもしれないが、私は人の心を読むプロです。

あなたが考えている事なんかお見通しです。


  • 林の動機
爆破事件が未遂に終わった後、林は古畑に事件の真の動機について尋ねられる。
古畑はどうしても金目当ての犯行とは考えておらず、3000万円はフェイクだと考えていた。
最後までこの事だけは分からず、林を連行する前にこの事について尋ねる。
すると林は外のエキサイトパークを眺めながら真の動機を語るが、それは非常に身勝手で同情の余地のないものであった。

邪魔なんだよあの観覧車。

あれのおかげで、時計台見えなくなっちゃった。

だから排除を…。

これが動機かな?

この動機を話した林はついクスッと笑うが、古畑はやれやれと言うかのように首を振った後で林にビンタを食らわせた
古畑からビンタを食らった林は茫然となり、呆れている古畑を見つめながら警察へ連行されていった。

  • 古畑任三郎
林の研究室を訪れて林を罠にかける際に、コーヒーを飲もうとして激しく砂糖をこぼしていた。
これも演技だったのかは不明だが、今回も『しゃべりすぎた男』と同じく今泉が危機にさらされていたため、平静を保っているように見えて内心では本気で動揺していた可能性もある。

林の犯行を暴いた後、推理を聞いていた向島に「最高でした!」と声をかけられ、「よくあいつの心を読めましたよね」と感服される。
すると「人の心なんて、簡単に読めるものじゃありません」と答えた。
そして「人間最後に頼れるのは運だけ」と言って、切るコードを赤と断言した根拠として今朝のおみくじクッキーに入っていたおみくじを取り出した。
そこには「ラッキーカラー 赤」と書かれており、それを見た向島は照れくさそうにしながら立ち去っていった。


余談

逮捕された林は『消えた古畑任三郎』にも登場。
古畑にビンタをされた事で彼を今まで「暴力刑事」だと思っていたようだが、彼が本来そのような事をする刑事ではないと知ってとても驚いていた。
だが古畑にビンタをされた事で目が覚めたようで、刑務所では模範囚になっているようである。

林を演じた木村拓哉は、後に『古畑任三郎vsSMAP』で本人役として出演。
『古畑任三郎シリーズ』で2回犯人役を演じた唯一の芸能人という事になった。

ちなみに木村拓哉はバラエティ番組『SMAP×SMAP』内のコント『古畑拓三郎』で主役の古畑拓三郎を演じている。
コントであるが木村が演じる拓三郎は本家古畑と非常によく似ているため一見の価値あり。

脚本の三谷は最後に古畑に林を殴らせたことについて「自分が一度キムタクを殴ってみたかったから」と後にテレビ番組で語ったことがある。

今回のロケ地となった遊園地は、茨城県にある国営ひたち海浜公園。

本作はジャニーズ事務所の所属である木村拓哉が犯人役であるため、肖像権の関係等から再放送は難しくほぼ必ず欠番となる。





追記・修正はブービートラップに気を付けながらお願いします。

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