赤か、青か(古畑任三郎)

登録日:2020/05/29 (金) 07:26:38
更新日:2021/07/26 Mon 22:16:48
所要時間:約 13 分で読めます





缶ジュースの自動販売機、
どうしても欲しいものが2つあったとします。

ホットコーヒーと烏龍茶、
どっちを飲もうかって迷ってしまう時ってありますよね。

そういう時はこうやって2つのボタンを同時に押す。

すると無意識のうちに本当に欲しいほうのボタンを先に押してしまうって言うんですが…
んふふ、まあお試しください。

二者択一と言えば…


『赤か、青か』とは『古畑任三郎』のエピソードの1つである。
第2シーズン第4話。初回放送は1996年1月31日。
映画『ジャガーノート』をベースとしたサスペンスもので、時限爆弾の解除に重点を置いているため、他のエピソードと比べると謎解きの要素は少なめである。
また今回の犯人は極めて身勝手な動機で事件を起こしているため、古畑はラストでシリーズ中ただ一度のとある行動に出ている。


※以下ネタバレが含まれますのでご注意ください。


ストーリー

天神大学電子工学部の大学助手・林功夫は、深夜に近くの遊園地・エキサイトパークに侵入。
警備員に見つからずに観覧車に辿り着くと、ゴンドラの座席に時限爆弾を設置して立ち去った。
だがその後で自転車の鍵を紛失したことに気づき、心当たりを探し回るも鍵は見つけられなかった。
仕方なくチェーンを切っていると、見回りをしていた警備員・真鍋茂に声を掛けられてしまう。
真鍋に顔を見られたうえに自転車の登録番号も控えられてしまった林は、仕方なく持っていたマグライトで真鍋を撲殺し逃走した。

翌日、真鍋殺害事件の捜査を担当した古畑は、遺体の状況から「真鍋は殺害される寸前まで自転車の登録番号を見ていた」と推理。
その頃、林はエキサイトパークの管理事務所に「正午までに3000万円を用意しなければ観覧車を爆破する」と脅迫電話を掛け、嘘ではない証拠としてチケット売り場を爆破してみせた。

その直後、爆弾が仕掛けられているゴンドラに今泉が乗っていることが判明。
すぐに警視庁から爆弾処理班が到着し、古畑も殺人事件の犯人と爆弾犯は同一人物と考え、捜査に協力することとなる。
一方林は爆弾処理の専門家として警察に協力を求められ、現場で古畑と対面するが……。


登場人物


【ゲスト】
  • 林功夫(はやし いさお)
演:木村拓哉
天神大学電子工学部助手。
電子工学を専門としているが、その応用で爆発物に関しても非常に高い知識を持っており、学内では自分以上に高い知識を持つ人間はいないと豪語している。
移動には自転車を使っており、また止めておく際には必ずチェーンで鍵を掛けるようにしている几帳面な性格。
だが、人間性に難があるようで友達は1人もいないらしい。アリバイを証明する友達が1人もいないだけで、実際に友達がいないかは不明。

時限爆弾を自作し、深夜にエキサイトパークに侵入して観覧車のゴンドラに時限爆弾を仕掛けようとする。
だが持ってきたドライバーでは座席のネジを外せなかったので、自転車の鍵を使ってネジを回し、座席の下に時限爆弾を仕掛けて立ち去った。
その後で自転車の鍵を紛失していたことに気づき、観覧車まで戻って探すも発見できなかった。
仕方なくペンチで鍵のチェーンを切っていると、そこに巡回に来た真鍋が現れる。
真鍋に顔を見られ自転車の登録番号も控えられてしまったため、口封じのために彼を懐中電灯で殴って殺害した。

翌日、エキサイトパークの管理事務所に「正午までに現金で3000万円を用意しろ。用意しなければ観覧車を時限爆弾で爆破する」と脅迫電話を掛け、イタズラではない証拠として園内のチケット売り場を爆破する。
その後は研究室に留まり次の脅迫電話を発信しようとしていたが、左門からの推薦で事件の捜査協力をすることとなり、エキサイトパークで古畑と対面を果たした。

観覧車に仕掛けた爆弾は、座席に誰かが座ると起動する仕組みとなっており、1989年のコロンバス・アベニューのテロで使われたものと同じ構造。
だが、完全に解除するには最後にのコードのどちらかを切らなければならなかった。

プロの爆弾処理班ですら匙を投げるほど酷い今泉の説明だけで爆弾の完璧な図面を描いてしまったことで、古畑にマークされる(のちに指摘された時には「僕はプロですよ」と反論するも、「それでは理由にならない」と一蹴されている)。
古畑に疑われていると気づき、彼に面と向かって犯人だと断言されると、これ以上捜査協力はできないと怒り研究室へ帰ったが……。

  • 真鍋茂(まなべ しげる)
演:金井大
エキサイトパーク警備員。
老眼で、物を見たり何かを書いたりする時には眼鏡を上に上げている。
深夜の見回りの際に林の姿を見かけ、不審者だと思い声を掛けた。そして、最近周辺で自転車の盗難が多いからと、念のために林の自転車の登録番号を控えようとする。
だが、その直後に林に2度殴られ殺害されてしまった。仕事を全うしようとしただけなのに可哀そうな被害者。

  • 暮睦(くれむつ)
演:大谷亮介
警視庁警備部機動隊爆発物処理班班長。階級は警部。時限爆弾解体のために部下を引き連れてやってくる。
古畑とは署内ボウリング大会の決勝戦で対決した仲。あえなく負けているが、彼の独特なフォームは今でもよく覚えている。
非常に怒りっぽい性格で、今泉が電話で頓珍漢なことを言ったり、こんな状況にもかかわらず長電話したりしたので、その度に激怒して声を張り上げていた。
(今泉のダメさ加減を見れば、誰でも怒っただろうが……。)
ちなみに大谷氏は、『相棒』の三浦信輔役でもおなじみ。

  • 左門(さもん)
爆発物処理のベテランである警視庁の捜査官。
最近起きたブリタニカ号の爆弾事件で耳を負傷し療養中だったので、自分の代わりとして林を推薦する。


【レギュラー陣】

朝に弱いのに早朝から殺人事件の捜査をする羽目になったので、かなりやる気のない登場の仕方をする。
向島からおみくじクッキーを貰い、見事大吉を引き当てる。ちなみにラッキーカラーは
真鍋の遺体を見てすぐに、彼が死亡する間際まで自転車の登録番号を見ていたと推理する。
その直後に爆弾事件が発生し捜査に協力することとなるが、現場にやってきた林の言動や行動から彼が犯人だと確信しマークする。
また、爆弾犯が金の受け渡しを指示しないまま連絡が途絶えた点でも不審に思っていた。
そして爆弾解体まであとひといきという時に林に向かって犯人であると明言。この発言に林は怒って研究室に戻ってしまうが、これは古畑が仕掛けたブービートラップだった。
なお今泉には、心配を掛けないようにとタイムリミットのことを話していなかったが、そのせいで彼が時間と電池を浪費してしまう結果に……。

少し前に巻き込まれた事件がまだ尾を引いているらしく、昨日まで病院にいた。
今日から現場復帰し向島からおみくじクッキーを貰うが、中身は大凶でラッキーカラーも無かった。
その後はなぜか観覧車に乗って遊んでいたが、その直後に自分の乗るゴンドラに爆弾が仕掛けられていることが判明。
そのまま爆弾の解体をする羽目になり、暮睦達からの指示に従い、半泣きになりながら作業を進めていった。
暮睦達に電話で爆弾の構造を話していた時にはの線が仲良く並んでいる」と頓珍漢なことを言ったり、タイムリミットが迫っていた時にはそれを知らされていなかったとはいえ行きつけのスナックに長電話をしたりして、暮陸を激怒させていた。
長電話のせいで携帯電話の電池が無くなってしまうが、ギリギリのところである重大な発見をして、電話で証言した。

  • 向島音吉
古畑に妻が作ったというサンドイッチやおみくじクッキーを差し入れする。
これが後に重要な意味を持つことに。

  • 芳賀啓二
今泉がまだ以前の事件から立ち直っていないため、古畑のサポートのために捜査に加わる。
「自転車のチェーンから犯人を特定するのは難しい」と古畑に報告。
だが古畑に林の前で「チェーンからメーカーを特定するのは時間の問題」と言ってほしいと頼まれ、林の前でそのとおりに報告するふりをした。


以下、事件の真相。さらなるネタバレにご注意ください























真相


えー今回は緊急事態です。

えー犯人は間違いなく林君ですが、追いつめるだけの証拠もなければ時間も無い。

ここは1つ、罠を仕掛けるしか手がありません。
そう、ブービートラップ。

今日はちょっと見ててください。

えー、古畑任三郎でした!


  • 林功夫
研究室に戻るとすぐに自転車の鍵のチェーンを処分しようとする。
だがそこに古畑が暮睦・芳賀・向島を連れてやって来たので、咄嗟にチェーンを隠して彼らを研究室に迎え入れた。
そして、まだタイムリミットまで時間があったはずなのでつい腕時計で時間を確認し、彼らに爆弾はどうなったかを尋ねる。
すると古畑は「コーヒーを1杯頂きたい」と言った後で「無事解除した」と答えた。
その答えについ「嘘だ」と言うが、古畑は「外してなかったらこんなに悠長にしていられない」と返した。
そこでのコードのどっちを切ったかを言ってみろよ」と訊くと、古畑は暮睦の指示でのほうを切った、と答えた。

その際に今泉は男だと初めて知らされる。
林は今泉が持っているものを電話で聞いていた時に「ヘアピンや髪留めは持っていないか」と言っていた。
このことが引っかかっていた古畑は、林は今泉を女だと勘違いしていると考え、その理由を推理する。
そして、今泉の1つ下にあるゴンドラに女性が乗っていたと知ると、林は彼女が今泉だと誤解していたと考えた。

ではなぜ、林は女性を今泉だと勘違いしたのか?
実は、昨夜管理人室に「2号機に財布を忘れたのでどうしても夜のうちに調べてほしい」との電話があった。
そこで警備員の金井は深夜の2時に観覧車を調べに行き、その際にゴンドラを動かしていた。
普段は1号機が真下に降りているが、昨夜は金井がゴンドラを調べるために動かし、2号機を真下へと持ってきていた。
そして調べた後、彼は2号機を真下へ降ろしたままの状態で持ち場へと戻っていた。
林が鍵を探しに戻ってきたのはそのあとのことで、ゴンドラが動いていることに気づかず、2号機に入り込んでしまった。
つまり、林が爆弾を仕掛けたのは太陽の絵が描かれていた1号機で、戻ってきて2度目に潜り込んだのは月の絵が描かれていた2号機だったのである。
そのためいくら探しても鍵を見つけられず、また探していた時にゴンドラの月の絵が印象に残り過ぎていたため、翌日、そこに乗っていた女性を今泉と勘違いしてしまったのだった。

古畑は「ゴンドラから見つけた「あるもの」を鑑識に回せば事件は解決する」と断言。
その際に「こんなものを現場に残すなんてあなたも間の抜けた人だ」「長年この仕事をしてますが、犯人としては最低の部類です」と罵ってきたので、林はついイラつきながら「もういいよオッサン!」と呟いてから「爆弾はまだ解除されていない」と断言する。
すると、古畑は引っ掛かったとでも言うかのように「ということは切るのはブルーではない?」と追及してくる。
だがこれは林も想定済みで、先程から古畑達の挙動がおかしいことを理由に「起爆装置はまだ解除されてないし、鍵はまだゴンドラの中です」と再度断言した。
全ては古畑達の作戦だと考え、そのまま彼らを研究室から追い出そうとするが、実は林は先程致命的な失言をしてしまっていたのだ。

古畑は「あるもの」について話した時、それが「鍵」だとは一言も言っていなかった。
確かに古畑の手の中にあったのは林の鍵ではなかった。にもかかわらず林は「鍵」だと断言したので、古畑からなぜそのことを知っているのか、と追及される。
その際に「自転車の鍵が見えた」と声を荒げて答えるが、古畑が握っていたのはそもそも鍵ではなく、エキサイトパークのマスコット・エキサイトくんのキーホルダーだった。

確かにゴンドラの中には自転車の鍵が落ちており、それを見つけた今泉は充電の切れかかった最後の電話で古畑達に証言していた。
このことを知るのは警察関係者以外では犯人しかいないので、「自転車の鍵がゴンドラにある」と言った林はとうとう言い逃れができなくなってしまった。

ちなみに林が隠した自転車の壊れたチェーンは、証拠能力が無い代物。
古畑はどうしても林を現場から遠ざけたかったので、芳賀に頼んで一芝居打ってもらったのだ。

……そう!

これが私のブービートラップというわけです。

古畑が今までわざと下手な芝居をしていたと知り、林は「くそっ……」と悔しそうに呟いて椅子に座る。
そこでようやく爆弾がまだ解除されていないことに気づいた。

タイムリミットまであと2分を切っていたので、古畑にのどちらのコードを切れば解除できるか、と訊ねられる。
ブルーを切れ」と答えてつい笑みを浮かべる林。
だが、古畑はを切るよう指示をする。
指示を聞いた警官は今泉に見えるように赤旗を振り、それを見た今泉はいコードを切った。
それにより起爆装置は完全に停止し、間一髪のところで観覧車爆破は阻止されたのだった。

あなたはメカのプロかもしれないが、私は人の心を読むプロです。

あなたが考えていることなんかお見通しです。


  • 林の動機
爆破事件が未遂に終わった後、林は連行される前に、古畑に事件の真の動機について訊ねられる。
古畑はどうしても金目当ての犯行とは考えられず、3000万円はフェイクだと考えていたのだ。
すると林は外のエキサイトパークを眺めながら真の動機を語るが、それは非常に身勝手で同情の余地の無いものだった。

邪魔なんだよあの観覧車。

あれのおかげで、時計台見えなくなっちゃった。

だから排除を……。

これが動機かな?

この動機を話した林はついクスッと笑うが、古畑はやれやれと言うかのように首を振った後で彼にビンタを食らわせた
食らった林は茫然となり、呆れている古畑を見つめながら警察へ連行されていった。

  • 古畑任三郎
林の研究室を訪れて林を罠に嵌める際に、コーヒーを飲もうとして激しく砂糖をこぼしていた。
これも演技だったのかは不明だが、今回も『しゃべりすぎた男』と同じく今泉が危機にさらされていたため、平静を保っているように見えて内心では本気で動揺していた可能性もある(かなりわざとらしいこぼし方だが)。

林の犯行を暴いた後、推理を聞いていた向島に「最高でした!」と声を掛けられ、「よくあいつの心を読めましたよね」と感服される。
すると「人の心なんて、簡単に読めるものじゃありません」と答えた。
そして「人間最後に頼れるのは運だけ」と言って、切るコードを赤と断言した根拠として今朝のおみくじクッキーに入っていたおみくじを取り出した。
そこには「ラッキーカラー と書かれており、それを見た向島は照れくさそうにしながら立ち去っていったのだった。


余談

逮捕された林は『消えた古畑任三郎』にも登場。
古畑にビンタをされたことで彼を今まで「暴力刑事」だと思っていたようだが、本来はそのようなことをする刑事ではないと知ってとても驚いていた。
なお古畑にビンタをされた事で目が覚めたようで、刑務所では模範囚になっているようである。

林を演じた木村拓哉は、後に『古畑任三郎vsSMAP』で本人役として出演。
『古畑任三郎シリーズ』で2回犯人役を演じた唯一の芸能人という事になった。

ちなみに木村拓哉はバラエティ番組『SMAP×SMAP』内のコント『古畑拓三郎』で主役の古畑拓三郎を演じていた。
コントだが木村が演じる拓三郎は本家古畑と非常によく似ているため一見の価値あり。

脚本の三谷は、最後に古畑に林を殴らせたことについて「自分が一度キムタクを殴ってみたかったから」と後にテレビ番組で語っている。

今回のロケ地となった遊園地は、茨城県にある国営ひたち海浜公園。

本作はジャニーズ事務所所属の木村拓哉が犯人役であるため、肖像権の関係等から再放送は難しく、CS放送などではほぼ必ず欠番*1となり、地上波放送での再放送で本作を見かけるくらいである。




追記・修正はブービートラップに気を付けながらお願いします。

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最終更新:2021年07月26日 22:16

*1 『古畑任三郎vsSMAP』も同様である。