SCP-2472

登録日: 2017/04/14 Fri 00:55:28
更新日:2022/10/28 Fri 21:44:59
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SCP-2472はシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト
オブジェクトクラスSafe、つまり収容に関して言えば「きちんとしまっておけば問題はない」オブジェクト…
なのだが、ちょっと変わり種の困ったちゃんである。

というのもこいつを収容する際、通常のサイトに収容すると不都合が起きるのだ。

概要

SCP-2472は空気ホースを機械的に結合するために製造された長さ35mmの金属製の配管継手。
まあホースとホースをくっつける部品のことである。

このオブジェクトなのだが、ぶっちゃけて言うと危険性どころか、異常性は特に存在しない。
挙動、外観、認知、他のオブジェクトとの相互作用、あるいは他の要素による異常性は一切ない。
つまり、見た目も普通だし普通にホースの継手として使えるし、別にそれでなにか問題は起きない。
かつて図書館だったSCP-2602ただの木箱アリソン・エッカートのような特殊性すらない。
誰がどう見てもただの継手である。
物理特性にも目立った異常もなく全て既知の科学で説明できる特徴しか示さない。

が、どういうわけか人間ではなく、これを異常性を発見する機械にぶち込むと真逆の判定となる。
Binahパターン認識システム*1という財団の誇る異常性システムでは
異常確実性99.9%
潜在的カテゴリーAleph Room("懸念性最大")(信頼度75.4%±5%)
潜在的Keter(信頼度77.7%±5%)
潜在的封じ込め不能(信頼度26.3%±5%)
となにやら物々しいオブジェクトとして判定される。
というか潜在的Keterの可能性が70%超えてるってどういうことだよ。

更には財団が誇るスクラントン現実性測定警報機も毎回反応するが、25000回も実験しても現実レベルに影響はないことがわかっている。
(スクラントンの話は現実改変(SCP Foundation)あたりで少し触れている。)
ただ毎回反応するせいで通常のサイトに保管することは不可能であり、現在は補助施設で保管している。

調査

財団は「うちの機械がおかしいのかな?」と思った。
だってどんな細かい異常性すら発見できる超人の集まりっぷりで定評のあるあの財団が見つけられないのだ。
解決策が見つからないことは愛すべきクソトカゲ年中反抗期のアベルくんを筆頭に枚挙に暇がないが、
異常性すら見いだせないのは流石におかしい。

そこで財団は、パートナー協定を結んでいる8の大学・研究機関及び3の超常的オブジェクト取扱組織との二重盲検試験を執り行った。

そしてそのうち3つの団体で、やはりSCP-2472には異常性があると判定が出たのだ。

アメリカ国家安全保障局と合同で開発された、連邦捜査局異常事件課のPatternSweepソフトウェアは、SCP-2472を陽性と分類しました。
最初はFBIのキャリアの袋小路、みんな大好き無能の集まりUIUである。
UIUは無能とは言え、国家安全保障局は無能ではないしFBIそのものが無能というわけではないのでソフトウェアには信頼が置けると思ったのだろう。
もしかしたら開発には財団も参画したのかもしれないが。

で、そのPatternSweepソフトウェアではSCP-2472は異常性を持つオブジェクトであると判定された。

Distant Thunderのコードネームを持つ世界オカルト連合のメインフレームは、SCP-2472をLTE-高潜在性と分類しました。
次はこれまたみんな大好き破壊フリーク、GOCである。
LTEは「粛清済脅威存在/Liquidated Threat Entity」のことであり、つまりこのよくわからない継手はなにかのアノマリーの残骸ということになる。
しかしである。仮にも残骸であってもそれ自体にも異常性があるから反応するわけで、ってことはその継手自体はどういう異常性があんねんとなる。

スイス政府によって開発中の、独立した異常検出システムはLeuthari I/Mederichの評価値を出し、これは高い潜在的異常性を示唆しています。
最後はスイス政府が主導して開発した異常検出システム。
さすが永世中立国スイス、核や生物兵器や化学兵器どころか、アノマリーへの対策も怠らない。

スイスの姿勢は我々も見習うとして、やっぱりこの継手くんは異常性を持つ、らしい。
あくまで機械はそう言っている。しかしやはり異常性は見当たらない。

失踪した研究員の謎

SCP-2472はもともと、財団サイト-48の掃除に使う高圧洗浄機の空気ホースが入ってる箱をデクラン・ホール研究助手他数名が
スクラントン現実性測定警報機のあるエリアから持ちだされた際にちょうど警報機の作動で判明したという経緯である。

デクラン・ホール研究助手と他の人はみんな尋問を受けたが、どこから持ち込まれたんだが分かっていない。

その後デクラン·ホール研究助手は突如として失踪、その場には覚書があった。
雑なホテイアオイの絵とともにあった内容は以下のものである。

もし誰かが全ての警報を作動させる、簡素な何かを作る事ができたなら、ジョン、我々の最大の努力でも検出できない、脅威的なものも作り出す事ができる。それこそ、明らかに私が作りたいものだ。あなたと一緒につくりたい。しかし、そうなった時は、地球上に居る誰もがその眼で見る事ができなくなる。また会おう。

その覚書はデクラン・ホールの名できっちり署名され、筆跡鑑定でもデクラン・ホール研究助手の書いたものであると判明している。
ということはSCP-2472はデクラン・ホール研究助手が作った、と見做すべきだろう。
財団内でオブジェクト作るとか何考えてんだこいつ。

簡単に言えば、例のからばこはただの木箱であるにも関わらず人間に「収容させないと」と思わせる、という認識災害をもたらすが、
デクラン・ホール研究助手は継手に、「機械が異常性を誤検知するように」するという対機械認識災害とでもいうべき異常性をもたせたのだろう。

…さてそうすると問題はデクラン・ホール研究助手の現在である。なにしろその覚書は不穏である。
デクラン・ホール研究助手の目指したゴールは「継手」ではなく、その正反対の「全ての機械が検出できないアノマリー」の作成である。
言ってみれば継手は、デクラン・ホール研究助手にとってはあくまで通過点に過ぎず、それによって得られたデータを元に、
「絶対見つからないアノマリー」を作るのが夢だった。


――その「絶対見つからないアノマリー」の第一号になったのは、他ならぬデクラン・ホール研究助手自身だったのでは?


こういうこともあり、現在オブジェクトクラスの将来的改訂が検討されている。
なにしろ絶対見つからないアノマリーなんて、それがなんであろうが財団の敗北を意味するわけで…。

余談

さてこのオブジェクトは現在はまだSafeである。
しかし本家及び日本支部におけるタグは報告書本体に反し「Safe」ではなく「Keter」が付与されている。
脚注では「議論中」のためとなっているが、おそらくは……。



SCP-2472 - A Small Metal Air Coupler That Is Apparently Not Anomalous(異常性を持たないと思しき小さな金属製の空気用継手)







SCP-2472 - A Small Metal Air Coupler That Is Apparently Not Anomalous
by Kate McTiriss
http://www.scp-wiki.net/scp-2472
http://ja.scp-wiki.net/scp-2472

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最終更新:2022年10月28日 21:44

*1 聞きなれないシステムだが、確認できる限りではこの報告書が初出の模様。一応他にも登場している報告書はあるが、数は非常に少ない。ちなみにBinahはketerの由来でもおなじみ「生命の樹」における第3のセフィラで、「理解」と訳される。