両さんの大達人シリーズ

登録日:2019/02/11(月) 13:48:43
更新日:2023/09/09 Sat 23:49:43
所要時間:約 20 分で読めます





『両さんの大達人』シリーズとは、集英社から発売されている児童向け学習漫画『満点ゲットシリーズ』の1レーベルである。
正式名称は『満点ゲットシリーズ こちら葛飾区亀有公園前派出所 両さんの大達人』だが、長すぎるのでこう呼ばれている。



【概要】

満点ゲットシリーズを全く知らない読者の皆さんのために解説しておくと、本作は集英社が版権を持っているアニメ・漫画のキャラクターと一緒に、
小中学生のお勉強や脳トレに関して学びましょう、という、本屋の入り口辺りに置いてありそうな学習漫画の一環である。
ちなみに選ばれている作品は全てフジテレビ系列で放映されているのだが、これはどうでもいい。
『キャプテン翼』はサッカー、『Dr.スランプ アラレちゃん』(茶髪の方)は算数と英語、『ちびまる子ちゃん』は国語を担当しており、
『こち亀』はそれ以外、すなわち理科と社会に関して学ぶことができる。
『こち亀』の連載完結後はちびまる子ちゃん一強状態だけどね
流石に今書店に行っても置いてないとは思うが、図書館の児童コーナーなどにはよく置いてあるので興味がある人は行ってみよう。

対象年齢は小3かららしいが、解説ページには大人が読んでも「マジかよ?」というような知識が掲載されている。まさしく大達人。
漫画を担当しているのは池田俊一氏で、100~150巻あたりまでの原作の絵柄を踏襲しているので違和感が少ない。
原作でもよくある
といったお約束の流れも踏襲している。
ただし表紙イラストはアニメ版スタッフが担当しており、両さんが目上の人にも自分の事を「わし」と言ったりとアニメ版の要素も含まれている。

基本的には十数ページのマンガに加え、口絵付きの解説が入るという流れ。
『天体大達人』以降、導入部にもマンガが入り単元に関してわかりやすく纏めている。
ちなみに、世界観は統一されているようだが、たまに全然本編と関係ないパラレル短編が入る。
一部の作品ではカバーの裏(下ではない)に付録資料が掲載されている。

コマの柱(端っこ)部分にはキャラクターの1行解説が掲載されており、
「これ原作キャラじゃないの?」と勘違いされそうなゲストには「満点ゲットシリーズのオリジナルキャラ。原作には登場しません」と注釈が入る。

なお、本項目では満点ゲットシリーズの派生作品で、こち亀を原作とした作品に関しても記載する。


レーベル一覧

両さんの昆虫大達人

記念すべき大達人シリーズの1作目。1999年発売。
表紙はごくシンプルに両さん中川麗子の三人が映っており、まだ方向性が決まっていないことがわかる。
扱っているのはカブトムシ、ホタル、チョウ、バッタ、トンボなど子供に人気がある昆虫が多く、生態や特徴の他にも、飼育方法や捕まえ方も記載。
だから原作によく出てくる黒い奴とかはマンガのギャグで出てくるだけだよ!
解説ページには様々な昆虫のリアルな絵が掲載(多くは実物大)されており、そういうのが苦手な人は注意。
両さんの意地汚さや好奇心の強さは第1作目である本作から存分に発揮されており、クワガタの密猟やらトンボ型ドローンの製造やらに手を出している。
ただ、アリ編は(原作でもよくある)大原部長の紙芝居での説教に両さんが屁理屈を並べ立てて珍しく論破しており、更に

「今の部長の方が私にとっちゃ心配ですよ
 ビデオの予約録画ができますか? メールアドレスを登録できますか? そもそも携帯電話を持っているんですか?
 家電製品の説明書を読んで理解できるんですか?」

と時代に追いつけなかった男の古傷をえぐるなど、胸にズンとくる描写がある。
その後、サボって公園でビールを飲んでいた両津が、部長の「アリを見習え」という発言を元にある方法でひったくりを現行犯逮捕するという
いかにも『こち亀』的な展開もなかなか魅せる。あと滅多に出ない戸塚も出てるぞこの話
巻末には日本に生息しない海外昆虫のミニ図鑑が付属している。


両さんの地図大達人

2000年発売。初の社会科。
本作では実験的に解説ページのこち亀キャラがSDになっており、後の大達人シリーズもこの形式が踏襲されている。
地図記号や地形図、時差や世界地図、交通標識など様々な地図・地理的条件に関して学ぶことができる。お色気エピソードもあるよ!
特に世界地図編はボルボ爆竜大佐のお使いで様々な国をめぐるという話であり、

両津「よし、行き先がブラジルなら北北東だ」
ボルボ「アホか! ブラジルなら南東だろうが! 北北東に行ってどうする」
中川「それは地図上そう見えるだけです!」

という、世界地図における方角に関するありがちなミスに関しても詳しく解説されている。

両さんの天体大達人

2000年発売。本作から初めて巻頭の導入漫画が掲載されるようになった。
春夏秋冬の四章に分けられており、各季節における星座の他、
★春:太陽
★夏:銀河系と宇宙、主系列星
★秋:月
★冬:太陽系の惑星
に関して学ぶことができる。
中でもこの冬編の『太陽系の危機!?の巻』では宇宙世紀1008年を舞台に、スペースポリスKAMEARI号が太陽系を探検するというとんでもない話になっており、
両さんたちの子孫がス○ートレックにそっくりな設定で大暴れ、しまいには土星の輪っかと木星の衛星イオを半壊させている。何をやっとるか。
他にも夏編では両さんが「ネオ星座早見表」を勝手に作っており、それによれば麗子はパチンコ座らしい。

またギリシア神話にも触れており、春はおおぐま座とこぐま座、夏はこと座、秋はアンドロメダ座、冬はオリオン座の話が各2ページで纏められている。

両さんの日本史大達人

2001年~2003年まで刊行された三部作。1巻は縄文時代~平安時代、2巻は鎌倉時代~元禄期、3巻は江戸三大改革~現代までを描いている。
単元ごとに様々な小ネタを挟んだ短編が見どころで、縄文時代編で縄文キャンプ場に竪穴式派出所を作ったのを皮切りに、
古墳時代編は墓参りを古墳建造SLGにする、奈良時代編では両さんが六神合体大仏レンジャーを雪で作る、
鎌倉時代編では両さんが署長人体切断マジックをさせられそうになる、南北朝時代編は両さんが巡査部長に昇進してしまう、
三大改革編では元禄編の江戸時代テーマパークを「人が来ないから」という理由でゾンビになった越後屋と代官が暴れ回るお化け屋敷に改造するなどネタ満載。
卑弥呼・聖徳太子・鑑真・一休宗純織田信長真田幸村に関しては、それぞれ短編のシリアスな伝記漫画が掲載されている。

また1巻末には平家物語、2巻末には忠臣蔵をこち亀のキャラでパロディした中編が掲載されており、
馬に乗った途端に暴走するヘタレ義経(本田)と傍若無人な弁慶(両津)の大暴れや、
大石部長と吉良両津の真冬の決闘といった大幅に歴史をカン違いした筋書きになっている。
ま、知識0から学ぶ分にはこれくらい大雑把な話でもいいが。

これとは別に3巻では化政文化(蘭学)と薩長同盟締結、大正浪漫をパロディした漫画が載っている。
最後の奴は両津勘子(外見は○宮寺さ○らのコスプレをした両さん)が就活するというひどい絵面の話だが。

+ 平家物語編・配役
  • 源義経:本田速人。馬に乗ると暴走するヘタレ
  • 武蔵坊弁慶:両津勘吉。義経を尻に敷いている
  • 静御前:乙姫菜々
  • 源頼朝:中川圭一。となると北条政子は麗子かと思いきや出番なし。
  • 平清盛:左近寺竜之介
  • 後白河上皇:大原部長
  • 木曽義仲:ボルボ西郷
  • 巴御前:ジョディー・爆竜・カレン

+ 忠臣蔵編・配役
  • 大石内蔵助:大原部長
  • 堀部安兵衛:中川圭一
  • 吉良上野介:両津勘吉(遊び人役も兼ねる)
  • 浅野内匠頭:本田速人
  • 梶川与惣兵衛:爆竜大佐
  • その辺にいた遊女:秋本麗子

+ 幕末風雲編・配役
  • 坂本龍馬:両津勘吉
  • 西郷吉之助(隆盛):大原部長
  • 桂小五郎:中川圭一
  • 勝海舟:ボルボ西郷
  • 千葉重太郎:左近寺竜之介
  • ジョン万次郎:電極+

なお、戦時中の上野動物園を描いた象の話は普通に感動する。

また2巻では室町時代末期~安土桃山時代を、タイムワープするバイクに乗ってしまった両さんと中川が放浪する話になっており、
日本の歴史上もっとも出世した男と両さんの交流を描いている。
時間放浪中の
両津「またマンモス!
中川「もうイヤッ
の天丼は中々笑える。


両さんの人体大探検

2003年発売。本作のみ「大達人」ではなく「大探検」になっている。
健康診断で余命半年と宣告された両さん(実は聞き間違い)がヤケを起こして大騒動を起こし、すっかり懲りて体について学ぶという筋書き。
骨格・筋肉・皮膚、消化器、血液循環・呼吸、脳神経、生殖・細胞、栄養に関して学ぶことができる。
この栄養編は「薬田利蔵」という超潔癖なモヤシ警官が両さんから健康に関して学ぶという話であり、
原作の18巻収録の「薬の時間!?の巻」が元ネタになっている。ちなみにオチまで一緒である。
なお、本エピソードから「※公務員の副業・アルバイトは一部の許可制の物を除き禁止です」の注意書きが記されるようになった。

箸休め的にマヌケな宇宙人2人(ピラフ大王に似ている)が両さんの身体を乗っ取って地球を侵略しようとする短編ギャグが4話にわたって掲載されており、
毎度毎度クサい目に遭わされて最後は宇宙人たちが逃げ出してしまうという爆笑ものの展開になっている。
またこのエピソードでは宇宙人の策略で髪を茶髪に染め、アロハに短パンで博打とナンパに精を出すチャラ男に成り果てた部長という噴飯ものの様子が拝める。

最終話『受け継がれる命』は両さんの下町少年時代を捏造再現した心温まる感動短編。
読めば君も健康が気になるぞ!

両さんの国のしくみ大達人

2004年発売。公民に関しては初の作品。
税金が給料から引かれるのに嫌気がさした両さんが亀有公園に勝手に両津国を建国する導入漫画から始まる。
両さんが警察官であることを…あまり生かさず、憲法、三権(立法・行政・司法)、地方自治などに関して解説。
勿論2004年当時の情報なので法改正などで変わっている点があるのには注意が必要。

巻末には国連に関しても記載されており、マンガでは当時増え始めていた外国人観光客に両さんが出鱈目な通訳を仕込み、
ブラジル人(爆乳美女)にはサンバを、モンゴル人には相撲を挨拶だと偽って部長に体当たりかまそうとするとんでもない話になっていた。
なお本作で両さんは下水道にいたワニに追い掛け回されているが、このワニは後述する「恐竜大達人」で再登場した。

本作発売の2004年12月、TVアニメ版『こち亀』は終了している。

両さんの恐竜大達人

2005年発売。…え? 恐竜なんてほとんど教科書に出てこないじゃんかって? うるせえ! 子供に人気だからいいだろ!!
単なる恐竜図鑑ではなく恐竜の生体や進化などに関して学べるが、一部学説が古い所があるので注意。ティラノサウルスがツルツルだし。

短編の他に、タイムスリップした両さんが白亜紀で卵を拾い、それから生まれたトロオドン*1(最も知能が高いと言われる小型獣脚類)に与作と名付け
サンプルとして解剖されてしまうのを恐れ一人と一匹で大脱走、という原作でありそうでなかったような話を4話に渡り掲載している。
ていうかこれはこち亀じゃなくてドラえもんだろ。

両さんの気象大達人

2006年発売。
監修は気象予報士の森田正光で、マンガ作中にも登場している。
…両津にロケットパンチを打ち出す自分そっくりの気象予報アンドロイドを作らされて困惑するという役回りだが。
気候に関してかなり専門的な所まで学べるので実用性が高い。
ちなみに四季を学ぶ話でまたワニが登場している。
また、超短編として1,2ページくらいのコミカル漫画が掲載されている。

連載後半の名物一家・擬宝珠家は本作が初登場となる。
基本的に檸檬が出てくる話はそんなにぶっ飛んだオチにならないというジンクスは本レーベルのお約束。

両さんの生物大達人

2007年発売。
植物から昆虫、脊椎動物に至るまで様々な動物に関して学べる。
こち亀はもともと動物ネタが多い漫画なので違和感もそれほどない。
遂にワニ四巻連続登場である。

檸檬の妹・蜜柑は本作が初出。
檸檬と動物と聞くとトラウマが蘇る読者も多いだろうが、普通に感動的な話なので安心していただきたい。

両さんの地理大達人

2008年発売。
日本の47都道府県を地方ごとに分けて学ぶことができる。
手違いで沖縄に運ばれてしまった両さんが、東京を目指して九州→四国→中国→近畿→中部と北上していったかに思いきや、
間違えて北海道まで行ってしまい、東北から関東まで南下しつつ各地で騒動を起こす日本縦断記を描く。
本作のみ、一話完結ではなく全話話が繋がっているのが特徴。

一部の話ではその都市ゆかりのこち亀キャラクターと両さんの絡みが描かれており、大阪編では大阪通天閣署の御堂春が、京都編では磯鷲早矢と父の磯鷲剣之介が初登場している他、
九州編では福岡出身という設定を持つチャーリー小林がまさかの登場を果たしている。
また、北海道編では「北海道に親戚がいる」という設定で早乙女リカが顔を見せている。

両さんの地球のしくみ大達人

2009年発売。
陸海空の森羅万象に関してわかりやすい図柄等も交えて説明。
地球の成り立ちから気象区分、災害まで、地理と地学を学ぶのにうってつけの一冊。

本エピソードでは地球の環境破壊を憂いた宇宙人により両津・中川・麗子・部長・本田の五人が
環境戦士コチカメレンジャーにされてしまうというドタバタ連載が掲載されている。
色がみんな地味なのは「二色刷りだから仕方ない」らしい。原作でもあったなこのネタ…。
ちなみに能力は両さんがあらゆる物体を食べられる力、中川が植物操作、麗子が怪力、本田が瞬間移動で、部長が空気清浄オナラ。うーん、ひどい。

なお、原作の第171巻に収録されている「生きてる地球さんの巻」では今作が参考文献として紹介されている。

両さんの産業と仕事大達人

2010年発売。
第一次・第二次・第三次産業に加え、サービス業や行政のお仕事など様々な仕事に関して学べる一作。
何気に日暮熟睡男が今作で初登場を果たしている。
連載物は両さんが「転職ノート」で様々な職に就くというもの。なんだ、原作の両さんじゃん。
あと、3年ぶりにまたワニが出た。もういいっての!!

両さんの宇宙大達人

2011年発売。宇宙キターッ!
『天体大達人』を掘り下げた内容であり、当時大ブームを巻き起こした探査衛星はやぶさに関する漫画も掲載。
VRで両さんが全能の神ゼウスになったり、土星派出所が登場したりとカオスな内容は相変わらず。

両さんの江戸大達人

2013年発売。
両さんが江戸260年間をタイムスリップしながら様々な江戸文化を学ぶ。江戸しぐさ? 載ってるわけねーだろ。
歴史上の偉人としては徳川家康を始め、由井正雪&丸橋忠也、紀伊国屋文左衛門、葛飾北斎&東洲斎写楽、遠山金四郎、
平賀源内&杉田玄白&前野良沢、雷電為衛門とまさに江戸オールスターが登場。
日本史大達人で龍馬を演じたからか、終盤では坂本龍馬と一悶着を起こしている。
大達人シリーズ最後の一作であり、これ以降新刊は出ていない。そして原作の連載も2016年に幕を下ろした。
長い間、お疲れさまでした。

番外編

2007年には脳トレを学べる『クイズ大達人』が発売された。

また、1年前の2006年には同じレーベルの『Dr.スランプアラレちゃん 食べ物尽くしのかけ算わり算』のリメイクとして
『両さんのまんぷくかけ算わり算』が発売された。
アラレちゃんの『自主トレたし算ひき算』のリメイクは…諦めて下さい。

その他『こち亀』を原作とした学習漫画

満点ゲット伝記シリーズ

NHK大河ドラマに思いっきり便乗する形で、2003年には『両さんの宮本武蔵』が発売された。
…が、何分「私はこういう凄い事をやった」「という話を師匠から訊いた」「って爺さんが言ってた」といった伝聞情報だらけの謎の多い人物なので、
事実上吉川英治の小説を子供向けにマンガにしたような内容になっている。

これ以降、新札発行を記念した2004年の『野口英世』、同じく大河に便乗した2005年の『源義経』、2007年には『聖徳太子』が発売された。

だいすきBOOK

また大河に便乗した『平清盛』の他、『お江戸だいすきBOOK』が発売された。

制覇シリーズ

2001年にカード型図鑑『はたらく車』が発売された。
様々な角度から特殊車両に関するアプローチがなされており、原作者も「大変参考になりました」と書いている。




「な…なんだこのスッカスカの項目は! 執筆者はどこだァー!」
「追記・修正の資料を集めると言って図書館に行きました!!」

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最終更新:2023年09月09日 23:49

*1 現在は疑問名とされている。