ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2033 蜂起
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ankoss
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・非常に賢いゆっくりが出ます。
・ゆ虐の偉大なる先達を多いにリスペクトしました。多謝。
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ここはとてもゆっくりしたゆっくりの群れ。
森はゆっくりの平和で満ちていた。
れみりゃは居るし、ごはんさんが足りないことはあるけれど、普通の常識的なゆっくりの群れだ。
長老れいむは、しわしわの体を引きずって、切り株の上に座っていた。
傍目から見ても、狩りもできず、もう半年も持たないであろうその老体。
どうやって暮らしているのだろうか。
いったい何年生きているのか。
普通、経年劣化でしわしわになったゆっくりなど観察されることはない。
その前に死んでしまうのだ。
このれいむは、おそらく栄養状態が非常によく、なぜか奇跡的に2~30年生きていると思われる。
そこへ、群れの一員であろう若い好奇心旺盛なゆっくりが寄ってきた。
「むきゅ!ちょうろう!えさをあげるから、またゆっくりむかしのおはなししてね!」
長老は若者の方をじろりと睨むと、ゆっくりと若者に向き合い、話しだした。
「…いいじゃろう。これはゆっくりがゆっくりできなかった、わしがまだあかゆっくりだったころのはなしじゃ。」
「わーくわーく」
「そのころのわしは「れいみゅ」といわれていての……」
・
・
・
れいみゅはなんの変哲もない野生ゆっくりとして生を受けた。
母れいむと父まりさの最初のおちびちゃん。
茎の一番先っぽの実ゆっくりとして。
存分に母親の愛と栄養を受け、生まれる準備は整った。
ぷるぷる震えると、茎からポトリと落ちる。
「れいみゅ、ゆっくちうまれたよ!ゆっくちしていっちぇね!」
「「ゆっくりしていってね!!!」」
すぐに返事が聞こえた。
大きくて頼りがいがある父まりさと、優しい母れいむの声だ。
続いて、次々と妹達が茎から落ちて誕生した。
「ゆっくちしていっちぇね!!!」
自分も出来るだけの声で挨拶を返す。
「ゆっくちしていっちぇね!!!」
妹の構成は、順に、まりしゃ、りぇーむ、まりちゃのようだ。
妹たちが全員生まれたら、生まれて初めてのごはんだ。
「れいみゅ、おなかしゅいたよ!」
「まりちゃもー!」
「りぇーむも!」
父まりさは、母れいむの茎をプチッとちぎって、床に置いてくれた。
「おちびちゃんたち、ごはんだぜ。ゆっくりたべるんだぜ!」
「ゆわー、ゆっくちいただきまーしゅ!」
「むーしゃ、むーしゃ、しあわしぇえええええっ!!」
「むーしゃ、むーしゃ、むーしゃ!」
「まりしゃばっかりじゅるいよっ!」
「これはまりしゃのごはんしゃんなんだじぇ!」
「ゆぴぃいい!」
「しあわしぇええ!!」
「おちびちゃんたち、けんかしちゃだめだよ!」
生まれて初めて食べる食事は、ほんのり甘く、ほんのり苦く、みずみずしくて、ほっぺたが落ちそうなほど美味しかった。
これからのれいみゅ達のゆん生が幸福で一杯なことを微塵も揺らがせることのないような幸福な味。
「ゆーん!おちびちゃんたち、ゆっくりしてるよー!」
「さすがまりさとれいむのおちびちゃんたち!ゆっくりしてるんだぜー!」
ご飯のあとはうんうんだ。
「れいみゅうんうんするよ!しゅっきりー!」
「まりしゃもー!」
「「しゅっきりー!」」
「く、くしゃい!ゆっくりできにゃいいいい!」
「ゆんやああああ!」
「かたずけるからまつんだぜ。」
ところ構わずうんうんする子供を叱ることもなく、優しく片付けてあげる父まりさ。
どうも親もゲスでなく、れいみゅは恵まれているようだ。
うんうんも出たし、子供たちは寝る子と、遊ぶ子で分かれたようだ。
れいむ種は寝て、まりさ種はころころなどして遊んでいる。
野生の典型的なゆっくり家族の、一番幸せな一コマである。
そんな折、巣穴のけっかいっの向こう側から大きなスィーの走る音が聞こえてきた。
親ゆっくりに戦慄が走る。
「まさか、ゆっくりがり!」
「まずいんだぜ!おちびちゃんたちをかくすんだぜ!」
「おちびちゃん、れいむのおくちにかくれてね!」
「ゆ?」
「まりしゃはあそびたりないんだじぇ!」
「いいから!はやくしてね!」
「やじゃやじゃー!あそぶのじぇー!!」
手間取っているうちに、スィーから一匹のゆっくりが降りてきて、巣穴に向かってきた。
乗っていたのは体格がよく、お帽子が不自然に真ん中だけ盛り上がっている、人相の悪いまりさだ。
優に父まりさの倍の体積はありそうである。
「ひゃっはー!おぶつはしょうどくだぜーー!!」
「ゆげえ!モヒまりさ!れいむ、はやくするんだぜ!」
「ぷくうぅぅ!ここにはおちびちゃんはいないよ!どっかいってね!」
母れいむはタイミング的にもう間に合わないと判断し、遊んでいたまりしゃを口に入れるのを諦めた。
そして精一杯のぷくーをしておちびちゃん三匹を口に隠したときに出来る膨らみをごまかす。
父まりさは、れいむの口の中に隠れ切れなかったまりしゃを背中に隠すように少し移動した。
しかし、その不自然な動きはモヒまりさにバレていたようだ。
「おい!そこのグズまりさ!いまなにをかくしたんだぜ!」
「ヒィ!な、なんのことだぜ……」
「とぼけるんじゃないぜ!わかってるんだぜ!」
そう言いながら、モヒまりさは父まりさにいきなり体当たりをした。
「ゆげえええ!」
一撃で巣穴の最奥まで吹っ飛び、餡子を吐きかける父まりさ。
親が吹っ飛んだせいで、隠されていたまりしゃはモヒまりさの目の前にあらわになった。
「なんだ、やっぱりいたんだぜ!さすがまりささまのきゅうかくなのぜ!」
「やめてえええええ!そのおちびちゃんはだいじなこなんでずうううう!!」
「うるさいんだぜ!おちびをうんだことはほめてやるのぜ!このくずれいむ!」
ドガッ!
立ち塞がる母れいむもモヒまりさに弾き飛ばされる。
壁に激突した痛みですぐには動けない母れいむに、モヒまりさは罵声を浴びせる。
「どれいはおちびをいっぱいうんで、まりささまにけんじょうするのがしごとなんだぜ!」
「わかったら、もっといっぱいうんでおくんだぜ!」
「お、おちびちゃんんんん!!!!つれてかないでええええええ!!」
「おら!こっちくるんだぜ!まったく、ぐずのこどもはトロいんだぜ!」
モヒまりさは催促のためにまりしゃを棒でつつく。
「いちゃいいいいいい!!やじゃやじゃやじゃー!やめちぇええ!」
「ひゃーっひゃっひゃ。はやくくるんだぜ。」
母れいむが体制を直した頃には、スィーの発進音が響き渡り、今さっき生まれたばかりのまりしゃはモヒまりさに連れていかれてしまっていた。
「ゆんやああああ!おちびちゃんがあああああ!!!」
「まりさが……よわいから……ごめんなんだぜ、れいむ……」
「ゆぐっ、ゆぐっ…」
幸せ一家にいきなり訪れた不幸。
れいみゅは何が何だかわからず、恐怖も忘れてぽかんとしていた。
「さんにんもおちびちゃんがかくせたことが、よかったとかんがえるべきなのぜ……」
「なにいってるのおおおお!?」
「もしひとりもおちびちゃんがモヒまりさにわかるようにいなかったら、れいむのくちをあけさせられてたかもしれないぜ。」
「ゆぐぅ」
「そうなったら、おちびちゃんはぜんいんつれてかれてたんだぜ。」
「ゆ……」
「だから、まりさたちにできることは、のこったおちびちゃんたちをしっかりそだてることだぜ!」
「ゆ、そ、そうだね……」
深刻な雰囲気で何を聞いたらいいかわからないれいみゅ。
とりあえず一番気になったことを聞いてみようと思った。
「おかーしゃん、いもうちょはどうなっちゃの?」
「!!」
「……なんでもないよ、しんぱいいらないからね。」
「でみょ、れいみゅは、「おちびちゃんはしらないでいいことなんだぜ!」」
「!」
「もうよるだし、すーやすーやのじかんだよ!おかーさんがおうたをうたうよ。」
途中で割り込まれて疑問は晴れなかったが、母れいむのおうたはとてもゆっくりできたので、すぐに子供たちはすーやすーやしだした。
よく聞いてみれば、母れいむのおうたには悲しげな旋律が宿っていた。
父まりさは、それを聞き、おちび一人さえ守れない無力な自分に耐えきれず、泣いていたようだ。
この、妹が連れ去られるというショッキングな事件が、れいみゅが生まれて最初の記憶だ。
四日後、モヒまりさはまたれいみゅのうちを訪ねてきて、おちびがいないかどうか嗅いで回っていた。
「ぷくぅううう!」
「おちびちゃんなんていないんだぜ。」
「ひゃっはーー!!おちびがいないってえぇえ?いいかくずども!おまえらはおちびをつくって、けんっじょうっすることでいきていられるってことわすれてるんじゃないかだぜ?」
そんなことをわめき散らしながら、父まりさに体当したり、体当たりで転がった父まりさの上で跳ね回ったりした。
「ゆげっ、ゆげっ、わかったから!つぎにはつくっておくから!みのがしてほしいんだぜ……」
「ふん、ぐず!かす!ていのうっ!なまりさには、はいつくばってるのがおにあいだぜ。」
捨て台詞を言って去っていった。
今回もれいみゅと妹たちは母れいむの口に隠れ、事無きを得たのであった。
「ゆぅ、つぎもおちびちゃんがいないっていったら、おくちをあけろっていわれそうだぜ。」
「ゆううううう!?どうするのおおおお!?」
「ゆぅぅう……」
幸せいっぱいの家庭に生まれたはずが、少しずつゆっくり出来なくなっている気がして、れいみゅは困惑気味であった。
それから三日ほど、れいみゅ達は親にゆっくりの基本的な生活を教えてもらった。
曰くゆっくりは巣を作って暮らすこと。
狩りをしてご飯さんを手に入れること。
雨さんはゆっくりできないこと。
冬さんが来たら、巣でえっとうっすること。
冬さんが終わったら、きれいなお嫁さんを見つけて、おちびちゃんを作ること。
たまに見つけられるあまあまはすごくゆっくりできること。
そして、なによりもれいみゅ達はゆっくりするために生まれてきたこと。
これかられいみゅ達にはゆっくり出来る明るい未来が待っていること。
「ゆわぁー、すぎょいよー」
「まりちゃ、あかちゃんいっぱいちゅくる!」
「りぇーむ、あまあまたべちゃいいいい!」
「ゆわあ、おちびちゃんたち、ゆっくりしてるよー、ゆふーん」
「がんばってきたかいがあったんだぜ」
「あまあま!あまあま!」
「あかちゃん!あかちゃん!」
りぇーむとまりちゃは興奮して叫びながら跳ね回り、母れいむから少し離れてしまった。
まさにその時である。
ドドドドド!と音がして、モヒまりさのスィーが巣の目の前に現れたのは。
「ひゃあ!!がまんできないんだぜ!!らちだーーー!!」
音を聞いた途端、母れいむはものすごい素早さで一番近くに居たれいみゅを口内に隠した。
「お、いきのいいあかゆっくりがにひきもいるぜ!かんしんかんしん」
「おちびちゃんんんん!!!!」
「ちがうんだぜえええ!?」
「なにがちがうんだぜ?こいつらをつれていくことはけっていずみだぜ!」
「??りぇーむ、あまあまほしいよ。あまあまきゅれるの?」
「はぁん?あまあまだぁ?」
モヒまりさはニタリと笑った。
「おまえらは「あっち」につれていくんだぜ。「あっち」にはあまあまなんてないぜ!それどころか、くるしんでくるしんでしぬうんめいがおまえらをまってるのぜ!」
「ゆびゅううううううううう!?」
「!?なにじょれえええええ!?」
「れーみゅあまあまだべだいいいいいい!」
「まりちゃあかちゃんちゅくりたいいいいい!!」
「うるさいんだぜ!さっさとくるんだぜ!」
ぷーすぷーす!
「いちゃいいいい!!きゃんにんしてえ……」
また、赤ゆを連れていかれてしまうのか。
「いいかどれいども!こんどくるまでにはおちびをいっぱいつくっておくんだぜ!できてなかったらみなごろしだぜ!」
そう宣言し、りぇーむとまりちゃを載せたスィーは走り去った。
モヒまりさに連れていかれた赤ゆがどこへ行くのか、実は親ゆっくりも詳しくは知らない。
わかることは、連れ去られたが最後、連れていかれたゆっくりはもう二度とゆっくり出来ないということだ。
「りぇーむ!まりちゃ!いもうちょおおおおお!!」
れいみゅは泣きじゃくった。
そんな様を見て、父まりさは、これから生まれるおちびちゃんを犠牲にしてでもこのれいみゅを育てようと判断した。
そのためには……
「れいむ、きくんだぜ。これからまいにちおちびちゃんをつくるんだぜ」
「ゆ?」
「そして、まいにちモヒまりさにおちびちゃんをさらわせるのぜ!」
「!?はぁぁああああ!?なにいってるのおおおお!?」
「そうすれば、このおちびちゃんだけはそだてられるとおもうのぜ」
「どのこもかわいいれいむのおちびちゃんでしょおおおおおおお!?ばかなの!?しぬの?」
「れいむ。これはもうしかたないことなのぜ。おちびちゃんをつくってモヒまりさにとられるか、このおちびちゃんがさらわれるか。どちらかなのぜ」
「ゆゆゆゆ……」
その晩、二人のゆっくりは遅くまで話し合った。
結局、母れいむは父まりさの言う事に従うことにし、れいみゅを育て、他のおちびちゃんは見捨てることにしたのだ。
「いいかい、おちびちゃん、よくきいてね。」
「モヒまりさにつれていかれたら、にどとゆっくりできないんだぜ。」
「モヒまりさにさえきをつけておけば、ゆっくりできるよ。」
「まりさたちは、おちびちゃんをそだてることにきめたんだぜ!」
「くちのなかにかくすから、モヒまりさがきたとき、おちびちゃんはれいむのそばにいてね!」
「ゆぅ……」
「いもうとがさらわれてもさわいじゃだめなんだぜ」
「れいむたちがいちばんかわいくおもってるのは、おちびちゃんだよ」
「ゆ!ゆっくちりきゃいしちゃよ!」
親ゆっくり達はすりすりすっきりをして、母れいむは蔦を生やした。
朝。
「いもーちょ、いもーちょ、うれしいなー」
無邪気に妹が実ったことを喜ぶれいみゅ。
父まりさは、
(いもうとちゃんたちはゆっくりできないうんめいなんだぜ、ごめんだぜ……)
と思ったが、口には出さなかった。
あれから、定期的にモヒまりさはれいみゅのうちを訪れては、親たちに暴力をふるい、
暴言を吐き、かわいいかわいい妹たちを攫っていった。
最初こそ泣きわめいたものの、親ゆっくりもれいみゅも、妹たちが攫われることに次第に慣れてきた。
また、親ゆっくりはほぼ毎日のようにすりすりすっきりをするので、毎日妹が生まれるのだった。
親たちは、妹たちにはモヒまりさの恐怖を教えなかったし、かばわなかった。
逆に、モヒまりさに連れていかれたらどんなにゆっくり出来るかを説いた。
れいみゅにだけは、妹が連れていかれた後、
「モヒまりさのところにいったらゆっくりできないよ」
と事あるごとに言い聞かせた。
そんなこんなで、妹たちは毎日のようにモヒまりさに攫われていった。
それが日課となった頃には、父まりさは毎日妹たちをおうちの外に出して、モヒまりさに献上した。
モヒまりさも、わざわざ怖がらせるようなことをしなくても、親ゆっくりたちが従順に子供を差し出すので、暴力も振るわず、暴言も吐かなくなった。
ただただ単純な作業として、淡々と連れて帰るようになったのである。
その結果、決まった時間にしかモヒまりさが来なくなった。
そこから計算して、れいみゅが外出できるモヒまりさが来ない時間も決まっていった。
モヒまりさが来ない時間を縫って、父まりさはれいみゅに狩りの仕方を、母れいむはけっかいっ!の作り方や、おうたの歌い方を教えた。
れいみゅはゆっくりしたい一心でどんどん覚えた。
子ゆっくりを過ぎ、若ゆっくりになる頃には、一通りのことが出来るようになった。
そして、モヒまりさが決まった時間に来ることも、毎回連れ去られる妹も、それが「当たり前のこと」として定式化したある日のことである。
れいみゅは少しでも家族のために貢献したいと思っていた。
そこで、父まりさに教わった狩りを独りですることにしたのだ。
時間も忘れて狩りをしていると、向こうから何かが近づいてくる気配がした。
しかしそこはゆっくりの本能、自分が隠されて育てられていることも忘れ、ついつい大声で挨拶してしまった。
「ゆっくりしていってね!!!」
やばいと理性で思ったときにはすでに遅かった。
影はどんどん大きくなり、
「むっきゅりしていってね!!!」
と言った。
どうもそのゆっくりは「ぱちゅりー」という名前らしい。
れいみゅは「れいむ」「まりさ」以外のゆっくりの事を知らなかった。
れいみゅは、もしモヒまりさに見つかると連れて行かれるかもしれないとの配慮から、両親に隠されて育っていたので、
家族以外のゆっくりに会うのが初めてであったのである。
「こんにちは、れいむ。あなたここらでみないかおね。」
「ゆ!れいみゅはモヒまりさからかくされてそだったからだよ。」
「!れいむもなの!じつはぱちぇもなのよ!」
ぱちゅりーもれいみゅと同じようにして隠されて育ったゆっくりだった。
母はぱちゅりー、父はありすというゆっくりで、ぱちゅりーのおうちにもモヒまりさが出没し、毎日おちびちゃんを連れていくのだそうだ。
いったいモヒまりさとは何なのだ?
なぜおちびちゃんがそんなにも大量に必要なのか。
ぱちゅりーの話を聞いて初めて疑問に思ったれいみゅだったが、考えてもわからぬことと思い直した。
なにしろそれほどモヒまりさの存在はれいみゅにとって「当たり前」だったのだ。
れいみゅとぱちゅりーの二人は同じ境遇ということもあってか、すぐに仲良くなった。
会ったその日から毎日、妹達がモヒまりさに連れていかれることも忘れて、れいみゅはぱちゅりーと会った。
「むきゅ!きょうはたべられないきのこのみわけかたをおしえてあげるわね!」
「ゆわぁー、すごいね!」
ぱちゅりーは非常に博識で聡明であり、れいみゅは飲み込みが早く、おだやかで器量が良かった。
「きょうはれいみゅがおうたをうたうよ!」
「ゆゆー ゆっくりー していってねー♪」
「むきゅん、いいおうたね!ぱちゅにもおしえてほしいわ。」
そんな二匹が恋仲になるのにはそうは時間はかからなかった。
似た二人が結ばれるのは運命の必然とでもいえようか。
「れいむ。ぱちゅりーといっしょにずっとむっきゅりしていってね!!!」
ぱちゅりーの方からプロポーズしてくれた。
「!!」
「ゆうぅーん、うれしいよぉー。ゆっくりしていってね!!!」
そうして、二匹は結ばれ、親元から独立し、巣を作った。
幸い、森にごはんさんは食べ尽くせないくらいたくさんあったので、何一つ困ることはなかった。
それどころか、ぱちゅりーとの生活は、親元にいた時の妹が攫われてゆっくり出来ない気持ちなどとは無縁であった。
・
・
・
長老は言葉を続ける。
「じつに、つみぶかいことじゃ。」
「いもうとたちはぜんいんさらわれて、えいえんにくるしんでいるというに、わしは……」
「いっさいかえりみることなく、ゆっくりをあじわっていたのじゃからな……」
「む、むきゅー」
「そして、わしは、とうぜんそのむくいをうけることになったのじゃ。」
・
・
・
れいみゅは、ほどなくぱちゅりーとの子供を授かったのである。
母体はれいむ。
すりすりすっきりーによる植物性妊娠で、れいむが三匹、ぱちゅりーが二匹実っていた。
「ゆゆーん!おちびちゃんゆっくりうまれてきてねー」
「むきゅーん!かわいいわあ!」
おちびちゃんを見ている時のゆっくりした気持ちと言ったらなかった。
これほどのゆっくりがこの世にあったのだろうか。
ぱちゅりーに告白されたとき、ゆっくりできた。
おちびちゃんが実ったとき、ゆっくりできた。
そして今、おちびちゃんがこの世に生を受けたとき。
他のすべてのことを忘れてしまえるほど、ゆっくりした気分だった。
ぷちり。
「ゆっくちちていっちぇね!!!」
ゆん生最高のゆっくりとはこのことだ。
「ゆっくりしていってね!!!」
「さすがぱちぇのこね。ゆっくりしてるわぁー。」
子供たちが全員生まれたら、かつて自分がされたように、茎を食べさせ、うんうんを処理してやり、寝かせてやる。
れいみゅは、ゆっくり出来ないことなどすべてを忘れて、そんなゆっくりがいつまでも続くと思っていた。
そう、モヒまりさのスィーががなりたてる爆音を聞くまでは。
ドドドドド!!
「ゆらぁ!カスゆっくりども!まりささまのおとおりだぁ!!!」
そんな!
そうだった。
ここはモヒまりさの縄張りだった。
れいみゅもぱちゅりーもゆっくりしすぎて失念していたのだ。
「!!!」
「れいむ、おちびちゃんをかくすのよ!」
「ゆ!おちびちゃんたち!れいみゅのおくちにかくれてね!」
「「「ゆっくちりかいしちゃよ!!!」」」
「まっちぇー!まだうんうんがおわっちぇにゃいよー!」
ぐずぐずしている赤れいむが一匹、まだお口の中に隠れていないというのに、
モヒまりさは無情にもゆっくりの気配を感じてれいみゅの巣に入ってきてしまった。
「ん!?なんなんだぜここは。ゆっくりのけはいをかんじてきてみれば、しらないゆっくりがいるんだぜ。」
おちびちゃんを見つけてにやけるモヒまりさ。
「くっくっく。まあ、そんなことどうでもいいのぜ。このおちびはまりささまがいただいてってやるから、ありがたくおもうのぜ!」
「ひゃっはー!くそちびはおもちかえりだー!!」
「にゃんにゃのごれえええ!!おかーしゃんたしゅけちぇーーーー!!!」
「それにしてもうんうんまみれできたないクソカスれいむだぜ。おおくさいくさい。」
「まちなさい!」
ぱちゅりーが叫んだ。
「おちびちゃんをつれていくことはゆるさないわよ!」
モヒまりさは不敵に笑う。
反抗的なゆっくりは久しぶりで、もう随分とやっていなかったやりとりだ。
もうみんな従順に子供を差し出すので、すっかり忘れていた。
そういえば、最近暴力も振るっていない。
いいうさばらしができそうだ。
「ほーう。ゆるさなかったらなんなんだぜ?」
言いながら、モヒまりさはぱちゅりーに体当たりを仕掛ける。
れいみゅの目にはそれほど強い体当たりとは思えなかったが、ぱちゅりーは巣穴の最奥まで吹っ飛んだ。
「ゆげえええええ!」
かつて、れいみゅを守った父まりさとまったく同じだ。
……
いやだ。
最初のおちびちゃんを守るために、モヒまりさに後のおちびちゃんを差し出し続ける?
出来るわけがない。
承服できるわけがない。
かわいいかわいい、あんなにゆっくりとしたおちびちゃん。
冗談ではない。
れいみゅは、赤ゆっくりを口に隠したままなのを忘れ、モヒまりさに飛びかかった。
「ゲスなモヒまりさはしねええええええ!!!」
ドガッ!!!
弾き飛ばされたのはもちろん体格の小さいれいみゅだ。
弾き飛ばされて壁にぶつかった衝撃で口が開き、おちびちゃんが三匹ほど口から落ちてしまった。
「ゆ、まだかくしていたのかぜ!」
「ぜんいんつれていくぜ!これでまりささまのひょうていもうなぎのぼりだぜ!!」
ひょうてい?
なんのことだ?わからない。
そんなことより、おちびちゃんだ。
「「「「おきゃーしゃーん!たしゅけちぇーーーー!!!」」」」
モヒまりさに捕獲された赤ゆっくりは全員泣き叫んでいた。
れいみゅの口に唯一残った赤ぱちゅりーは反応がない。
気絶しているようだ。
れいみゅは飛ばされた衝撃と痛みと絶望でピクリとも動けなかった。
つがいのぱちゅりーも動く気配がない。
だれか!
だれかたすけて!!!!
どんなに心の中で助けを求めても、誰も来ないし、奇跡は起きなかった。
……現実は非情である。
一方、モヒまりさは四匹も赤ゆっくりを手に入れたことで有頂天になっていた。
れいみゅの口にまだ赤ゆっくりが残っているかもしれない、なんてことを考える事もできないくらいに。
「ほーくほーく。いいかくずども!こんどくるときまでに、またあかゆっくりをつくっておくのぜ!」
「そしたら、またまりささまがいただいてやるのぜ。ひゃーっはっはっは!」
ブロロロロロ!
そうして嵐は去った。
一瞬の出来事だった。
一瞬でれいみゅは子供の大多数を失ったのだ。
しばらく呆然としていたれいみゅだが、のそのそと口の中の気絶している赤ぱちゅりーを出して気つけを行う。
その時、つがいのぱちゅりーの方から音がした。
「むぎゅうううう!むぎゅうううう!」
「!!ぱちゅりー!」
「むぎゅうんんんん!!」
「ぱちゅりー!おちびちゃんがつれていかれちゃったよ!!どうするの!!!」
ぱちゅりーの方を振り向いたれいみゅは驚いた。
普段やさしい顔のぱちゅりーがまるで鬼のように見えたのだ。
「むぎゅうう!!れいむ。ぱちぇはモヒまりさにこれいじょうおちびちゃんをわたすきはないわ!!」
「あたりまえでしょおおおおお!!さっきさらわれたおちびちゃんもとりかえしてきてねええええええ!!!!」
「それなら、モヒまりさをたおすしかないわね。」
「じゃあたおしt…ゆ、ゆぅ……でもモヒまりさはつよすぎてたおせないよ……」
「ぱちぇにまかせてね!もうさくせんはかんがえたわ!」
ぱちゅりーは翌日かられいみゅと赤ぱちゅりーには一切構わず、巣から出て、モヒまりさを倒すため、他のゆっくり廻りをしていた。
そのためれいみゅは小さい赤ぱちゅりーを独りで育てなければならなかった。
どうも、ぱちゅりーによる捜索によれば、れいみゅの巣の周りでは、20家族ほどがモヒまりさの被害にあっているということだ。
モヒまりさがどこに、何のためにおちびちゃんを連れていくのかを知っているゆっくりはいなかった。
全員が「ゆっくりできなくなるということはなんとなくわかる」レベルだった。
また、モヒまりさが各家庭におちびちゃん回収に来る時間は決まっていることがわかった。
ここから、ぱちゅりーは他の被害ゆを集めてモヒまりさをフルボッコすれば倒せる、との結論に達したようだ。
ちなみに集められた被害ゆにはれいみゅの親も含まれていた。
あれから律儀に毎日子供を作ってモヒまりさに献上していたらしい。
馬鹿正直というか、牙が抜かれているというか……
さて、ぱちゅりーによれば、モヒまりさを永遠にゆっくりさせるためには、まずは退路を断つことが重要だという。
確かに、モヒまりさは生身も強いが、もし討ち損じてスィーによる高機動で逃げられた場合、普通のゆっくりの速度では絶対に追いつけないため、
傷を癒してからゆっくりと各個撃破されてしまうだろう。
作戦としては、ぱちゅりーの家の周りに被害ゆを伏せておいて、モヒまりさがぱちゅりーの家に入ったら、まずは被害ゆ達でスィーを走行不能にする。
この際、なるべく音を立てずに破壊することが必要である。
ぱちゅりーの家では、なるべくモヒまりさを長いこと家に置いておくため、れいみゅがごねて時間を稼ぐ。
時間稼ぎの間にスィーが走行不能になったら、保険要員を除いた全員でぱちゅりーの家に入り、モヒまりさをフクロにする。
保険要員とは、万が一巣の中でモヒまりさを討ち損じた場合、トドメを刺すために巣の周囲に配置しておく要員である。
ゆっくりが考えた作戦にしてはなかなかまともであろう。
この作戦を思いついてから、ぱちゅりーは自らをおちびちゃんの父、蜂起の旗印であることに掛け、「ふぁざちゅりー」と呼んだ。
ドドドドド!
スィーの音が響き渡る。
「きたわ!みんなしっかりやるのよ!」
「「「「「「ゆっくりりかいしたよ!!」」」」」
モヒまりさはそんなゆっくり達の企みなどつゆ知らず、今日も絶好調だ。
「ひゃあ!がまんできねえ!きっどなっぷだぁ!」
乱暴にスィーを止めると、ぱちゅりーの家にずかずか入ってくる。
「ゆらゆらぁ!きょうもきちんとあかゆっくりをつくっただろうなあ!?」
赤ぱちゅりーは荒事に備えて、今回ばかりは外に隠した。
れいみゅは打ち合わせ通り、ごねにごねて時間を稼ぐつもりだ。
「おまえにわたすおちびちゃんなんているわけないでしょおおおおお!」
「はんこうするのかぜ?」
モヒまりさはれいみゅを壁まで吹き飛ばし、上に乗って飛び跳ねる。
問答無用とはこのことだ。
れいみゅは時間が稼げるか不安になった。
「まりさはいったぜ。あかゆっくりをつくっておけとなあ!!!」
「ゆげっ、ゆげっ、おまえに、わたすくらいなら、、つくる、わけないでしょおおお、ばかなの、、、しぬの?」
「いつまでそのつよきがつづくかみものだぜ。」
「ゆげーっ、ゆげーっ!」
れいみゅは大量に餡子を吐き出した。
まずい。時間が稼げない。
おちびちゃん、ふぁざちゅりー、ごめんね……
「ん?そういや、つがいのぱちゅりーはどこいったのぜ?」
その時、巣の外から爆発するような音が響いた。
ふぁざちゅりーの指示でスィーが壊れたようだ。
「ん!?このおとはなんなのぜ?」
モヒまりさがそう言って振り返るより早く、ふぁざちゅりーに率いられた軍勢が家になだれ込んできた。
「!!???おまえらはなんなのぜえええ!?」
「「「「「ゲスなモヒまりさはしねえええええ!!!!」」」」」
一人一人はモヒまりさより小さくても、十匹を超えるゆっくりに同時に飛びかかられ、モヒまりさは吹っ飛んだ。
力比べで負けることなどありえなかったモヒまりさが初めて感じた痛みと恐怖だ。
「ゆひぃいぃぃい!?なんなのぜ?なんなのぜ?まりさがわるいことしたならあやまるんだぜ。だからたすけるのぜえええええ!!」
「うるさいよ、おちびちゃんをさらったゲス!!しんでつぐなってね!!」
「ゆぎゃああああああ!!!」
「ありすのかんじたこころのいたみはこんなものじゃないわよ!」
「ゲスなモヒまりさはれいむのかなしみをおもいしってね!」
ドスッドスッドスッドスッ!
「ゆ``っゆ``っゆ``っゆ``っ……」
モヒまりさはフクロにされ、穴という穴から餡子を噴出し、出餡多量で死んだ。
「「「「ゆっゆっおーー!!」」」」
「ふぁざちゅりーばんざい!!」
「やったよ!モヒまりさをたおしたよ!」
ゆっくり達は勝利に沸いた。
ついに、おちびちゃんを渡さなくて済むようになったのだ。
これから好きなだけゆっくりできる。
「ゆっくりー!ゆっくりぃーーっ!!」
ゆっくり達の歓声はいつまでも響き続けた。
・
・
・
「こうして、ふぁざちゅりーのてびきで、ゆっくりたちはひとときのゆっくりをあじわうことになったのじゃ。」
「むきゅ?ひととき?」
「うむ。そしてモヒまりさがいなかったこのころが、わしのいっしょうのうち、いちばんゆっくりしていたといえるじゃろうなあ。」
「わしはこのあいだに、ふぁざちゅりーとのおちびちゃんをそれはそれはたくさんつくった。」
「しかし、そのゆっくりもながくはつづかなかった。」
・
・
・
れいみゅはふぁざちゅりーとの間にできた沢山の子供に恵まれ、楽しくゆっくりと暮らしていた。
最初に出来た赤ちゃんだったぱちゅりーも今ではもう立派な若ゆっくりだ。
モヒまりさを倒すときに出来たゆっくりの間のコミュニティーでも、立派な若者として頭角を表していた。
ここには天敵もいないし、むーしゃむーしゃ出来なくなることもない、本当のゆっくりがある。
ああ、世はなべて、こともなし。
そんな風にゆっくりと日に当たっていたれいみゅの耳に、あの悪夢のような音が聞こえてきた。
ドドドドド!!
!!??
スィーの音!?
なぜ?モヒまりさは倒したはず。
いや、乗っているのは赤いおりぼんをつけたゆっくりのようだ。
前後して、大声が辺りに鳴り響く。
「カスゆっくりどもぉ!あらたにかんりゆっくりになったでいぶさまにあかゆっくりをさしだしなああああ!!」
「それとぜんにんのかんりゆっくりをえいえんにゆっくりさせたゴミにはせきにんをとってもらうよおおおお!!」
かんりゆっくり?
おちびちゃんを差し出す?
ぜんにん?
意味が分からない。
が、おちびちゃんが危ないのはわかる。
隠す?逃げる?
だめだ、ここはお外だ。
隠せないし、逃げられない。
また、一度ゆっくりを味わったれいみゅにはあの頃の素早さがもうなかった。
右往左往しているうちに、おちびちゃんは全員でいぶに捕獲されていた。
「おちびちゃんをはなせええええ!!」
ふぁざちゅりーはでいぶの横暴が我慢できず、無謀にも体格が二回りは大きいでいぶに飛びかかった。
でいぶは避ける様子もなく、ふぁざちゅりーの体当たりを受けると、軽くジャンプして、問答無用でふぁざちゅりーを押しつぶした。
ふぁざちゅりーは破裂して、即死した。
「みせしめ、みせしめっと。めんどうくさいから、こいつがぜんにんのかんりゆっくりをころしたさつゆんはんとしてほうこくしておくよ。」
「いいかグズども!こうなりたくなかったら、ていこうせずにでいぶにあかゆっくりをわたしてね!すぐでいいよ!!」
実際、管理ゆっくり?であるモヒまりさを殺した主犯はふぁざちゅりーであったのだから、偶然であろうが、でいぶは嗅覚が鋭かったといえるだろう。
そしてれいみゅの家族だけではなく、周囲のおちびちゃんをすべて捕獲し終えると、でいぶはスィーに乗って帰っていった。
その日の夜、コミュニティでは話し合いが行われた。
このままでいぶに屈しておちびちゃんを供給するのか、でいぶも倒すのかという話し合いだ。
ふぁざちゅりーが死んだことで、実質のまとめ役はれいみゅとふぁざちゅりーの最初の子供である若ぱちゅりーに移っていた。
若ぱちゅりーは、他のぱちゅりーと区別するため自ら「ろごすちゅりー」と名乗った。
ろごすちゅりーの考えでは、モヒまりさからでいぶに変わったところで、特に戦闘力が変わったわけでも、こちらに対する迫害が増減したわけでもない。
また、モヒまりさを制裁した後、でいぶが来るまでに享受できたゆっくりは筆舌に尽くし難かった。
もしでいぶを制裁したとすると、その後、次の管理ゆっくりはおそらくそのうち送り込まれてくるだろう。
が、それで油断してゆっくりしたりせず、みんなで気をつけておけば、管理ゆっくりが投入された直後に再制裁が可能になるはずである。
そういうサイクルを作れば、みんなでゆっくり出来るはずだ。
でいぶの制裁は、以前モヒまりさを制裁した時と同じやり方で行えばよい。
そうと決まれば、次にでいぶが来た時がでいぶの命日だ。
でいぶはもちろんそんな企みを知らず、次の日、のうのうと赤ゆっくりを取りに来て、被害ゆ達に制裁された。
ろごすちゅりーは、次も同じように管理ゆっくりが送り込まれるものと思った。
計画通りだ。
……しかし、次に来たのは管理ゆっくりではなく、人間だった。
人間は見たこともないほど大きなスィーに乗ってやってきて、鉄のホースを片手になにやら薬を散布し始めた。
ろごすちゅりーの見ている前で、薬を浴びた仲間のゆっくり達は悶死した。
その瞬間、ろごすちゅりーは悟ったのだ。
今、自分たちが居るこの場所は、ゆっくりプレイスなんかではない。
この人間を倒さない限り、ゆっくりはゆっくりを味わうことは出来ない。
今まで「管理ゆっくり」と言われていたのは、この人間のさしがねだ。
ここは、まさに赤ゆっくりをゆっくりに作らせて、人間が搾取するための場だったのだ。
そのことをれいみゅに告げ、勝てるはずがないので逃げるように言うと、ろごすちゅりーは人間に突っ込んでいった。
れいみゅがろごすちゅりーを見たのはそれが最後だった。
そしてれいみゅは気を失った。
・
・
・
長老は静かに言葉を続ける。
「「ふぁざちゅりー」もいさましかったが、「ろごすちゅりー」ほどあたまのいいゆっくりはいなかった。」
「おやばかというてんをさしひいても、そうとしかおもえん。」
「なにせ、ゆっくりのせかいのなぞをときあかし、じょうしきをうちやぶったんじゃからな。」
「しかし、あといっぽというところで、うんがなかった。」
「「にんげん」にやられてしまったのじゃ。」
「ゆっくりのしんのかいほうは、つぎのせだい、「せいんちゅりー」までまたねばならなかった。」
・
・
・
れいみゅが気がついたのは、人間が去って数時間してかららしかった。
なぜれいみゅが薬の散布後も生きていられたのかはわからない。
わからないが、見渡す限りのゆっくりの死骸を見て、絶望しかけた時だった。
どこかで「むきゅー」という声が聞こえたのだ。
果たして、それは生き残りの赤ぱちゅりーだった。
あんなにたくさんいた群れの仲間は、人間の薬散布によって二匹にまで減った。
血はつながっていないが、れいみゅは生き残りの赤ぱちゅりーを何とかして育てたかった。
生き残ったのがかつて自分が愛したぱちゅりー種だという偶然もあったし、それがろごすちゅりーの意思だと思ったからだ。
れいみゅは薬散布後の今いる場所はゆっくり出来ないと思い、三日かけて西に移動した。
西にはモヒまりさやでいぶのような管理ゆっくりがいたが、長い間の管理ゆっくりとの戦いで、もう隠れ方は分かっていた。
れいみゅは、赤ぱちゅりーに「せいんちゅりー」と名づけ、必死に育てた。
せいんちゅりーは、若ゆっくりとなってから、見事西方の指導者的立場まで上り詰めた。
せいんちゅりーは育ての親であるれいみゅから管理ゆっくりのことや、
ろごすちゅりーが解き明かした世界の謎の核「人間」について聞いていたため、これからどうすればいいかを総合的に考えることが出来た。
管理ゆっくりは倒すことが出来る。
しかし、管理ゆっくりを倒し続けると人間が来る。
つまり、もし「本当のゆっくり」を味わいたかったら、管理ゆっくりを倒すと現れる人間を、さらに倒すしかない。
しかし人間を倒せばゆっくり出来るのか?
いや、次の管理ゆっくりが現れたように、次の人間が来るだろう。
次の人間を殺したら?
人間よりさらに強いなにかがくるかもしれない。
そこには無限の構造があるか、なかったとしても、人間すべてを殺し尽くさない限り、真のゆっくりは訪れない。
しかし、ゆっくりの身では、管理ゆっくりに勝つことはできても、人間一人だって殺せるとは思えない。
なにせ一人で群れのゆっくりをほぼ全滅させたのだ。
つまり、ゆっくりには、もう諦めるか逃げるしか残されていないのだ。
逃げよう。
管理ゆっくりのいない場所へ。
人間のいない場所へ。
管理ゆっくりがいない場所なら人間の手も及ぶまい。
なにせ管理すべきゆっくりがいないのだから。
そう考え、せいんちゅりーは、西へ西へと群れを進めていった。
途中で会った管理ゆっくりはすべて永遠にゆっくりさせた。
そうして、群れは、ついに「柵」に出会った。
西へ西へと進んでいたら急に飛び越えられないほど高い柵が現れたのだ。
ここまで来るのに32匹の管理ゆっくりを倒し、群れの7割は永遠にゆっくりした。
突如、せいんちゅりーは、ここを越えれば管理ゆっくりはいないと悟った。
なぜかはわからない。
識らされたのだ
柵は飛び越えられる高さではない。
しかし、飛び越えられないなら、潜ればいいのだ。
せいんちゅりーの号令のもと、れいみゅ含め、残ったゆっくり達は死力を尽くして穴を掘った。
穴を抜けると、果たして、そこには、管理ゆっくりと人間がいない、真のゆっくりが存在した。
ついに、ゆっくりは人間の魔の手から逃れたのである。
・
・
・
「こうして、ゆっくりはゆっくりらしさをとりもどせたというわけじゃ。」
「しかしのぅ……」
「わしが「れいみゅ」じゃったころ、おちびちゃんをとられることさえがまんすれば、すきなだけむーしゃむーしゃもすーやすーやもできた。」
「いまはどうじゃ?おちびちゃんはとられんかわりに、じゅうぶんむーしゃむーしゃできるときはすくない。」
「ときをわきまえずすーやすーやなんかしてたら、いっぱつでれみりゃにえいえんにゆっくりさせられるじゃろう。」
「おちびちゃんだって、ぜんいんをおとなになるまでしなせることなくそだてられるいえはあるまい。」
「それは、おちびちゃんをさしだすかわりにゆっくりするのとどうちがうんじゃろうなあ。」
「……いいかいわかいの。ほんとうのゆっくりとはなにか、よーくかんがえねばならんぞ……」
「なぁに、おぬしになら、できる。なにせおぬしは「せいんちゅりー」のちをひいているんじゃからな。」
ふと、虫の鳴き声が聞こえ始めた。
急に現実感を取り戻した長老と若ぱちゅりーの周りに、夏の鬱蒼とした空気が流れこんできたようだった。
「ふうー。さーて、どこまではなしたかのう。」
「……そうじゃ。これからは、おぬしたちのじだいだということじゃ。」
長老は今まで見ていた若ぱちゅりーを見据えるのをやめ、あらぬ方向を見始めた。
視線がぶれている。
「あぁ、おもいかえせば、、たのしい、ゆんせい、、、、じゃったのう……」
長老は大きく息を吐いた。
「ふぁざちゅりー、、きいてる?、、れいみゅはがんばったよ。もう、いいよね……?」
話に栄養を使いすぎたためか、長老はそう呟くと、ゆっくりと力なく崩れ落ちた。
目を開けているのか閉じているのかわからないほど皺の寄った瞼から、涙がこぼれおちる。
信じられないとばかりに若ぱちゅりーは目を見開いて、聞いた。
「!ないてるの?ちょうろう。」
長老は若ぱちゅりーの問いには答えなかった。
真昼間だというのに、若ぱちゅりーの頭上を、流れ星が一筋通り過ぎた気がした。
「!!??」
「むきゅううう!?ちょうろう!?ちょうろうーーー!!」
「たいへんよーーーっ!みんなぁー!みんなぁーっ!!ちょうろうが!ちょうろうがーーーっ!」
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既作
anko1940 狂牛
anko1952 ゆイアン・メイデン
anko1966 剥製れいむ
anko1974 森の賢者は論理がわかる
anko2025 うみのいえ
・ゆ虐の偉大なる先達を多いにリスペクトしました。多謝。
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ここはとてもゆっくりしたゆっくりの群れ。
森はゆっくりの平和で満ちていた。
れみりゃは居るし、ごはんさんが足りないことはあるけれど、普通の常識的なゆっくりの群れだ。
長老れいむは、しわしわの体を引きずって、切り株の上に座っていた。
傍目から見ても、狩りもできず、もう半年も持たないであろうその老体。
どうやって暮らしているのだろうか。
いったい何年生きているのか。
普通、経年劣化でしわしわになったゆっくりなど観察されることはない。
その前に死んでしまうのだ。
このれいむは、おそらく栄養状態が非常によく、なぜか奇跡的に2~30年生きていると思われる。
そこへ、群れの一員であろう若い好奇心旺盛なゆっくりが寄ってきた。
「むきゅ!ちょうろう!えさをあげるから、またゆっくりむかしのおはなししてね!」
長老は若者の方をじろりと睨むと、ゆっくりと若者に向き合い、話しだした。
「…いいじゃろう。これはゆっくりがゆっくりできなかった、わしがまだあかゆっくりだったころのはなしじゃ。」
「わーくわーく」
「そのころのわしは「れいみゅ」といわれていての……」
・
・
・
れいみゅはなんの変哲もない野生ゆっくりとして生を受けた。
母れいむと父まりさの最初のおちびちゃん。
茎の一番先っぽの実ゆっくりとして。
存分に母親の愛と栄養を受け、生まれる準備は整った。
ぷるぷる震えると、茎からポトリと落ちる。
「れいみゅ、ゆっくちうまれたよ!ゆっくちしていっちぇね!」
「「ゆっくりしていってね!!!」」
すぐに返事が聞こえた。
大きくて頼りがいがある父まりさと、優しい母れいむの声だ。
続いて、次々と妹達が茎から落ちて誕生した。
「ゆっくちしていっちぇね!!!」
自分も出来るだけの声で挨拶を返す。
「ゆっくちしていっちぇね!!!」
妹の構成は、順に、まりしゃ、りぇーむ、まりちゃのようだ。
妹たちが全員生まれたら、生まれて初めてのごはんだ。
「れいみゅ、おなかしゅいたよ!」
「まりちゃもー!」
「りぇーむも!」
父まりさは、母れいむの茎をプチッとちぎって、床に置いてくれた。
「おちびちゃんたち、ごはんだぜ。ゆっくりたべるんだぜ!」
「ゆわー、ゆっくちいただきまーしゅ!」
「むーしゃ、むーしゃ、しあわしぇえええええっ!!」
「むーしゃ、むーしゃ、むーしゃ!」
「まりしゃばっかりじゅるいよっ!」
「これはまりしゃのごはんしゃんなんだじぇ!」
「ゆぴぃいい!」
「しあわしぇええ!!」
「おちびちゃんたち、けんかしちゃだめだよ!」
生まれて初めて食べる食事は、ほんのり甘く、ほんのり苦く、みずみずしくて、ほっぺたが落ちそうなほど美味しかった。
これからのれいみゅ達のゆん生が幸福で一杯なことを微塵も揺らがせることのないような幸福な味。
「ゆーん!おちびちゃんたち、ゆっくりしてるよー!」
「さすがまりさとれいむのおちびちゃんたち!ゆっくりしてるんだぜー!」
ご飯のあとはうんうんだ。
「れいみゅうんうんするよ!しゅっきりー!」
「まりしゃもー!」
「「しゅっきりー!」」
「く、くしゃい!ゆっくりできにゃいいいい!」
「ゆんやああああ!」
「かたずけるからまつんだぜ。」
ところ構わずうんうんする子供を叱ることもなく、優しく片付けてあげる父まりさ。
どうも親もゲスでなく、れいみゅは恵まれているようだ。
うんうんも出たし、子供たちは寝る子と、遊ぶ子で分かれたようだ。
れいむ種は寝て、まりさ種はころころなどして遊んでいる。
野生の典型的なゆっくり家族の、一番幸せな一コマである。
そんな折、巣穴のけっかいっの向こう側から大きなスィーの走る音が聞こえてきた。
親ゆっくりに戦慄が走る。
「まさか、ゆっくりがり!」
「まずいんだぜ!おちびちゃんたちをかくすんだぜ!」
「おちびちゃん、れいむのおくちにかくれてね!」
「ゆ?」
「まりしゃはあそびたりないんだじぇ!」
「いいから!はやくしてね!」
「やじゃやじゃー!あそぶのじぇー!!」
手間取っているうちに、スィーから一匹のゆっくりが降りてきて、巣穴に向かってきた。
乗っていたのは体格がよく、お帽子が不自然に真ん中だけ盛り上がっている、人相の悪いまりさだ。
優に父まりさの倍の体積はありそうである。
「ひゃっはー!おぶつはしょうどくだぜーー!!」
「ゆげえ!モヒまりさ!れいむ、はやくするんだぜ!」
「ぷくうぅぅ!ここにはおちびちゃんはいないよ!どっかいってね!」
母れいむはタイミング的にもう間に合わないと判断し、遊んでいたまりしゃを口に入れるのを諦めた。
そして精一杯のぷくーをしておちびちゃん三匹を口に隠したときに出来る膨らみをごまかす。
父まりさは、れいむの口の中に隠れ切れなかったまりしゃを背中に隠すように少し移動した。
しかし、その不自然な動きはモヒまりさにバレていたようだ。
「おい!そこのグズまりさ!いまなにをかくしたんだぜ!」
「ヒィ!な、なんのことだぜ……」
「とぼけるんじゃないぜ!わかってるんだぜ!」
そう言いながら、モヒまりさは父まりさにいきなり体当たりをした。
「ゆげえええ!」
一撃で巣穴の最奥まで吹っ飛び、餡子を吐きかける父まりさ。
親が吹っ飛んだせいで、隠されていたまりしゃはモヒまりさの目の前にあらわになった。
「なんだ、やっぱりいたんだぜ!さすがまりささまのきゅうかくなのぜ!」
「やめてえええええ!そのおちびちゃんはだいじなこなんでずうううう!!」
「うるさいんだぜ!おちびをうんだことはほめてやるのぜ!このくずれいむ!」
ドガッ!
立ち塞がる母れいむもモヒまりさに弾き飛ばされる。
壁に激突した痛みですぐには動けない母れいむに、モヒまりさは罵声を浴びせる。
「どれいはおちびをいっぱいうんで、まりささまにけんじょうするのがしごとなんだぜ!」
「わかったら、もっといっぱいうんでおくんだぜ!」
「お、おちびちゃんんんん!!!!つれてかないでええええええ!!」
「おら!こっちくるんだぜ!まったく、ぐずのこどもはトロいんだぜ!」
モヒまりさは催促のためにまりしゃを棒でつつく。
「いちゃいいいいいい!!やじゃやじゃやじゃー!やめちぇええ!」
「ひゃーっひゃっひゃ。はやくくるんだぜ。」
母れいむが体制を直した頃には、スィーの発進音が響き渡り、今さっき生まれたばかりのまりしゃはモヒまりさに連れていかれてしまっていた。
「ゆんやああああ!おちびちゃんがあああああ!!!」
「まりさが……よわいから……ごめんなんだぜ、れいむ……」
「ゆぐっ、ゆぐっ…」
幸せ一家にいきなり訪れた不幸。
れいみゅは何が何だかわからず、恐怖も忘れてぽかんとしていた。
「さんにんもおちびちゃんがかくせたことが、よかったとかんがえるべきなのぜ……」
「なにいってるのおおおお!?」
「もしひとりもおちびちゃんがモヒまりさにわかるようにいなかったら、れいむのくちをあけさせられてたかもしれないぜ。」
「ゆぐぅ」
「そうなったら、おちびちゃんはぜんいんつれてかれてたんだぜ。」
「ゆ……」
「だから、まりさたちにできることは、のこったおちびちゃんたちをしっかりそだてることだぜ!」
「ゆ、そ、そうだね……」
深刻な雰囲気で何を聞いたらいいかわからないれいみゅ。
とりあえず一番気になったことを聞いてみようと思った。
「おかーしゃん、いもうちょはどうなっちゃの?」
「!!」
「……なんでもないよ、しんぱいいらないからね。」
「でみょ、れいみゅは、「おちびちゃんはしらないでいいことなんだぜ!」」
「!」
「もうよるだし、すーやすーやのじかんだよ!おかーさんがおうたをうたうよ。」
途中で割り込まれて疑問は晴れなかったが、母れいむのおうたはとてもゆっくりできたので、すぐに子供たちはすーやすーやしだした。
よく聞いてみれば、母れいむのおうたには悲しげな旋律が宿っていた。
父まりさは、それを聞き、おちび一人さえ守れない無力な自分に耐えきれず、泣いていたようだ。
この、妹が連れ去られるというショッキングな事件が、れいみゅが生まれて最初の記憶だ。
四日後、モヒまりさはまたれいみゅのうちを訪ねてきて、おちびがいないかどうか嗅いで回っていた。
「ぷくぅううう!」
「おちびちゃんなんていないんだぜ。」
「ひゃっはーー!!おちびがいないってえぇえ?いいかくずども!おまえらはおちびをつくって、けんっじょうっすることでいきていられるってことわすれてるんじゃないかだぜ?」
そんなことをわめき散らしながら、父まりさに体当したり、体当たりで転がった父まりさの上で跳ね回ったりした。
「ゆげっ、ゆげっ、わかったから!つぎにはつくっておくから!みのがしてほしいんだぜ……」
「ふん、ぐず!かす!ていのうっ!なまりさには、はいつくばってるのがおにあいだぜ。」
捨て台詞を言って去っていった。
今回もれいみゅと妹たちは母れいむの口に隠れ、事無きを得たのであった。
「ゆぅ、つぎもおちびちゃんがいないっていったら、おくちをあけろっていわれそうだぜ。」
「ゆううううう!?どうするのおおおお!?」
「ゆぅぅう……」
幸せいっぱいの家庭に生まれたはずが、少しずつゆっくり出来なくなっている気がして、れいみゅは困惑気味であった。
それから三日ほど、れいみゅ達は親にゆっくりの基本的な生活を教えてもらった。
曰くゆっくりは巣を作って暮らすこと。
狩りをしてご飯さんを手に入れること。
雨さんはゆっくりできないこと。
冬さんが来たら、巣でえっとうっすること。
冬さんが終わったら、きれいなお嫁さんを見つけて、おちびちゃんを作ること。
たまに見つけられるあまあまはすごくゆっくりできること。
そして、なによりもれいみゅ達はゆっくりするために生まれてきたこと。
これかられいみゅ達にはゆっくり出来る明るい未来が待っていること。
「ゆわぁー、すぎょいよー」
「まりちゃ、あかちゃんいっぱいちゅくる!」
「りぇーむ、あまあまたべちゃいいいい!」
「ゆわあ、おちびちゃんたち、ゆっくりしてるよー、ゆふーん」
「がんばってきたかいがあったんだぜ」
「あまあま!あまあま!」
「あかちゃん!あかちゃん!」
りぇーむとまりちゃは興奮して叫びながら跳ね回り、母れいむから少し離れてしまった。
まさにその時である。
ドドドドド!と音がして、モヒまりさのスィーが巣の目の前に現れたのは。
「ひゃあ!!がまんできないんだぜ!!らちだーーー!!」
音を聞いた途端、母れいむはものすごい素早さで一番近くに居たれいみゅを口内に隠した。
「お、いきのいいあかゆっくりがにひきもいるぜ!かんしんかんしん」
「おちびちゃんんんん!!!!」
「ちがうんだぜえええ!?」
「なにがちがうんだぜ?こいつらをつれていくことはけっていずみだぜ!」
「??りぇーむ、あまあまほしいよ。あまあまきゅれるの?」
「はぁん?あまあまだぁ?」
モヒまりさはニタリと笑った。
「おまえらは「あっち」につれていくんだぜ。「あっち」にはあまあまなんてないぜ!それどころか、くるしんでくるしんでしぬうんめいがおまえらをまってるのぜ!」
「ゆびゅううううううううう!?」
「!?なにじょれえええええ!?」
「れーみゅあまあまだべだいいいいいい!」
「まりちゃあかちゃんちゅくりたいいいいい!!」
「うるさいんだぜ!さっさとくるんだぜ!」
ぷーすぷーす!
「いちゃいいいい!!きゃんにんしてえ……」
また、赤ゆを連れていかれてしまうのか。
「いいかどれいども!こんどくるまでにはおちびをいっぱいつくっておくんだぜ!できてなかったらみなごろしだぜ!」
そう宣言し、りぇーむとまりちゃを載せたスィーは走り去った。
モヒまりさに連れていかれた赤ゆがどこへ行くのか、実は親ゆっくりも詳しくは知らない。
わかることは、連れ去られたが最後、連れていかれたゆっくりはもう二度とゆっくり出来ないということだ。
「りぇーむ!まりちゃ!いもうちょおおおおお!!」
れいみゅは泣きじゃくった。
そんな様を見て、父まりさは、これから生まれるおちびちゃんを犠牲にしてでもこのれいみゅを育てようと判断した。
そのためには……
「れいむ、きくんだぜ。これからまいにちおちびちゃんをつくるんだぜ」
「ゆ?」
「そして、まいにちモヒまりさにおちびちゃんをさらわせるのぜ!」
「!?はぁぁああああ!?なにいってるのおおおお!?」
「そうすれば、このおちびちゃんだけはそだてられるとおもうのぜ」
「どのこもかわいいれいむのおちびちゃんでしょおおおおおおお!?ばかなの!?しぬの?」
「れいむ。これはもうしかたないことなのぜ。おちびちゃんをつくってモヒまりさにとられるか、このおちびちゃんがさらわれるか。どちらかなのぜ」
「ゆゆゆゆ……」
その晩、二人のゆっくりは遅くまで話し合った。
結局、母れいむは父まりさの言う事に従うことにし、れいみゅを育て、他のおちびちゃんは見捨てることにしたのだ。
「いいかい、おちびちゃん、よくきいてね。」
「モヒまりさにつれていかれたら、にどとゆっくりできないんだぜ。」
「モヒまりさにさえきをつけておけば、ゆっくりできるよ。」
「まりさたちは、おちびちゃんをそだてることにきめたんだぜ!」
「くちのなかにかくすから、モヒまりさがきたとき、おちびちゃんはれいむのそばにいてね!」
「ゆぅ……」
「いもうとがさらわれてもさわいじゃだめなんだぜ」
「れいむたちがいちばんかわいくおもってるのは、おちびちゃんだよ」
「ゆ!ゆっくちりきゃいしちゃよ!」
親ゆっくり達はすりすりすっきりをして、母れいむは蔦を生やした。
朝。
「いもーちょ、いもーちょ、うれしいなー」
無邪気に妹が実ったことを喜ぶれいみゅ。
父まりさは、
(いもうとちゃんたちはゆっくりできないうんめいなんだぜ、ごめんだぜ……)
と思ったが、口には出さなかった。
あれから、定期的にモヒまりさはれいみゅのうちを訪れては、親たちに暴力をふるい、
暴言を吐き、かわいいかわいい妹たちを攫っていった。
最初こそ泣きわめいたものの、親ゆっくりもれいみゅも、妹たちが攫われることに次第に慣れてきた。
また、親ゆっくりはほぼ毎日のようにすりすりすっきりをするので、毎日妹が生まれるのだった。
親たちは、妹たちにはモヒまりさの恐怖を教えなかったし、かばわなかった。
逆に、モヒまりさに連れていかれたらどんなにゆっくり出来るかを説いた。
れいみゅにだけは、妹が連れていかれた後、
「モヒまりさのところにいったらゆっくりできないよ」
と事あるごとに言い聞かせた。
そんなこんなで、妹たちは毎日のようにモヒまりさに攫われていった。
それが日課となった頃には、父まりさは毎日妹たちをおうちの外に出して、モヒまりさに献上した。
モヒまりさも、わざわざ怖がらせるようなことをしなくても、親ゆっくりたちが従順に子供を差し出すので、暴力も振るわず、暴言も吐かなくなった。
ただただ単純な作業として、淡々と連れて帰るようになったのである。
その結果、決まった時間にしかモヒまりさが来なくなった。
そこから計算して、れいみゅが外出できるモヒまりさが来ない時間も決まっていった。
モヒまりさが来ない時間を縫って、父まりさはれいみゅに狩りの仕方を、母れいむはけっかいっ!の作り方や、おうたの歌い方を教えた。
れいみゅはゆっくりしたい一心でどんどん覚えた。
子ゆっくりを過ぎ、若ゆっくりになる頃には、一通りのことが出来るようになった。
そして、モヒまりさが決まった時間に来ることも、毎回連れ去られる妹も、それが「当たり前のこと」として定式化したある日のことである。
れいみゅは少しでも家族のために貢献したいと思っていた。
そこで、父まりさに教わった狩りを独りですることにしたのだ。
時間も忘れて狩りをしていると、向こうから何かが近づいてくる気配がした。
しかしそこはゆっくりの本能、自分が隠されて育てられていることも忘れ、ついつい大声で挨拶してしまった。
「ゆっくりしていってね!!!」
やばいと理性で思ったときにはすでに遅かった。
影はどんどん大きくなり、
「むっきゅりしていってね!!!」
と言った。
どうもそのゆっくりは「ぱちゅりー」という名前らしい。
れいみゅは「れいむ」「まりさ」以外のゆっくりの事を知らなかった。
れいみゅは、もしモヒまりさに見つかると連れて行かれるかもしれないとの配慮から、両親に隠されて育っていたので、
家族以外のゆっくりに会うのが初めてであったのである。
「こんにちは、れいむ。あなたここらでみないかおね。」
「ゆ!れいみゅはモヒまりさからかくされてそだったからだよ。」
「!れいむもなの!じつはぱちぇもなのよ!」
ぱちゅりーもれいみゅと同じようにして隠されて育ったゆっくりだった。
母はぱちゅりー、父はありすというゆっくりで、ぱちゅりーのおうちにもモヒまりさが出没し、毎日おちびちゃんを連れていくのだそうだ。
いったいモヒまりさとは何なのだ?
なぜおちびちゃんがそんなにも大量に必要なのか。
ぱちゅりーの話を聞いて初めて疑問に思ったれいみゅだったが、考えてもわからぬことと思い直した。
なにしろそれほどモヒまりさの存在はれいみゅにとって「当たり前」だったのだ。
れいみゅとぱちゅりーの二人は同じ境遇ということもあってか、すぐに仲良くなった。
会ったその日から毎日、妹達がモヒまりさに連れていかれることも忘れて、れいみゅはぱちゅりーと会った。
「むきゅ!きょうはたべられないきのこのみわけかたをおしえてあげるわね!」
「ゆわぁー、すごいね!」
ぱちゅりーは非常に博識で聡明であり、れいみゅは飲み込みが早く、おだやかで器量が良かった。
「きょうはれいみゅがおうたをうたうよ!」
「ゆゆー ゆっくりー していってねー♪」
「むきゅん、いいおうたね!ぱちゅにもおしえてほしいわ。」
そんな二匹が恋仲になるのにはそうは時間はかからなかった。
似た二人が結ばれるのは運命の必然とでもいえようか。
「れいむ。ぱちゅりーといっしょにずっとむっきゅりしていってね!!!」
ぱちゅりーの方からプロポーズしてくれた。
「!!」
「ゆうぅーん、うれしいよぉー。ゆっくりしていってね!!!」
そうして、二匹は結ばれ、親元から独立し、巣を作った。
幸い、森にごはんさんは食べ尽くせないくらいたくさんあったので、何一つ困ることはなかった。
それどころか、ぱちゅりーとの生活は、親元にいた時の妹が攫われてゆっくり出来ない気持ちなどとは無縁であった。
・
・
・
長老は言葉を続ける。
「じつに、つみぶかいことじゃ。」
「いもうとたちはぜんいんさらわれて、えいえんにくるしんでいるというに、わしは……」
「いっさいかえりみることなく、ゆっくりをあじわっていたのじゃからな……」
「む、むきゅー」
「そして、わしは、とうぜんそのむくいをうけることになったのじゃ。」
・
・
・
れいみゅは、ほどなくぱちゅりーとの子供を授かったのである。
母体はれいむ。
すりすりすっきりーによる植物性妊娠で、れいむが三匹、ぱちゅりーが二匹実っていた。
「ゆゆーん!おちびちゃんゆっくりうまれてきてねー」
「むきゅーん!かわいいわあ!」
おちびちゃんを見ている時のゆっくりした気持ちと言ったらなかった。
これほどのゆっくりがこの世にあったのだろうか。
ぱちゅりーに告白されたとき、ゆっくりできた。
おちびちゃんが実ったとき、ゆっくりできた。
そして今、おちびちゃんがこの世に生を受けたとき。
他のすべてのことを忘れてしまえるほど、ゆっくりした気分だった。
ぷちり。
「ゆっくちちていっちぇね!!!」
ゆん生最高のゆっくりとはこのことだ。
「ゆっくりしていってね!!!」
「さすがぱちぇのこね。ゆっくりしてるわぁー。」
子供たちが全員生まれたら、かつて自分がされたように、茎を食べさせ、うんうんを処理してやり、寝かせてやる。
れいみゅは、ゆっくり出来ないことなどすべてを忘れて、そんなゆっくりがいつまでも続くと思っていた。
そう、モヒまりさのスィーががなりたてる爆音を聞くまでは。
ドドドドド!!
「ゆらぁ!カスゆっくりども!まりささまのおとおりだぁ!!!」
そんな!
そうだった。
ここはモヒまりさの縄張りだった。
れいみゅもぱちゅりーもゆっくりしすぎて失念していたのだ。
「!!!」
「れいむ、おちびちゃんをかくすのよ!」
「ゆ!おちびちゃんたち!れいみゅのおくちにかくれてね!」
「「「ゆっくちりかいしちゃよ!!!」」」
「まっちぇー!まだうんうんがおわっちぇにゃいよー!」
ぐずぐずしている赤れいむが一匹、まだお口の中に隠れていないというのに、
モヒまりさは無情にもゆっくりの気配を感じてれいみゅの巣に入ってきてしまった。
「ん!?なんなんだぜここは。ゆっくりのけはいをかんじてきてみれば、しらないゆっくりがいるんだぜ。」
おちびちゃんを見つけてにやけるモヒまりさ。
「くっくっく。まあ、そんなことどうでもいいのぜ。このおちびはまりささまがいただいてってやるから、ありがたくおもうのぜ!」
「ひゃっはー!くそちびはおもちかえりだー!!」
「にゃんにゃのごれえええ!!おかーしゃんたしゅけちぇーーーー!!!」
「それにしてもうんうんまみれできたないクソカスれいむだぜ。おおくさいくさい。」
「まちなさい!」
ぱちゅりーが叫んだ。
「おちびちゃんをつれていくことはゆるさないわよ!」
モヒまりさは不敵に笑う。
反抗的なゆっくりは久しぶりで、もう随分とやっていなかったやりとりだ。
もうみんな従順に子供を差し出すので、すっかり忘れていた。
そういえば、最近暴力も振るっていない。
いいうさばらしができそうだ。
「ほーう。ゆるさなかったらなんなんだぜ?」
言いながら、モヒまりさはぱちゅりーに体当たりを仕掛ける。
れいみゅの目にはそれほど強い体当たりとは思えなかったが、ぱちゅりーは巣穴の最奥まで吹っ飛んだ。
「ゆげえええええ!」
かつて、れいみゅを守った父まりさとまったく同じだ。
……
いやだ。
最初のおちびちゃんを守るために、モヒまりさに後のおちびちゃんを差し出し続ける?
出来るわけがない。
承服できるわけがない。
かわいいかわいい、あんなにゆっくりとしたおちびちゃん。
冗談ではない。
れいみゅは、赤ゆっくりを口に隠したままなのを忘れ、モヒまりさに飛びかかった。
「ゲスなモヒまりさはしねええええええ!!!」
ドガッ!!!
弾き飛ばされたのはもちろん体格の小さいれいみゅだ。
弾き飛ばされて壁にぶつかった衝撃で口が開き、おちびちゃんが三匹ほど口から落ちてしまった。
「ゆ、まだかくしていたのかぜ!」
「ぜんいんつれていくぜ!これでまりささまのひょうていもうなぎのぼりだぜ!!」
ひょうてい?
なんのことだ?わからない。
そんなことより、おちびちゃんだ。
「「「「おきゃーしゃーん!たしゅけちぇーーーー!!!」」」」
モヒまりさに捕獲された赤ゆっくりは全員泣き叫んでいた。
れいみゅの口に唯一残った赤ぱちゅりーは反応がない。
気絶しているようだ。
れいみゅは飛ばされた衝撃と痛みと絶望でピクリとも動けなかった。
つがいのぱちゅりーも動く気配がない。
だれか!
だれかたすけて!!!!
どんなに心の中で助けを求めても、誰も来ないし、奇跡は起きなかった。
……現実は非情である。
一方、モヒまりさは四匹も赤ゆっくりを手に入れたことで有頂天になっていた。
れいみゅの口にまだ赤ゆっくりが残っているかもしれない、なんてことを考える事もできないくらいに。
「ほーくほーく。いいかくずども!こんどくるときまでに、またあかゆっくりをつくっておくのぜ!」
「そしたら、またまりささまがいただいてやるのぜ。ひゃーっはっはっは!」
ブロロロロロ!
そうして嵐は去った。
一瞬の出来事だった。
一瞬でれいみゅは子供の大多数を失ったのだ。
しばらく呆然としていたれいみゅだが、のそのそと口の中の気絶している赤ぱちゅりーを出して気つけを行う。
その時、つがいのぱちゅりーの方から音がした。
「むぎゅうううう!むぎゅうううう!」
「!!ぱちゅりー!」
「むぎゅうんんんん!!」
「ぱちゅりー!おちびちゃんがつれていかれちゃったよ!!どうするの!!!」
ぱちゅりーの方を振り向いたれいみゅは驚いた。
普段やさしい顔のぱちゅりーがまるで鬼のように見えたのだ。
「むぎゅうう!!れいむ。ぱちぇはモヒまりさにこれいじょうおちびちゃんをわたすきはないわ!!」
「あたりまえでしょおおおおお!!さっきさらわれたおちびちゃんもとりかえしてきてねええええええ!!!!」
「それなら、モヒまりさをたおすしかないわね。」
「じゃあたおしt…ゆ、ゆぅ……でもモヒまりさはつよすぎてたおせないよ……」
「ぱちぇにまかせてね!もうさくせんはかんがえたわ!」
ぱちゅりーは翌日かられいみゅと赤ぱちゅりーには一切構わず、巣から出て、モヒまりさを倒すため、他のゆっくり廻りをしていた。
そのためれいみゅは小さい赤ぱちゅりーを独りで育てなければならなかった。
どうも、ぱちゅりーによる捜索によれば、れいみゅの巣の周りでは、20家族ほどがモヒまりさの被害にあっているということだ。
モヒまりさがどこに、何のためにおちびちゃんを連れていくのかを知っているゆっくりはいなかった。
全員が「ゆっくりできなくなるということはなんとなくわかる」レベルだった。
また、モヒまりさが各家庭におちびちゃん回収に来る時間は決まっていることがわかった。
ここから、ぱちゅりーは他の被害ゆを集めてモヒまりさをフルボッコすれば倒せる、との結論に達したようだ。
ちなみに集められた被害ゆにはれいみゅの親も含まれていた。
あれから律儀に毎日子供を作ってモヒまりさに献上していたらしい。
馬鹿正直というか、牙が抜かれているというか……
さて、ぱちゅりーによれば、モヒまりさを永遠にゆっくりさせるためには、まずは退路を断つことが重要だという。
確かに、モヒまりさは生身も強いが、もし討ち損じてスィーによる高機動で逃げられた場合、普通のゆっくりの速度では絶対に追いつけないため、
傷を癒してからゆっくりと各個撃破されてしまうだろう。
作戦としては、ぱちゅりーの家の周りに被害ゆを伏せておいて、モヒまりさがぱちゅりーの家に入ったら、まずは被害ゆ達でスィーを走行不能にする。
この際、なるべく音を立てずに破壊することが必要である。
ぱちゅりーの家では、なるべくモヒまりさを長いこと家に置いておくため、れいみゅがごねて時間を稼ぐ。
時間稼ぎの間にスィーが走行不能になったら、保険要員を除いた全員でぱちゅりーの家に入り、モヒまりさをフクロにする。
保険要員とは、万が一巣の中でモヒまりさを討ち損じた場合、トドメを刺すために巣の周囲に配置しておく要員である。
ゆっくりが考えた作戦にしてはなかなかまともであろう。
この作戦を思いついてから、ぱちゅりーは自らをおちびちゃんの父、蜂起の旗印であることに掛け、「ふぁざちゅりー」と呼んだ。
ドドドドド!
スィーの音が響き渡る。
「きたわ!みんなしっかりやるのよ!」
「「「「「「ゆっくりりかいしたよ!!」」」」」
モヒまりさはそんなゆっくり達の企みなどつゆ知らず、今日も絶好調だ。
「ひゃあ!がまんできねえ!きっどなっぷだぁ!」
乱暴にスィーを止めると、ぱちゅりーの家にずかずか入ってくる。
「ゆらゆらぁ!きょうもきちんとあかゆっくりをつくっただろうなあ!?」
赤ぱちゅりーは荒事に備えて、今回ばかりは外に隠した。
れいみゅは打ち合わせ通り、ごねにごねて時間を稼ぐつもりだ。
「おまえにわたすおちびちゃんなんているわけないでしょおおおおお!」
「はんこうするのかぜ?」
モヒまりさはれいみゅを壁まで吹き飛ばし、上に乗って飛び跳ねる。
問答無用とはこのことだ。
れいみゅは時間が稼げるか不安になった。
「まりさはいったぜ。あかゆっくりをつくっておけとなあ!!!」
「ゆげっ、ゆげっ、おまえに、わたすくらいなら、、つくる、わけないでしょおおお、ばかなの、、、しぬの?」
「いつまでそのつよきがつづくかみものだぜ。」
「ゆげーっ、ゆげーっ!」
れいみゅは大量に餡子を吐き出した。
まずい。時間が稼げない。
おちびちゃん、ふぁざちゅりー、ごめんね……
「ん?そういや、つがいのぱちゅりーはどこいったのぜ?」
その時、巣の外から爆発するような音が響いた。
ふぁざちゅりーの指示でスィーが壊れたようだ。
「ん!?このおとはなんなのぜ?」
モヒまりさがそう言って振り返るより早く、ふぁざちゅりーに率いられた軍勢が家になだれ込んできた。
「!!???おまえらはなんなのぜえええ!?」
「「「「「ゲスなモヒまりさはしねえええええ!!!!」」」」」
一人一人はモヒまりさより小さくても、十匹を超えるゆっくりに同時に飛びかかられ、モヒまりさは吹っ飛んだ。
力比べで負けることなどありえなかったモヒまりさが初めて感じた痛みと恐怖だ。
「ゆひぃいぃぃい!?なんなのぜ?なんなのぜ?まりさがわるいことしたならあやまるんだぜ。だからたすけるのぜえええええ!!」
「うるさいよ、おちびちゃんをさらったゲス!!しんでつぐなってね!!」
「ゆぎゃああああああ!!!」
「ありすのかんじたこころのいたみはこんなものじゃないわよ!」
「ゲスなモヒまりさはれいむのかなしみをおもいしってね!」
ドスッドスッドスッドスッ!
「ゆ``っゆ``っゆ``っゆ``っ……」
モヒまりさはフクロにされ、穴という穴から餡子を噴出し、出餡多量で死んだ。
「「「「ゆっゆっおーー!!」」」」
「ふぁざちゅりーばんざい!!」
「やったよ!モヒまりさをたおしたよ!」
ゆっくり達は勝利に沸いた。
ついに、おちびちゃんを渡さなくて済むようになったのだ。
これから好きなだけゆっくりできる。
「ゆっくりー!ゆっくりぃーーっ!!」
ゆっくり達の歓声はいつまでも響き続けた。
・
・
・
「こうして、ふぁざちゅりーのてびきで、ゆっくりたちはひとときのゆっくりをあじわうことになったのじゃ。」
「むきゅ?ひととき?」
「うむ。そしてモヒまりさがいなかったこのころが、わしのいっしょうのうち、いちばんゆっくりしていたといえるじゃろうなあ。」
「わしはこのあいだに、ふぁざちゅりーとのおちびちゃんをそれはそれはたくさんつくった。」
「しかし、そのゆっくりもながくはつづかなかった。」
・
・
・
れいみゅはふぁざちゅりーとの間にできた沢山の子供に恵まれ、楽しくゆっくりと暮らしていた。
最初に出来た赤ちゃんだったぱちゅりーも今ではもう立派な若ゆっくりだ。
モヒまりさを倒すときに出来たゆっくりの間のコミュニティーでも、立派な若者として頭角を表していた。
ここには天敵もいないし、むーしゃむーしゃ出来なくなることもない、本当のゆっくりがある。
ああ、世はなべて、こともなし。
そんな風にゆっくりと日に当たっていたれいみゅの耳に、あの悪夢のような音が聞こえてきた。
ドドドドド!!
!!??
スィーの音!?
なぜ?モヒまりさは倒したはず。
いや、乗っているのは赤いおりぼんをつけたゆっくりのようだ。
前後して、大声が辺りに鳴り響く。
「カスゆっくりどもぉ!あらたにかんりゆっくりになったでいぶさまにあかゆっくりをさしだしなああああ!!」
「それとぜんにんのかんりゆっくりをえいえんにゆっくりさせたゴミにはせきにんをとってもらうよおおおお!!」
かんりゆっくり?
おちびちゃんを差し出す?
ぜんにん?
意味が分からない。
が、おちびちゃんが危ないのはわかる。
隠す?逃げる?
だめだ、ここはお外だ。
隠せないし、逃げられない。
また、一度ゆっくりを味わったれいみゅにはあの頃の素早さがもうなかった。
右往左往しているうちに、おちびちゃんは全員でいぶに捕獲されていた。
「おちびちゃんをはなせええええ!!」
ふぁざちゅりーはでいぶの横暴が我慢できず、無謀にも体格が二回りは大きいでいぶに飛びかかった。
でいぶは避ける様子もなく、ふぁざちゅりーの体当たりを受けると、軽くジャンプして、問答無用でふぁざちゅりーを押しつぶした。
ふぁざちゅりーは破裂して、即死した。
「みせしめ、みせしめっと。めんどうくさいから、こいつがぜんにんのかんりゆっくりをころしたさつゆんはんとしてほうこくしておくよ。」
「いいかグズども!こうなりたくなかったら、ていこうせずにでいぶにあかゆっくりをわたしてね!すぐでいいよ!!」
実際、管理ゆっくり?であるモヒまりさを殺した主犯はふぁざちゅりーであったのだから、偶然であろうが、でいぶは嗅覚が鋭かったといえるだろう。
そしてれいみゅの家族だけではなく、周囲のおちびちゃんをすべて捕獲し終えると、でいぶはスィーに乗って帰っていった。
その日の夜、コミュニティでは話し合いが行われた。
このままでいぶに屈しておちびちゃんを供給するのか、でいぶも倒すのかという話し合いだ。
ふぁざちゅりーが死んだことで、実質のまとめ役はれいみゅとふぁざちゅりーの最初の子供である若ぱちゅりーに移っていた。
若ぱちゅりーは、他のぱちゅりーと区別するため自ら「ろごすちゅりー」と名乗った。
ろごすちゅりーの考えでは、モヒまりさからでいぶに変わったところで、特に戦闘力が変わったわけでも、こちらに対する迫害が増減したわけでもない。
また、モヒまりさを制裁した後、でいぶが来るまでに享受できたゆっくりは筆舌に尽くし難かった。
もしでいぶを制裁したとすると、その後、次の管理ゆっくりはおそらくそのうち送り込まれてくるだろう。
が、それで油断してゆっくりしたりせず、みんなで気をつけておけば、管理ゆっくりが投入された直後に再制裁が可能になるはずである。
そういうサイクルを作れば、みんなでゆっくり出来るはずだ。
でいぶの制裁は、以前モヒまりさを制裁した時と同じやり方で行えばよい。
そうと決まれば、次にでいぶが来た時がでいぶの命日だ。
でいぶはもちろんそんな企みを知らず、次の日、のうのうと赤ゆっくりを取りに来て、被害ゆ達に制裁された。
ろごすちゅりーは、次も同じように管理ゆっくりが送り込まれるものと思った。
計画通りだ。
……しかし、次に来たのは管理ゆっくりではなく、人間だった。
人間は見たこともないほど大きなスィーに乗ってやってきて、鉄のホースを片手になにやら薬を散布し始めた。
ろごすちゅりーの見ている前で、薬を浴びた仲間のゆっくり達は悶死した。
その瞬間、ろごすちゅりーは悟ったのだ。
今、自分たちが居るこの場所は、ゆっくりプレイスなんかではない。
この人間を倒さない限り、ゆっくりはゆっくりを味わうことは出来ない。
今まで「管理ゆっくり」と言われていたのは、この人間のさしがねだ。
ここは、まさに赤ゆっくりをゆっくりに作らせて、人間が搾取するための場だったのだ。
そのことをれいみゅに告げ、勝てるはずがないので逃げるように言うと、ろごすちゅりーは人間に突っ込んでいった。
れいみゅがろごすちゅりーを見たのはそれが最後だった。
そしてれいみゅは気を失った。
・
・
・
長老は静かに言葉を続ける。
「「ふぁざちゅりー」もいさましかったが、「ろごすちゅりー」ほどあたまのいいゆっくりはいなかった。」
「おやばかというてんをさしひいても、そうとしかおもえん。」
「なにせ、ゆっくりのせかいのなぞをときあかし、じょうしきをうちやぶったんじゃからな。」
「しかし、あといっぽというところで、うんがなかった。」
「「にんげん」にやられてしまったのじゃ。」
「ゆっくりのしんのかいほうは、つぎのせだい、「せいんちゅりー」までまたねばならなかった。」
・
・
・
れいみゅが気がついたのは、人間が去って数時間してかららしかった。
なぜれいみゅが薬の散布後も生きていられたのかはわからない。
わからないが、見渡す限りのゆっくりの死骸を見て、絶望しかけた時だった。
どこかで「むきゅー」という声が聞こえたのだ。
果たして、それは生き残りの赤ぱちゅりーだった。
あんなにたくさんいた群れの仲間は、人間の薬散布によって二匹にまで減った。
血はつながっていないが、れいみゅは生き残りの赤ぱちゅりーを何とかして育てたかった。
生き残ったのがかつて自分が愛したぱちゅりー種だという偶然もあったし、それがろごすちゅりーの意思だと思ったからだ。
れいみゅは薬散布後の今いる場所はゆっくり出来ないと思い、三日かけて西に移動した。
西にはモヒまりさやでいぶのような管理ゆっくりがいたが、長い間の管理ゆっくりとの戦いで、もう隠れ方は分かっていた。
れいみゅは、赤ぱちゅりーに「せいんちゅりー」と名づけ、必死に育てた。
せいんちゅりーは、若ゆっくりとなってから、見事西方の指導者的立場まで上り詰めた。
せいんちゅりーは育ての親であるれいみゅから管理ゆっくりのことや、
ろごすちゅりーが解き明かした世界の謎の核「人間」について聞いていたため、これからどうすればいいかを総合的に考えることが出来た。
管理ゆっくりは倒すことが出来る。
しかし、管理ゆっくりを倒し続けると人間が来る。
つまり、もし「本当のゆっくり」を味わいたかったら、管理ゆっくりを倒すと現れる人間を、さらに倒すしかない。
しかし人間を倒せばゆっくり出来るのか?
いや、次の管理ゆっくりが現れたように、次の人間が来るだろう。
次の人間を殺したら?
人間よりさらに強いなにかがくるかもしれない。
そこには無限の構造があるか、なかったとしても、人間すべてを殺し尽くさない限り、真のゆっくりは訪れない。
しかし、ゆっくりの身では、管理ゆっくりに勝つことはできても、人間一人だって殺せるとは思えない。
なにせ一人で群れのゆっくりをほぼ全滅させたのだ。
つまり、ゆっくりには、もう諦めるか逃げるしか残されていないのだ。
逃げよう。
管理ゆっくりのいない場所へ。
人間のいない場所へ。
管理ゆっくりがいない場所なら人間の手も及ぶまい。
なにせ管理すべきゆっくりがいないのだから。
そう考え、せいんちゅりーは、西へ西へと群れを進めていった。
途中で会った管理ゆっくりはすべて永遠にゆっくりさせた。
そうして、群れは、ついに「柵」に出会った。
西へ西へと進んでいたら急に飛び越えられないほど高い柵が現れたのだ。
ここまで来るのに32匹の管理ゆっくりを倒し、群れの7割は永遠にゆっくりした。
突如、せいんちゅりーは、ここを越えれば管理ゆっくりはいないと悟った。
なぜかはわからない。
識らされたのだ
柵は飛び越えられる高さではない。
しかし、飛び越えられないなら、潜ればいいのだ。
せいんちゅりーの号令のもと、れいみゅ含め、残ったゆっくり達は死力を尽くして穴を掘った。
穴を抜けると、果たして、そこには、管理ゆっくりと人間がいない、真のゆっくりが存在した。
ついに、ゆっくりは人間の魔の手から逃れたのである。
・
・
・
「こうして、ゆっくりはゆっくりらしさをとりもどせたというわけじゃ。」
「しかしのぅ……」
「わしが「れいみゅ」じゃったころ、おちびちゃんをとられることさえがまんすれば、すきなだけむーしゃむーしゃもすーやすーやもできた。」
「いまはどうじゃ?おちびちゃんはとられんかわりに、じゅうぶんむーしゃむーしゃできるときはすくない。」
「ときをわきまえずすーやすーやなんかしてたら、いっぱつでれみりゃにえいえんにゆっくりさせられるじゃろう。」
「おちびちゃんだって、ぜんいんをおとなになるまでしなせることなくそだてられるいえはあるまい。」
「それは、おちびちゃんをさしだすかわりにゆっくりするのとどうちがうんじゃろうなあ。」
「……いいかいわかいの。ほんとうのゆっくりとはなにか、よーくかんがえねばならんぞ……」
「なぁに、おぬしになら、できる。なにせおぬしは「せいんちゅりー」のちをひいているんじゃからな。」
ふと、虫の鳴き声が聞こえ始めた。
急に現実感を取り戻した長老と若ぱちゅりーの周りに、夏の鬱蒼とした空気が流れこんできたようだった。
「ふうー。さーて、どこまではなしたかのう。」
「……そうじゃ。これからは、おぬしたちのじだいだということじゃ。」
長老は今まで見ていた若ぱちゅりーを見据えるのをやめ、あらぬ方向を見始めた。
視線がぶれている。
「あぁ、おもいかえせば、、たのしい、ゆんせい、、、、じゃったのう……」
長老は大きく息を吐いた。
「ふぁざちゅりー、、きいてる?、、れいみゅはがんばったよ。もう、いいよね……?」
話に栄養を使いすぎたためか、長老はそう呟くと、ゆっくりと力なく崩れ落ちた。
目を開けているのか閉じているのかわからないほど皺の寄った瞼から、涙がこぼれおちる。
信じられないとばかりに若ぱちゅりーは目を見開いて、聞いた。
「!ないてるの?ちょうろう。」
長老は若ぱちゅりーの問いには答えなかった。
真昼間だというのに、若ぱちゅりーの頭上を、流れ星が一筋通り過ぎた気がした。
「!!??」
「むきゅううう!?ちょうろう!?ちょうろうーーー!!」
「たいへんよーーーっ!みんなぁー!みんなぁーっ!!ちょうろうが!ちょうろうがーーーっ!」
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既作
anko1940 狂牛
anko1952 ゆイアン・メイデン
anko1966 剥製れいむ
anko1974 森の賢者は論理がわかる
anko2025 うみのいえ