ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko0706 ゆっくりに関係する怖い話7話
最終更新:
ankoss
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タイトル:ゆっくり蟲毒
作者名:蛇足あき
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
私が語るのは、とある呪術をゆっくりで試した話……そしてそれに関係する危険性
『蟲毒』という呪術は知ってるかな?
一般的には、毒虫を壷に入れて、最後の1匹になるまで殺し合わせるって方法
ここでいう毒虫というのは、昆虫だけじゃなく、蛇とか蛙とか蚯蚓とか蜥蜴とか蛞蝓とか蝸牛とか……
獣・魚以外の、地を這う物。漢字にすると『虫』がついている物が該当するんだ
大抵はより強力な呪術の生贄とか使い魔とか……まあ呪術には詳しくないけど、そういった下準備として
用いられる物を作り出すような儀式である事が多かったみたいだ
唯一生き残ったもの。最強の毒虫って寸法でね、よく小説とか漫画とかにも出て来るよね
サバイバルだったっけ、ロワイヤルだったっけ……
男塾って漫画にも似たようなのがあった記憶があるし、ゲゲゲの鬼太郎にもあった筈
それをゆっくりでやったって訳だ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
といっても、ただ普通にゆっくり達を壷に入れる方法じゃない
そんな事したら、大抵は捕食者が勝つし、そもそもそんなのが入る壷が無い
その呪術をした人は、特殊な方法を使ったんだ
まず、植物型妊娠……頭に茎と実が出て来る奴だね
それを毟り取って一匹だけ残し、すぐさま茎ごと砂糖水の入った容器に入れる
そうして赤ゆっくりから記憶を継承させず、何も知らないゆっくりを作り出したんだ
順調に実らせて、意識が出る前に壷に入れたんだ
しばらくして実った赤ゆっくりが落ちる
『ゆっきゅりちちぇいっちぇね!』
落ちた赤ゆっくりは、早速そんな事を言うんだけど、壷の中は真っ暗。誰も返事を返す事も無い
『ゆ!ゆっきゅり!ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!』
赤ゆっくりは返答を得る為に、何度も何度もそんな事を叫ぶ
でも当然、何の返答も返ってこない
記憶の継承も無いから、ただ『ゆっくりしていってね』という文字しか知らない
誰がどうしてくれるのか
この後どうすればいいのか
自分の姿も動き方も
何もかも知らないゆっくりと
真っ暗で何も分からず
誰も何も居ない壷の中
『ゆっきゅりしちぇいっちぇねえ!!!!』
そんなゆっくりを使って、蟲毒をする事になったんだ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
記憶の継承が無いとは言え、ある程度の自然現象は赤ゆっくりに備わって居る
『ゆっ……ゆっきゅりぃ……』
沢山叫んだ性か、腹も減ってくる
とはいえ、食事なんて何処にも無い
探す方法も知らなければ、そもそも歩き方も分からない
自分がどんな容姿かも知らないのに、どうやって動くのか
ただ『ゆっくりしていってね』と叫ぶ事の出来る口がある事しか、赤ゆっくりは知らないんだ
『ゆっ……ゆっ……きゅりぃ……』
腹が減って、叫ぶ事も出来なくなっていく
そこで初めて、壷の中に茎が入れられたんだ
『……ゆっ!』
音も無く静かに入れられたからか、赤ゆっくりはしばらくの間気付かなかったみたいでね
匂いか何かで茎の存在に気付いたゆっくりは、それを食べようと考えた筈だ
とはいえ動き方を全く知らないゆっくり
あんよの動かし方も転がり方も
そもそもどうすれば移動でき、何処に行けば良いのかも分からない
『ゆっ!!』
それでも、その赤ゆっくりは移動した
方法?知らないよ
なんせまだ壷の中だったんだから。この時どんな方法で移動したかなんて、誰も知らないのさ
分かるのは、その赤ゆっくりは茎に辿りついたと言う事
『ゆっ!ゆっ!ゆっくり!』
そして、その茎を食べたと言う事
『ゆっきゅり!ゆっきゅり!!しちぇいっちぇね!』
それだけだ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『ゆっきゅり!ゆっ!ゆっ!』
そんな事を何度も何度も繰り返した
時には茎を置く場所を
時には茎の種類を
時には少しだけを毒を混ぜて
赤ゆっくりは
時に移動したり
時に探したり
時に戻したり
時に克服したり
植物を楽に捕食出来るように変化していった
そしてその日、茎の代わりに違うものが壷に入れられた
『ゆっ!』
赤ゆっくりはいつものように、入れられた物を食べようとした
『ゆ!』
でも出来なかった
入れられたものが逃げてしまったんだ
茎の代わりに入れられた物は、蝶だった
今までと違って、逃げる生物を入れたんだ
『ゆ!ゆ!!ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!』
赤ゆっくりは何度も何度も、そいつを食べようと移動した
でも今までの移動方法では捕まえられなかった
『ゆ!ゆ!』
この時、赤ゆっくりはなんて思ったんだろうね?
どうすれば食べれるのか?
どうすれば捕まえられるのか?
どうすればもっと早く移動できるのか?
どうすれば逃がさないようになるのか?
分からない
ただ言える事は
『ゆっきゅり!ゆっ!』
その赤ゆっくりは、蝶の捕食に成功した
運が良かったのか、それとも何か別の方法を使ったのか
それは分からずじまいでね
壷を見ていた人も、ただ赤ゆっくりの音声で生存を確認していたのだから
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
虫もやっぱり、様々な物が入れられたよ
蝶のように、逃げるだけの物とか
蟻のように、集団で行動する物とか
蜂のように、攻撃してくる物とか
蝿のように、凄まじく速い物とか
甲虫のように、硬い物とか
全ての虫を、赤ゆっくりは捕食に成功したんだ
『ゆっきゅり!ゆっきゅり!!ゆっきゅりしちぇいっちぇね!』
そしてある日、また違う物が壷に入れられた
『ゆべ!』
ゆっくりだ
『ぷくー!れいむにひどいことするじじいはしんでね!』
『ゆっきゅり!?』
赤ゆっくりにとっては、初めての喋る生物だった
今までにも音を出す物や、鳴き声を出す物は居たけど、ゆっくり程変化がある音を出す生物はいなかった
『ゆ!ゆっくりしていってね!』
赤ゆっくりの言葉に、入れられたれいむが返した
『ゆっきゅり!ゆっきゅり!』
反応したのが面白いのか、赤ゆっくりは何度もそういった
『おちびちゃん、どこにいるの?ゆっくりでてきてね!!』
『ゆ?ゆっきゅり?』
『れいむはここにいるよ!どこにいるかおしえてね!』
そして、恐らくはその呪術をした人にとって、望む事が起きたんだ
『ここ?』
赤ゆっくりが、そう発音したんだ
今まで『ゆっくりしていってね』としか……正確には『ゆっきゅりしちぇいっちぇね』としか発音できな
かったのに
まあ言葉を知る機会がなかったから、仕方ないといえば仕方ないんだけど
『そこだね!ゆっくりそっちにいくからね!』
れいむはぴょんぴょんと音を頼りに赤ゆっくりの所へと向った
『ここ!ここ!』
『わかってるよ!ゆっくりそっちにいくよ!』
そして
『ゆっきゅり!』
『ゆべ!!』
捕食したんだ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
その呪術をした人は、ゆっくりが思い込みの力でどう変化するかを知りたかったみたいでね
真っ暗な空間も、知識の継承も、徐々に食べ物を変化していったのも、その為らしい
ゆっくりが入れられるようになってから、元赤ゆっくりは凄まじい成長をしていった
例えば
『はやくあまあまをもってこいじいい!!!』
ゲスが入れられたら
『あまあま、ここ』
『ゆふん!いまそっちにいくんだぜ!』
ゲスを誘導して
『ゆえーん!ゆえーん!!おきゃあしゃーん!!』
赤ゆっくりが入れられたら
『そっちにゆっくりいくよ。おちびちゃんまっててね』
『ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!』
赤ゆっくりに待つように言って
『おなかがすいたのぜ……むしさんがたべたいのぜ……』
お腹を空かせたゆっくりが入れられたら
チリリリリリ……
『ゆ!むしさんのおとがしたのぜ!まりさにゆっくりたべられるのぜ!』
虫の音を出したり
『ゆ?あまあまさんのにおいがするよ!』
『こっちからにおうよ!』
あまあまの匂いを出したり
『うー☆れみりゃはえれがんとなおぜうさまだどー☆』
グチャ
れみりゃをあっさりと潰したり
『おお、こわいこわい』
ガシ
『おお、ほかくほかく』
きめえ丸をあっさりと捕まえたり
もはやそれは、ゆっくりとは別の生命体としか思えないような、何かになってしまったんだ
『おなかいっぱい!』
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
壷に入れられる物はドンドンエスカレートしていった
ゆっくりの次には小動物を
その次には猛獣を
どれも、壷のゆっくりは難なく捕食していった
そして、最終的に
『おぎゃああ!!おぎゃああ!!!』
人間も
『俺、こいつを倒してお金を貰ったら、彼女への婚約指輪を買うんだ……』
難なく
『ヒャッハー!ゆっくりは虐待だー!』
捕食してしまえるように
『アルファチーム!応答しろ!』
『全滅!馬鹿な!?』
変化してしまった
『お腹、空いた……早く頂戴』
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
壷のゆっくりのデータは、ある程度は取れていた
音波でも光でもなく、何か別の物で捕食対象を認識
擬態も可能な模様。事実一部の人間が騙されて居る
外の存在を知って居る
喋り方は人間のソレと同じ
戦闘能力は、考えられる限り、壷に入れられた生物のソレを凌駕している
対毒物・薬物等の抵抗力は高く、また極端な低温・高温下でも捕食行動は可能
対水性もある
ここまでくれば分かるけど、壷が壊されないのが不思議なスペックだった
何故そんな呪術をしたのかは知らないけど、少なくとも本来の目的には使えなかっただろうね
ある時、その壷の廃棄が決定した
いくらなんでも、餓死と寿命があるだろうと考えて、その壷を永遠に封印する事になったんだ
壷に厳重な鍵が付けられて、壷の内部観測装置も一切の停止が決定した
それでこの話はお終い……になればよかったんだけど……
そんな変な物を作った天罰か、または運が悪かったのか
あるいは、壷のゆっくりが何かしたのか
壷が壊れたんだ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
分かるとは思うけど
壷といっても、本当の壷じゃないよ
だったら人間が入ったりする所がおかしいでしょ?
それは大きな部屋でね、呪術をしていたのも、とあるゆっくり研究所の人
その部屋の扉が、壊されたんだ
理由は簡単な事
ただ、何も知らないゆっくりんぴーすが、虐げられているゆっくりを助けようといって、その研究所を襲
撃したって訳
研究材料だった、普通のゆっくりや、奇形ゆっくり
幾つかの資料も高性能な装置も、全てゆっくりんぴーすが壊してまわった
『この部屋も壊せ!』
そういって、部屋の扉を破壊したんだ
その後?
ゆっくりからすれば、それは新たな捕食対象が与えられたって事だからね
だけど、特に誰かが死んだって話は聞いて無いよ
知能も高かったみたいだから、もしかしたらゆっくりんぴーすの誰かに擬態して、逃げ延びたのかもしれ
ない
死んだのかどうか、それとも人として生きて居るのか、はたまたゆっくりとして生きて居るのか
それは私には分からないさ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ん?
唐突過ぎる?
かもね
いくらゆっくりが思い込みで変化するからって、ここまで変化する筈が無い
まあ、普通はそう思うだろうね
この話だって、あくまで聞いた話だし、そんな事件が起こったって記録も見つかってない
そもそも、そこまで研究者が暴走する事も無いはず
だけど……
もし
もしもだよ
記憶を無くしたゆっくりを作ってさ
この話をしてさ
『この話の壷のゆっくりは、君だよ』
とでも言って、思い込ませたら
どうなると思う?
どんなゆっくりになると思う?
ねえ
君は興味が無いかな?
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「終わり……最後のお話でした」
「あ、はい……ありがとうございました」
なんていうか……とんでもない話だった
話の中身はともかく……そうやって信じ込むゆっくりが居るかどうかか……
「野生や野良が知ったら、大変だな」
「そうかな?個人的には身の程を弁えず、死ぬだけだと思うけど」
「どうしてそう思うんですか?」
「野良も野生も、基本的には強さの概念が逆だからね。アレに勝てるから強いじゃなくて、自分が強いか
ら周りが弱いって」
逆って言うのかな……
「この話をして信じてしまっても、きっと自分が強い、他が弱いって思考のままさ」
「自分が、話のゆっくりのように変化するって事は考えないって事か」
「そうね……そっちの方がゆっくりらしい」
「それこそ、記憶が全く無いゆっくりじゃない限り、心配無用って事だな」
どちらにせよ、それは人が何かしないといけないか
そんなゆっくりが出来る心配はなくて、ただ結局自滅する輩が増える
哀れな奴等だ
「これで、全員が語ったんだな」
「ええ。皆さん、お疲れ様でした」
「この話を纏めた新聞、楽しみにして居るよ」
「さて、出て行く時もルールがあったよな……」
黒板に書かれた注意事項を見る
『注意事項
話す順番は任意です
話し終えた人は、直に立ち去ってもいい。最後まで聞いてもいい
ただし、誰かと共に帰ってはいけない
仕切りの向こうでローブと仮面を脱いだらノックをしてください
鍵を開けます
その後、外に出たら廊下のガラスをノックして、退出した事を知らせる事』
1人ずつ、順番は任意で外に出て行く
「私が最初でいいかしら?」
「異議無し」
「問題なし」
「ええ」
「次は俺でいいかな?トイレに行きたくて仕方ないんだ」
「ハハ。もちろんいいよ」
そんな感じで、語り部さん達は、ルールを守って出て行った
最後に残ったのは、俺と最後の語り部さんだ
「先でいいんですか?」
「ああ。実は君の部長に頼まれて、ここの片付けをしないといけないんだ」
「なるほど。残っていては邪魔ですからね」
「そういう事だ。新聞、良い物を書き上げてね」
「はい」
そうして俺もまた、仕切りの向こう側へと戻る
こうして、ゆっくりに関係した怖い話を聞くのが終わった
後はコレを纏めて、新聞として貼り出すだけだ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
次の日
「いやー、すまんな斉藤」
部室に入った俺に開口一番、部長が謝った
「?どうしたんですか部長」
「昨日の事だよ。さぞかし攻められただろう?」
「?そりゃ、なんだかんだで皆さんから怖い話を聞かされましたけど……」
まあ、攻められているといえば、そうとられなくもないけど……
「いや、1人足りなかったろ?」
「……はい?」
終幕.X 『本当の7番目』へと続く
作者名:蛇足あき
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
私が語るのは、とある呪術をゆっくりで試した話……そしてそれに関係する危険性
『蟲毒』という呪術は知ってるかな?
一般的には、毒虫を壷に入れて、最後の1匹になるまで殺し合わせるって方法
ここでいう毒虫というのは、昆虫だけじゃなく、蛇とか蛙とか蚯蚓とか蜥蜴とか蛞蝓とか蝸牛とか……
獣・魚以外の、地を這う物。漢字にすると『虫』がついている物が該当するんだ
大抵はより強力な呪術の生贄とか使い魔とか……まあ呪術には詳しくないけど、そういった下準備として
用いられる物を作り出すような儀式である事が多かったみたいだ
唯一生き残ったもの。最強の毒虫って寸法でね、よく小説とか漫画とかにも出て来るよね
サバイバルだったっけ、ロワイヤルだったっけ……
男塾って漫画にも似たようなのがあった記憶があるし、ゲゲゲの鬼太郎にもあった筈
それをゆっくりでやったって訳だ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
といっても、ただ普通にゆっくり達を壷に入れる方法じゃない
そんな事したら、大抵は捕食者が勝つし、そもそもそんなのが入る壷が無い
その呪術をした人は、特殊な方法を使ったんだ
まず、植物型妊娠……頭に茎と実が出て来る奴だね
それを毟り取って一匹だけ残し、すぐさま茎ごと砂糖水の入った容器に入れる
そうして赤ゆっくりから記憶を継承させず、何も知らないゆっくりを作り出したんだ
順調に実らせて、意識が出る前に壷に入れたんだ
しばらくして実った赤ゆっくりが落ちる
『ゆっきゅりちちぇいっちぇね!』
落ちた赤ゆっくりは、早速そんな事を言うんだけど、壷の中は真っ暗。誰も返事を返す事も無い
『ゆ!ゆっきゅり!ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!』
赤ゆっくりは返答を得る為に、何度も何度もそんな事を叫ぶ
でも当然、何の返答も返ってこない
記憶の継承も無いから、ただ『ゆっくりしていってね』という文字しか知らない
誰がどうしてくれるのか
この後どうすればいいのか
自分の姿も動き方も
何もかも知らないゆっくりと
真っ暗で何も分からず
誰も何も居ない壷の中
『ゆっきゅりしちぇいっちぇねえ!!!!』
そんなゆっくりを使って、蟲毒をする事になったんだ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
記憶の継承が無いとは言え、ある程度の自然現象は赤ゆっくりに備わって居る
『ゆっ……ゆっきゅりぃ……』
沢山叫んだ性か、腹も減ってくる
とはいえ、食事なんて何処にも無い
探す方法も知らなければ、そもそも歩き方も分からない
自分がどんな容姿かも知らないのに、どうやって動くのか
ただ『ゆっくりしていってね』と叫ぶ事の出来る口がある事しか、赤ゆっくりは知らないんだ
『ゆっ……ゆっ……きゅりぃ……』
腹が減って、叫ぶ事も出来なくなっていく
そこで初めて、壷の中に茎が入れられたんだ
『……ゆっ!』
音も無く静かに入れられたからか、赤ゆっくりはしばらくの間気付かなかったみたいでね
匂いか何かで茎の存在に気付いたゆっくりは、それを食べようと考えた筈だ
とはいえ動き方を全く知らないゆっくり
あんよの動かし方も転がり方も
そもそもどうすれば移動でき、何処に行けば良いのかも分からない
『ゆっ!!』
それでも、その赤ゆっくりは移動した
方法?知らないよ
なんせまだ壷の中だったんだから。この時どんな方法で移動したかなんて、誰も知らないのさ
分かるのは、その赤ゆっくりは茎に辿りついたと言う事
『ゆっ!ゆっ!ゆっくり!』
そして、その茎を食べたと言う事
『ゆっきゅり!ゆっきゅり!!しちぇいっちぇね!』
それだけだ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『ゆっきゅり!ゆっ!ゆっ!』
そんな事を何度も何度も繰り返した
時には茎を置く場所を
時には茎の種類を
時には少しだけを毒を混ぜて
赤ゆっくりは
時に移動したり
時に探したり
時に戻したり
時に克服したり
植物を楽に捕食出来るように変化していった
そしてその日、茎の代わりに違うものが壷に入れられた
『ゆっ!』
赤ゆっくりはいつものように、入れられた物を食べようとした
『ゆ!』
でも出来なかった
入れられたものが逃げてしまったんだ
茎の代わりに入れられた物は、蝶だった
今までと違って、逃げる生物を入れたんだ
『ゆ!ゆ!!ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!』
赤ゆっくりは何度も何度も、そいつを食べようと移動した
でも今までの移動方法では捕まえられなかった
『ゆ!ゆ!』
この時、赤ゆっくりはなんて思ったんだろうね?
どうすれば食べれるのか?
どうすれば捕まえられるのか?
どうすればもっと早く移動できるのか?
どうすれば逃がさないようになるのか?
分からない
ただ言える事は
『ゆっきゅり!ゆっ!』
その赤ゆっくりは、蝶の捕食に成功した
運が良かったのか、それとも何か別の方法を使ったのか
それは分からずじまいでね
壷を見ていた人も、ただ赤ゆっくりの音声で生存を確認していたのだから
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
虫もやっぱり、様々な物が入れられたよ
蝶のように、逃げるだけの物とか
蟻のように、集団で行動する物とか
蜂のように、攻撃してくる物とか
蝿のように、凄まじく速い物とか
甲虫のように、硬い物とか
全ての虫を、赤ゆっくりは捕食に成功したんだ
『ゆっきゅり!ゆっきゅり!!ゆっきゅりしちぇいっちぇね!』
そしてある日、また違う物が壷に入れられた
『ゆべ!』
ゆっくりだ
『ぷくー!れいむにひどいことするじじいはしんでね!』
『ゆっきゅり!?』
赤ゆっくりにとっては、初めての喋る生物だった
今までにも音を出す物や、鳴き声を出す物は居たけど、ゆっくり程変化がある音を出す生物はいなかった
『ゆ!ゆっくりしていってね!』
赤ゆっくりの言葉に、入れられたれいむが返した
『ゆっきゅり!ゆっきゅり!』
反応したのが面白いのか、赤ゆっくりは何度もそういった
『おちびちゃん、どこにいるの?ゆっくりでてきてね!!』
『ゆ?ゆっきゅり?』
『れいむはここにいるよ!どこにいるかおしえてね!』
そして、恐らくはその呪術をした人にとって、望む事が起きたんだ
『ここ?』
赤ゆっくりが、そう発音したんだ
今まで『ゆっくりしていってね』としか……正確には『ゆっきゅりしちぇいっちぇね』としか発音できな
かったのに
まあ言葉を知る機会がなかったから、仕方ないといえば仕方ないんだけど
『そこだね!ゆっくりそっちにいくからね!』
れいむはぴょんぴょんと音を頼りに赤ゆっくりの所へと向った
『ここ!ここ!』
『わかってるよ!ゆっくりそっちにいくよ!』
そして
『ゆっきゅり!』
『ゆべ!!』
捕食したんだ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
その呪術をした人は、ゆっくりが思い込みの力でどう変化するかを知りたかったみたいでね
真っ暗な空間も、知識の継承も、徐々に食べ物を変化していったのも、その為らしい
ゆっくりが入れられるようになってから、元赤ゆっくりは凄まじい成長をしていった
例えば
『はやくあまあまをもってこいじいい!!!』
ゲスが入れられたら
『あまあま、ここ』
『ゆふん!いまそっちにいくんだぜ!』
ゲスを誘導して
『ゆえーん!ゆえーん!!おきゃあしゃーん!!』
赤ゆっくりが入れられたら
『そっちにゆっくりいくよ。おちびちゃんまっててね』
『ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!』
赤ゆっくりに待つように言って
『おなかがすいたのぜ……むしさんがたべたいのぜ……』
お腹を空かせたゆっくりが入れられたら
チリリリリリ……
『ゆ!むしさんのおとがしたのぜ!まりさにゆっくりたべられるのぜ!』
虫の音を出したり
『ゆ?あまあまさんのにおいがするよ!』
『こっちからにおうよ!』
あまあまの匂いを出したり
『うー☆れみりゃはえれがんとなおぜうさまだどー☆』
グチャ
れみりゃをあっさりと潰したり
『おお、こわいこわい』
ガシ
『おお、ほかくほかく』
きめえ丸をあっさりと捕まえたり
もはやそれは、ゆっくりとは別の生命体としか思えないような、何かになってしまったんだ
『おなかいっぱい!』
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
壷に入れられる物はドンドンエスカレートしていった
ゆっくりの次には小動物を
その次には猛獣を
どれも、壷のゆっくりは難なく捕食していった
そして、最終的に
『おぎゃああ!!おぎゃああ!!!』
人間も
『俺、こいつを倒してお金を貰ったら、彼女への婚約指輪を買うんだ……』
難なく
『ヒャッハー!ゆっくりは虐待だー!』
捕食してしまえるように
『アルファチーム!応答しろ!』
『全滅!馬鹿な!?』
変化してしまった
『お腹、空いた……早く頂戴』
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
壷のゆっくりのデータは、ある程度は取れていた
音波でも光でもなく、何か別の物で捕食対象を認識
擬態も可能な模様。事実一部の人間が騙されて居る
外の存在を知って居る
喋り方は人間のソレと同じ
戦闘能力は、考えられる限り、壷に入れられた生物のソレを凌駕している
対毒物・薬物等の抵抗力は高く、また極端な低温・高温下でも捕食行動は可能
対水性もある
ここまでくれば分かるけど、壷が壊されないのが不思議なスペックだった
何故そんな呪術をしたのかは知らないけど、少なくとも本来の目的には使えなかっただろうね
ある時、その壷の廃棄が決定した
いくらなんでも、餓死と寿命があるだろうと考えて、その壷を永遠に封印する事になったんだ
壷に厳重な鍵が付けられて、壷の内部観測装置も一切の停止が決定した
それでこの話はお終い……になればよかったんだけど……
そんな変な物を作った天罰か、または運が悪かったのか
あるいは、壷のゆっくりが何かしたのか
壷が壊れたんだ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
分かるとは思うけど
壷といっても、本当の壷じゃないよ
だったら人間が入ったりする所がおかしいでしょ?
それは大きな部屋でね、呪術をしていたのも、とあるゆっくり研究所の人
その部屋の扉が、壊されたんだ
理由は簡単な事
ただ、何も知らないゆっくりんぴーすが、虐げられているゆっくりを助けようといって、その研究所を襲
撃したって訳
研究材料だった、普通のゆっくりや、奇形ゆっくり
幾つかの資料も高性能な装置も、全てゆっくりんぴーすが壊してまわった
『この部屋も壊せ!』
そういって、部屋の扉を破壊したんだ
その後?
ゆっくりからすれば、それは新たな捕食対象が与えられたって事だからね
だけど、特に誰かが死んだって話は聞いて無いよ
知能も高かったみたいだから、もしかしたらゆっくりんぴーすの誰かに擬態して、逃げ延びたのかもしれ
ない
死んだのかどうか、それとも人として生きて居るのか、はたまたゆっくりとして生きて居るのか
それは私には分からないさ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ん?
唐突過ぎる?
かもね
いくらゆっくりが思い込みで変化するからって、ここまで変化する筈が無い
まあ、普通はそう思うだろうね
この話だって、あくまで聞いた話だし、そんな事件が起こったって記録も見つかってない
そもそも、そこまで研究者が暴走する事も無いはず
だけど……
もし
もしもだよ
記憶を無くしたゆっくりを作ってさ
この話をしてさ
『この話の壷のゆっくりは、君だよ』
とでも言って、思い込ませたら
どうなると思う?
どんなゆっくりになると思う?
ねえ
君は興味が無いかな?
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「終わり……最後のお話でした」
「あ、はい……ありがとうございました」
なんていうか……とんでもない話だった
話の中身はともかく……そうやって信じ込むゆっくりが居るかどうかか……
「野生や野良が知ったら、大変だな」
「そうかな?個人的には身の程を弁えず、死ぬだけだと思うけど」
「どうしてそう思うんですか?」
「野良も野生も、基本的には強さの概念が逆だからね。アレに勝てるから強いじゃなくて、自分が強いか
ら周りが弱いって」
逆って言うのかな……
「この話をして信じてしまっても、きっと自分が強い、他が弱いって思考のままさ」
「自分が、話のゆっくりのように変化するって事は考えないって事か」
「そうね……そっちの方がゆっくりらしい」
「それこそ、記憶が全く無いゆっくりじゃない限り、心配無用って事だな」
どちらにせよ、それは人が何かしないといけないか
そんなゆっくりが出来る心配はなくて、ただ結局自滅する輩が増える
哀れな奴等だ
「これで、全員が語ったんだな」
「ええ。皆さん、お疲れ様でした」
「この話を纏めた新聞、楽しみにして居るよ」
「さて、出て行く時もルールがあったよな……」
黒板に書かれた注意事項を見る
『注意事項
話す順番は任意です
話し終えた人は、直に立ち去ってもいい。最後まで聞いてもいい
ただし、誰かと共に帰ってはいけない
仕切りの向こうでローブと仮面を脱いだらノックをしてください
鍵を開けます
その後、外に出たら廊下のガラスをノックして、退出した事を知らせる事』
1人ずつ、順番は任意で外に出て行く
「私が最初でいいかしら?」
「異議無し」
「問題なし」
「ええ」
「次は俺でいいかな?トイレに行きたくて仕方ないんだ」
「ハハ。もちろんいいよ」
そんな感じで、語り部さん達は、ルールを守って出て行った
最後に残ったのは、俺と最後の語り部さんだ
「先でいいんですか?」
「ああ。実は君の部長に頼まれて、ここの片付けをしないといけないんだ」
「なるほど。残っていては邪魔ですからね」
「そういう事だ。新聞、良い物を書き上げてね」
「はい」
そうして俺もまた、仕切りの向こう側へと戻る
こうして、ゆっくりに関係した怖い話を聞くのが終わった
後はコレを纏めて、新聞として貼り出すだけだ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
次の日
「いやー、すまんな斉藤」
部室に入った俺に開口一番、部長が謝った
「?どうしたんですか部長」
「昨日の事だよ。さぞかし攻められただろう?」
「?そりゃ、なんだかんだで皆さんから怖い話を聞かされましたけど……」
まあ、攻められているといえば、そうとられなくもないけど……
「いや、1人足りなかったろ?」
「……はい?」
終幕.X 『本当の7番目』へと続く