ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko0610 Run For Yukkuri ~逃走中~
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『Run For Yukkuri ~逃走中~』
序、
「お前らーーーー!!!ゆっくりしたいかあああぁぁぁぁ??!!!」
「「「「「ゆっくりしたいよーーーーー!!!!!」」」」」
「「「「ゆっくりさせてねっ!!!!!」」」」
テンション高めの男がマイクを握り締めて、眼下に散らばる饅頭共と会話をしている。その数15匹。個体としては、
れいむ種、まりさ種、ありす種、ぱちゅりー種、ちぇん種、みょん種の6種類であり、数の内訳はれいむ4匹、まりさ
3匹、ありす3匹、ぱちゅりー2匹、ちぇん2匹、みょん1匹…である。
今回集まった饅頭共はなんと数字を15まで“覚える”ことに成功した驚異的な知能を持ったゆっくりたちだ。もち
ろん、覚えさせるために、数多のブリーダーが血の滲むような(主にゆっくりが)努力をした結果なのであるが。
なぜ、こんな場所にこんな知能派(笑)のゆっくりたちが集められたかというと…番組収録のためだ。世間一般では
野良ゆは潰して然るべき…という風潮が蔓延しており、街のあちらこちらで潰れたゆっくりの死骸を目にするものだが、
それだけでは野良ゆの駆除は追いつかないのである。
そこでテレビという媒体を使って、一般市民が気持ちよくゆっくりを潰せるような環境を作り出すことができないだ
ろうか…という考えから今回の番組の企画が上がった。
とはいえ、“ゆっくりを潰せない一般市民100人”を対象に行ったアンケートでは、
* 一生懸命生きてるから潰すのは可愛そう(78人)
* 潰した時に叫び声を上げるのがイヤ(12人)
* 自分の手を汚したくない(9人)
* 可愛いから(1人)
このような結果が出ており、まだまだ不思議饅頭のことをかけがえのない命の一つだと勘違いしている市民が大勢い
ることを改めて認識させられた。
たとえ潰さなくても、捕まえて加工所に送ってくれるだけでもいいのだが、加工所がどんな場所かは市民もゆっくり
も理解しているため、やはり“かわいそうだから”という理由でためらってしまうのだろう。
つまり、今回の番組は、“保健所・加工所の2つの団体の提供でお送りします”…ということだ。
だが、勘違いしているとはいえ、“命を壊す行為”を奨励する番組を作り上げることは相当な苦難を強いられた。も
ちろん愛護団体などによるクレームも多数寄せられたし、番組放送にあたって各教育機関などからも反対意見が殺到し
た。
しかも1時間という枠の中で、ゆっくりの“無能さ”、“傲慢さ”、“デタラメな生態”、…総じて“価値の無さ”
を伝えるためにスタッフも試行錯誤を凝らすことになった。
人間が直接手を加えては意味がない。泣き叫ぶゆっくりを人間が潰すだけであれば、それは一般市民が毛嫌いしてい
る行為を映像の中で行うだけだ。
もしかしたら今回の番組では上手く視聴者に制作者側の意図を伝えられないかも知れない。だが、必ずこの番組を見
た他のテレビ局が…同じような内容の企画を出してくれることだろう。
【Run For Yukkuri ~逃走中~】
《ルール》
一つ、
各ゆっくりの後頭部には1~15の数字が書かれたバッジが取りつけられており…その数字を別のゆっくりに見られ、
スタッフに“密告”されたら、その時点で失格となる。
一つ、
3時間後、9時間後、18時間後に「○○に集合せよ」などというミッションが始まり、制限時間内にそのミッション
を達成できなかったゆっくりは、その時点て失格となる。
一つ、
15時間経過後に“あしながとしあき”がフィールドに投下され、“あしながとしあき”に数字を見られて密告されて
も、その時点で失格となる。
一つ、
21時間経過後に“あしながとしあき”が1人追加される。“あしながとしあき”は連携してゆっくりを追い詰めるこ
とができないものとする。
一つ、
最後まで生き残ったゆっくりにはあまあま一年分と銀バッジ、さらに幸福なゆん生が約束される。
《舞台》
[とある田舎の森林地帯]
フィールド中央には霧の濃い湖、フィールド北側には“紅魔館”と呼ばれる西洋の屋敷のセットが配置されている
《プレイヤー》
1.れいむ/2.まりさ/3.ありす/4.ぱちゅりー/5.ちぇん/6.みょん/7.れいむ/8.まりさ
9.ありす/10.ぱちゅりー/11.ちぇん/12.れいむ/13.まりさ/14.ありす/15.れいむ
一、(♪:少女綺想曲 ~ Dream Battle)
15匹のゆっくりたちの頭部には小型のカメラが設置されている。当てずっぽうで密告するルール違反者を出さ
ないようにするためだ。また、ゆっくりたちの口元にはやはり小型のマイクがセットされており、呟くだけでスタ
ッフが把握できるようになっている。
最初の2分間で、ゆっくりたちの態勢を整えさせる。この間に思い思いの場所に隠れたり…あるいは他のゆっく
りの数字を見つけやすい場所に移動するのだ。
「ゆっ?ゆゆっ??」
一瞬で散ってしまった他のゆっくりたちに取り残されて、7番れいむはその場を動かない。どうも何か考え事を
していたらしく、司会者の話を聞いていなかったらしい。突然一匹残されてキョロキョロと辺りを見回している。
一方、他のゆっくりたちはすでにその身を隠すか遠くに逃げてしまっている。その中に一匹だけ…2番まりさが
7番れいむの後方に待機している。2番まりさは既に7番れいむの番号を把握している。
「それでは…ゲームを開始します!!!!!」
スタッフの声はやはり、ゆっくりにも届くようにカメラ脇に小型のスピーカーが設置されており、そこから聞こ
えるようになっている。
(…れいむはぜったいゆっくりするよ!!!)←15番
(まりさはどんなてをつかってでもいきのこるよ!!!)←8番
(とかいはなありすはこんなところでまけたりしないわ!!!)←9番
(むきゅきゅ!!!もりのけんじゃ(笑)のぱちゅのひとりがちだわ!!!)←4番
(わかるよー!!!ちぇんがかつんだねー!!!)←11番
(みんなでいきのこってみせるみょん!!!)←6番
(…ッ!!!ゆっくりしていってね!!!)←7番
…今、戦いの火ぶたが切って落とされた…っ!!!
「…みっこくっ!するのぜ…れいむ…ななばん」
7番れいむはゲームのことなどすっかり忘れて、目の前をヒラヒラと飛んでいる蝶を追いかけるのに夢中になっ
ていた。
「ちょうちょさん!!まってね!ゆっくりれいむにたべられt…んゆぎぃ゛ぃ゛ぃ゛ッ??!!!!」
突然、7番れいむが苦痛に表情を歪める。それもそのはず。7番れいむに取りつけられたバッジとカメラとマイ
クがいきなり放電し始めたからだ。
「あっが…ゆぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ!!!!」
バチバチと青白い電流が7番れいむを執拗に襲う。その光景を密告した2番まりさは目を丸くして眺めていた。
「れ…れい…む…?」
「ゆ゛ん゛ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!!!」
7番れいむが断末魔の叫び声を上げると共に、爆散する。飛び散った目玉が2番まりさの元にコロコロと転がっ
てくる。顔の形がぐしゃぐしゃに崩れて…宙を舞っていた破れた皮がぺしゃぺしゃと音を立てて落ちてくる。焼け
焦げた揉み上げとリボンも、れいむがいたはずの場所に静かにたたずんでいた。
「ゆ…ゆわあああああ!!!れいむ!!!れいむ!!!しっかりするのぜーーー!!???」
草むらから2番まりさが飛び出す。こんなつもりではなかった。これはゲームなのではいのか?今、自分は一人
敵を脱落させただけではなかったのか?だが、目の前にあるのは7番れいむの無残な死体だ。死体と呼ぶにもおこ
がましいほど原形を留めていない“それ”を見て、2番まりさは悲しみに打ち震えて泣いた。
当然、他のゆっくりたちもそれほど遠くまで移動しているわけでもなく、7番れいむの断末魔を聞いていた。移
動中のゆっくりたちが全員、動きを止める。声の発生源のほうを振り返り、不安そうな表情を浮かべている。
(*1) ))
「諸君!!!!」
突然、14匹のゆっくりたちの小型スピーカーから司会者の声が聞こえた。スピーカーの仕組みを理解していな
いゆっくりたちはキョロキョロと辺りを見回しながら、
「お…おにーさん?どこ?どこぉ…?」
不安そうに呟く。司会者は言葉を続ける。
「言い忘れていたが、密告されたゆっくりは死ぬ」
「「「「「「「「「「「「「「ッ!!!!?????」」」」」」」」」」」」」」
ゆっくりたちが驚愕の表情を浮かべる。では、さっきのれいむの悲鳴は?れいむは死んだというのだろうか。そ
なことを考えながら、ゆっくりたちはぷるぷると震え始めた。ゆっくりたちにとっては、あまあまをかけた軽いゲ
ーム感覚のつもりだったのだろう。しかし、これはれっきとした、“死のゲーム”である。ただ、プレイヤーがゆ
っくりだから多少コミカルに見えてしまいがちだが。
これは生き残るための…戦争なのだ。
「ゆ…ゆっくりできないよっ!!!やめてね!!!れいむたちにひどいことしないでねっ!!!!」←1番
「と…ととと…とかいはじゃないわ!!!こ…ここ、この…いなかものぉ!!!」←14番
「なんとでも言いたまえ。やめるならやめても構わないぞ?その時点で失格とみなして爆発して死ぬがな」
「~~~~~~~っ!!!!!」
【7番れいむ:死亡 / 00時間00分11秒】
言葉と共に、戦意を失うゆっくりたち。13番まりさは恐怖のあまり、一歩も動くことができないようだ。見つ
かったら死ぬ。生き残るためには仲間を殺さなければならない。それは選択できない二択だった。
「むきゃきゃ」
13番まりさの背後から下卑た笑い声が聞こえる。驚いて振り返る13番まりさ。そこには10番ぱちゅりーが
いた。遅れて、10番ぱちゅりーの浮かべた不気味な笑みの理由に気付く。
「ぱちゅ…りー…?もしかして…まりさの…」
「むっきゅきゅきゅ…」
先ほどのれいむの断末魔を即座に思い出す13番まりさ。10番ぱちゅりーのニヤケ顔が止まらない。10番ぱ
ちゅりーは13番まりさの番号を把握している。密告が完了すれば、13番まりさは先ほどの7番れいむのように
無残な最期を遂げるだろう。13番まりさがガタガタ震えて泣き出す。
「ば…ばぢゅり゛ぃ゛ぃ゛…おでがい゛じばずぅ゛…やべでぐだざい゛ぃ゛ぃ゛…」
頭を何度も地面に打ち付けて、10番ぱちゅりーに懇願する13番まりさ。しかし、いつまでたっても13番ま
りさに死は訪れなかった。10番ぱちゅりーが見逃してくれたのかと思って、にわかに明るい表情を浮かべる13
番まりさだったが…
「むきゅきゅ…まりさ?」
「な…なに…?」
「ぱちゅのどれいになってね!!むっきゅ…むきゃきゃ…むーーーきゃっきゃっきゃっきゃっきゃ!!!!!」
「どぼじでぞんな゛ごどい゛う゛の゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛???!!!!」
10番ぱちゅりーは狡猾だった。加えてゲスだった。だが、このゲーム内に関してだけ言えば、間違いなくこの
10番ぱちゅりーは勝ち組の階段を一歩登ったと言える。数字を把握したゆっくりを即座に密告する必要はないの
だ。この一件で、13番まりさは、絶対に10番ぱちゅりーに逆らうことはできない。なぜなら、13番まりさの
命は…まさに10番ぱちゅりーの手中にあるからだ。
10番ぱちゅりーは安全な場所に隠れて、13番まりさを使って他のゆっくりを捜索させる計画だ。その途中で
13番まりさが他のゆっくりに見つかって密告されても、10番ぱちゅりーに被害はない。つまり、10番ぱちゅ
りーは、自動で捜索・防御を行う使い捨ての駒を手に入れたのだ。しかも、こんなゲーム開始早々に。
この行動にはスタッフ一同が目を丸くした。いくら他の個体よりも比較的賢いとはいえ、ゆっくりごときがゲー
ムのルールを完全に把握した上で、これほどまで早く攻略の糸口を掴むとは思っていなかったのだ。
「…まぁだからと言ってそれで勝てるほどこのゲームは甘くないんですけどね…」
「ミッション時にもずっと隠れてるわけにはいかないからなぁ…。動かざるを得ない状況になったときが…13番
まりさ逆転のチャンスと言えるだろう…」
15番れいむは一生懸命に巣穴を掘っていた。15番れいむは、霧の湖付近に到達していた。視界の悪いこの場
所であれば、ある程度拠点を作るのに適している。今現在15番れいむは無防備だが、この湖付近に他のゆっくり
は存在しない。視界の悪さが命取りになる…と判断したからだろう。15番れいむはそれを逆手に取った。
「ずっとずーりずーりしているわけにはいかないよ…つかれたらやすめるばしょをつくるよ…」
先ほどの10番ぱちゅりーとは違った意味で、賢い個体だった。いつ誰に見られているかわからない状況で拠点
を作りだすことは死と隣り合わせではあるが…拠点の巣穴から顔だけ出していれば、絶対に後頭部の番号を見られ
ることはない。そのため15番れいむは常に他のゆっくりの番号を把握するのに専念できる。こちらもミッション
スタート時にはどうしても拠点を出ざるを得ないが。
ゲーム開始から1時間経過後、フィールド内のゆっくりのほとんどが動かなくなってしまった。ちなみに各ゆっ
くりのバッジには小型の発信器が取りつけられており、どこにどのゆっくりがいるかはモニターで一目瞭然である。
やはり、湖付近に陣取っているのは15番れいむのみで、その他のゆっくりはうまい具合にばらけてはいるが、身
を潜めるにはあまり適していない場所に待機しているようだ。
そして、10番ぱちゅりーは常に13番まりさの後ろで行動している。13番まりさは文字通り生きた心地がし
ないだろう。10番ぱちゅりーに限ってそれはないだろうが、13番まりさは気まぐれで殺される可能性だってあ
るのだ。そんな恐怖と戦いつつ、他のゆっくりの番号を探しながら、やはり自分の番号を隠して行動しなければな
らない。
(ゆっくり…ゆっくりしたいよぅ…ゆえぇぇぇぇぇ…)
13番まりさは心の中で不満を叫びながらボロボロと泣きながら地面を這っていた。
「むきゅきゅ…まりさ!ぱちゅはここにかくれてるからみずうみのまわりでゆっくりをさがしてきなさい」
「ゆぐぅ…みずうみさんのまわりはよくみえないからあぶないよぅ…」
13番まりさが今にも泣きそうな声で10番ぱちゅりーに訴える。10番ぱちゅりーは舌打ちをすると、
「むきゅ!!!みっこくっ!されたいのかしら?」
「ゆ…ゆぅん…ゆぅぅぅぅぅぅん!!!!!!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、湖の方へと走っていく13番まりさ。10番ぱちゅりーはニヤニヤと笑いなが
ら木に寄りかかる。だからと言って眠ることはできない。気を張りながら、周囲の様子の確認だけは怠らないよう
にしている。そのとき、10番ぱちゅりーの背後…正確には木の反対側から他のゆっくりの声がした。
「まりさのすうじさんをおぼえて…どれいにしているのかみょん?」
10番ぱちゅりーの全身に力が入る。よもや1本の木に2匹のゆっくりが寄りかかっているなどとは思ってもい
なかった。しかも、相手は声からすると、みょんらしい。
「みょんは…げすなゆっくりはきらいだみょん」
6番みょんが10番ぱちゅりーを非難する。10番ぱちゅりーはむきゅきゅと笑うと、
「みょんにもまりさのすうじさんをおしえてあげようかしら…?」
「…みょん…?」
「むきゃきゃ…みょんのすうじさんをぱちゅにおしえてくれればだけど…っ!」
6番みょんが唇を噛み締める。
「ぱちゅりーにとって…まりさはおなじゆっくりじゃないのかみょん?」
10番ぱちゅりーが更に笑う。
「むきゃ!みょんはばかなの?しぬの?ぱちゅはいきのこるためならなんだってやるのよ」
互いの位置関係からして、両者とも動くことはできない。実際、不利なのは10番ぱちゅりーのほうだ。みょん
種の戦闘能力は通常種の中でも随一。6番みょんが本気になって飛びかかってきたら、10番ぱちゅりーは一瞬で
倒されてしまうだろう。内心では10番ぱちゅりーは焦っていた。
そもそも、護衛役の13番まりさがいたからこそ、直接的な戦闘を苦手とする10番ぱちゅりーは湖への最短ル
ートを選んで進んできた。考え方は15番れいむのそれと同じだった。視界の悪い湖で各ゆっくりたちを迎撃する。
ただし、体力的に他のゆっくりに劣るぱちゅりー種は湖へたどり着く前に殺されてしまう可能性がある。そこで、
まずは盾代わりになるゆっくりを作るところから始めたのだ。
しかし、今10番ぱちゅりーにその盾はない。6番みょんは木の枝…はくろーけんをその口に咥えた。
「みょんは…みんなでいきのこりたいみょん」
(………………むきゅぅ…!!!)
10番ぱちゅりーにとってはこの会話のやり取りも13番まりさが戻ってくるまでの時間稼ぎだった。2匹がか
りなら6番みょんを倒すことも不可能ではない。
「…どうしてもというなら…たたかうみょん」
(むきゅううぅぅぅ!!!そんなにまりさがだいじなの?!ばかなの?!!しぬの??!!!)
10番ぱちゅりーが唇を強く噛み締める。ダメだ。もう戦うしかない。みすみす殺されるくらいなら、ダメ元で
6番みょんと戦うしかなかった。
「んぅっほおおおおおおおお!!!!!とかいはなみょんだわあああああああ!!!!!!」
絶叫が空を切る。声からして…ありす種だろう。6番みょんは、10番ぱちゅりーと会話をしながら、3番あり
すと対峙していたのだ。
二、(♪:広有射怪鳥事 ~ Till When?)
6番みょんは3番ありすの体当たりをかわすと、口に咥えたはくろーけんを3番ありすに振り下ろす。3番あり
すはそれをとかいはなバックステップでかわし、6番みょんを睨みつけた。
どうやら3番ありすはレイパー化してしまっているらしい。今回のゲームで精神的に追い込まれた結果であろう
か。涎や体液をまき散らしながら突進してくる3番ありすを6番みょんが巧みにあしらう。
千載一遇のチャンスとみた10番ぱちゅりーは即座に寄りかかっていた木から離れ、この戦場を後にする。湖へ
と向かう。そこには13番まりさがいるはずだ。まずはどうしてもそれを回収する必要があった。
「むきゅきゅ!やっぱりぱちゅはかみさまにあいされてるのだわ!!むきょーきょきょきょ!!!!!」
3番ありすの後ろを取ろうとするが、6番みょんをもってしてもそれは容易ではなかった。レイパー化している
くせに、ゲームのルールは理解しているというのだろうか?それは違う。ただ単に後ろを取られたら、バックで責
められると勘違いしているだけだ。3番ありすはあくまで6番みょんをバックで激しく責めたてたいだけだ。だか
ら、6番みょんの後ろを取ろうとする。
「…れいぱーのくせにいいたたかいかたをするみょん…」
6番みょんは完全に勘違いをしているが、3番ありすの行動はこのゲーム内の戦い方において限りなく正解に近
い戦法を取っていたと言える。もともと、戦いにおいて後ろを取られるのは致命的ではあるのだが…あえて後ろを
取らせてカウンター…という戦い方はこのゲームでは通用しない。数字を見られたら、どれだけ実力差があろうが
関係なくなるからだ。
じりじりと互いにあんよを這わせて牽制をする両者。互いに後ろを取られないよう、円を描きながら移動する。
パキッ…
3番ありすのあんよの下の木の枝が折れる音が聞こえたと同時に6番みょんがありすの脇腹めがけて飛び出す。
両者の前へと進む力が重なり、6番みょんのはくろーけんが3番ありすを激しく殴打した。
「ゆぎぃっ!!!」
6番みょんは3番ありすの攻撃のタイミング…すなわち体当たりのためにあんよに力をかけた際に、折れた木の
枝の音を頼りにカウンターを合わせたのだった。スタッフから拍手が沸き起こる。さすがはみょん種。通常種の中
で最も戦闘に適した個体。もはやゆっくりじゃねぇ。
「またつまらぬものをきってしまったみょん…」
しかし、3番ありすはそれで倒れはしなかった。血走った目が6番みょんを捉える。殺気を察知した6番みょん
が即座にその場を飛びのく。3番ありすはさっきまで6番みょんがいた場所に自身の頭を打ち付けていた。顔を上
げ、額からカスタードを少量垂らしながら、6番みょんを睨みつける。
(おそろしいれいぱーだみょん…)
その一瞬の思考が命取りだった。3番ありすの強力なぺにぺにが水平に振られ、6番みょんのはくろーけんを叩
きおった。
「みょんっ??!!!!」
「んっほおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!おどろいたかおもかわいいわあああああああああ!!!!!」
一転して防戦一方になる6番みょんに3番ありすは執拗に攻撃を繰り返してきた。未だに3番ありすのぺにぺに
は屹立したままだ。恐ろしい持続力だった。
3番ありすの連続攻撃に6番みょんの体力も限界に近付いてきた。息を荒くする。額からは汗が滝のように流れ
落ちてきている。
(ありすにかったとしても…このあとがたいへんそうだみょん…)
それでも6番みょんは3番ありすを倒した後のことを考えている。
(せめてはくろーけんのかわりになるものがあれば…)
武器を失った6番みょんとは対称的に、3番ありすには強力無比な“えくすかれいぱー”がある。あれを叩き折
りでもしない限り、6番みょんに勝機はなかった。
「み…みょんっ!!」
だんだん攻撃をかわす6番みょんの動きが鈍くなってくる。
モニター前のスタッフも、戦闘力随一のみょんがここで散るか…と手に汗を握って2匹のやり取りを眺めていた。
「ゆ…ゆわああああああ!!!!」
ついに6番みょんが3番ありすに捕えられた。
「んっほおおおお!!!!みょんのおかお…すっべすべねーーーー!!!!」
3番ありすが6番みょんに激しく頬ずりをする。あまりの気持ち悪さにしかめっ面になる6番みょんをよそに3
番ありすはぺにぺにを6番みょんに刺そうとしている。
「みょ…みょん!!!!」
「ほおおおおおおおおおおお!!!!ありすのとかいはなあいを…うけとってええええええ!!!!!!」
「みっこくっ!するんだねー…ありす…さんばんだよー…」
「ん゛っぼお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛??!!!!」
3番ありすが突然、咆哮を上げ始める。6番みょんは3番ありすの只事ではない様子に危険を感じたのか、即座
にその場を離れる。
「ゆ゛っぎゃあああ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
6番みょんの顔を3番ありすの周りで走る電流の青白い光が照らす。そして、先ほどまで五分と五分の戦いを繰
り広げ、互いに“剣”を交えた剛のゆっくりが…大粒の涙を流し、その場でもだえ苦しんでいる。
(だれかが…みっこくっ!…したのかみょん…?)
倒されかけたとはいえ、あっぱれっ!な戦いをしていた3番ありすの死に行く姿を見るのは6番みょんにとって
寂しさを感じさせていた。
「みょん!!!み゛ょん゛!!!!ありずう゛う゛!!!じに゛だぐ…な゛…びゅべぎっ!!!!!」
勢いよく3番ありすの顔が破裂する。6番みょんに降り注ぐカスタードは…まるで3番ありすの涙雨かのようだ
った。
3番ありすは極度の精神的ストレスにより、レイパー化することで自身を保っていた。結果、恐ろしい怪物と化
していたのだが…怪物として死ぬよりは…ある意味幸せな末路をたどったのかも知れない。
6番みょんはその場で目を閉じ、3番ありすに黙祷を捧げた。
【3番ありす:死亡 / 02時間18分46秒】
黙祷を終えると、6番みょんはその場を後にした。
モニターの前でスタッフたちがコーヒーを飲みながら、そのやり取りを見ている。
「意外でしたね…もっとバタバタ死んでいくかと思ってたんですが…」
「そうだなぁ…まぁ、ゆっくりとはいえ数字を15まで覚えた連中だ…。そこまで馬鹿じゃないってことか…」
「いい感じの展開ね…。10番がゆっくりのゲスっぷりを。3番がゆっくりの汚物っぷりを証明してくれてる。こ
こまでは私たちの想像の範疇かしら?」
「残りは13匹か…」
「安心してください。ミッションの開始と“あしながとしあき”が投入されれば…もっとテンポよく死んでいきま
すよ」
5人の男女はニヤニヤと笑いながら…“死のゲーム”に興じるゆっくりたちを見つめていた。
「むきゅーー!!!おねがいだからやめてちょうだいっ!!!」
4番ぱちゅりーが懇願する。しかし、二股の尻尾を持つ猫饅頭は聞く耳など持たなかった。生クリームを吐きな
がら4番ぱちゅりーが身を捩る。…5番ちぇんは、4番ぱちゅりーの皮を噛みちぎり、致命傷を与えた。
「むきゅぅぅ!!どぼじでぇ…もりのげんじゃの゛ばちゅがあ゛あ゛…」
5番ちぇんは4番ぱちゅりーに体当たりして後ろ向きにさせると、その番号を確認した。番号を見られたことに
気付いた4番ぱちゅりーは泣きながら、5番ちぇんに向かって叫ぶ。
「むっぎゃあああ!!やめてちょうだい゛っ!!!やめでぐだざい゛い゛い゛!!!!」
5番ちぇんは冷たい目で懇願する4番ぱちゅりーを見下ろしながら、
「みっこくっ!するんだねー…」
「ゆ゛ぎゃあああああああああああああ!!!!!」
「ぱちゅりー…よんばんだよー…」
「…っ!!!!」
ちぇん種は通常種の中で最も素早い。走っているだけで、他のゆっくりに後頭部の数字を把握されることはない
だろう。ゆえに、5番ちぇんは他のゆっくりを徹底的に狩る時間と、徹底的に休息する時間を決めて動いていた。
その結果、さながら暗殺者のように3番ありすと4番ぱちゅりーを葬ることに成功したのだ。
【4番ぱちゅりー:死亡 / 02時間59分06秒】
三、(♪:信仰は儚き人間の為に)
ゲーム開始から3時間が経過した。
身を潜めてガタガタ震えているもの、ゲームのことを忘れて隠れた場所で眠っているもの。アテもなく彷徨って
いるもの。思い思いの行動を取っているゆっくりたちのスピーカーからけたたましい声が聞こえてきた。
「ゆっくりしていってね!!!」
12匹のゆっくりたちが本能に従って挨拶を返す。眠っていたゆっくりもその時点で覚醒した。
「「「「「「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」」」」」」」」
「さて諸君。いよいよミッションの始まりだ」
「ゆ…?みっしょん…?」
(馬鹿饅頭共が…)
「いいか。これからお前たちは1時間以内に湖へ集合しなければならない!だが、一か所に集まる必要はない。湖
までたどり着けばそれでいい。ミッションをクリアしたらこちらからスピーカーで連絡する」
「ゆぅ…たどりつけなかったら…どうなるの…?」
「死ぬ」
「ゆげぇっ!!!????」
焦って行動を開始すれば、数字を見られる確率は増すだろう。しかし、湖にたどり着くのが遅くなればなるほど、
先着者からの待ち伏せを受け、それはそれで殺される確率が上がる。さらに、1時間経ってもたどり着けなければ、
その場で死ぬ…となれば頭の悪いゆっくりたちの思考回路は爆発寸前だった。
「今から花火を上げる。そこに向かうんだ」
それっきりスピーカーから声はしなくなった。かわりに、湖の方角から大きな花火が数発上がる。向かうべき場
所をゆっくり理解した饅頭共は一斉に行動を開始し始めた。
即席の巣穴をつくり顔だけ出していた15番れいむのスピーカーから声が聞こえる。
「お前はミッションクリア―だ。良かったな、最初から湖にいて」
15番れいむは何も答えない。このゲームを仕組んだ相手に対して、憎しみの感情でも抱いているのだろう。
スタッフ一同、クスリと笑った。
そして、もう1組。10番ぱちゅりーと13番まりさのスピーカーにもスタッフの声が届いた。
「ぱちゅりー、まりさ、ミッションクリア―。そのまま1時間待て」
「むっきゃきゃきゃ!!!けんじゃなてんかいだわーーー!!!!」
「ゆぅ…わかったよ…」
さらにもう1匹。比較的湖の近くにいた6番みょんの元にも同様のセリフが流れた。
この時点で、残り8匹のゆっくりによる湖へ向けての壮絶な攻防戦が始まることとなった。
一番最初に7番れいむを爆死させた2番まりさがとぼとぼと湖へと向かっている。それでも後ろは見られないよ
うになるだけ草がたくさん生い茂っている場所を選んであんよを這わせている。
「そろーり!そろーり!!」
声を出しながらではないと移動できないゆっくりにとってこの最初のミッションは地獄としか言いようがなかっ
た。それでも2番まりさは一生懸命に湖へと向かっていた。と、そこに、
「そろーり…そろーり…」
別のゆっくりの声が聞こえてきた。2番まりさが足を止める。どうやら向こうもこちらの存在に気づいているら
しい。お互い、そこからぴくりとも動かない。
(ゆ…ゆぅ…うごけないのぜ…はやくみずうみさんにいかないといけないのに…)
2番まりさからは見えないが、ほぼ同じことを考えながらぶるぶる震えているのは9番ありすだった。
(だ…だれかしら…こわくて…うごけないわ…)
意を決して2番まりさが尋ねる。
「ま…まりさはまりさなのぜ!…そこにいるのは…だれ、なのぜ…?」
最後は声が小さくなっていき、しどろもどろになる。草むらから9番ありすが顔を半分だけ出して2番まりさを
覗きこんだ。
「ありすは…ありすよ…。まりさ…よかった…ぶじだったのね…」
9番ありすは敵である前に、同じゆっくりである2番まりさの無事を心から喜んでいた。お互いに、番号は悟ら
れないように、会話を続ける。
「ほかのゆっくりたちはぶじなのかしら…?」
「わからないのぜ…すくなくともまりさは…ほかのゆっくりにはあってないのぜ…」
「そう…」
うなだれる9番ありす。2番まりさも最初に7番れいむを殺したのは自分だったためか、俯いている。そのとき、
ありすが閃いた。
「まりさ!わたしたち…きょうりょくしてみないかしら!?」
「ゆぅ…?むりなのぜ…ありすのことはしんじてるつもりだけど…さすがにそれはできないのぜ…」
「…だめかしら…?」
9番ありすがしょんぼりとした表情を浮かべる。9番ありすは寂しかったのだ。実はゲーム開始以来、2番まり
さ以外に会うことはなかった。2番まりさとしても協力者がいることは心強かったのだが、裏切られたときのこと
を思うと二つ返事はできなかった。
しかし、2番まりさが名案を思いつく。
「ありす…ありすのかちゅーしゃをまりさにかすのぜ?」
「だ…だめよそんなの…とかいはじゃないわ…って…ま、まりさ…?」
2番まりさが帽子を脱いで9番ありすに渡した。逃げない…と言っているつもりなのだろうか。2番まりさの意
図を汲んだ9番ありすは自分のカチューシャを外し、2番まりさに渡す。そしてお互いの数字を確認し合った。
「ありすは…きゅうばんだよ…」
「まりさは…にばんだわ…」
そして、お互いの飾りを返した。見つめ合う2匹。
「ゆっ!ここからはきょうりょくしてがんばるのぜ!!!」
「とかいはだわ!!がんばりましょう!!!」
そう言って、2匹の目で周囲を警戒しながら進んで行く。実はサイレントアサシンの5番ちぇんが9番ありすを
狙っていたのだが…今回ばかりは諦めざるを得なかった。湖にたどり着く前にもう1匹くらいは消しておこうと考
えていた5番ちぇんだったが…一直線に湖へと向かうことにした。
5番ちぇんはあっという間に湖に到着した。移動だけに気を割くことができるので当然のスピードだが。やがて、
5番ちぇんのスピーカーからミッションクリアーの通知が届く。
残り7匹。
ほどなくして、9番ありすと2番まりさも湖に到着した。10番ぱちゅりーと13番まりさの近くを通りかかっ
たが、2対2だと体の弱い10番ぱちゅりーがいる分、不利になると判断したため、襲いかかることはしなかった。
残りは5匹である。湖の周辺は驚くほど静まり返っていた。
1番れいむ、8番まりさ、11番ちぇん、12番れいむ、14番ありす。ミッションの残り時間は既に20分を
切っている。5匹とも、すでに湖の近くまでは来ているのだが…一体何匹のゆっくりが、どこに潜んでいるのかわ
からないため、動くに動けない。しかし、時間は刻一刻と過ぎて行く。
そんな中、11番ちぇんが目をつぶって湖に向けて全速力で走りだした。誰にも遭遇することなく湖にたどり着
いた11番ちぇん。誰かに見られていたとしても、11番ちぇんの番号を確認できるようなゆっくりはいなかった
だろうが。11番ちぇんのスピーカーからクリア通知が届くと、嬉しさのあまりに11番ちぇんは泣いた。
残り4匹。今度は意を決して12番れいむが湖へと向かった。数字までは確認できないが、この様子を1番れい
むと8番まりさはそれぞれ違う場所から見ていた。
(れいむがいったよ…まりさも…はやくいかないと…まちぶせされちゃうよ…っ)
(れいむもれいむなのにあのれいむはすごくゆうきのあるれいむだよ…)
だが、しかし。
「…みっこくっ!するね…!れいむ…じゅうにばん」
「ぎっぴぃぃぃぃぃぃぃぃっ??!!!」
「「??!!!!」」
突然、咆哮を上げる12番れいむ。そしてその様子を見て、白目になる1番れいむと8番まりさ。
「ゆ゛ぎゃあああ゛あ゛あ゛!!!いだい゛!!!いだい゛よ゛お゛お゛!!!!!」
(*2)
視界の中で揉み上げをバシバシと地面に叩きつけ、何度も何度も転がったり、飛び跳ねたりしてもがき苦しんで
いる12番れいむを見て、1番れいむと8番まりさはガタガタガタガタ震えていた。やがて、
「も゛う゛や゛だあ゛あ゛あ゛!!!お゛う゛ぢがえりゅぶり゛ゅう゛!!!!!!!」
勢いよく爆発して、中身の餡子を四方八方にぶちまける12番れいむの壮絶な最期に、その様子を見ていた2匹
はおそろしーしーを大量噴射していた。
【12番れいむ:死亡 / 03時間49分42秒】
密告したのは、15番れいむ。巣穴の中からは湖に入ってくる12番れいむの位置は丸見えだった。このときの
12番れいむの絶叫は、湖に集まっていた他のゆっくりたちも当然聞いている。
また1匹…ゆっくりが死んだ…。
(…………)
黙祷を捧げる6番みょん。
「むきゃきゃ!さすがれいむ!ばかだわぁ!!」
死者を愚弄する10番ぱちゅりー。
(…てまがはぶけたんだねー…わかるよー…)
木陰で12番れいむが爆死するのを覗いていた5番ちぇんも冷笑を浮かべる。
1番れいむは泣きながら別のルートを探し始めた。8番まりさも同じだ。幸い、この2匹の周囲には他のゆっく
りがいなかった。巣穴の中で待機している15番れいむだけが敵だったのである。湖の真ん中にまで行ってしまう
と、待ち伏せ組の集中砲火を受けることになる。やがて…
「12番れいむ、ミッションクリアーだ」
「ゆゆゆっ?!」
スタッフの指定したエリアの中に入ったのだろう。12番れいむは言われるまで気付かなかったが、目の前に湖
がある。今度はうれしーしーを漏らしながら、
「ゆ…ゆっくり~~~!!!!」
叫ぶ。8番まりさも迂回するルートを通りながら、どうにか湖へとたどり着いたらしい。
残り時間は5分。
14番ありすは、まだ動けないでいた。不必要なまでに怯えている。
「と…とかいはじゃないわ…こわいよ!こわいよぅ…ありす…まだしにたくないよ…」
実は14番ありすはたった一匹、湖の北西部側に位置していた。他のゆっくりが南西から南東にかけての位置に
集中していたため、目の前の湖まであと数メートルあんよを這わせればミッションクリアーなのである。しかし、
14番ありすはその一歩を踏み出すことができなかった。死ぬことよりも、他のゆっくりに裏切られて殺されるこ
とのほうが辛かった。泣きながらその場を動くことができないでいる14番ありすにスタッフからの声が届く。
「残り15秒」
「ゆゆっ?!まだ“たくさん”じかんはあるからゆっくりかんがえるよ…っ!」
致命的なミスを犯した。1から15という“記号”と“読み方”を覚えているだけで、数を数えることはできな
い。それはここに集まったどのゆっくりたちにも同じことだったが。
「10秒……9…8…7…6…」
「ま…まだじかんはあるわ!とかいはなありすはこんなことで…」
「5…4…3…」
14番ありすはようやく震えるあんよを動かして、湖へと進み始めた。
「2」
(???!!!!!!)
14番ありすが目を見開く。途端にガタガタ震え始める。
「ま…まって!そんな…たくさん…」
「1」
「う…う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」
「0」
14番ありすが弾け飛んだ。
【14番ありす:死亡 / 04時間00分03秒】
湖近くに集合しているゆっくり達にスタッフからミッションの終了が告げられた。つまり、終了報告を聞くこと
ができたゆっくりは、生き残っている…ということだ。歓喜の涙を流すもの…。当然の結果とほくそ笑むものと様
々であったが…。休む間もなく第2ステージが始まろうとしている。
まだ24時間のうちの4時間しか経過していないのだ。午前8時にゲームを開始したので現在は正午。ゆっくり
たちも腹が減ってくることだろう。
つまり…他のゆっくりに見つからないように…今度は食糧を探さなければならないのだ。空腹はゆっくりたちの
判断を鈍らせる。単体で行動しているゆっくりにとっては手ごわい戦いになるだろう。
《残りプレイヤー》
1.れいむ/2.まりさ/5.ちぇん/6.みょん/8.まりさ
9.ありす/10.ぱちゅりー/11.ちぇん/13.まりさ/15.れいむ
つづきます
序、
「お前らーーーー!!!ゆっくりしたいかあああぁぁぁぁ??!!!」
「「「「「ゆっくりしたいよーーーーー!!!!!」」」」」
「「「「ゆっくりさせてねっ!!!!!」」」」
テンション高めの男がマイクを握り締めて、眼下に散らばる饅頭共と会話をしている。その数15匹。個体としては、
れいむ種、まりさ種、ありす種、ぱちゅりー種、ちぇん種、みょん種の6種類であり、数の内訳はれいむ4匹、まりさ
3匹、ありす3匹、ぱちゅりー2匹、ちぇん2匹、みょん1匹…である。
今回集まった饅頭共はなんと数字を15まで“覚える”ことに成功した驚異的な知能を持ったゆっくりたちだ。もち
ろん、覚えさせるために、数多のブリーダーが血の滲むような(主にゆっくりが)努力をした結果なのであるが。
なぜ、こんな場所にこんな知能派(笑)のゆっくりたちが集められたかというと…番組収録のためだ。世間一般では
野良ゆは潰して然るべき…という風潮が蔓延しており、街のあちらこちらで潰れたゆっくりの死骸を目にするものだが、
それだけでは野良ゆの駆除は追いつかないのである。
そこでテレビという媒体を使って、一般市民が気持ちよくゆっくりを潰せるような環境を作り出すことができないだ
ろうか…という考えから今回の番組の企画が上がった。
とはいえ、“ゆっくりを潰せない一般市民100人”を対象に行ったアンケートでは、
* 一生懸命生きてるから潰すのは可愛そう(78人)
* 潰した時に叫び声を上げるのがイヤ(12人)
* 自分の手を汚したくない(9人)
* 可愛いから(1人)
このような結果が出ており、まだまだ不思議饅頭のことをかけがえのない命の一つだと勘違いしている市民が大勢い
ることを改めて認識させられた。
たとえ潰さなくても、捕まえて加工所に送ってくれるだけでもいいのだが、加工所がどんな場所かは市民もゆっくり
も理解しているため、やはり“かわいそうだから”という理由でためらってしまうのだろう。
つまり、今回の番組は、“保健所・加工所の2つの団体の提供でお送りします”…ということだ。
だが、勘違いしているとはいえ、“命を壊す行為”を奨励する番組を作り上げることは相当な苦難を強いられた。も
ちろん愛護団体などによるクレームも多数寄せられたし、番組放送にあたって各教育機関などからも反対意見が殺到し
た。
しかも1時間という枠の中で、ゆっくりの“無能さ”、“傲慢さ”、“デタラメな生態”、…総じて“価値の無さ”
を伝えるためにスタッフも試行錯誤を凝らすことになった。
人間が直接手を加えては意味がない。泣き叫ぶゆっくりを人間が潰すだけであれば、それは一般市民が毛嫌いしてい
る行為を映像の中で行うだけだ。
もしかしたら今回の番組では上手く視聴者に制作者側の意図を伝えられないかも知れない。だが、必ずこの番組を見
た他のテレビ局が…同じような内容の企画を出してくれることだろう。
【Run For Yukkuri ~逃走中~】
《ルール》
一つ、
各ゆっくりの後頭部には1~15の数字が書かれたバッジが取りつけられており…その数字を別のゆっくりに見られ、
スタッフに“密告”されたら、その時点で失格となる。
一つ、
3時間後、9時間後、18時間後に「○○に集合せよ」などというミッションが始まり、制限時間内にそのミッション
を達成できなかったゆっくりは、その時点て失格となる。
一つ、
15時間経過後に“あしながとしあき”がフィールドに投下され、“あしながとしあき”に数字を見られて密告されて
も、その時点で失格となる。
一つ、
21時間経過後に“あしながとしあき”が1人追加される。“あしながとしあき”は連携してゆっくりを追い詰めるこ
とができないものとする。
一つ、
最後まで生き残ったゆっくりにはあまあま一年分と銀バッジ、さらに幸福なゆん生が約束される。
《舞台》
[とある田舎の森林地帯]
フィールド中央には霧の濃い湖、フィールド北側には“紅魔館”と呼ばれる西洋の屋敷のセットが配置されている
《プレイヤー》
1.れいむ/2.まりさ/3.ありす/4.ぱちゅりー/5.ちぇん/6.みょん/7.れいむ/8.まりさ
9.ありす/10.ぱちゅりー/11.ちぇん/12.れいむ/13.まりさ/14.ありす/15.れいむ
一、(♪:少女綺想曲 ~ Dream Battle)
15匹のゆっくりたちの頭部には小型のカメラが設置されている。当てずっぽうで密告するルール違反者を出さ
ないようにするためだ。また、ゆっくりたちの口元にはやはり小型のマイクがセットされており、呟くだけでスタ
ッフが把握できるようになっている。
最初の2分間で、ゆっくりたちの態勢を整えさせる。この間に思い思いの場所に隠れたり…あるいは他のゆっく
りの数字を見つけやすい場所に移動するのだ。
「ゆっ?ゆゆっ??」
一瞬で散ってしまった他のゆっくりたちに取り残されて、7番れいむはその場を動かない。どうも何か考え事を
していたらしく、司会者の話を聞いていなかったらしい。突然一匹残されてキョロキョロと辺りを見回している。
一方、他のゆっくりたちはすでにその身を隠すか遠くに逃げてしまっている。その中に一匹だけ…2番まりさが
7番れいむの後方に待機している。2番まりさは既に7番れいむの番号を把握している。
「それでは…ゲームを開始します!!!!!」
スタッフの声はやはり、ゆっくりにも届くようにカメラ脇に小型のスピーカーが設置されており、そこから聞こ
えるようになっている。
(…れいむはぜったいゆっくりするよ!!!)←15番
(まりさはどんなてをつかってでもいきのこるよ!!!)←8番
(とかいはなありすはこんなところでまけたりしないわ!!!)←9番
(むきゅきゅ!!!もりのけんじゃ(笑)のぱちゅのひとりがちだわ!!!)←4番
(わかるよー!!!ちぇんがかつんだねー!!!)←11番
(みんなでいきのこってみせるみょん!!!)←6番
(…ッ!!!ゆっくりしていってね!!!)←7番
…今、戦いの火ぶたが切って落とされた…っ!!!
「…みっこくっ!するのぜ…れいむ…ななばん」
7番れいむはゲームのことなどすっかり忘れて、目の前をヒラヒラと飛んでいる蝶を追いかけるのに夢中になっ
ていた。
「ちょうちょさん!!まってね!ゆっくりれいむにたべられt…んゆぎぃ゛ぃ゛ぃ゛ッ??!!!!」
突然、7番れいむが苦痛に表情を歪める。それもそのはず。7番れいむに取りつけられたバッジとカメラとマイ
クがいきなり放電し始めたからだ。
「あっが…ゆぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ!!!!」
バチバチと青白い電流が7番れいむを執拗に襲う。その光景を密告した2番まりさは目を丸くして眺めていた。
「れ…れい…む…?」
「ゆ゛ん゛ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!!!」
7番れいむが断末魔の叫び声を上げると共に、爆散する。飛び散った目玉が2番まりさの元にコロコロと転がっ
てくる。顔の形がぐしゃぐしゃに崩れて…宙を舞っていた破れた皮がぺしゃぺしゃと音を立てて落ちてくる。焼け
焦げた揉み上げとリボンも、れいむがいたはずの場所に静かにたたずんでいた。
「ゆ…ゆわあああああ!!!れいむ!!!れいむ!!!しっかりするのぜーーー!!???」
草むらから2番まりさが飛び出す。こんなつもりではなかった。これはゲームなのではいのか?今、自分は一人
敵を脱落させただけではなかったのか?だが、目の前にあるのは7番れいむの無残な死体だ。死体と呼ぶにもおこ
がましいほど原形を留めていない“それ”を見て、2番まりさは悲しみに打ち震えて泣いた。
当然、他のゆっくりたちもそれほど遠くまで移動しているわけでもなく、7番れいむの断末魔を聞いていた。移
動中のゆっくりたちが全員、動きを止める。声の発生源のほうを振り返り、不安そうな表情を浮かべている。
(*1) ))
「諸君!!!!」
突然、14匹のゆっくりたちの小型スピーカーから司会者の声が聞こえた。スピーカーの仕組みを理解していな
いゆっくりたちはキョロキョロと辺りを見回しながら、
「お…おにーさん?どこ?どこぉ…?」
不安そうに呟く。司会者は言葉を続ける。
「言い忘れていたが、密告されたゆっくりは死ぬ」
「「「「「「「「「「「「「「ッ!!!!?????」」」」」」」」」」」」」」
ゆっくりたちが驚愕の表情を浮かべる。では、さっきのれいむの悲鳴は?れいむは死んだというのだろうか。そ
なことを考えながら、ゆっくりたちはぷるぷると震え始めた。ゆっくりたちにとっては、あまあまをかけた軽いゲ
ーム感覚のつもりだったのだろう。しかし、これはれっきとした、“死のゲーム”である。ただ、プレイヤーがゆ
っくりだから多少コミカルに見えてしまいがちだが。
これは生き残るための…戦争なのだ。
「ゆ…ゆっくりできないよっ!!!やめてね!!!れいむたちにひどいことしないでねっ!!!!」←1番
「と…ととと…とかいはじゃないわ!!!こ…ここ、この…いなかものぉ!!!」←14番
「なんとでも言いたまえ。やめるならやめても構わないぞ?その時点で失格とみなして爆発して死ぬがな」
「~~~~~~~っ!!!!!」
【7番れいむ:死亡 / 00時間00分11秒】
言葉と共に、戦意を失うゆっくりたち。13番まりさは恐怖のあまり、一歩も動くことができないようだ。見つ
かったら死ぬ。生き残るためには仲間を殺さなければならない。それは選択できない二択だった。
「むきゃきゃ」
13番まりさの背後から下卑た笑い声が聞こえる。驚いて振り返る13番まりさ。そこには10番ぱちゅりーが
いた。遅れて、10番ぱちゅりーの浮かべた不気味な笑みの理由に気付く。
「ぱちゅ…りー…?もしかして…まりさの…」
「むっきゅきゅきゅ…」
先ほどのれいむの断末魔を即座に思い出す13番まりさ。10番ぱちゅりーのニヤケ顔が止まらない。10番ぱ
ちゅりーは13番まりさの番号を把握している。密告が完了すれば、13番まりさは先ほどの7番れいむのように
無残な最期を遂げるだろう。13番まりさがガタガタ震えて泣き出す。
「ば…ばぢゅり゛ぃ゛ぃ゛…おでがい゛じばずぅ゛…やべでぐだざい゛ぃ゛ぃ゛…」
頭を何度も地面に打ち付けて、10番ぱちゅりーに懇願する13番まりさ。しかし、いつまでたっても13番ま
りさに死は訪れなかった。10番ぱちゅりーが見逃してくれたのかと思って、にわかに明るい表情を浮かべる13
番まりさだったが…
「むきゅきゅ…まりさ?」
「な…なに…?」
「ぱちゅのどれいになってね!!むっきゅ…むきゃきゃ…むーーーきゃっきゃっきゃっきゃっきゃ!!!!!」
「どぼじでぞんな゛ごどい゛う゛の゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛???!!!!」
10番ぱちゅりーは狡猾だった。加えてゲスだった。だが、このゲーム内に関してだけ言えば、間違いなくこの
10番ぱちゅりーは勝ち組の階段を一歩登ったと言える。数字を把握したゆっくりを即座に密告する必要はないの
だ。この一件で、13番まりさは、絶対に10番ぱちゅりーに逆らうことはできない。なぜなら、13番まりさの
命は…まさに10番ぱちゅりーの手中にあるからだ。
10番ぱちゅりーは安全な場所に隠れて、13番まりさを使って他のゆっくりを捜索させる計画だ。その途中で
13番まりさが他のゆっくりに見つかって密告されても、10番ぱちゅりーに被害はない。つまり、10番ぱちゅ
りーは、自動で捜索・防御を行う使い捨ての駒を手に入れたのだ。しかも、こんなゲーム開始早々に。
この行動にはスタッフ一同が目を丸くした。いくら他の個体よりも比較的賢いとはいえ、ゆっくりごときがゲー
ムのルールを完全に把握した上で、これほどまで早く攻略の糸口を掴むとは思っていなかったのだ。
「…まぁだからと言ってそれで勝てるほどこのゲームは甘くないんですけどね…」
「ミッション時にもずっと隠れてるわけにはいかないからなぁ…。動かざるを得ない状況になったときが…13番
まりさ逆転のチャンスと言えるだろう…」
15番れいむは一生懸命に巣穴を掘っていた。15番れいむは、霧の湖付近に到達していた。視界の悪いこの場
所であれば、ある程度拠点を作るのに適している。今現在15番れいむは無防備だが、この湖付近に他のゆっくり
は存在しない。視界の悪さが命取りになる…と判断したからだろう。15番れいむはそれを逆手に取った。
「ずっとずーりずーりしているわけにはいかないよ…つかれたらやすめるばしょをつくるよ…」
先ほどの10番ぱちゅりーとは違った意味で、賢い個体だった。いつ誰に見られているかわからない状況で拠点
を作りだすことは死と隣り合わせではあるが…拠点の巣穴から顔だけ出していれば、絶対に後頭部の番号を見られ
ることはない。そのため15番れいむは常に他のゆっくりの番号を把握するのに専念できる。こちらもミッション
スタート時にはどうしても拠点を出ざるを得ないが。
ゲーム開始から1時間経過後、フィールド内のゆっくりのほとんどが動かなくなってしまった。ちなみに各ゆっ
くりのバッジには小型の発信器が取りつけられており、どこにどのゆっくりがいるかはモニターで一目瞭然である。
やはり、湖付近に陣取っているのは15番れいむのみで、その他のゆっくりはうまい具合にばらけてはいるが、身
を潜めるにはあまり適していない場所に待機しているようだ。
そして、10番ぱちゅりーは常に13番まりさの後ろで行動している。13番まりさは文字通り生きた心地がし
ないだろう。10番ぱちゅりーに限ってそれはないだろうが、13番まりさは気まぐれで殺される可能性だってあ
るのだ。そんな恐怖と戦いつつ、他のゆっくりの番号を探しながら、やはり自分の番号を隠して行動しなければな
らない。
(ゆっくり…ゆっくりしたいよぅ…ゆえぇぇぇぇぇ…)
13番まりさは心の中で不満を叫びながらボロボロと泣きながら地面を這っていた。
「むきゅきゅ…まりさ!ぱちゅはここにかくれてるからみずうみのまわりでゆっくりをさがしてきなさい」
「ゆぐぅ…みずうみさんのまわりはよくみえないからあぶないよぅ…」
13番まりさが今にも泣きそうな声で10番ぱちゅりーに訴える。10番ぱちゅりーは舌打ちをすると、
「むきゅ!!!みっこくっ!されたいのかしら?」
「ゆ…ゆぅん…ゆぅぅぅぅぅぅん!!!!!!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、湖の方へと走っていく13番まりさ。10番ぱちゅりーはニヤニヤと笑いなが
ら木に寄りかかる。だからと言って眠ることはできない。気を張りながら、周囲の様子の確認だけは怠らないよう
にしている。そのとき、10番ぱちゅりーの背後…正確には木の反対側から他のゆっくりの声がした。
「まりさのすうじさんをおぼえて…どれいにしているのかみょん?」
10番ぱちゅりーの全身に力が入る。よもや1本の木に2匹のゆっくりが寄りかかっているなどとは思ってもい
なかった。しかも、相手は声からすると、みょんらしい。
「みょんは…げすなゆっくりはきらいだみょん」
6番みょんが10番ぱちゅりーを非難する。10番ぱちゅりーはむきゅきゅと笑うと、
「みょんにもまりさのすうじさんをおしえてあげようかしら…?」
「…みょん…?」
「むきゃきゃ…みょんのすうじさんをぱちゅにおしえてくれればだけど…っ!」
6番みょんが唇を噛み締める。
「ぱちゅりーにとって…まりさはおなじゆっくりじゃないのかみょん?」
10番ぱちゅりーが更に笑う。
「むきゃ!みょんはばかなの?しぬの?ぱちゅはいきのこるためならなんだってやるのよ」
互いの位置関係からして、両者とも動くことはできない。実際、不利なのは10番ぱちゅりーのほうだ。みょん
種の戦闘能力は通常種の中でも随一。6番みょんが本気になって飛びかかってきたら、10番ぱちゅりーは一瞬で
倒されてしまうだろう。内心では10番ぱちゅりーは焦っていた。
そもそも、護衛役の13番まりさがいたからこそ、直接的な戦闘を苦手とする10番ぱちゅりーは湖への最短ル
ートを選んで進んできた。考え方は15番れいむのそれと同じだった。視界の悪い湖で各ゆっくりたちを迎撃する。
ただし、体力的に他のゆっくりに劣るぱちゅりー種は湖へたどり着く前に殺されてしまう可能性がある。そこで、
まずは盾代わりになるゆっくりを作るところから始めたのだ。
しかし、今10番ぱちゅりーにその盾はない。6番みょんは木の枝…はくろーけんをその口に咥えた。
「みょんは…みんなでいきのこりたいみょん」
(………………むきゅぅ…!!!)
10番ぱちゅりーにとってはこの会話のやり取りも13番まりさが戻ってくるまでの時間稼ぎだった。2匹がか
りなら6番みょんを倒すことも不可能ではない。
「…どうしてもというなら…たたかうみょん」
(むきゅううぅぅぅ!!!そんなにまりさがだいじなの?!ばかなの?!!しぬの??!!!)
10番ぱちゅりーが唇を強く噛み締める。ダメだ。もう戦うしかない。みすみす殺されるくらいなら、ダメ元で
6番みょんと戦うしかなかった。
「んぅっほおおおおおおおお!!!!!とかいはなみょんだわあああああああ!!!!!!」
絶叫が空を切る。声からして…ありす種だろう。6番みょんは、10番ぱちゅりーと会話をしながら、3番あり
すと対峙していたのだ。
二、(♪:広有射怪鳥事 ~ Till When?)
6番みょんは3番ありすの体当たりをかわすと、口に咥えたはくろーけんを3番ありすに振り下ろす。3番あり
すはそれをとかいはなバックステップでかわし、6番みょんを睨みつけた。
どうやら3番ありすはレイパー化してしまっているらしい。今回のゲームで精神的に追い込まれた結果であろう
か。涎や体液をまき散らしながら突進してくる3番ありすを6番みょんが巧みにあしらう。
千載一遇のチャンスとみた10番ぱちゅりーは即座に寄りかかっていた木から離れ、この戦場を後にする。湖へ
と向かう。そこには13番まりさがいるはずだ。まずはどうしてもそれを回収する必要があった。
「むきゅきゅ!やっぱりぱちゅはかみさまにあいされてるのだわ!!むきょーきょきょきょ!!!!!」
3番ありすの後ろを取ろうとするが、6番みょんをもってしてもそれは容易ではなかった。レイパー化している
くせに、ゲームのルールは理解しているというのだろうか?それは違う。ただ単に後ろを取られたら、バックで責
められると勘違いしているだけだ。3番ありすはあくまで6番みょんをバックで激しく責めたてたいだけだ。だか
ら、6番みょんの後ろを取ろうとする。
「…れいぱーのくせにいいたたかいかたをするみょん…」
6番みょんは完全に勘違いをしているが、3番ありすの行動はこのゲーム内の戦い方において限りなく正解に近
い戦法を取っていたと言える。もともと、戦いにおいて後ろを取られるのは致命的ではあるのだが…あえて後ろを
取らせてカウンター…という戦い方はこのゲームでは通用しない。数字を見られたら、どれだけ実力差があろうが
関係なくなるからだ。
じりじりと互いにあんよを這わせて牽制をする両者。互いに後ろを取られないよう、円を描きながら移動する。
パキッ…
3番ありすのあんよの下の木の枝が折れる音が聞こえたと同時に6番みょんがありすの脇腹めがけて飛び出す。
両者の前へと進む力が重なり、6番みょんのはくろーけんが3番ありすを激しく殴打した。
「ゆぎぃっ!!!」
6番みょんは3番ありすの攻撃のタイミング…すなわち体当たりのためにあんよに力をかけた際に、折れた木の
枝の音を頼りにカウンターを合わせたのだった。スタッフから拍手が沸き起こる。さすがはみょん種。通常種の中
で最も戦闘に適した個体。もはやゆっくりじゃねぇ。
「またつまらぬものをきってしまったみょん…」
しかし、3番ありすはそれで倒れはしなかった。血走った目が6番みょんを捉える。殺気を察知した6番みょん
が即座にその場を飛びのく。3番ありすはさっきまで6番みょんがいた場所に自身の頭を打ち付けていた。顔を上
げ、額からカスタードを少量垂らしながら、6番みょんを睨みつける。
(おそろしいれいぱーだみょん…)
その一瞬の思考が命取りだった。3番ありすの強力なぺにぺにが水平に振られ、6番みょんのはくろーけんを叩
きおった。
「みょんっ??!!!!」
「んっほおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!おどろいたかおもかわいいわあああああああああ!!!!!」
一転して防戦一方になる6番みょんに3番ありすは執拗に攻撃を繰り返してきた。未だに3番ありすのぺにぺに
は屹立したままだ。恐ろしい持続力だった。
3番ありすの連続攻撃に6番みょんの体力も限界に近付いてきた。息を荒くする。額からは汗が滝のように流れ
落ちてきている。
(ありすにかったとしても…このあとがたいへんそうだみょん…)
それでも6番みょんは3番ありすを倒した後のことを考えている。
(せめてはくろーけんのかわりになるものがあれば…)
武器を失った6番みょんとは対称的に、3番ありすには強力無比な“えくすかれいぱー”がある。あれを叩き折
りでもしない限り、6番みょんに勝機はなかった。
「み…みょんっ!!」
だんだん攻撃をかわす6番みょんの動きが鈍くなってくる。
モニター前のスタッフも、戦闘力随一のみょんがここで散るか…と手に汗を握って2匹のやり取りを眺めていた。
「ゆ…ゆわああああああ!!!!」
ついに6番みょんが3番ありすに捕えられた。
「んっほおおおお!!!!みょんのおかお…すっべすべねーーーー!!!!」
3番ありすが6番みょんに激しく頬ずりをする。あまりの気持ち悪さにしかめっ面になる6番みょんをよそに3
番ありすはぺにぺにを6番みょんに刺そうとしている。
「みょ…みょん!!!!」
「ほおおおおおおおおおおお!!!!ありすのとかいはなあいを…うけとってええええええ!!!!!!」
「みっこくっ!するんだねー…ありす…さんばんだよー…」
「ん゛っぼお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛??!!!!」
3番ありすが突然、咆哮を上げ始める。6番みょんは3番ありすの只事ではない様子に危険を感じたのか、即座
にその場を離れる。
「ゆ゛っぎゃあああ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
6番みょんの顔を3番ありすの周りで走る電流の青白い光が照らす。そして、先ほどまで五分と五分の戦いを繰
り広げ、互いに“剣”を交えた剛のゆっくりが…大粒の涙を流し、その場でもだえ苦しんでいる。
(だれかが…みっこくっ!…したのかみょん…?)
倒されかけたとはいえ、あっぱれっ!な戦いをしていた3番ありすの死に行く姿を見るのは6番みょんにとって
寂しさを感じさせていた。
「みょん!!!み゛ょん゛!!!!ありずう゛う゛!!!じに゛だぐ…な゛…びゅべぎっ!!!!!」
勢いよく3番ありすの顔が破裂する。6番みょんに降り注ぐカスタードは…まるで3番ありすの涙雨かのようだ
った。
3番ありすは極度の精神的ストレスにより、レイパー化することで自身を保っていた。結果、恐ろしい怪物と化
していたのだが…怪物として死ぬよりは…ある意味幸せな末路をたどったのかも知れない。
6番みょんはその場で目を閉じ、3番ありすに黙祷を捧げた。
【3番ありす:死亡 / 02時間18分46秒】
黙祷を終えると、6番みょんはその場を後にした。
モニターの前でスタッフたちがコーヒーを飲みながら、そのやり取りを見ている。
「意外でしたね…もっとバタバタ死んでいくかと思ってたんですが…」
「そうだなぁ…まぁ、ゆっくりとはいえ数字を15まで覚えた連中だ…。そこまで馬鹿じゃないってことか…」
「いい感じの展開ね…。10番がゆっくりのゲスっぷりを。3番がゆっくりの汚物っぷりを証明してくれてる。こ
こまでは私たちの想像の範疇かしら?」
「残りは13匹か…」
「安心してください。ミッションの開始と“あしながとしあき”が投入されれば…もっとテンポよく死んでいきま
すよ」
5人の男女はニヤニヤと笑いながら…“死のゲーム”に興じるゆっくりたちを見つめていた。
「むきゅーー!!!おねがいだからやめてちょうだいっ!!!」
4番ぱちゅりーが懇願する。しかし、二股の尻尾を持つ猫饅頭は聞く耳など持たなかった。生クリームを吐きな
がら4番ぱちゅりーが身を捩る。…5番ちぇんは、4番ぱちゅりーの皮を噛みちぎり、致命傷を与えた。
「むきゅぅぅ!!どぼじでぇ…もりのげんじゃの゛ばちゅがあ゛あ゛…」
5番ちぇんは4番ぱちゅりーに体当たりして後ろ向きにさせると、その番号を確認した。番号を見られたことに
気付いた4番ぱちゅりーは泣きながら、5番ちぇんに向かって叫ぶ。
「むっぎゃあああ!!やめてちょうだい゛っ!!!やめでぐだざい゛い゛い゛!!!!」
5番ちぇんは冷たい目で懇願する4番ぱちゅりーを見下ろしながら、
「みっこくっ!するんだねー…」
「ゆ゛ぎゃあああああああああああああ!!!!!」
「ぱちゅりー…よんばんだよー…」
「…っ!!!!」
ちぇん種は通常種の中で最も素早い。走っているだけで、他のゆっくりに後頭部の数字を把握されることはない
だろう。ゆえに、5番ちぇんは他のゆっくりを徹底的に狩る時間と、徹底的に休息する時間を決めて動いていた。
その結果、さながら暗殺者のように3番ありすと4番ぱちゅりーを葬ることに成功したのだ。
【4番ぱちゅりー:死亡 / 02時間59分06秒】
三、(♪:信仰は儚き人間の為に)
ゲーム開始から3時間が経過した。
身を潜めてガタガタ震えているもの、ゲームのことを忘れて隠れた場所で眠っているもの。アテもなく彷徨って
いるもの。思い思いの行動を取っているゆっくりたちのスピーカーからけたたましい声が聞こえてきた。
「ゆっくりしていってね!!!」
12匹のゆっくりたちが本能に従って挨拶を返す。眠っていたゆっくりもその時点で覚醒した。
「「「「「「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」」」」」」」」
「さて諸君。いよいよミッションの始まりだ」
「ゆ…?みっしょん…?」
(馬鹿饅頭共が…)
「いいか。これからお前たちは1時間以内に湖へ集合しなければならない!だが、一か所に集まる必要はない。湖
までたどり着けばそれでいい。ミッションをクリアしたらこちらからスピーカーで連絡する」
「ゆぅ…たどりつけなかったら…どうなるの…?」
「死ぬ」
「ゆげぇっ!!!????」
焦って行動を開始すれば、数字を見られる確率は増すだろう。しかし、湖にたどり着くのが遅くなればなるほど、
先着者からの待ち伏せを受け、それはそれで殺される確率が上がる。さらに、1時間経ってもたどり着けなければ、
その場で死ぬ…となれば頭の悪いゆっくりたちの思考回路は爆発寸前だった。
「今から花火を上げる。そこに向かうんだ」
それっきりスピーカーから声はしなくなった。かわりに、湖の方角から大きな花火が数発上がる。向かうべき場
所をゆっくり理解した饅頭共は一斉に行動を開始し始めた。
即席の巣穴をつくり顔だけ出していた15番れいむのスピーカーから声が聞こえる。
「お前はミッションクリア―だ。良かったな、最初から湖にいて」
15番れいむは何も答えない。このゲームを仕組んだ相手に対して、憎しみの感情でも抱いているのだろう。
スタッフ一同、クスリと笑った。
そして、もう1組。10番ぱちゅりーと13番まりさのスピーカーにもスタッフの声が届いた。
「ぱちゅりー、まりさ、ミッションクリア―。そのまま1時間待て」
「むっきゃきゃきゃ!!!けんじゃなてんかいだわーーー!!!!」
「ゆぅ…わかったよ…」
さらにもう1匹。比較的湖の近くにいた6番みょんの元にも同様のセリフが流れた。
この時点で、残り8匹のゆっくりによる湖へ向けての壮絶な攻防戦が始まることとなった。
一番最初に7番れいむを爆死させた2番まりさがとぼとぼと湖へと向かっている。それでも後ろは見られないよ
うになるだけ草がたくさん生い茂っている場所を選んであんよを這わせている。
「そろーり!そろーり!!」
声を出しながらではないと移動できないゆっくりにとってこの最初のミッションは地獄としか言いようがなかっ
た。それでも2番まりさは一生懸命に湖へと向かっていた。と、そこに、
「そろーり…そろーり…」
別のゆっくりの声が聞こえてきた。2番まりさが足を止める。どうやら向こうもこちらの存在に気づいているら
しい。お互い、そこからぴくりとも動かない。
(ゆ…ゆぅ…うごけないのぜ…はやくみずうみさんにいかないといけないのに…)
2番まりさからは見えないが、ほぼ同じことを考えながらぶるぶる震えているのは9番ありすだった。
(だ…だれかしら…こわくて…うごけないわ…)
意を決して2番まりさが尋ねる。
「ま…まりさはまりさなのぜ!…そこにいるのは…だれ、なのぜ…?」
最後は声が小さくなっていき、しどろもどろになる。草むらから9番ありすが顔を半分だけ出して2番まりさを
覗きこんだ。
「ありすは…ありすよ…。まりさ…よかった…ぶじだったのね…」
9番ありすは敵である前に、同じゆっくりである2番まりさの無事を心から喜んでいた。お互いに、番号は悟ら
れないように、会話を続ける。
「ほかのゆっくりたちはぶじなのかしら…?」
「わからないのぜ…すくなくともまりさは…ほかのゆっくりにはあってないのぜ…」
「そう…」
うなだれる9番ありす。2番まりさも最初に7番れいむを殺したのは自分だったためか、俯いている。そのとき、
ありすが閃いた。
「まりさ!わたしたち…きょうりょくしてみないかしら!?」
「ゆぅ…?むりなのぜ…ありすのことはしんじてるつもりだけど…さすがにそれはできないのぜ…」
「…だめかしら…?」
9番ありすがしょんぼりとした表情を浮かべる。9番ありすは寂しかったのだ。実はゲーム開始以来、2番まり
さ以外に会うことはなかった。2番まりさとしても協力者がいることは心強かったのだが、裏切られたときのこと
を思うと二つ返事はできなかった。
しかし、2番まりさが名案を思いつく。
「ありす…ありすのかちゅーしゃをまりさにかすのぜ?」
「だ…だめよそんなの…とかいはじゃないわ…って…ま、まりさ…?」
2番まりさが帽子を脱いで9番ありすに渡した。逃げない…と言っているつもりなのだろうか。2番まりさの意
図を汲んだ9番ありすは自分のカチューシャを外し、2番まりさに渡す。そしてお互いの数字を確認し合った。
「ありすは…きゅうばんだよ…」
「まりさは…にばんだわ…」
そして、お互いの飾りを返した。見つめ合う2匹。
「ゆっ!ここからはきょうりょくしてがんばるのぜ!!!」
「とかいはだわ!!がんばりましょう!!!」
そう言って、2匹の目で周囲を警戒しながら進んで行く。実はサイレントアサシンの5番ちぇんが9番ありすを
狙っていたのだが…今回ばかりは諦めざるを得なかった。湖にたどり着く前にもう1匹くらいは消しておこうと考
えていた5番ちぇんだったが…一直線に湖へと向かうことにした。
5番ちぇんはあっという間に湖に到着した。移動だけに気を割くことができるので当然のスピードだが。やがて、
5番ちぇんのスピーカーからミッションクリアーの通知が届く。
残り7匹。
ほどなくして、9番ありすと2番まりさも湖に到着した。10番ぱちゅりーと13番まりさの近くを通りかかっ
たが、2対2だと体の弱い10番ぱちゅりーがいる分、不利になると判断したため、襲いかかることはしなかった。
残りは5匹である。湖の周辺は驚くほど静まり返っていた。
1番れいむ、8番まりさ、11番ちぇん、12番れいむ、14番ありす。ミッションの残り時間は既に20分を
切っている。5匹とも、すでに湖の近くまでは来ているのだが…一体何匹のゆっくりが、どこに潜んでいるのかわ
からないため、動くに動けない。しかし、時間は刻一刻と過ぎて行く。
そんな中、11番ちぇんが目をつぶって湖に向けて全速力で走りだした。誰にも遭遇することなく湖にたどり着
いた11番ちぇん。誰かに見られていたとしても、11番ちぇんの番号を確認できるようなゆっくりはいなかった
だろうが。11番ちぇんのスピーカーからクリア通知が届くと、嬉しさのあまりに11番ちぇんは泣いた。
残り4匹。今度は意を決して12番れいむが湖へと向かった。数字までは確認できないが、この様子を1番れい
むと8番まりさはそれぞれ違う場所から見ていた。
(れいむがいったよ…まりさも…はやくいかないと…まちぶせされちゃうよ…っ)
(れいむもれいむなのにあのれいむはすごくゆうきのあるれいむだよ…)
だが、しかし。
「…みっこくっ!するね…!れいむ…じゅうにばん」
「ぎっぴぃぃぃぃぃぃぃぃっ??!!!」
「「??!!!!」」
突然、咆哮を上げる12番れいむ。そしてその様子を見て、白目になる1番れいむと8番まりさ。
「ゆ゛ぎゃあああ゛あ゛あ゛!!!いだい゛!!!いだい゛よ゛お゛お゛!!!!!」
(*2)
視界の中で揉み上げをバシバシと地面に叩きつけ、何度も何度も転がったり、飛び跳ねたりしてもがき苦しんで
いる12番れいむを見て、1番れいむと8番まりさはガタガタガタガタ震えていた。やがて、
「も゛う゛や゛だあ゛あ゛あ゛!!!お゛う゛ぢがえりゅぶり゛ゅう゛!!!!!!!」
勢いよく爆発して、中身の餡子を四方八方にぶちまける12番れいむの壮絶な最期に、その様子を見ていた2匹
はおそろしーしーを大量噴射していた。
【12番れいむ:死亡 / 03時間49分42秒】
密告したのは、15番れいむ。巣穴の中からは湖に入ってくる12番れいむの位置は丸見えだった。このときの
12番れいむの絶叫は、湖に集まっていた他のゆっくりたちも当然聞いている。
また1匹…ゆっくりが死んだ…。
(…………)
黙祷を捧げる6番みょん。
「むきゃきゃ!さすがれいむ!ばかだわぁ!!」
死者を愚弄する10番ぱちゅりー。
(…てまがはぶけたんだねー…わかるよー…)
木陰で12番れいむが爆死するのを覗いていた5番ちぇんも冷笑を浮かべる。
1番れいむは泣きながら別のルートを探し始めた。8番まりさも同じだ。幸い、この2匹の周囲には他のゆっく
りがいなかった。巣穴の中で待機している15番れいむだけが敵だったのである。湖の真ん中にまで行ってしまう
と、待ち伏せ組の集中砲火を受けることになる。やがて…
「12番れいむ、ミッションクリアーだ」
「ゆゆゆっ?!」
スタッフの指定したエリアの中に入ったのだろう。12番れいむは言われるまで気付かなかったが、目の前に湖
がある。今度はうれしーしーを漏らしながら、
「ゆ…ゆっくり~~~!!!!」
叫ぶ。8番まりさも迂回するルートを通りながら、どうにか湖へとたどり着いたらしい。
残り時間は5分。
14番ありすは、まだ動けないでいた。不必要なまでに怯えている。
「と…とかいはじゃないわ…こわいよ!こわいよぅ…ありす…まだしにたくないよ…」
実は14番ありすはたった一匹、湖の北西部側に位置していた。他のゆっくりが南西から南東にかけての位置に
集中していたため、目の前の湖まであと数メートルあんよを這わせればミッションクリアーなのである。しかし、
14番ありすはその一歩を踏み出すことができなかった。死ぬことよりも、他のゆっくりに裏切られて殺されるこ
とのほうが辛かった。泣きながらその場を動くことができないでいる14番ありすにスタッフからの声が届く。
「残り15秒」
「ゆゆっ?!まだ“たくさん”じかんはあるからゆっくりかんがえるよ…っ!」
致命的なミスを犯した。1から15という“記号”と“読み方”を覚えているだけで、数を数えることはできな
い。それはここに集まったどのゆっくりたちにも同じことだったが。
「10秒……9…8…7…6…」
「ま…まだじかんはあるわ!とかいはなありすはこんなことで…」
「5…4…3…」
14番ありすはようやく震えるあんよを動かして、湖へと進み始めた。
「2」
(???!!!!!!)
14番ありすが目を見開く。途端にガタガタ震え始める。
「ま…まって!そんな…たくさん…」
「1」
「う…う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」
「0」
14番ありすが弾け飛んだ。
【14番ありす:死亡 / 04時間00分03秒】
湖近くに集合しているゆっくり達にスタッフからミッションの終了が告げられた。つまり、終了報告を聞くこと
ができたゆっくりは、生き残っている…ということだ。歓喜の涙を流すもの…。当然の結果とほくそ笑むものと様
々であったが…。休む間もなく第2ステージが始まろうとしている。
まだ24時間のうちの4時間しか経過していないのだ。午前8時にゲームを開始したので現在は正午。ゆっくり
たちも腹が減ってくることだろう。
つまり…他のゆっくりに見つからないように…今度は食糧を探さなければならないのだ。空腹はゆっくりたちの
判断を鈍らせる。単体で行動しているゆっくりにとっては手ごわい戦いになるだろう。
《残りプレイヤー》
1.れいむ/2.まりさ/5.ちぇん/6.みょん/8.まりさ
9.ありす/10.ぱちゅりー/11.ちぇん/13.まりさ/15.れいむ
つづきます