ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko0334 ゆっくりできない理由
最終更新:
ankoss
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※虐待成分皆無です。
※ときどきこういう理屈を捏ね回したような、言葉をもてあそぶような、
中二病な文章が書きたくなっちゃうんです。
※要するに作者は病気です。手遅れです。
ゆっくりできない理由
必殺引篭り人
あるとき、一匹のまりさがドスに成長した。
ドスまりさはその巨体にふさわしいだけの知性を備えていた。
そしてその知性を持って、根本の理由を考えた。
どうして、自分達ゆっくりはゆっくりできないのだろう。
ドスまりさは周りを見た。自分達を取り巻く世界を見た。
そこにはいろいろな生き物がいた。その生き物達は、とてもゆっくりしているように
思えた。
鳥は枝にとまってさえずっている。その美しい音色は、とてもゆっくりしているように
感じた。
野犬達は野うさぎを捕まえ、美味しそうに食べている。食後はとてもゆっくりしている
ように感じた。
虫も、草も、森の生き物達はすべからくゆっくりしていた。形は違うし食べ物も違う。
でも、ゆっくりできていた。
ドスまりさは思った。森の生き物達に聞けばゆっくりできる方法がわかるかもしれない。
ドスまりさは生き物達に話しかけた。どうしてゆっくりできているのか?どうやったら
ゆっくりできるのか?
誰も答えてはくれなかった。鳥はドスまりさを見ただけで飛び立ってしまった。
野犬達も野うさぎも逃げていった。
虫はドスまりさのことを見てもくれなかった。草花はただそこにたたずんていた。
ドスまりさは考えた。森の生き物達は言葉が通じない。言葉の通じる相手でないと
ダメだ。
同じゆっくり達は言葉は通じるが、答えを持ってはいないだろう。ドスである自分が
わからないのだ。ただのゆっくりにわかるはずもない。
危険は承知の上で、ドスまりさは森を出て村へ行った。
人間はゆっくりから見ればゆっくりしていない存在だ。基本的には何もしてこないが、
こちらが悪さをすれば反撃してくる。
ゆっくりにとって恐ろしい存在だが、彼らは繁栄している。ゆっくりは森でさまざま
な災害に怯えて暮らさなければならないが、人間はそれらをものともしない。
食べ物も豊富に持っているし、人間の食べ物はとてもおいしい。きっと、ゆっくり達
が見ていないところでゆっくりしているのだろう。
人間に聞けば、ゆっくりできる方法が判るかもしれない。
「え、ゆっくりする方法?う~ん、わかんねぇな…。そういう頭のいたくなるような
質問は、哲学お兄さんに聞けよ。」
ドスまりさの質問に、村人はそう答えた。この村には質問に答えてくれる人間が
いるらしい。
「うーん、それは難しい問題ですね…。答え方も難しいな。君達ゆっくりには
あまり難しい言葉は理解できないでしょうし。」
哲学お兄さんは困った顔でそう答えた。
「思考実験でいってみましょうか。…ああ、要するに想像してごらん、ってことですね。
じゃあまりさ、君が鳥になったと想像して。
さあ、羽ばたいて空に飛び立ってみよう。どう感じますか?」
ドスまりさはふわふわして気持ち良いだろう、と答えた。
「いや、それじゃダメなんです。翼を羽ばたかせる喜び、翼に受ける風の心地よさ、
それらを完全に理解できますか?きっとこうだろう、じゃなくてまさに鳥がどう
感じるか、をこれ以上なくしっかり知ることができますか?」
そんなことは無理だ。ドスまりさはゆっくりで鳥じゃない。本当はどう感じるか
なんてわかりっこない。
「そうなんです。君はゆっくりだから鳥の本当のところはわかりません。
同じように僕は人間だから、君達ゆっくりが本当はどう感じているか、それは
わからないんです。一生を掛けてもね。」
でも人間はゆっくりできるでしょう?おいしい食べ物に安全で大きなおうちがある
んだから。そうドスまりさは反論する。
「僕達人間の言うゆっくりと、君達ゆっくりが言うゆっくり、それは同じものですか?
人間は勝手な思い込みでゆっくりよりも自分達のほうがゆっくりできると言います。
でもそれは正しくありません。もしかしたら、人間とゆっくりは全然別のことを
同じゆっくり、という言葉で呼んでいるだけかもしれないのです。」
ドスまりさは混乱してきた。じゃあ自分達はどうすればゆっくりできるのか?
「人間には答えられない質問なんですよ。君達のしたいゆっくり、それは人間が
想像する方法では得られないかもしれません。君達に間違った方法を教えて
しまうかもしれません。人間の限界なんですよ。」
ドスまりさは弱りきってしまった。もう誰に相談してよいかわからない。
ゆーゆーと泣き始めてしまう。
「あー、こまりましたね…。…そうだ、ここから夕日の沈むほうにいくと、
大妖怪がすんでいると聞きます。その妖怪なら、もしかしてあなたのことを真に
理解する程度の能力を持っているかもしれません。」
それを聞いて、ドスまりさはもう一度立ち上がった。
西の空が藍色から黒へ染まろうとするころ、ドスまりさは一人の大妖怪に出会った。
恐ろしい雰囲気を持ってはいるが、ドスまりさは勇気を振り絞って聞いた。
「ふん、ゆっくりできる方法だと?そんなもの、あったら私が知りたいわ。」
乱暴な口調だった。しかしドスまりさはあきらめない。人間から紹介してもらった
ことを伝えた。
「…ああ、あのインテリくずれか。ふんっ、面倒をこっちに押し付けやがって。
まあ仕方ない。これも暇つぶしと思えば。
あいつが何を言ったか知らないが、ゆっくりできる方法なんぞ1つしかない。」
ドスまりさの心に希望が灯った。ついにゆっくりできるんだ。
「それはな、ゆっくりしないことだ。」
???? 何のことを言っているのだろう?ドスまりさはゆっくりできる方法を
聞いているのに。
「もっと言うと、ゆっくりしないで努力を重ねることさ。それしかないんだ。」
どうしてゆっくりしないとゆっくりできるの?
「森の生き物達、それがゆっくりしていると言ったな?それは奴らが努力している
からさ。
獲物を喰って生きてる奴らは獲物を狩る速さを。空を飛ぶものは飛ぶための
力強い羽ばたきを。川を泳ぐものたちは流れに逆らう泳ぎを。
みんな努力しているのさ。その結果、ゆっくりできる余裕が生まれる。」
ドスまりさは言った。ご飯をがんばって採っている、でもゆっくりできないと。
大妖怪は呆れ顔で言う。
「お前達が彼らと同じ努力をして、どうしてゆっくりできると思うんだ?
ただでさえ脆弱なお前達が、同じ努力で同じだけのものを得ようなんて
無理に決まってる。
だから言ってるんだ、ゆっくりしないでもっと努力しろ、と。」
ドスまりさはこれでも努力している、精一杯していると反論する。
「精一杯の努力をするのが当たり前なんだ。獲物を狩る奴らも、そいつら
から逃げる奴らも、みんな必死さ。
翻ってお前達はどうだ?ゆっくりするためになんの努力をしている?
弱々しい体のくせに、生きる以上のものを欲しがって、それをどれだけ
の努力で得ようとしてる?」
ドスまりさは答えられなかった。
「ははあ、それは残念な返答でしたね。」
結局、ドスまりさは哲学お兄さんのところに戻ってきた。
「あの人を悪く思わないでくださいね。長く生きて、力もある人ですからなかなか
弱い者の気持ちが理解しづらいらしいのです。これでも、優しくなったほう
なんですよ。」
そう慰められても何も変わらない、とゆっくりには珍しくふてくされるドスまりさ。
「そうですね…。あの人の言っていることも一理ありますが、私はもう少し違う事を
考えていました。
たぶん、貴方達ゆっくりとその他では、目的が違うのでしょう。」
目的?どう違うというのか?
「貴方達以外のものは、生きる目的は『生き残ること』に集中しています。
獲物を追うのも、空を飛ぶのもすべては生き残るため。
しかし貴方達にとっての目的とは『ゆっくりすること』でしょう。」
当たり前だ。自分達はゆっくりだ。ゆっくりすることが目的なのは当然。そう
ドスまりさは言う。
「そこです。貴方達にとって『生き残ること』は第一目的ではない。
良くて第二目的、悪ければもっと下でしょう。そこに、貴方達の弱さがある。」
弱さ?ゆっくりは弱くなんかない。ゆっくりしているゆっくりはこの世で一番
強いのだ、とドスまりさは反論した。
「うん、それこそまさに齟齬の生じる部分。…ああ、すれ違い、食い違いという意味です。
貴方達ゆっくりにとって、強さの基準は『ゆっくりできるかどうか』ですね。
でもそれ以外の生き物にとって、強さの基準は『生き残ること』なのですよ。
『ゆっくりすること』が第一目的の貴方達にとって、強い体や早い足など必要
ないのです。それは逆にゆっくりできないことですから。だから、貴方達は脆弱な体しか
もっていない。
反面、私達は『生き残ること』ことが第一目的です。だから体の強いもの、牙の鋭いもの、
道具を使うもの、そして戦いそのものを避けたり有利にしたりするよう、空を飛ぶもの
がいるのです。」
その違いがなんだというのか?ドスまりさは質問する。
「問題なのは、この自然においてどちらを第一目的にしているものが多いか、ということ
です。
『ゆっくりすること』を第一目的にしているもの、それは貴方達ゆっくりしかいないでしょう。
それ以外はみな『生き残ること』を第一目的にしている。そしてその数はゆっくりを
上回っています。なぜなら、自然の中でもっとも数の多い昆虫や植物が『生き残ること』
を目的としているのですから。」
ゆっくりはゆっくりしている。だからもっと幸せに生きられるはず、そうドスまりさ
は言う。
「それを悪いとは言いません。ですが、周りはそれを認めないでしょう。『生き残ること』
を目的としている者達にとって、貴方達の主張に合わせる義理などありません。
だから自然は貴方達にとって厳しいのです。いえ、自然がわざわざ厳しくしている
のではありません。貴方達が、そう感じるだけなのです。貴方達にとって『生き残ること』
はとても厳しいことなのですから。」
でも、でも…、とドスまりさは反論しようとする。そんなゆっくりできないことは
認められない。
「そうでしょう。いくら多数決だからと言っても貴方達には到底受け入れられないでしょう。
それではもうひとつの観点を提供しましょう。
生きるうえで、『生き残ること』と『ゆっくりすること』、どちらが有用ですか?」
ゆっくりすることだ、とドスまりさは即答する。
「いいえ、答えは『生き残ること』です。いくらゆっくりしても、食べ物は手に入りません。
猛獣の牙を防げません。雨から身を守れません。れみりゃやふらんを撃退できません。
そう、『ゆっくりすること』は命を守れないんです。
ですが『生き残ること』は言い方を変えれば命を守ること。だから強いのです。」
いいや、ゆっくりすることは強いことだ、とドスまりさは必死に反論する。
「いいですか、自然は慈悲を掛けてはくれません。それは自然が無慈悲だからとか、
冷酷だからということではありません。自然は誰のことにも興味がないからです。
意識して意地悪をしているわけではないのですよ。だからこそ、自分の命は自分で
守るしかないのです。自然が手心を加えてくれることを期待していたら生きていけません。
でも貴方達ゆっくりはそれをしません。それどころかゆっくりしているから大丈夫、と
安心しきっています。ゆっくりしていたって、自然は貴方達のことなど見ていませんよ?
何を期待しているのです?自然が貴方達を見て、『ゆっくりしていてすばらしい!』
とでも思ってくれると?
そんなわけはありません。今まで雨や風、梅雨や冬でどれだけの仲間が死にましたか?
それは自然がかけてくれた慈悲なんですか?」
ドスまりさは答えない。じわじわと不安がこみ上げてくる。
「…言葉が過ぎたようです。すみませんでした。
ともかく、貴方達が主張する『ゆっくり』は命を守れないことは判ってもらえたと思います。
『ゆっくりすること』は余暇なんですよ。生き残る努力をたくさんすることで、余裕が
生まれます。それを楽しむこと、それが『ゆっくり』なのです。
生き残る努力をしなければ、自然に対抗できずに死ぬだけです。『ゆっくり』とは努力
したものに与えられるご褒美であって、それだけを欲しがるのはただの強欲です。
人間は、そのように考えています。」
…じゃあ、ゆっくりはどうしたらいいの?どうしたらゆっくりできるの?
ドスまりさはすがるように言う。
「貴方達にできるかどうかはわかりませんが、方法はあると思っています。
ひとつは『ゆっくりすること』をあきらめることです。そうすれば、その苦悩から
解き放たれるでしょう。
もうひとつは強い体を手に入れることです。たとえばそう、貴方のようなドスの力を
すべてのゆっくりが手に入れれば、最低限外敵から身を守れます。それだけ努力を
『ゆっくり』に振り分けられるでしょう。」
どちらも無理だ。そうドスまりさは思った。
「つらいでしょうね。脆弱な体しかもたないのに、思考と感情を手に入れてしまったの
ですから。
人間は同じく脆弱ですが、道具を使うこと、作ることができました。それによって脆弱さ
をカバーでき、今の地位に居ます。
しかし貴方達ゆっくりにはそれができない。努力しても変えられないのはもどかしい事
でしょう。
…そう、もうひとつ方法があります。貴方達がゆっくりという種から変化することです。
そうすれば何かが変わります。」
何かって何?ドスまりさは問う。
「それはわかりません。もしかしたら強い体を手に入れるかもしれません。
もう『ゆっくりすること』を必要としなくなるかもしれません。
もしくは全く別の何かを得るかもしれませんし、何かを失うかもしれません。
それは誰にもわかりません。
ただひとつ言える事は、貴方達種族はこのままでは永遠に苦悩に満ちた一生をすごすだろう、
ということだけです。
人間から見たゆっくり種は、そのように見えるのですよ。」
もうドスまりさは人間に何も聞くことは無かった。自分達に救いが見えないことを
知ってしまったからだ。
その後、ドスまりさどうしたかというと森へ帰っていったらしい。
そして、小規模の群を率いているそうだ。
近隣の村と協定を結び、畑仕事を手伝う代わりに野菜をもらって暮らしているらしい。
結局、ゆっくりに選べる選択肢など最初から決まっていたのだ。
周囲と摩擦を起こさず、極力危険を減らして生きるしか、道はなかったのだ。
ドスまりさは成長し、今では立派に群を率いているそうだ。
しかしその顔に笑顔が浮かぶことはなかったという。
その顔には、ただただ諦観だけが浮かんでいたそうだ。
『ふたば系ゆっくりいじめ 230 本気で勝てると思ってたのか?』からインスパイアされてます。
「ゆっくりはゆっくりしている方が強い」という考え方は新鮮でした。
あと、漫画の LEVEL-E のネタもちょっと使っちゃいました。あの漫画大好きなんです。
過去作品
* ふたば系ゆっくりいじめ 111 効率化の道
* ふたば系ゆっくりいじめ 147 陰口
* ふたば系ゆっくりいじめ 177 人間の畑だと説得してみよう
* ふたば系ゆっくりいじめ 182 どすすぱーくをうつよ!
* ふたば系ゆっくりいじめ 216 子まりさの反乱
* ふたば系ゆっくりいじめ 220 ゆっくりスクール【ゲス更正編】
※ときどきこういう理屈を捏ね回したような、言葉をもてあそぶような、
中二病な文章が書きたくなっちゃうんです。
※要するに作者は病気です。手遅れです。
ゆっくりできない理由
必殺引篭り人
あるとき、一匹のまりさがドスに成長した。
ドスまりさはその巨体にふさわしいだけの知性を備えていた。
そしてその知性を持って、根本の理由を考えた。
どうして、自分達ゆっくりはゆっくりできないのだろう。
ドスまりさは周りを見た。自分達を取り巻く世界を見た。
そこにはいろいろな生き物がいた。その生き物達は、とてもゆっくりしているように
思えた。
鳥は枝にとまってさえずっている。その美しい音色は、とてもゆっくりしているように
感じた。
野犬達は野うさぎを捕まえ、美味しそうに食べている。食後はとてもゆっくりしている
ように感じた。
虫も、草も、森の生き物達はすべからくゆっくりしていた。形は違うし食べ物も違う。
でも、ゆっくりできていた。
ドスまりさは思った。森の生き物達に聞けばゆっくりできる方法がわかるかもしれない。
ドスまりさは生き物達に話しかけた。どうしてゆっくりできているのか?どうやったら
ゆっくりできるのか?
誰も答えてはくれなかった。鳥はドスまりさを見ただけで飛び立ってしまった。
野犬達も野うさぎも逃げていった。
虫はドスまりさのことを見てもくれなかった。草花はただそこにたたずんていた。
ドスまりさは考えた。森の生き物達は言葉が通じない。言葉の通じる相手でないと
ダメだ。
同じゆっくり達は言葉は通じるが、答えを持ってはいないだろう。ドスである自分が
わからないのだ。ただのゆっくりにわかるはずもない。
危険は承知の上で、ドスまりさは森を出て村へ行った。
人間はゆっくりから見ればゆっくりしていない存在だ。基本的には何もしてこないが、
こちらが悪さをすれば反撃してくる。
ゆっくりにとって恐ろしい存在だが、彼らは繁栄している。ゆっくりは森でさまざま
な災害に怯えて暮らさなければならないが、人間はそれらをものともしない。
食べ物も豊富に持っているし、人間の食べ物はとてもおいしい。きっと、ゆっくり達
が見ていないところでゆっくりしているのだろう。
人間に聞けば、ゆっくりできる方法が判るかもしれない。
「え、ゆっくりする方法?う~ん、わかんねぇな…。そういう頭のいたくなるような
質問は、哲学お兄さんに聞けよ。」
ドスまりさの質問に、村人はそう答えた。この村には質問に答えてくれる人間が
いるらしい。
「うーん、それは難しい問題ですね…。答え方も難しいな。君達ゆっくりには
あまり難しい言葉は理解できないでしょうし。」
哲学お兄さんは困った顔でそう答えた。
「思考実験でいってみましょうか。…ああ、要するに想像してごらん、ってことですね。
じゃあまりさ、君が鳥になったと想像して。
さあ、羽ばたいて空に飛び立ってみよう。どう感じますか?」
ドスまりさはふわふわして気持ち良いだろう、と答えた。
「いや、それじゃダメなんです。翼を羽ばたかせる喜び、翼に受ける風の心地よさ、
それらを完全に理解できますか?きっとこうだろう、じゃなくてまさに鳥がどう
感じるか、をこれ以上なくしっかり知ることができますか?」
そんなことは無理だ。ドスまりさはゆっくりで鳥じゃない。本当はどう感じるか
なんてわかりっこない。
「そうなんです。君はゆっくりだから鳥の本当のところはわかりません。
同じように僕は人間だから、君達ゆっくりが本当はどう感じているか、それは
わからないんです。一生を掛けてもね。」
でも人間はゆっくりできるでしょう?おいしい食べ物に安全で大きなおうちがある
んだから。そうドスまりさは反論する。
「僕達人間の言うゆっくりと、君達ゆっくりが言うゆっくり、それは同じものですか?
人間は勝手な思い込みでゆっくりよりも自分達のほうがゆっくりできると言います。
でもそれは正しくありません。もしかしたら、人間とゆっくりは全然別のことを
同じゆっくり、という言葉で呼んでいるだけかもしれないのです。」
ドスまりさは混乱してきた。じゃあ自分達はどうすればゆっくりできるのか?
「人間には答えられない質問なんですよ。君達のしたいゆっくり、それは人間が
想像する方法では得られないかもしれません。君達に間違った方法を教えて
しまうかもしれません。人間の限界なんですよ。」
ドスまりさは弱りきってしまった。もう誰に相談してよいかわからない。
ゆーゆーと泣き始めてしまう。
「あー、こまりましたね…。…そうだ、ここから夕日の沈むほうにいくと、
大妖怪がすんでいると聞きます。その妖怪なら、もしかしてあなたのことを真に
理解する程度の能力を持っているかもしれません。」
それを聞いて、ドスまりさはもう一度立ち上がった。
西の空が藍色から黒へ染まろうとするころ、ドスまりさは一人の大妖怪に出会った。
恐ろしい雰囲気を持ってはいるが、ドスまりさは勇気を振り絞って聞いた。
「ふん、ゆっくりできる方法だと?そんなもの、あったら私が知りたいわ。」
乱暴な口調だった。しかしドスまりさはあきらめない。人間から紹介してもらった
ことを伝えた。
「…ああ、あのインテリくずれか。ふんっ、面倒をこっちに押し付けやがって。
まあ仕方ない。これも暇つぶしと思えば。
あいつが何を言ったか知らないが、ゆっくりできる方法なんぞ1つしかない。」
ドスまりさの心に希望が灯った。ついにゆっくりできるんだ。
「それはな、ゆっくりしないことだ。」
???? 何のことを言っているのだろう?ドスまりさはゆっくりできる方法を
聞いているのに。
「もっと言うと、ゆっくりしないで努力を重ねることさ。それしかないんだ。」
どうしてゆっくりしないとゆっくりできるの?
「森の生き物達、それがゆっくりしていると言ったな?それは奴らが努力している
からさ。
獲物を喰って生きてる奴らは獲物を狩る速さを。空を飛ぶものは飛ぶための
力強い羽ばたきを。川を泳ぐものたちは流れに逆らう泳ぎを。
みんな努力しているのさ。その結果、ゆっくりできる余裕が生まれる。」
ドスまりさは言った。ご飯をがんばって採っている、でもゆっくりできないと。
大妖怪は呆れ顔で言う。
「お前達が彼らと同じ努力をして、どうしてゆっくりできると思うんだ?
ただでさえ脆弱なお前達が、同じ努力で同じだけのものを得ようなんて
無理に決まってる。
だから言ってるんだ、ゆっくりしないでもっと努力しろ、と。」
ドスまりさはこれでも努力している、精一杯していると反論する。
「精一杯の努力をするのが当たり前なんだ。獲物を狩る奴らも、そいつら
から逃げる奴らも、みんな必死さ。
翻ってお前達はどうだ?ゆっくりするためになんの努力をしている?
弱々しい体のくせに、生きる以上のものを欲しがって、それをどれだけ
の努力で得ようとしてる?」
ドスまりさは答えられなかった。
「ははあ、それは残念な返答でしたね。」
結局、ドスまりさは哲学お兄さんのところに戻ってきた。
「あの人を悪く思わないでくださいね。長く生きて、力もある人ですからなかなか
弱い者の気持ちが理解しづらいらしいのです。これでも、優しくなったほう
なんですよ。」
そう慰められても何も変わらない、とゆっくりには珍しくふてくされるドスまりさ。
「そうですね…。あの人の言っていることも一理ありますが、私はもう少し違う事を
考えていました。
たぶん、貴方達ゆっくりとその他では、目的が違うのでしょう。」
目的?どう違うというのか?
「貴方達以外のものは、生きる目的は『生き残ること』に集中しています。
獲物を追うのも、空を飛ぶのもすべては生き残るため。
しかし貴方達にとっての目的とは『ゆっくりすること』でしょう。」
当たり前だ。自分達はゆっくりだ。ゆっくりすることが目的なのは当然。そう
ドスまりさは言う。
「そこです。貴方達にとって『生き残ること』は第一目的ではない。
良くて第二目的、悪ければもっと下でしょう。そこに、貴方達の弱さがある。」
弱さ?ゆっくりは弱くなんかない。ゆっくりしているゆっくりはこの世で一番
強いのだ、とドスまりさは反論した。
「うん、それこそまさに齟齬の生じる部分。…ああ、すれ違い、食い違いという意味です。
貴方達ゆっくりにとって、強さの基準は『ゆっくりできるかどうか』ですね。
でもそれ以外の生き物にとって、強さの基準は『生き残ること』なのですよ。
『ゆっくりすること』が第一目的の貴方達にとって、強い体や早い足など必要
ないのです。それは逆にゆっくりできないことですから。だから、貴方達は脆弱な体しか
もっていない。
反面、私達は『生き残ること』ことが第一目的です。だから体の強いもの、牙の鋭いもの、
道具を使うもの、そして戦いそのものを避けたり有利にしたりするよう、空を飛ぶもの
がいるのです。」
その違いがなんだというのか?ドスまりさは質問する。
「問題なのは、この自然においてどちらを第一目的にしているものが多いか、ということ
です。
『ゆっくりすること』を第一目的にしているもの、それは貴方達ゆっくりしかいないでしょう。
それ以外はみな『生き残ること』を第一目的にしている。そしてその数はゆっくりを
上回っています。なぜなら、自然の中でもっとも数の多い昆虫や植物が『生き残ること』
を目的としているのですから。」
ゆっくりはゆっくりしている。だからもっと幸せに生きられるはず、そうドスまりさ
は言う。
「それを悪いとは言いません。ですが、周りはそれを認めないでしょう。『生き残ること』
を目的としている者達にとって、貴方達の主張に合わせる義理などありません。
だから自然は貴方達にとって厳しいのです。いえ、自然がわざわざ厳しくしている
のではありません。貴方達が、そう感じるだけなのです。貴方達にとって『生き残ること』
はとても厳しいことなのですから。」
でも、でも…、とドスまりさは反論しようとする。そんなゆっくりできないことは
認められない。
「そうでしょう。いくら多数決だからと言っても貴方達には到底受け入れられないでしょう。
それではもうひとつの観点を提供しましょう。
生きるうえで、『生き残ること』と『ゆっくりすること』、どちらが有用ですか?」
ゆっくりすることだ、とドスまりさは即答する。
「いいえ、答えは『生き残ること』です。いくらゆっくりしても、食べ物は手に入りません。
猛獣の牙を防げません。雨から身を守れません。れみりゃやふらんを撃退できません。
そう、『ゆっくりすること』は命を守れないんです。
ですが『生き残ること』は言い方を変えれば命を守ること。だから強いのです。」
いいや、ゆっくりすることは強いことだ、とドスまりさは必死に反論する。
「いいですか、自然は慈悲を掛けてはくれません。それは自然が無慈悲だからとか、
冷酷だからということではありません。自然は誰のことにも興味がないからです。
意識して意地悪をしているわけではないのですよ。だからこそ、自分の命は自分で
守るしかないのです。自然が手心を加えてくれることを期待していたら生きていけません。
でも貴方達ゆっくりはそれをしません。それどころかゆっくりしているから大丈夫、と
安心しきっています。ゆっくりしていたって、自然は貴方達のことなど見ていませんよ?
何を期待しているのです?自然が貴方達を見て、『ゆっくりしていてすばらしい!』
とでも思ってくれると?
そんなわけはありません。今まで雨や風、梅雨や冬でどれだけの仲間が死にましたか?
それは自然がかけてくれた慈悲なんですか?」
ドスまりさは答えない。じわじわと不安がこみ上げてくる。
「…言葉が過ぎたようです。すみませんでした。
ともかく、貴方達が主張する『ゆっくり』は命を守れないことは判ってもらえたと思います。
『ゆっくりすること』は余暇なんですよ。生き残る努力をたくさんすることで、余裕が
生まれます。それを楽しむこと、それが『ゆっくり』なのです。
生き残る努力をしなければ、自然に対抗できずに死ぬだけです。『ゆっくり』とは努力
したものに与えられるご褒美であって、それだけを欲しがるのはただの強欲です。
人間は、そのように考えています。」
…じゃあ、ゆっくりはどうしたらいいの?どうしたらゆっくりできるの?
ドスまりさはすがるように言う。
「貴方達にできるかどうかはわかりませんが、方法はあると思っています。
ひとつは『ゆっくりすること』をあきらめることです。そうすれば、その苦悩から
解き放たれるでしょう。
もうひとつは強い体を手に入れることです。たとえばそう、貴方のようなドスの力を
すべてのゆっくりが手に入れれば、最低限外敵から身を守れます。それだけ努力を
『ゆっくり』に振り分けられるでしょう。」
どちらも無理だ。そうドスまりさは思った。
「つらいでしょうね。脆弱な体しかもたないのに、思考と感情を手に入れてしまったの
ですから。
人間は同じく脆弱ですが、道具を使うこと、作ることができました。それによって脆弱さ
をカバーでき、今の地位に居ます。
しかし貴方達ゆっくりにはそれができない。努力しても変えられないのはもどかしい事
でしょう。
…そう、もうひとつ方法があります。貴方達がゆっくりという種から変化することです。
そうすれば何かが変わります。」
何かって何?ドスまりさは問う。
「それはわかりません。もしかしたら強い体を手に入れるかもしれません。
もう『ゆっくりすること』を必要としなくなるかもしれません。
もしくは全く別の何かを得るかもしれませんし、何かを失うかもしれません。
それは誰にもわかりません。
ただひとつ言える事は、貴方達種族はこのままでは永遠に苦悩に満ちた一生をすごすだろう、
ということだけです。
人間から見たゆっくり種は、そのように見えるのですよ。」
もうドスまりさは人間に何も聞くことは無かった。自分達に救いが見えないことを
知ってしまったからだ。
その後、ドスまりさどうしたかというと森へ帰っていったらしい。
そして、小規模の群を率いているそうだ。
近隣の村と協定を結び、畑仕事を手伝う代わりに野菜をもらって暮らしているらしい。
結局、ゆっくりに選べる選択肢など最初から決まっていたのだ。
周囲と摩擦を起こさず、極力危険を減らして生きるしか、道はなかったのだ。
ドスまりさは成長し、今では立派に群を率いているそうだ。
しかしその顔に笑顔が浮かぶことはなかったという。
その顔には、ただただ諦観だけが浮かんでいたそうだ。
『ふたば系ゆっくりいじめ 230 本気で勝てると思ってたのか?』からインスパイアされてます。
「ゆっくりはゆっくりしている方が強い」という考え方は新鮮でした。
あと、漫画の LEVEL-E のネタもちょっと使っちゃいました。あの漫画大好きなんです。
過去作品
* ふたば系ゆっくりいじめ 111 効率化の道
* ふたば系ゆっくりいじめ 147 陰口
* ふたば系ゆっくりいじめ 177 人間の畑だと説得してみよう
* ふたば系ゆっくりいじめ 182 どすすぱーくをうつよ!
* ふたば系ゆっくりいじめ 216 子まりさの反乱
* ふたば系ゆっくりいじめ 220 ゆっくりスクール【ゲス更正編】