ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko0066 さとり
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さとり
ある所にある森。通称ゆっくりの森。
とてつもなく広いその森には、ゆっくりの集落が数多く点在している。
ゆっくりの天敵がほとんど入ってこないので、ここはゆっくり達の安住地、ゆっくりプレイスとなっている。
その中の集落の一つ、そこには、五匹のゆっくりが生活していた。
朝、集落の集会場となっている、枯れ木の前に、集落の五匹が集まっていた。
そこは小さな原っぱとなっており、五匹がそれぞれ住んでいる五つの巣にぐるりと囲まれた位置にある。
この集落では、毎朝の習慣として、起きたらこの集会場に集合し、おしゃべりしてから狩りをする事になっている。
「みんな!今日もゆっくりしてる?」
最初に声をあげたゆっくりは、通称「長(おさ)」と呼ばれ、みんなから慕われている。
流れ者の他の四匹を集落の一員としてまとめ、餌の管理や集落の様々な計画を進んで引き受けてくれるからだ。
狩りも上手で、身体能力も一番高い。ちょっとした気遣いも出来る。ありすもうらやむ都会派である。
本人はその呼び名は気恥ずかしく思っているみたいだが。
「長!おはよう!まりさはゆっくりしてるよ」
長の挨拶に真っ先に答えたのは、若いまりさ。集落の中では、長の次にこの地にやってきたゆっくりである。
「おさのおぼうしはとっても黒くて大きくてゆっくりしてるよ!おなじまりさとしてはながたかいよ!」
そして、四匹の中では、一番長を慕っているゆっくりでもある。
「まりさ今日もげんきだね!れいむもうれしいよ!」
れいむである。若まりさの実の姉で、若まりさと共にこの集落にやって来た。
「あら?ひとりたりないみたいよ?」
ありすが首を傾げる。彼女が以前住んでいた群は、れいぱー被害が深刻化し、ありすの根絶に踏み切った。
無実の罪で友人に殺されそうになり、逃げ出した所を、長に拾われた。
「むきゅう……みんなはやすぎよ……もっとしゅうごうじかんおそくしましょうよ……」
遅れてぱちゅりーがやって来た。集会の遅刻常習犯で、低血圧である。
「みんなそろったね!今日はびちくのごはんがすくなくなってきてるから、すぐにかりに行くよ!」
そう言い、集会を解散しようとした時、
「まってねー、でんごんなんだよー」
東の方からちぇんが走ってやって来た。
この森には、近くの集落に伝言を伝える時、どこの集落にも属さない、流れのゆっくりちぇんを使う事がある。
通称「ちぇんめーる」。
敵が近くに来た時や、美味しいご飯が沢山ある場所を教えてあげる時などに使われる。
「ちぇん、どうしたの?なにかいそぎのめっせーじでもあるの?」
長が問う。
「三日前に、東のありすのしゅうらくが、『さとり』におそわれたんだよー。わかってねー」
「ゆゆ!もうこのあたりまできたの!?」
ゆっくりさとり。ここ最近、この森で猛威を振るう恐ろしい捕食種である。
彼女達は先週、その東のありすの集落のもう一つ東のぱちゅりーの集落が、さとりに襲われたと聞かされたばかりである。
「むきゅう……たしかさとりって、ゆっくりのこころをよめるんだったよね……」
さとりは捕食方法が少し変わっている。食べる相手に向き合い、その心を言い当て、思考停止してしまった所を一気に襲う。
「なにそれぇぇぇぇぇ!!!ぜんぜんゆっくりできないよ!?」
「みんな!おちついてね。今日はようじんのために、みんなでかたまってかりをするよ!」
騒ぐみんなを抑えるため、長は提案を出した。確かに、みんなでかたまって行動をしていれば、外敵に襲われても少しは安心できる。
「でも、さとりがたくさんいたら、五人でかたまってもあんしんできないわよ……」
「だいじょうぶだよー。いままでのおそわれ方からして、さとりは一人、たんどくはんなんだよー、わかるよー」
不安げなありすの言葉に、ちぇんが注釈を入れる。
「むきゅ。それじゃああんしんね!おさ、今日だけじゃあなくて、これからしばらくはみんないっしょにかりをしましょう」
「そうだね。びちくりょうがちょっとへっちゃうけど、命とはかえられないね」
そう長は言い、ちぇんへのお駄賃の木の実を取りに行くため、一旦自分の巣へ戻った。
「そうだよー、言いわすれてたけど、さとりははーとがついたかちゅーしゃをつけているよー。気をつけてねー。
あと、さとりはどういうりくつかしらないけど、しゅうらくにとけこんでゆっくりをおそっているみたいだよー。
いどうの速さもゆっくりしてないから、もう近くまで来てるかもしれないよー。ちゃんとそなえてねー」
「ちぇん、ありがとう!」
その後、ちぇんは長から木の実を五個貰い、それを帽子の中に入れ、来た道とは逆の方へまた走って行った。
昼、夕、狩り。
いつもは五匹バラバラに散って、各自餌を集めるのだが、このご時勢そうも言っていられない。
今日はみんなで一緒に、わいわいと騒ぎながらの狩りとなった。みんな、遠足気分である。
若まりさは蝶をひと跳ねで捕らえ、みんなから褒められご満悦。
姉れいむとありすは山菜や芋虫を捕まえ、頬袋の中に入れている。
ぱちゅりーと長は、キノコを主に集めていた。
キノコは栄養価が高いが、毒キノコとそうでない物を仕分ける知識が必要である。二匹の経験と勘が冴え渡る。
若まりさは、捕まえた蝶や蛾を食べながら、キノコの仕分けをしている長の左頬を見ていた。そこには大きく縦に伸びる傷。
自分がまだやんちゃだった頃。長の管理に束縛感を感じ、まだ見ぬ新天地へ逃げ出していた。
その日の夜、れみりゃに襲われた。もう死ぬと覚悟した時、突然長が二匹の間に割り込み、彼女を庇ってくれた。
突然の長の出現に驚いたれみりゃは逃亡。しかし、長の左頬には大きな傷が出来、そこから沢山の餡子が飛び出していた。
「何やってるんだぜ!?何でこんなところにいるんだぜ!?」
「ゆ……まりさ……だいじょうぶ?」
こんなに大怪我をしているのに、沢山餡子が流れて死にそうなのに。
それでも長は自分の心配をしてくれた。この瞬間、若まりさは長に一生ついて行こうと決めた。左頬の傷は長と自分の絆の証。
翌朝、いつものおしゃべりの時間。
「ゆっくりおはよう……」
若まりさがいつもより寝坊して、集会場にやって来た。
「まりさ、いつもよりゆっくりしてるね!あしたからもうちょっとはやおきしてね!」
「はやねはやおきはれでぃのたしなみよ?おねぼうさんはとかいはじゃないわ」
姉であるれいむと、親友のありすが嗜める。
「ゆ!まりさゆっくりおはよう!つかれてるの?きのうかりがんばったもんね!」
一方、長は若まりさを叱る事はしなかった。
若まりさは、長のその寛大さにますます尊敬を深めた。さすが長だぜ!と。
その時、彼女はふと違和感を感じた。何となくゆっくりできない空気。不穏な感じ。
どうやらそれが、自分の姉のれいむから流れてきているような感じがした。
何だろう?この感じ……
「ゆ?おかしいわね。さすがにぱちゅりーおそすぎよ?いなかものね!」
若まりさの考えは、ありすの言葉で掻き消された。
「たしかにそうだね!いくらなんでもおそすぎだね!」
「ゆぅ……しかたがないね。見に行ってくるよ!みんなはちょっとまっててね!」
そう言うと、長はぱちゅりーの巣へ駆け出した。
「おさ!まりさもいっしょに行くよ!」
若まりさも長について行く。
「わかったよ!いっしょに行こうね!」
まただ。この時、若まりさは背後からゆっくりできない空気を敏感に感じ取った。
姉れいむから流れてきている。何なのだろう。彼女は原因を知りたかったが、今はぱちゅりーの方が先だと、その問題を後回しにした。
ぱちゅりーの巣の前。
二匹は山の斜面に出来た穴の前に来ていた。
巣の中からは、生き物の気配が感じられない。そして、甘い香りがする。
「このにおい……まさか」
長が急いで巣穴に飛び込んだ。若まりさもそれに続く。
巣穴に入った途端、甘い匂いがより強烈になる。
「ゆ?ゆ……ゆぅぅぅぅぅぅ!!!」
巣の中の様子を確認し、若まりさは悲鳴を上げた。
「ぱちゅりぃぃぃぃぃ!!!」
そこには、ぱちゅりーの中身を抜かれ、しわしわになった死体が転がっていた。
一箇所食い千切られた所がある。一噛みで開けられ、そこから中身を吸い取られたのだろう。
その目と口は、何か恐ろしい物を見たかのように、大きく見開かれていた。
「ぱちゅりー……」
若まりさの中に、ぱちゅりーとの思い出が溢れてきた。
前の群でドスの補佐をしていたという彼女は、「あなた、そんなことも分からないの?」が口癖だった。
その群に所属する、あまりに無能な有象無象を見て、嫌気がさして飛び出したらしい。
何日も彷徨った挙句、辿り着いたのがここだった。
若まりさにとって、彼女の第一印象は最悪だった。お世辞にも頭が良いとは言えなかった若まりさにとって、
その知識を鼻にかけたような喋り方をする彼女は、邪魔者以外の何者でもなかった。
ことある毎に見下した態度で口から出る「あなた、そんなことも分からないの?」が、嫌で嫌で仕方がなかった。
生理的に受け付けない。もう一生仲良くする事なんて無いだろう。そう思っていた。
しかし、彼女は、若まりさが一つヘマをする度に、何故それが失敗したかを、懇切丁寧に教えてくれた。
いつまで経ってもその見下した口調は治らなかったが。
何日も一緒に居る事で、どうやらその酷い口調は、彼女なりの照れ隠しであるのだろうと分かった。
仕事で忙しかった前の群では決して出来なかった、初めての、本当の友達。そういったものが恥ずかしかったのだろう。
若まりさが一時期、狩りのスランプに陥った時、ぱちゅりーは悪い所一つ一つを、徹底的に矯正してくれた。
蝶を一跳ねで捕まえられるようになったのも、彼女のおかげである。
「ゆっへん!ぱちゅりー、ちょうちょさんを一回ぴょんぴょんしただけでつかまえられたんだぜ!ぱちゅりーのおかげだぜ!」
「むきゅ!ぱちゅりーのずのうとまりさのうごきがあれば、さいきょうのゆっくりになれるわ!
にんげんさんもいちころよ!ぱちゅりーたちはさいきょうのたっぐよ!」
そう言い、二匹は大きな野望を語り合った。
「ぱちゅりぃぃぃぃぃ!」
若まりさは大粒の涙を流し、一度叫ぶと、その後はただただ震えていた。
「まりさ、すごいこえ出してたけど、だいじょうぶなの?」
「はしたないこえを出すのはいなかものよ」
若まりさの声を聞き、れいむとありすもやって来た。
「え、あれ……」「ぱちゅりー!?」
そしてすぐに悲鳴を上げた。
「いったいどういうこと?おさ!ゆっくりせつめいしてね!」
れいむが長に問う。
「二人でここに来たら、もうこんな風になっていたよ……たぶん、さとりだよ……」
長はがっくりとうな垂れて呟いた。
昼、狩り。
この日も全員でかたまって、一緒に狩りをしていたが、昨日とは打って変わって誰も喋らず、黙々と作業をしていた。
れいむは、近くに居た若まりさに声をかけようとする。
「ねぇ……まりさ」「まりさ、だいじょうぶ?気をおとさないでね」
だが、長がそれより大きな声で若まりさに声をかけたため、それは遮られてしまった。
「おさ……」若まりさが力なく答える。
「まりさは何もわるくないよ……
近くにさとりが来てるかもしれないのに、みんなであつまってねようとしなかったわたしがわるいんだよ」
長はそう言い、若まりさを慰めるため、二度三度すりすりした。
――そうだよ!みんなおさがわるいんだよ!
「ゆ!?おねえちゃん?」若まりさがれいむの方へ振り返った。
しかし、れいむはいつも通りの顔をしており、そんな物騒な事を言っていた感じではない。
それに、あれだけ大きな声だったら、長やありすも気が付かないはずがない。
「まりさ、どうしたの?そんなに怖い顔をして」
長を貶す内容なのに、彼女は一切気にしている様子はない。いくら温厚とはいえ、諭す事くらいはするだろう。
若まりさは、あの言葉は自分にしか聞こえていないと理解した。
(むきゅう……たしかさとりって、ゆっくりのこころをよめるんだったよね……)
確か、昨日ぱちゅりーはこんな事を言っていた気がする。
まさか、今まりさはお姉ちゃんの心の声が聞こえる?
「ゆぅ……おねえちゃん……」
若まりさは呟いた。
自分がさとりの様になってしまったという事と、本当にれいむがこんな事を考えているのだろうかという事、二つの不安。
まさか、お姉ちゃんがそんな、長を悪く思うなんて事ないよね?
――まりさのこまったかおもすてき……すきすき大すき!はぁはぁはぁ……もっと見つめて……
若まりさの背筋に悪寒が走った。れいむの瞳が僅かに潤み、頬が紅潮している。
お姉ちゃん、気持ち悪いんだぜ……そう思って若まりさは急いで狩りに戻った。
夜、集会場。
集会場の倒れた枯れ木の中の穴に、四匹は身を寄せ合っていた。
長が「一人でいるとあぶないよ。今日はみんなでいっしょにねようね」と言ったからである。
この穴は旅ゆっくりやちぇんめーるのちぇんが泊まる時や、近くの集落のみんなで集まった時等に使用される。
よって、四匹程度なら軽く入る事が出来る程広い。
そこで、若まりさは今日の朝と昼の出来事をもう一度考えていた。
実の姉のれいむの心の声。それはとてもゆっくり出来ないものだった。
「ゆぅ……まりさたち、ほんとうのしまいなのに……」
あの興奮した様子で思っていた「すき」は、どう考えても、妹に対するそれでは無かった。
そして、朝からの長への恨みがましい視線。あれは一体何なのだろう。喧嘩でもしたのだろうか。
一人で考えても分からない。そこで、彼女は当の本人に問いただす事にした。
「おねえちゃん……」
「何?まりさ。ねむれないの?」
若まりさに起こされ、れいむはゆっくりと目を開けた。
「おねえちゃん、ちょっとおはなしがあるよ。二人っきりになりたいから、そとに行かない?」
「まったく、しかたがないいもうとだね!」
口では渋々といった感じだが、まりさの頭には、れいむの筆舌しがたい興奮した心の声が聞こえていた。
「何?二人きりのおはなしって」
最初に口を開いたのはれいむだった。
――はぁはぁ、ひみつのおはなしって、あいのこくはく?しまいのきんだんのあい?んほぉぉぉぉ
「おねえちゃんは、まりさのことをどうおもってるの?」
単刀直入に聞いた。若まりさとれいむの視線が合う。長い時間が流れる。
「なにをいってるの?とてもたいせつなれいむのいもうとだよ?あたりまえでしょ?」
「そうじゃないよ!おねえちゃんまりさのことへんな目でみてるよね?」
「ゆ!?何でそんなことを……」
「今日ね、なぜかおねえちゃんのこころのこえがきこえたんだよ。はぁはぁしてて、しょうじききもちわるいよ!
まりさたち、おなじくきから生まれたしまいだよ?そんなのおかしいよ!」
「うるさいよ!」
れいむが叫んだ。
「まりさのことはれいむがいちばんよくしっているんだよ!
あんな、であってからお月さまのかたちが三しゅうしかしてないような長なんかとは、いっしょにいるじかんがちがうんだよ!
なのに、まりさはいつも長の方ばっかりみて!れいむのことなんかちっともみてくれない!
あのとき言ったよね!?れいむはまりさのこと一生まもるって!だから長なんかじゃなくてれいむにたよってよ!
一回たすけられただけで長の方ばっかりみるなんて、ふこうへいだよ!」
最後の一言に、若まりさは怒りを露にした。
「長のことわるく言わないでね!もうおねえちゃんはおねえちゃんじゃないよ!もうかおも見たくないよ!」
そう言って、若まりさは木の穴へ戻って行った。
「まりさ……まって!」
背中を向けたまりさを、れいむは涙目になりながら追いかけた。
れいむはただただ悔しかった。自分だけのまりさが長に取られた。
若まりさが長に助けられたあの日。それ以来ずっと長を苦々しく思っていた。
幸い、れいむは思った事を行動に出しにくい性格だったので、表面上は仲良くやっていたが。
れいむと若まりさの二匹は、同じ茎から生まれた姉妹である。
前の群は良いドスがリーダーとなり、とても平和だった。
しかし、三ヶ月前、その平和は脆くも崩れ去った。悪いドスが支配する別の群の襲撃にあったのである。
闇討ち同然に攻められた彼女達の群は瞬く間に壊滅し、両親は彼女達の目の前で犯され殺された。
その時、実の姉妹の屍の山の中に、二匹は隠れて息を殺していた。
ただただ泣くばかりの若まりさ。
「まりさ、ないちゃだめだよ!まりさでしょ!?おとーさんとおかーさんは、れいむたちのためにたたかってくれたんだよ!
れいむたちはここからにげて、生きていかないといけないんだよ?なくのをやめてね!だいじょうぶだよ!
まりさはれいむが一生まもってあげるから!」
れいむはそんな彼女を精一杯慰めた。
そして翌朝、誰も居なくなった隙を狙い、二匹は群から逃げ出し、この地で一匹で住む長に出会った。
そして、若まりさがれみりゃに襲われたあの日。
逃げ出した彼女を、れいむは長と一緒に若まりさを探していた。
暗い森の中を捜索していると、若まりさがれみりゃに襲われている所を発見した。
「まりさ!まりさがいたよ!」
れいむは長に急いで報告した。
「でも、れみりゃがいるよ……」
長は力無く言う。いくら通常のゆっくりより身体能力が高くても、れみりゃは到底倒せるものではない。
二匹は近くにあった岩に隠れて、まりさを助けるかどうか迷っていた。
助けに行かないと、まりさが死ぬ。でも、れみりゃは怖い。
ここから飛び出さないと。でも死にたくない。
れみりゃの執拗な攻撃を何とか紙一重で若まりさが避ける中、二匹はひたすら迷った。
そして、先に行動したのは長だった。
もしあの時、長より早く動けていたら。まりさにとって一番大切なゆっくりは自分になれたのに。
自分の決断の遅さを嘆いた。ひたすら嘆いた。何日も、何週間も。
その逆恨みと、元来の独占欲と、若まりさへの姉妹愛。それらが混ざり合って、今の異常な愛情が芽生えたのである。
必死になって若まりさを追いかけたれいむ。
若まりさが突然立ち止まったので、れいむは彼女の背中に思いっきりぶつかってしまった。
「どうしたの?きゅうにゆっくりしちゃって……」
れいむは不思議そうに呟いた。しかし、巣の中を見て、その声は止まってしまう。
穴の中央で、彼女達に背を向けている長。その横には、中身が空っぽになったありす。
「ありす……そんな……ありすが……」
若まりさがその死体に近づこうとした。
しかし、れいむが彼女の髪を口で引っ張り、後ろの出口へ投げ飛ばすと、自分も急いで穴から飛び出した。
「おねえちゃん!何するの!?いたいでしょ!?」
「そんなこと言っているばあいじゃないよ!わからないの?ばかなの?
あなの中にありすのしたい!あそこにいたのは長だけ!だったらやったのは長しかいないでしょぉぉぉ!?」
そんな馬鹿な!?若まりさには信じられなかった。あんなに自分達の事を大切に思ってくれていた長が、そんな事する筈が。
しかし、あの状況は、どう考えてもそれしか考えられない。
それに、もし長が犯人じゃなくても、ありすが死ぬのを放っておいたという事になる。
若まりさは本当は長本人に真実を問いたかったが、姉のれいむが後ろから逃げろ逃げろと追い立てるので、しょうがなく逃げた。
何分走ったであろうか。
夜の森をひたすら駆け抜け、息も絶え絶えになった二匹は、集落が木々に隠れ見えなくなった辺りで、ようやく一休みした。
「ゆふー……ゆふー……」
二匹は肩で息をする。これ以上は一歩たりとも動けない。喋る事もままならない。そういった様子である。
しかし、自分達の目の前にある影を見て、彼女達は悲鳴を上げた。
「何で長がここにいるのぉぉぉ!?」
そこには、息一つ乱さず、長が立っていた。その口の周りには、ありすのカスタードがべっとりと付いていた。
「おさぁぁぁぁぁぁぁ!!!まりさをれいむにかえせぇぇぇぇぇ!ぱちゅりーとありすのかたきぃぃぃぃぃ!」
奇声を発して突進するれいむ。
しかし、長はそれを表情を変えずにひらりとかわし、れいむは顔から地面にダイブした。
ひらりと宙に舞う、長の黒い帽子。
「あ、あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
若まりさが悲鳴を上げた。体を起こしたれいむもそれに続く。
ハートが付いたカチューシャ。それは、さとりだった。
「何で長がさとりなのぉぉぉぉぉ!?」
「さとりぃぃぃぃぃ!!!ゆっくりしないでじねぇぇぇぇぇ!!!」
れいむが攻撃を繰り返す。しかし、さとりはそれらを楽々避ける。
「上から右目目掛けて突進」「右頬へ噛み付き」「砂を飛ばして牽制後、眉間に突進」
さとりは避けながら、ぶつぶつと、しかし、れいむには聞こえる様に、れいむの攻撃方法を口に出した。
「ゆぐっ……ゆぐっ……」
れいむは攻撃を一度も当てられず、何度も地面や木にぶつかって、ついに泣き出してしまった。
「ゆぐっ……ぜったいに……まりさを、ゆっぐ、まも……」
次の瞬間、れいむの上半分が消失した。さとりが目にも留まらぬ速さで食い千切ったのだ。
「長……ぱちゅりー……ありす……おねえちゃん……」
若まりさは泣いた。ただただ泣いた。
だが、次の瞬間、涙は止まり、覚悟を決めた表情になった。
「ぱちゅりーの、ありすの、おねえちゃんの、そして長の……まりさのまりさのかたき!」
「まりさのまりさ?」
飛び掛ろうとした若まりさに対し、さとりは静かに声を上げた。
「まさか、あなた長をまりさだと思っていたの?」
そう言うと、さとりは近くの木の裏に回り、そこから何かを取り出してきた。
それは、カチューシャを付けた、ありすの死体。集落のありすでは無い。飾りが違う。
そして、そのありすの左頬には、大きな縦の傷が付いていた。
「え……何これ……ありす?でも……このきず……」
「しらなかったの?あなたの長はまりさじゃないよ。まりさのぼうしをかぶったただのありす」
若まりさはガタガタと震えた。そんな……長が……同じまりさじゃない?
同じまりさ種として誇りに思っていた、あの大きな黒い帽子は偽者?
そんな、まさか……
「それに、このありすはあなたがかんがえているような、すてきな長なんかじゃないよ」
死体の股間は、べっとりとカスタードが付いていた。
「このありすは、夜になるといつも、こっそりとすをぬけだして、この木にぺにぺにをこすりつけて、一人すっきりしてたんだよ。
とんでもないへんたいだね。わたしが食べた夜も、ありすはあなたのなまえをさけびながらすっきりしてたよ」
若まりさの背筋に悪寒が走った。
「このありすは、とんでもないれいぱーだよ。いくつものむれを、なかまのありすとくんですっきりでほろぼしていたみたい。
ありすは大人まりさせんもんだったみたいだね。あなたが大人になったすがたをそうぞうして、いつもここですっきりしてたみたいだよ」
やめろ、これ以上言うな。若まりさの震えが強くなった。
これ以上汚すな。まりさの長を汚すな。
だが、容赦の無いさとりの言葉責めが延々と続き、思考が停止し、ついに永遠にゆっくりする事になった。
「でんごんだよー」
朝、森の奥深くで、ちぇんの声が響く。
「ちぇん、ゆっくりおはよう!どうしたの?そんなにゆっくりしないで。いそぎのめっせーじでもあるの?」
集落のリーダーのれいむが問う。
「またさとりだよー。東のまりさのしゅうらくがおそわれたんだよー、わかってねー」
「いくらなんでもはやすぎるよ!さとりはゆっくりしてないね!」
そう言ってれいむは膨らんだ。
一週間前にも、まりさの集落のもう一つ東のありすの集落が襲われたばかりである。
「さとりははーとがついたかちゅーしゃをつけているから、みかけたらちゅういしてねー」
そう言って、ちぇんは来た方向とは逆の方へ走り去っていった。
既存作
妊娠過程
食葬
ふたば系ゆっくりいじめ 7 浅瀬
ふたば系ゆっくりいじめ 8 鉄鍋
ある所にある森。通称ゆっくりの森。
とてつもなく広いその森には、ゆっくりの集落が数多く点在している。
ゆっくりの天敵がほとんど入ってこないので、ここはゆっくり達の安住地、ゆっくりプレイスとなっている。
その中の集落の一つ、そこには、五匹のゆっくりが生活していた。
朝、集落の集会場となっている、枯れ木の前に、集落の五匹が集まっていた。
そこは小さな原っぱとなっており、五匹がそれぞれ住んでいる五つの巣にぐるりと囲まれた位置にある。
この集落では、毎朝の習慣として、起きたらこの集会場に集合し、おしゃべりしてから狩りをする事になっている。
「みんな!今日もゆっくりしてる?」
最初に声をあげたゆっくりは、通称「長(おさ)」と呼ばれ、みんなから慕われている。
流れ者の他の四匹を集落の一員としてまとめ、餌の管理や集落の様々な計画を進んで引き受けてくれるからだ。
狩りも上手で、身体能力も一番高い。ちょっとした気遣いも出来る。ありすもうらやむ都会派である。
本人はその呼び名は気恥ずかしく思っているみたいだが。
「長!おはよう!まりさはゆっくりしてるよ」
長の挨拶に真っ先に答えたのは、若いまりさ。集落の中では、長の次にこの地にやってきたゆっくりである。
「おさのおぼうしはとっても黒くて大きくてゆっくりしてるよ!おなじまりさとしてはながたかいよ!」
そして、四匹の中では、一番長を慕っているゆっくりでもある。
「まりさ今日もげんきだね!れいむもうれしいよ!」
れいむである。若まりさの実の姉で、若まりさと共にこの集落にやって来た。
「あら?ひとりたりないみたいよ?」
ありすが首を傾げる。彼女が以前住んでいた群は、れいぱー被害が深刻化し、ありすの根絶に踏み切った。
無実の罪で友人に殺されそうになり、逃げ出した所を、長に拾われた。
「むきゅう……みんなはやすぎよ……もっとしゅうごうじかんおそくしましょうよ……」
遅れてぱちゅりーがやって来た。集会の遅刻常習犯で、低血圧である。
「みんなそろったね!今日はびちくのごはんがすくなくなってきてるから、すぐにかりに行くよ!」
そう言い、集会を解散しようとした時、
「まってねー、でんごんなんだよー」
東の方からちぇんが走ってやって来た。
この森には、近くの集落に伝言を伝える時、どこの集落にも属さない、流れのゆっくりちぇんを使う事がある。
通称「ちぇんめーる」。
敵が近くに来た時や、美味しいご飯が沢山ある場所を教えてあげる時などに使われる。
「ちぇん、どうしたの?なにかいそぎのめっせーじでもあるの?」
長が問う。
「三日前に、東のありすのしゅうらくが、『さとり』におそわれたんだよー。わかってねー」
「ゆゆ!もうこのあたりまできたの!?」
ゆっくりさとり。ここ最近、この森で猛威を振るう恐ろしい捕食種である。
彼女達は先週、その東のありすの集落のもう一つ東のぱちゅりーの集落が、さとりに襲われたと聞かされたばかりである。
「むきゅう……たしかさとりって、ゆっくりのこころをよめるんだったよね……」
さとりは捕食方法が少し変わっている。食べる相手に向き合い、その心を言い当て、思考停止してしまった所を一気に襲う。
「なにそれぇぇぇぇぇ!!!ぜんぜんゆっくりできないよ!?」
「みんな!おちついてね。今日はようじんのために、みんなでかたまってかりをするよ!」
騒ぐみんなを抑えるため、長は提案を出した。確かに、みんなでかたまって行動をしていれば、外敵に襲われても少しは安心できる。
「でも、さとりがたくさんいたら、五人でかたまってもあんしんできないわよ……」
「だいじょうぶだよー。いままでのおそわれ方からして、さとりは一人、たんどくはんなんだよー、わかるよー」
不安げなありすの言葉に、ちぇんが注釈を入れる。
「むきゅ。それじゃああんしんね!おさ、今日だけじゃあなくて、これからしばらくはみんないっしょにかりをしましょう」
「そうだね。びちくりょうがちょっとへっちゃうけど、命とはかえられないね」
そう長は言い、ちぇんへのお駄賃の木の実を取りに行くため、一旦自分の巣へ戻った。
「そうだよー、言いわすれてたけど、さとりははーとがついたかちゅーしゃをつけているよー。気をつけてねー。
あと、さとりはどういうりくつかしらないけど、しゅうらくにとけこんでゆっくりをおそっているみたいだよー。
いどうの速さもゆっくりしてないから、もう近くまで来てるかもしれないよー。ちゃんとそなえてねー」
「ちぇん、ありがとう!」
その後、ちぇんは長から木の実を五個貰い、それを帽子の中に入れ、来た道とは逆の方へまた走って行った。
昼、夕、狩り。
いつもは五匹バラバラに散って、各自餌を集めるのだが、このご時勢そうも言っていられない。
今日はみんなで一緒に、わいわいと騒ぎながらの狩りとなった。みんな、遠足気分である。
若まりさは蝶をひと跳ねで捕らえ、みんなから褒められご満悦。
姉れいむとありすは山菜や芋虫を捕まえ、頬袋の中に入れている。
ぱちゅりーと長は、キノコを主に集めていた。
キノコは栄養価が高いが、毒キノコとそうでない物を仕分ける知識が必要である。二匹の経験と勘が冴え渡る。
若まりさは、捕まえた蝶や蛾を食べながら、キノコの仕分けをしている長の左頬を見ていた。そこには大きく縦に伸びる傷。
自分がまだやんちゃだった頃。長の管理に束縛感を感じ、まだ見ぬ新天地へ逃げ出していた。
その日の夜、れみりゃに襲われた。もう死ぬと覚悟した時、突然長が二匹の間に割り込み、彼女を庇ってくれた。
突然の長の出現に驚いたれみりゃは逃亡。しかし、長の左頬には大きな傷が出来、そこから沢山の餡子が飛び出していた。
「何やってるんだぜ!?何でこんなところにいるんだぜ!?」
「ゆ……まりさ……だいじょうぶ?」
こんなに大怪我をしているのに、沢山餡子が流れて死にそうなのに。
それでも長は自分の心配をしてくれた。この瞬間、若まりさは長に一生ついて行こうと決めた。左頬の傷は長と自分の絆の証。
翌朝、いつものおしゃべりの時間。
「ゆっくりおはよう……」
若まりさがいつもより寝坊して、集会場にやって来た。
「まりさ、いつもよりゆっくりしてるね!あしたからもうちょっとはやおきしてね!」
「はやねはやおきはれでぃのたしなみよ?おねぼうさんはとかいはじゃないわ」
姉であるれいむと、親友のありすが嗜める。
「ゆ!まりさゆっくりおはよう!つかれてるの?きのうかりがんばったもんね!」
一方、長は若まりさを叱る事はしなかった。
若まりさは、長のその寛大さにますます尊敬を深めた。さすが長だぜ!と。
その時、彼女はふと違和感を感じた。何となくゆっくりできない空気。不穏な感じ。
どうやらそれが、自分の姉のれいむから流れてきているような感じがした。
何だろう?この感じ……
「ゆ?おかしいわね。さすがにぱちゅりーおそすぎよ?いなかものね!」
若まりさの考えは、ありすの言葉で掻き消された。
「たしかにそうだね!いくらなんでもおそすぎだね!」
「ゆぅ……しかたがないね。見に行ってくるよ!みんなはちょっとまっててね!」
そう言うと、長はぱちゅりーの巣へ駆け出した。
「おさ!まりさもいっしょに行くよ!」
若まりさも長について行く。
「わかったよ!いっしょに行こうね!」
まただ。この時、若まりさは背後からゆっくりできない空気を敏感に感じ取った。
姉れいむから流れてきている。何なのだろう。彼女は原因を知りたかったが、今はぱちゅりーの方が先だと、その問題を後回しにした。
ぱちゅりーの巣の前。
二匹は山の斜面に出来た穴の前に来ていた。
巣の中からは、生き物の気配が感じられない。そして、甘い香りがする。
「このにおい……まさか」
長が急いで巣穴に飛び込んだ。若まりさもそれに続く。
巣穴に入った途端、甘い匂いがより強烈になる。
「ゆ?ゆ……ゆぅぅぅぅぅぅ!!!」
巣の中の様子を確認し、若まりさは悲鳴を上げた。
「ぱちゅりぃぃぃぃぃ!!!」
そこには、ぱちゅりーの中身を抜かれ、しわしわになった死体が転がっていた。
一箇所食い千切られた所がある。一噛みで開けられ、そこから中身を吸い取られたのだろう。
その目と口は、何か恐ろしい物を見たかのように、大きく見開かれていた。
「ぱちゅりー……」
若まりさの中に、ぱちゅりーとの思い出が溢れてきた。
前の群でドスの補佐をしていたという彼女は、「あなた、そんなことも分からないの?」が口癖だった。
その群に所属する、あまりに無能な有象無象を見て、嫌気がさして飛び出したらしい。
何日も彷徨った挙句、辿り着いたのがここだった。
若まりさにとって、彼女の第一印象は最悪だった。お世辞にも頭が良いとは言えなかった若まりさにとって、
その知識を鼻にかけたような喋り方をする彼女は、邪魔者以外の何者でもなかった。
ことある毎に見下した態度で口から出る「あなた、そんなことも分からないの?」が、嫌で嫌で仕方がなかった。
生理的に受け付けない。もう一生仲良くする事なんて無いだろう。そう思っていた。
しかし、彼女は、若まりさが一つヘマをする度に、何故それが失敗したかを、懇切丁寧に教えてくれた。
いつまで経ってもその見下した口調は治らなかったが。
何日も一緒に居る事で、どうやらその酷い口調は、彼女なりの照れ隠しであるのだろうと分かった。
仕事で忙しかった前の群では決して出来なかった、初めての、本当の友達。そういったものが恥ずかしかったのだろう。
若まりさが一時期、狩りのスランプに陥った時、ぱちゅりーは悪い所一つ一つを、徹底的に矯正してくれた。
蝶を一跳ねで捕まえられるようになったのも、彼女のおかげである。
「ゆっへん!ぱちゅりー、ちょうちょさんを一回ぴょんぴょんしただけでつかまえられたんだぜ!ぱちゅりーのおかげだぜ!」
「むきゅ!ぱちゅりーのずのうとまりさのうごきがあれば、さいきょうのゆっくりになれるわ!
にんげんさんもいちころよ!ぱちゅりーたちはさいきょうのたっぐよ!」
そう言い、二匹は大きな野望を語り合った。
「ぱちゅりぃぃぃぃぃ!」
若まりさは大粒の涙を流し、一度叫ぶと、その後はただただ震えていた。
「まりさ、すごいこえ出してたけど、だいじょうぶなの?」
「はしたないこえを出すのはいなかものよ」
若まりさの声を聞き、れいむとありすもやって来た。
「え、あれ……」「ぱちゅりー!?」
そしてすぐに悲鳴を上げた。
「いったいどういうこと?おさ!ゆっくりせつめいしてね!」
れいむが長に問う。
「二人でここに来たら、もうこんな風になっていたよ……たぶん、さとりだよ……」
長はがっくりとうな垂れて呟いた。
昼、狩り。
この日も全員でかたまって、一緒に狩りをしていたが、昨日とは打って変わって誰も喋らず、黙々と作業をしていた。
れいむは、近くに居た若まりさに声をかけようとする。
「ねぇ……まりさ」「まりさ、だいじょうぶ?気をおとさないでね」
だが、長がそれより大きな声で若まりさに声をかけたため、それは遮られてしまった。
「おさ……」若まりさが力なく答える。
「まりさは何もわるくないよ……
近くにさとりが来てるかもしれないのに、みんなであつまってねようとしなかったわたしがわるいんだよ」
長はそう言い、若まりさを慰めるため、二度三度すりすりした。
――そうだよ!みんなおさがわるいんだよ!
「ゆ!?おねえちゃん?」若まりさがれいむの方へ振り返った。
しかし、れいむはいつも通りの顔をしており、そんな物騒な事を言っていた感じではない。
それに、あれだけ大きな声だったら、長やありすも気が付かないはずがない。
「まりさ、どうしたの?そんなに怖い顔をして」
長を貶す内容なのに、彼女は一切気にしている様子はない。いくら温厚とはいえ、諭す事くらいはするだろう。
若まりさは、あの言葉は自分にしか聞こえていないと理解した。
(むきゅう……たしかさとりって、ゆっくりのこころをよめるんだったよね……)
確か、昨日ぱちゅりーはこんな事を言っていた気がする。
まさか、今まりさはお姉ちゃんの心の声が聞こえる?
「ゆぅ……おねえちゃん……」
若まりさは呟いた。
自分がさとりの様になってしまったという事と、本当にれいむがこんな事を考えているのだろうかという事、二つの不安。
まさか、お姉ちゃんがそんな、長を悪く思うなんて事ないよね?
――まりさのこまったかおもすてき……すきすき大すき!はぁはぁはぁ……もっと見つめて……
若まりさの背筋に悪寒が走った。れいむの瞳が僅かに潤み、頬が紅潮している。
お姉ちゃん、気持ち悪いんだぜ……そう思って若まりさは急いで狩りに戻った。
夜、集会場。
集会場の倒れた枯れ木の中の穴に、四匹は身を寄せ合っていた。
長が「一人でいるとあぶないよ。今日はみんなでいっしょにねようね」と言ったからである。
この穴は旅ゆっくりやちぇんめーるのちぇんが泊まる時や、近くの集落のみんなで集まった時等に使用される。
よって、四匹程度なら軽く入る事が出来る程広い。
そこで、若まりさは今日の朝と昼の出来事をもう一度考えていた。
実の姉のれいむの心の声。それはとてもゆっくり出来ないものだった。
「ゆぅ……まりさたち、ほんとうのしまいなのに……」
あの興奮した様子で思っていた「すき」は、どう考えても、妹に対するそれでは無かった。
そして、朝からの長への恨みがましい視線。あれは一体何なのだろう。喧嘩でもしたのだろうか。
一人で考えても分からない。そこで、彼女は当の本人に問いただす事にした。
「おねえちゃん……」
「何?まりさ。ねむれないの?」
若まりさに起こされ、れいむはゆっくりと目を開けた。
「おねえちゃん、ちょっとおはなしがあるよ。二人っきりになりたいから、そとに行かない?」
「まったく、しかたがないいもうとだね!」
口では渋々といった感じだが、まりさの頭には、れいむの筆舌しがたい興奮した心の声が聞こえていた。
「何?二人きりのおはなしって」
最初に口を開いたのはれいむだった。
――はぁはぁ、ひみつのおはなしって、あいのこくはく?しまいのきんだんのあい?んほぉぉぉぉ
「おねえちゃんは、まりさのことをどうおもってるの?」
単刀直入に聞いた。若まりさとれいむの視線が合う。長い時間が流れる。
「なにをいってるの?とてもたいせつなれいむのいもうとだよ?あたりまえでしょ?」
「そうじゃないよ!おねえちゃんまりさのことへんな目でみてるよね?」
「ゆ!?何でそんなことを……」
「今日ね、なぜかおねえちゃんのこころのこえがきこえたんだよ。はぁはぁしてて、しょうじききもちわるいよ!
まりさたち、おなじくきから生まれたしまいだよ?そんなのおかしいよ!」
「うるさいよ!」
れいむが叫んだ。
「まりさのことはれいむがいちばんよくしっているんだよ!
あんな、であってからお月さまのかたちが三しゅうしかしてないような長なんかとは、いっしょにいるじかんがちがうんだよ!
なのに、まりさはいつも長の方ばっかりみて!れいむのことなんかちっともみてくれない!
あのとき言ったよね!?れいむはまりさのこと一生まもるって!だから長なんかじゃなくてれいむにたよってよ!
一回たすけられただけで長の方ばっかりみるなんて、ふこうへいだよ!」
最後の一言に、若まりさは怒りを露にした。
「長のことわるく言わないでね!もうおねえちゃんはおねえちゃんじゃないよ!もうかおも見たくないよ!」
そう言って、若まりさは木の穴へ戻って行った。
「まりさ……まって!」
背中を向けたまりさを、れいむは涙目になりながら追いかけた。
れいむはただただ悔しかった。自分だけのまりさが長に取られた。
若まりさが長に助けられたあの日。それ以来ずっと長を苦々しく思っていた。
幸い、れいむは思った事を行動に出しにくい性格だったので、表面上は仲良くやっていたが。
れいむと若まりさの二匹は、同じ茎から生まれた姉妹である。
前の群は良いドスがリーダーとなり、とても平和だった。
しかし、三ヶ月前、その平和は脆くも崩れ去った。悪いドスが支配する別の群の襲撃にあったのである。
闇討ち同然に攻められた彼女達の群は瞬く間に壊滅し、両親は彼女達の目の前で犯され殺された。
その時、実の姉妹の屍の山の中に、二匹は隠れて息を殺していた。
ただただ泣くばかりの若まりさ。
「まりさ、ないちゃだめだよ!まりさでしょ!?おとーさんとおかーさんは、れいむたちのためにたたかってくれたんだよ!
れいむたちはここからにげて、生きていかないといけないんだよ?なくのをやめてね!だいじょうぶだよ!
まりさはれいむが一生まもってあげるから!」
れいむはそんな彼女を精一杯慰めた。
そして翌朝、誰も居なくなった隙を狙い、二匹は群から逃げ出し、この地で一匹で住む長に出会った。
そして、若まりさがれみりゃに襲われたあの日。
逃げ出した彼女を、れいむは長と一緒に若まりさを探していた。
暗い森の中を捜索していると、若まりさがれみりゃに襲われている所を発見した。
「まりさ!まりさがいたよ!」
れいむは長に急いで報告した。
「でも、れみりゃがいるよ……」
長は力無く言う。いくら通常のゆっくりより身体能力が高くても、れみりゃは到底倒せるものではない。
二匹は近くにあった岩に隠れて、まりさを助けるかどうか迷っていた。
助けに行かないと、まりさが死ぬ。でも、れみりゃは怖い。
ここから飛び出さないと。でも死にたくない。
れみりゃの執拗な攻撃を何とか紙一重で若まりさが避ける中、二匹はひたすら迷った。
そして、先に行動したのは長だった。
もしあの時、長より早く動けていたら。まりさにとって一番大切なゆっくりは自分になれたのに。
自分の決断の遅さを嘆いた。ひたすら嘆いた。何日も、何週間も。
その逆恨みと、元来の独占欲と、若まりさへの姉妹愛。それらが混ざり合って、今の異常な愛情が芽生えたのである。
必死になって若まりさを追いかけたれいむ。
若まりさが突然立ち止まったので、れいむは彼女の背中に思いっきりぶつかってしまった。
「どうしたの?きゅうにゆっくりしちゃって……」
れいむは不思議そうに呟いた。しかし、巣の中を見て、その声は止まってしまう。
穴の中央で、彼女達に背を向けている長。その横には、中身が空っぽになったありす。
「ありす……そんな……ありすが……」
若まりさがその死体に近づこうとした。
しかし、れいむが彼女の髪を口で引っ張り、後ろの出口へ投げ飛ばすと、自分も急いで穴から飛び出した。
「おねえちゃん!何するの!?いたいでしょ!?」
「そんなこと言っているばあいじゃないよ!わからないの?ばかなの?
あなの中にありすのしたい!あそこにいたのは長だけ!だったらやったのは長しかいないでしょぉぉぉ!?」
そんな馬鹿な!?若まりさには信じられなかった。あんなに自分達の事を大切に思ってくれていた長が、そんな事する筈が。
しかし、あの状況は、どう考えてもそれしか考えられない。
それに、もし長が犯人じゃなくても、ありすが死ぬのを放っておいたという事になる。
若まりさは本当は長本人に真実を問いたかったが、姉のれいむが後ろから逃げろ逃げろと追い立てるので、しょうがなく逃げた。
何分走ったであろうか。
夜の森をひたすら駆け抜け、息も絶え絶えになった二匹は、集落が木々に隠れ見えなくなった辺りで、ようやく一休みした。
「ゆふー……ゆふー……」
二匹は肩で息をする。これ以上は一歩たりとも動けない。喋る事もままならない。そういった様子である。
しかし、自分達の目の前にある影を見て、彼女達は悲鳴を上げた。
「何で長がここにいるのぉぉぉ!?」
そこには、息一つ乱さず、長が立っていた。その口の周りには、ありすのカスタードがべっとりと付いていた。
「おさぁぁぁぁぁぁぁ!!!まりさをれいむにかえせぇぇぇぇぇ!ぱちゅりーとありすのかたきぃぃぃぃぃ!」
奇声を発して突進するれいむ。
しかし、長はそれを表情を変えずにひらりとかわし、れいむは顔から地面にダイブした。
ひらりと宙に舞う、長の黒い帽子。
「あ、あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
若まりさが悲鳴を上げた。体を起こしたれいむもそれに続く。
ハートが付いたカチューシャ。それは、さとりだった。
「何で長がさとりなのぉぉぉぉぉ!?」
「さとりぃぃぃぃぃ!!!ゆっくりしないでじねぇぇぇぇぇ!!!」
れいむが攻撃を繰り返す。しかし、さとりはそれらを楽々避ける。
「上から右目目掛けて突進」「右頬へ噛み付き」「砂を飛ばして牽制後、眉間に突進」
さとりは避けながら、ぶつぶつと、しかし、れいむには聞こえる様に、れいむの攻撃方法を口に出した。
「ゆぐっ……ゆぐっ……」
れいむは攻撃を一度も当てられず、何度も地面や木にぶつかって、ついに泣き出してしまった。
「ゆぐっ……ぜったいに……まりさを、ゆっぐ、まも……」
次の瞬間、れいむの上半分が消失した。さとりが目にも留まらぬ速さで食い千切ったのだ。
「長……ぱちゅりー……ありす……おねえちゃん……」
若まりさは泣いた。ただただ泣いた。
だが、次の瞬間、涙は止まり、覚悟を決めた表情になった。
「ぱちゅりーの、ありすの、おねえちゃんの、そして長の……まりさのまりさのかたき!」
「まりさのまりさ?」
飛び掛ろうとした若まりさに対し、さとりは静かに声を上げた。
「まさか、あなた長をまりさだと思っていたの?」
そう言うと、さとりは近くの木の裏に回り、そこから何かを取り出してきた。
それは、カチューシャを付けた、ありすの死体。集落のありすでは無い。飾りが違う。
そして、そのありすの左頬には、大きな縦の傷が付いていた。
「え……何これ……ありす?でも……このきず……」
「しらなかったの?あなたの長はまりさじゃないよ。まりさのぼうしをかぶったただのありす」
若まりさはガタガタと震えた。そんな……長が……同じまりさじゃない?
同じまりさ種として誇りに思っていた、あの大きな黒い帽子は偽者?
そんな、まさか……
「それに、このありすはあなたがかんがえているような、すてきな長なんかじゃないよ」
死体の股間は、べっとりとカスタードが付いていた。
「このありすは、夜になるといつも、こっそりとすをぬけだして、この木にぺにぺにをこすりつけて、一人すっきりしてたんだよ。
とんでもないへんたいだね。わたしが食べた夜も、ありすはあなたのなまえをさけびながらすっきりしてたよ」
若まりさの背筋に悪寒が走った。
「このありすは、とんでもないれいぱーだよ。いくつものむれを、なかまのありすとくんですっきりでほろぼしていたみたい。
ありすは大人まりさせんもんだったみたいだね。あなたが大人になったすがたをそうぞうして、いつもここですっきりしてたみたいだよ」
やめろ、これ以上言うな。若まりさの震えが強くなった。
これ以上汚すな。まりさの長を汚すな。
だが、容赦の無いさとりの言葉責めが延々と続き、思考が停止し、ついに永遠にゆっくりする事になった。
「でんごんだよー」
朝、森の奥深くで、ちぇんの声が響く。
「ちぇん、ゆっくりおはよう!どうしたの?そんなにゆっくりしないで。いそぎのめっせーじでもあるの?」
集落のリーダーのれいむが問う。
「またさとりだよー。東のまりさのしゅうらくがおそわれたんだよー、わかってねー」
「いくらなんでもはやすぎるよ!さとりはゆっくりしてないね!」
そう言ってれいむは膨らんだ。
一週間前にも、まりさの集落のもう一つ東のありすの集落が襲われたばかりである。
「さとりははーとがついたかちゅーしゃをつけているから、みかけたらちゅういしてねー」
そう言って、ちぇんは来た方向とは逆の方へ走り去っていった。
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ふたば系ゆっくりいじめ 7 浅瀬
ふたば系ゆっくりいじめ 8 鉄鍋