ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1902 スーパーマリ○ブラザーズ1-1
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ankoss
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例のゲームの最初のアレを思い浮かべながらお読みください。
では、ゆっくりしていってね!!!
小五ロリあき
1―1
MARISA×3
「ゆ……ゆゆっ!?ここどこなにょ!!?」
まりさが気がつくと、何故か不思議空間としか言いようがない場所に佇んでいた。
地面が茶色いレンガのようなブロック作りで、まりさの正面方向に延々と続いている。
行く先には緑色の大きな棒や宙に浮く箱のようなブロックなど、まりさの餡子脳では理解できない物ばかりだ。
そして何よりも目を引くのは……おおよそまりさ二匹分程度の余裕しか無い道の幅。
「ゆぅぅぅぅ!!?どぼぢちぇおしょらしゃんしかないにょぉぉぉ!!?」
後ろを向けば、底が無い青空が広がっている。右を向いても底無し、左を向けども広がる光景は同じだ。
「ゆんやぁぁぁ!!おうちきゃえりちゃいよぉぉぉぉ!!」
目の前の、自分が置かれた状況を一通り確認した後に脇目も振らずに泣き喚く子まりさ。
いきなり見知らぬ危険な場所に放り出されて放置されたものの反応としては至極当然と言えるだろう。
「だれかたしゅけちぇにぇ!かわいしょーなまりしゃをたしゅけちぇにぇ!!
……どぼぢぢぇだれもきちぇくれないにょぉぉぉ!!?むちちないでよぉぉぉ!!!」
しかし、いくら喚けども助けは来ない。残念ながらここでじっとしているうちはなんにも変わらないのだ。
十秒ほど経って誰も反応してくれないことがようやく解ったのか。その内まりさは泣き止み正面を見据えた。
「こんなにきゃわいいまりちゃがたしゅけちぇっちぇいっちぇりゅのにだれもこにゃいにゃんちぇどーいうこちょ!?
もういいよ!まりちゃはひちょりでゆっくちぷれいしゅをみちゅけりゅよ!
しょれかりゃおもうじょんぶんゆっくちしゅりゅかりゃにぇ!!まりちゃおこっちぇりゅんだよ!ぴゅんぴゅん!!」
そして特にすることも無いので仕方なく、誰に向けるでもない怒りを発しながら目の前に伸びた道を進み始める。
「まっしゅぐしゅしゅむだけならおちにゃいよ!ゆっゆ~ん♪らくちょうだにぇ!
……ゆっ?あれは…きのこしゃん?でもうごいちぇりゅよ?ふっちぎ~!!」
少し跳ね進んだところで、前方に(というか進める方向が前方しかないが)なにやら蠢くものを見つける。
なんと、目がついた動くキノコだ。しかもゆっくりではあるがこちらに向かってきている。・・・何故か横向きで。
「ゆぅぅぅん♪なんだきゃすこしへんだけどきのこしゃんはとっちぇもゆっくちできりゅんだよぉぉぉ!
まりしゃここにきちぇかりゃなんにもたべちぇないんだよ!む~ちゃむ~ちゃしゃしぇちぇにぇ!!」
まりさ自身も色々突っ込みたいところはあるだろうが、キノコといえばゆっくりにとっては高嶺の花とも言える食料だ。
ちょうど腹が減っていたまりさは思わず目を輝かせながら、自分よりも少し大きいそれに齧り付いてしまう。
「ゆっくちまりしゃにたべられちぇにぇ!いっただきま~……ゆ゛びぃ!!?」
そして吹っ飛ばされた。
動くキノコに噛み付いた瞬間に、何故か激痛と共に右手の方に結構な勢いで吹っ飛ばされる。
その先には勿論何も、地面すらもない。まりさは青空に向かって落ちるというなんとも奇妙な体験をすることとなった。
「ゆぴぃぃぃぃ!いちゃいよぉぉ……?ゆゆっ!?まりしゃおしょらをちょんでりゅみちゃ~い♪
ゆゆ~ん♪たのちいたのちいおしょらの………どごまでおぢりゅにょぉぉぉぉぉ!!?
もうおしょらしゃんはいいかりゃしゃっしゃちょじめんしゃんもどっちぇきちぇぇぇぇ!!
ゆんやぁぁぁぁぁ!!もうやぢゃ!おうちきゃえりゅうううぅぅぅ……………」
終わりの無い青空に向かってひたすら落ちるまりさ。
そのうち流石に危機感を覚えてじたばたするが、落ちる速度すら変わりやしない。
抵抗むなしくあっという間に青空に吸い込まれてゆき、そのうち声も聞こえなくなった。
まりさがこの後どうなったかって?………さあ?
―――――――――――――――
MARISA×2
「ゆっ!おねーしゃんがどっかいっちゃったよ!まりしゃがゆっくちさがしにいくよ!!」
まりさが終わらないスカイダイビングを楽しんでいるであろう、その頃。
先ほどのまりさと同じ場所に、似たようなまりさがもう一匹現れた。
違うところといえば、何故かは知らないが自分が置かれている状況をある程度把握していることか。
原動から察するにどうやら先ほどのまりさとは餡子が繋がっていたらしく、頭の悪そうな面構えもよく似ている。
「ぴょんぴょーん…ゆゆっ!?あれはうごくきのこしゃんだよ!
とっちぇもおいちそうだけどしゃわるといちゃいいちゃいしゃんになるかりゃゆっくちとびこえるよ!」
つい数分前と同じように、またもや動くキノコがこちらに向かってきた。
が、流石に同じ轍は踏まないのか。まりさは全身全霊の力を込めて向かってくるキノコを飛び越える。
「ゆべっ!…ゆひー、ゆひー……ゆっくちかれーにとびこえたよ。
かちこいまりしゃにかかればきのこしゃんなんちぇどうっちぇことないにぇ!ゆっくちさきにしゅしゅむよ!!」
実際は華麗に、というよりも無様に、と言った方が的確な跳躍であったが、生憎それを指摘する者はこの場にはいない。
たった一回跳ねただけで息も絶え絶えなまりさであったが、息を整えて再びゆっくりと一本道を突き進む。
「ゆ?あれはぶろっくしゃんだね!ぴょーんぴょーんしてぶつかりゅよ!!
ぴょーん!!い゛っ!?…ゆあぁぁぁ!!いぢゃいよぉぉぉぉ!!」
少し進んで、宙に浮くブロックを見つけたまりさは早速真下に潜り込んでから飛び上がって、頭から激突する。
いい音を立ててぶつかるのはいいが…当然痛い。あまりの痛みに思わずじたばたしながら泣き叫ぶまりさ。
しかし、次の瞬間。キーキー喚いていたまりさが急に大人しくなる。
「もうおうちきゃえ……ゆっ!?きのこしゃん…?うごいちぇりゅけど……」
何故なら、頭上の方から目の前に急に現れたキノコがとても美味しそうだったからだ。
先ほど飛び越えたものとは違って目も無ければ足も無い、赤と橙の水玉模様のキノコ。
しかも、滑るようにして奥にある緑の棒、ってうか土管に跳ね返りこちらへと寄ってきている。
普通なら不可解で警戒色丸出しのそれになど近づきもしないだろうが…
何故かまりさには、そのとても怪しいそれが美味しそうに見えて仕方なかった。
「お、おいししょうだよぉ……もうがまんできにゃいよ!ゆっくちいただきましゅ!!
む~ちゃむ~ちゃ………ち、ち、ち、ちちちちちしあわせぇ~!!ゆゆっ!!!?」
そしてすぐさま辛抱堪らんとでも言うように、怪しいキノコに齧り付いて悦びの声を上げる。
が、またしてもその直後に表情の変化がピタリと止まった。
「ま、まりさ…おおきくなってる?よくわかんないけどまりさおとなになっちゃったよ!」
まあそれも仕方が無いだろう。誰だって、一瞬のうちに自分が成長すれば戸惑うに違いない。
さっきまで道幅の三分の一くらいの大きさしかなかったまりさは、今や道幅一杯ほどの大きさになっていた。
「ゆっゆぅぅぅぅん♪きっとまりさがとってもゆっくりしてたからだね!!
むしろとうっぜんっだよ!さらにりりしくなっちゃってごめんね!!!」キリッ
…訂正しよう。戸惑うどころかよくわかりもせずに手放しで喜んでいる。
大きくなっても、おめでたい頭の中身などは全く変わらなかったようだ。
「おっきくなったまりさはむてきだよ!
とってもおっきなみどりのぼうさんもらくらくとびこえちゃうよ!!ぴょーん!!」
成ゆっくりになったまりさは、小さかった時なら越えられるかどうかといった高さの土管も軽々と飛び越える。
土管を楽々飛び越えた先に見えたのは、先ほど見たゆっくりできないほうのキノコが二匹。
奥にはもう一本土管が建っていて、逃げるには少し苦労しそうだ。
「ゆん?こんどはゆっくりできないきのこさんが、えっと…いち…に……ふたりいるよ!!
でもいまのまりさならかんったんっにやっつけられるよ!ゆっふっふっふっ……かくごしてね!!」
しかし、体と同時に気まで大きくなったまりさは少しもたじろがない。
その巨体を持って先頭に立つキノコに向かい、迷わず思いっきり体当たりをぶちかました。
「まりさのじゃまするげすきのこさんはゆっくりしね!!ゆぅぅぅぅぅぅ!!! ゆ゛っ!?
ゆべぇ!!……ど、ど、どぼぢぢぇぇぇぇ!!?どぼぢぢぇばでぃぢゃがまげぢゃうにょぉぉぉぉ!!?」
だが悲しいかな。自慢の巨体もたかが動くキノコに勝てなかったらしく、いとも簡単に跳ね飛ばされてしまった。
しかも受けた痛みのせいか、言葉が幼いそれに……いや、体のサイズすらも子ゆっくりに戻っている。
「ゆあぁ゛ぁ゛ぁ゛ん゛!!!いぢゃいよぉぉぉ!!だれかきゃわいいまりしゃをたちゅけちぇにぇぇぇぇ!!
……ゆっ!?こ、こっちこないでにぇ!しょれいじょうちかづくとまりしゃぷきゅーしゅるよ!!
ぷ、ぷ…ぷっきゅぅぅぅっ!ぶべぇっ!!…ゆぅぅぅぅ!!どぼじぢぇぷきゅーしたのにまぢゃくる…にょ……?
ゆゆぅぅぅぅ!?おしょらをちょんでりゅよぉぉぉぉ!!まりしゃおしょらをちょんでりゅぅぅぅぅ!!
ゆんやぁぁぁぁ!!まりちゃこれきゃらどうにゃるにょ!!?やぢゃ!おしょらはやぢゃあああぁぁぁ…………」
そして泣き喚いている間にもう一度キノコに跳ね飛ばされ、先ほどの姉まりさと同じ道を辿ることとなった。
青空を落ちながらまりさは誰にとも無く必死になって問いかけるが、残念ながらその行き先は誰も知らない。
なんらかの終着点があるのか、もしくは永遠に落ち続けるのか……まあともあれ、次に行ってみよう。
・
・
・
MARISA×1
「ゆっくち…ゆっくちここまできちゃよ……」
今度のまりさも、また先ほどまでの兄弟の失敗を何故か覚えていた。
そのおかげで今こうやって、なんとか二匹が来たことがない場所まで進めている。
とは言っても、実際は二匹目のまりさがやられたところから、土管二つ越えた場所でしかないのだが。
しかも二匹の動くキノコが連なっているところで避けきれずにぶつかり、
あまりの痛さでせっかく成長したのに、また子ゆっくりに戻ってしまった。
それでもそのまま死に物狂いで突っ切って、必死になって土管も飛び越えてきたのだが……
「ゆっくち…ゆっくち……?…ゆぅぅぅぅ!!?なんであなしゃんがあいちぇりゅにょぉぉぉぉ!!?」
目の前には道であったレンガの塊が無くなっていて、周囲と同じ青空が眼下に広がっている。
そして今のまりさが三匹分くらいの空間が開いて、その向こうにまた道となるレンガの塊が。
まあ要するに、まりさにとっては巨大な穴が開いているのだ。
「おしょらをとぶのはゆっくちできない…でもこのままだとさきにすすめないよ……」
体が大きければ楽に飛び越えられもするだろうが、このままだともしかしたら距離が足りないのかもしれない。
「……ちかたないよ。まりしゃゆっくちかくごをきめりゅよ!!ゆぅぅぅぅぅ!!ゆあぁ!!!」
しかしどれだけ考えても、いい案が浮かぶわけでもなく、助けがくるわけもない。
それどころか、このままボーっとしているとなんだかゆっくりできないことになる。
そんな嫌な予感に駆られたまりさは、意を決してその場から向こうの足場へ、決死のジャンプを敢行し
「ゆぅぅぅぅ!!まりしゃおしょらをちょぶんだよ!!
おしょらを…おしょらを……おちちぇりゅよぉぉぉぉぉぉ!!にゃんでえええぇぇぇ…………」
見事に落ちた。
やれやれである。何も考えずに跳ぶからこうなる。
せめて助走の一つでもつけていれば、なんとか届いただろうに……
GAME OVER
―――――――――――――――
REIMU×3
「ゆわぁぁぁぁん!!おねーしゃんのまりちゃがみんないなくなっちゃったよぉぉぉぉ!!!
きゃわいいきゃわいいれーみゅがかわりにしゃきにすすむよ!!!てんごくでゆっくりみちぇちぇね!!!」キリッ
三匹のまりさが文字通り青空に吸い込まれてから少し経って。
今度はまた新しく、子ゆっくりサイズのれいむがスタート地点に立っていた。
「まにゅけなおねーしゃんたちのきゃわりにれーみゅがゆっくちぷれいしゅにいくよ!
たくしゃんおいしいものむ~ちゃむ~ちゃちてあっちゃかべっどしゃんでしゅ~やしゅ~やしゅるんだよぉ!!」
これまでのまりさとは違い、悲壮感など微塵も漂わせずに暢気にレンガの上を進む子れいむ。
こういった状況の場合、得てして精神状態が調子を左右するというのはよくある話である。
どうやらまりさと同じように経験を蓄積させることもれいむは(本当に何故か)できるらしく、
今までのまりさたちが到達したところよりも遥か先へと進むことも十分期待できるだろう。
が、しかし
「ゆゆっ!?あのうごくきのこしゃんおいちしょうだよぉぉぉ!!
れーみゅにゆっくちだべられてにぇ!!いっただっきまーぢゅっ!!?
ゆぴぃぃぃぃ!!いちゃいよぉぉぉぉぉぉ!!…ゆっ?おしょらをとんでりゅ―――」
REIMU×2
「みちゅけちゃよあのくしょきのこ!おにぇーしゃんのかたきだよ!ゆっくちころしゃれちぇにぇ!!
ゆぶっ!!ゆんやぁぁぁぁ!!どぼじぢぇでいびゅがまげりゅにょぉぉぉぉ!!?…ゆっ?おしょらを―――」
REIMU×1
「おばかにゃおにぇーしゃんたちとはちがっちぇれーみゅはきのこしゃんとはたたかわにゃいよ!
ゆっくちかれーにとびきょえりゅよ!!ゆっくちぴょーん♪……ゆゆっ?にゃんでめのまえにきのこしゃんが…
ゆびぃ!…ゆぅぅぅ!?とびこえりゅまえにちゃくちしちゃったよぉぉぉぉ!!!ゆっ?おしょら―――」
こいつらは揃いも揃ってアホなので、残念ながら無駄でした。
ダイジェストでお送りできる程度の時間で全滅した脳天気楽なれいむたち。
何故のこのこ出てきたのかという疑問が晴れる間もなく GAME OVER ですよーっと。
――――――――――
MARISA×3
「ゆひー、ゆひー……ようやくあなさんをこえたよ。これからはしんちょうにゆっくりすすむよ!
しょろーりしょろり゛ぎぃっ!!ゆひぃぃぃ!!いちゃいぃぃぃ!まりしゃちんぢゃうぅぅぅ!!
どぼじでゆっくちできにゃいきのこしゃんうえかりゃふっちぇくりゅにょぉぉぉ!!
ちゃんとまりちゃがみえりゅとこりょにいなきゃだめでちょぉぉぉ!!まりしゃほんきでおこりゅよ!ぴゅんぴゅん!!」
もう何度目の挑戦になるだろうか。ようやくまりさは大きなまま、穴を越えることに成功した。
残りは二匹となっているが、勿論見たままの数字ではない。
その影には先ほど何番目かのまりさが偶然見つけた、緑色の水玉キノコの存在があった。
美味しすぎて思わずもう一匹まりさが増えてしまうようなそれを、やり直す度に毎回食べ続けたおかげでまりさはいなくならずに済んだのだ。
よって実際は一匹二匹どころか、二桁ほどのまりさが青空に吸い込まれている。想像するとかなり恐ろしい。
「まっちゃく!じぇんじぇんまりしゃのいうことをきいてくれないくしょげしゅきのこしゃんなんてほっちょくよ!!
ゆっゆっゆっ…ゆ?またぶろっくしゃんだね。なにがはいってるのかな?………ゆえい!
いぢゃいぃぃ……ゆゆぅ!ゆっくちできるきのこしゃん!!む~ちゃむ~ちゃしあわせぇぇぇぇ!!!」
一方、なんとか戻ってしまった体をもう一度キノコで大きくしたまりさは、軽々とその先にある穴も越えて次へと進む。
「このぶろっくさんはなにかなー?ゆえい゛!
ゆぅぅ…もういたいのにもなれたよ!……ゆぅぅぅぅ!!なにあのきらきらさん!とってもきれいだよぉぉぉ!!!
まりさのたからものにするよ!ゆっくりつかまってね!!!ぴょーんぴょーん!!」
進んだ先でまりさがブロックを叩いて出したのは、星型でピカピカ光りながらそこらへんを跳ね回る例のアレである。
当然ビー玉よりも数倍美しいであろうそれに、まりさが目を奪われないはずもない。
「まりさもいっしょにぴょーんぴょーんしてつかえてあげるからほしさんはちょっとまってね!
ぴょーんぴょーん!…ゆっふ、ゆっふ。ぴょーんぴょーん!ぴょーんぴょーん……
どぼじでとまってくれないのぉぉぉ!!?ゆっくりしないでまりさに…あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!
ほしさんがあなにおっこちちゃったよぉぉぉ!!!まってね!まりさはゆっくりあとをおうよ!!
ゆゆっ?おそらをとんでる―――」
と、いうわけで、あれよあれよと言う間にまりさは星型のアレを追いかけて後追い自殺。またやり直しとなった。
・
・
・
MARISA×3
数度の星型捕獲を試みて、その全てが失敗に終わった後。
ゆっくりの動きの鈍さでは無理だという事にようやく気づいたまりさは、諦めてさっさと先に進むことにした。
「もうほししゃんはいいよ!あんにゃゆっくちしちぇにゃいほししゃんなんちぇこっちきゃらねがいしゃげだよ!」
動くゆっくりできないキノコ。飛び越えるだけでも大変な穴。叩くたびに痛いブロック。
数十回の挑戦の末ようやく慣れてきたまりさ(第24子)ではあったが、そんなまりさの前に更なる敵が現れる。
「ゆっせ、ゆっせ。ゆっくちぷれいしゅはまだなにょ?まりしゃしょろしょろちゅかれたよ……
ゆっ!?みどりのかめしゃんがいりゅよ!かめしゃ……にゃんでかめしゃんがあんよだけでたっちぇりゅにょ?」
向こうからやってくるのは、まりさよりも大きな、緑色の甲羅を背負った亀。
この状況で、見たことが無い亀はあからさまに怪しい。まりさのなけなしの警戒心も全開になるというものだ。
「かめしゃんもきっちょあのきのこしゃんみちゃいにゆっくちできないにきまっちぇりゅよ!
でもかめしゃんはおっきいかりゃ……ゆっくちとびこえりゅよ!ぴょーん!」
流石にもう何も考えずに体当たりを仕掛けるほど無謀にもなれないのか、一応飛び越えてやり過ごそうとするまりさ。
非常に賢明な判断ではあるが、なにせ今は子ゆっくり。ほんの少しの油断が命取りになる。
「ゆっくち……ゆっ?おもったよりもとべにゃい……ゆゆぅぅ!!?」ぺほっ
自分の想像以上に跳躍できなかったまりさは、そのまま亀の頭の部分に着地するような形になり、もう一度跳んだ。
ピコピコハンマーを鳴らしたような間抜けな音と共に、今までに無い高さを跳んだまりさは思わず言葉を失くしてしまう。
「ゆっくちっ!!……しゅ…しゅごいよ!まりしゃこんなにおしょらをとんだのははじめてだよぉ!
ゆっゆ~ん♪かめしゃんありがちょ……かめしゃん? いなくなっちぇりゅ……」
見事な着地を決めて大興奮のまりさが振り返ると、そこには緑の甲羅が一つ。
見覚えのあるそれの本来の持ち主はどこにも見当たらない。
「ま、まりしゃ、かめしゃんにかったにょ?
きっとそうなんだにぇ!かっきょいいまりしゃにおしょれをなしちぇにげたんだにぇ!
しょーいうことならしかちゃないよ!しぇんりひんとしちぇこうらしゃんはまりしゃのものにしゅりゅにぇ!
ゆぅぅぅぅ!とってもゆっくちしたたきゃらものができちゃよぉぉ!!こうらしゃん~♪『ポコッ!』ゆっ!!?」
適当な前向き思考で甲羅を我が物にしようとするまりさ。
しかし悲しいかな。今まさに触れようとした瞬間、甲羅はまりさがいた方とは逆へと滑って行ってしまった。
「ゆんやぁぁぁぁぁ!!まっちぇにぇまりしゃのたきゃらものしゃん!!
ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ!?しゅごいよまりしゃのこうらしゃん!
ゆっくちできにゃいきのこしゃんをどんどんやっつけちぇりゅよぉぉぉ!!!
きっといままでいなくなったまりしゃのおねーしゃんたちのしかえしをしちぇくれちぇりゅんだにぇ!!」
離れていく甲羅を必死になって追いかけるまりさが目にしたのは、自分の宝物が動くキノコを跳ね飛ばす姿。
今まで散々苦汁を舐めさせられたそれが次々とやられていく様に、またもや興奮を隠せないまりさ。
しかし、自分のために戦ってくれていると信じきっていたまりさは、その勘違いにより手酷い裏切りを受ける。
「しょれにしちぇもちょっとはやしゅぎりゅよ…もうすこしゆっくちしちぇにぇ……
………ゆゆっ?なんでこうらしゃんが…………っ!!ちょっとまってぎゅぼぉっ!!!
…う゛っ……う゛ぅ゛……どぼじ…ぢぇ…ごうらじゃん……ばでぃぢゃの…だが…ら…も……にょ………ぁ゛……」
追いかけるのに疲れたところに、突如前方にあったブロックにぶつかった甲羅が、ご機嫌なまりさの方へと跳ね返った。
ただでさえ追いつけないほどの速さで滑る甲羅に対して、ただの一ゆっくりであるまりさができることは少ない。
『甲羅が自分に向かってきている』
その事をやっと認識した次の瞬間。
まりさは自分の宝物と思っていた物から強烈な体当たりを受け、あまりの痛みに意識を手放した。
二度と覚めることのない眠りにつく間際、甲羅に向かって何故と問いかけるも答えは返ってこない。
ただまりさから少し離れたところで、己と同じように穴からダイビングを敢行しているのが見えただけだ。
哀れ子まりさは体をめり込ませ、歯は砕け、餡子を吐きながら、
他のまりさたちよりも数段痛々しい姿で自分の宝物と共に青空へと消えていった。
――――――――――
MARISA×3
「ゆふぅ、ゆふぅ…ここからはたさんとおしろさんがみえるよ。
きっとあそこがさがしもとめてたゆっくりぷれいすにちがいないね……
みててねみんな。どすがきっとみんなのぶんまでしあわせーっになってあげるからね!」
数々の苦難を乗り越え、自分の全長の何倍にも積み上げられたブロックをよじ登り、まりさはとうとう辿り着いた。
その風貌には自信が漂っており、自慢の帽子もどこか風格があるように見える。……多分気のせいだろうが。
ともあれ、まりさは多くの犠牲の元にようやくここまで来た。
自分のことをドスと言っているが、体のサイズは普通の成まりさと全く変わらない。
が、ただ違いとして、このまりさは小さな火の玉を吐くことができる。
先ほど見つけた赤いお花さんを食べると、何故か間抜けな音と共に出せるようになったらしく、
「ゆゆぅぅ!!?これは………どすすぱーくだね!!
まりさがどすすぱーくをうてるようななるなんて……
ゆっふっふっふっふ……まりさはどうやらすごいゆっくりになっちゃったようだよ。
これからはまりさはどすまりさだよ!!どすになったからにはもうてきなしだよ!!
かめさんもきのこさんもどんどんやっつけてあげるからね!!つよくってごめんね!!!」
などという思い込みもあって、情けないドススパークしか撃てない自称ドスまりさが誕生したようだ。
とはいえ、いくらショボい火の玉でも、役に立たないかと言われればそうでもない。
まりさが吐く火の玉は、まりさが言うように他のゆっくりできない者に対しては効果が抜群だったようで、
なんと動くキノコも亀も、火の玉一発で次々と舞台から退場していった。
これに味を占めたのは、当の自称ドスまりさだ。
遠くから一方的に攻撃ができるということで、
今までの鬱憤を晴らすように他の奴らをなぎ倒し、破竹の勢いで駒を進めて現在に至る。
「あとはここからとびおりるだけだよ!
……だいじょうぶだよ。ここまできたんだからこれくらいどうってことないよ」
しかし、あと一息といったところで踏ん切りがつかない。
それもそのはず。目的地にたどり着くには、自分の身長の何倍もある高さから飛び降りなければならないのだ。
遠くの、不気味な模様が描かれた旗にしがみつくには、残念ながらまりさの跳躍力では距離が足りない。
他に方法があるわけでもなく、要するに、まりさは腹を括らなければならないのだ。
「ゆぅぅぅ、こわいよぉ……
でも、ここであきらめちゃいままでぎせいになったみんなにもうしわけがたたないよ。
せめてまりさだけでも…ここでゆっくりしないといけないんだよ!!
まりさはゆっくりしたいんだよぉぉ!!ゆわああぁぁぁぁぁぁ!!!」
そして、まりさが跳んだ。
これまでにないほどに勇ましく、この上なく美しい放物線を描いて、跳んだ。
「ゆぅぅぅぅ!!おそらをとんでる―――ゆ゛ん゛っ!!!
………ゆふぅぅぅ。あんよがびりびりするよ………」
結果、まりさは見事に着地した。今度こそ正真正銘辿り着いたのだ。
しかしまりさは大袈裟には喜ばない。あまりの感動を前にして、それどころではないからだ。。
「ここがどすのゆっくりぷれいすなんだね……。
みんな、やったよ。どすはとうとうじぶんだけのゆっくりぷれいすをてにいれたんだよ!
みんなも…どこにいっちゃったのかはどすにはわからないけど、みんなも……
ゆっくりしていってね!!!」
この日一番の挨拶と共に、まりさは誇らしげに自分の物となった城のような建物へと入っていった。
不気味な模様の旗は、まるでまりさに屈したようにスルスルと下に落ち、遠くでは花火が打ち上がっている。
まさに何もかもがまりさを祝福しているように思えて仕方がない。
文字通り、まりさの心は今までのどのまりさよりも晴れ渡り、ゆっくりしていた。
・
・
・
1―2
MARISA×4
「なんなのこれ!ふざけてるの!!?こんなのぜんぜんゆっくりぷれいすじゃないよ!!
どすはあんなにがんばったのに……このおうちつくったのだれなの!ばかなの!?しぬの!?」
一分後。少し前までのゆっくりした様子を欠片も残さず、怒り心頭を発したまりさが建物から出てきた。
「みたかんじりっぱなのに、なかにはいったらはなんにもないってどういうことなの!
おしろはうらからみたらただのはりぼてだし……かんっぜんっにだまされたよ!!
もういいよ!こんなにせものじゃないほんとうのゆっくりぷれいすをみつけてみせるからね!!
……ゆっ?いきどまり?……このどかんさんにはいるの?どこにつながってるんだろ…」
どうやらあれだけ苦労して手に入れたゆっくりプレイスであるお城のような建造物は、偽物だったらしい。
入った途端にまりさを迎えたのは、今までどおりの何もない青空と、途切れた無機質なレンガ仕立てのブロック。
立派に見えた建物は安っぽいハリボテという、明らかに手抜き間丸出しの、むしろ悪意すら感じる一品だったそうな。
怒りで今にも我を忘れそうなまりさは必死にそんな気持ちを押さえて土管に体を捻じ込む。
また、あのゆっくりできない奴らが出たらドススパークで八つ当たりしてやろう、などと思いながら―――
「ゆっ、ゆっ、ゆっ………ゆぅぅぅぅ!!おちるぅぅぅぅ!!
どうなってるの!?これからどすはどうなるの!?どこにいくのぉぉぉぉ!!!?
こわいよぉぉぉぉ!!!だれかたすけてねぇぇぇぇぇぇぶぎゅっ゛!!!」
長距離の落下を経て、着地しきれずに潰れて死んだ。
どうということはない。単に饅頭の体では衝撃に耐えられなかっただけ。
いくら(自称)ドスといえども例外ではなく、吸収し切れなかった負荷が限界を超えて、爆ぜただけの話だ。
そして、立派に成長しきったゆっくりがダメだったのだ。当然これから先は…………
MARISA×3
「おねーしゃんがちんじゃったよぉぉ!!りっぱなどしゅだったのにぃぃぃぃ!!
みちぇちぇにぇ。まりしゃがりっぱにかたきをとりゅからにぇ!!
とちゅげきだよ!!ゆあああぁぁぁぁ……ぁぁあああおしょらをちょんでりゅぅぅぅぅぅぅぅぴゅん゛っ!!!」
MARISA×2
「ゆぅぅぅ……なんだきゃあのどかんしゃんはゆっくちできにゃいよ。
でもこんなゆっくちできないとこりょにはいたくないし………
ちかたないよ。まりしゃいくよ!!きっとほかのおねーしゃんはゆっくちしてなかったからちんだんだよ!
こんなにゆっくちしてりゅまりしゃならきっとだいじょーぶだよ!そうにちがいないよ!! ゆっゆっおー!!
どかんしゃん!ゆっくちかくごしてにぇ!ゆおおおおぉぉぉおお゛お゛お゛お゛!や、や、やべぢぇぶぅ゛っ!!!」
MARISA×1
「ゆああぁぁ!!!いやぢゃいやぢゃいやぢゃ!!どかんしゃんはやぢゃ!!
まりしゃまぢゃちにたくない!まぢゃじぇんじぇんゆっくちしてない!!
まりしゃここでいいきゃりゃ…はりぼてしゃんでもゆっくちできりゅかりゃ…だかりゃ……
ゆんやぁぁぁぁぁ!!どぼぢぢぇあんよしゃんかっちぇにうごくにょぉぉぉぉ!!?
だれきゃだじゅげぢぇぐだぢゃい!!まりしゃまぢゃいきちぇたいんでしゅ!!
きのこしゃん!かめしゃん!ほししゃんんん!!!だれきゃ!!だれきゃ!!
だれきゃああああぁぁぁ………ぁぁぁぁああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ゆっぐぢゃん゛!!!!」
生き残れるゆっくりなど、いるはずがない。
残ったのは、土管から落ちて来た先に小さく積み重なった饅頭の層と、周囲に散らばった大きさの違う四つの帽子だけ。
まりさたちのゆっくりプレイスを探す冒険は、終わった。
GAME OVER
――――――――――
「なんだこりゃ……」
とりあえずゲームに一段落つけた俺は呆然としながら、
目の前の真っ暗な画面に白抜きで浮かぶ『GAME OVER』の文字を見つめていた。
「どうだった?ウチで作ったスーパーまりさブラザーズ……の、体験版。だから最初だけね」
「どうだったって…
あれのパクリだとか云々は置いといて、操作性無茶苦茶だし、たまに勝手に動くし、
お手本プレイとかいって出てきたれいむが勝手に死んだのとか意味わかんねーし、
そもそもゆっくりの死に様とか挙動とかだけがリアルでなんか腹立つし…つまりクソゲーじゃね?これ」
「あー、大丈夫。それ全部仕様だから」
「なん・・・だと・・・?」
「まあそうは言っても、これから色々調整加えていくからそう酷いものにはならないよ。ご苦労様。
君には犠牲になってもらったよ。これから作られるであろうマゾゲーの犠牲にね・・・」
(・・・つまりどういうことなんだ?)
なんだか嫌な笑い方をしている友人を余所に俺は、また画面の中でデモプレイとして動いているまりさを見る。
(よく出来てはいるんだけどな……逆にここまでゆっくりだけヌルヌル動くと気持ち悪い)
デモプレイでも健闘の甲斐なく亀にやられるまりさを見て、心底残念に思いながらため息を一つ吐いた。
スーパーまりさブラザーズ。
某世界一有名な配管工を主役にしたアクションゲームの一作目…のパクリ。
その代わりにゆっくりが主役の何もかもが胡散臭いそのゲームが、そう遠くない未来に話題となることを。
普通の人々には『良く出来たマゾゲー』として。
虐待派の者には『ゆっくりがリアルに死ぬ姿がむしろご褒美な鬼畜ゲー』として。
そしてその他の人たちにはクソゲーとして、
世の注目を集め、色んな意味で評判を掻っ攫っていくことを二人はまだ知らない……
・あとがき
タイトルがこの話のオチだという事に気づいた方は、いったい何人いるんでしょうか。
ちなみに、正しくはシスターズじゃねーの?とかいったツッコミにはお答えしません。見逃してください。
では最後までお読み頂き、ありがとうございました!
では、ゆっくりしていってね!!!
小五ロリあき
1―1
MARISA×3
「ゆ……ゆゆっ!?ここどこなにょ!!?」
まりさが気がつくと、何故か不思議空間としか言いようがない場所に佇んでいた。
地面が茶色いレンガのようなブロック作りで、まりさの正面方向に延々と続いている。
行く先には緑色の大きな棒や宙に浮く箱のようなブロックなど、まりさの餡子脳では理解できない物ばかりだ。
そして何よりも目を引くのは……おおよそまりさ二匹分程度の余裕しか無い道の幅。
「ゆぅぅぅぅ!!?どぼぢちぇおしょらしゃんしかないにょぉぉぉ!!?」
後ろを向けば、底が無い青空が広がっている。右を向いても底無し、左を向けども広がる光景は同じだ。
「ゆんやぁぁぁ!!おうちきゃえりちゃいよぉぉぉぉ!!」
目の前の、自分が置かれた状況を一通り確認した後に脇目も振らずに泣き喚く子まりさ。
いきなり見知らぬ危険な場所に放り出されて放置されたものの反応としては至極当然と言えるだろう。
「だれかたしゅけちぇにぇ!かわいしょーなまりしゃをたしゅけちぇにぇ!!
……どぼぢぢぇだれもきちぇくれないにょぉぉぉ!!?むちちないでよぉぉぉ!!!」
しかし、いくら喚けども助けは来ない。残念ながらここでじっとしているうちはなんにも変わらないのだ。
十秒ほど経って誰も反応してくれないことがようやく解ったのか。その内まりさは泣き止み正面を見据えた。
「こんなにきゃわいいまりちゃがたしゅけちぇっちぇいっちぇりゅのにだれもこにゃいにゃんちぇどーいうこちょ!?
もういいよ!まりちゃはひちょりでゆっくちぷれいしゅをみちゅけりゅよ!
しょれかりゃおもうじょんぶんゆっくちしゅりゅかりゃにぇ!!まりちゃおこっちぇりゅんだよ!ぴゅんぴゅん!!」
そして特にすることも無いので仕方なく、誰に向けるでもない怒りを発しながら目の前に伸びた道を進み始める。
「まっしゅぐしゅしゅむだけならおちにゃいよ!ゆっゆ~ん♪らくちょうだにぇ!
……ゆっ?あれは…きのこしゃん?でもうごいちぇりゅよ?ふっちぎ~!!」
少し跳ね進んだところで、前方に(というか進める方向が前方しかないが)なにやら蠢くものを見つける。
なんと、目がついた動くキノコだ。しかもゆっくりではあるがこちらに向かってきている。・・・何故か横向きで。
「ゆぅぅぅん♪なんだきゃすこしへんだけどきのこしゃんはとっちぇもゆっくちできりゅんだよぉぉぉ!
まりしゃここにきちぇかりゃなんにもたべちぇないんだよ!む~ちゃむ~ちゃしゃしぇちぇにぇ!!」
まりさ自身も色々突っ込みたいところはあるだろうが、キノコといえばゆっくりにとっては高嶺の花とも言える食料だ。
ちょうど腹が減っていたまりさは思わず目を輝かせながら、自分よりも少し大きいそれに齧り付いてしまう。
「ゆっくちまりしゃにたべられちぇにぇ!いっただきま~……ゆ゛びぃ!!?」
そして吹っ飛ばされた。
動くキノコに噛み付いた瞬間に、何故か激痛と共に右手の方に結構な勢いで吹っ飛ばされる。
その先には勿論何も、地面すらもない。まりさは青空に向かって落ちるというなんとも奇妙な体験をすることとなった。
「ゆぴぃぃぃぃ!いちゃいよぉぉ……?ゆゆっ!?まりしゃおしょらをちょんでりゅみちゃ~い♪
ゆゆ~ん♪たのちいたのちいおしょらの………どごまでおぢりゅにょぉぉぉぉぉ!!?
もうおしょらしゃんはいいかりゃしゃっしゃちょじめんしゃんもどっちぇきちぇぇぇぇ!!
ゆんやぁぁぁぁぁ!!もうやぢゃ!おうちきゃえりゅうううぅぅぅ……………」
終わりの無い青空に向かってひたすら落ちるまりさ。
そのうち流石に危機感を覚えてじたばたするが、落ちる速度すら変わりやしない。
抵抗むなしくあっという間に青空に吸い込まれてゆき、そのうち声も聞こえなくなった。
まりさがこの後どうなったかって?………さあ?
―――――――――――――――
MARISA×2
「ゆっ!おねーしゃんがどっかいっちゃったよ!まりしゃがゆっくちさがしにいくよ!!」
まりさが終わらないスカイダイビングを楽しんでいるであろう、その頃。
先ほどのまりさと同じ場所に、似たようなまりさがもう一匹現れた。
違うところといえば、何故かは知らないが自分が置かれている状況をある程度把握していることか。
原動から察するにどうやら先ほどのまりさとは餡子が繋がっていたらしく、頭の悪そうな面構えもよく似ている。
「ぴょんぴょーん…ゆゆっ!?あれはうごくきのこしゃんだよ!
とっちぇもおいちそうだけどしゃわるといちゃいいちゃいしゃんになるかりゃゆっくちとびこえるよ!」
つい数分前と同じように、またもや動くキノコがこちらに向かってきた。
が、流石に同じ轍は踏まないのか。まりさは全身全霊の力を込めて向かってくるキノコを飛び越える。
「ゆべっ!…ゆひー、ゆひー……ゆっくちかれーにとびこえたよ。
かちこいまりしゃにかかればきのこしゃんなんちぇどうっちぇことないにぇ!ゆっくちさきにしゅしゅむよ!!」
実際は華麗に、というよりも無様に、と言った方が的確な跳躍であったが、生憎それを指摘する者はこの場にはいない。
たった一回跳ねただけで息も絶え絶えなまりさであったが、息を整えて再びゆっくりと一本道を突き進む。
「ゆ?あれはぶろっくしゃんだね!ぴょーんぴょーんしてぶつかりゅよ!!
ぴょーん!!い゛っ!?…ゆあぁぁぁ!!いぢゃいよぉぉぉぉ!!」
少し進んで、宙に浮くブロックを見つけたまりさは早速真下に潜り込んでから飛び上がって、頭から激突する。
いい音を立ててぶつかるのはいいが…当然痛い。あまりの痛みに思わずじたばたしながら泣き叫ぶまりさ。
しかし、次の瞬間。キーキー喚いていたまりさが急に大人しくなる。
「もうおうちきゃえ……ゆっ!?きのこしゃん…?うごいちぇりゅけど……」
何故なら、頭上の方から目の前に急に現れたキノコがとても美味しそうだったからだ。
先ほど飛び越えたものとは違って目も無ければ足も無い、赤と橙の水玉模様のキノコ。
しかも、滑るようにして奥にある緑の棒、ってうか土管に跳ね返りこちらへと寄ってきている。
普通なら不可解で警戒色丸出しのそれになど近づきもしないだろうが…
何故かまりさには、そのとても怪しいそれが美味しそうに見えて仕方なかった。
「お、おいししょうだよぉ……もうがまんできにゃいよ!ゆっくちいただきましゅ!!
む~ちゃむ~ちゃ………ち、ち、ち、ちちちちちしあわせぇ~!!ゆゆっ!!!?」
そしてすぐさま辛抱堪らんとでも言うように、怪しいキノコに齧り付いて悦びの声を上げる。
が、またしてもその直後に表情の変化がピタリと止まった。
「ま、まりさ…おおきくなってる?よくわかんないけどまりさおとなになっちゃったよ!」
まあそれも仕方が無いだろう。誰だって、一瞬のうちに自分が成長すれば戸惑うに違いない。
さっきまで道幅の三分の一くらいの大きさしかなかったまりさは、今や道幅一杯ほどの大きさになっていた。
「ゆっゆぅぅぅぅん♪きっとまりさがとってもゆっくりしてたからだね!!
むしろとうっぜんっだよ!さらにりりしくなっちゃってごめんね!!!」キリッ
…訂正しよう。戸惑うどころかよくわかりもせずに手放しで喜んでいる。
大きくなっても、おめでたい頭の中身などは全く変わらなかったようだ。
「おっきくなったまりさはむてきだよ!
とってもおっきなみどりのぼうさんもらくらくとびこえちゃうよ!!ぴょーん!!」
成ゆっくりになったまりさは、小さかった時なら越えられるかどうかといった高さの土管も軽々と飛び越える。
土管を楽々飛び越えた先に見えたのは、先ほど見たゆっくりできないほうのキノコが二匹。
奥にはもう一本土管が建っていて、逃げるには少し苦労しそうだ。
「ゆん?こんどはゆっくりできないきのこさんが、えっと…いち…に……ふたりいるよ!!
でもいまのまりさならかんったんっにやっつけられるよ!ゆっふっふっふっ……かくごしてね!!」
しかし、体と同時に気まで大きくなったまりさは少しもたじろがない。
その巨体を持って先頭に立つキノコに向かい、迷わず思いっきり体当たりをぶちかました。
「まりさのじゃまするげすきのこさんはゆっくりしね!!ゆぅぅぅぅぅぅ!!! ゆ゛っ!?
ゆべぇ!!……ど、ど、どぼぢぢぇぇぇぇ!!?どぼぢぢぇばでぃぢゃがまげぢゃうにょぉぉぉぉ!!?」
だが悲しいかな。自慢の巨体もたかが動くキノコに勝てなかったらしく、いとも簡単に跳ね飛ばされてしまった。
しかも受けた痛みのせいか、言葉が幼いそれに……いや、体のサイズすらも子ゆっくりに戻っている。
「ゆあぁ゛ぁ゛ぁ゛ん゛!!!いぢゃいよぉぉぉ!!だれかきゃわいいまりしゃをたちゅけちぇにぇぇぇぇ!!
……ゆっ!?こ、こっちこないでにぇ!しょれいじょうちかづくとまりしゃぷきゅーしゅるよ!!
ぷ、ぷ…ぷっきゅぅぅぅっ!ぶべぇっ!!…ゆぅぅぅぅ!!どぼじぢぇぷきゅーしたのにまぢゃくる…にょ……?
ゆゆぅぅぅぅ!?おしょらをちょんでりゅよぉぉぉぉ!!まりしゃおしょらをちょんでりゅぅぅぅぅ!!
ゆんやぁぁぁぁ!!まりちゃこれきゃらどうにゃるにょ!!?やぢゃ!おしょらはやぢゃあああぁぁぁ…………」
そして泣き喚いている間にもう一度キノコに跳ね飛ばされ、先ほどの姉まりさと同じ道を辿ることとなった。
青空を落ちながらまりさは誰にとも無く必死になって問いかけるが、残念ながらその行き先は誰も知らない。
なんらかの終着点があるのか、もしくは永遠に落ち続けるのか……まあともあれ、次に行ってみよう。
・
・
・
MARISA×1
「ゆっくち…ゆっくちここまできちゃよ……」
今度のまりさも、また先ほどまでの兄弟の失敗を何故か覚えていた。
そのおかげで今こうやって、なんとか二匹が来たことがない場所まで進めている。
とは言っても、実際は二匹目のまりさがやられたところから、土管二つ越えた場所でしかないのだが。
しかも二匹の動くキノコが連なっているところで避けきれずにぶつかり、
あまりの痛さでせっかく成長したのに、また子ゆっくりに戻ってしまった。
それでもそのまま死に物狂いで突っ切って、必死になって土管も飛び越えてきたのだが……
「ゆっくち…ゆっくち……?…ゆぅぅぅぅ!!?なんであなしゃんがあいちぇりゅにょぉぉぉぉ!!?」
目の前には道であったレンガの塊が無くなっていて、周囲と同じ青空が眼下に広がっている。
そして今のまりさが三匹分くらいの空間が開いて、その向こうにまた道となるレンガの塊が。
まあ要するに、まりさにとっては巨大な穴が開いているのだ。
「おしょらをとぶのはゆっくちできない…でもこのままだとさきにすすめないよ……」
体が大きければ楽に飛び越えられもするだろうが、このままだともしかしたら距離が足りないのかもしれない。
「……ちかたないよ。まりしゃゆっくちかくごをきめりゅよ!!ゆぅぅぅぅぅ!!ゆあぁ!!!」
しかしどれだけ考えても、いい案が浮かぶわけでもなく、助けがくるわけもない。
それどころか、このままボーっとしているとなんだかゆっくりできないことになる。
そんな嫌な予感に駆られたまりさは、意を決してその場から向こうの足場へ、決死のジャンプを敢行し
「ゆぅぅぅぅ!!まりしゃおしょらをちょぶんだよ!!
おしょらを…おしょらを……おちちぇりゅよぉぉぉぉぉぉ!!にゃんでえええぇぇぇ…………」
見事に落ちた。
やれやれである。何も考えずに跳ぶからこうなる。
せめて助走の一つでもつけていれば、なんとか届いただろうに……
GAME OVER
―――――――――――――――
REIMU×3
「ゆわぁぁぁぁん!!おねーしゃんのまりちゃがみんないなくなっちゃったよぉぉぉぉ!!!
きゃわいいきゃわいいれーみゅがかわりにしゃきにすすむよ!!!てんごくでゆっくりみちぇちぇね!!!」キリッ
三匹のまりさが文字通り青空に吸い込まれてから少し経って。
今度はまた新しく、子ゆっくりサイズのれいむがスタート地点に立っていた。
「まにゅけなおねーしゃんたちのきゃわりにれーみゅがゆっくちぷれいしゅにいくよ!
たくしゃんおいしいものむ~ちゃむ~ちゃちてあっちゃかべっどしゃんでしゅ~やしゅ~やしゅるんだよぉ!!」
これまでのまりさとは違い、悲壮感など微塵も漂わせずに暢気にレンガの上を進む子れいむ。
こういった状況の場合、得てして精神状態が調子を左右するというのはよくある話である。
どうやらまりさと同じように経験を蓄積させることもれいむは(本当に何故か)できるらしく、
今までのまりさたちが到達したところよりも遥か先へと進むことも十分期待できるだろう。
が、しかし
「ゆゆっ!?あのうごくきのこしゃんおいちしょうだよぉぉぉ!!
れーみゅにゆっくちだべられてにぇ!!いっただっきまーぢゅっ!!?
ゆぴぃぃぃぃ!!いちゃいよぉぉぉぉぉぉ!!…ゆっ?おしょらをとんでりゅ―――」
REIMU×2
「みちゅけちゃよあのくしょきのこ!おにぇーしゃんのかたきだよ!ゆっくちころしゃれちぇにぇ!!
ゆぶっ!!ゆんやぁぁぁぁ!!どぼじぢぇでいびゅがまげりゅにょぉぉぉぉ!!?…ゆっ?おしょらを―――」
REIMU×1
「おばかにゃおにぇーしゃんたちとはちがっちぇれーみゅはきのこしゃんとはたたかわにゃいよ!
ゆっくちかれーにとびきょえりゅよ!!ゆっくちぴょーん♪……ゆゆっ?にゃんでめのまえにきのこしゃんが…
ゆびぃ!…ゆぅぅぅ!?とびこえりゅまえにちゃくちしちゃったよぉぉぉぉ!!!ゆっ?おしょら―――」
こいつらは揃いも揃ってアホなので、残念ながら無駄でした。
ダイジェストでお送りできる程度の時間で全滅した脳天気楽なれいむたち。
何故のこのこ出てきたのかという疑問が晴れる間もなく GAME OVER ですよーっと。
――――――――――
MARISA×3
「ゆひー、ゆひー……ようやくあなさんをこえたよ。これからはしんちょうにゆっくりすすむよ!
しょろーりしょろり゛ぎぃっ!!ゆひぃぃぃ!!いちゃいぃぃぃ!まりしゃちんぢゃうぅぅぅ!!
どぼじでゆっくちできにゃいきのこしゃんうえかりゃふっちぇくりゅにょぉぉぉ!!
ちゃんとまりちゃがみえりゅとこりょにいなきゃだめでちょぉぉぉ!!まりしゃほんきでおこりゅよ!ぴゅんぴゅん!!」
もう何度目の挑戦になるだろうか。ようやくまりさは大きなまま、穴を越えることに成功した。
残りは二匹となっているが、勿論見たままの数字ではない。
その影には先ほど何番目かのまりさが偶然見つけた、緑色の水玉キノコの存在があった。
美味しすぎて思わずもう一匹まりさが増えてしまうようなそれを、やり直す度に毎回食べ続けたおかげでまりさはいなくならずに済んだのだ。
よって実際は一匹二匹どころか、二桁ほどのまりさが青空に吸い込まれている。想像するとかなり恐ろしい。
「まっちゃく!じぇんじぇんまりしゃのいうことをきいてくれないくしょげしゅきのこしゃんなんてほっちょくよ!!
ゆっゆっゆっ…ゆ?またぶろっくしゃんだね。なにがはいってるのかな?………ゆえい!
いぢゃいぃぃ……ゆゆぅ!ゆっくちできるきのこしゃん!!む~ちゃむ~ちゃしあわせぇぇぇぇ!!!」
一方、なんとか戻ってしまった体をもう一度キノコで大きくしたまりさは、軽々とその先にある穴も越えて次へと進む。
「このぶろっくさんはなにかなー?ゆえい゛!
ゆぅぅ…もういたいのにもなれたよ!……ゆぅぅぅぅ!!なにあのきらきらさん!とってもきれいだよぉぉぉ!!!
まりさのたからものにするよ!ゆっくりつかまってね!!!ぴょーんぴょーん!!」
進んだ先でまりさがブロックを叩いて出したのは、星型でピカピカ光りながらそこらへんを跳ね回る例のアレである。
当然ビー玉よりも数倍美しいであろうそれに、まりさが目を奪われないはずもない。
「まりさもいっしょにぴょーんぴょーんしてつかえてあげるからほしさんはちょっとまってね!
ぴょーんぴょーん!…ゆっふ、ゆっふ。ぴょーんぴょーん!ぴょーんぴょーん……
どぼじでとまってくれないのぉぉぉ!!?ゆっくりしないでまりさに…あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!
ほしさんがあなにおっこちちゃったよぉぉぉ!!!まってね!まりさはゆっくりあとをおうよ!!
ゆゆっ?おそらをとんでる―――」
と、いうわけで、あれよあれよと言う間にまりさは星型のアレを追いかけて後追い自殺。またやり直しとなった。
・
・
・
MARISA×3
数度の星型捕獲を試みて、その全てが失敗に終わった後。
ゆっくりの動きの鈍さでは無理だという事にようやく気づいたまりさは、諦めてさっさと先に進むことにした。
「もうほししゃんはいいよ!あんにゃゆっくちしちぇにゃいほししゃんなんちぇこっちきゃらねがいしゃげだよ!」
動くゆっくりできないキノコ。飛び越えるだけでも大変な穴。叩くたびに痛いブロック。
数十回の挑戦の末ようやく慣れてきたまりさ(第24子)ではあったが、そんなまりさの前に更なる敵が現れる。
「ゆっせ、ゆっせ。ゆっくちぷれいしゅはまだなにょ?まりしゃしょろしょろちゅかれたよ……
ゆっ!?みどりのかめしゃんがいりゅよ!かめしゃ……にゃんでかめしゃんがあんよだけでたっちぇりゅにょ?」
向こうからやってくるのは、まりさよりも大きな、緑色の甲羅を背負った亀。
この状況で、見たことが無い亀はあからさまに怪しい。まりさのなけなしの警戒心も全開になるというものだ。
「かめしゃんもきっちょあのきのこしゃんみちゃいにゆっくちできないにきまっちぇりゅよ!
でもかめしゃんはおっきいかりゃ……ゆっくちとびこえりゅよ!ぴょーん!」
流石にもう何も考えずに体当たりを仕掛けるほど無謀にもなれないのか、一応飛び越えてやり過ごそうとするまりさ。
非常に賢明な判断ではあるが、なにせ今は子ゆっくり。ほんの少しの油断が命取りになる。
「ゆっくち……ゆっ?おもったよりもとべにゃい……ゆゆぅぅ!!?」ぺほっ
自分の想像以上に跳躍できなかったまりさは、そのまま亀の頭の部分に着地するような形になり、もう一度跳んだ。
ピコピコハンマーを鳴らしたような間抜けな音と共に、今までに無い高さを跳んだまりさは思わず言葉を失くしてしまう。
「ゆっくちっ!!……しゅ…しゅごいよ!まりしゃこんなにおしょらをとんだのははじめてだよぉ!
ゆっゆ~ん♪かめしゃんありがちょ……かめしゃん? いなくなっちぇりゅ……」
見事な着地を決めて大興奮のまりさが振り返ると、そこには緑の甲羅が一つ。
見覚えのあるそれの本来の持ち主はどこにも見当たらない。
「ま、まりしゃ、かめしゃんにかったにょ?
きっとそうなんだにぇ!かっきょいいまりしゃにおしょれをなしちぇにげたんだにぇ!
しょーいうことならしかちゃないよ!しぇんりひんとしちぇこうらしゃんはまりしゃのものにしゅりゅにぇ!
ゆぅぅぅぅ!とってもゆっくちしたたきゃらものができちゃよぉぉ!!こうらしゃん~♪『ポコッ!』ゆっ!!?」
適当な前向き思考で甲羅を我が物にしようとするまりさ。
しかし悲しいかな。今まさに触れようとした瞬間、甲羅はまりさがいた方とは逆へと滑って行ってしまった。
「ゆんやぁぁぁぁぁ!!まっちぇにぇまりしゃのたきゃらものしゃん!!
ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ!?しゅごいよまりしゃのこうらしゃん!
ゆっくちできにゃいきのこしゃんをどんどんやっつけちぇりゅよぉぉぉ!!!
きっといままでいなくなったまりしゃのおねーしゃんたちのしかえしをしちぇくれちぇりゅんだにぇ!!」
離れていく甲羅を必死になって追いかけるまりさが目にしたのは、自分の宝物が動くキノコを跳ね飛ばす姿。
今まで散々苦汁を舐めさせられたそれが次々とやられていく様に、またもや興奮を隠せないまりさ。
しかし、自分のために戦ってくれていると信じきっていたまりさは、その勘違いにより手酷い裏切りを受ける。
「しょれにしちぇもちょっとはやしゅぎりゅよ…もうすこしゆっくちしちぇにぇ……
………ゆゆっ?なんでこうらしゃんが…………っ!!ちょっとまってぎゅぼぉっ!!!
…う゛っ……う゛ぅ゛……どぼじ…ぢぇ…ごうらじゃん……ばでぃぢゃの…だが…ら…も……にょ………ぁ゛……」
追いかけるのに疲れたところに、突如前方にあったブロックにぶつかった甲羅が、ご機嫌なまりさの方へと跳ね返った。
ただでさえ追いつけないほどの速さで滑る甲羅に対して、ただの一ゆっくりであるまりさができることは少ない。
『甲羅が自分に向かってきている』
その事をやっと認識した次の瞬間。
まりさは自分の宝物と思っていた物から強烈な体当たりを受け、あまりの痛みに意識を手放した。
二度と覚めることのない眠りにつく間際、甲羅に向かって何故と問いかけるも答えは返ってこない。
ただまりさから少し離れたところで、己と同じように穴からダイビングを敢行しているのが見えただけだ。
哀れ子まりさは体をめり込ませ、歯は砕け、餡子を吐きながら、
他のまりさたちよりも数段痛々しい姿で自分の宝物と共に青空へと消えていった。
――――――――――
MARISA×3
「ゆふぅ、ゆふぅ…ここからはたさんとおしろさんがみえるよ。
きっとあそこがさがしもとめてたゆっくりぷれいすにちがいないね……
みててねみんな。どすがきっとみんなのぶんまでしあわせーっになってあげるからね!」
数々の苦難を乗り越え、自分の全長の何倍にも積み上げられたブロックをよじ登り、まりさはとうとう辿り着いた。
その風貌には自信が漂っており、自慢の帽子もどこか風格があるように見える。……多分気のせいだろうが。
ともあれ、まりさは多くの犠牲の元にようやくここまで来た。
自分のことをドスと言っているが、体のサイズは普通の成まりさと全く変わらない。
が、ただ違いとして、このまりさは小さな火の玉を吐くことができる。
先ほど見つけた赤いお花さんを食べると、何故か間抜けな音と共に出せるようになったらしく、
「ゆゆぅぅ!!?これは………どすすぱーくだね!!
まりさがどすすぱーくをうてるようななるなんて……
ゆっふっふっふっふ……まりさはどうやらすごいゆっくりになっちゃったようだよ。
これからはまりさはどすまりさだよ!!どすになったからにはもうてきなしだよ!!
かめさんもきのこさんもどんどんやっつけてあげるからね!!つよくってごめんね!!!」
などという思い込みもあって、情けないドススパークしか撃てない自称ドスまりさが誕生したようだ。
とはいえ、いくらショボい火の玉でも、役に立たないかと言われればそうでもない。
まりさが吐く火の玉は、まりさが言うように他のゆっくりできない者に対しては効果が抜群だったようで、
なんと動くキノコも亀も、火の玉一発で次々と舞台から退場していった。
これに味を占めたのは、当の自称ドスまりさだ。
遠くから一方的に攻撃ができるということで、
今までの鬱憤を晴らすように他の奴らをなぎ倒し、破竹の勢いで駒を進めて現在に至る。
「あとはここからとびおりるだけだよ!
……だいじょうぶだよ。ここまできたんだからこれくらいどうってことないよ」
しかし、あと一息といったところで踏ん切りがつかない。
それもそのはず。目的地にたどり着くには、自分の身長の何倍もある高さから飛び降りなければならないのだ。
遠くの、不気味な模様が描かれた旗にしがみつくには、残念ながらまりさの跳躍力では距離が足りない。
他に方法があるわけでもなく、要するに、まりさは腹を括らなければならないのだ。
「ゆぅぅぅ、こわいよぉ……
でも、ここであきらめちゃいままでぎせいになったみんなにもうしわけがたたないよ。
せめてまりさだけでも…ここでゆっくりしないといけないんだよ!!
まりさはゆっくりしたいんだよぉぉ!!ゆわああぁぁぁぁぁぁ!!!」
そして、まりさが跳んだ。
これまでにないほどに勇ましく、この上なく美しい放物線を描いて、跳んだ。
「ゆぅぅぅぅ!!おそらをとんでる―――ゆ゛ん゛っ!!!
………ゆふぅぅぅ。あんよがびりびりするよ………」
結果、まりさは見事に着地した。今度こそ正真正銘辿り着いたのだ。
しかしまりさは大袈裟には喜ばない。あまりの感動を前にして、それどころではないからだ。。
「ここがどすのゆっくりぷれいすなんだね……。
みんな、やったよ。どすはとうとうじぶんだけのゆっくりぷれいすをてにいれたんだよ!
みんなも…どこにいっちゃったのかはどすにはわからないけど、みんなも……
ゆっくりしていってね!!!」
この日一番の挨拶と共に、まりさは誇らしげに自分の物となった城のような建物へと入っていった。
不気味な模様の旗は、まるでまりさに屈したようにスルスルと下に落ち、遠くでは花火が打ち上がっている。
まさに何もかもがまりさを祝福しているように思えて仕方がない。
文字通り、まりさの心は今までのどのまりさよりも晴れ渡り、ゆっくりしていた。
・
・
・
1―2
MARISA×4
「なんなのこれ!ふざけてるの!!?こんなのぜんぜんゆっくりぷれいすじゃないよ!!
どすはあんなにがんばったのに……このおうちつくったのだれなの!ばかなの!?しぬの!?」
一分後。少し前までのゆっくりした様子を欠片も残さず、怒り心頭を発したまりさが建物から出てきた。
「みたかんじりっぱなのに、なかにはいったらはなんにもないってどういうことなの!
おしろはうらからみたらただのはりぼてだし……かんっぜんっにだまされたよ!!
もういいよ!こんなにせものじゃないほんとうのゆっくりぷれいすをみつけてみせるからね!!
……ゆっ?いきどまり?……このどかんさんにはいるの?どこにつながってるんだろ…」
どうやらあれだけ苦労して手に入れたゆっくりプレイスであるお城のような建造物は、偽物だったらしい。
入った途端にまりさを迎えたのは、今までどおりの何もない青空と、途切れた無機質なレンガ仕立てのブロック。
立派に見えた建物は安っぽいハリボテという、明らかに手抜き間丸出しの、むしろ悪意すら感じる一品だったそうな。
怒りで今にも我を忘れそうなまりさは必死にそんな気持ちを押さえて土管に体を捻じ込む。
また、あのゆっくりできない奴らが出たらドススパークで八つ当たりしてやろう、などと思いながら―――
「ゆっ、ゆっ、ゆっ………ゆぅぅぅぅ!!おちるぅぅぅぅ!!
どうなってるの!?これからどすはどうなるの!?どこにいくのぉぉぉぉ!!!?
こわいよぉぉぉぉ!!!だれかたすけてねぇぇぇぇぇぇぶぎゅっ゛!!!」
長距離の落下を経て、着地しきれずに潰れて死んだ。
どうということはない。単に饅頭の体では衝撃に耐えられなかっただけ。
いくら(自称)ドスといえども例外ではなく、吸収し切れなかった負荷が限界を超えて、爆ぜただけの話だ。
そして、立派に成長しきったゆっくりがダメだったのだ。当然これから先は…………
MARISA×3
「おねーしゃんがちんじゃったよぉぉ!!りっぱなどしゅだったのにぃぃぃぃ!!
みちぇちぇにぇ。まりしゃがりっぱにかたきをとりゅからにぇ!!
とちゅげきだよ!!ゆあああぁぁぁぁ……ぁぁあああおしょらをちょんでりゅぅぅぅぅぅぅぅぴゅん゛っ!!!」
MARISA×2
「ゆぅぅぅ……なんだきゃあのどかんしゃんはゆっくちできにゃいよ。
でもこんなゆっくちできないとこりょにはいたくないし………
ちかたないよ。まりしゃいくよ!!きっとほかのおねーしゃんはゆっくちしてなかったからちんだんだよ!
こんなにゆっくちしてりゅまりしゃならきっとだいじょーぶだよ!そうにちがいないよ!! ゆっゆっおー!!
どかんしゃん!ゆっくちかくごしてにぇ!ゆおおおおぉぉぉおお゛お゛お゛お゛!や、や、やべぢぇぶぅ゛っ!!!」
MARISA×1
「ゆああぁぁ!!!いやぢゃいやぢゃいやぢゃ!!どかんしゃんはやぢゃ!!
まりしゃまぢゃちにたくない!まぢゃじぇんじぇんゆっくちしてない!!
まりしゃここでいいきゃりゃ…はりぼてしゃんでもゆっくちできりゅかりゃ…だかりゃ……
ゆんやぁぁぁぁぁ!!どぼぢぢぇあんよしゃんかっちぇにうごくにょぉぉぉぉ!!?
だれきゃだじゅげぢぇぐだぢゃい!!まりしゃまぢゃいきちぇたいんでしゅ!!
きのこしゃん!かめしゃん!ほししゃんんん!!!だれきゃ!!だれきゃ!!
だれきゃああああぁぁぁ………ぁぁぁぁああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ゆっぐぢゃん゛!!!!」
生き残れるゆっくりなど、いるはずがない。
残ったのは、土管から落ちて来た先に小さく積み重なった饅頭の層と、周囲に散らばった大きさの違う四つの帽子だけ。
まりさたちのゆっくりプレイスを探す冒険は、終わった。
GAME OVER
――――――――――
「なんだこりゃ……」
とりあえずゲームに一段落つけた俺は呆然としながら、
目の前の真っ暗な画面に白抜きで浮かぶ『GAME OVER』の文字を見つめていた。
「どうだった?ウチで作ったスーパーまりさブラザーズ……の、体験版。だから最初だけね」
「どうだったって…
あれのパクリだとか云々は置いといて、操作性無茶苦茶だし、たまに勝手に動くし、
お手本プレイとかいって出てきたれいむが勝手に死んだのとか意味わかんねーし、
そもそもゆっくりの死に様とか挙動とかだけがリアルでなんか腹立つし…つまりクソゲーじゃね?これ」
「あー、大丈夫。それ全部仕様だから」
「なん・・・だと・・・?」
「まあそうは言っても、これから色々調整加えていくからそう酷いものにはならないよ。ご苦労様。
君には犠牲になってもらったよ。これから作られるであろうマゾゲーの犠牲にね・・・」
(・・・つまりどういうことなんだ?)
なんだか嫌な笑い方をしている友人を余所に俺は、また画面の中でデモプレイとして動いているまりさを見る。
(よく出来てはいるんだけどな……逆にここまでゆっくりだけヌルヌル動くと気持ち悪い)
デモプレイでも健闘の甲斐なく亀にやられるまりさを見て、心底残念に思いながらため息を一つ吐いた。
スーパーまりさブラザーズ。
某世界一有名な配管工を主役にしたアクションゲームの一作目…のパクリ。
その代わりにゆっくりが主役の何もかもが胡散臭いそのゲームが、そう遠くない未来に話題となることを。
普通の人々には『良く出来たマゾゲー』として。
虐待派の者には『ゆっくりがリアルに死ぬ姿がむしろご褒美な鬼畜ゲー』として。
そしてその他の人たちにはクソゲーとして、
世の注目を集め、色んな意味で評判を掻っ攫っていくことを二人はまだ知らない……
・あとがき
タイトルがこの話のオチだという事に気づいた方は、いったい何人いるんでしょうか。
ちなみに、正しくはシスターズじゃねーの?とかいったツッコミにはお答えしません。見逃してください。
では最後までお読み頂き、ありがとうございました!