ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2438 MOON
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ankoss
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『MOON』 20KB
いじめ 思いやり 愛情 不運 差別・格差 駆除 子ゆ 自然界 現代 独自設定 うんしー ありすと街ゆ物は相性抜群と思います
「MOON」
羽付きあき
・ゆっくり視点です
・善良なゆっくりがひどい目に会いますご注意を
・理不尽物テイスト
・いくつかの独自設定を入れておりますご注意を
冷たい風が街に吹きすさぶ。
灰色のビルの狭間にポツンと孤島の様に浮かぶ空き地。ガラクタが雑多に積まれているその場所に、ゆっくり達はいた。
秋も深まり冬へとその余っそ意を変えていく最中、そこに取り残された様にそのゆっくり達はいた。
「ゆゆ!みゃみゃぁぁ・・・!きょうはしゃむいわぁぁ・・・!」
「ゆぅぅ~・・・!まりしゃかちかちになりしょうぢゃよぉぉ・・・!」
・・・ソフトボールサイズ程の子まりさと子ありすがカタカタと立てかけられる様に置かれた段ボール箱の中で震えている。
風貌は街ゆっくりその物と言った感じだ。
全体的に小汚く、飾りも殆ど手入れされてないのかボロボロである。
ダンボール箱の中央にいる、バスケットボール程のありすが下に敷かれた最早雑巾かタオルかも判断がつかぬほどに擦り切れ、薄汚れた布切れを自身の体からずらし、子ゆっくり達に譲る様にして巻きつかせる。
「ゆ!おちびちゃんたち!ありすにもっとくっつくのよ!」
その言葉と共に、子ゆっくり達がありすにすーりすーりを始める。
生傷だらけで碌に手入れもしていない薄汚れた小麦粉の皮同士をくっつけ、僅かな暖を取る。
・・・だが子ゆっくり達には十分すぎる安らぎであったようだ。
「みゃみゃ、ちょっちぇもあっちゃかいわ!しゅーりしゅーり!」
「まりしゃも!しゅーりしゅーり!」
暖かい光景だろうがはたから見れば小汚い街ゆっくりがダンボール箱にすっぽりと挟まってウネウネと動いているようにしか見えない。
このゆっくり達がほんの少し前まで金バッジの飼いゆっくりであった事など、誰が信じるであろうか。
「ゆ!みゃみゃ!ありしゅみゃみゃのおうちゃしゃんをききちゃいわ!」
「まりしゃも!まりしゃもききちゃいよ!」
・・・本来ならば暖かなふかふかの「もうふさん」に包まれ、たくさんの「あまあま」やゆっくり用の玩具に囲まれ、「とかいは」で「ゆっくり」とした日々を過ごすはずであっただろう子ゆっくり達。
だが、今は違う。
「ゆゆ!わかっちゃわ!ゆ~♪ゆゆ~♪とか~い~は~♪」
ここには寒空と
「ゆゆ~♪ちょかいは~♪ちょかいは~♪」
「ゆっきゅり~♪まりしゃはゆっきゅり~して~りゅよ~♪」
薄汚いゴミやガラクタと
「お~ちび~ちゃ~ん~たちも~とかいは~♪あしたも~とっても~とかいは~♪」
薄汚いゆっくりがたった三つあるだけだ。
「「「とかいは~♪」」」
寒空にありす一家の歌声が響いた。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
ボロボロで擦り切れかけたダンボール箱。
ここが現在ありす一家達の「戻るべき場所」である。
・・・捨てられてから、ありす一家は戻るべき場所を失い、街を彷徨い続けた。
溢れるほどにあった、あまあまなんてどこにも無い。
腐りかけた生ごみを漁り、泥水を啜り、汚い布切れに身を寄せる。
「靴」もゲスゆっくりたちに取られた。
暖かな部屋などない、身を切る様な寒さと、雨におびえ、夜は小麦粉の体を寄せ合って寝た。
戻るべき場所も無いまま彷徨い続ける。ありす一家は何度眠れぬ夜を過ごした事だろう。
・・・だが今は違う。
今は小さくても、汚くても、戻るべき場所がある。
金バッジの頃とは雲泥の差だが、暖かな日々を手に入れた。
ありす一家は、幸せだった。
それが吹けば飛ぶような薄く、軽いものであっても、無くなるまでは決して気付かない。
人影が、ありす一家の「おうち」を覆った。
男が手を伸ばす、眠気眼で目を閉じていたありすの砂糖細工の髪をひっつかみ、乱暴に引っ張り出した。
「ゆ”っ!?」
ありすが驚いて周りを見渡した瞬間、ありすの目の前に、大きな固まりが飛んできて、視界を覆った。
「ゆぐぅぅっ!!」
衝撃。一瞬上下左右が分からなくなるほどの衝撃の跡に、しびれる様な痛みが小麦粉の皮を覆う。
「ゆぐっ!ゆが・・・!」
口からカスタードクリームが飛び散った。
砂糖細工の歯の根元が痛い。視界には、薄茶色に変色した砂糖細工の歯がカスタードクリームと共に宙を舞っていた。
ぐーねぐーねと小麦粉の皮をよじるありす。
また、衝撃が襲った。
「ゆぎっ!あぐっ!あ”あ”あ”!いだいわあ”あ”あ”あ”っ!!」
二発の衝撃により声を上げてさらに身をよじるありす。
背部が地面についた。街とは非対称な澄み切った青空が、ありすの視界いっぱいに広がる。
今度は黒い影が、ありすの小麦粉の皮下部に「踏みつけられる」
ドコッ
「・・・っ”!!っげぇ”ぇ”ぇ”っ”!!ゆ”ぐぉ”ぉ”・・・!」
ゴボリとカスタードクリームを吐き出し、なすび型に体を大きく変えて底部をバタバタと動かしながら苦しむ。
一撃だけでは終わらなかった。
二度、三度、四度、五度、六度、七度、八度・・・数え切れないほどありすは底部を踏み蹴られる。
「あぐっ!ゆぎっ!ゆ”ぐぉ”ぇ”ぇ”っ!やべっ!やべでぇぇお”ぅ”ぇ”っ!?あでぃず・・・!どがい・・・ばぁぁっ!」
当初は身をよじって苦しむありすであったが、徐々にその動きは鈍くなり、ピクピクと震えるだけとなった。
口の端から砂糖水の泡とカスタードクリームをダラダラと流しながら、半分寒天の両目が白目をむきかけて、あにゃるからうんうんが勢いよく流れ出る。
ブチッビチッ!ブッ!ブスーッ!ブヂュッ!ブヂュブヂュブボッ!
ブラックアウトしかける意識の直前、ありすはちらりと「おうち」を見る。
そこには子ゆっくり達の影はいなかった。
「(おぢびぢゃん・・・!がぐれでるのねっ・・・!ま”ま”がびぎづげるがらっ・・・!がんばっでがぐれででねっ・・・!)」
辺りには隠れる事のできる場所などいくらでもある。子ゆっくり達はありすがやられている隙にどこかへと隠れてくれたようだ。
男はあたりをキョロキョロと見回した後、ありす達の「おうち」に足を向ける。
そして、ありす達のかけがえのない戻るべき場所を、踏みつけ蹴飛ばし初めた。
「やべ・・・でぇぇ・・・!あでぃずど・・・!おぢ・・・びぢゃ・・・!の・・・どが・・・い・・・ば・・・な・・・おうぢ・・・を・・・お”う”っ!」
這いつくばってずーりずーりと動こうとした矢先、背部に男の踏みつけが決まった。
ゴボリとカスタードクリームが吐き出され、ありすは寒天の白目をむいて悶絶する
「・・・!!・・・!」
みんなで頑張って集めた「とかいは」なおうちが崩れていく。
重しの小石が、子まりさが頑張って集めた重しの小石が吹っ飛んだ。
子ありすが見つけた「とかいはなふとんさん」が泥にまみれてグチャグチャになっていく。
ありすが集めた「おうち」その物の部分が、拉げ、グシャグシャになっていく。
戻るべき場所が、また消えていく。
ありすは、自身の「おうち」が完全に壊れたのを見た瞬間に、意識を失った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ゆ"・・・!ゆ"・・・!どぼじ・・・で・・・」
ありすがグシャグシャに潰れた「おうち」を見下ろしながら寒天の両目から涙を流す。
痛む体を引きずり、舌でペタペタと「おうち」の残骸を拾い集める。
「まりしゃちゃちのおうちが・・・ゆぐっ・・・!ゆぐっ・・・!ゆ”ぇ”ぇ”ぇ”え”え”え”え”え”え”ん”っ”!!ゆ”びぇ”ぇ”ぇ”え”え”え”え”え”え”ん”!!」
子まりさが口をあんぐりと開けて泣き始める。
「みゃみゃ・・・みゃみゃぁぁ・・・!」
子ありすが心配そうにしきりにありすの体にぺーろぺーろを繰り返していた。
「ゆ”・・・!ゆ"・・・!ま”ま”は・・・ごれぐらい・・・なんども・・・なんどもない・・・わ・・・ゆぐっ!ゆげぼっ!ゆごぼっ!」
気丈に振舞おうとするも、口からカスタードクリームを少量吐き出しせき込むありす。
大丈夫なはずがない。あれだけダメージを受けたのだ。
だが、それ以上に「おうち」が無くなった事の方がショックだったようである。
おりしも、空は曇りはじめ、雨でも降りそうな程に崩れていた。
「まりしゃちゃち・・・これきゃらどうすればいいにょ・・・?どこであめさんをよければいいの・・・?」
「ゆぅぅ・・・みゃみゃ・・・!しゃむい・・・しゃむいわぁぁ・・・!」
強く吹き付けた寒風に身を震わせる子ゆっくり達。
「おう・・・ぢ・・・は・・・また・・・づぐり・・・なおぜば・・・いいわ・・・!ぞれより・・・ま”ま”にぐっづぐの・・・よ・・・!がぜをびいぢゃ・・・!いげない・・・わ・・・!」
曇天の下、壊れた「おうち」の前で身を寄せ合うありす一家。
今はただ、温もりが恋しかった。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「ゆ・・・!ゆ・・・!おちびちゃん、ゆっくりでいいからすすむのよ!」
「ゆっくりわかっちゃよ!ゆ!ゆ!」
「みゃみゃ!きょうはいいちぇんきにぇ!ちょっちぇもちょかいでいいこちょがおきそうぢゃわ!」
青空の元、ありす一家が街を進んでいた。
あれからすでに数日がたったが、一向に食料も、戻るべき場所も見つかっていなかった。
街を無軌道に彷徨う。そう、捨てられた当初と同じである。
ありすの気丈な振る舞いで、何とか明るく保ってはいるが、内心はかなり心細い事だろう。
路地裏を、右に左にと曲がっていく。
跳ねる事はしない。体力を温存するための街ゆっくりの習性である。
ずーりずーりと動くさまは、まるで大きな蛞蝓の行進だ。
「ゆ!ひとまずここでやすみましょう!」
「ゆゆ!ゆっきゅりわかっちゃよ!」
「ありしゅごはんしゃんをさがしちぇきゅりゅわ!」
路地裏の袋小路でひとまず息をつけるありす一家。
子ありすが食料を探そうと動いたところで、ありすが声を上げる。
「ゆゆ!おちびちゃん!ばらばらにうごくのはあぶないわ!ままといっしょについてくるのよ!」
「そうぢゃよ!みんなぢぇいっしょにごはんしゃんをさがしょうね!」
「ゆゆ・・・ゆっきゅりわかっちゃわ!」
かくして、一旦休息場所を決め、再びずーりずーりと移動を開始するありす一家。
はたして食料は取れるのだろうか?
「ゆゆーん!みゃみゃ!みちぇ!とっちぇもときゃいはにゃぱんさんをみちゅけちゃわ!」
「ゆゆ!ほんちょうぢゃよ!」
「すごいわ!おちびちゃん!とってもとかいはね!」
・・・数時間後、子ありすが甘い生クリームが挟まったパンを見つけた。
ありすと子まりさは、なにも見つけられなかったが・・・
かくあれ、子ありすがこれほどの「ごちそう」を見つけられたのは奇跡に等しいだろう。
「おおきいきゃらみんなじぇわけりゃれりゅわ!」
「おいしそうじゃよぉぉ・・・!」
「ゆゆ!ゆっくりありがとうね!おちびちゃん!」
パンを三つに分けてかぶりつく。
甘い味が口いっぱいに広がった。
こんな「あまあま」を食べるのは久方ぶりであろうか?ありす一家はそう思っていた。
「「「む~しゃむ~しゃ!とかいはー!」」」
路地裏に、ありす一家の喜びの声が上がる。
だが、ありす一家は気づいていなかった。
そのパンには僅かに「カビ」が生えていた事を
・・・・・・
・・・
「ゆ!ゆ!まりしゃすっぎょいげんきになっちゃよ!」
「ゆゆーん!ありしゅもちょっちぇもちょかいはぢゃわ!」
先ほどとは打って変わってハイペースにずーりずーりで進む子ゆっくり達。
困り顔でありすが諭す。
「ゆゆ!おちびちゃんたち!そんなにあわてなくてもいいわ!ゆっくりいきましょう!」
だが、ありすはほとほと嬉しそうであった。
今日はもっと「とかいは」な事がありそうだ。
戻るべき場所が、また見つかるかもしれない。
淡い期待に胸を寄せるありすと子ゆっくり達。
だが、ありす一家を待っていたのは幸福ではなく、さらなる不幸だった。
「ゆ・・・ゆぐっ・・・ゆ”ぅ”ぅ”・・・!」
「ゆぅぅ!?まりしゃ!?どうしちゃの!?」
「おちびちゃん!?」
それは突然だった。
それまで元気にずーりずーりと動いていた子まりさがポテリと横に倒れると、突如として苦悶の表情を浮かべ、小麦粉の体をぐーねぐーねと動かし始める。
「いぢゃ・・・い・・・よぉぉ・・・!ぽん・・・ぽん・・・が・・・!いぢゃ・・・いいい・・・!」
「おちびちゃん!ゆっくりよくなるのよ!ぺーろぺーろ!」
「みゃみゃ!まりしゃどうしちゃったにょ!?すっぎょいくるししょうぢゃわ!」
子まりさは苦痛に表情を歪め、玉の様な水飴の汗が小麦粉の体から噴き出し始めていた。
原因はわからない。ありすはひたすら、ぺーろぺーろをするしか方法が無かった。いや、それしか知らなかった。
「わ、わからないわ・・・!とにかくしばらくやすめるところでゆっくりしましょう・・・!」
ありすはそう子ありすに言うと、舌で子まりさを自身の頭の上に載せて、ずーりずーりとどこか一息つける場所を探す。
子ありすも心配そうに子まりさを見上げながら、ついて行った。
「ゆ”・・・!ゆ”・・・!ゆぐっ・・・ゆ”ぅ”ぅ”ぅ”・・・!」
「おちびちゃん!うんうんさんをとめるのよ!これいじょううんうんさんがでたらゆっくりできなくなっちゃうわ!」
「まりしゃぁぁ!ちょかいは!ちょかいはぁぁ!」
子まりさがぐーねぐーねと小麦粉の体を動かしながら、あにゃるから大量のうんうんを排泄する。
ありすと子ありすはどうする事も出来ずに、しきりに呼びかけを行うだけだった。
「ゆはっ・・・!ゆはっ・・・!ぐるじ・・・ぃ・・・よぉぉ・・・おきゃあ・・・しゃぁぁ・・・ん・・・!ゆぶっ!ゆ”っ!ゆ”げぇ”ぇ”っ!げぇ”ぇ”ぇ”ぇ”え”え”え”え”え”っ!」
「おぢびぢゃん!どがいばっ!どがいばあああああああ!」
「まりしゃあああ!ゆびぇええええん!」
うんうんが止まった後は小刻みに餡子を吐き出し、何度もえずきながら、苦しみながら嘔吐を繰り返す。
少なくとも、ありすにはこれを止める方法など知る術も無かった。
原因はあのパンである。
端がほんの少しカビていたのだ。
それを三つに分けた時点で、唯一カビがついているパンの切れを子まりさが食べてしまった。
ゆっくりの「カビ」には二種類ある。
まず第一に小麦粉の皮・・・つまり外側にカビがつく場合。
これはゆっくりにでも治せるものだ。カビた小麦粉の皮を千切れば良い。
問題は、この子まりさがかかっている内側・・・つまり中の餡子のカビが付着した場合だ。
これはもうどうにもならない。餡子を吐き出し、うんうんを排出すると言った事を何度も繰り返し、それが幾度も怒り続ける。
やがて中枢餡にカビが回ると、様々な問題が起きてくる。
この子まりさは元気に動き回ってしまっていた、それが結果的に餡子内の温度を上昇させ、カビを素早く繁殖させてしまったのだ。
その証拠に、苦しむ子まりさの小麦粉の皮の所々に緑色のカビがいくつも点々と生え始めていた。
元々、子ゆっくりは体積が小さく、その分カビの回りが早い。
・・・だが問題はここからである。
中枢餡にまで到達する間はかなり長く、最大でも数週間はかかる。
その間、子まりさは激痛を味わい続けるのだ。
「ゆはっ・・・!ゆはっ・・・!おぎゃあ・・・じゃ・・・まり・・・しゃ・・・きゅるし・・・い・・・よぉぉ・・・」
「おぢびぢゃん!ごべんね!いながぼのなままでごべんねぇぇ・・・!」
「まりしゃ!ゆっきゅりよくにゃるにょよ・・・!」
ありすは近くで見つけた小さなビニール袋に子まりさを入れると、口で持って引っ張る。
子ありすは袋の後ろを小さな小麦粉の体で押し上げて、手伝っていた。
「ゆ・・・!ゆ・・・!かならずままがなんとかするからねっ!それまでっ!それまでがまんするのよ・・・!」
ありすの言葉を考えれば、何とかなる方法は幾つかあるのだろう。
元金バッジの知恵を働かせてだろうか?
しかしそれが役に立つとは決して限らなかった。
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・・・あれから、ありす一家は一週間程街を転々と移動した。
ありすの「なんとかする」と言う方法はみのる事はなかった。
ありすはあれから、「地域ゆっくり」との接触を図った。
「バッジ付き」になれば、治療が受けられると知っていたからだ。
元々は金バッジなのだ。その矜持がありすを地域ゆっくりになると言う行動に結びついた。
だが、ありすは地域ゆっくりになれなかった。
自分が金バッジ等と言う証拠はどこにあるのか?その一点に話は尽きる。
ありすは証明する手立てを持たなかった。
その時点でありすはもう二度と、地域ゆっくりになるチャンスを永久に失うこととなる。
ただの「うそつきゆっくり」それが地域ゆっくりから告げられた言葉だった。
・・・ありすに悲しんでいる暇はなかった。
子まりさのカビはさらに進行し、もう既に小麦粉の皮は緑色に変色していた。
子ありすも、空腹により、限界が近付いている。
おりしも季節は、冬へと入っていった。
続々と越冬の準備に入るゆっくり達を尻目に、ありす一家は疲弊していく。
ありすに残された手段は、一つしかなかった。
「あまあまをとる」・・・それだけである。
「ゆ・・・!ゆ・・・!」
急ぎ足でずーりずーりと移動するありす。その口には、封が切られただけで中身が丸々と残った板チョコレートが咥えられていた。
・・・餌場荒らしである。
ありすは、あまあまが一番多くある餌場に忍び込み、いくつかを持ってきたのだ。
当然、餌場をテリトリーとするゆっくり達に見つかっているだろう。
戻るべき場所すらなくなったありすは、さらに追われる立場へとなっていったのである。
「いたんだぜっ!こっちだぜっ!」
一体のまりさがありすを見つけて叫ぶ。
他のゆっくり達の跳ねる音が聞こえてきた。
・・・念のため、ありす一体のみである。
子ありすと子まりさは、安全な場所において、たった一体で何十体もの街ゆっくりがいるこの餌場に忍び込んでいる訳である。
おりしもありすが逃げている場所はせまい路地裏、挟み撃ちをされれば一発の終わりだ。
しかしありすも必死に逃げる。
後わずか数十メートルで路地裏を抜ける。そうすればもう安全だ。
「おちびちゃん・・・!まっててね!ゆふっ・・・!ゆふっ・・・!ゆ”っ」
突如、ありすがくぐもった声を上げる。
寒天の目玉だけを動かし、自身の右側面部を見ると、深々と木の枝が突き刺さっていた。
・・・隠れて待ち伏せしていたれいむに突き刺されたのである。
「ゆ!ゆ!どろぼうさんはゆるさないよ!」
「ゆぐっ・・・!ゆぐっ!ゆ”ぅ”ぅ”ぁ”ぁ”ぁ”あ”あ”あ”あ”!!」
「ゆぎゃあ!!」
凄まじい勢いで体をぐーねぐーねと動かし、れいむを弾き飛ばすありす。
ボキリと木の枝が折れ、突き刺さった木の枝もお構いなしにずーりずーりで通りを目指す。
寒天の両目を血走らせ「とかいは」な様子など微塵も感じさせない程の歯茎をむき出し、砂糖水の汗を噴き出しながらずーりずーりと動く。
それらもすべて、子ゆっくりの為になせる技であった
一瞬、動きをストップさせたのが仇となる。
背部に衝撃が走った。
「ゆぎぃぃっ!!」
「ゆふー!ゆふー!ごのげずゆっぐりがぁぁあ!よぐもでいぶをばじぎどばじだなあああああ!ゆっぐりじぬんだぜえええええ!」
追いついたまりさに木の枝を再び突き立てられる。
深々と突き刺さった木の枝は容易に抜けず、ありすの動きが止まった。
「ゆぐぅ”ぅ”あ”あ”あ”っ!ばなぜいながぼのっ!ばなぜえ”え”え”え”!」
「ゆぅぅ!!みんな!このありすをかこむんだぜ!」
追いついた街ゆっくり達にあっという間に囲まれるありす。
砂糖細工の髪の毛をかまれて、強引に動きを止められ、路地裏側へと引きずられる。
しかしそれでも、ありすは砂糖細工の髪を振り乱し、必死に動いて抵抗した。
「ゆぎぇぇっ!ゆぐぉ”ぉ”っ”!あ”ぎゃあ”あ”っ!」
小石を舌に持ったゆっくり達に何度も殴りまわされた。
木の枝で小麦粉の皮と言う皮を突き刺された。
カスタードクリームを飛び散らせ、それでもなおありすは身をよじらせ抵抗する。
小麦粉の皮が裂け、カスタードクリームが辺りに飛び散った。
砂糖細工の歯が砕け、小麦粉の口腔に突き刺さる。
「お”ぢびぢゃ”ん”っ”!お”ぢびぢゃ”ん”っ”!お”ぢびぢゃ”ん”っ”!お”ぢびぢゃ”ん”っ”!お”ぢびぢゃ”あ”あ”あ”あ”ん”!」
何度もありすは叫ぶ。
その鬼気迫る表情に街ゆっくり達は一瞬たじろぐが、すぐさまありすを殴りつけ、木の枝で突き刺す。
「ゆ!おめめだぜ!おめめをねらうんだぜっ!」
砂糖細工の髪を噛まれ、引き上げられるありす。
目の前には、木の枝がその名の通り「目の前」へと進んでいた。
「ザクッ」と音がする。
「ゆ”っ」
・・・ありすの動きが止まる。
深々と突き刺さった二本の木の枝が、グリグリと動き始めていた。
「グチャグチャ」と音がした後、「ブツッ」とも「ブチッ」とも聞こえる音が響く。
「・・・!!ぎゃ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ!!!!!!!!」
ゆっくりとは思えない悲鳴と共に、寒天の両目がぶーらぶーらと垂れさがる。
ありすの叫び声が路地裏に響いた。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
・・・街の片隅にある公園の茂み。そこに子ありすと子まりさはいた。
「ゅ”・・・ゅ"・・・」
既に子まりさは丸っこい形すら維持できずに、ドロドロに溶け始めていた。
「ゆひゅー・・・ゆひゅー・・・おなかすいちゃわぁぁ・・・」
子ありすの方も、定まらぬ目線で空を見上げている。
・・・この茂みを覆う草は、固すぎる上に苦い。ゆっくりにとってはとても食べられる代物ではなった。
いや、食べれば消化不良でうんうんを垂れ流し、苦みで餡子を吐き出すことになるので実質子ありすが食べられるもの等どこにも存在し得なかった。
ガサガサと茂みが動く。
「・・・みゃ・・・みゃ?」
子ありすが寒天の両目だけを動かして目をやる。
「それ」を見た途端、子ありすは息を詰まらせた。
「ゆ”ひ”ゅ”ー・・・!ゆ”ひ”ゅ”ー・・・!お”・・・ぢび・・・ぢゃ・・・」
「それ」とはありすであった。
寒天の両目がぶーらぶーらと垂れさがり、カスタードクリームを小麦粉の体と言うからだから吹き流し、砂糖細工の髪の毛もところどころむしられて、凸凹に膨らんだ下膨れの顔はどこが後ろで何処が前かすらわからなくなるほどであった。
「みゃみゃ・・・!みゃみゃぁぁ・・・!」
ようやくそれがありすだとわかった子ありすが、砂糖水の涙を流しながら、必死にすーりすーりを繰り返す。
ありすは、かすれた声でありすに語りかけた。
「ごべ・・・ん”・・・ね”・・・あ・・・ば・・・あ・・・ば・・・ざん・・・どご・・・がに・・・おどじ・・・ぢゃっだ・・・わ・・・」
「みゃみゃ・・・!ありしゅはおなかすいちぇにゃいわ・・・!だきゃら・・・!ときゃいは!ときゃいはぁぁ・・・!」
・・・目の前がかすむほどに食料を取っていない子ありすが必死に取り繕うようにすーりすーりを繰り返す。
ありすは、臭いと記憶だけを頼りに、この公園まで戻ってきていた。
既にゆっくりなのかすらも危うい程にダメージを受けた体では、もう長くはない。それは承知している様だった。
「おなが・・・いっば・・・い・・・あ・・・ば・・・あば・・・ざん・・・を・・・だべざぜで・・・あげられ・・・なぐ・・・で・・・ごべ・・・んね・・・ざむ・・・い・・・おも・・・い・・・をざぜ・・・で・・・ごべん・・・ね・・・」
「ありしゅは・・・!ありしゅはおこっちぇにゃいわ・・・!だきゃら・・・!げんきになっちぇっ・・・!げんきになっちぇぇぇ・・・!」
子ありすの呼びかけに、口の端が緩む。
「ゆぐぼっ!ゆげぼっ!ゆごぼっ!・・・ゆ"・・・おぢ・・・び・・・ぢゃ・・・だぢ・・・どが・・・い・・・ば・・・」
微笑んでそれだけを呟くと、ありすは前に突っ伏して、物言わぬ饅頭へとなり果てた。
・・・ビニール袋の中の子まりさも、既に動いてはいない。
「みゃみゃ・・・!みゃみゃぁぁぁぁ・・・!」
残った子ありすは、ただひたすら泣きながらすーりすーりを続ける。
やがて、日が暮れかける頃、子ありすの声が止んだ。
「ひゅー・・・ひゅー・・・みゃ・・・みゃ・・・まり・・・しゃ・・・」
水分が抜けかけているのか、子ありすの小麦粉の皮はパサパサになり、ひび割れ始めている。
残った力を振り絞り、最後にありすだった饅頭にすーりすーりをする。
まるで地面に底部がからみついているかのように、足取りは重い。
すーりすーりを最後にし終えると、そのままもたれかかるようにして、突っ伏す。
「ず・・・っ・・・と・・・み・・・ん・・・にゃ・・・いっ・・・しょ・・・に・・・ちょ・・・か・・・い・・・は・・・」
それっきり子ありすは動かなくなった。
・・・このありす達に、戻るべき場所は見つからないかのように思えた。
しかし、ありすと、子まりさ、そして子ありす。この三体が一緒にいるその場所が、本当に戻るべき場所だったのかもしれない。
ようやく戻るべき場所を見つけたありす一家は、眠る様にして物言わぬ饅頭になった。
真っ暗な夜空にぽっかりと浮かんだ月の月明かりが、ありす一家の居場所を照らし出している―――
いじめ 思いやり 愛情 不運 差別・格差 駆除 子ゆ 自然界 現代 独自設定 うんしー ありすと街ゆ物は相性抜群と思います
「MOON」
羽付きあき
・ゆっくり視点です
・善良なゆっくりがひどい目に会いますご注意を
・理不尽物テイスト
・いくつかの独自設定を入れておりますご注意を
冷たい風が街に吹きすさぶ。
灰色のビルの狭間にポツンと孤島の様に浮かぶ空き地。ガラクタが雑多に積まれているその場所に、ゆっくり達はいた。
秋も深まり冬へとその余っそ意を変えていく最中、そこに取り残された様にそのゆっくり達はいた。
「ゆゆ!みゃみゃぁぁ・・・!きょうはしゃむいわぁぁ・・・!」
「ゆぅぅ~・・・!まりしゃかちかちになりしょうぢゃよぉぉ・・・!」
・・・ソフトボールサイズ程の子まりさと子ありすがカタカタと立てかけられる様に置かれた段ボール箱の中で震えている。
風貌は街ゆっくりその物と言った感じだ。
全体的に小汚く、飾りも殆ど手入れされてないのかボロボロである。
ダンボール箱の中央にいる、バスケットボール程のありすが下に敷かれた最早雑巾かタオルかも判断がつかぬほどに擦り切れ、薄汚れた布切れを自身の体からずらし、子ゆっくり達に譲る様にして巻きつかせる。
「ゆ!おちびちゃんたち!ありすにもっとくっつくのよ!」
その言葉と共に、子ゆっくり達がありすにすーりすーりを始める。
生傷だらけで碌に手入れもしていない薄汚れた小麦粉の皮同士をくっつけ、僅かな暖を取る。
・・・だが子ゆっくり達には十分すぎる安らぎであったようだ。
「みゃみゃ、ちょっちぇもあっちゃかいわ!しゅーりしゅーり!」
「まりしゃも!しゅーりしゅーり!」
暖かい光景だろうがはたから見れば小汚い街ゆっくりがダンボール箱にすっぽりと挟まってウネウネと動いているようにしか見えない。
このゆっくり達がほんの少し前まで金バッジの飼いゆっくりであった事など、誰が信じるであろうか。
「ゆ!みゃみゃ!ありしゅみゃみゃのおうちゃしゃんをききちゃいわ!」
「まりしゃも!まりしゃもききちゃいよ!」
・・・本来ならば暖かなふかふかの「もうふさん」に包まれ、たくさんの「あまあま」やゆっくり用の玩具に囲まれ、「とかいは」で「ゆっくり」とした日々を過ごすはずであっただろう子ゆっくり達。
だが、今は違う。
「ゆゆ!わかっちゃわ!ゆ~♪ゆゆ~♪とか~い~は~♪」
ここには寒空と
「ゆゆ~♪ちょかいは~♪ちょかいは~♪」
「ゆっきゅり~♪まりしゃはゆっきゅり~して~りゅよ~♪」
薄汚いゴミやガラクタと
「お~ちび~ちゃ~ん~たちも~とかいは~♪あしたも~とっても~とかいは~♪」
薄汚いゆっくりがたった三つあるだけだ。
「「「とかいは~♪」」」
寒空にありす一家の歌声が響いた。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
ボロボロで擦り切れかけたダンボール箱。
ここが現在ありす一家達の「戻るべき場所」である。
・・・捨てられてから、ありす一家は戻るべき場所を失い、街を彷徨い続けた。
溢れるほどにあった、あまあまなんてどこにも無い。
腐りかけた生ごみを漁り、泥水を啜り、汚い布切れに身を寄せる。
「靴」もゲスゆっくりたちに取られた。
暖かな部屋などない、身を切る様な寒さと、雨におびえ、夜は小麦粉の体を寄せ合って寝た。
戻るべき場所も無いまま彷徨い続ける。ありす一家は何度眠れぬ夜を過ごした事だろう。
・・・だが今は違う。
今は小さくても、汚くても、戻るべき場所がある。
金バッジの頃とは雲泥の差だが、暖かな日々を手に入れた。
ありす一家は、幸せだった。
それが吹けば飛ぶような薄く、軽いものであっても、無くなるまでは決して気付かない。
人影が、ありす一家の「おうち」を覆った。
男が手を伸ばす、眠気眼で目を閉じていたありすの砂糖細工の髪をひっつかみ、乱暴に引っ張り出した。
「ゆ”っ!?」
ありすが驚いて周りを見渡した瞬間、ありすの目の前に、大きな固まりが飛んできて、視界を覆った。
「ゆぐぅぅっ!!」
衝撃。一瞬上下左右が分からなくなるほどの衝撃の跡に、しびれる様な痛みが小麦粉の皮を覆う。
「ゆぐっ!ゆが・・・!」
口からカスタードクリームが飛び散った。
砂糖細工の歯の根元が痛い。視界には、薄茶色に変色した砂糖細工の歯がカスタードクリームと共に宙を舞っていた。
ぐーねぐーねと小麦粉の皮をよじるありす。
また、衝撃が襲った。
「ゆぎっ!あぐっ!あ”あ”あ”!いだいわあ”あ”あ”あ”っ!!」
二発の衝撃により声を上げてさらに身をよじるありす。
背部が地面についた。街とは非対称な澄み切った青空が、ありすの視界いっぱいに広がる。
今度は黒い影が、ありすの小麦粉の皮下部に「踏みつけられる」
ドコッ
「・・・っ”!!っげぇ”ぇ”ぇ”っ”!!ゆ”ぐぉ”ぉ”・・・!」
ゴボリとカスタードクリームを吐き出し、なすび型に体を大きく変えて底部をバタバタと動かしながら苦しむ。
一撃だけでは終わらなかった。
二度、三度、四度、五度、六度、七度、八度・・・数え切れないほどありすは底部を踏み蹴られる。
「あぐっ!ゆぎっ!ゆ”ぐぉ”ぇ”ぇ”っ!やべっ!やべでぇぇお”ぅ”ぇ”っ!?あでぃず・・・!どがい・・・ばぁぁっ!」
当初は身をよじって苦しむありすであったが、徐々にその動きは鈍くなり、ピクピクと震えるだけとなった。
口の端から砂糖水の泡とカスタードクリームをダラダラと流しながら、半分寒天の両目が白目をむきかけて、あにゃるからうんうんが勢いよく流れ出る。
ブチッビチッ!ブッ!ブスーッ!ブヂュッ!ブヂュブヂュブボッ!
ブラックアウトしかける意識の直前、ありすはちらりと「おうち」を見る。
そこには子ゆっくり達の影はいなかった。
「(おぢびぢゃん・・・!がぐれでるのねっ・・・!ま”ま”がびぎづげるがらっ・・・!がんばっでがぐれででねっ・・・!)」
辺りには隠れる事のできる場所などいくらでもある。子ゆっくり達はありすがやられている隙にどこかへと隠れてくれたようだ。
男はあたりをキョロキョロと見回した後、ありす達の「おうち」に足を向ける。
そして、ありす達のかけがえのない戻るべき場所を、踏みつけ蹴飛ばし初めた。
「やべ・・・でぇぇ・・・!あでぃずど・・・!おぢ・・・びぢゃ・・・!の・・・どが・・・い・・・ば・・・な・・・おうぢ・・・を・・・お”う”っ!」
這いつくばってずーりずーりと動こうとした矢先、背部に男の踏みつけが決まった。
ゴボリとカスタードクリームが吐き出され、ありすは寒天の白目をむいて悶絶する
「・・・!!・・・!」
みんなで頑張って集めた「とかいは」なおうちが崩れていく。
重しの小石が、子まりさが頑張って集めた重しの小石が吹っ飛んだ。
子ありすが見つけた「とかいはなふとんさん」が泥にまみれてグチャグチャになっていく。
ありすが集めた「おうち」その物の部分が、拉げ、グシャグシャになっていく。
戻るべき場所が、また消えていく。
ありすは、自身の「おうち」が完全に壊れたのを見た瞬間に、意識を失った。
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「ゆ"・・・!ゆ"・・・!どぼじ・・・で・・・」
ありすがグシャグシャに潰れた「おうち」を見下ろしながら寒天の両目から涙を流す。
痛む体を引きずり、舌でペタペタと「おうち」の残骸を拾い集める。
「まりしゃちゃちのおうちが・・・ゆぐっ・・・!ゆぐっ・・・!ゆ”ぇ”ぇ”ぇ”え”え”え”え”え”え”ん”っ”!!ゆ”びぇ”ぇ”ぇ”え”え”え”え”え”え”ん”!!」
子まりさが口をあんぐりと開けて泣き始める。
「みゃみゃ・・・みゃみゃぁぁ・・・!」
子ありすが心配そうにしきりにありすの体にぺーろぺーろを繰り返していた。
「ゆ”・・・!ゆ"・・・!ま”ま”は・・・ごれぐらい・・・なんども・・・なんどもない・・・わ・・・ゆぐっ!ゆげぼっ!ゆごぼっ!」
気丈に振舞おうとするも、口からカスタードクリームを少量吐き出しせき込むありす。
大丈夫なはずがない。あれだけダメージを受けたのだ。
だが、それ以上に「おうち」が無くなった事の方がショックだったようである。
おりしも、空は曇りはじめ、雨でも降りそうな程に崩れていた。
「まりしゃちゃち・・・これきゃらどうすればいいにょ・・・?どこであめさんをよければいいの・・・?」
「ゆぅぅ・・・みゃみゃ・・・!しゃむい・・・しゃむいわぁぁ・・・!」
強く吹き付けた寒風に身を震わせる子ゆっくり達。
「おう・・・ぢ・・・は・・・また・・・づぐり・・・なおぜば・・・いいわ・・・!ぞれより・・・ま”ま”にぐっづぐの・・・よ・・・!がぜをびいぢゃ・・・!いげない・・・わ・・・!」
曇天の下、壊れた「おうち」の前で身を寄せ合うありす一家。
今はただ、温もりが恋しかった。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「ゆ・・・!ゆ・・・!おちびちゃん、ゆっくりでいいからすすむのよ!」
「ゆっくりわかっちゃよ!ゆ!ゆ!」
「みゃみゃ!きょうはいいちぇんきにぇ!ちょっちぇもちょかいでいいこちょがおきそうぢゃわ!」
青空の元、ありす一家が街を進んでいた。
あれからすでに数日がたったが、一向に食料も、戻るべき場所も見つかっていなかった。
街を無軌道に彷徨う。そう、捨てられた当初と同じである。
ありすの気丈な振る舞いで、何とか明るく保ってはいるが、内心はかなり心細い事だろう。
路地裏を、右に左にと曲がっていく。
跳ねる事はしない。体力を温存するための街ゆっくりの習性である。
ずーりずーりと動くさまは、まるで大きな蛞蝓の行進だ。
「ゆ!ひとまずここでやすみましょう!」
「ゆゆ!ゆっきゅりわかっちゃよ!」
「ありしゅごはんしゃんをさがしちぇきゅりゅわ!」
路地裏の袋小路でひとまず息をつけるありす一家。
子ありすが食料を探そうと動いたところで、ありすが声を上げる。
「ゆゆ!おちびちゃん!ばらばらにうごくのはあぶないわ!ままといっしょについてくるのよ!」
「そうぢゃよ!みんなぢぇいっしょにごはんしゃんをさがしょうね!」
「ゆゆ・・・ゆっきゅりわかっちゃわ!」
かくして、一旦休息場所を決め、再びずーりずーりと移動を開始するありす一家。
はたして食料は取れるのだろうか?
「ゆゆーん!みゃみゃ!みちぇ!とっちぇもときゃいはにゃぱんさんをみちゅけちゃわ!」
「ゆゆ!ほんちょうぢゃよ!」
「すごいわ!おちびちゃん!とってもとかいはね!」
・・・数時間後、子ありすが甘い生クリームが挟まったパンを見つけた。
ありすと子まりさは、なにも見つけられなかったが・・・
かくあれ、子ありすがこれほどの「ごちそう」を見つけられたのは奇跡に等しいだろう。
「おおきいきゃらみんなじぇわけりゃれりゅわ!」
「おいしそうじゃよぉぉ・・・!」
「ゆゆ!ゆっくりありがとうね!おちびちゃん!」
パンを三つに分けてかぶりつく。
甘い味が口いっぱいに広がった。
こんな「あまあま」を食べるのは久方ぶりであろうか?ありす一家はそう思っていた。
「「「む~しゃむ~しゃ!とかいはー!」」」
路地裏に、ありす一家の喜びの声が上がる。
だが、ありす一家は気づいていなかった。
そのパンには僅かに「カビ」が生えていた事を
・・・・・・
・・・
「ゆ!ゆ!まりしゃすっぎょいげんきになっちゃよ!」
「ゆゆーん!ありしゅもちょっちぇもちょかいはぢゃわ!」
先ほどとは打って変わってハイペースにずーりずーりで進む子ゆっくり達。
困り顔でありすが諭す。
「ゆゆ!おちびちゃんたち!そんなにあわてなくてもいいわ!ゆっくりいきましょう!」
だが、ありすはほとほと嬉しそうであった。
今日はもっと「とかいは」な事がありそうだ。
戻るべき場所が、また見つかるかもしれない。
淡い期待に胸を寄せるありすと子ゆっくり達。
だが、ありす一家を待っていたのは幸福ではなく、さらなる不幸だった。
「ゆ・・・ゆぐっ・・・ゆ”ぅ”ぅ”・・・!」
「ゆぅぅ!?まりしゃ!?どうしちゃの!?」
「おちびちゃん!?」
それは突然だった。
それまで元気にずーりずーりと動いていた子まりさがポテリと横に倒れると、突如として苦悶の表情を浮かべ、小麦粉の体をぐーねぐーねと動かし始める。
「いぢゃ・・・い・・・よぉぉ・・・!ぽん・・・ぽん・・・が・・・!いぢゃ・・・いいい・・・!」
「おちびちゃん!ゆっくりよくなるのよ!ぺーろぺーろ!」
「みゃみゃ!まりしゃどうしちゃったにょ!?すっぎょいくるししょうぢゃわ!」
子まりさは苦痛に表情を歪め、玉の様な水飴の汗が小麦粉の体から噴き出し始めていた。
原因はわからない。ありすはひたすら、ぺーろぺーろをするしか方法が無かった。いや、それしか知らなかった。
「わ、わからないわ・・・!とにかくしばらくやすめるところでゆっくりしましょう・・・!」
ありすはそう子ありすに言うと、舌で子まりさを自身の頭の上に載せて、ずーりずーりとどこか一息つける場所を探す。
子ありすも心配そうに子まりさを見上げながら、ついて行った。
「ゆ”・・・!ゆ”・・・!ゆぐっ・・・ゆ”ぅ”ぅ”ぅ”・・・!」
「おちびちゃん!うんうんさんをとめるのよ!これいじょううんうんさんがでたらゆっくりできなくなっちゃうわ!」
「まりしゃぁぁ!ちょかいは!ちょかいはぁぁ!」
子まりさがぐーねぐーねと小麦粉の体を動かしながら、あにゃるから大量のうんうんを排泄する。
ありすと子ありすはどうする事も出来ずに、しきりに呼びかけを行うだけだった。
「ゆはっ・・・!ゆはっ・・・!ぐるじ・・・ぃ・・・よぉぉ・・・おきゃあ・・・しゃぁぁ・・・ん・・・!ゆぶっ!ゆ”っ!ゆ”げぇ”ぇ”っ!げぇ”ぇ”ぇ”ぇ”え”え”え”え”え”っ!」
「おぢびぢゃん!どがいばっ!どがいばあああああああ!」
「まりしゃあああ!ゆびぇええええん!」
うんうんが止まった後は小刻みに餡子を吐き出し、何度もえずきながら、苦しみながら嘔吐を繰り返す。
少なくとも、ありすにはこれを止める方法など知る術も無かった。
原因はあのパンである。
端がほんの少しカビていたのだ。
それを三つに分けた時点で、唯一カビがついているパンの切れを子まりさが食べてしまった。
ゆっくりの「カビ」には二種類ある。
まず第一に小麦粉の皮・・・つまり外側にカビがつく場合。
これはゆっくりにでも治せるものだ。カビた小麦粉の皮を千切れば良い。
問題は、この子まりさがかかっている内側・・・つまり中の餡子のカビが付着した場合だ。
これはもうどうにもならない。餡子を吐き出し、うんうんを排出すると言った事を何度も繰り返し、それが幾度も怒り続ける。
やがて中枢餡にカビが回ると、様々な問題が起きてくる。
この子まりさは元気に動き回ってしまっていた、それが結果的に餡子内の温度を上昇させ、カビを素早く繁殖させてしまったのだ。
その証拠に、苦しむ子まりさの小麦粉の皮の所々に緑色のカビがいくつも点々と生え始めていた。
元々、子ゆっくりは体積が小さく、その分カビの回りが早い。
・・・だが問題はここからである。
中枢餡にまで到達する間はかなり長く、最大でも数週間はかかる。
その間、子まりさは激痛を味わい続けるのだ。
「ゆはっ・・・!ゆはっ・・・!おぎゃあ・・・じゃ・・・まり・・・しゃ・・・きゅるし・・・い・・・よぉぉ・・・」
「おぢびぢゃん!ごべんね!いながぼのなままでごべんねぇぇ・・・!」
「まりしゃ!ゆっきゅりよくにゃるにょよ・・・!」
ありすは近くで見つけた小さなビニール袋に子まりさを入れると、口で持って引っ張る。
子ありすは袋の後ろを小さな小麦粉の体で押し上げて、手伝っていた。
「ゆ・・・!ゆ・・・!かならずままがなんとかするからねっ!それまでっ!それまでがまんするのよ・・・!」
ありすの言葉を考えれば、何とかなる方法は幾つかあるのだろう。
元金バッジの知恵を働かせてだろうか?
しかしそれが役に立つとは決して限らなかった。
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・・・あれから、ありす一家は一週間程街を転々と移動した。
ありすの「なんとかする」と言う方法はみのる事はなかった。
ありすはあれから、「地域ゆっくり」との接触を図った。
「バッジ付き」になれば、治療が受けられると知っていたからだ。
元々は金バッジなのだ。その矜持がありすを地域ゆっくりになると言う行動に結びついた。
だが、ありすは地域ゆっくりになれなかった。
自分が金バッジ等と言う証拠はどこにあるのか?その一点に話は尽きる。
ありすは証明する手立てを持たなかった。
その時点でありすはもう二度と、地域ゆっくりになるチャンスを永久に失うこととなる。
ただの「うそつきゆっくり」それが地域ゆっくりから告げられた言葉だった。
・・・ありすに悲しんでいる暇はなかった。
子まりさのカビはさらに進行し、もう既に小麦粉の皮は緑色に変色していた。
子ありすも、空腹により、限界が近付いている。
おりしも季節は、冬へと入っていった。
続々と越冬の準備に入るゆっくり達を尻目に、ありす一家は疲弊していく。
ありすに残された手段は、一つしかなかった。
「あまあまをとる」・・・それだけである。
「ゆ・・・!ゆ・・・!」
急ぎ足でずーりずーりと移動するありす。その口には、封が切られただけで中身が丸々と残った板チョコレートが咥えられていた。
・・・餌場荒らしである。
ありすは、あまあまが一番多くある餌場に忍び込み、いくつかを持ってきたのだ。
当然、餌場をテリトリーとするゆっくり達に見つかっているだろう。
戻るべき場所すらなくなったありすは、さらに追われる立場へとなっていったのである。
「いたんだぜっ!こっちだぜっ!」
一体のまりさがありすを見つけて叫ぶ。
他のゆっくり達の跳ねる音が聞こえてきた。
・・・念のため、ありす一体のみである。
子ありすと子まりさは、安全な場所において、たった一体で何十体もの街ゆっくりがいるこの餌場に忍び込んでいる訳である。
おりしもありすが逃げている場所はせまい路地裏、挟み撃ちをされれば一発の終わりだ。
しかしありすも必死に逃げる。
後わずか数十メートルで路地裏を抜ける。そうすればもう安全だ。
「おちびちゃん・・・!まっててね!ゆふっ・・・!ゆふっ・・・!ゆ”っ」
突如、ありすがくぐもった声を上げる。
寒天の目玉だけを動かし、自身の右側面部を見ると、深々と木の枝が突き刺さっていた。
・・・隠れて待ち伏せしていたれいむに突き刺されたのである。
「ゆ!ゆ!どろぼうさんはゆるさないよ!」
「ゆぐっ・・・!ゆぐっ!ゆ”ぅ”ぅ”ぁ”ぁ”ぁ”あ”あ”あ”あ”!!」
「ゆぎゃあ!!」
凄まじい勢いで体をぐーねぐーねと動かし、れいむを弾き飛ばすありす。
ボキリと木の枝が折れ、突き刺さった木の枝もお構いなしにずーりずーりで通りを目指す。
寒天の両目を血走らせ「とかいは」な様子など微塵も感じさせない程の歯茎をむき出し、砂糖水の汗を噴き出しながらずーりずーりと動く。
それらもすべて、子ゆっくりの為になせる技であった
一瞬、動きをストップさせたのが仇となる。
背部に衝撃が走った。
「ゆぎぃぃっ!!」
「ゆふー!ゆふー!ごのげずゆっぐりがぁぁあ!よぐもでいぶをばじぎどばじだなあああああ!ゆっぐりじぬんだぜえええええ!」
追いついたまりさに木の枝を再び突き立てられる。
深々と突き刺さった木の枝は容易に抜けず、ありすの動きが止まった。
「ゆぐぅ”ぅ”あ”あ”あ”っ!ばなぜいながぼのっ!ばなぜえ”え”え”え”!」
「ゆぅぅ!!みんな!このありすをかこむんだぜ!」
追いついた街ゆっくり達にあっという間に囲まれるありす。
砂糖細工の髪の毛をかまれて、強引に動きを止められ、路地裏側へと引きずられる。
しかしそれでも、ありすは砂糖細工の髪を振り乱し、必死に動いて抵抗した。
「ゆぎぇぇっ!ゆぐぉ”ぉ”っ”!あ”ぎゃあ”あ”っ!」
小石を舌に持ったゆっくり達に何度も殴りまわされた。
木の枝で小麦粉の皮と言う皮を突き刺された。
カスタードクリームを飛び散らせ、それでもなおありすは身をよじらせ抵抗する。
小麦粉の皮が裂け、カスタードクリームが辺りに飛び散った。
砂糖細工の歯が砕け、小麦粉の口腔に突き刺さる。
「お”ぢびぢゃ”ん”っ”!お”ぢびぢゃ”ん”っ”!お”ぢびぢゃ”ん”っ”!お”ぢびぢゃ”ん”っ”!お”ぢびぢゃ”あ”あ”あ”あ”ん”!」
何度もありすは叫ぶ。
その鬼気迫る表情に街ゆっくり達は一瞬たじろぐが、すぐさまありすを殴りつけ、木の枝で突き刺す。
「ゆ!おめめだぜ!おめめをねらうんだぜっ!」
砂糖細工の髪を噛まれ、引き上げられるありす。
目の前には、木の枝がその名の通り「目の前」へと進んでいた。
「ザクッ」と音がする。
「ゆ”っ」
・・・ありすの動きが止まる。
深々と突き刺さった二本の木の枝が、グリグリと動き始めていた。
「グチャグチャ」と音がした後、「ブツッ」とも「ブチッ」とも聞こえる音が響く。
「・・・!!ぎゃ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ!!!!!!!!」
ゆっくりとは思えない悲鳴と共に、寒天の両目がぶーらぶーらと垂れさがる。
ありすの叫び声が路地裏に響いた。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
・・・街の片隅にある公園の茂み。そこに子ありすと子まりさはいた。
「ゅ”・・・ゅ"・・・」
既に子まりさは丸っこい形すら維持できずに、ドロドロに溶け始めていた。
「ゆひゅー・・・ゆひゅー・・・おなかすいちゃわぁぁ・・・」
子ありすの方も、定まらぬ目線で空を見上げている。
・・・この茂みを覆う草は、固すぎる上に苦い。ゆっくりにとってはとても食べられる代物ではなった。
いや、食べれば消化不良でうんうんを垂れ流し、苦みで餡子を吐き出すことになるので実質子ありすが食べられるもの等どこにも存在し得なかった。
ガサガサと茂みが動く。
「・・・みゃ・・・みゃ?」
子ありすが寒天の両目だけを動かして目をやる。
「それ」を見た途端、子ありすは息を詰まらせた。
「ゆ”ひ”ゅ”ー・・・!ゆ”ひ”ゅ”ー・・・!お”・・・ぢび・・・ぢゃ・・・」
「それ」とはありすであった。
寒天の両目がぶーらぶーらと垂れさがり、カスタードクリームを小麦粉の体と言うからだから吹き流し、砂糖細工の髪の毛もところどころむしられて、凸凹に膨らんだ下膨れの顔はどこが後ろで何処が前かすらわからなくなるほどであった。
「みゃみゃ・・・!みゃみゃぁぁ・・・!」
ようやくそれがありすだとわかった子ありすが、砂糖水の涙を流しながら、必死にすーりすーりを繰り返す。
ありすは、かすれた声でありすに語りかけた。
「ごべ・・・ん”・・・ね”・・・あ・・・ば・・・あ・・・ば・・・ざん・・・どご・・・がに・・・おどじ・・・ぢゃっだ・・・わ・・・」
「みゃみゃ・・・!ありしゅはおなかすいちぇにゃいわ・・・!だきゃら・・・!ときゃいは!ときゃいはぁぁ・・・!」
・・・目の前がかすむほどに食料を取っていない子ありすが必死に取り繕うようにすーりすーりを繰り返す。
ありすは、臭いと記憶だけを頼りに、この公園まで戻ってきていた。
既にゆっくりなのかすらも危うい程にダメージを受けた体では、もう長くはない。それは承知している様だった。
「おなが・・・いっば・・・い・・・あ・・・ば・・・あば・・・ざん・・・を・・・だべざぜで・・・あげられ・・・なぐ・・・で・・・ごべ・・・んね・・・ざむ・・・い・・・おも・・・い・・・をざぜ・・・で・・・ごべん・・・ね・・・」
「ありしゅは・・・!ありしゅはおこっちぇにゃいわ・・・!だきゃら・・・!げんきになっちぇっ・・・!げんきになっちぇぇぇ・・・!」
子ありすの呼びかけに、口の端が緩む。
「ゆぐぼっ!ゆげぼっ!ゆごぼっ!・・・ゆ"・・・おぢ・・・び・・・ぢゃ・・・だぢ・・・どが・・・い・・・ば・・・」
微笑んでそれだけを呟くと、ありすは前に突っ伏して、物言わぬ饅頭へとなり果てた。
・・・ビニール袋の中の子まりさも、既に動いてはいない。
「みゃみゃ・・・!みゃみゃぁぁぁぁ・・・!」
残った子ありすは、ただひたすら泣きながらすーりすーりを続ける。
やがて、日が暮れかける頃、子ありすの声が止んだ。
「ひゅー・・・ひゅー・・・みゃ・・・みゃ・・・まり・・・しゃ・・・」
水分が抜けかけているのか、子ありすの小麦粉の皮はパサパサになり、ひび割れ始めている。
残った力を振り絞り、最後にありすだった饅頭にすーりすーりをする。
まるで地面に底部がからみついているかのように、足取りは重い。
すーりすーりを最後にし終えると、そのままもたれかかるようにして、突っ伏す。
「ず・・・っ・・・と・・・み・・・ん・・・にゃ・・・いっ・・・しょ・・・に・・・ちょ・・・か・・・い・・・は・・・」
それっきり子ありすは動かなくなった。
・・・このありす達に、戻るべき場所は見つからないかのように思えた。
しかし、ありすと、子まりさ、そして子ありす。この三体が一緒にいるその場所が、本当に戻るべき場所だったのかもしれない。
ようやく戻るべき場所を見つけたありす一家は、眠る様にして物言わぬ饅頭になった。
真っ暗な夜空にぽっかりと浮かんだ月の月明かりが、ありす一家の居場所を照らし出している―――