ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2526 私の名前は 後編
最終更新:
ankoss
-
view
『私の名前は 後編』 38KB
いじめ 自業自得 群れ ゲス 自然界 独自設定 今回はちょっと微妙かも
「うーん。やっぱり地道に演説で説得してくしかないかなー。
うわーめんどくさいー。何でこんなことになっちゃたんだろう」
おうちにて一匹、今後の方針を思案している長まりさ。
如何にして人間との戦争を回避するかに頭をなやませているわけなのだが、
やはりコツコツ反戦を訴え続けていくしか今のところ策はないようだった。
「そもそも初期状態が悪すぎるんだよねー。バカなゆっくりは一度思い込むと簡単には意見を変えないから。
あーやっぱりしこんな群れおっ放り出して、また別のところに行こうかな」
早くも自分の役目を放棄する思考に向かう長まりさ。
そもそも、つい成り行きでこうなってしまったが、自分がこの群れを治める義理などないのだ。
それにとっとと投げ出して群れを出たとしても、あの人間さんは別に自分を責めないような気がしないでもない。
「あの人間さんとぱちゅりーはちょっと不思議な感じだったね。今まで見たことある人間とは違うような気がするよ」
そんなことを思案していると、おうちの外からけたたましい声が聞こえてきた。
「そこにいるのはわかってるよー!げすなまりさはさっさとでてきてねー!」
「?」
外から聞こえてくるとても交友的とは言えない声に眉をひそめる長まりさ。
一応今の自分は群れの長という立場のはずだ、それに対してゲスとは何事だろう?
「ちょっと!いきなりなんなの!……ぜ!
用があるならそっちから入ってくるのぜ!」
「わかったよー!どっちでもおなじことだからねー!」
そう言いながら、ニヤニヤ顔のちぇんがのっそりとおうちの中に入ってきた。
「一体何の用なのぜ!いま私は忙しいのぜ!」
「わかるよー!せんっそうをちゅうしさせるほうほうをかんがえてたんだねー!」
「!そうなのぜ!わかってるのなら話しがはやいのぜ!何かいい案でもあるのかぜ!」
ひょっとしてこのちぇんは自分を支援しに来てくれたのではないか?そんな期待が一瞬長まりさの頭によぎる。
「わかるよー!ちぇんにはとってもいいかんがえがあるんだよー!
それは………しねぇー!!!」
話の途中でいきなり長まりさに素早い体当たりを仕掛けるちぇん。
「どわっと!あぶな!」
それを間一髪避ける長まりさ。
「ちょっといきなりなにすんの!」
「わかるよー!おまえのあくじはぜんぶおみとうしなんだよー!
きのう、にんげんさんとあってはなしをしていたのを、ちぇんはみていたんだよー!」
「ええ!マジ!」
「まじだよー!ちぇんがむれのみんなには、もうはなしちゃったから、まりさはおしまいなんだねー!
だからおとなしくちぇんにせいっさいされろよー!そうすればちぇんはつぎのおさになれるんだー!」
「なんてこったい!」
昨日の人間さんとの接触が目撃されているとは思わなかった。まったくここんところ、こんなんばっかりだ。
しかし、これで群れのゆっくりたちを地道に説得していくという選択肢は失われたわけだ。
なにせ危険だからと人間との戦争中止を訴えるゆっくりが、実は夜に人間と会っていましたなんて怪しいことこの上ない。
説得力の欠片もあったもんじゃないだろう。自分だってそんなヤツの言うことは信用しない。
「じぶんのたちばがわかったみたいだねー!じゃあおとなしくしんでねー!」
「そんなわけにはいくかー!こんなバカばっかりの群れで死ぬなんてゴメンだっての!」
「ゆふふふふふ!やるきなのー!まりさはしってるでしょー!
こゆっくりのころから、ちぇんにけんかでかったことは、いちどもないってことがー!
ちぇんにはぜったいにかてないってわかってたから、ぜんおさをころして、そのすきにおさになるなんて、
ひきょうなてをつかったんだねー!
まりさはちぇんにはかてないんだよー!それくらいわかれよおおおおおおおおおおおおおおお!」
「知るかあああああー!そんなことおおおおー!大体、私はまりさじゃない!私の名前は………!」
狭い巣穴で、二匹の影が交錯した。
そしてしばらく後。
「ぜえ!ぜえ!あーしんどかった。スピードがある分、確かに前のまりさよりも強かったよ。
狭いおうちで戦ってなかったらら危なかったかもね…」
ぜえぜえと荒い息をしながら、おうちから出てきたのはちぇん?だった。
「もうこうなったらヤケクソだ!ちくしょー!とことんまでやってやるぞー!」
ぐおー、と一匹気合を入れると、ちぇんは一匹群れの中心へと向かうのであった。
ざわ…ざわ…。
そしていつもの群れの広場。
例の如く群れのゆっくりたちが集まって、これからのことを噂していた。
「ちぇんがうらぎりものの、げすまりさをしとめたってはなしだよ!」
「さすがとかいはね!いったことは、かならずじっこうする!すてきだわ!」
「みょん!これでこのむれのみらいは、あんっしんだみょん!」
「れいむは、はじめから、あんなげすなまりさじゃなくて、ちぇんがおさをやるべきだとおもってたよ!」
口々に新しい長となるちぇんを褒め称える群れのゆっくりたち。
「ゆゆ!ちぇんがでてきたよ!」
誰かが口に出したとおりに、その場にちぇんが現れた。
「えーあー諸君、ゆっくりしていってねー!」
「「「「ゆっくりしていってね!」」」」
長ちぇんの挨拶に勢いよく返事をする群れのゆっくりたち。
「まずは前長のまりさのことだよー!まりさは確かにちぇんがしとめたよー!
これが証拠のお帽子だよー!」
スッとちぇんは生前、長まりさが被っていたおかざりの帽子を前に差し出す。
「ゆゆ!あれはたしかにまりさがしてたおぼうしさんだよ!」
「やっぱりちぇんはできるゆっくりだね!」
「これで、ちぇんがこのむれのおさにけっていだね!」
お飾りという、ゆっくりにとっては身体の一部ともいえる確かな証拠を出したことで、
ちぇんが長まりさを制裁したことは確実となった。
これにより、次なる群れの長になったことが正式に認められたことになる。
「ゆゆー!みんなありがとねー!それじゃさっそくおさとして、このむれのほうしんをはっぴょうするよー!」
「「「「「ゆー!」」」」」
一斉に返事をするゆっくりたちは、みな期待に目を輝かせている。
この頼れる新しい長の下、素晴らしいゆっくりプレイスを人間の手から奪い取る!
そんな内容のセリフが飛び出すのを、今か今かと待ち構えている。
だが……。
「新しい群れの政策だけど、前長のまりさと同じように、人間さんとの戦争はやめにするよー!
いくらゆっくりできないからって、群れが潰されちゃ意味ないからねー!
まりさはげすだったけど、その点は正しかったんだよー!」
「「「「「………へ?」」」」」
長ちぇんが何を言っているのか、みなしばらく理解できなかった。
これは一体どういうことだ?裏切り者のまりさからちぇんに長が変わったというのに、なんで群れの政策が変わらないんだ?
どうして長ちぇんは、みなで一緒に人間のゆっくりプレイスを奪おうと言ってくれないんだ?
「そういうわけだから、みんなわかってねー!
くれぐれも視察にくる人間さんや、麓の村にちょっかいを出しちゃダメだよー!
それじゃ長の話は終わりだよー!みんなゆっくりしてねー!」
そして呆然とたたずむ群れのゆっくりたちを前に、長ちぇんは言いたいことだけ言うと、
さっさと帰っていってしまった。
またも訪れた理解不明の展開に、今度こそは言葉を失う群れのゆっくりたち。
だがしかし、そんな中、しめたとばかりにほくそ笑むゆっくりがいた。
「むっきょきょきょきょ!これはいよいよ、けんじゃなぱちぇのでばんのようね!むっきょきょきょきょ!」
ゆっくりぱちゅりーはニヤニヤしながらそんなことを呟いたのだった。
「むきゅ!どういうことなの?」
「……………」
思わず感想を口にしするぱちゅりー。今、やや遠くの広場で行われている展開がぱちゅりーには、まったく理解できないのだ。
ここは、群れから少しはなれた場所にある高台。
やはり例によって昨日と同じように群れの様子を探ってた男とぱちゅりーは、そこで再び理解不能の光景を目にしたのだ。
裏切り者の長まりさを制裁し、自分が長になってみなを率いると張り切っていたちぇん。
そしてその言葉通りに長まりさを制裁し、証拠として長まりさの帽子を持ってきた。
遠目だからはっきりとは言い切れないが、恐らくあの帽子は昨日あった長まりさがしていたのと同一のものであろう。
ゆっくりであるぱちゅりーにはそれが確信できた。つまり長まりさはちぇんに間違いなく制裁されてしまったということなのだろう。
せっかく話のわかるまりさだと思ったのに、残念で仕方がない。
それに制裁のきっかけとなったのが自分たちと話しているのを目撃されたからというのも、少々申し訳ない気持ちがあった。
しかしその事実に落ち込むひまもなく、今度は長ちぇんが不可解なことを群れのゆっくりたちの前で言い出したのだ。
なんと自分が殺した長まりさの政策を受け継いで、人間との戦争はやめると言うのだ。
これには、ぱちゅりーも唖然とした。
そもそも、あのちぇんは長まりさのやり方が気に入らないから、わざわざ一騎打ちをしてまで新たな長になったんじゃないんだろうか?
それなのにまりさとまったく同じ政策を取ると言うのだ。まったく意味がわからない。
「……なるほど、だいぶカラクリが読めてきた」
「え!人間さんはどうしてこうなったかわかるの?」
男の呟きに驚きの声を上げるぱちゅりー。
「多分な。というか昨日のまりさに直接会った時点で大体の予想はついていたよ。
そして今この光景を見て、その予想はほぼ確信に変わった。
まあ、今回の件はお前がわからなくても無理はない。単純に予備知識の差だ。
ところで参考までに聞いときたいんだけど、お前さんはこの件に関してどういう風に考えているんだ?」
逆にぱちゅりーに質問する男。
「むきゅ!よくわからないというのが正直なところね。
群れの長が、人間さんたちと戦うのは良くないと言うのはいいことよ。
でもその過程があまりにも不可解すぎるわ。特にあのちぇんは、反人間派だったみたいだしね。
だから可能性の一つとして、わざとそういう言動を取っているんじゃないかとぱちぇは思うのだけど」
「ほう!というと?」
男は興味深げにぱちゅりーに視線を向ける。
「つまりあの演説は私たちを油断させるフェイクなのよ!
今の長ちぇんは、まりさを倒す際に私たちが群れを監視していることを聞き出してから殺した。
だから油断させるために、わざわざ人間との争いはやめると言い出したのよ。
そうして安心させたところで一気に反旗を翻そうと言う腹なんじゃないかしら?」
「なるほど、面白い考えだな。でもそれだと、長ちぇんの言動の説明はできても、長まりさの言動は説明できないぞ」
男が訊ねる。
「それは、ほら!本ゆも言っていた通り気まぐれみたいなものよ。
ぱちぇの見たところ昨日会ったあのまりさはなかなか賢い感じだったわ。
あるいは今まで人間さんの危険性を理解してたけど、群れの雰囲気的に言い出せなかったとかかもしれないしね。
むきゅ、それだけに殺されてしまったのは気の毒で残念ね」
そう言い、ぱちゅりーは目を伏せる。
やはり長まりさが死んでしまったことに責任を感じているのだ。
「そう落ち込むなよ。あのまりさに会いに行こうと言ったのはオレなんだから、責任ならオレにある。
それにな、ぱちゅりー。あのまりさは多分生きてるよ」
「むきゅ?」
男の言葉にピクリと反応して、顔を上げるぱちゅりー。
「どういうこと?確かに帽子しかないから確実に死んでるとはいえないけど、あの長ちぇんがまりさを生かしておくとは思えないわ。
あっ!そうか!つまりあのちぇんとまりさは実はグルってことなの?
群れのみなから反感を持たれているまりさをちぇんが制裁したことにして、ちぇんがまた改めて人間さんとの不戦を訴えていくという作戦ということ?」
「いやいや、そんなまわりくどいことせんでも、二匹が繋がってるなら普通に二匹で反戦を訴えていけばいいじゃん。
わざわざ死んだと見せかける必要なんてないでしょ」
「むきゅううううう!」
頭を抱えるぱちゅりー。本当になんが何だかわからない。
「まあ、いいじゃないか今夜また長ちぇんに話を聞きに行けば」
こともなげに言い放つ男。
「ええええええええええ!またなの?」
驚きの声を上げるぱちゅりー。
「そう、また。
確認したいことがあってね、それで今回の件は全部解決すると思う。
群れのこれからのことも何とかしなきゃならんしね」
そう言い、立ち上がる男。恐らくもう男の中では何らかの結論が出ているのだろう。
それに対して、相変わらずぱちゅりーはまったくどうなっているのかわからず仕舞いである。
男の話によれば、今度あのちぇんに会えば全ての謎が明らかになるらしいのだが、ぱちゅりーはいま一つ実感がわかない。
いったいどうすればこの不可解な事態が解決できるのか、ぱちゅりーにはまったく想像がつかないのであった。
そして群れの外れでは、
「ハア、ハア、ずるいぞ!そんな一度に大勢でくるなんて!」
「むっきょっきょきょ!げすなちぇんが、いったいなにをいっているのかしら!
たたかいはかずよ!いっきうちなんて、ばかなゆっくりのやることね!そんなこともわからないなんて、おお、おろかおろか!
やはり、むれのおさは、おろかものではつとまらないわね!おさには、このけんじゃのぱちぇこそがふさわしいのよ!」
長ちぇんは戦いを強いられていた。
それも一匹ではなく、複数のゆっくりとである。
「さあ、おまえたち!あのげすちぇんをおいつめてころすのよ!
そうしたら、ぱちぇがおさになったあかつきに、むれのかんぶにしてあげるわ!」
「ゆっへっへっへ!たしかにやくそくしたんだぜぇ!」
「んほおおおおおおおおお!おさをれいぷするなんて、はいとくてきねええええええ!もえるわああああああああああああああ!」
「せいっさいだよおおおおおおお!げすなゆっくりはみんなれいむが、せいっさいするよおおおおおおおおお!」
長ちぇんに迫りくる複数のゆっくりたち。
「じょ、冗談じゃないよ!こんなに沢山、一度に相手できるかっての!」
これはたまらないと、一目散に逃げ出す長ちぇん。
「むっきょきょきょきょ!ついにこのぱちぇのじだいがやってくるのよ!むっきょきょきょきょ!」
下品な笑いをしながら、自身の勝利を確信するぱちゅりー。
思えばここまで長い道のりだった。
もともと長の地位は自分こそが相応しいはずだったのだ。群れでの人気だってまりさやちぇんよりも自分のほうがあった。
しかし度重なるアクシデントに見舞われ、泣く泣く今までチャンスを逃してきた。
だが、ついに自分にもチャンスが巡ってきたのだ。この頭の悪いゲスちぇんを倒し、群れの長になり、大軍を率いて人間のゆっくりプレイスを奪うのだ。
そして自分は偉大な森の賢者として、未来永劫語り継がれるのだ。
そのためには今、ここで、確実にこのゲスちぇんをしとめる!決して逃がしてはならない!
「むぎゅ!さあ!にげたげすをおいかけるのよ!」
「にがさないんだぜえええええ!」
「んほおおおおお!つんでれなのねえええええ!」
「せいっさい!せいっさい!」
逃げる長ちぇんを追いかけるぱちゅりー一味。
連日連戦で疲弊している長ちぇんは本来の速度が出せず、その距離はみるみる縮まっていく。
「くっそう!こうなったら奥の手だ!とう!」
ガサガサ!
派手な音を立てながら背の高い草むらの中に飛び込み、その姿隠す長ちぇん。
目くらましのつもりだろうか?
「むきゅ!むだよ!そんなんでかくれたつもり?
いきなさいおまえたち!あのくさむらのかげにかくれている、げすちぇんをしとめるのよ!」
確かに草むらに隠れることで、長ちぇんの姿は見えなくなったが、実際に隠れる瞬間を見られているので、
そこに長ちぇんがいることはモロバレだった。
これでは単なる時間稼ぎ程度にしかならず、逃げ切ることはできないだろう。
「ゆっへっへっへ!ばかなやつなのぜ!そこにいるのはわかっているのぜ!おとなしくまりささまに、せいっさいされるのぜぇ!」
余裕たっぷりにの表情で、じりじりと草むらに近づいていくぱちゅりーの部下ゆっくりたち。
長ちぇんの絶対絶命のピンチと思われたそのとき、突然草むらの中から何かが飛び出してきた。
それは……
「うー!うー!」
「ゆがああああああああああ!どじで、れみりゃがここにいるのおおおおおおおおおおお!」
なんと、草むらから飛び出してきたのは長ちぇんではなく一匹のれみりゃ?だったのだ。
予想だにしない出来事を前にしてパニックになるぱちゅりー一同。
「なんなのぜええええええええ!こんなのがいるなんてきいてないのぜえええええ!まりさはにげるのぜえええええ!
たべるなら、ほかのれんちゅうにするのぜえええええええええ!」
「ゆあああああああああ!れいむたべてもおいしくないよ!たべるならぱちゅりーをたべてねええええ!」
「こんなのぜんぜんとかはじゃないわあああああああああああ!」
突然のれみりゃの登場に、その薄汚い本心をさらけ出しながら、我先へと逃げ出すゆっくりたち。
所詮は目先の利害の一致のみで集まった即席の集団だ。みなで一致団結して戦おうなどという発想には至らない。
「まっ、まちなさい、おまえたち!けんじゃなぱちぇをおいてどこへいくつもり!
あっ、あっ、にげるなあああああああああああああああ!ぱちぇを、いのちがけでたすけろおおおおおおおおおおおお!
ぱちぇは、おさになるゆっくりだぞおおおおおおおおお!げほっ、えれえれえれえれ!」
そして、必然的に一番運動能力の低いぱちゅりーがその場に取り残されることになる。
さらに悪い事に、極度の混乱状態に陥ったぱちゅりーはショックでエレエレと中身を吐き出し始めた。
そんなぱちゅりーに対してれみりゃは、
「うー!うー!…………オラァしねぇ!」
容赦のない怒りの急降下アタックをぶちかました。
「ゆげろばはぁ!」
その体当たりをまともに受けてゲロを吐きながら無残に潰れるぱちゅりー。
「ハア、ハア、ざまあないね!」
着地したれみりゃは疲れた様子で息を吐き出す。
「………さてと、これからどうしようかな」
潰れたゲロ袋をチラリと一瞥し、思案するれみりゃ。
今度はコイツに擬態して、また群れで人間に対しての反戦を訴えるべきだろうか。
「いいや、やめだやめだ、馬鹿馬鹿しい」
自嘲気味に呟くれみりゃ。
れみりゃは悟ったのだ。どんなに自分が立ち回ったところで、この群れのバカ共に人間との戦争を思いとどまらせる事など不可能だということを。
仮に今までと同じ要領で、このぱちゅりーに擬態し、長としてみなの前で反戦を訴えてみたとしよう。
だがしかし、結局何をどう言ったところでこの群れの連中が納得することは決してないだろう。
人間たちがゆっくりできるものを独占している。だからそれらを奪うことは正統なことで、とてもゆっくりできるというのは、
この群れのゆっくりたちにとって、もはや覆すことのできない共通認識なのだ。
それどころか下手に反戦を訴えれば、自分たちの意にそぐわない長として、次なる長としての野心を持つものに命を狙われるだけだ。
今までは何とか切り抜けてこれたが、次も自分が無事ですむとは限らない。
現に今回はかなり危なかった。れみりゃに擬態しても、別に戦闘能力が上がるわけではないのだ。
全員で一斉に掛かられれば恐らく負けていただろう。まあ、バカな上にゲスい連中だからその心配はほとんどなかったのだが。
「ふう、いつものように軽くゆっくりするつもりでこの群れに入り込んだのに、えらい目に会ったよ。
この群れとも、もうお別れだね」
くるりと振り返り、群れのある方角を見つめるれみりゃ。
別段感慨もなにもない。ただ不快な思い出があるだけだ。
恐らくあの群れはこのまま人間さんに戦いを挑み、惨めに全滅することだろう。
別に知ったこっちゃない。そもそも自分があの群れを救う義理など初めからないのだ。
ただ展開の成り行き上そうなっただけのこと。
「あー、なんかどっと疲れちゃったなぁ。
次はもっとまともな群れに滞在したいよ。でもなぁ、なんかだんだんゆっくりたちの群れに入り込むのも飽きてきちゃったな。
頭が悪いやつばっかりでさ」
「そいつはまあ、色々とお疲れ様。なんだったらオレが優秀な群れにでも案内してやろうか?」
「………え?」
突然後ろから声が掛けられる。
驚いて振り返ると、そこにはいつぞやの男とぱちゅりーが立っていた。
「なっ、ちょ…」
「ああ、それと言い訳するわけじゃないけどオレたちがここに到着したのは、お前がそこに転がってるぱちゅりーを潰したときだから。
お前さんが襲われているみたいなのを黙ってみてたわけじゃないぜ。
まあ、とは言え別にオレの助けは必要なかったみたいだがね。ピンチのときに颯爽と登場ってなわけにはいかなかったわけだ。
いやま、実際たいしたもんだよ、はじめて会ったときからできるやつだとは思ってたがね」
こっちの困惑などおかまいなしに、親しげに話しかけてくる男。
まあ確かにこれが初対面というわけではないので、別段改まる必要はないとは思う。
だがしかし、ちょっと待てよとれみりゃは考え直す。
自分は今れみりゃの姿に擬態しているはずなのだ。
当然男とぱちゅりーの目にはれみゃの姿に見えているはずだ。
だが以前男とたちと出合ったとき、自分はまりさに擬態していたはず。
よって今のれみりゃに擬態している自分と、以前のまりさに擬態している自分とが同一ゆっくりであるとわかるはずがないのだ。
それとも今来たばかりと言うのは嘘で、れみりゃに擬態する瞬間を見られていたということか?
いや、それも違う。
自分がれみりゃに擬態する前はちぇんの姿に擬態していたはずだ。
そしてまりさからちぇんへの擬態は、襲ってきたところを返り討ちにしたあと、誰にも見つかるはずのない巣穴で行ったはず。
つまりこの男が以前会ったときとの自分と、今の自分を同一視できる要素は皆無のはずなのである。
ここは知らぬ存ぜぬで通した方がいろいろ面倒くさくなくていいかもしれない。
「うー!うー!おにいさんいったい何の話をしているの?」
「昔さ……」
「?」
シラを切るれみりゃの様子などおかまいなしに、男は話し始める。
「希少種の群れにいったときにさ、あるゆっくりから、他のゆっくりそっくりに擬態する能力のある種族がいると聞いたことがある。
何でも一度見たゆっくりそっくりに見た者を認識させることが出来るらしいな。
その話を聞いたときは眉唾だと思ったよ。事実オレの組織でもそんなゆっくりの存在は確認されてないわけだしね。
だがしかし、こうして実物を目の前で見たとあっちゃ、信じないわけにはいかなくなった。
そもそもゆっくりという存在自体が未だ謎だらけだからな。未だ確認されていない噂だけの希少種なんてざらにいるわけだしな」
男は滔々と語る。
「うー!その擬態するゆっくりが私だってどうしてわかるのかな?」
れみりゃが興味深げに訪ねる。
実際それが今のれみりゃにとっての一番の感心ごとであった。
今まで一度として見破られたことのない擬態をなぜこの男は見破れたのだろうか?
「別に特別なことはしてないさ、ただよーく見てただけさ。実際ほとんど運みたいなものだしね。
まずはじめに気になったのは、前に会ったときにも話したように長まりさの豹変さ。
オレが初めてこの群れで演説をしている長まりさを見たとき、その長まりさは典型的な増長したゲスに映った。
ああいうタイプは自分がこうと思い込んだら絶対に考えを変えない。
一級のゆっくりブリーダーが長い時間をかけて調教してようやく普通のゆっくりになれるかどうかってヤツだよ。
それが次の日にころっと意見を変えるんだから驚いたよ。いったいどんな衝撃的な出来事があの長まりさにあったのか興味が湧いた。
それで直接会いにいったわけだが、実際にお前さんと話してみて、はじめに抱いた感想は『なんか違う』だった。
確かに姿、形、声までそっくり、いや、まったく同一なんだが、だがしかしコイツは違うと思ったね」
「……………」
「そして次の日のちぇんのときも同じことが起きた。
はじめはゲスっぽかったちぇんが、まりさを倒して長になったとたん、まるで別ゆのように振舞いはじめた。
その時確信したよ。ああ、これはまりさやちぇんが別ゆのように心変わりしたわけじゃないんだと。
本当に、別ゆに成り代わっていたいたんだとね」
「……………」
「希少種の群れで聞いた話はそのとき思い出した。
そして全てが同一ゆの行いであると考えれば別に不思議なことはなにもない。
その行動は初めから一貫していたんだからな。
つまり群れが人間に戦いを挑むのを阻止する行動をとった唯一のゆっくりがそうだということさ。
まりさ、ちぇん、そして今はれみりゃか。だがたとえ姿形が変わったとしてもお前自身と言う本質は隠せない。
オレにはわかる!お前の名は『ぬえ』正体不明のゆっくりだ!」
「…………ふっ」
男が言い終わるやいなや、れみりゃはプルプルと震えだし
「ふふっ、あーはっはっはっはっはっはっはっ!お見事だね!」
大笑いしながらスーと上昇すると、一瞬その姿がかすんだようにブレた。
「むきゅきゅ!」
「へえ!」
感嘆の声を上げる男とぱちゅりー。
次の瞬間、空に浮かんでいるのはれみりゃではなく、見たことのないゆっくりの姿だった。
何が特徴的かというと、その背中についた羽?である。
その形は左右で非対称であり、右の羽は赤く、鎌のように途中で鋭く90°に曲がっている。
対して左の羽は青く、先が尖った矢印のように鋭い形状をしていた。
ゆっくりふらんの羽もおかしな形をしているが、これほど妙ではない。
まさに正体不明のゆっくりに相応しい禍々しい形をしてた。
「ふふん!どう?驚いた?私がこの姿を見せるなんてめったにないことだよ!」
ぬえが胸を張る。
「ああ、だろうね。現に絵や資料ですらその姿を見たことがない。
どうりで見つからないはずさ、れいむやまりさのように、通常種に擬態しちまえば、ぜったいに見分けがつかないんだからな」
「すごい、こんなゆっくりがいたなんて!てか、とべるの!」
上空に浮かぶぬえを見て尋ねるぱちゅりー。
「れみりゃや、ふらんほど自由自在ってわけにはいかないけどね。
浮いてゆっくりが走るのと同じくらいのスピードで移動するくらいくらいならわけはないよ!」
自慢げに話すぬえ。
「そりゃすげえ。で、話は変わるがどうしてお前さんあの群れを救おうとしてたんだ?
あの群れで生まれ育ったってわけじゃないだろう?」
「うーんそれはまあ、なんというか、はじめに会ったときに話したよう成り行きというか、乗りかかった舟と言うか……。
この群れの近くで瀕死のれいむがいてね。それでいつものように、このれいむに成り代わってしばらく群れでゆっくりしようと思ったわけ。
でもそしたら、群れの長のバカまりさが、人間たちに戦争を仕掛けるなんて息巻いてたからさ、
そんなバカげた真似をされて群れが潰されちゃかなわないと思って、まりさのおうちにいったんだよ。
そうして、そんなバカなマネはやめろって言ったらケンカになっちゃってね、つい勢いでやっちゃっわけよ。
で、その時はまだこの群れの全体がバカゆっくりの集まりだと気づいてなくてさ、自分が長に擬態して戦争を中止させれば、
丸く収まると思ったってわけ」
「でも失敗した」
「そうなんだよー。長の決定だっていうのに、群れの連中は言うこと聞かないばかりか、挙句の果てにちぇんが私を殺そうと襲ってきてね。
まあ、それはなんとか撃退できたんだけどね」
「むきゅ。その時点で、もう群れの勢いをとめることは難しいとわかってたんじゃないのかしら?」
「そうだね。だから本当はあの時点で見切りをつけてさっさと群れを出るのが正解だったんだと思う。
でもなんだか、ムカついちゃってねえ。もうこうなったら意地でも戦争をとめてやるって気分になっちゃたわけなのだよ」
「むきゅ!とっても真面目なのね!さすが成り行きとはいえ、長をするだけのことはあるわ!」
ぱちゅりーが感心の声をあげる
「え゛、いや別にそんなんじゃないッスけど……。むしろやつらの嫌がることをしてやろうっていうか…」
キラキラと光るぱちゅりーの尊敬の眼差しにちょっと引くぬえ。
「まりさとちぇんの死体はどうした?」
男が話題を変える。
「ああ、それなら、スキを見て捨てようと思っておうちの食料庫の奥に隠しておいた。たぶんまだ同じ場所にあるんじゃないかな。
まあさすがに、ちぇんに擬態したときにまりさの死体を持っていくとバレそうだったから帽子だけにしたけどね」
「むきゅ!あのときの帽子ね。確かにまりさの死体を持っていくと腐敗具合でばれそうだものね」
しきりに感心するぱちゅりー。
「なるほどね。これようやくで全体像が完全につかめたわけだ。
で、お前さんこれからどうするんだ?もうあの群れには未練はないんだろ。
なんだったら希少種の群れまで連れてってやるけど」
「いやー、遠慮しておくよ。おにいさんが言っている群れかどうかはわからないけど、私も昔は希少種の群れにいたんだ。
だけど私は一箇所にはとどまれないタチなのさ。あんな場所でダラダラと過ごすのはゴメンだね」
「ふーん、そう。それじゃオレたちと一緒に来るか?オレはお前さんには興味が湧いたよ」
「うんいいよ!」
あっさりと承諾するぬえ。
「…………えっと、いや、自分から誘っといてなんだが、こんなにあっさりOKされるとは思わなかった。
てっきり断れるかと、だめもとで誘ったんだが本当にいいのか?」
男が確認する。
「別にいいよ。私もおにいさんたちに興味が湧いたとこだしね。だいたい、いい加減野生のゆっくりたちの群れを放浪するのも飽きてきてたとこだしさ、
人間の世界というのも前々から気になってたしね。それにおにいさんは私を縛ったりしなさそうだ」
「わからんよ?騙してペットショップで高値で売るつもりなのかも?」
男はからかうように言う。
「そのつもりなら、初めから声なんてかけないで無理やり連れて行くはずだよ。前に会ったときに言ったようにね。
まっ、心配しなくてもいいよ。飽きたら勝手に出て行くだけだからさ」
「そりゃこっちも気が楽でいいね」
「ふふん、それじゃ」
ぬえはスイーと空中に浮かんだまま男とぱちゅりの近くまで飛んできて、
「長い間か、短い間になるかわからないけどよろしくね!おにいさん!それにぱちゅりー!」
ちょこんと頭を下げた。
「ああ、よろしくな」
「むきゅ!よろしくね!ぬえ」
こうして男はぬえと行動を共にすることになったのだった。
「そんじゃま、最後にさっさと残った仕事を終わらすとするかな」
男は群れの方角を見据えて言う。
これまでの過程から判断して群れの一斉駆除は避けらないということだろう。
「おっと!おにいさん!その仕事は私に任せてもらおうかな」
男に向かってそう主張するぬえ。
「何度も言うようだけど、これは私が乗りかかった船だ。その引導も私の手でつけさせてもらいわけなのだよ」
「うん?まあそれもそうだな。
いいよ。好きなようにやりな。お前が取り逃がしたぶんはオレが処理しておいてやるよ」
「ふふん!さっすがおにいさんは話がわかるね!それじゃ早速行ってくるよ!」
そう言うと、意気揚々と飛んで言ってしまうぬえ。
「むきゅ!大丈夫かしら?群れには結構な数のゆっくりがいるはずだけど…」
心配そうに見つめるぱちゅりー。
「大丈夫だろ。いざとなればオレが何とかするし、それにあいつも伊達に今までゆっくりの群れを放浪してきたわけじゃないだろう。
あの手の群れの対処法も分かってるとは思うがね」
そう気楽な調子の男であった。
そしてここはゆっくりの群れ。
「というわけで、これからは、まりささまたちがこのむれを、しきっていくのぜえ!」
「んほほほほおおおおお!ありすがこのむれを、とかいはにしてみせるわあああああああ!」
「れいむにさからうやつは、みんなせいっさいするから、そのつもりでいてねええええええ!」
群れではもうこれで何度目かになる、新たな群れの指導者が決まっていた。
今度名乗りを上げたのは、ぱちゅりーの部下だったまりさ、ありす、れいむである。
この三匹はリーダーのぱちゅりーと共に、ゲスちぇんを制裁にいったときに突然れみりゃの奇襲を受けたとみなに説明した。
その際、皆で一致団結して何とかれみりゃは撃退したものの、卑劣なる不意打ちによりぱちゅりーは犠牲になったと言うのだ。
そしてぱちゅりーの尊い犠牲とその意思を継ぐために、三匹でこの群れの長をやると主張したのであった。
もちろんそれは事実とは大きく異なる話なのだが、そんなこと群れのゆっくりたちが知っているはずもない。
この話を聞いた群れのゆっくりたちは、ぱちゅりーの死を悲しみ、そしてそれ以上に勇気ある三匹のゆっくりたちを賞賛したのであった。
「ゆうう、ぱちゅりーのことはざんねんだったけど、れみりゃを、げきたいするなんて、
こんなにたのもしいまりさたちが、むれのおさをやってくれれるなんて、あんっしんだね!」
「ともだちのしにもめげず、そのあとをつごうとするなんて、りっぱだみょん!」
「いちじはどうなることかとおもったけど、なんとかなりそうね!
このむれはゆうしゅうなゆっくりがおおいから、ちょっとや、そっとじゃ、びくともしないってことね!」
口々に語りあうゆっくりたち。
「ゆゆん!それじゃあこれからのむれのほうしんをはなすのぜえ!」
長であるまりさが声を張り上げた。
瞬間、広場がシーンと静まり返る。
ゴクリと、息を呑む声が聞こえてきそうなほどである。
みな今まで起こってきた一連の出来事が頭から離れないのだ。
もしこの長たちも、今までのゲスたちと同じようなことを言い出したら……。
そう思うと気が気でないのだ。
だが、長まりさはニヤリと笑うと、
「ゆっふっふっふっ!あんっしんするのぜえ!まりささまたちは、いままでのげすなおさとは、わけがちがうのぜえ!
これよりくそにんげんたちからの、ゆっくりぷれいすだっかんさくせんを、せんっげんするのぜええええええええ!」
「んほおおおおおおおおおおお!ついにとかいにせめいるときがきたのよおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「せいっさいだよおおおおおおおおお!ゆっくりぷれいすをひとりじめしているにんげんは、みんなせいっさいするよおおおおおおお!」
三匹の長が三匹とも、人間との徹底交戦を宣言したのであった。
「「「「ゆおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」
その瞬間広場は、圧倒的熱狂に包まれた。
そう!これだ!自分たちが求めていたのはこれなんだよ!
今までは何かおかしかったんだ、でもこれでやっと元通りだ。
あまりの感動に涙ぐむゆっくりや、うれしーしーをするゆっくりまでいた。
「ゆふふふふふ!みんなよろこんでいるようなのぜえ!
それじゃあさっそく、いまからにんげんのところにのりこむのぜえ!」
「ゆゆ?いかから?」
ゆっくりの集団の中から疑問の声が上がる。
「そうなのぜえ!いつだったかのおさは、にんげんと、こうっしょうなんてなまぬるいことをいっていたけど、
まりささまには、そんなつもりはもうとうないのぜえ!
いまから、むれのぜんゆっくりで、にんげんのところにきしゅうをかけて、いっきにせいあつするのぜえ!
そのために、いま、このばしょにみんなにあつまってもらったというわけなのぜえ!」
長まりさは周りを見回しながら言う。
確かに長まりさの言う通り、今この場所には、群れの全てのゆっくりが集結している。
子ゆっくりや、赤ゆっくりまで例外なくだ。
長まりさは群れ全体に自分が何者かであるかを知らしめるため、そして自らの地位を磐石のものにするために、
出来るだけ速く人間の村へ打って出ることにしたのだ。
長まりさは知っている。このむれには、まだ長の地位を狙っているゆっくりがそこかしこにいることを。
自分とて、れみりゃのアクシデントがなければ、いつかスキをみてぱちゅりーを始末する気でいたのだ。
しかし少々予定が狂い、かなり速い段階でむれのリーダーになってしまった。
まあしかし、起きてしまったことは仕方ない。こうなったら早々に自らの地盤を固める事が最優先事項だ。
そのためには、一刻も早く人間のゆっくりプレイスを奪い取らなければならない。
そしていずれは、隣にいるアホなありすとれいむも始末し、まりささまの一大帝国を……。
「うー!うー!」
「よーし!それじゃあさっそくしゅっぱつなのぜえ!みんなまりささまにつづくのぜえ!」
「うー!うー!」
「みんなおそれることはないんだぜえ!にんげんなんてれみりゃをたおしたときの、ひっさつしゃいにんぐまりさあたっくでいちころなのぜ!」
「うー!うー!」
「だあああああああああああ!なんなのぜええええええええ!さっきからうー!うー!いってるやつはあああああああああ!
まりささまがしゃべってるとちゅうなのぜええええええ!せいっさいしてや………え?」
ふと長まりさは異変に気づく、みなの視線が自分に向けて固まっている。
いや、正確にはその視線は自分の後ろにいる何かに向けれられているのだ。
長まりさは恐る恐る後ろを振り返る。するとそこには、
「「「「「「うわああああああああああああああああ!れみりゃだあああああああああああああああ!」」」」」」
瞬間、広場はパニック状態に陥った。
「「「「「「どじでむれのなかにれみりゃがはいってくるのおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」」
一斉に声を上げるゆっくりたち。
確かに通常、れみりゃがゆっくりたちの群れのテリトリー内に単独で入ってくることなどありえない。
なぜならば、いかに捕食種であるれみりゃとはいえ、群れ全員のゆっくりを相手に勝利を収めることは難しいからである。
いくら飛行できるという大きなアドバンテージを持っているとはいえ、攻撃するさいにはどうしても下降する必要がある。
そこを犠牲覚悟で複数のゆっくりたちに四方から攻められれば回避は難しい。そして一度地面に引きずり降ろされてしまえば、
そのままふくろにされてしまうのは明白である。
そんなわけでよほど飢えているときや、集団で仕掛けるとき以外はゆっくりたちの群れの中までにはれみりゃが襲ってくることはない。
わざわざそんな危険なことをしなくても、群れから離れた所で一匹でいるゆっくりを狙えば事足りるからだ。
だがしかしである、このれみりゃが群れ内に入ってこないという法則は、もし仮に群れ内にれみりゃが入った場合、
群れのゆっくりたちが一致団結し、如何なる犠牲を払ってでも撃退するという覚悟を持っており、
さらにそのことを、れみりゃ側も知っているという前提で成り立つ法則である。
はたしてこの群れの場合はどうだろうか?
本来生きていくために必要な知識を子に十分に伝えることなく、不幸にも死んでいった群れの成体ゆっくりたち、
そして自身の親から積極的に何も学ぼうとしなかった今の群れのゆっくりたち。
この群れのゆっくりたちの認識は、何だかよくわからないが、とにかくれみりゃは群れの内に入っこない、
いや入ってきてはいけないという程度の意識しかない。
当然皆で撃退しようなどと発想にはいたらないのだ。
「どーしてれみりゃがここにいるのおおおおおお!れみりゃはむれにはいれないはずでしょおおおおおお!」
「こんなのおかしよ!ずるいよ!るーるをまもってねええええええ!」
「ゆびいいいいいいい!こわいよおおおおおおお!やくそくをまもらないれみりゃは、はやくどっかいっねええええええ!」
口々に意味不明なセリフを叫ぶゆっくりたち。
この群れのゆっくりたちの認識的に今の事態は、本来群れに入れないはずのれみりゃが、何らかのズルをして群れに入ってきたということなのだろう。
何か自分たちに不都合なことや、ゆっくりできないことがあると、その原因は必ず相手の側にあるという発想。
その対象は、人間だろうとれみりゃだろうと変わることはない。
そしてれみりゃ側もまた知っていた。
この群れのゆっくりたちがこういう発想をするであろうことを。
よって絶対に自分に攻撃を仕掛けてくることなどありえないということを。
もしこれがごく普通の群れならばこうはいかないだろう。自分など簡単返り討ちにされてしまうところだ。
そして実際に、今この段階でリーダー格の三匹のゆっくりが率先して交戦を訴えればれみりゃに勝ち目はないのだ。
だがしかし、その三匹は、
「なんなのぜええええええええ!むれにれみりゃがはいってくるなんてきいてないのぜえええええ!まりささまはにげるのぜえええええ!
たべるなら、ほかのれんちゅうにするのぜえええええええええ!」
「ゆあああああああああ!れいむたべてもおいしくないよ!たべるならむれのみんなをたべてねええええええ!」
「こんなのぜんぜんとかはじゃないわあああああああああああ!」
本来群れの指揮を取るはずの長が、いの一番に逃亡!
「ゆあああああああああああ!おさああああああああああ!おいてかないでえええええええええ!」
「れみりゃをやっつけたんでしょおおおおおお!たたかってよおおおおおおお!」
「もうやだああああああ!おうちかえるうううううううううう!」
これによってこの群れは完全にパニック状態に陥った。
いや、もはやこれは群れと呼べるような大層な代物とはいえないだろう。
ただ頭の悪いゆっくりが集まっただけの『集団』であった。
混乱の極みにある広場。
そんな中、まず最初に犠牲になったのは赤ゆっくり子ゆっくりだった。
「ゆぴぃ!きょわいよおおお!ゆべ!」
「ゆ!ゆ!おかあちゃ…ゆべば!」
「ゆっくちできゅにゃいいいい!ゆぴぎゃああああ!」
我先へと広場から脱出しようとゆっくりたちでごった返す広場の最中、
身体の小さい赤ゆっくり子ゆっくりは次々と潰されていく。
「お、お、おちびじゃああああん、ちぶしちゃだめえええええええ!」
「うるさいいいいいいい!どげええええええ!」
「うあああああああああああ!よくもおちびちゃんたちおおおおおおおおお!
しねええええええ!ゆっくりしねええええええええ!」
続いて同士討ちがはじまった。
自分の子どもを潰され怒りに燃えるゆっくり、一刻も早くここから逃げ出したいがために前のゆっくりを踏み潰すゆっくり、
既に潰れているゆっくりにあんよを取られそのまま後続に踏み潰されるゆっくり。
広場の状況はさながら地獄絵図だった。
「ひええええ、予想はしてたけどここまで酷いことになるとはね」
そんなゆっくりたちの様子を上から眺めながらしみじみ呟くれみりゃ。
「おっ、はじめに逃げ出した集団が広場を抜けたぞ。
ここの後始末はおにいさんに任せて、私はあの連中を追い詰めるとしますかねっと」
そんなことを言いながら、はじめに一目散に逃げ出した、長まりさたちの集団の後を追いかけるれみりゃであった。
「どうじでおいかけてくるんだぜえええええええ!えさなうしろにたくさんころがってるんだぜええええええ!」
必死で逃げながら絶叫を上げる長まりさ。自分を先頭とするゆっくりの集団にピッタリとれみりゃが上空から張り付いているのだ。
既に隣には、同じ長だったれいむやありすの姿はない。おそらく途中で脱落し、後続のゆっくりに踏み潰されて息絶えていることだろう。
しかし長まりさにとってそんなことはどうでもいい。あくまで大事なのは自分の身の安全、自分のゆっくりだ。
幸いな事に未だ自分の俊足にはれみりゃは追いつけないようだが、このままではいつ捕まるかわかったものではない。
何とか後ろにくっついてる連中をおとりにして逃げなければ!
必死に思案する長まりさ。
だがしかし、ゆえに気づいていない。実は逃げ道を、追っているれみりゃによって巧妙に誘導されているということに。
「はあ、はあ、こんな、こんなところで、おわれるかああああああああ!
せっかく、せっかく、ちゃんすがきたのにいいいいいいいい!
まりささまのゆっくりていこくをつくって、そこでゆっく………ああああああああああああああああああああ」
落ちた。
長まりさが理解できたのはそれだけであった。
そう、長まりさたちは、れみりゃによって、崖先へと誘導されていたのだ。
そして気づいたときにはもう遅い、暗がりで視界がよく利かない上に全力疾走でれみりゃの恐怖に追い立てられているゆっくりたちは、
次から次へ、ボトボトと崖下へと死のダイブをすることとなる。
よしんば寸前で崖があることに気づいて止まることができても、後ろからやってくるゆっくりたちに押し出されてやはり同じ運命をたどることになる。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああ」
落下中ただ悲鳴をあげることしか出来ない長まりさ。
数秒後には無残につぶれ地面に黒い染みをつくることになるだろう。
そして、地面との激突の瞬間長まりさは確かに見た!
今まで見たことがない正体不明の物体が空に浮かんでいるのを!
確かに聞いた!その声を!
「あーはっはっはっはっはっはっはっはっ!ざまあないね!私の名前はぬえ!正体不明の飛行物体に怯えて死ね!」
グジャ!
その瞬間地面に黒い染みが広がった。
おしまい。
以下全然読む必要のない後書き。
こんな拙い文章を最後までよんでくださってありがとうございました。
えーとそんなわけで初の希少種の話しでした。
それ以外に言うことは得にないです。
それと遅くなっちゃったんですが、○○あきさん挿絵を描いていただきありがとうございました。
まさか自分の話の絵がかかれる日がくるとは思いもしませんでした。
次回は短めの軽い話しか、男が苦戦するような重めの話しかのどっちかだと思います。
と、まあそんなわけでまた次の機会によろしくお願いします。
ナナシ。
過去作品
anko1502 平等なルールの群れ
anko1617 でいぶの子育て
anko1705 北のドスさま 前編その1
anko1706 北のドスさま 前編その2
anko1765 北のドスさま 後編その1
anko1766 北のドスさま 後編その2
anko1845 お飾り殺ゆ事件 前編 事件編
anko1846 お飾り殺ゆ事件 後編 解決編
anko1919 とってもゆっくりできるはずの群れ
anko2135 ぱちゅりー銀行 前編
anko2134 ぱちゅりー銀行 後編
anko2266 長の資質 前編
anko2267 長の資質 後編
anko2311 野生の掟 前編
anko2312 野生の掟 後編
anko2371 金バッジの価値 前編
anko2372 金バッジの価値 後編
いじめ 自業自得 群れ ゲス 自然界 独自設定 今回はちょっと微妙かも
「うーん。やっぱり地道に演説で説得してくしかないかなー。
うわーめんどくさいー。何でこんなことになっちゃたんだろう」
おうちにて一匹、今後の方針を思案している長まりさ。
如何にして人間との戦争を回避するかに頭をなやませているわけなのだが、
やはりコツコツ反戦を訴え続けていくしか今のところ策はないようだった。
「そもそも初期状態が悪すぎるんだよねー。バカなゆっくりは一度思い込むと簡単には意見を変えないから。
あーやっぱりしこんな群れおっ放り出して、また別のところに行こうかな」
早くも自分の役目を放棄する思考に向かう長まりさ。
そもそも、つい成り行きでこうなってしまったが、自分がこの群れを治める義理などないのだ。
それにとっとと投げ出して群れを出たとしても、あの人間さんは別に自分を責めないような気がしないでもない。
「あの人間さんとぱちゅりーはちょっと不思議な感じだったね。今まで見たことある人間とは違うような気がするよ」
そんなことを思案していると、おうちの外からけたたましい声が聞こえてきた。
「そこにいるのはわかってるよー!げすなまりさはさっさとでてきてねー!」
「?」
外から聞こえてくるとても交友的とは言えない声に眉をひそめる長まりさ。
一応今の自分は群れの長という立場のはずだ、それに対してゲスとは何事だろう?
「ちょっと!いきなりなんなの!……ぜ!
用があるならそっちから入ってくるのぜ!」
「わかったよー!どっちでもおなじことだからねー!」
そう言いながら、ニヤニヤ顔のちぇんがのっそりとおうちの中に入ってきた。
「一体何の用なのぜ!いま私は忙しいのぜ!」
「わかるよー!せんっそうをちゅうしさせるほうほうをかんがえてたんだねー!」
「!そうなのぜ!わかってるのなら話しがはやいのぜ!何かいい案でもあるのかぜ!」
ひょっとしてこのちぇんは自分を支援しに来てくれたのではないか?そんな期待が一瞬長まりさの頭によぎる。
「わかるよー!ちぇんにはとってもいいかんがえがあるんだよー!
それは………しねぇー!!!」
話の途中でいきなり長まりさに素早い体当たりを仕掛けるちぇん。
「どわっと!あぶな!」
それを間一髪避ける長まりさ。
「ちょっといきなりなにすんの!」
「わかるよー!おまえのあくじはぜんぶおみとうしなんだよー!
きのう、にんげんさんとあってはなしをしていたのを、ちぇんはみていたんだよー!」
「ええ!マジ!」
「まじだよー!ちぇんがむれのみんなには、もうはなしちゃったから、まりさはおしまいなんだねー!
だからおとなしくちぇんにせいっさいされろよー!そうすればちぇんはつぎのおさになれるんだー!」
「なんてこったい!」
昨日の人間さんとの接触が目撃されているとは思わなかった。まったくここんところ、こんなんばっかりだ。
しかし、これで群れのゆっくりたちを地道に説得していくという選択肢は失われたわけだ。
なにせ危険だからと人間との戦争中止を訴えるゆっくりが、実は夜に人間と会っていましたなんて怪しいことこの上ない。
説得力の欠片もあったもんじゃないだろう。自分だってそんなヤツの言うことは信用しない。
「じぶんのたちばがわかったみたいだねー!じゃあおとなしくしんでねー!」
「そんなわけにはいくかー!こんなバカばっかりの群れで死ぬなんてゴメンだっての!」
「ゆふふふふふ!やるきなのー!まりさはしってるでしょー!
こゆっくりのころから、ちぇんにけんかでかったことは、いちどもないってことがー!
ちぇんにはぜったいにかてないってわかってたから、ぜんおさをころして、そのすきにおさになるなんて、
ひきょうなてをつかったんだねー!
まりさはちぇんにはかてないんだよー!それくらいわかれよおおおおおおおおおおおおおおお!」
「知るかあああああー!そんなことおおおおー!大体、私はまりさじゃない!私の名前は………!」
狭い巣穴で、二匹の影が交錯した。
そしてしばらく後。
「ぜえ!ぜえ!あーしんどかった。スピードがある分、確かに前のまりさよりも強かったよ。
狭いおうちで戦ってなかったらら危なかったかもね…」
ぜえぜえと荒い息をしながら、おうちから出てきたのはちぇん?だった。
「もうこうなったらヤケクソだ!ちくしょー!とことんまでやってやるぞー!」
ぐおー、と一匹気合を入れると、ちぇんは一匹群れの中心へと向かうのであった。
ざわ…ざわ…。
そしていつもの群れの広場。
例の如く群れのゆっくりたちが集まって、これからのことを噂していた。
「ちぇんがうらぎりものの、げすまりさをしとめたってはなしだよ!」
「さすがとかいはね!いったことは、かならずじっこうする!すてきだわ!」
「みょん!これでこのむれのみらいは、あんっしんだみょん!」
「れいむは、はじめから、あんなげすなまりさじゃなくて、ちぇんがおさをやるべきだとおもってたよ!」
口々に新しい長となるちぇんを褒め称える群れのゆっくりたち。
「ゆゆ!ちぇんがでてきたよ!」
誰かが口に出したとおりに、その場にちぇんが現れた。
「えーあー諸君、ゆっくりしていってねー!」
「「「「ゆっくりしていってね!」」」」
長ちぇんの挨拶に勢いよく返事をする群れのゆっくりたち。
「まずは前長のまりさのことだよー!まりさは確かにちぇんがしとめたよー!
これが証拠のお帽子だよー!」
スッとちぇんは生前、長まりさが被っていたおかざりの帽子を前に差し出す。
「ゆゆ!あれはたしかにまりさがしてたおぼうしさんだよ!」
「やっぱりちぇんはできるゆっくりだね!」
「これで、ちぇんがこのむれのおさにけっていだね!」
お飾りという、ゆっくりにとっては身体の一部ともいえる確かな証拠を出したことで、
ちぇんが長まりさを制裁したことは確実となった。
これにより、次なる群れの長になったことが正式に認められたことになる。
「ゆゆー!みんなありがとねー!それじゃさっそくおさとして、このむれのほうしんをはっぴょうするよー!」
「「「「「ゆー!」」」」」
一斉に返事をするゆっくりたちは、みな期待に目を輝かせている。
この頼れる新しい長の下、素晴らしいゆっくりプレイスを人間の手から奪い取る!
そんな内容のセリフが飛び出すのを、今か今かと待ち構えている。
だが……。
「新しい群れの政策だけど、前長のまりさと同じように、人間さんとの戦争はやめにするよー!
いくらゆっくりできないからって、群れが潰されちゃ意味ないからねー!
まりさはげすだったけど、その点は正しかったんだよー!」
「「「「「………へ?」」」」」
長ちぇんが何を言っているのか、みなしばらく理解できなかった。
これは一体どういうことだ?裏切り者のまりさからちぇんに長が変わったというのに、なんで群れの政策が変わらないんだ?
どうして長ちぇんは、みなで一緒に人間のゆっくりプレイスを奪おうと言ってくれないんだ?
「そういうわけだから、みんなわかってねー!
くれぐれも視察にくる人間さんや、麓の村にちょっかいを出しちゃダメだよー!
それじゃ長の話は終わりだよー!みんなゆっくりしてねー!」
そして呆然とたたずむ群れのゆっくりたちを前に、長ちぇんは言いたいことだけ言うと、
さっさと帰っていってしまった。
またも訪れた理解不明の展開に、今度こそは言葉を失う群れのゆっくりたち。
だがしかし、そんな中、しめたとばかりにほくそ笑むゆっくりがいた。
「むっきょきょきょきょ!これはいよいよ、けんじゃなぱちぇのでばんのようね!むっきょきょきょきょ!」
ゆっくりぱちゅりーはニヤニヤしながらそんなことを呟いたのだった。
「むきゅ!どういうことなの?」
「……………」
思わず感想を口にしするぱちゅりー。今、やや遠くの広場で行われている展開がぱちゅりーには、まったく理解できないのだ。
ここは、群れから少しはなれた場所にある高台。
やはり例によって昨日と同じように群れの様子を探ってた男とぱちゅりーは、そこで再び理解不能の光景を目にしたのだ。
裏切り者の長まりさを制裁し、自分が長になってみなを率いると張り切っていたちぇん。
そしてその言葉通りに長まりさを制裁し、証拠として長まりさの帽子を持ってきた。
遠目だからはっきりとは言い切れないが、恐らくあの帽子は昨日あった長まりさがしていたのと同一のものであろう。
ゆっくりであるぱちゅりーにはそれが確信できた。つまり長まりさはちぇんに間違いなく制裁されてしまったということなのだろう。
せっかく話のわかるまりさだと思ったのに、残念で仕方がない。
それに制裁のきっかけとなったのが自分たちと話しているのを目撃されたからというのも、少々申し訳ない気持ちがあった。
しかしその事実に落ち込むひまもなく、今度は長ちぇんが不可解なことを群れのゆっくりたちの前で言い出したのだ。
なんと自分が殺した長まりさの政策を受け継いで、人間との戦争はやめると言うのだ。
これには、ぱちゅりーも唖然とした。
そもそも、あのちぇんは長まりさのやり方が気に入らないから、わざわざ一騎打ちをしてまで新たな長になったんじゃないんだろうか?
それなのにまりさとまったく同じ政策を取ると言うのだ。まったく意味がわからない。
「……なるほど、だいぶカラクリが読めてきた」
「え!人間さんはどうしてこうなったかわかるの?」
男の呟きに驚きの声を上げるぱちゅりー。
「多分な。というか昨日のまりさに直接会った時点で大体の予想はついていたよ。
そして今この光景を見て、その予想はほぼ確信に変わった。
まあ、今回の件はお前がわからなくても無理はない。単純に予備知識の差だ。
ところで参考までに聞いときたいんだけど、お前さんはこの件に関してどういう風に考えているんだ?」
逆にぱちゅりーに質問する男。
「むきゅ!よくわからないというのが正直なところね。
群れの長が、人間さんたちと戦うのは良くないと言うのはいいことよ。
でもその過程があまりにも不可解すぎるわ。特にあのちぇんは、反人間派だったみたいだしね。
だから可能性の一つとして、わざとそういう言動を取っているんじゃないかとぱちぇは思うのだけど」
「ほう!というと?」
男は興味深げにぱちゅりーに視線を向ける。
「つまりあの演説は私たちを油断させるフェイクなのよ!
今の長ちぇんは、まりさを倒す際に私たちが群れを監視していることを聞き出してから殺した。
だから油断させるために、わざわざ人間との争いはやめると言い出したのよ。
そうして安心させたところで一気に反旗を翻そうと言う腹なんじゃないかしら?」
「なるほど、面白い考えだな。でもそれだと、長ちぇんの言動の説明はできても、長まりさの言動は説明できないぞ」
男が訊ねる。
「それは、ほら!本ゆも言っていた通り気まぐれみたいなものよ。
ぱちぇの見たところ昨日会ったあのまりさはなかなか賢い感じだったわ。
あるいは今まで人間さんの危険性を理解してたけど、群れの雰囲気的に言い出せなかったとかかもしれないしね。
むきゅ、それだけに殺されてしまったのは気の毒で残念ね」
そう言い、ぱちゅりーは目を伏せる。
やはり長まりさが死んでしまったことに責任を感じているのだ。
「そう落ち込むなよ。あのまりさに会いに行こうと言ったのはオレなんだから、責任ならオレにある。
それにな、ぱちゅりー。あのまりさは多分生きてるよ」
「むきゅ?」
男の言葉にピクリと反応して、顔を上げるぱちゅりー。
「どういうこと?確かに帽子しかないから確実に死んでるとはいえないけど、あの長ちぇんがまりさを生かしておくとは思えないわ。
あっ!そうか!つまりあのちぇんとまりさは実はグルってことなの?
群れのみなから反感を持たれているまりさをちぇんが制裁したことにして、ちぇんがまた改めて人間さんとの不戦を訴えていくという作戦ということ?」
「いやいや、そんなまわりくどいことせんでも、二匹が繋がってるなら普通に二匹で反戦を訴えていけばいいじゃん。
わざわざ死んだと見せかける必要なんてないでしょ」
「むきゅううううう!」
頭を抱えるぱちゅりー。本当になんが何だかわからない。
「まあ、いいじゃないか今夜また長ちぇんに話を聞きに行けば」
こともなげに言い放つ男。
「ええええええええええ!またなの?」
驚きの声を上げるぱちゅりー。
「そう、また。
確認したいことがあってね、それで今回の件は全部解決すると思う。
群れのこれからのことも何とかしなきゃならんしね」
そう言い、立ち上がる男。恐らくもう男の中では何らかの結論が出ているのだろう。
それに対して、相変わらずぱちゅりーはまったくどうなっているのかわからず仕舞いである。
男の話によれば、今度あのちぇんに会えば全ての謎が明らかになるらしいのだが、ぱちゅりーはいま一つ実感がわかない。
いったいどうすればこの不可解な事態が解決できるのか、ぱちゅりーにはまったく想像がつかないのであった。
そして群れの外れでは、
「ハア、ハア、ずるいぞ!そんな一度に大勢でくるなんて!」
「むっきょっきょきょ!げすなちぇんが、いったいなにをいっているのかしら!
たたかいはかずよ!いっきうちなんて、ばかなゆっくりのやることね!そんなこともわからないなんて、おお、おろかおろか!
やはり、むれのおさは、おろかものではつとまらないわね!おさには、このけんじゃのぱちぇこそがふさわしいのよ!」
長ちぇんは戦いを強いられていた。
それも一匹ではなく、複数のゆっくりとである。
「さあ、おまえたち!あのげすちぇんをおいつめてころすのよ!
そうしたら、ぱちぇがおさになったあかつきに、むれのかんぶにしてあげるわ!」
「ゆっへっへっへ!たしかにやくそくしたんだぜぇ!」
「んほおおおおおおおおお!おさをれいぷするなんて、はいとくてきねええええええ!もえるわああああああああああああああ!」
「せいっさいだよおおおおおおお!げすなゆっくりはみんなれいむが、せいっさいするよおおおおおおおおお!」
長ちぇんに迫りくる複数のゆっくりたち。
「じょ、冗談じゃないよ!こんなに沢山、一度に相手できるかっての!」
これはたまらないと、一目散に逃げ出す長ちぇん。
「むっきょきょきょきょ!ついにこのぱちぇのじだいがやってくるのよ!むっきょきょきょきょ!」
下品な笑いをしながら、自身の勝利を確信するぱちゅりー。
思えばここまで長い道のりだった。
もともと長の地位は自分こそが相応しいはずだったのだ。群れでの人気だってまりさやちぇんよりも自分のほうがあった。
しかし度重なるアクシデントに見舞われ、泣く泣く今までチャンスを逃してきた。
だが、ついに自分にもチャンスが巡ってきたのだ。この頭の悪いゲスちぇんを倒し、群れの長になり、大軍を率いて人間のゆっくりプレイスを奪うのだ。
そして自分は偉大な森の賢者として、未来永劫語り継がれるのだ。
そのためには今、ここで、確実にこのゲスちぇんをしとめる!決して逃がしてはならない!
「むぎゅ!さあ!にげたげすをおいかけるのよ!」
「にがさないんだぜえええええ!」
「んほおおおおお!つんでれなのねえええええ!」
「せいっさい!せいっさい!」
逃げる長ちぇんを追いかけるぱちゅりー一味。
連日連戦で疲弊している長ちぇんは本来の速度が出せず、その距離はみるみる縮まっていく。
「くっそう!こうなったら奥の手だ!とう!」
ガサガサ!
派手な音を立てながら背の高い草むらの中に飛び込み、その姿隠す長ちぇん。
目くらましのつもりだろうか?
「むきゅ!むだよ!そんなんでかくれたつもり?
いきなさいおまえたち!あのくさむらのかげにかくれている、げすちぇんをしとめるのよ!」
確かに草むらに隠れることで、長ちぇんの姿は見えなくなったが、実際に隠れる瞬間を見られているので、
そこに長ちぇんがいることはモロバレだった。
これでは単なる時間稼ぎ程度にしかならず、逃げ切ることはできないだろう。
「ゆっへっへっへ!ばかなやつなのぜ!そこにいるのはわかっているのぜ!おとなしくまりささまに、せいっさいされるのぜぇ!」
余裕たっぷりにの表情で、じりじりと草むらに近づいていくぱちゅりーの部下ゆっくりたち。
長ちぇんの絶対絶命のピンチと思われたそのとき、突然草むらの中から何かが飛び出してきた。
それは……
「うー!うー!」
「ゆがああああああああああ!どじで、れみりゃがここにいるのおおおおおおおおおおお!」
なんと、草むらから飛び出してきたのは長ちぇんではなく一匹のれみりゃ?だったのだ。
予想だにしない出来事を前にしてパニックになるぱちゅりー一同。
「なんなのぜええええええええ!こんなのがいるなんてきいてないのぜえええええ!まりさはにげるのぜえええええ!
たべるなら、ほかのれんちゅうにするのぜえええええええええ!」
「ゆあああああああああ!れいむたべてもおいしくないよ!たべるならぱちゅりーをたべてねええええ!」
「こんなのぜんぜんとかはじゃないわあああああああああああ!」
突然のれみりゃの登場に、その薄汚い本心をさらけ出しながら、我先へと逃げ出すゆっくりたち。
所詮は目先の利害の一致のみで集まった即席の集団だ。みなで一致団結して戦おうなどという発想には至らない。
「まっ、まちなさい、おまえたち!けんじゃなぱちぇをおいてどこへいくつもり!
あっ、あっ、にげるなあああああああああああああああ!ぱちぇを、いのちがけでたすけろおおおおおおおおおおおお!
ぱちぇは、おさになるゆっくりだぞおおおおおおおおお!げほっ、えれえれえれえれ!」
そして、必然的に一番運動能力の低いぱちゅりーがその場に取り残されることになる。
さらに悪い事に、極度の混乱状態に陥ったぱちゅりーはショックでエレエレと中身を吐き出し始めた。
そんなぱちゅりーに対してれみりゃは、
「うー!うー!…………オラァしねぇ!」
容赦のない怒りの急降下アタックをぶちかました。
「ゆげろばはぁ!」
その体当たりをまともに受けてゲロを吐きながら無残に潰れるぱちゅりー。
「ハア、ハア、ざまあないね!」
着地したれみりゃは疲れた様子で息を吐き出す。
「………さてと、これからどうしようかな」
潰れたゲロ袋をチラリと一瞥し、思案するれみりゃ。
今度はコイツに擬態して、また群れで人間に対しての反戦を訴えるべきだろうか。
「いいや、やめだやめだ、馬鹿馬鹿しい」
自嘲気味に呟くれみりゃ。
れみりゃは悟ったのだ。どんなに自分が立ち回ったところで、この群れのバカ共に人間との戦争を思いとどまらせる事など不可能だということを。
仮に今までと同じ要領で、このぱちゅりーに擬態し、長としてみなの前で反戦を訴えてみたとしよう。
だがしかし、結局何をどう言ったところでこの群れの連中が納得することは決してないだろう。
人間たちがゆっくりできるものを独占している。だからそれらを奪うことは正統なことで、とてもゆっくりできるというのは、
この群れのゆっくりたちにとって、もはや覆すことのできない共通認識なのだ。
それどころか下手に反戦を訴えれば、自分たちの意にそぐわない長として、次なる長としての野心を持つものに命を狙われるだけだ。
今までは何とか切り抜けてこれたが、次も自分が無事ですむとは限らない。
現に今回はかなり危なかった。れみりゃに擬態しても、別に戦闘能力が上がるわけではないのだ。
全員で一斉に掛かられれば恐らく負けていただろう。まあ、バカな上にゲスい連中だからその心配はほとんどなかったのだが。
「ふう、いつものように軽くゆっくりするつもりでこの群れに入り込んだのに、えらい目に会ったよ。
この群れとも、もうお別れだね」
くるりと振り返り、群れのある方角を見つめるれみりゃ。
別段感慨もなにもない。ただ不快な思い出があるだけだ。
恐らくあの群れはこのまま人間さんに戦いを挑み、惨めに全滅することだろう。
別に知ったこっちゃない。そもそも自分があの群れを救う義理など初めからないのだ。
ただ展開の成り行き上そうなっただけのこと。
「あー、なんかどっと疲れちゃったなぁ。
次はもっとまともな群れに滞在したいよ。でもなぁ、なんかだんだんゆっくりたちの群れに入り込むのも飽きてきちゃったな。
頭が悪いやつばっかりでさ」
「そいつはまあ、色々とお疲れ様。なんだったらオレが優秀な群れにでも案内してやろうか?」
「………え?」
突然後ろから声が掛けられる。
驚いて振り返ると、そこにはいつぞやの男とぱちゅりーが立っていた。
「なっ、ちょ…」
「ああ、それと言い訳するわけじゃないけどオレたちがここに到着したのは、お前がそこに転がってるぱちゅりーを潰したときだから。
お前さんが襲われているみたいなのを黙ってみてたわけじゃないぜ。
まあ、とは言え別にオレの助けは必要なかったみたいだがね。ピンチのときに颯爽と登場ってなわけにはいかなかったわけだ。
いやま、実際たいしたもんだよ、はじめて会ったときからできるやつだとは思ってたがね」
こっちの困惑などおかまいなしに、親しげに話しかけてくる男。
まあ確かにこれが初対面というわけではないので、別段改まる必要はないとは思う。
だがしかし、ちょっと待てよとれみりゃは考え直す。
自分は今れみりゃの姿に擬態しているはずなのだ。
当然男とぱちゅりーの目にはれみゃの姿に見えているはずだ。
だが以前男とたちと出合ったとき、自分はまりさに擬態していたはず。
よって今のれみりゃに擬態している自分と、以前のまりさに擬態している自分とが同一ゆっくりであるとわかるはずがないのだ。
それとも今来たばかりと言うのは嘘で、れみりゃに擬態する瞬間を見られていたということか?
いや、それも違う。
自分がれみりゃに擬態する前はちぇんの姿に擬態していたはずだ。
そしてまりさからちぇんへの擬態は、襲ってきたところを返り討ちにしたあと、誰にも見つかるはずのない巣穴で行ったはず。
つまりこの男が以前会ったときとの自分と、今の自分を同一視できる要素は皆無のはずなのである。
ここは知らぬ存ぜぬで通した方がいろいろ面倒くさくなくていいかもしれない。
「うー!うー!おにいさんいったい何の話をしているの?」
「昔さ……」
「?」
シラを切るれみりゃの様子などおかまいなしに、男は話し始める。
「希少種の群れにいったときにさ、あるゆっくりから、他のゆっくりそっくりに擬態する能力のある種族がいると聞いたことがある。
何でも一度見たゆっくりそっくりに見た者を認識させることが出来るらしいな。
その話を聞いたときは眉唾だと思ったよ。事実オレの組織でもそんなゆっくりの存在は確認されてないわけだしね。
だがしかし、こうして実物を目の前で見たとあっちゃ、信じないわけにはいかなくなった。
そもそもゆっくりという存在自体が未だ謎だらけだからな。未だ確認されていない噂だけの希少種なんてざらにいるわけだしな」
男は滔々と語る。
「うー!その擬態するゆっくりが私だってどうしてわかるのかな?」
れみりゃが興味深げに訪ねる。
実際それが今のれみりゃにとっての一番の感心ごとであった。
今まで一度として見破られたことのない擬態をなぜこの男は見破れたのだろうか?
「別に特別なことはしてないさ、ただよーく見てただけさ。実際ほとんど運みたいなものだしね。
まずはじめに気になったのは、前に会ったときにも話したように長まりさの豹変さ。
オレが初めてこの群れで演説をしている長まりさを見たとき、その長まりさは典型的な増長したゲスに映った。
ああいうタイプは自分がこうと思い込んだら絶対に考えを変えない。
一級のゆっくりブリーダーが長い時間をかけて調教してようやく普通のゆっくりになれるかどうかってヤツだよ。
それが次の日にころっと意見を変えるんだから驚いたよ。いったいどんな衝撃的な出来事があの長まりさにあったのか興味が湧いた。
それで直接会いにいったわけだが、実際にお前さんと話してみて、はじめに抱いた感想は『なんか違う』だった。
確かに姿、形、声までそっくり、いや、まったく同一なんだが、だがしかしコイツは違うと思ったね」
「……………」
「そして次の日のちぇんのときも同じことが起きた。
はじめはゲスっぽかったちぇんが、まりさを倒して長になったとたん、まるで別ゆのように振舞いはじめた。
その時確信したよ。ああ、これはまりさやちぇんが別ゆのように心変わりしたわけじゃないんだと。
本当に、別ゆに成り代わっていたいたんだとね」
「……………」
「希少種の群れで聞いた話はそのとき思い出した。
そして全てが同一ゆの行いであると考えれば別に不思議なことはなにもない。
その行動は初めから一貫していたんだからな。
つまり群れが人間に戦いを挑むのを阻止する行動をとった唯一のゆっくりがそうだということさ。
まりさ、ちぇん、そして今はれみりゃか。だがたとえ姿形が変わったとしてもお前自身と言う本質は隠せない。
オレにはわかる!お前の名は『ぬえ』正体不明のゆっくりだ!」
「…………ふっ」
男が言い終わるやいなや、れみりゃはプルプルと震えだし
「ふふっ、あーはっはっはっはっはっはっはっ!お見事だね!」
大笑いしながらスーと上昇すると、一瞬その姿がかすんだようにブレた。
「むきゅきゅ!」
「へえ!」
感嘆の声を上げる男とぱちゅりー。
次の瞬間、空に浮かんでいるのはれみりゃではなく、見たことのないゆっくりの姿だった。
何が特徴的かというと、その背中についた羽?である。
その形は左右で非対称であり、右の羽は赤く、鎌のように途中で鋭く90°に曲がっている。
対して左の羽は青く、先が尖った矢印のように鋭い形状をしていた。
ゆっくりふらんの羽もおかしな形をしているが、これほど妙ではない。
まさに正体不明のゆっくりに相応しい禍々しい形をしてた。
「ふふん!どう?驚いた?私がこの姿を見せるなんてめったにないことだよ!」
ぬえが胸を張る。
「ああ、だろうね。現に絵や資料ですらその姿を見たことがない。
どうりで見つからないはずさ、れいむやまりさのように、通常種に擬態しちまえば、ぜったいに見分けがつかないんだからな」
「すごい、こんなゆっくりがいたなんて!てか、とべるの!」
上空に浮かぶぬえを見て尋ねるぱちゅりー。
「れみりゃや、ふらんほど自由自在ってわけにはいかないけどね。
浮いてゆっくりが走るのと同じくらいのスピードで移動するくらいくらいならわけはないよ!」
自慢げに話すぬえ。
「そりゃすげえ。で、話は変わるがどうしてお前さんあの群れを救おうとしてたんだ?
あの群れで生まれ育ったってわけじゃないだろう?」
「うーんそれはまあ、なんというか、はじめに会ったときに話したよう成り行きというか、乗りかかった舟と言うか……。
この群れの近くで瀕死のれいむがいてね。それでいつものように、このれいむに成り代わってしばらく群れでゆっくりしようと思ったわけ。
でもそしたら、群れの長のバカまりさが、人間たちに戦争を仕掛けるなんて息巻いてたからさ、
そんなバカげた真似をされて群れが潰されちゃかなわないと思って、まりさのおうちにいったんだよ。
そうして、そんなバカなマネはやめろって言ったらケンカになっちゃってね、つい勢いでやっちゃっわけよ。
で、その時はまだこの群れの全体がバカゆっくりの集まりだと気づいてなくてさ、自分が長に擬態して戦争を中止させれば、
丸く収まると思ったってわけ」
「でも失敗した」
「そうなんだよー。長の決定だっていうのに、群れの連中は言うこと聞かないばかりか、挙句の果てにちぇんが私を殺そうと襲ってきてね。
まあ、それはなんとか撃退できたんだけどね」
「むきゅ。その時点で、もう群れの勢いをとめることは難しいとわかってたんじゃないのかしら?」
「そうだね。だから本当はあの時点で見切りをつけてさっさと群れを出るのが正解だったんだと思う。
でもなんだか、ムカついちゃってねえ。もうこうなったら意地でも戦争をとめてやるって気分になっちゃたわけなのだよ」
「むきゅ!とっても真面目なのね!さすが成り行きとはいえ、長をするだけのことはあるわ!」
ぱちゅりーが感心の声をあげる
「え゛、いや別にそんなんじゃないッスけど……。むしろやつらの嫌がることをしてやろうっていうか…」
キラキラと光るぱちゅりーの尊敬の眼差しにちょっと引くぬえ。
「まりさとちぇんの死体はどうした?」
男が話題を変える。
「ああ、それなら、スキを見て捨てようと思っておうちの食料庫の奥に隠しておいた。たぶんまだ同じ場所にあるんじゃないかな。
まあさすがに、ちぇんに擬態したときにまりさの死体を持っていくとバレそうだったから帽子だけにしたけどね」
「むきゅ!あのときの帽子ね。確かにまりさの死体を持っていくと腐敗具合でばれそうだものね」
しきりに感心するぱちゅりー。
「なるほどね。これようやくで全体像が完全につかめたわけだ。
で、お前さんこれからどうするんだ?もうあの群れには未練はないんだろ。
なんだったら希少種の群れまで連れてってやるけど」
「いやー、遠慮しておくよ。おにいさんが言っている群れかどうかはわからないけど、私も昔は希少種の群れにいたんだ。
だけど私は一箇所にはとどまれないタチなのさ。あんな場所でダラダラと過ごすのはゴメンだね」
「ふーん、そう。それじゃオレたちと一緒に来るか?オレはお前さんには興味が湧いたよ」
「うんいいよ!」
あっさりと承諾するぬえ。
「…………えっと、いや、自分から誘っといてなんだが、こんなにあっさりOKされるとは思わなかった。
てっきり断れるかと、だめもとで誘ったんだが本当にいいのか?」
男が確認する。
「別にいいよ。私もおにいさんたちに興味が湧いたとこだしね。だいたい、いい加減野生のゆっくりたちの群れを放浪するのも飽きてきてたとこだしさ、
人間の世界というのも前々から気になってたしね。それにおにいさんは私を縛ったりしなさそうだ」
「わからんよ?騙してペットショップで高値で売るつもりなのかも?」
男はからかうように言う。
「そのつもりなら、初めから声なんてかけないで無理やり連れて行くはずだよ。前に会ったときに言ったようにね。
まっ、心配しなくてもいいよ。飽きたら勝手に出て行くだけだからさ」
「そりゃこっちも気が楽でいいね」
「ふふん、それじゃ」
ぬえはスイーと空中に浮かんだまま男とぱちゅりの近くまで飛んできて、
「長い間か、短い間になるかわからないけどよろしくね!おにいさん!それにぱちゅりー!」
ちょこんと頭を下げた。
「ああ、よろしくな」
「むきゅ!よろしくね!ぬえ」
こうして男はぬえと行動を共にすることになったのだった。
「そんじゃま、最後にさっさと残った仕事を終わらすとするかな」
男は群れの方角を見据えて言う。
これまでの過程から判断して群れの一斉駆除は避けらないということだろう。
「おっと!おにいさん!その仕事は私に任せてもらおうかな」
男に向かってそう主張するぬえ。
「何度も言うようだけど、これは私が乗りかかった船だ。その引導も私の手でつけさせてもらいわけなのだよ」
「うん?まあそれもそうだな。
いいよ。好きなようにやりな。お前が取り逃がしたぶんはオレが処理しておいてやるよ」
「ふふん!さっすがおにいさんは話がわかるね!それじゃ早速行ってくるよ!」
そう言うと、意気揚々と飛んで言ってしまうぬえ。
「むきゅ!大丈夫かしら?群れには結構な数のゆっくりがいるはずだけど…」
心配そうに見つめるぱちゅりー。
「大丈夫だろ。いざとなればオレが何とかするし、それにあいつも伊達に今までゆっくりの群れを放浪してきたわけじゃないだろう。
あの手の群れの対処法も分かってるとは思うがね」
そう気楽な調子の男であった。
そしてここはゆっくりの群れ。
「というわけで、これからは、まりささまたちがこのむれを、しきっていくのぜえ!」
「んほほほほおおおおお!ありすがこのむれを、とかいはにしてみせるわあああああああ!」
「れいむにさからうやつは、みんなせいっさいするから、そのつもりでいてねええええええ!」
群れではもうこれで何度目かになる、新たな群れの指導者が決まっていた。
今度名乗りを上げたのは、ぱちゅりーの部下だったまりさ、ありす、れいむである。
この三匹はリーダーのぱちゅりーと共に、ゲスちぇんを制裁にいったときに突然れみりゃの奇襲を受けたとみなに説明した。
その際、皆で一致団結して何とかれみりゃは撃退したものの、卑劣なる不意打ちによりぱちゅりーは犠牲になったと言うのだ。
そしてぱちゅりーの尊い犠牲とその意思を継ぐために、三匹でこの群れの長をやると主張したのであった。
もちろんそれは事実とは大きく異なる話なのだが、そんなこと群れのゆっくりたちが知っているはずもない。
この話を聞いた群れのゆっくりたちは、ぱちゅりーの死を悲しみ、そしてそれ以上に勇気ある三匹のゆっくりたちを賞賛したのであった。
「ゆうう、ぱちゅりーのことはざんねんだったけど、れみりゃを、げきたいするなんて、
こんなにたのもしいまりさたちが、むれのおさをやってくれれるなんて、あんっしんだね!」
「ともだちのしにもめげず、そのあとをつごうとするなんて、りっぱだみょん!」
「いちじはどうなることかとおもったけど、なんとかなりそうね!
このむれはゆうしゅうなゆっくりがおおいから、ちょっとや、そっとじゃ、びくともしないってことね!」
口々に語りあうゆっくりたち。
「ゆゆん!それじゃあこれからのむれのほうしんをはなすのぜえ!」
長であるまりさが声を張り上げた。
瞬間、広場がシーンと静まり返る。
ゴクリと、息を呑む声が聞こえてきそうなほどである。
みな今まで起こってきた一連の出来事が頭から離れないのだ。
もしこの長たちも、今までのゲスたちと同じようなことを言い出したら……。
そう思うと気が気でないのだ。
だが、長まりさはニヤリと笑うと、
「ゆっふっふっふっ!あんっしんするのぜえ!まりささまたちは、いままでのげすなおさとは、わけがちがうのぜえ!
これよりくそにんげんたちからの、ゆっくりぷれいすだっかんさくせんを、せんっげんするのぜええええええええ!」
「んほおおおおおおおおおおお!ついにとかいにせめいるときがきたのよおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「せいっさいだよおおおおおおおおお!ゆっくりぷれいすをひとりじめしているにんげんは、みんなせいっさいするよおおおおおおお!」
三匹の長が三匹とも、人間との徹底交戦を宣言したのであった。
「「「「ゆおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」
その瞬間広場は、圧倒的熱狂に包まれた。
そう!これだ!自分たちが求めていたのはこれなんだよ!
今までは何かおかしかったんだ、でもこれでやっと元通りだ。
あまりの感動に涙ぐむゆっくりや、うれしーしーをするゆっくりまでいた。
「ゆふふふふふ!みんなよろこんでいるようなのぜえ!
それじゃあさっそく、いまからにんげんのところにのりこむのぜえ!」
「ゆゆ?いかから?」
ゆっくりの集団の中から疑問の声が上がる。
「そうなのぜえ!いつだったかのおさは、にんげんと、こうっしょうなんてなまぬるいことをいっていたけど、
まりささまには、そんなつもりはもうとうないのぜえ!
いまから、むれのぜんゆっくりで、にんげんのところにきしゅうをかけて、いっきにせいあつするのぜえ!
そのために、いま、このばしょにみんなにあつまってもらったというわけなのぜえ!」
長まりさは周りを見回しながら言う。
確かに長まりさの言う通り、今この場所には、群れの全てのゆっくりが集結している。
子ゆっくりや、赤ゆっくりまで例外なくだ。
長まりさは群れ全体に自分が何者かであるかを知らしめるため、そして自らの地位を磐石のものにするために、
出来るだけ速く人間の村へ打って出ることにしたのだ。
長まりさは知っている。このむれには、まだ長の地位を狙っているゆっくりがそこかしこにいることを。
自分とて、れみりゃのアクシデントがなければ、いつかスキをみてぱちゅりーを始末する気でいたのだ。
しかし少々予定が狂い、かなり速い段階でむれのリーダーになってしまった。
まあしかし、起きてしまったことは仕方ない。こうなったら早々に自らの地盤を固める事が最優先事項だ。
そのためには、一刻も早く人間のゆっくりプレイスを奪い取らなければならない。
そしていずれは、隣にいるアホなありすとれいむも始末し、まりささまの一大帝国を……。
「うー!うー!」
「よーし!それじゃあさっそくしゅっぱつなのぜえ!みんなまりささまにつづくのぜえ!」
「うー!うー!」
「みんなおそれることはないんだぜえ!にんげんなんてれみりゃをたおしたときの、ひっさつしゃいにんぐまりさあたっくでいちころなのぜ!」
「うー!うー!」
「だあああああああああああ!なんなのぜええええええええ!さっきからうー!うー!いってるやつはあああああああああ!
まりささまがしゃべってるとちゅうなのぜええええええ!せいっさいしてや………え?」
ふと長まりさは異変に気づく、みなの視線が自分に向けて固まっている。
いや、正確にはその視線は自分の後ろにいる何かに向けれられているのだ。
長まりさは恐る恐る後ろを振り返る。するとそこには、
「「「「「「うわああああああああああああああああ!れみりゃだあああああああああああああああ!」」」」」」
瞬間、広場はパニック状態に陥った。
「「「「「「どじでむれのなかにれみりゃがはいってくるのおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」」
一斉に声を上げるゆっくりたち。
確かに通常、れみりゃがゆっくりたちの群れのテリトリー内に単独で入ってくることなどありえない。
なぜならば、いかに捕食種であるれみりゃとはいえ、群れ全員のゆっくりを相手に勝利を収めることは難しいからである。
いくら飛行できるという大きなアドバンテージを持っているとはいえ、攻撃するさいにはどうしても下降する必要がある。
そこを犠牲覚悟で複数のゆっくりたちに四方から攻められれば回避は難しい。そして一度地面に引きずり降ろされてしまえば、
そのままふくろにされてしまうのは明白である。
そんなわけでよほど飢えているときや、集団で仕掛けるとき以外はゆっくりたちの群れの中までにはれみりゃが襲ってくることはない。
わざわざそんな危険なことをしなくても、群れから離れた所で一匹でいるゆっくりを狙えば事足りるからだ。
だがしかしである、このれみりゃが群れ内に入ってこないという法則は、もし仮に群れ内にれみりゃが入った場合、
群れのゆっくりたちが一致団結し、如何なる犠牲を払ってでも撃退するという覚悟を持っており、
さらにそのことを、れみりゃ側も知っているという前提で成り立つ法則である。
はたしてこの群れの場合はどうだろうか?
本来生きていくために必要な知識を子に十分に伝えることなく、不幸にも死んでいった群れの成体ゆっくりたち、
そして自身の親から積極的に何も学ぼうとしなかった今の群れのゆっくりたち。
この群れのゆっくりたちの認識は、何だかよくわからないが、とにかくれみりゃは群れの内に入っこない、
いや入ってきてはいけないという程度の意識しかない。
当然皆で撃退しようなどと発想にはいたらないのだ。
「どーしてれみりゃがここにいるのおおおおおお!れみりゃはむれにはいれないはずでしょおおおおおお!」
「こんなのおかしよ!ずるいよ!るーるをまもってねええええええ!」
「ゆびいいいいいいい!こわいよおおおおおおお!やくそくをまもらないれみりゃは、はやくどっかいっねええええええ!」
口々に意味不明なセリフを叫ぶゆっくりたち。
この群れのゆっくりたちの認識的に今の事態は、本来群れに入れないはずのれみりゃが、何らかのズルをして群れに入ってきたということなのだろう。
何か自分たちに不都合なことや、ゆっくりできないことがあると、その原因は必ず相手の側にあるという発想。
その対象は、人間だろうとれみりゃだろうと変わることはない。
そしてれみりゃ側もまた知っていた。
この群れのゆっくりたちがこういう発想をするであろうことを。
よって絶対に自分に攻撃を仕掛けてくることなどありえないということを。
もしこれがごく普通の群れならばこうはいかないだろう。自分など簡単返り討ちにされてしまうところだ。
そして実際に、今この段階でリーダー格の三匹のゆっくりが率先して交戦を訴えればれみりゃに勝ち目はないのだ。
だがしかし、その三匹は、
「なんなのぜええええええええ!むれにれみりゃがはいってくるなんてきいてないのぜえええええ!まりささまはにげるのぜえええええ!
たべるなら、ほかのれんちゅうにするのぜえええええええええ!」
「ゆあああああああああ!れいむたべてもおいしくないよ!たべるならむれのみんなをたべてねええええええ!」
「こんなのぜんぜんとかはじゃないわあああああああああああ!」
本来群れの指揮を取るはずの長が、いの一番に逃亡!
「ゆあああああああああああ!おさああああああああああ!おいてかないでえええええええええ!」
「れみりゃをやっつけたんでしょおおおおおお!たたかってよおおおおおおお!」
「もうやだああああああ!おうちかえるうううううううううう!」
これによってこの群れは完全にパニック状態に陥った。
いや、もはやこれは群れと呼べるような大層な代物とはいえないだろう。
ただ頭の悪いゆっくりが集まっただけの『集団』であった。
混乱の極みにある広場。
そんな中、まず最初に犠牲になったのは赤ゆっくり子ゆっくりだった。
「ゆぴぃ!きょわいよおおお!ゆべ!」
「ゆ!ゆ!おかあちゃ…ゆべば!」
「ゆっくちできゅにゃいいいい!ゆぴぎゃああああ!」
我先へと広場から脱出しようとゆっくりたちでごった返す広場の最中、
身体の小さい赤ゆっくり子ゆっくりは次々と潰されていく。
「お、お、おちびじゃああああん、ちぶしちゃだめえええええええ!」
「うるさいいいいいいい!どげええええええ!」
「うあああああああああああ!よくもおちびちゃんたちおおおおおおおおお!
しねええええええ!ゆっくりしねええええええええ!」
続いて同士討ちがはじまった。
自分の子どもを潰され怒りに燃えるゆっくり、一刻も早くここから逃げ出したいがために前のゆっくりを踏み潰すゆっくり、
既に潰れているゆっくりにあんよを取られそのまま後続に踏み潰されるゆっくり。
広場の状況はさながら地獄絵図だった。
「ひええええ、予想はしてたけどここまで酷いことになるとはね」
そんなゆっくりたちの様子を上から眺めながらしみじみ呟くれみりゃ。
「おっ、はじめに逃げ出した集団が広場を抜けたぞ。
ここの後始末はおにいさんに任せて、私はあの連中を追い詰めるとしますかねっと」
そんなことを言いながら、はじめに一目散に逃げ出した、長まりさたちの集団の後を追いかけるれみりゃであった。
「どうじでおいかけてくるんだぜえええええええ!えさなうしろにたくさんころがってるんだぜええええええ!」
必死で逃げながら絶叫を上げる長まりさ。自分を先頭とするゆっくりの集団にピッタリとれみりゃが上空から張り付いているのだ。
既に隣には、同じ長だったれいむやありすの姿はない。おそらく途中で脱落し、後続のゆっくりに踏み潰されて息絶えていることだろう。
しかし長まりさにとってそんなことはどうでもいい。あくまで大事なのは自分の身の安全、自分のゆっくりだ。
幸いな事に未だ自分の俊足にはれみりゃは追いつけないようだが、このままではいつ捕まるかわかったものではない。
何とか後ろにくっついてる連中をおとりにして逃げなければ!
必死に思案する長まりさ。
だがしかし、ゆえに気づいていない。実は逃げ道を、追っているれみりゃによって巧妙に誘導されているということに。
「はあ、はあ、こんな、こんなところで、おわれるかああああああああ!
せっかく、せっかく、ちゃんすがきたのにいいいいいいいい!
まりささまのゆっくりていこくをつくって、そこでゆっく………ああああああああああああああああああああ」
落ちた。
長まりさが理解できたのはそれだけであった。
そう、長まりさたちは、れみりゃによって、崖先へと誘導されていたのだ。
そして気づいたときにはもう遅い、暗がりで視界がよく利かない上に全力疾走でれみりゃの恐怖に追い立てられているゆっくりたちは、
次から次へ、ボトボトと崖下へと死のダイブをすることとなる。
よしんば寸前で崖があることに気づいて止まることができても、後ろからやってくるゆっくりたちに押し出されてやはり同じ運命をたどることになる。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああ」
落下中ただ悲鳴をあげることしか出来ない長まりさ。
数秒後には無残につぶれ地面に黒い染みをつくることになるだろう。
そして、地面との激突の瞬間長まりさは確かに見た!
今まで見たことがない正体不明の物体が空に浮かんでいるのを!
確かに聞いた!その声を!
「あーはっはっはっはっはっはっはっはっ!ざまあないね!私の名前はぬえ!正体不明の飛行物体に怯えて死ね!」
グジャ!
その瞬間地面に黒い染みが広がった。
おしまい。
以下全然読む必要のない後書き。
こんな拙い文章を最後までよんでくださってありがとうございました。
えーとそんなわけで初の希少種の話しでした。
それ以外に言うことは得にないです。
それと遅くなっちゃったんですが、○○あきさん挿絵を描いていただきありがとうございました。
まさか自分の話の絵がかかれる日がくるとは思いもしませんでした。
次回は短めの軽い話しか、男が苦戦するような重めの話しかのどっちかだと思います。
と、まあそんなわけでまた次の機会によろしくお願いします。
ナナシ。
過去作品
anko1502 平等なルールの群れ
anko1617 でいぶの子育て
anko1705 北のドスさま 前編その1
anko1706 北のドスさま 前編その2
anko1765 北のドスさま 後編その1
anko1766 北のドスさま 後編その2
anko1845 お飾り殺ゆ事件 前編 事件編
anko1846 お飾り殺ゆ事件 後編 解決編
anko1919 とってもゆっくりできるはずの群れ
anko2135 ぱちゅりー銀行 前編
anko2134 ぱちゅりー銀行 後編
anko2266 長の資質 前編
anko2267 長の資質 後編
anko2311 野生の掟 前編
anko2312 野生の掟 後編
anko2371 金バッジの価値 前編
anko2372 金バッジの価値 後編