ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2951 何がれいむに起ったか?
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ankoss
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『何がれいむに起ったか?』 11KB
制裁 注意書きがあります
制裁 注意書きがあります
注意!
善良な飼いゆっくりが殺されます
善良な飼いゆっくりが殺されます
ひときわ冷たい風が吹いた。
「ゆぴっ! なんだかさむくなってきたよ! ゆっくりしないで、もうおうちにかえるよ!」
そう言って、れいむはおうちに向かって跳ねはじめた。
お兄さんとれいむのおうち。
「ゆっ、ゆっ、ゆっ! まっててね、おにいさん!」
赤いおリボンと、それに付いた金色のバッヂが風に揺れる。
野良ゆっくりだったれいむは、かつて小さな公園で暮らしていた。
しかし、幸運にも優しいお兄さんに拾われたあの日から、れいむは飼いゆっくりに――「お兄さんのれいむ」になったのだ。
「ゆっ、ゆっ、ゆっ! れいむがおうちにかえるよ!」
おうちにかえって、ほかほかのごはんを食べて、暖かい布団で眠ろう。
ちょっと遅くなってしまったかもしれない。お兄さんに叱られないだろうか。
先日夜更かしをした時など、お兄さんにおでこをコツンとやられた挙句、寝ない子の所に現れるというおばけのお話を聞かされてしまった。
あれは怖かった。れいむが「やめてね! こわいよ!」とお願いしたのに、お兄さんは楽しそうにお話を続けた。
いじわるなお兄さんだ。
しかし、それもお兄さんの愛情表現だということを、れいむは知っている。
れいむが悪いことをしたのがいけなかったのだ。
おばけのお話で眠れなくなったれいむを、お兄さんは自分のお布団に入れてくれた。
その夜はお兄さんと一緒に、朝までゆっくり眠ることができた。
そう。
お兄さんはいつも、れいむのことを考えてくれているのだ。
「ゆっ、ゆっ、ゆっ! さむいかぜさんなんか、へっちゃらっ! だよ!」
れいむは幸せだった。
「ゆぴっ! なんだかさむくなってきたよ! ゆっくりしないで、もうおうちにかえるよ!」
そう言って、れいむはおうちに向かって跳ねはじめた。
お兄さんとれいむのおうち。
「ゆっ、ゆっ、ゆっ! まっててね、おにいさん!」
赤いおリボンと、それに付いた金色のバッヂが風に揺れる。
野良ゆっくりだったれいむは、かつて小さな公園で暮らしていた。
しかし、幸運にも優しいお兄さんに拾われたあの日から、れいむは飼いゆっくりに――「お兄さんのれいむ」になったのだ。
「ゆっ、ゆっ、ゆっ! れいむがおうちにかえるよ!」
おうちにかえって、ほかほかのごはんを食べて、暖かい布団で眠ろう。
ちょっと遅くなってしまったかもしれない。お兄さんに叱られないだろうか。
先日夜更かしをした時など、お兄さんにおでこをコツンとやられた挙句、寝ない子の所に現れるというおばけのお話を聞かされてしまった。
あれは怖かった。れいむが「やめてね! こわいよ!」とお願いしたのに、お兄さんは楽しそうにお話を続けた。
いじわるなお兄さんだ。
しかし、それもお兄さんの愛情表現だということを、れいむは知っている。
れいむが悪いことをしたのがいけなかったのだ。
おばけのお話で眠れなくなったれいむを、お兄さんは自分のお布団に入れてくれた。
その夜はお兄さんと一緒に、朝までゆっくり眠ることができた。
そう。
お兄さんはいつも、れいむのことを考えてくれているのだ。
「ゆっ、ゆっ、ゆっ! さむいかぜさんなんか、へっちゃらっ! だよ!」
れいむは幸せだった。
◆◆◆◆◆
「とうっちゃくっ!」
人間さん用ドアの下に取り付けられた小さなドア。それをくぐってれいむは玄関に入る。
寒いお外とは、もうおさらばだ。
「ぽーかぽーか! ゆっくりできるね!」
おうちの中から流れ込んでくる暖かい空気に、ふわりと包まれる。夢見心地。
「ゆふふっ!」
れいむは目を閉じた。
幸せだ。
野良ゆっくりには、決して味わうことのできない気分。
そう、今のれいむは飼いゆっくりなのだ。
「ゆっ! おにいさんに『ただいま』のごあいさつをするよ!」
傍らにあった柔らかい布の上で「こーろこーろするよ!」 とひとしきり転がってから、れいむはおうちにあがる。
おうちの中は暖く、いい匂いがした。れいむはますます幸せな気分になる。
「おにいさんはどこかな!」
お部屋をのぞく。いない。なら、このお部屋は? ここはドアが開かない。
ひとつのお部屋の前でぴたりと足を止める。そこにお兄さんがいた。
れいむに背中を向けて座っているお兄さん。何だか緊張する。
でも大丈夫だ。れいむはできる子。しっかりやれる。
「おにいさん、ゆっくりただいまっ! れいむがかえったよっ! ゆっくゆっくりしていってねっ!」
大きな声で、元気にご挨拶。少しつかえてしまったが、お兄さんは気を悪くしていないだろうか。
するとお兄さんは、体をびくっと揺らし、それからゆっくりと振り向いた。
「ゆっ?」
れいむは思わず声を出してしまった
お兄さんが、おめめを大きく開き、ひどくびっくりしたような顔をしていたからだ。
「ゆゆっ? ど、どうしたの、おにいさん!」
そう聞くと、お兄さんは顔を伏せてしまった。どうしたのだろう。
「おにいさん! ねえ、どうしたの?」
「……」
「なあに? れいむ、きこえないよ?」
「……」
「ゆ? ゆゆ?」
何か言っているようだが、お声が小さくて聞こえない。
痺れをきらして、れいむはお兄さんに近づいた。同時に、お兄さんが立ち上がる。
「ねえ、おにいさん――」
瞬間、れいむのおめめの前が真っ白になった。
次に、どさっ、という音と衝撃に襲われる。
「ゆっぎい……がはあっ!?」
気がつくと、れいむはうつ伏せに倒れていた。
痛い。何だかよくわからないが、とにかく体が痛い。
お兄さんに何かされた? まさか、そんな。
「いだっいいいい! いだいよおおおっ!」どうにか声を絞り出す。「ゆっぐりでぎないいいいっ!?」
涙の流れるおめめを薄く開けると、あんよが見えた。お兄さんのあんよだ。
「おにいざん……! れいぶ、いだいいだいだよ……! だっ、だずげでね……! れいぶをだずげでね……!」
お兄さんのあんよが視界から消える。「いだい、いだい」と唸っていると、急に背中に何かがのしかかってきた。
重い。痛い。苦しい。
「ゆんぎいいいいい……! ぐ、ぐるじいいいいいい……!?」
「ふざけやがって……」
「お、おにいざん……?」
「なあ、おい。よくもまあ、のこのこと来られたもんだな」
「ゆ……ゆぐう!?」
苦しみながら、どうにか体を捻る。見上げると、お兄さんのお顔がちらりと見えた。ゆっくりしていない表情だ。
そして理解する。背中の重さの正体は、お兄さんのあんよだ。れいむはお兄さんに踏まれている。
野良だった頃、ゆっくりできない人間さんに同じことをやられたことがあった。
「づ、づぶれるうううう……。ど、どぼじでごんなごどずるのおおおお……!?」
「どうしても何もないだろう」
「わ、がら……ない、よ……。ゆっぐり、ぜづめい、じ、で、ね……!」
「こいつっ!」
背中の重みが消えたと同時に、ぽんぽんに激しい痛みが走った。今度は理解できた。お兄さんに蹴られたのだ。
れいむは壁にぶつかって、弾んで、床に落ちた。
「ゆがあっ! いだい、いだいいいい……!」
痛むぽんぽんを揉み上げで擦ろうとする前に、お兄さんのあんよが襲ってきた。
「ゆぎいっ! いだいっ! やべでねっ! やべでねっ! どぼじでれいぶをげるのっ!?」
「わからない!? ふざけんなよ、この野郎っ!」
「いづもみだいにながよぐじようねっ! ごあいざづのしっばいならあやばるがらっ! げらないでねっ!」
「このっ……餡子脳も大概にしろ!」
「ゆえええええええんっ! おにいざん、やべでよおおおおっ!」
恐怖と痛みの中にあって、れいむは優しかったお兄さんを思い出していた。
つい昨日、公園をお散歩していた時だって、あんなに優しかったではないか。
ゆっくりした笑顔。おつむをなでなでしてくれた、大きなおてて。
そんなお兄さんが、どうしてこんなことをするのか。
悲しくて悲しくて、蹴られながらもれいむは必死に叫んだ。
「ぼうやべでえっ! やざじがっだっ! あのやざじがっだおにいざんにもどっでよおおおおおっ!」
れいむの気持ちが通じたのか、お兄さんのあんよがぴたりと止まる。
「なんだと……?」
「ゆっぐ、ゆっぐ……ぞうだよ! おにいざんは……れいぶのおにいざんは、いづもれいぶにやざじぐじでぐれだよ!」
「この期に及んで寝ぼけたこと言ってんじゃねえっ!!」
「どぼじでそんなごどいうのおおおおおお!?」
「おまえみたいなクソ饅頭に、そんなこと言われる筋合いはねえってんだよ!」
「きのうだっで! きのうだっでわらいかけでぐれだっ! なーでなーでじでぐれだっ!」
れいむの必死の訴えに、お兄さんが目を大きく見開いたのがわかった。
「おにいざんっ! れいぶは、おにいざんのれいぶなんだよっ!」
今のお兄さんは何か勘違いして怒っているだけだ。
落ち着けば、すぐに優しいお兄さんに戻ってくれるはず。れいむと一緒に、ゆっくりしてくれるはず。
痛くても、ここは耐えるべきだ。弱気になるな。引いては、くじけてはいけない。
涙声で、しかし大声で胸を張って叫ぶ。
「じっでるもんっ! いっじょにくらじでるれいむは、じっでるもんっ! れいぶは……おにいざんのれいぶだもんっ!」
「……ああ、そうか。そういうつもりか」
お兄さんはしきりに頷いている。勘違いに気づいてくれたのだろうか。
そう、きっとただの勘違い。れいむが心配する必要なんてない。大丈夫だ。
「おにいざんは、やざじいひとだっ! ゆっぐりじだひとだっ! れいぶはしっでいるよっ!」
「いい加減に黙れ。おまえは……おまえは、とんでもないことをしてくれたんだ。わかってんのか」
「ど、どんでもない、ごど……?」
打って変わって静かになったお兄さんの口調に、れいむは、ぎくり、とした。
「わ、わがらないよ! れいむ……なんにもしていないよ!」
「まだ言うかよ、このクソ饅頭がっ!」
お兄さんの両方のおててが、れいむの揉み上げにかかった。
「ゆゆっ!? やめてね! もみあげさんにさわらないでね!」
「うるせえっ!」
お兄さんが揉み上げを引っ張ると同時に、れいむの体が宙に浮いた。
離れていく床が見える。楽しさと喜びに大きくお口が開いた。
「ゆっ! おそらをとんでいるみたいっ!」
一瞬で視界が切り替わる。その「キリッ!」としたおめめが次に映し出したのは壁だ。
「ゆぶうっ!?」
激突。れいむのお口の中に餡子の味が広がる。
体が横に引っ張られ、壁から離れる。
「おっ、おぞらをっ!?」
言葉の途中で、また壁にぶつかる。今度は「ぶえっ!」と餡子を噴き出してしまった。
「ぎゃっ! ぎゅがっ! ぎぎぎゃっ!」
二度三度とそれを繰り返されたあと、れいむは床に放り出された。
全身もれなく痛い。特にお顔と揉み上げの付け根がゆっくりできない。
「いだい……いだいよお……」
「クソが……」
お兄さんは「はあ、はあ」と息を荒げながら、れいむのおリボンをつかんだ。
「ゆゆう!? やべでね! やべでね!」
「うるせえんだよ!」
お兄さんはれいむのおリボンについている金バッヂを奪おうとしている。
飼いゆっくりの、そしてエリートゆっくりの証、金バッヂ。
これを奪われてしまったら、れいむは――
「やべでねっ! やべでねっ!」
揉み上げを使ってどうにかお兄さんのおててを払おうとするが、いかんせんな大きさも長さも、強さも違いすぎる。
「やべでねっ! ばっぢざんをとらないでねっ! れいぶのばっぢざんっ!」
ぶちっ、という音とともに、おリボンからバッヂが引き離されたことがわかった。お兄さんの手の中のバッヂを見て、れいむは絶望した。
「うわあああああっ! れいぶのきんばっぢざんがあああああああっ!?」
「ふざけんな! てめえみたいなクソ饅頭に、こいつは過ぎた代物だ!」
「れいぶのっ! れいぶのばっぢざんっ! がえじでっ!? がえじでっ!?」
苦労して手に入れた金バッヂ。
必死に「かえしてね! かえしてね!」とお兄さんのあんよに取り縋っても、ただ蹴られるだけだった。どんなにお願いしても無駄。バッヂは返してもらえない。
「ゆあああ……!どぼじでええ……!」
どうしてこんなことに。
あの時――野良ゆっくりから飼いゆっくりになれた時は、幸せの絶頂だった。
優しいお兄さん。大きなおうち。金バッヂ。
今まで大変だったが、これでゆっくりしたゆん生を送れると思った。
「ゆっぐ、ゆっぐ……! れいぶは……れいぶは……」
「つくづく馬鹿なんだな、おまえはよ」
「ゆっぐ……ゆっぐ……」
「毎日顔を合わせてる飼い主の俺に、バレないとでも思ったのか」
「ゆぐっ!?」
まさか。
いや、しかし。
「れいぶは……れいぶは……」
「答えろよ、クソ饅頭」
おつむを蹴られた。
「いだいっ!」
「答えろ」
「れいぶは……! おにいざんのれいぶになっで……! れいぶは……!」
公園で出会ったお兄さん。野良のれいむにも優しかったお兄さん。
このお兄さんとなら、幸せになれると思った。
ほかほかのごはんを食べて、暖かい布団で眠る。
いずれはかわいいお嫁さんをもらって、かわいいおちびちゃんたちに囲まれて――
しかしそれは、れいむの夢物語でしかなかったのか。
所詮、野良に生まれたゆっくりは、野良として死ぬしかなかったのか。
「そうかよ」
「ゆっぐ、ゆっぐ……!」
「そのために、他ゆんを殺したのか? ええ、おい」
「ゆひいっ!」
また蹴られた。
蹴られたことよりも、お兄さんのお口から出た「殺した」という言葉が痛かったし、怖かった。
そして理解した。
お兄さんはわかっている。
勘違いで怒っているわけではなかった。
お兄さんは完全にわかっている。れいむのしたことの、何もかも。
そう。
『勘違い』はれいむの願望でしかなかったのだ。
「おまえが家に来る前、保健所から連絡があったよ」
「ゆべえっ!」
「飼いゆっくりのお飾りには、バッヂの他にもタグ――目印が付いてるんだ。知らなかったろ」
「ゆぎいいっ!」
目印。
知らなかった。気づきもしなかった。
「わかるか」
「やべで……」
もうやめて。蹴らないで。言わないで。れいむが悪かったから。
「おまえは飼いゆっくりを殺すっていうタブーを侵したんだ、クソ饅頭」
「いびゃあっ! やべで! もうやべでよお!」
「『やめて』じゃねえよ。……いいか、おまえ、一言も謝ってねえぞ。せめて謝ったらどうだ」
「やべっ、やべでえっ!」
二度、三度と続けざまに蹴られる。
「謝れ」
「ご、ごべんだざいい……」
まるで夢や希望が、謝罪の言葉と一緒にお口から流れ出ていくようだった。
なんであんなことをしたのか。
なんであんなことをして、幸せになれると思ったのか。
「何に対して謝ってんだ。おまえ、本当にわかってんのか」
「ゆ……れ……れいぶ……を」
「あ? 聞こえねえよ」
「ゆひいっ! れいぶをっ! おにいざんのれいぶをごろじでえっ! ずびばぜんでじだあっ!」
人間さん用ドアの下に取り付けられた小さなドア。それをくぐってれいむは玄関に入る。
寒いお外とは、もうおさらばだ。
「ぽーかぽーか! ゆっくりできるね!」
おうちの中から流れ込んでくる暖かい空気に、ふわりと包まれる。夢見心地。
「ゆふふっ!」
れいむは目を閉じた。
幸せだ。
野良ゆっくりには、決して味わうことのできない気分。
そう、今のれいむは飼いゆっくりなのだ。
「ゆっ! おにいさんに『ただいま』のごあいさつをするよ!」
傍らにあった柔らかい布の上で「こーろこーろするよ!」 とひとしきり転がってから、れいむはおうちにあがる。
おうちの中は暖く、いい匂いがした。れいむはますます幸せな気分になる。
「おにいさんはどこかな!」
お部屋をのぞく。いない。なら、このお部屋は? ここはドアが開かない。
ひとつのお部屋の前でぴたりと足を止める。そこにお兄さんがいた。
れいむに背中を向けて座っているお兄さん。何だか緊張する。
でも大丈夫だ。れいむはできる子。しっかりやれる。
「おにいさん、ゆっくりただいまっ! れいむがかえったよっ! ゆっくゆっくりしていってねっ!」
大きな声で、元気にご挨拶。少しつかえてしまったが、お兄さんは気を悪くしていないだろうか。
するとお兄さんは、体をびくっと揺らし、それからゆっくりと振り向いた。
「ゆっ?」
れいむは思わず声を出してしまった
お兄さんが、おめめを大きく開き、ひどくびっくりしたような顔をしていたからだ。
「ゆゆっ? ど、どうしたの、おにいさん!」
そう聞くと、お兄さんは顔を伏せてしまった。どうしたのだろう。
「おにいさん! ねえ、どうしたの?」
「……」
「なあに? れいむ、きこえないよ?」
「……」
「ゆ? ゆゆ?」
何か言っているようだが、お声が小さくて聞こえない。
痺れをきらして、れいむはお兄さんに近づいた。同時に、お兄さんが立ち上がる。
「ねえ、おにいさん――」
瞬間、れいむのおめめの前が真っ白になった。
次に、どさっ、という音と衝撃に襲われる。
「ゆっぎい……がはあっ!?」
気がつくと、れいむはうつ伏せに倒れていた。
痛い。何だかよくわからないが、とにかく体が痛い。
お兄さんに何かされた? まさか、そんな。
「いだっいいいい! いだいよおおおっ!」どうにか声を絞り出す。「ゆっぐりでぎないいいいっ!?」
涙の流れるおめめを薄く開けると、あんよが見えた。お兄さんのあんよだ。
「おにいざん……! れいぶ、いだいいだいだよ……! だっ、だずげでね……! れいぶをだずげでね……!」
お兄さんのあんよが視界から消える。「いだい、いだい」と唸っていると、急に背中に何かがのしかかってきた。
重い。痛い。苦しい。
「ゆんぎいいいいい……! ぐ、ぐるじいいいいいい……!?」
「ふざけやがって……」
「お、おにいざん……?」
「なあ、おい。よくもまあ、のこのこと来られたもんだな」
「ゆ……ゆぐう!?」
苦しみながら、どうにか体を捻る。見上げると、お兄さんのお顔がちらりと見えた。ゆっくりしていない表情だ。
そして理解する。背中の重さの正体は、お兄さんのあんよだ。れいむはお兄さんに踏まれている。
野良だった頃、ゆっくりできない人間さんに同じことをやられたことがあった。
「づ、づぶれるうううう……。ど、どぼじでごんなごどずるのおおおお……!?」
「どうしても何もないだろう」
「わ、がら……ない、よ……。ゆっぐり、ぜづめい、じ、で、ね……!」
「こいつっ!」
背中の重みが消えたと同時に、ぽんぽんに激しい痛みが走った。今度は理解できた。お兄さんに蹴られたのだ。
れいむは壁にぶつかって、弾んで、床に落ちた。
「ゆがあっ! いだい、いだいいいい……!」
痛むぽんぽんを揉み上げで擦ろうとする前に、お兄さんのあんよが襲ってきた。
「ゆぎいっ! いだいっ! やべでねっ! やべでねっ! どぼじでれいぶをげるのっ!?」
「わからない!? ふざけんなよ、この野郎っ!」
「いづもみだいにながよぐじようねっ! ごあいざづのしっばいならあやばるがらっ! げらないでねっ!」
「このっ……餡子脳も大概にしろ!」
「ゆえええええええんっ! おにいざん、やべでよおおおおっ!」
恐怖と痛みの中にあって、れいむは優しかったお兄さんを思い出していた。
つい昨日、公園をお散歩していた時だって、あんなに優しかったではないか。
ゆっくりした笑顔。おつむをなでなでしてくれた、大きなおてて。
そんなお兄さんが、どうしてこんなことをするのか。
悲しくて悲しくて、蹴られながらもれいむは必死に叫んだ。
「ぼうやべでえっ! やざじがっだっ! あのやざじがっだおにいざんにもどっでよおおおおおっ!」
れいむの気持ちが通じたのか、お兄さんのあんよがぴたりと止まる。
「なんだと……?」
「ゆっぐ、ゆっぐ……ぞうだよ! おにいざんは……れいぶのおにいざんは、いづもれいぶにやざじぐじでぐれだよ!」
「この期に及んで寝ぼけたこと言ってんじゃねえっ!!」
「どぼじでそんなごどいうのおおおおおお!?」
「おまえみたいなクソ饅頭に、そんなこと言われる筋合いはねえってんだよ!」
「きのうだっで! きのうだっでわらいかけでぐれだっ! なーでなーでじでぐれだっ!」
れいむの必死の訴えに、お兄さんが目を大きく見開いたのがわかった。
「おにいざんっ! れいぶは、おにいざんのれいぶなんだよっ!」
今のお兄さんは何か勘違いして怒っているだけだ。
落ち着けば、すぐに優しいお兄さんに戻ってくれるはず。れいむと一緒に、ゆっくりしてくれるはず。
痛くても、ここは耐えるべきだ。弱気になるな。引いては、くじけてはいけない。
涙声で、しかし大声で胸を張って叫ぶ。
「じっでるもんっ! いっじょにくらじでるれいむは、じっでるもんっ! れいぶは……おにいざんのれいぶだもんっ!」
「……ああ、そうか。そういうつもりか」
お兄さんはしきりに頷いている。勘違いに気づいてくれたのだろうか。
そう、きっとただの勘違い。れいむが心配する必要なんてない。大丈夫だ。
「おにいざんは、やざじいひとだっ! ゆっぐりじだひとだっ! れいぶはしっでいるよっ!」
「いい加減に黙れ。おまえは……おまえは、とんでもないことをしてくれたんだ。わかってんのか」
「ど、どんでもない、ごど……?」
打って変わって静かになったお兄さんの口調に、れいむは、ぎくり、とした。
「わ、わがらないよ! れいむ……なんにもしていないよ!」
「まだ言うかよ、このクソ饅頭がっ!」
お兄さんの両方のおててが、れいむの揉み上げにかかった。
「ゆゆっ!? やめてね! もみあげさんにさわらないでね!」
「うるせえっ!」
お兄さんが揉み上げを引っ張ると同時に、れいむの体が宙に浮いた。
離れていく床が見える。楽しさと喜びに大きくお口が開いた。
「ゆっ! おそらをとんでいるみたいっ!」
一瞬で視界が切り替わる。その「キリッ!」としたおめめが次に映し出したのは壁だ。
「ゆぶうっ!?」
激突。れいむのお口の中に餡子の味が広がる。
体が横に引っ張られ、壁から離れる。
「おっ、おぞらをっ!?」
言葉の途中で、また壁にぶつかる。今度は「ぶえっ!」と餡子を噴き出してしまった。
「ぎゃっ! ぎゅがっ! ぎぎぎゃっ!」
二度三度とそれを繰り返されたあと、れいむは床に放り出された。
全身もれなく痛い。特にお顔と揉み上げの付け根がゆっくりできない。
「いだい……いだいよお……」
「クソが……」
お兄さんは「はあ、はあ」と息を荒げながら、れいむのおリボンをつかんだ。
「ゆゆう!? やべでね! やべでね!」
「うるせえんだよ!」
お兄さんはれいむのおリボンについている金バッヂを奪おうとしている。
飼いゆっくりの、そしてエリートゆっくりの証、金バッヂ。
これを奪われてしまったら、れいむは――
「やべでねっ! やべでねっ!」
揉み上げを使ってどうにかお兄さんのおててを払おうとするが、いかんせんな大きさも長さも、強さも違いすぎる。
「やべでねっ! ばっぢざんをとらないでねっ! れいぶのばっぢざんっ!」
ぶちっ、という音とともに、おリボンからバッヂが引き離されたことがわかった。お兄さんの手の中のバッヂを見て、れいむは絶望した。
「うわあああああっ! れいぶのきんばっぢざんがあああああああっ!?」
「ふざけんな! てめえみたいなクソ饅頭に、こいつは過ぎた代物だ!」
「れいぶのっ! れいぶのばっぢざんっ! がえじでっ!? がえじでっ!?」
苦労して手に入れた金バッヂ。
必死に「かえしてね! かえしてね!」とお兄さんのあんよに取り縋っても、ただ蹴られるだけだった。どんなにお願いしても無駄。バッヂは返してもらえない。
「ゆあああ……!どぼじでええ……!」
どうしてこんなことに。
あの時――野良ゆっくりから飼いゆっくりになれた時は、幸せの絶頂だった。
優しいお兄さん。大きなおうち。金バッヂ。
今まで大変だったが、これでゆっくりしたゆん生を送れると思った。
「ゆっぐ、ゆっぐ……! れいぶは……れいぶは……」
「つくづく馬鹿なんだな、おまえはよ」
「ゆっぐ……ゆっぐ……」
「毎日顔を合わせてる飼い主の俺に、バレないとでも思ったのか」
「ゆぐっ!?」
まさか。
いや、しかし。
「れいぶは……れいぶは……」
「答えろよ、クソ饅頭」
おつむを蹴られた。
「いだいっ!」
「答えろ」
「れいぶは……! おにいざんのれいぶになっで……! れいぶは……!」
公園で出会ったお兄さん。野良のれいむにも優しかったお兄さん。
このお兄さんとなら、幸せになれると思った。
ほかほかのごはんを食べて、暖かい布団で眠る。
いずれはかわいいお嫁さんをもらって、かわいいおちびちゃんたちに囲まれて――
しかしそれは、れいむの夢物語でしかなかったのか。
所詮、野良に生まれたゆっくりは、野良として死ぬしかなかったのか。
「そうかよ」
「ゆっぐ、ゆっぐ……!」
「そのために、他ゆんを殺したのか? ええ、おい」
「ゆひいっ!」
また蹴られた。
蹴られたことよりも、お兄さんのお口から出た「殺した」という言葉が痛かったし、怖かった。
そして理解した。
お兄さんはわかっている。
勘違いで怒っているわけではなかった。
お兄さんは完全にわかっている。れいむのしたことの、何もかも。
そう。
『勘違い』はれいむの願望でしかなかったのだ。
「おまえが家に来る前、保健所から連絡があったよ」
「ゆべえっ!」
「飼いゆっくりのお飾りには、バッヂの他にもタグ――目印が付いてるんだ。知らなかったろ」
「ゆぎいいっ!」
目印。
知らなかった。気づきもしなかった。
「わかるか」
「やべで……」
もうやめて。蹴らないで。言わないで。れいむが悪かったから。
「おまえは飼いゆっくりを殺すっていうタブーを侵したんだ、クソ饅頭」
「いびゃあっ! やべで! もうやべでよお!」
「『やめて』じゃねえよ。……いいか、おまえ、一言も謝ってねえぞ。せめて謝ったらどうだ」
「やべっ、やべでえっ!」
二度、三度と続けざまに蹴られる。
「謝れ」
「ご、ごべんだざいい……」
まるで夢や希望が、謝罪の言葉と一緒にお口から流れ出ていくようだった。
なんであんなことをしたのか。
なんであんなことをして、幸せになれると思ったのか。
「何に対して謝ってんだ。おまえ、本当にわかってんのか」
「ゆ……れ……れいぶ……を」
「あ? 聞こえねえよ」
「ゆひいっ! れいぶをっ! おにいざんのれいぶをごろじでえっ! ずびばぜんでじだあっ!」
◆◆◆◆◆
男がドアを開けると、制服姿が目に入った。保健所の人間だ。
「こんにちは。保健所から参りました」
「どうも。わざわざすいません」
「いえ――あ、こいつですかあ」
二人は足元に目をやる。そこには野良れいむの死骸があった。
「そうなんですよ。家に来たんで、ムカついて潰しちゃいました。犯ゆん捜索を頼んでおきながら、すいません」
ははは、と男は力なく笑った。
「いや、事情は伺ってますから。それに正直、手間が省けたってもんで。――それにしても、今回は何と言ったらいいか」
「はは、災難でした……」男は呟いた。「しかもこいつ、どうも顔見知りだったみたいで……」
「そりゃまた」
男はもう一度「災難でした」と言い、目を伏せた。
「……しかし、ねえ。バレないとでも思ったのかね」
保健所の人間が言った。雰囲気を変えようとしているのか、明るい声。
「飼いゆっくりを殺した野良ゆっくりが、その飼いゆっくりになりすまそうとするなんて」
「こんにちは。保健所から参りました」
「どうも。わざわざすいません」
「いえ――あ、こいつですかあ」
二人は足元に目をやる。そこには野良れいむの死骸があった。
「そうなんですよ。家に来たんで、ムカついて潰しちゃいました。犯ゆん捜索を頼んでおきながら、すいません」
ははは、と男は力なく笑った。
「いや、事情は伺ってますから。それに正直、手間が省けたってもんで。――それにしても、今回は何と言ったらいいか」
「はは、災難でした……」男は呟いた。「しかもこいつ、どうも顔見知りだったみたいで……」
「そりゃまた」
男はもう一度「災難でした」と言い、目を伏せた。
「……しかし、ねえ。バレないとでも思ったのかね」
保健所の人間が言った。雰囲気を変えようとしているのか、明るい声。
「飼いゆっくりを殺した野良ゆっくりが、その飼いゆっくりになりすまそうとするなんて」
(了)
作:藪あき