ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1659 越冬のススメ
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ankoss
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越冬のススメ
その台詞は言わせない の登場人物出てきます。
一部ガチ愛で描写あり。
『越冬』
それは餓死の祭典、ゆっくりの死亡フラグ。
ゆっくりの共食いと餌強奪の実に9割が、この時期に集中することからもわかるように、
ゆっくりの先見性と勤勉さと、強運(これが一番重要)が試される毎年の恒例行事。
ゆっくり達は、意外に多様な方法でこの『越冬』を行っていることを、皆さんはご存じでしょうか?
今回は、ゆっくり達が冬に見せるさまざまな『越冬』の様子をお送りしましょう。
先ずは、スタンダードな『越冬』の様子から。
■1 備蓄 ~山中にて~
超小型のカメラが侵入したのはこちら、れいむとまりさの愛の巣です。
「ゆぴゃああああっ! れいみゅゆっくちできないよ~!」
「さむいのじぇ! すーりすーりしてくれのじぇ!」
おっと、どうやら愛の結晶、赤れいむと赤まりさも、元気に泣いて居るようですね。
「ゆうぅ……どうかゆっくりしてほしいのぜ、おちびちゃんたち」
「おかあさんがすーりすーりしてあげるからね! そうしたら、いっしょにすーやすーやしようね!」
ここでカメラには、この巣の"しょくりょうこ"を映して貰いましょう。
ご覧下さい。食料庫には、山菜や干し柿、きのこや、虫などが山と積まれて居るではありませんか。
この餌の総量は、成体のゆっくりがおよそ5体は『越冬』出来る程に蓄えられているのです。
人間の畑から盗んだ野菜が見当たらない辺り、このつがいはかなり賢い個体のようです。
それでは、『冬に赤ゆは死亡フラグ』と言われる理由をお見せしましょう。
「ほら、すーりすーり……」
「ゆうぅぅ……おかあしゃんのすーりすーりはゆっくちできりゅよ!」
「ゆふふ、まりさおねえちゃんも、おかあさんにすーりすーりしてもらうのぜ!」
「おとうしゃん! まりしゃはおなかがすいたのじぇ! むーしゃむーしゃしたいのじぇ!」
どうでしょうか? 赤まりさがごはんを欲しがる様子が見えましたか?
実はこの家族、つい先程ごはんさんを存分に食べたばかりなのです。
「……まりさ」
「しかたないのぜ……おちびちゃん、むーしゃむーしゃするのぜ」
「ゆわーい! ほしがきしゃんなのじぇ! むーしゃむーしゃ……ちあわしぇええ!!」
「おねーしゃんずるいよ! れいみゅにもむーしゃむーしゃさせちぇね! たくしゃんでいいよ!」
ご覧のように、ゆっくり達は足りない"ゆっくり"を食事によって補充しようとします。
ゆっくりがゆっくりを感じるための食事は、実際の所、活動を維持するために摂る食事よりも
多くを必要とするのです。
「ゆふーん。おちびちゃんたちゆっくりしてるよ~」
「ゆゆゆ……だけどれいむ、ごはんさんがたりないかもしれないのぜ……」
そして、賢ければ賢いゆっくりである程、赤ゆの暴食によって不安を感じ、今度は親ゆっくり達が
ゆっくり出来なくなるのです。その"ゆっくりできない"雰囲気が、さらに赤ゆに感染します。
これを繰り返すのが『ゆっくりスパイラル』という現象なのです。
一般的に、親ゆ二体+子ゆ二体という構成の家族が六割以上『越冬』を成功させるのに対して、
赤ゆっくり二体を抱えるつがいの家族は、一割も冬を越せないと言われています。
親ゆっくりが赤ゆ達を切り捨てるのか。
あるいは、母性(笑)の"おたべなさい"をする事になるのか。
親れいむのでいぶ化、親まりさのゲス化もあり得るでしょう。
「「むーしゃむーしゃ……しあわしぇ(なのじぇ)~~!」」
「「ゆっくりできないよ!」」
この巣の撮影は継続して参りますので、家族の顛末は春の特番でお楽しみ下さい!
■2 母性 ~山中にて~
今回取材班は、加工所職員Aさんの協力を得て、特殊な越冬方法をとるゆっくりの発見を成し遂げました。
カメラに映し出された壁のようなもの……皆さんはなんだかわかりますか?
画面端に映るぴこぴこで、これが何だか分かった方も居られるのはないでしょうか。
そう、これは肥満体のゆっくりれいむなのです。
念のために申し上げておきますが、これは"でいぶ"ではありません。ぴこぴこのわさわさの中に、
ちいさな赤ゆっくり達が見えます。しかし、食料の備蓄は何処にも見当たりません。
少し時間を進めて、この親子の食事風景を観察してみましょう。
「おねえちゃん、ゆっくちちていっちぇにぇ!」
「おにゃかしゅいたー!」
「……おかあしゃん、れいみゅゆっくりおなかしゅいたよ!」
「おちびちゃん、ゆっくりしていってね。いまごはんさんをよういしてあげるからね」
そういうと親れいむは、舌で巣の中の土をすくい取り、噛み始めました。
「もーぐもーぐ……ぺっ! さあ、おちびちゃん。むーしゃむーしゃしてね」
「ゆゆ~ん。おかあしゃんのごはんさん、ゆっくりしてるよ~」
「むーしゃむーしゃ……しあわせー」
「おいちいにぇ、おねえしゃん!」
親れいむのわさわさの中で、赤れいむも赤まりさも、ゆっくりとした食事を摂っています。
それを眺める親れいむの表情も穏やかです。
なんとこのゆっくりれいむ、「越冬前に全ての食料を食べて置いて、後で餡子を吐き与える」
という越冬方法をえらんだのです。
土と混ぜ合わせた餡子は甘すぎず不味くなく、赤ゆ達の繊細な味覚を壊すこともありません。
効率の良い餡子の摂取によって、処理が必要なうんうんの量も少なくて済むのです。
ご存じの通り、ゆっくりは"ゆっくり"さえ足りていれば非常に燃費がいいナマモノ、体の大きな
母れいむが体内に餡子の形で保存しておけば、おちびちゃんたちが盗み食いする心配もありません。
常に親子のふれあいからゆっくりを感じ合う事で、この家族の『越冬』は恐らく成功するでしょう。
「ゆ~ん……おにゃかいっぱいになったよ」
「おかあしゃん、ねむたくなってきたよー」
「ゆふふ……それじゃあおちびちゃんたち、すーやすーやしようね」
え……つがいのまりさ? まりさは犠牲になったのです……越冬の犠牲に。
大きな大きな三角帽子が、赤ゆっくりと親れいむの足下で、冬の冷気を遮ってくれています。
なお、この巣は加工所建設予定地となった山で、事前の調査によって発見された物です。
工事の開始は春。
夏になれば、ぴかぴかの加工所で、このゆっくり親子も元気な姿を見せてくれることでしょう。
■3 ドス ~山中にて~
皆さん、この一見草が生えているだけの岩壁に、ゆっくりの姿があるのが分かりますか?
それでは正解――この、固そうな岩の表面をカメラマンがつついてみます。
ぶにゅおん。ぶにょん。どうでしょうか? 岩の壁が凹んだのが見えましたでしょうか?
これは、越冬中の"ドスまりさ"を捕らえた貴重な映像です。
見た目には岩の壁がそびえているようにも見えますが、実は体高3m程のドスまりさが、
洞窟の入口を自らの体で塞いでいるのです。
これが、一般に"ゆっくりステルス"と呼ばれる能力の効果なのです。
ドスの表面は凍っていますが、中枢餡は分厚い餡子の向こうに保護されていて、冬の間中
損傷を受けることはありません。
ドスが顔をどちらに向けているのか気になりますか?
……はい、カメラをやや下に寄せると、なにやら小さな穴があるようです。
ドスのあにゃるか、あるいは閉じた口なのでしょう。
カメラマンさん、適当な枝を中に突っ込んでみて下さい。
「(……ゆっ!)」
――はい、岩壁がびくりと震えましたね。どうやらあにゃるのようです。
「(ゆっゆゆゆゆっゆゆゆゆ――)」
ああ、カメラマンさん! そんな満面の笑顔で抜いたり差したりこねくり回しては駄目ですよ。
「(――すっきりー!)」
「(ゆん? なんかねばねば……!!)」
「(どぼじでくきさんがはえでるのおおおぉぉぉ――!?)」
「(ゆふ~ん。れいむのあたらしいおちびちゃんもゆっくりして……ゆゆゆ!)」
「(おちびちゃんたちにくきさんはえてるよー! わからないよー!)」
「("えっとう"ちゅうにドスがすっきりしちゃだめでじょおおぉぉ……エレエレエレ)」
どうやらドスの精子餡が、洞窟の中に飛び散って新たな息吹を誕生させてしまったようです。
ナマモノの神秘は素晴らしいですね。
このように、ドスの穴掘り能力が不十分な場合、外部の影響から群れを守りきれない場合もあるのです。
ドスの居る群れはゆっくり出来るというのが、ゆっくり達の間では常識になっています。
ですが、ドスもまた一割ほどが、『越冬』に失敗してしまう事があるそうです。
主な原因は、食料備蓄の不足によって群れのゆっくりが洞窟の内部からドスを食い荒らす事。
先程大量の赤ゆが生まれた洞窟の群れでも、春に近くなればドスを食い破って、成体ゆっくり達が
外に飛び出してくるでしょう。
我々撮影スタッフは引き続き取材して参りますので、その決定的瞬間は春の特番をお待ち下さい!
■4 真空 ~お兄さん宅にて~
ここまでは、自然界で苛酷な『越冬』に挑むゆっくり達の様子をお送りして参りましたが、
中には"にんげんさん"の手を借りて、更に死亡フラグの強化に挑む、果敢なゆっくり達の姿も
あるのです。
"越冬に手を貸して欲しい"
そんなゆっくりの願いに耳を貸す奇特な――もといドS(親切)なお兄さんのお宅に、
今日はお邪魔をしています。お兄さんこんにちは。
「こんにちは、お兄さんはお兄さんです。ゆっくりしていって下さい」
……はい、実際にゆっくりを『越冬』させる様子をうかがいましょう。
お兄さんが取り出したのは、皆さんご存じ"透明な箱"。これは一家族が入る防音タイプですね。
中には、見るからにやせた、ゆっくりれいむの一家が居ます。越冬の為の餌を採り損ねたのでしょう。
「私に"越冬"の手伝いを頼むゆっくりは、大体こんな家族構成です。とくにれいむ種が多いですね」
それでは、親れいむの鳴き声を聞いてみましょうか。
「れいむはれいむだよ! ゆっくりしていってね!」
はいはい、ゆっくりゆっくり。
「おにいさんはゆっくりしないで、れいむたちを"えっとうっ"させてね! はるまででいいよ!
"えっとうっ!"したら、れいむはむれのまりさとすっきりーするんだよ!」
これは親れいむ、逞しい声で鳴いてくれました。カメラマンさんはビキィッ! しないで下さいね。
ではお兄さん、作業の方にどうぞ。
「はい、まず最初に親ゆっくりを、子ゆっくりの見えない所で分解します」
「ゆゆっ! れいむおそらをとんで――ゆっ!? りぼんさんかえしてね!」
おおっと、此処でお兄さん、親れいむのお飾りを取ってしまいました。
「舌と髪と目も取って、子ゆ達に食べさせます。今回はこちらに、分解し終わった成体のまりさを
用意してありますので、親れいむは脇の箱に――」
「おりぼんさんかえせえええ……おそらをとんで――ぼふっ!」
「ゅ……ゅ……」
成体まりさは、先程の子れいむの箱に入れて食べさせるわけですね?
「そうです――こうやって。この時、箱の中のおちびちゃんたちを潰さないように気をつけて下さい」
ハゲ饅頭の元まりさを、お腹をすかせたおちびちゃん達が猛然と食べ始めます。
「「むーしゃむーしゃ……ちあわちぇー!」」
こうして、『越冬』の作業に耐えられる体力を、子ゆ達につけさせるのだとか。
しかし、親ゆっくりを潰してしまって良いのでしょうか?
「生存率は五割を保証してありますので……」
五割?
「"たくさん"のおちびちゃんが"えっとうっ"できるんだね、だったらいいよ!
と、親ゆっくりからは快諾を貰っています」
なるほど、それでしたら安心です。
「もっ……ゅ……」
その間に成体まりさが永遠にゆっくりしてしまいましたが、まだ半分以上残っていますね。
「時間がかかりますので、こちらの"透明な箱"に、食べ終えた子ゆ達を用意してあります」
「おなかすいたのぜ! おにいさんははやくまりさにむーしゃむーしゃさせるのぜ! あまあまでいいのぜ!」
「彼らに今度はラムネを食べさせます」
親ゆを食べて栄養たっぷりになった子まりさ達が、投げ入れられたラムネに食いつきはじめました。
「うっめ! これめっちゃ……うめ…………ZZzz」
「完全に眠った子ゆ達の入った"透明な箱"がこちらです。この子ゆ達を、眠らせたまま布団圧縮袋に入れます」
血色の良いぱちゅりーが三つほど、すーやすーやしていますね。
お兄さん、布団圧縮袋の中に、まりさ種のおぼうしが入っているようですが、これはなんでしょうか?
「子ゆっくりをそのまま圧縮すると潰れてしまうので、緩衝材を入れます。プチプチでも構いませんが、
今回はまりさ種のおぼうしが大量に余っていますので、それを使っています」
なるほど、おぼうしの出所には触れない方が良さそうです。
「後は、普通に掃除機を使って中の空気を抜いて貰えば完成です。
こちらに、パックの終わった圧縮袋があります。保存は、日の当たらない冷暗所が良いでしょう」
はい、ちぇん種の子ゆっくりが、見事に真空パックされています。
ゆっくりは呼吸しなくても死にませんが、活動のためには生意気にも酸素を利用しているとのこと。
ゆっくりを仮死状態に置くためには、真空パックにする事が効果的なんです。
アダルトビデオを思い出したカメラマンさんは、明日病院に行って下さいね。
しかし、なぜまたゆっくりの『越冬』を手伝おうという気になったのでしょうか?
「冬場はゆっくりが寄りつかないので、甘味が不足するんですよ」
……え?
「――え?」
食べるんですか?
「食べないんですか?」
先程五割とおっしゃいましたが?
「冬の間に少しずつ食べて、半分くらいは残りますから」
…………以上、お兄さんによる『五分でできる、ゆっくり保存食講座』でした!
※なお、番組に使用したゆっくりは、後でスタッフが美味しく頂きました。
■5 冷凍 ~町役場、ゆっくり対策課にて~
「……なにやってんだ、あの馬鹿?」
画面に知り合いの顔を発見したお姉さんは、あきれ顔でテレビを消すと、手元のパックから餌用
ゆっくりまりさ(混ぜ物一切無し、一体150円)を取り出して背中に放った。
「ゆゆっ! おしょらをとんじぇ……ふらんだーーーっ!」
「うー!」
空中キャッチ、吸餡、咀嚼、咀嚼、嚥下。
末期の台詞も吐けずに、赤まりさは金バッジを着けたふらんの口に収まった。
「美味いかよ、ふらん?」
「うー……あまあま……」
お腹が一坏になったふらんは、おおきなまぶたをとろんとさせて、波に揺られるビーチボールのように、
ゆらゆらと上下運動を始めた。
「やっぱし、そろそろ冬眠の季節かねえ……」
真っ赤に塗られて、『こうまかん』と書かれた冷凍庫をちらりと見る。
「おねえさん、ふらんをとじこめる?」
「そんなんじゃねえよ。春まで寝てて貰うだけさ」
「ふらん、ひとりでとじこめられる? ふらん、ゆっくりこんてにゅーできない?」
「そんなんじゃねえって」
膝の上に降りたふらんを撫でながら、お姉さんは静かに、相棒の不安を宥めた。
事務用椅子に座ると足が床に届かないお姉さんの足下へ、銅ばっじをつけためーりんが寄ってくる。
「じゃおおお」
「ほれ、めーりんも言ってるじゃねえか。ふらんはひとりじゃ無いってよ」
「じゃお!」
「めーりん……」
お姉さんの足下で、めーりんが胸を張るようにのけぞった。
春になったらめーりんの銀バッジを狙ってみるか、と思い始めたお姉さんの膝で、ふらんは不安に眠れないでいる。
「なあ、ふらん。よく聞けや。アタシは何も、ふらんが可愛いだとかゆっくりできるだとか、
そんな○○玉の抜けた愛で野郎どもみてえな理由でお前の世話してんじゃねえんだ」
「うー?」
「ふらんのその食いっぷりが気に入ってるから、お前を相棒にしてんだよ。
今年の春から、お前がどれだけ野良や畑荒らしのゆっくり共を食ったか分かるか?」
「うー……ふらんわからない」
「驚くなかれ、千と五百に二十匹――だ。さっきの十匹は、経費で買った餌だから数えるなよ」
「それ、"ひゃく"よりたくさん?」
「百が十五個より、ちっと多いな」
「じゃおおお!」
ふらんがお姉さんに褒められていることを察したのか、足下のめーりんが我が事の様に喜んでいる。
「おねえさん」
「ん?」
「らむねさんちょうだい。ゆっくりでいいよ」
「おお……ちょっと待ってな」
掌にラムネを盛るお姉さんの足に、めーりんがぽすん、と体当たりをした。
「あん? なんだよめーりん?」
「じゃお! じゃおじゃお!」
「うーん……弟や"あの馬鹿"と違って、めーりんの言葉までは分からないんだよな、アタシは」
「じゃじゃお……じゃおおおぉぉ!」
のーびのーびを繰り返すめーりんは、真剣そのものの目をふらんに向けていた。
「……ひょっとしてお前、ふらんと一緒に冬眠するって言ってんのか?」
「じゃお!」
「はは、……捕食種だってーのに好かれたもんだなあ、ふらん」
「ふらんもめーりんはすきだよ。おねえさんもゆっくりしててすき」
「そうかい」
お姉さんは、あんよについた埃でスーツの裾が汚れるのも構わず、めーりんを膝に乗せた。
「ほれ、半分こしな」と言って、両手から直接ラムネをむーしゃむーしゃさせる。
「あまあまでしあわせー、だね。……めーりん」
「じゃおおお……」
「おねえさん」
「なんだ?」
「おねえさんは、こんてにゅーできるよ。ゆっくり……していってね……」
やがて寝息をたててすーやすーやを始めたふらんとめーりん。
2ゆを即座に冷凍庫に入れることはせずに、お姉さんは赤と金色の頭を撫でていた。
そんなゆっくりとした気分を遮る、甲高い電話のコール。
「……ちっ!」
こんな季節に、ゆっくり対策課の緊急回線が鳴る用事など、一つしかない。
膝上のゆっくりをやさしく冷凍庫の中に横たえると、お姉さんは餡子に黒く染まった
愛用の得物を携えて、ゆっくり対策課のドアを潜った。
■6 こどく ~加工所にて~
「は~い、それじゃあゆっくりの皆、ゆっくり"えっとうっ!"しようじゃないか!」
「ゆっくちりかいしちゃよ!」×500
「ただ、お兄さんはごはんさんを用意していないんだな、これが!」
「ゆっくちちないで、あみゃあみゃをもってきちぇね、くしょどれい! すぐでいいよ!」×500
「あまあまは、そう! 君達自身です!」
「――ゆ――?」×500
「どうかお互いに食い合い殺し合いむさぼり合って、最後の一ゆになって下さい!」
「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおーーー!?」×500
ぱたん。
加工所職員Aさんは、30程並んだ選別槽の、最後のフタを閉じた。
ここは加工所の最下層。虐待用に出荷されるゆっくりの母体は、こうして生命力優先で選別される。
二体以上のゆっくりが選別槽から出てきたことはないが、逆に全滅した選別槽も未だかつて無い。
これは、孤独を生み出す箱であった。
「ああ、聞こえる。ゆっくり達の織りなす阿鼻叫喚の調べが!」
れいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、ちぇん、みょん。
適当に入れて置いても、春に生き残る種類はなかなか偏らないものだと、Aさんは毎年の経験から知っていた。
「む……むむむ? 私には聞こえる。私には分かる! これはドスの足音ですね。
こんな時期に外を出歩くとは……ああ! 全く持って勿っ体っないっ!」
■7 越冬失敗例 ~冬空の下~
Aさんの加工所から20km程離れた国道沿い。
飢えに耐えかねて山を降りたドスの群れは、ぎらぎらと粘つくような視線を、
道の真ん中で通せんぼをする"にんげんさん"の小さな姿へと向けていた。
「六尺五寸――って所か。小せえドスだな……」
ヒールを履いてぎりぎり五尺のお姉さんが、巨大なドスを見下した様に言った。
「にんげんさんはゆっくりここを通してね! ドスは"きょうてい"をむすびに行くんだよ!
ドスたちは――」
「腹へってんだろ? メシをたかりに行こうとしてんだろ?」
「……ゆ?」
「言わなくても分かってンだよ。手前ーらが学習机だのランドセルだの、欲しがるわけねーだろうが」
ドスは、何故かゆっくり出来ない気配を感じて首(体全体)をかしげた。
このお姉さんは体も小さく、お飾りも無くてゆっくりしていない。
なのに何故か、れみりゃやふらんのような捕食種の気配を感じる。
「おい、そこのドス。悪いことは言わねえから、手前ぇ……今の内に死んどけ」
「ゆ……いきなりなにいってるのおおぉぉ!?」
「餌を溜めとく計画性も無え……。人間の危なさも分かってねえ……。にっちもさっちも行かなくなって、
いざ飢え死ぬって段になって、人間様を倒せば英雄か? 危機管理のできねえ無能なリーダーなんざ、
居ない方がマシだ。さっさと体真っ二つにかっ捌いて、"おたべなさい"しろや。そうすりゃ群れの一個ぐらいは、
ドス食って生き延びられるだろうが」
『ドスが群れを引き連れて人間のテリトリーに入った』
その事実が見過ごせない以上、ドスの命はもはや無い。
ただ、ドスの使い道が残っているだけだ。
「ドスじゃなくてにんげんさんがしねばいいんだよー。わかってねー!」
と、ドスの後ろから、成体になったばかりらしきちぇんが飛び出して言った。
「そ、そうなんだぜ! にんげんさんがおとなしくごはんさんをむーしゃむーしゃさせてくれれば、
いたいめをみずにすむのぜえ!」
「むきゅ! ゆっくりしたドスが、ドスすぱーくをつかえば、にんげんさんもたおせるわ!」
若いちぇんの勇姿に心を打たれたのか、成体のまりさとぱちゅりーがしゃしゃり出てくる。
場の勢いに乗って、ドスの背後からも群れのゆっくり達がやんややんやと声を上げはじめた。
「あ゛ぁ゛?」
「ゆ……ドスはにんげんさんのおどしにはくっしないんだよ!」
お姉さんが凄んで見せても、ゆっくり達に引く気配はない。
危険な様子が分かっていないのだ。餓えが、野生の勘を削いでいた。
「交渉決裂ぅ……。まったく、どうせなら町長ん家の方に向かえっての。そしたらドススパークの一発ぐれーは
見逃してやんのによぉ。――よりによってあの馬鹿ん家の方に来やがる」
お姉さんはちらりと、背中の方に見える山を向く。
それは、もりのけんじゃ(笑)からすれば、致命的な隙にも見えた。
「むきゅ! いまよドス! いまのうちにドスすぱーくをつかうのよ!」
「ゆん! そうだね、ぱちゅりー!」
ドスは慌てて、おぼうしの中からすぱーく用のキノコを取り出す。
そしてキノコを口に含もうとしたその瞬間、ひゅん、と一陣の黒い風が吹いて、ドスの舌が根本から寸断された。
「ゆ? ドスの……ドスのべろさんがーー!」
「おーおー、流石ゆっくり。舌が無くてもしゃべれるんだな」
「もどってね、べろさんゆっくりしないでもどってね! ぺーろぺーろ……できないいいいいぃ!」
舌を口に戻そうとしてむーしゃむーしゃしてしまう程混乱したドスの前で、ひゅんひゅんと鳴る風は
お姉さんの手元に巻き戻り、一束のトゲ付きワイヤーとなる。
「ちゃらららん。"ゆー死鉄線"~~」
効果音付き大山のぶ代で。
お姉さんは餡子の染みついた凶器――"ゆー死鉄線"を掲げた。
ひゅん! 放たれた"ゆー死鉄線"が、一瞬の内にドスの全身に巻き付く。
「ゆ――ほどいてね! おねえさんこれほどいてね!」
芯まで染みついたとてつもないゆっくりの死臭が、ドスの全身を苛んで、あまりにもゆっくりできない。
見れば、お姉さんがおもむろに取り出した二本目の"ゆー死鉄線"が、意志ある蛇のように群れのゆっくり
一体一体にまきついてゆくではないか。
「言いたいことがあるんなら、口がある内に言っとけや……」
そして、お姉さんは小さな体を一坏に使って、"ゆー死鉄線"をゆっくり、ゆっくりと締め上げはじめた。
「このアタシのプリティーな耳の穴よーくかっぽじって、命乞いから断末魔までガン無視してやっからよお!」
「がえりまず! おうじがえりまずがら! ごれほどいてえええええ!」
お姉さんは宣言通りに。
耳を貸すことは、無かった。
■8 越冬成功例 ~辛い季節を越えて~
「やれやれ、やっと取材スタッフの方も帰ってくれましたね」
今年の『越冬』分真空パックゆっくりを抱えたお兄さんが、保存庫にしている納屋へと足を運んでいる。
「あとは、ここに全部放り込んで置いて……と」
がらがらがら……どさり。
「あ」
納屋の扉から出てきた物は、がりがりにこけた頬、干からびた白玉の目玉、よれよれのお帽子。
「ゆっ……ゆっ……ゆっ……」
去年の冬に入れたまま、出し忘れた成体まりさの真空パックだった。
「もっと……ゆっくり……したかった……」
断末魔のまりさを見下ろして、お兄さんはほっと一息。
「良かった。どうやら、越冬は成功していたようですね」
納屋にゆっくりパックを放り込んで、扉をそっと閉ざした。
終わり。
過去作品
anko1521 その台詞は言わせない3
anko1508 その台詞は言わせない2
anko1481 その台詞は言わせない
その台詞は言わせない の登場人物出てきます。
一部ガチ愛で描写あり。
『越冬』
それは餓死の祭典、ゆっくりの死亡フラグ。
ゆっくりの共食いと餌強奪の実に9割が、この時期に集中することからもわかるように、
ゆっくりの先見性と勤勉さと、強運(これが一番重要)が試される毎年の恒例行事。
ゆっくり達は、意外に多様な方法でこの『越冬』を行っていることを、皆さんはご存じでしょうか?
今回は、ゆっくり達が冬に見せるさまざまな『越冬』の様子をお送りしましょう。
先ずは、スタンダードな『越冬』の様子から。
■1 備蓄 ~山中にて~
超小型のカメラが侵入したのはこちら、れいむとまりさの愛の巣です。
「ゆぴゃああああっ! れいみゅゆっくちできないよ~!」
「さむいのじぇ! すーりすーりしてくれのじぇ!」
おっと、どうやら愛の結晶、赤れいむと赤まりさも、元気に泣いて居るようですね。
「ゆうぅ……どうかゆっくりしてほしいのぜ、おちびちゃんたち」
「おかあさんがすーりすーりしてあげるからね! そうしたら、いっしょにすーやすーやしようね!」
ここでカメラには、この巣の"しょくりょうこ"を映して貰いましょう。
ご覧下さい。食料庫には、山菜や干し柿、きのこや、虫などが山と積まれて居るではありませんか。
この餌の総量は、成体のゆっくりがおよそ5体は『越冬』出来る程に蓄えられているのです。
人間の畑から盗んだ野菜が見当たらない辺り、このつがいはかなり賢い個体のようです。
それでは、『冬に赤ゆは死亡フラグ』と言われる理由をお見せしましょう。
「ほら、すーりすーり……」
「ゆうぅぅ……おかあしゃんのすーりすーりはゆっくちできりゅよ!」
「ゆふふ、まりさおねえちゃんも、おかあさんにすーりすーりしてもらうのぜ!」
「おとうしゃん! まりしゃはおなかがすいたのじぇ! むーしゃむーしゃしたいのじぇ!」
どうでしょうか? 赤まりさがごはんを欲しがる様子が見えましたか?
実はこの家族、つい先程ごはんさんを存分に食べたばかりなのです。
「……まりさ」
「しかたないのぜ……おちびちゃん、むーしゃむーしゃするのぜ」
「ゆわーい! ほしがきしゃんなのじぇ! むーしゃむーしゃ……ちあわしぇええ!!」
「おねーしゃんずるいよ! れいみゅにもむーしゃむーしゃさせちぇね! たくしゃんでいいよ!」
ご覧のように、ゆっくり達は足りない"ゆっくり"を食事によって補充しようとします。
ゆっくりがゆっくりを感じるための食事は、実際の所、活動を維持するために摂る食事よりも
多くを必要とするのです。
「ゆふーん。おちびちゃんたちゆっくりしてるよ~」
「ゆゆゆ……だけどれいむ、ごはんさんがたりないかもしれないのぜ……」
そして、賢ければ賢いゆっくりである程、赤ゆの暴食によって不安を感じ、今度は親ゆっくり達が
ゆっくり出来なくなるのです。その"ゆっくりできない"雰囲気が、さらに赤ゆに感染します。
これを繰り返すのが『ゆっくりスパイラル』という現象なのです。
一般的に、親ゆ二体+子ゆ二体という構成の家族が六割以上『越冬』を成功させるのに対して、
赤ゆっくり二体を抱えるつがいの家族は、一割も冬を越せないと言われています。
親ゆっくりが赤ゆ達を切り捨てるのか。
あるいは、母性(笑)の"おたべなさい"をする事になるのか。
親れいむのでいぶ化、親まりさのゲス化もあり得るでしょう。
「「むーしゃむーしゃ……しあわしぇ(なのじぇ)~~!」」
「「ゆっくりできないよ!」」
この巣の撮影は継続して参りますので、家族の顛末は春の特番でお楽しみ下さい!
■2 母性 ~山中にて~
今回取材班は、加工所職員Aさんの協力を得て、特殊な越冬方法をとるゆっくりの発見を成し遂げました。
カメラに映し出された壁のようなもの……皆さんはなんだかわかりますか?
画面端に映るぴこぴこで、これが何だか分かった方も居られるのはないでしょうか。
そう、これは肥満体のゆっくりれいむなのです。
念のために申し上げておきますが、これは"でいぶ"ではありません。ぴこぴこのわさわさの中に、
ちいさな赤ゆっくり達が見えます。しかし、食料の備蓄は何処にも見当たりません。
少し時間を進めて、この親子の食事風景を観察してみましょう。
「おねえちゃん、ゆっくちちていっちぇにぇ!」
「おにゃかしゅいたー!」
「……おかあしゃん、れいみゅゆっくりおなかしゅいたよ!」
「おちびちゃん、ゆっくりしていってね。いまごはんさんをよういしてあげるからね」
そういうと親れいむは、舌で巣の中の土をすくい取り、噛み始めました。
「もーぐもーぐ……ぺっ! さあ、おちびちゃん。むーしゃむーしゃしてね」
「ゆゆ~ん。おかあしゃんのごはんさん、ゆっくりしてるよ~」
「むーしゃむーしゃ……しあわせー」
「おいちいにぇ、おねえしゃん!」
親れいむのわさわさの中で、赤れいむも赤まりさも、ゆっくりとした食事を摂っています。
それを眺める親れいむの表情も穏やかです。
なんとこのゆっくりれいむ、「越冬前に全ての食料を食べて置いて、後で餡子を吐き与える」
という越冬方法をえらんだのです。
土と混ぜ合わせた餡子は甘すぎず不味くなく、赤ゆ達の繊細な味覚を壊すこともありません。
効率の良い餡子の摂取によって、処理が必要なうんうんの量も少なくて済むのです。
ご存じの通り、ゆっくりは"ゆっくり"さえ足りていれば非常に燃費がいいナマモノ、体の大きな
母れいむが体内に餡子の形で保存しておけば、おちびちゃんたちが盗み食いする心配もありません。
常に親子のふれあいからゆっくりを感じ合う事で、この家族の『越冬』は恐らく成功するでしょう。
「ゆ~ん……おにゃかいっぱいになったよ」
「おかあしゃん、ねむたくなってきたよー」
「ゆふふ……それじゃあおちびちゃんたち、すーやすーやしようね」
え……つがいのまりさ? まりさは犠牲になったのです……越冬の犠牲に。
大きな大きな三角帽子が、赤ゆっくりと親れいむの足下で、冬の冷気を遮ってくれています。
なお、この巣は加工所建設予定地となった山で、事前の調査によって発見された物です。
工事の開始は春。
夏になれば、ぴかぴかの加工所で、このゆっくり親子も元気な姿を見せてくれることでしょう。
■3 ドス ~山中にて~
皆さん、この一見草が生えているだけの岩壁に、ゆっくりの姿があるのが分かりますか?
それでは正解――この、固そうな岩の表面をカメラマンがつついてみます。
ぶにゅおん。ぶにょん。どうでしょうか? 岩の壁が凹んだのが見えましたでしょうか?
これは、越冬中の"ドスまりさ"を捕らえた貴重な映像です。
見た目には岩の壁がそびえているようにも見えますが、実は体高3m程のドスまりさが、
洞窟の入口を自らの体で塞いでいるのです。
これが、一般に"ゆっくりステルス"と呼ばれる能力の効果なのです。
ドスの表面は凍っていますが、中枢餡は分厚い餡子の向こうに保護されていて、冬の間中
損傷を受けることはありません。
ドスが顔をどちらに向けているのか気になりますか?
……はい、カメラをやや下に寄せると、なにやら小さな穴があるようです。
ドスのあにゃるか、あるいは閉じた口なのでしょう。
カメラマンさん、適当な枝を中に突っ込んでみて下さい。
「(……ゆっ!)」
――はい、岩壁がびくりと震えましたね。どうやらあにゃるのようです。
「(ゆっゆゆゆゆっゆゆゆゆ――)」
ああ、カメラマンさん! そんな満面の笑顔で抜いたり差したりこねくり回しては駄目ですよ。
「(――すっきりー!)」
「(ゆん? なんかねばねば……!!)」
「(どぼじでくきさんがはえでるのおおおぉぉぉ――!?)」
「(ゆふ~ん。れいむのあたらしいおちびちゃんもゆっくりして……ゆゆゆ!)」
「(おちびちゃんたちにくきさんはえてるよー! わからないよー!)」
「("えっとう"ちゅうにドスがすっきりしちゃだめでじょおおぉぉ……エレエレエレ)」
どうやらドスの精子餡が、洞窟の中に飛び散って新たな息吹を誕生させてしまったようです。
ナマモノの神秘は素晴らしいですね。
このように、ドスの穴掘り能力が不十分な場合、外部の影響から群れを守りきれない場合もあるのです。
ドスの居る群れはゆっくり出来るというのが、ゆっくり達の間では常識になっています。
ですが、ドスもまた一割ほどが、『越冬』に失敗してしまう事があるそうです。
主な原因は、食料備蓄の不足によって群れのゆっくりが洞窟の内部からドスを食い荒らす事。
先程大量の赤ゆが生まれた洞窟の群れでも、春に近くなればドスを食い破って、成体ゆっくり達が
外に飛び出してくるでしょう。
我々撮影スタッフは引き続き取材して参りますので、その決定的瞬間は春の特番をお待ち下さい!
■4 真空 ~お兄さん宅にて~
ここまでは、自然界で苛酷な『越冬』に挑むゆっくり達の様子をお送りして参りましたが、
中には"にんげんさん"の手を借りて、更に死亡フラグの強化に挑む、果敢なゆっくり達の姿も
あるのです。
"越冬に手を貸して欲しい"
そんなゆっくりの願いに耳を貸す奇特な――もといドS(親切)なお兄さんのお宅に、
今日はお邪魔をしています。お兄さんこんにちは。
「こんにちは、お兄さんはお兄さんです。ゆっくりしていって下さい」
……はい、実際にゆっくりを『越冬』させる様子をうかがいましょう。
お兄さんが取り出したのは、皆さんご存じ"透明な箱"。これは一家族が入る防音タイプですね。
中には、見るからにやせた、ゆっくりれいむの一家が居ます。越冬の為の餌を採り損ねたのでしょう。
「私に"越冬"の手伝いを頼むゆっくりは、大体こんな家族構成です。とくにれいむ種が多いですね」
それでは、親れいむの鳴き声を聞いてみましょうか。
「れいむはれいむだよ! ゆっくりしていってね!」
はいはい、ゆっくりゆっくり。
「おにいさんはゆっくりしないで、れいむたちを"えっとうっ"させてね! はるまででいいよ!
"えっとうっ!"したら、れいむはむれのまりさとすっきりーするんだよ!」
これは親れいむ、逞しい声で鳴いてくれました。カメラマンさんはビキィッ! しないで下さいね。
ではお兄さん、作業の方にどうぞ。
「はい、まず最初に親ゆっくりを、子ゆっくりの見えない所で分解します」
「ゆゆっ! れいむおそらをとんで――ゆっ!? りぼんさんかえしてね!」
おおっと、此処でお兄さん、親れいむのお飾りを取ってしまいました。
「舌と髪と目も取って、子ゆ達に食べさせます。今回はこちらに、分解し終わった成体のまりさを
用意してありますので、親れいむは脇の箱に――」
「おりぼんさんかえせえええ……おそらをとんで――ぼふっ!」
「ゅ……ゅ……」
成体まりさは、先程の子れいむの箱に入れて食べさせるわけですね?
「そうです――こうやって。この時、箱の中のおちびちゃんたちを潰さないように気をつけて下さい」
ハゲ饅頭の元まりさを、お腹をすかせたおちびちゃん達が猛然と食べ始めます。
「「むーしゃむーしゃ……ちあわちぇー!」」
こうして、『越冬』の作業に耐えられる体力を、子ゆ達につけさせるのだとか。
しかし、親ゆっくりを潰してしまって良いのでしょうか?
「生存率は五割を保証してありますので……」
五割?
「"たくさん"のおちびちゃんが"えっとうっ"できるんだね、だったらいいよ!
と、親ゆっくりからは快諾を貰っています」
なるほど、それでしたら安心です。
「もっ……ゅ……」
その間に成体まりさが永遠にゆっくりしてしまいましたが、まだ半分以上残っていますね。
「時間がかかりますので、こちらの"透明な箱"に、食べ終えた子ゆ達を用意してあります」
「おなかすいたのぜ! おにいさんははやくまりさにむーしゃむーしゃさせるのぜ! あまあまでいいのぜ!」
「彼らに今度はラムネを食べさせます」
親ゆを食べて栄養たっぷりになった子まりさ達が、投げ入れられたラムネに食いつきはじめました。
「うっめ! これめっちゃ……うめ…………ZZzz」
「完全に眠った子ゆ達の入った"透明な箱"がこちらです。この子ゆ達を、眠らせたまま布団圧縮袋に入れます」
血色の良いぱちゅりーが三つほど、すーやすーやしていますね。
お兄さん、布団圧縮袋の中に、まりさ種のおぼうしが入っているようですが、これはなんでしょうか?
「子ゆっくりをそのまま圧縮すると潰れてしまうので、緩衝材を入れます。プチプチでも構いませんが、
今回はまりさ種のおぼうしが大量に余っていますので、それを使っています」
なるほど、おぼうしの出所には触れない方が良さそうです。
「後は、普通に掃除機を使って中の空気を抜いて貰えば完成です。
こちらに、パックの終わった圧縮袋があります。保存は、日の当たらない冷暗所が良いでしょう」
はい、ちぇん種の子ゆっくりが、見事に真空パックされています。
ゆっくりは呼吸しなくても死にませんが、活動のためには生意気にも酸素を利用しているとのこと。
ゆっくりを仮死状態に置くためには、真空パックにする事が効果的なんです。
アダルトビデオを思い出したカメラマンさんは、明日病院に行って下さいね。
しかし、なぜまたゆっくりの『越冬』を手伝おうという気になったのでしょうか?
「冬場はゆっくりが寄りつかないので、甘味が不足するんですよ」
……え?
「――え?」
食べるんですか?
「食べないんですか?」
先程五割とおっしゃいましたが?
「冬の間に少しずつ食べて、半分くらいは残りますから」
…………以上、お兄さんによる『五分でできる、ゆっくり保存食講座』でした!
※なお、番組に使用したゆっくりは、後でスタッフが美味しく頂きました。
■5 冷凍 ~町役場、ゆっくり対策課にて~
「……なにやってんだ、あの馬鹿?」
画面に知り合いの顔を発見したお姉さんは、あきれ顔でテレビを消すと、手元のパックから餌用
ゆっくりまりさ(混ぜ物一切無し、一体150円)を取り出して背中に放った。
「ゆゆっ! おしょらをとんじぇ……ふらんだーーーっ!」
「うー!」
空中キャッチ、吸餡、咀嚼、咀嚼、嚥下。
末期の台詞も吐けずに、赤まりさは金バッジを着けたふらんの口に収まった。
「美味いかよ、ふらん?」
「うー……あまあま……」
お腹が一坏になったふらんは、おおきなまぶたをとろんとさせて、波に揺られるビーチボールのように、
ゆらゆらと上下運動を始めた。
「やっぱし、そろそろ冬眠の季節かねえ……」
真っ赤に塗られて、『こうまかん』と書かれた冷凍庫をちらりと見る。
「おねえさん、ふらんをとじこめる?」
「そんなんじゃねえよ。春まで寝てて貰うだけさ」
「ふらん、ひとりでとじこめられる? ふらん、ゆっくりこんてにゅーできない?」
「そんなんじゃねえって」
膝の上に降りたふらんを撫でながら、お姉さんは静かに、相棒の不安を宥めた。
事務用椅子に座ると足が床に届かないお姉さんの足下へ、銅ばっじをつけためーりんが寄ってくる。
「じゃおおお」
「ほれ、めーりんも言ってるじゃねえか。ふらんはひとりじゃ無いってよ」
「じゃお!」
「めーりん……」
お姉さんの足下で、めーりんが胸を張るようにのけぞった。
春になったらめーりんの銀バッジを狙ってみるか、と思い始めたお姉さんの膝で、ふらんは不安に眠れないでいる。
「なあ、ふらん。よく聞けや。アタシは何も、ふらんが可愛いだとかゆっくりできるだとか、
そんな○○玉の抜けた愛で野郎どもみてえな理由でお前の世話してんじゃねえんだ」
「うー?」
「ふらんのその食いっぷりが気に入ってるから、お前を相棒にしてんだよ。
今年の春から、お前がどれだけ野良や畑荒らしのゆっくり共を食ったか分かるか?」
「うー……ふらんわからない」
「驚くなかれ、千と五百に二十匹――だ。さっきの十匹は、経費で買った餌だから数えるなよ」
「それ、"ひゃく"よりたくさん?」
「百が十五個より、ちっと多いな」
「じゃおおお!」
ふらんがお姉さんに褒められていることを察したのか、足下のめーりんが我が事の様に喜んでいる。
「おねえさん」
「ん?」
「らむねさんちょうだい。ゆっくりでいいよ」
「おお……ちょっと待ってな」
掌にラムネを盛るお姉さんの足に、めーりんがぽすん、と体当たりをした。
「あん? なんだよめーりん?」
「じゃお! じゃおじゃお!」
「うーん……弟や"あの馬鹿"と違って、めーりんの言葉までは分からないんだよな、アタシは」
「じゃじゃお……じゃおおおぉぉ!」
のーびのーびを繰り返すめーりんは、真剣そのものの目をふらんに向けていた。
「……ひょっとしてお前、ふらんと一緒に冬眠するって言ってんのか?」
「じゃお!」
「はは、……捕食種だってーのに好かれたもんだなあ、ふらん」
「ふらんもめーりんはすきだよ。おねえさんもゆっくりしててすき」
「そうかい」
お姉さんは、あんよについた埃でスーツの裾が汚れるのも構わず、めーりんを膝に乗せた。
「ほれ、半分こしな」と言って、両手から直接ラムネをむーしゃむーしゃさせる。
「あまあまでしあわせー、だね。……めーりん」
「じゃおおお……」
「おねえさん」
「なんだ?」
「おねえさんは、こんてにゅーできるよ。ゆっくり……していってね……」
やがて寝息をたててすーやすーやを始めたふらんとめーりん。
2ゆを即座に冷凍庫に入れることはせずに、お姉さんは赤と金色の頭を撫でていた。
そんなゆっくりとした気分を遮る、甲高い電話のコール。
「……ちっ!」
こんな季節に、ゆっくり対策課の緊急回線が鳴る用事など、一つしかない。
膝上のゆっくりをやさしく冷凍庫の中に横たえると、お姉さんは餡子に黒く染まった
愛用の得物を携えて、ゆっくり対策課のドアを潜った。
■6 こどく ~加工所にて~
「は~い、それじゃあゆっくりの皆、ゆっくり"えっとうっ!"しようじゃないか!」
「ゆっくちりかいしちゃよ!」×500
「ただ、お兄さんはごはんさんを用意していないんだな、これが!」
「ゆっくちちないで、あみゃあみゃをもってきちぇね、くしょどれい! すぐでいいよ!」×500
「あまあまは、そう! 君達自身です!」
「――ゆ――?」×500
「どうかお互いに食い合い殺し合いむさぼり合って、最後の一ゆになって下さい!」
「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおーーー!?」×500
ぱたん。
加工所職員Aさんは、30程並んだ選別槽の、最後のフタを閉じた。
ここは加工所の最下層。虐待用に出荷されるゆっくりの母体は、こうして生命力優先で選別される。
二体以上のゆっくりが選別槽から出てきたことはないが、逆に全滅した選別槽も未だかつて無い。
これは、孤独を生み出す箱であった。
「ああ、聞こえる。ゆっくり達の織りなす阿鼻叫喚の調べが!」
れいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、ちぇん、みょん。
適当に入れて置いても、春に生き残る種類はなかなか偏らないものだと、Aさんは毎年の経験から知っていた。
「む……むむむ? 私には聞こえる。私には分かる! これはドスの足音ですね。
こんな時期に外を出歩くとは……ああ! 全く持って勿っ体っないっ!」
■7 越冬失敗例 ~冬空の下~
Aさんの加工所から20km程離れた国道沿い。
飢えに耐えかねて山を降りたドスの群れは、ぎらぎらと粘つくような視線を、
道の真ん中で通せんぼをする"にんげんさん"の小さな姿へと向けていた。
「六尺五寸――って所か。小せえドスだな……」
ヒールを履いてぎりぎり五尺のお姉さんが、巨大なドスを見下した様に言った。
「にんげんさんはゆっくりここを通してね! ドスは"きょうてい"をむすびに行くんだよ!
ドスたちは――」
「腹へってんだろ? メシをたかりに行こうとしてんだろ?」
「……ゆ?」
「言わなくても分かってンだよ。手前ーらが学習机だのランドセルだの、欲しがるわけねーだろうが」
ドスは、何故かゆっくり出来ない気配を感じて首(体全体)をかしげた。
このお姉さんは体も小さく、お飾りも無くてゆっくりしていない。
なのに何故か、れみりゃやふらんのような捕食種の気配を感じる。
「おい、そこのドス。悪いことは言わねえから、手前ぇ……今の内に死んどけ」
「ゆ……いきなりなにいってるのおおぉぉ!?」
「餌を溜めとく計画性も無え……。人間の危なさも分かってねえ……。にっちもさっちも行かなくなって、
いざ飢え死ぬって段になって、人間様を倒せば英雄か? 危機管理のできねえ無能なリーダーなんざ、
居ない方がマシだ。さっさと体真っ二つにかっ捌いて、"おたべなさい"しろや。そうすりゃ群れの一個ぐらいは、
ドス食って生き延びられるだろうが」
『ドスが群れを引き連れて人間のテリトリーに入った』
その事実が見過ごせない以上、ドスの命はもはや無い。
ただ、ドスの使い道が残っているだけだ。
「ドスじゃなくてにんげんさんがしねばいいんだよー。わかってねー!」
と、ドスの後ろから、成体になったばかりらしきちぇんが飛び出して言った。
「そ、そうなんだぜ! にんげんさんがおとなしくごはんさんをむーしゃむーしゃさせてくれれば、
いたいめをみずにすむのぜえ!」
「むきゅ! ゆっくりしたドスが、ドスすぱーくをつかえば、にんげんさんもたおせるわ!」
若いちぇんの勇姿に心を打たれたのか、成体のまりさとぱちゅりーがしゃしゃり出てくる。
場の勢いに乗って、ドスの背後からも群れのゆっくり達がやんややんやと声を上げはじめた。
「あ゛ぁ゛?」
「ゆ……ドスはにんげんさんのおどしにはくっしないんだよ!」
お姉さんが凄んで見せても、ゆっくり達に引く気配はない。
危険な様子が分かっていないのだ。餓えが、野生の勘を削いでいた。
「交渉決裂ぅ……。まったく、どうせなら町長ん家の方に向かえっての。そしたらドススパークの一発ぐれーは
見逃してやんのによぉ。――よりによってあの馬鹿ん家の方に来やがる」
お姉さんはちらりと、背中の方に見える山を向く。
それは、もりのけんじゃ(笑)からすれば、致命的な隙にも見えた。
「むきゅ! いまよドス! いまのうちにドスすぱーくをつかうのよ!」
「ゆん! そうだね、ぱちゅりー!」
ドスは慌てて、おぼうしの中からすぱーく用のキノコを取り出す。
そしてキノコを口に含もうとしたその瞬間、ひゅん、と一陣の黒い風が吹いて、ドスの舌が根本から寸断された。
「ゆ? ドスの……ドスのべろさんがーー!」
「おーおー、流石ゆっくり。舌が無くてもしゃべれるんだな」
「もどってね、べろさんゆっくりしないでもどってね! ぺーろぺーろ……できないいいいいぃ!」
舌を口に戻そうとしてむーしゃむーしゃしてしまう程混乱したドスの前で、ひゅんひゅんと鳴る風は
お姉さんの手元に巻き戻り、一束のトゲ付きワイヤーとなる。
「ちゃらららん。"ゆー死鉄線"~~」
効果音付き大山のぶ代で。
お姉さんは餡子の染みついた凶器――"ゆー死鉄線"を掲げた。
ひゅん! 放たれた"ゆー死鉄線"が、一瞬の内にドスの全身に巻き付く。
「ゆ――ほどいてね! おねえさんこれほどいてね!」
芯まで染みついたとてつもないゆっくりの死臭が、ドスの全身を苛んで、あまりにもゆっくりできない。
見れば、お姉さんがおもむろに取り出した二本目の"ゆー死鉄線"が、意志ある蛇のように群れのゆっくり
一体一体にまきついてゆくではないか。
「言いたいことがあるんなら、口がある内に言っとけや……」
そして、お姉さんは小さな体を一坏に使って、"ゆー死鉄線"をゆっくり、ゆっくりと締め上げはじめた。
「このアタシのプリティーな耳の穴よーくかっぽじって、命乞いから断末魔までガン無視してやっからよお!」
「がえりまず! おうじがえりまずがら! ごれほどいてえええええ!」
お姉さんは宣言通りに。
耳を貸すことは、無かった。
■8 越冬成功例 ~辛い季節を越えて~
「やれやれ、やっと取材スタッフの方も帰ってくれましたね」
今年の『越冬』分真空パックゆっくりを抱えたお兄さんが、保存庫にしている納屋へと足を運んでいる。
「あとは、ここに全部放り込んで置いて……と」
がらがらがら……どさり。
「あ」
納屋の扉から出てきた物は、がりがりにこけた頬、干からびた白玉の目玉、よれよれのお帽子。
「ゆっ……ゆっ……ゆっ……」
去年の冬に入れたまま、出し忘れた成体まりさの真空パックだった。
「もっと……ゆっくり……したかった……」
断末魔のまりさを見下ろして、お兄さんはほっと一息。
「良かった。どうやら、越冬は成功していたようですね」
納屋にゆっくりパックを放り込んで、扉をそっと閉ざした。
終わり。
過去作品
anko1521 その台詞は言わせない3
anko1508 その台詞は言わせない2
anko1481 その台詞は言わせない