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anko3477 炭鉱ゆ
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『炭鉱ゆ』 17KB
虐待 不運 日常模様 群れ 一昔前のお話です 以下:余白
虐待 不運 日常模様 群れ 一昔前のお話です 以下:余白
『炭鉱ゆ』
今から約百年程前の話である。
人里離れた森の奥。
そこには良質の石炭が採れる炭鉱があった。
大規模な炭鉱は「炭田」と呼ばれ、この炭鉱はあと一歩「炭田」と言うには及ばない程の規模だ。
石炭の使用は二千年前に遡るとも言われ、本格的な炭鉱開発が世界的には始まったのは十八世紀に入ってからの事。
英国のスタードバンドが石炭を原料としたコークスを使った製鉄法を発明し、鉄の大量生産が可能となった事がきっかけとなり、この出来事は後の産業革命にも影響を与えた。
日本では江戸時代末期から筑豊・唐津などで石炭採掘が行われており、財政が切迫していた諸藩が指揮を執り炭鉱を開発していくようになる。
その炭鉱は古くから開発されていた所謂初期の炭鉱とは異なり、最近になって発見されたものだ。
当時の鉱山は利益重視のため、労働環境は二の次にされてしまうことが多く全国各地で炭鉱事故が相次いでいた。
この炭鉱も御多分に漏れず安全管理が徹底されているとは言い難い。
しかし、そんな環境に置かれながらもここでは炭鉱事故が起こった事は一度もない。いや、正確には「人間に被害が及んだ炭鉱事故が一度もない」と言うべきか。
ここには人間以外の“労働者”がいた。
炭鉱ができるまで、その周辺で静かに暮らしていたゆっくりの群れを構成していた……野生のゆっくりたちである。
人はそんな野生ゆっくりを「奴隷ゆっくり」と呼び、ゆっくりたちに出来る範囲の仕事を強要して、文字通りに死ぬまでこき使っていた。
だが、中には強制労働を強いられ、時に命の危険にまで晒されることもあるゆっくりたちの事を仲間のように思い、情が沸いたのかこんな呼び方をする者たちもいた。
人里離れた森の奥。
そこには良質の石炭が採れる炭鉱があった。
大規模な炭鉱は「炭田」と呼ばれ、この炭鉱はあと一歩「炭田」と言うには及ばない程の規模だ。
石炭の使用は二千年前に遡るとも言われ、本格的な炭鉱開発が世界的には始まったのは十八世紀に入ってからの事。
英国のスタードバンドが石炭を原料としたコークスを使った製鉄法を発明し、鉄の大量生産が可能となった事がきっかけとなり、この出来事は後の産業革命にも影響を与えた。
日本では江戸時代末期から筑豊・唐津などで石炭採掘が行われており、財政が切迫していた諸藩が指揮を執り炭鉱を開発していくようになる。
その炭鉱は古くから開発されていた所謂初期の炭鉱とは異なり、最近になって発見されたものだ。
当時の鉱山は利益重視のため、労働環境は二の次にされてしまうことが多く全国各地で炭鉱事故が相次いでいた。
この炭鉱も御多分に漏れず安全管理が徹底されているとは言い難い。
しかし、そんな環境に置かれながらもここでは炭鉱事故が起こった事は一度もない。いや、正確には「人間に被害が及んだ炭鉱事故が一度もない」と言うべきか。
ここには人間以外の“労働者”がいた。
炭鉱ができるまで、その周辺で静かに暮らしていたゆっくりの群れを構成していた……野生のゆっくりたちである。
人はそんな野生ゆっくりを「奴隷ゆっくり」と呼び、ゆっくりたちに出来る範囲の仕事を強要して、文字通りに死ぬまでこき使っていた。
だが、中には強制労働を強いられ、時に命の危険にまで晒されることもあるゆっくりたちの事を仲間のように思い、情が沸いたのかこんな呼び方をする者たちもいた。
――炭鉱ゆ、と。
「おにーさん、おみずさんもごーくごーくしてね」
「悪いな、れいむ」
「ゆーん。ゆっくり、ゆっくりだよぅ!」
埃だらけの作業服に身を包んだ若い炭鉱夫がれいむが頭に載せて運んできた水の入ったコップを受け取り、ぐいと喉に流し込む。
このれいむは炭鉱夫たちに水や弁当などを運んでくる役割を担っていた。
乱獲された野生ゆっくりたちは「牢獄」と呼ばれる深さ二メートル、直径十メートルほどの穴の中に放り込まれそれぞれに役割を与えられている。
れいむの行動もそんな幾つかある役割の一つだ。
このれいむは炭鉱夫たちに水や弁当などを運んでくる役割を担っていた。
乱獲された野生ゆっくりたちは「牢獄」と呼ばれる深さ二メートル、直径十メートルほどの穴の中に放り込まれそれぞれに役割を与えられている。
れいむの行動もそんな幾つかある役割の一つだ。
「この糞ゆっくりがッ!!! なんでてめぇが俺の弁当食ってやがんだッ!!!」
「ど、どぼじでぞんなごどい゛う゛の゛ぉぉぉ!? ま゛り゛ざだって、おな゛かがぺーこぺーこでゆっぐりでぎない゛んだよ゛ぉぉぉ!??」
少し離れた位置から別の炭鉱夫の怒号とまりさの悲痛な叫び声が聞こえてくる。
無事に弁当を届けたれいむはその声を聞いて目を伏せ、地面を注視した。近くにいた炭鉱夫がぼんやりとそのれいむを見下ろす。
無事に弁当を届けたれいむはその声を聞いて目を伏せ、地面を注視した。近くにいた炭鉱夫がぼんやりとそのれいむを見下ろす。
「い゛だい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ッ!!!」
激しい音がした。皮が弾けるような乾いた音だ。
一人と一匹の位置からは見えないが、向こう側にいるのであろう炭鉱夫がスコップでまりさの頬を力任せに殴ったのである。
まりさはこの役割に関しては新参者のゆっくりだった。先日、過労による餡子不足で絶命した別のまりさの代用品である。
一人と一匹の位置からは見えないが、向こう側にいるのであろう炭鉱夫がスコップでまりさの頬を力任せに殴ったのである。
まりさはこの役割に関しては新参者のゆっくりだった。先日、過労による餡子不足で絶命した別のまりさの代用品である。
「や゛べでぇ゛ぇ゛!! ゆ゛る゛じでぐだざい゛っ!! もう゛じまぜんがら゛あ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!! ――ぎゃああああああああああああああああああ!!!!!」
れいむが怯えるのも無理はない。
今でこそ“役割”をきちんと果たすことのできるれいむだが、最初の頃は何度も頭やあんよを叩かれた。身が軋むほどの激痛に全身を捩り、「ごめんなさい」を繰り返す日々。
森でゆっくりと暮らしていたれいむにとって、そんな日々は言葉のとおり地獄と呼ぶに相応しかった。
ぶるぶると震えるれいむの目の前に、炭鉱夫がおにぎりを投げる。
突如として視界に入ってきたおにぎりに目を丸くして、それから炭鉱夫をおずおずと見上げた。
今でこそ“役割”をきちんと果たすことのできるれいむだが、最初の頃は何度も頭やあんよを叩かれた。身が軋むほどの激痛に全身を捩り、「ごめんなさい」を繰り返す日々。
森でゆっくりと暮らしていたれいむにとって、そんな日々は言葉のとおり地獄と呼ぶに相応しかった。
ぶるぶると震えるれいむの目の前に、炭鉱夫がおにぎりを投げる。
突如として視界に入ってきたおにぎりに目を丸くして、それから炭鉱夫をおずおずと見上げた。
「……食えよ」
「れいむ……むーしゃむーしゃ、してもいいの……?」
「誰も来ないうちにさっさと食っちまえ。腹減ってるんだろ?」
「お、おにぃさ……ゆぐっ、ひっく……ゆーんゆーん……ゆっくり、ありが……」
「早く食えって」
「ゆ……っ。むーしゃ、むーしゃ……し、しあわせ……」
ほう、と溜め息をつきながられいむが小声でしあわせ宣言をした。本当はこの喜びを叫びたいところだがそうはいかない。
れいむが炭鉱夫にお礼を言おうと口を開きかけたとき、炭鉱夫はのそりと立ち上がって背伸びをしながらその場を後にした。
恐怖と悲しみ。喜びと幸せ。それぞれの感情を複雑に絡め合わせながら、れいむは炭鉱夫の後姿が見えなくなるまで眺めていた。
れいむが炭鉱夫にお礼を言おうと口を開きかけたとき、炭鉱夫はのそりと立ち上がって背伸びをしながらその場を後にした。
恐怖と悲しみ。喜びと幸せ。それぞれの感情を複雑に絡め合わせながら、れいむは炭鉱夫の後姿が見えなくなるまで眺めていた。
「まりさ、ゆっくりなおってね、ぺーろぺーろ……」
「ゆひっ、ひっ……いたいよぉ……いたいよぉ……もうやだ、ここからだして! まりさ、おうちかえる!」
全身をパンパンに腫れ上がらせた先ほどのまりさが、ぼろぼろと涙を流しながら声を上げた。
まりさの言葉に「牢獄」内にいた囚われのゆっくりたちもしょんぼりとした表情になる。
おうちはここにあった。ずっと前からあった。自分たちのお母さんのお母さんのそのまたお母さんたちの代からずっと続いていたゆっくりぷれいす。
それが、確かにここにあったのだ。
それなのに、今は一匹残らず穴の底。明日をも知れぬ毎日に怯え、空腹と疲労に心と体を少しずつ蝕まれていくだけの生活。
満足な食事も与えられない中で、生まれたばかりの赤ゆたちは次々に死んでいった。
そして、飢えを凌ぐために息絶えた我が子の亡骸を泣きながら口に運ぶ親ゆっくりたち。
こんな過酷な環境にありながら、どのゆっくりも共食いやゲス化などの暴挙に走る者はいなかった。
野生ゆえの温厚さから来るものだろうか。違う。そうしたい感情を抑え込むに値する希望が心の奥底にあるからだ。
まりさの言葉に「牢獄」内にいた囚われのゆっくりたちもしょんぼりとした表情になる。
おうちはここにあった。ずっと前からあった。自分たちのお母さんのお母さんのそのまたお母さんたちの代からずっと続いていたゆっくりぷれいす。
それが、確かにここにあったのだ。
それなのに、今は一匹残らず穴の底。明日をも知れぬ毎日に怯え、空腹と疲労に心と体を少しずつ蝕まれていくだけの生活。
満足な食事も与えられない中で、生まれたばかりの赤ゆたちは次々に死んでいった。
そして、飢えを凌ぐために息絶えた我が子の亡骸を泣きながら口に運ぶ親ゆっくりたち。
こんな過酷な環境にありながら、どのゆっくりも共食いやゲス化などの暴挙に走る者はいなかった。
野生ゆえの温厚さから来るものだろうか。違う。そうしたい感情を抑え込むに値する希望が心の奥底にあるからだ。
「あのぱちゅりーは……しあわせー、になれたのかなー?」
「なれたにきまっているわ。からだのよわいぱちゅりーがいっしょうけんめいがんばったから、にんげんさんがぱちゅりーをここからだしてくれたのよ」
「それもそうだねー……。いつかはちぇんたちも、ここからだしてもらえるのかなー……?」
「ありすたちががんばっていれば、きっとにんげんさんたちもありすたちをたすけてくれるわ」
「わかるよー……。ちぇんも、がんばるんだねー……」
ここに連れてこられてから何匹の仲間を失ったか覚えてはいないし、数えることもできない。
奴隷ゆっくりたちと永遠に別れてしまった家族、姉妹、友、恋人は数知れなかった。そのどれもが最後はこの世界を呪いながら悲惨な最期を遂げたのである。
しかし、この「牢獄」から生きて外の世界へと出してもらった仲間もいたのだ。
そのゆっくりたちがどうなったのかを聞くと、人間たちは口を揃えて「ここにはもういない」と答えるばかり。
だがぶっきらぼうな人間たちの言葉も、奴隷ゆっくりたちにとっては“死”以外の未来が残されているという可能性を示唆させるに十分なものであった。
だからこそ、炭鉱夫の言葉に従うのだ。逆らえば殺される。逆らわなければ生きてここを出る事ができるかも知れない。
非力な無力な奴隷ゆっくりたちは、二つしかない選択肢のうち、後者を選ぶことしか許されていなかったのである。
奴隷ゆっくりたちと永遠に別れてしまった家族、姉妹、友、恋人は数知れなかった。そのどれもが最後はこの世界を呪いながら悲惨な最期を遂げたのである。
しかし、この「牢獄」から生きて外の世界へと出してもらった仲間もいたのだ。
そのゆっくりたちがどうなったのかを聞くと、人間たちは口を揃えて「ここにはもういない」と答えるばかり。
だがぶっきらぼうな人間たちの言葉も、奴隷ゆっくりたちにとっては“死”以外の未来が残されているという可能性を示唆させるに十分なものであった。
だからこそ、炭鉱夫の言葉に従うのだ。逆らえば殺される。逆らわなければ生きてここを出る事ができるかも知れない。
非力な無力な奴隷ゆっくりたちは、二つしかない選択肢のうち、後者を選ぶことしか許されていなかったのである。
翌朝。
まるで芋虫が列を成して移動するように、数種の奴隷ゆっくりたちが苦痛に顔を歪めながら一列に並んでずりずりとあんよを這わせていた。
それぞれの後ろからは“てみ”とも呼ばれる塵取りのような物が追従し、それから延びる頑丈な紐が各ゆっくりの顔面中央部に食い込むようにして固定されている。
“てみ”の中には採掘した石炭の原料や不要な岩石などが、ゆっくりと同じ高さ分くらいにまで積まれていた。
まるで芋虫が列を成して移動するように、数種の奴隷ゆっくりたちが苦痛に顔を歪めながら一列に並んでずりずりとあんよを這わせていた。
それぞれの後ろからは“てみ”とも呼ばれる塵取りのような物が追従し、それから延びる頑丈な紐が各ゆっくりの顔面中央部に食い込むようにして固定されている。
“てみ”の中には採掘した石炭の原料や不要な岩石などが、ゆっくりと同じ高さ分くらいにまで積まれていた。
「ゆはっ、ゆはっ……」
息を荒げながら奴隷ゆっくりたちが運んできた石炭などを別の炭鉱夫が回収していく。
回収が終わった奴隷ゆっくりは、また虚ろな表情で真っ暗な坑道の中へと戻って行くのだ。それが一日中、休みなしに続く。
これが人間であれば過度な労働に倒れてしまい、問題になってしまうが奴隷ゆっくりの場合はどれだけ無茶な働かせ方をしても構わないのである。
一匹、奴隷ゆっくりが死ねば、「牢獄」から別の奴隷ゆっくりが引き上げられるだけの事。
炭鉱夫たちにとって、奴隷ゆっくりの命など現代で言えば乾電池の寿命と同じような扱いでしかなかった。
そんな使い捨ての命たちは不確かな淡い希望だけを頼りに、まるで眼前にニンジンをぶら下げられた馬のように、前へ前へとあんよを動かすのである。
回収が終わった奴隷ゆっくりは、また虚ろな表情で真っ暗な坑道の中へと戻って行くのだ。それが一日中、休みなしに続く。
これが人間であれば過度な労働に倒れてしまい、問題になってしまうが奴隷ゆっくりの場合はどれだけ無茶な働かせ方をしても構わないのである。
一匹、奴隷ゆっくりが死ねば、「牢獄」から別の奴隷ゆっくりが引き上げられるだけの事。
炭鉱夫たちにとって、奴隷ゆっくりの命など現代で言えば乾電池の寿命と同じような扱いでしかなかった。
そんな使い捨ての命たちは不確かな淡い希望だけを頼りに、まるで眼前にニンジンをぶら下げられた馬のように、前へ前へとあんよを動かすのである。
「ゆひ……ひ……ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ……」
そのとき、一匹のみょんが電池残量の尽きた玩具のように、前のめりにぺしゃりと倒れた。
「みょんっ! みょんっ!! しっかりしてね!!! うしろがつっかえてるよっ! にんげんさんにみつかっちゃうよっ!!!」
「れ……む、みょ……もう、だ……め……」
「みょん!! がんばろうねっ!! みんなでおうちにかえるんだよっ!!! いっしょにさいごまでがんばってゆっくりしようねっ!!!」
「――……っ」
れいむの言葉にみょんが一筋涙を流す。
後続のゆっくりたちも「ゆーゆー」と騒ぎ始めた。
そこへふらりと炭鉱夫が現れる。虫の息のみょんを見下ろす瞳は氷のように冷たくナイフの切っ先のように鋭い。
視点の定まらぬみょんに、炭鉱夫の姿は映っていないのだろう。
代わりにれいむがみょんの前に出て額をぺちんぺちんと地面に何度も打ち付けながら嘆願の意を述べた。
後続のゆっくりたちも「ゆーゆー」と騒ぎ始めた。
そこへふらりと炭鉱夫が現れる。虫の息のみょんを見下ろす瞳は氷のように冷たくナイフの切っ先のように鋭い。
視点の定まらぬみょんに、炭鉱夫の姿は映っていないのだろう。
代わりにれいむがみょんの前に出て額をぺちんぺちんと地面に何度も打ち付けながら嘆願の意を述べた。
「にんげんさんっ!!! おねがいだよっ!!! みょんをやすませてあげてねっ!!! みょんはいまのいままでずっとがんばっておしごとさんをしていたんだよ!!!」
「……だからどうしたんだ?」
「ゆぐぅ……。ちょっと、やすめば……みょんもげんきになるよっ! またたくさんおしごとさんができるようになるよ!!!」
「…………」
「だからおねがいだよっ!! ちょっとだけ……みょんをやすませてあげてねっ!!!」
「……代用品は、いくらでもあるんだよ」
れいむには理解のできない言葉を人間が呟く。
それからすぐにみょんが宙を舞った。人間がみょんの髪の毛を掴んで持ち上げたのである。
一様にうつむく奴隷ゆっくりたち。
それからすぐにみょんが宙を舞った。人間がみょんの髪の毛を掴んで持ち上げたのである。
一様にうつむく奴隷ゆっくりたち。
「いいか、お前らよく見とけ。動けなくなったゆっくりはな」
「や、やめてあげてねっ!! みょんが……みょんがいやがってるよっ!!!」
頭上高く振り上げられた腕が垂直に振り下ろされる。その先端にいたみょんは自分の体高の何倍もの高さから一直線に地面へと叩きつけられた。
何かが潰れる嫌な音。命が砕ける鈍い音。それらが坑道の中にこだまする。
何かが潰れる嫌な音。命が砕ける鈍い音。それらが坑道の中にこだまする。
「みょん……みょん……」
れいむがぼろぼろと涙を流した。
周囲に飛び散ったホワイトチョコを眺めて嗚咽を上げる。
炭鉱夫はみょんの残骸を靴の裏でぐちゃぐちゃに引き延ばして、まるで踏んでしまった犬の糞をなすりつけるかのように剥き出しの岩肌に擦り付けた。
周囲に飛び散ったホワイトチョコを眺めて嗚咽を上げる。
炭鉱夫はみょんの残骸を靴の裏でぐちゃぐちゃに引き延ばして、まるで踏んでしまった犬の糞をなすりつけるかのように剥き出しの岩肌に擦り付けた。
「さぁ。仕事だ、お前ら。死にたくなかったら働け。まだノルマは終わってないぞ」
「……ゆっくり……りかい、したよ……」
力ないれいむの言葉。それが奴隷ゆっくりの総意であったかのように、また機械的に動き出す奴隷ゆっくりたち。
みょんは優しいゆっくりだった。
他のゆっくりに比べれば少しだけ運動神経に恵まれていたみょんは、疲れているゆっくりの運ぶ石炭を自分の運ぶ“てみ”の中に入れて手伝ってやっていたりもしたのだ。
そんなみょんも、空腹から尽きかけた中身の前に為す術なく倒れ、呆気なく殺されてしまった。
しかし、これが奴隷ゆっくりたちの日常だったのである。奪われるだけの、日常。
流した涙も乾かぬままに、奴隷ゆっくりたちはまたずーりずーりとあんよを動かし始めた。
みょんは優しいゆっくりだった。
他のゆっくりに比べれば少しだけ運動神経に恵まれていたみょんは、疲れているゆっくりの運ぶ石炭を自分の運ぶ“てみ”の中に入れて手伝ってやっていたりもしたのだ。
そんなみょんも、空腹から尽きかけた中身の前に為す術なく倒れ、呆気なく殺されてしまった。
しかし、これが奴隷ゆっくりたちの日常だったのである。奪われるだけの、日常。
流した涙も乾かぬままに、奴隷ゆっくりたちはまたずーりずーりとあんよを動かし始めた。
そんなある日。
「牢獄」に一人の炭鉱夫が現れた。
それからまるで品定めをするようにぐるりと「牢獄」の中を見渡し、五匹のゆっくりを籠に載せてその場を去っていく。
突然の出来事に選ばれた五匹のゆっくりは歯をカチカチと鳴らして震えている。仲間と目を合わせることもできない。合わせたら最後、泣き叫んでしまうだろうからだ。
「牢獄」に一人の炭鉱夫が現れた。
それからまるで品定めをするようにぐるりと「牢獄」の中を見渡し、五匹のゆっくりを籠に載せてその場を去っていく。
突然の出来事に選ばれた五匹のゆっくりは歯をカチカチと鳴らして震えている。仲間と目を合わせることもできない。合わせたら最後、泣き叫んでしまうだろうからだ。
「もしかして……さっきのゆっくりたちは……」
「ここからだしてもらえるゆっくりたちだとおもうわ……。ここからいなくなるときは、みんなああやってどこかにつれていかれたのだもの」
「そうだねー……。あのゆっくりたちには、ちぇんたちのぶんまでしあわせー、になってほしいよー」
「ちがうわ、ちぇん。ありすたちもなるのよ。しあわせー、にね」
「……わかるよー……」
ちぇんとありすの会話。
聞こえていないフリをしていながら、「牢獄」の中のゆっくりたちはそんな二匹の会話を聞いていた。
そして、そこにいたどれもが「明日も頑張ろう。幸せになるために生き延びよう」と決意を新たにするのであった。
聞こえていないフリをしていながら、「牢獄」の中のゆっくりたちはそんな二匹の会話を聞いていた。
そして、そこにいたどれもが「明日も頑張ろう。幸せになるために生き延びよう」と決意を新たにするのであった。
集められた五匹の奴隷ゆっくりはお互いの姿を見て笑った。
「とかいはじゃないわね、まりさ。じまんのおぼうしさんがちっともかっこよくないわよ?」
「う、うるさいのぜっ。そういうありすだって、ちっともかわいくないのぜ」
「ぷくぅぅ! れでぃーにそんないいかたはしつれいよっ! ゆっくりぷんぷん!!」
「むきゅ。にんげんさん……これが、ぱちゅたちのさいごのおしごとなのね?」
ぱちゅりーが傍にいた炭鉱夫に声をかける。炭鉱夫は「ああ、そうだ」と短く返事を返した。
五匹の奴隷ゆっくりは「この仕事を最後にどこへ行ってもいい」と言われていたのだ。
最初は呆けた様子を見せていた五匹のゆっくりは、それがどういう事かを理解するのに時間こそかかりはしたものの、理解してからは飛び上がって喜んだ。
さっきまではしゃいでいたありすもぴょんぴょんと飛び跳ねてきて、少し慎重な表情で炭鉱夫に疑問を投げかける。
五匹の奴隷ゆっくりは「この仕事を最後にどこへ行ってもいい」と言われていたのだ。
最初は呆けた様子を見せていた五匹のゆっくりは、それがどういう事かを理解するのに時間こそかかりはしたものの、理解してからは飛び上がって喜んだ。
さっきまではしゃいでいたありすもぴょんぴょんと飛び跳ねてきて、少し慎重な表情で炭鉱夫に疑問を投げかける。
「でも……もっと、たくさんのゆっくりがいてはだめなの? ありすたちだけでできるおしごとさんなのかしら……?」
「ああ。……できるとも」
炭鉱夫から発せられる淀んだ声。
「それなら、あんしんねっ」
「にんげんさんっ! まりさたち、がんばるのぜっ!! だからはやくおしごとさんをおしえてほしいのぜっ!!!」
「まりさったら。そんなにはりきって、あとでつかれたっていってもしらないから」
「なんなのぜっ!」
「つーん」
奴隷ゆっくりたちはまた笑いながらしばしの時を過ごした。
それから、肝心の仕事の話が始まった。
それから、肝心の仕事の話が始まった。
「いいか。本格的な仕事は明日からだ。お前らは今から俺が連れて行くところで今日は待っていろ」
「あした、そこにいくんじゃだめなの?」
「こっちにもいろいろあってな。先にお前らだけ中に入ってもらうことになった。今日だけだから我慢してそこで寝ろ」
「むきゅ。ゆっくりりかいしたわ」
「それでな、実際どんな事をするかは後でお前らに“食べ物を運んできたゆっくり”が伝えることにしてある」
「そのゆっくりがくるのをまっていればいいのぜ?」
「そうだ。それから飯を食って一眠りしていろ」
「わかったわ。あしたのために、ごはんさんをたべておくのね」
「そういうことだ」
「「「「「ゆっくりりかいしたよ!!!」」」」」
それから炭鉱夫の後ろをぴょんぴょんとついて、坑道の中へと入って行った。
既に懐中電灯の明かりがなければ前が少しも見えない。
それでもゆっくりたちは必死になって炭鉱夫を見失わないように後をついていく。
やがて、行き止まりへとぶつかった。炭鉱夫が「今日はここで待っていろ」とだけ告げる。
既に“仕事の内容”を聞いていた五匹はまた声を揃えて理解した事を炭鉱夫に伝えて、そこでゆっくりとし始めた。
炭鉱夫がその場を後にする。
外に出た炭鉱夫が一匹のれいむのもとへと歩を向けた。
このれいむは、炭鉱夫に弁当などを届ける役割を担っていたれいむである。
奴隷ゆっくりの中で最も賢く、最も従順なこのれいむが……これから行われる仕事の重要な役割を担っていた。
れいむの後ろに石炭などを積んでいた“てみ”がある。ただ、載せられているものはおにぎりなどの食糧だ。
れいむもまた、この食糧を坑道の中で待っているゆっくりたちに届けてほしいという仕事を与えられていた。
既に懐中電灯の明かりがなければ前が少しも見えない。
それでもゆっくりたちは必死になって炭鉱夫を見失わないように後をついていく。
やがて、行き止まりへとぶつかった。炭鉱夫が「今日はここで待っていろ」とだけ告げる。
既に“仕事の内容”を聞いていた五匹はまた声を揃えて理解した事を炭鉱夫に伝えて、そこでゆっくりとし始めた。
炭鉱夫がその場を後にする。
外に出た炭鉱夫が一匹のれいむのもとへと歩を向けた。
このれいむは、炭鉱夫に弁当などを届ける役割を担っていたれいむである。
奴隷ゆっくりの中で最も賢く、最も従順なこのれいむが……これから行われる仕事の重要な役割を担っていた。
れいむの後ろに石炭などを積んでいた“てみ”がある。ただ、載せられているものはおにぎりなどの食糧だ。
れいむもまた、この食糧を坑道の中で待っているゆっくりたちに届けてほしいという仕事を与えられていた。
「動くなよ」
「ゆっくりりかいしているよ」
れいむの頭の上に何かが載せられる。
炭鉱夫はそれをれいむのリボンに器用にくくりつけてから、少しの衝撃程度ではびくともしないようにきつく結びあげた。
炭鉱夫はそれをれいむのリボンに器用にくくりつけてから、少しの衝撃程度ではびくともしないようにきつく結びあげた。
「ゆーん。なんだかあたまがおもくてふらふらするよ」
「慣れるまでの辛抱だ。頑張れ」
「れいむ、がんばるよ!」
れいむの頭の上から延びる長い長い細い紐。炭鉱夫はそれを摘まんでれいむを坑道の中へと促した。
「おなかがぺーこぺーこなゆっくりたちにごはんさんをむーしゃむーしゃさせてあげればいいんだよね?」
「そうだ。お前もおにぎりを食べるといい」
「ありがとう、おにーさん」
「何がだ?」
「れいむにたくさん、おにぎりさんをたべさせてくれて……」
「……気にするな、って言っただろ」
「あ、あのね……おにーさん……。れいむ、おにーさんと、すーりすーりしたいよ」
「……一回だけだからな」
「ゆ……ゆっくり~!」
それかられいむは炭鉱夫の足に自分の頬をゆっくりと摺り寄せた。
れいむは幸せそうな、満足そうな顔で嬉しそうに笑っていた。
れいむは幸せそうな、満足そうな顔で嬉しそうに笑っていた。
「おにーさん、ゆっくりありがとう! このおしごとさんがおわったら、またいっしょにおしごとさんをがんばろーね!!」
「…………ああ。わかった」
「やくそくだよ!」
「……約束だ」
れいむはそのまま坑道の中にぴょんぴょんと跳ねていった。
炭鉱夫がれいむから延びる細い紐を摘まんで少しずつ少しずつ送り出していく。
その細い紐は、導火線。れいむの頭にくくりつけられた物は高威力のダイナマイトである。
れいむが入って行った坑道は、これから新たに採掘を行う予定の坑道だった。
これが掘削中の坑道であれば内部にメタンガスが溜まっている事が多く、導火線を用いた発破作業など行おうものならガス爆発が誘発されることは想像に難くない。
そう言った場所では比較的安全な電気雷管を用いた発破を行っている。
しかし。
この新設された坑道と、その中にいる“労働者”に関して言えばそれほど大袈裟な安全対策を施す必要もない。
選出された五匹は、お互いの頭にくくりつけられたダイナマイトを見て笑い合っていた。それがどういうものかも知らずに。
れいむの本当の役目は坑道内のゆっくりたちにおにぎりを運ぶことではなかった。れいむ自身が起爆剤だったのである。
れいむから延びる導火線に火をつけ、頭上のダイナマイトを爆破。それで引火した残り五匹のダイナマイトも誘爆させて一気に岩盤部分を破壊する。
それが、れいむを含めて六匹のゆっくりに与えられた“最後の仕事”だった。
しばらくして、坑道の中から「ゆっくりしていってね!!!」という声が聞こえてきた。
炭鉱夫が導火線に火を点ける。
小さな火種はあっという間に坑道の奥へと消えた。
それから、「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー」という歓喜の声が響く。
その直後だった。
凄まじい轟音と衝撃が坑道の中から吐き出される。
炭鉱夫も、腕で顔を隠してもうもうと粉塵を上げ続ける坑道を見つめていた。
炭鉱夫がれいむから延びる細い紐を摘まんで少しずつ少しずつ送り出していく。
その細い紐は、導火線。れいむの頭にくくりつけられた物は高威力のダイナマイトである。
れいむが入って行った坑道は、これから新たに採掘を行う予定の坑道だった。
これが掘削中の坑道であれば内部にメタンガスが溜まっている事が多く、導火線を用いた発破作業など行おうものならガス爆発が誘発されることは想像に難くない。
そう言った場所では比較的安全な電気雷管を用いた発破を行っている。
しかし。
この新設された坑道と、その中にいる“労働者”に関して言えばそれほど大袈裟な安全対策を施す必要もない。
選出された五匹は、お互いの頭にくくりつけられたダイナマイトを見て笑い合っていた。それがどういうものかも知らずに。
れいむの本当の役目は坑道内のゆっくりたちにおにぎりを運ぶことではなかった。れいむ自身が起爆剤だったのである。
れいむから延びる導火線に火をつけ、頭上のダイナマイトを爆破。それで引火した残り五匹のダイナマイトも誘爆させて一気に岩盤部分を破壊する。
それが、れいむを含めて六匹のゆっくりに与えられた“最後の仕事”だった。
しばらくして、坑道の中から「ゆっくりしていってね!!!」という声が聞こえてきた。
炭鉱夫が導火線に火を点ける。
小さな火種はあっという間に坑道の奥へと消えた。
それから、「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー」という歓喜の声が響く。
その直後だった。
凄まじい轟音と衝撃が坑道の中から吐き出される。
炭鉱夫も、腕で顔を隠してもうもうと粉塵を上げ続ける坑道を見つめていた。
「……悪いな。約束、守ってやれなくて……」
炭鉱夫が発破作業の終了報告を現場主任に行っている時、別の一室でちぇんとありすが泣きながら声を上げていた。
「もういやよっ! ずっと、みんなにうそをつくなんて、ありすにはできないわっ!!!」
「わかるよー……きょう、つれていかれたゆっくりたちは、みんな、えいえんにゆっくりしちゃったんだねー……」
「牢獄」の中のちぇんとありすに与えられた役割は、「奴隷ゆっくりたちに希望を与えること」だった。
もちろん、断れば殺される。殺されたくないから、従うしかない。ちぇんもありすも、そんな毎日に心を貪り尽くされていた。
ちぇんとありすは知っているのだ。
自分たちが生きる未来など、在りはしないということを。
それでもなお、大好きな仲間たちに嘘をつき続けなければならない。
なぜなら、死ぬということは本当に怖い事だから。死ぬという事がどういうことか、死ぬまで判らないのだから。判らないからこそ、怯えるのだ。
報告を終えた炭鉱夫は、ちぇんとありすの泣き叫ぶ声を聞きながら宿舎を後にした。
もちろん、断れば殺される。殺されたくないから、従うしかない。ちぇんもありすも、そんな毎日に心を貪り尽くされていた。
ちぇんとありすは知っているのだ。
自分たちが生きる未来など、在りはしないということを。
それでもなお、大好きな仲間たちに嘘をつき続けなければならない。
なぜなら、死ぬということは本当に怖い事だから。死ぬという事がどういうことか、死ぬまで判らないのだから。判らないからこそ、怯えるのだ。
報告を終えた炭鉱夫は、ちぇんとありすの泣き叫ぶ声を聞きながら宿舎を後にした。
(――おにーさん! げんきだしてね! おみずさん、ごーくごーくしていってね!!!)
無邪気なれいむの幻聴を聞きながら、炭鉱夫はのそのそと家路に着いた。
炭鉱は、石油というエネルギー革命が起きるまで採掘が続けられた。
そのエネルギー革命が起こってからは全国各地の炭鉱も姿を消し、この炭鉱も姿を消した。
そして、ここで働かされていた奴隷ゆっくり……或いは炭鉱ゆたちも、一匹残らずその姿を消したのである。
そのエネルギー革命が起こってからは全国各地の炭鉱も姿を消し、この炭鉱も姿を消した。
そして、ここで働かされていた奴隷ゆっくり……或いは炭鉱ゆたちも、一匹残らずその姿を消したのである。
La Fin