ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko3751 ある名前を忘れたゆっくりの一生 貴女はだれ?
最終更新:
ankoss
-
view
『ある名前を忘れたゆっくりの一生 貴女はだれ?』 29KB
愛情 不運 差別・格差 れいぱー 現代 独自設定 久しぶりに長い奴書いてみました
愛情 不運 差別・格差 れいぱー 現代 独自設定 久しぶりに長い奴書いてみました
※俺設定注意
※作、長月です
※昔書いた『anko0932 誰も救われない話』の続編です
今まで書いた作品はこちらに
http://www26.atwiki.jp/ankoss/pages/393.html
※作、長月です
※昔書いた『anko0932 誰も救われない話』の続編です
今まで書いた作品はこちらに
http://www26.atwiki.jp/ankoss/pages/393.html
「ぱちゅりー・・ゆっくりおじゃまするんだぜー。」
「・・・わるかっったわね・・・まりさ・・・いそがしいのによびつけちゃって・・・」
とある山にある洞穴の中。老ぱちゅりーが一匹のまりさを自分の巣の中へと招き入れた。
「いやいいんだぜ、ぱちゅりー・・・ちょうどまりさもおさにききたいことがあったんだぜ。」
気にするなと愛想笑いをするまりさ。しかしその笑顔にはどこか陰りが見える。
この2匹、このあたりの群れの長とその側近のゆっくりだ。
ぱちゅりーは先代長の一人娘で母ぱちゅりー直伝の野草の知識を持っており、群れの皆からの信頼も厚い。
対してまりさは1年ほど前から住み着いた旅のゆっくりだが抜群の狩りの腕ときれる頭の持ち主で一躍、長の側近にのし上がった実力派だ。
それまで旅ばかりしていたせいか風来坊気質でつがいも持たず、特定の友人も居ないが長ぱちゅりーと同じく頼りにされている。
「さいごにあなたとはなしておきたかったの・・・」
「・・・・・・」
最後、と言う言葉にまりさは身を堅くする。やはり長はもう永くはないのだと。
ぱちゅりーも本能的に自分の死期を悟ったのだろう。恐らく明日の朝日を見る事は出来ないことを。
「なぁぱちゅりー・・・さいごだっていうのなら、ひとつだけ・・ひとつだけききたいことがあるんだぜ・・・」
「いいわよ、ぱちぇのしってることならなんでもこたえてあげるわ・・」
しばらくまりさはこんな事言って良いのかと、ためらうようなしぐさをしていたがやがて意を決したようにこう言った。
「ぱちゅりー・・・ぱちゅりーはだれなの?」
ある名前を忘れたゆっくりの一生 貴女はだれ?
カナカナカナカナカナカナカナカナ
無言の静寂の中が蝉時雨だけが巣の中へ響く。
「・・・・ふふっ・・どうやらばれていたようね・・・」
観念したように帽子を脱ぐぱちゅりー。
そこから見えるのはぱちゅりー種特有の紫色の髪ではなく、白髪混じりの金髪。
そう、この長老ぱちゅりー、本当はありすなのだ。今までぱちゅりー種の帽子を被っていただけである。
「いつからきづいていたのかしら?」
「ずっとまえから・・・このむれにすみはじめてすぐ・・・」
「そう・・・ほかのみんなにはきづかれなかったのに・・・するどいのね・・・」
そう言うとありすは小さくため息をついた。
「どうしてこんなことしたんだぜ?ぱちゅ・・いや、ありす。」
ゆっくりにとってお飾りは命の次に大切なもの。アイデンティティ、自分の存在その物だ。
どんな理由であれそれを他ゆんと交換する行為はありす本ゆんが一番ゆっくりできないはず。
「わたしがありすだからよ・・・わかるでしょ・・・」
「・・・・・・・・・・」
それに対してありすの言葉はそっけなくまるで答えになっていない。
しかしまりさはなんとなく分かってしまった。ありすがなぜ身分を偽らなければならなかったのか。
それはこの山のありすに対して差別的といえる境遇にある。
この山にはれいぱーありすが多くその被害者も多い。山賊のように集団で襲ってきたれいぱーによって群れが壊滅したなんて話もざらだ。
その為ありす種はまともなゆっくりとして扱ってもらえない。
ありすはろくに食料も少なく住み心地も最悪の僻地、通称ありすの里へ強制的に住まわされ、他のゆっくりとの交流も許されない。
本当はこうしたありす種への迫害によってゆっくりできないありす達がれいぱー化し、そのれいぱーの被害者達がさらにありすを差別するという負の連鎖におちいっているのだが、ゆっくり達はそのことに気づいていない。
「・・ありすはね・・・れいぱーのこ・・むりやりすっきりーしてできたこだったの・・」
ありすはしわがれた声でぽつぽつとその数奇なゆん生について語り始めた。
ありすの赤ゆ時代はゆっくりした記憶がない。
母親にすーりすりしてもらい、姉妹全員で日なたぼっこしお歌を歌う。
夜は父親がとってきたごはんさんを一緒にむーしゃむーしゃして幸せな気分でみんなで眠る。
そんな当たり前でささやかなゆっくりすらありすには手に入らなかった。
母との記憶は誕生してすぐに侮蔑と嫌悪の目で見られ誕生のごあいさつもされずに外へ放り出されたことだけだ。
「ゆーんゆーん。みゃみゃおうちにいれてぇえええ!!!」
「きょんなのとかいはじゃないいいいい!!!」
捨てられたのはありすばかりではない。同じ頃、こうした捨て子の赤ありす達はこの群れの至る所で見られた。
実はこの群れは1週間程前にれいぱーありすの群れに襲われていたのだ。
群れの長みょんの活躍でなんとか撃退には成功したもののれいぱー達に無理やりすっきりーされたゆっくりが数多くいた。
その結果「れいぱーに似た子など育てたくない」と思う者によって大量にありす種の捨て子が出てしまったのだ。
厳しい大自然の中で、親の庇護のない赤ゆっくりの運命など朝露のように儚い。
「うー、あまあまげっとだどー。」
「ゆんやぁあああああ!!!たしゅけでぇええええええ!!!!」
捕食種であるれみりあやふらんに狩られ捨て子ありす達はどんどんその命を落していく。
夜になっても巣へ入れてもらえず、戦う術もない赤ありす達は、捕食種たちにとって格好の獲物だったのだ。
悲鳴が上がるたびに仲間たちは減り、赤ありすたちは恐怖した。
そして赤ありす達の敵は捕食種ばかりではない。
「んほぉおおおおおおおお!!!!」
「やめちぇええええええ!!!!」
その日ありすは赤れいぱーありすに追いかけられていた。
死に物狂いで逃げるありすだが同じ赤ありすなられいぱー化したゆっくりのほうが身体能力は上。徐々にその距離は詰められていく。
「どうしぇありしゅたちはみんなしぬのよぉおおおお!!!ゆっきゅりなんてできないわぁあああ!!!だったらいっちょにしゅっきりーしてちょかいはなあいをはぐくみましょおおお!!!」
号泣しながらぺにぺにをおったて猛スピードでこちらに跳ねて来る様は異様そのもの。まるで悪夢でも見ているようだった。
この赤れいぱーありす、元々はありすと同じ捨てられた赤ゆっくりのなかの一匹で、生まれつきれいぱーという訳ではなかった。
しかし親に捨てられ孤立無援、ろくな食料もおうちなく仲間も捕食種に狩られ、バタバタと死んでいく。
そんな劣悪な環境下で、とうとう精神が壊れてしまい、一気にれいぱー化が発症してしまったゆっくりなのだ。
ちなみにこうしてれいぱー化したのはこの赤ありすだけではない。
「んほぉおおおおお!!!おねえじゃんん!!ちゅぎりぃいいいいいいいい!!!!!」
「ゆんやぁあああああ!!!こんなのときゃいはじゃないぃいいいいい!!!」
妹が姉を。姉が妹を。
無理やりすっきりーして犯し殺し、れいぱー自身も幼すぎるすっきりーのため死ぬ。
そんなまるで無理心中のような光景がこの山のいたる所で見られた。
もしこのれいぱー赤ありす達が親に捨てられず普通のゆん生を送れていれたなら。
おそらく大部分のありすはれいぱーになどならず、平凡ながらも幸せな一生を送ることができたのだろう。
もちろんそんな話はもしもの世界の仮定でしかなく、今更考えてもしょうがないことではあるが。
「んほぉおおおづかまえちゃぁあああああ!!!!」
「ゆ・・あ・・・ああ・・・」
ついにありすはれいぱーに捕まってしまった。
のしかかって身動きが出来なくしょうとするれいぱーのねとねとした体液がありすの体を汚す。恐怖と嫌悪感でもはやありすは悲鳴を上げることすら出来ない。
「ぢゅぎりぃいいいいいいい!!!!!」
れいぱーがありすのまむまむにそそり立つぺにぺにを挿入しようとしたその時だった。
バサバサァバサバサァッ
大きな羽音を立ててカラスが空から舞い降りてきたのは。
「ちゅんちゅんしにゃいでぇえええええ!!!!」
「いじゃい・・・やめちぇ・・」
からすは2匹の赤ありすをつんつんと交互についばむ。どうやらどちらを喰おうか品定めをしているらしい。
「ゆんやぁああああ!!!ありしゅのときゃいはなぺにぺにがぁああああ!!!」
幸いにもカラスはれいぱーありすの方をターゲットに選んだ。
大きなぺにぺにが美味しそうに見えたのだろうか。執拗にれいぱーのぺにぺにを啄ばんでいる。
その間にありすは近くの茂みに逃げ込んだ。
「・・おめめぎゃ・・・ゆぎゅ・・・いじゃいいい・・・ゆぐぇええ・・・」
茂みの隙間から見える赤ゆの解体ショー。絶え間なく聞こえてくる同族の幼い悲鳴。
ありすはただガタガタと震えることしか出来ない。
目、腹、あんよ、額、頬・・・・
容赦なくカラスがそのくちばしで啄ばみ続け徐々にれいぱーありすの悲鳴は小さくなり
「・・・もっ・・ちょ・・・ゆっきゅり・・したかっ・・た・・」
ついにはぱったり止んだ。
数分後カラスはれいぱーありすを食べ終わるとそのままどこかへ羽ばたいていった。どうやら赤ゆ1匹で満腹になったらしい。
後に残ったのはれいぱーの金髪とクリームの残骸が少しだけだった。
なんとか命の危機から逃れられたありす。しかしその代償はあまりに大きかった。
「ありしゅの・・ありしゅのかちゅーしゃしゃんが・・・」
先程カラスに突かれた時、ゆっくりにとって命同然に大切なカチューシャを取られてしまったのだ。
お飾りのないゆっくりは差別され、ゲスに難癖つけられ殺されることすらある。
ただでさえれいぱーの子であるありすに好意的な態度を取るゆっくりなどいないのに・・・
「ゆ・・ううう・・う・・」
泣いた所で誰も助けてなどくれない。自分はゆっくりできないれいぱーの子なのだから。
それでもありすは泣くしかなかった。
そんなある日たまたま雨宿りに入った洞穴がありすの運命を変えた。
「ゆっ!?だれなのそこにいるのは!?」
急に詰問されてビクッとするありす。この洞穴には既にこの辺りの群れの長であるゆっくりまりさが住んでいたのだ。
「ご・・・ごみぇんなしゃい!!だれきゃのおうちとはしらなかったんでしゅ!!」
なんとか許してもらおうと小さな体を更に縮めて謝る。
れいぱーの子などこの山では虫けら扱いだ。ましてありすにはお飾りのかちゅーしゃもない。
巣に無断に入れば問答無用で潰されてもおかしくないのだ。
「ごほごほっ・・・どうしたのまりさ。なにかあったの?」
そのとき巣の奥から声がした。
暗がりの中目を凝らしてみるとそこに顔色の悪いぱちゅりーが座っている。
腹部のあたりが膨らんでいるので胎生にんっしんっしているらしい。
「むきゅ?おちびちゃん・・・ごほ・・・なにかあったの?よかったらぱちゅたちにはなしてくれないかしら。」
怯えるありすに、にっこりと笑いかけるぱちゅりー。
今までれいぱーの子として嫌悪、侮蔑、憎悪といった負の感情ばかり突きつけられてきたありすはその微笑だけで救われた気がした。
幸いにもこの長まりさ達はありす種への偏見もなく事情を話すと里親が見つかるまでありすの面倒を見てくれることになった。
もしありすのゆん生の中で幸せと言える時があるとしたらこの時だったのかもしれない。
例え仮そめでも優しい両親に囲まれ暮らすことが出来たのだから。
特にぱちゅりーは自身も捨て子だった過去があるせいか、ありすには親身になって接してくれた。
「むきゅ、ありす、じぶんでじぶんのことをゆっくりできないなんていっちゃだめよ。そんなこといってるとほんとうにゆっくりできないゆっくりになっちゃうわ・・・・」
「だからおちびちゃんもね、じぶんはゆっくりできないなんておもわなくていいのよ。きっとあなたのことをみとめてくれるゆっくりがたくさんいるはずだわ。」
そう言って微笑むぱちゅりーにありすはどれほど救われたことか。
お飾りのないれいぱーの子ということで里親こそ見つからなかったものの、ありすは初めて母のぬくもりや優しさというものに触れることが出来た。
それだけでありすは十分満たされていた。
しかしその幸せも長くは続かない。
「ごほっごほっ・・・うまれるわぁ・・・・・・」
「ぱちゅりーがんばって!!がんばってね!!」
その日ぱちゅりーは予定日からだいぶ遅れて産気づいた。
ありすはぱちゅりーの子供が産まれて来るのを楽しみにしていた。まるで自分の妹が生まれて来るかのように。
母の愛情を知らないありすにとってぱちゅりーは母親同然だったのだ。
本当ならこの日は長まりさ一家にとって家族が増える記念すべき日になるはずだった。
「うまれるぅうう!!!」
ぽんっ、と音を立てて赤ゆっくり。 重力に従いポテリと地面に落ちる。
子供を産み落とすとぱちゅりーは気を失った。どうやら出産で全ての体力を使い切ったらしい。
「こ・・・これは・・・」
産まれて来た子を見てまりさは絶句した。
「むぎゅ・・・むぎ・・・ゅ・・・」
誕生の挨拶もできず意味不明な鳴き声を放ち続ける異形の物体。
ぱちゅりーの帽子に目や口など顔の配置もグチャグチャのそれがブルブルと小刻みに震えている。
奇形ゆっくりだ。
出産時に極まれに起きてしまう悲劇。恐らくぱちゅりーの母体に何らかの奇形赤ゆを作る原因があったのだろう。
「むぎ・・・むぎゅうううううう・・・・」
奇形ぱちゅりーは不自由な体をジタバタと痙攣させすぐに死んでしまった。
元々奇形ゆっくりは安全な母体の中でかろうじて生きていられるような脆弱な存在だ。産み落とされた後は長くても数日しか生きることはできない。体力のないぱちゅりー種なら尚更のこと。
あまりのことに茫然自失のありす達。重苦しい沈黙が巣の中で包んだ。
「・・・・ぱちゅりーまま・・・」
ありすは、ぱちゅりーの方を見る。ぱちゅりーは精根尽き果てながらもどこか幸せな顔をしていた。
おそらく産まれたおちびちゃんとゆっくりする夢を見ているのだろう。ぱちゅりーが目を覚まし、このことをこのことを知ったらどれだけ悲しむだろう。 そう思うとありすは胸が痛んだ。
ああ・・・もし自分の命をぱちゅりーにあげることができたなら・・・自分がぱちゅりーの代わりに死ぬことが出来たなら・・・
自分が・・・代わりに・・?
ありすは思いつく。たったひとつだけぱちゅりーを悲しませず済む方法を。
しかしそれを実行していいものか・・・ありすは思い悩む。
それは死んだ赤ぱちゅりーを冒涜する行為であり、ばれればただでは済まない。
そして自分が愛してやまない母ぱちゅりーを欺くことにもなる。
でも・・・それでも・・・
「ごめんね・・・ぱちゅりー・・」
そう言いながらありすは奇形ぱちゅりーの帽子をそっとくわえ、そのまま被る。
ありすが小柄なゆっくりだったのが幸いし、偶然にもサイズはぴったりだった。
まるで最初からありすのものだったようにその帽子はしっくりきている。
「・・・ゆっ!?」
まりさは目を疑う。そこには死んだはずの娘、赤ぱちゅりーが立っていたのだから。
勿論、奇跡が起きたわけではない。
ありすが赤ぱちゅりーの帽子を被っているだけだ。ゆっくりは個体認識を飾りで行う為一瞬そう見えただけである。
「な・・・なにをしてるのありす?それはぱちゅりーのぼうしでしょ・・・・」
ありすの思わぬ行動に驚くまりさ。
「ありすが・・・ありすがしんだぱちゅりーのかわりになるわ!!」
「な・・・なにいってるのありす!!?そんなのむりにきまってるでしょお!!」
「でも・・・おちびちゃんがしんだことをしったら、ママはとてもかなしむわ・・・」
「で・・でも・・・」
あまりに突飛なありすの行動にまりさは動揺を隠し切れない。
確かに帽子を被れば、ぱちゅりーと偽ることは可能だ。群れの皆にもばれないだろう。
しかしそれは机上の空論にすぎない。
ありす種とぱちゅりー種の個性の違いもある上、もし他のゆっくりに正体がばれた場合ぱちゅりーを殺して、長の子供に成り代わろうとしたゲスありすと勘違いされ殺されるかもしれないのだ。
あまりに危険すぎる。
しかし、ぱちゅりーを悲しませたくないのはまりさも一緒だ。
責任感の強いぱちゅりーの事だ。きっと赤ちゃんが死んだのは自分のせいだと自らを責め続けるだろう。
まりさは悩んだ末・・・結局ありすを止めることはできなかった。
ぱちゅりーの帽子を被るようになってありすの生活は劇的に変わった。
今までお飾りのないれいぱーの子として害虫のように忌み嫌われていたのが嘘のように。
「ゆゆーん。とってもゆっくりしたぱちゅりーだね。」
「ちょっとかわってるけどかわいいおちびちゃんなんだねー。わかるよー。」
みんな優しくしてくれるしもう誰もありすを苛めたりしない。長の娘なのだから当然だ。
友達も出来た。春からは一緒に群れの「がっこう」へ行こうと約束している。孤独な赤ゆっくり時代からすれば夢のようだ。
しかしありすはこの幸せにずっと後ろめたさを感じていた。
母ぱちゅりーを悲しませたくない一心でぱちゅりーになることを決意したありすだがそれが本当に正しかったのか。
こんなこと死んだ赤ぱちゅりーへの冒涜に過ぎず、自分が長の娘になるための欺瞞に過ぎないのでは。
そんな罪悪感と自己嫌悪にありすはずっと悩まされていたのだ。
優しい両親も、友達も、みんなの優しさも。
みんな元々は死んだあのぱちゅりーの物だ。 ありすのものではない。
夜、眠ると悪夢を見る。死んだ奇形ぱちゅりーが出てくる夢だ。
夢の中でありすはゲスだと赤ぱちゅりーに糾弾され続ける。ありすは謝罪し続けるが、どんなに謝っても許してもらえない。
そんな悪夢に毎夜のようにうなされ続けるのだ。
「どうしたのおちびちゃん?またこわいゆめでもみたの?」
そう言ってぱちゅりーはありすをあやすようにすーりすりしてくれる。いつもと変わらぬ優しさで。
そんなぱちゅりーの優しさがありすには何よりも痛かった。
自分はこんなに優しくしてくれるぱちゅりーを騙しているのだと思うと。
もし全てを打ち明けることができたらどれほどいいだろう。しかしそれはできない。ぱちゅりーを悲しませることになるから。
そんなジレンマにありすはずっと悩まされ続けていた。
冬ごもりが終わり春になるとありすはもう成体の一歩手前まで成長していた。
帽子もありすの成長に合わせるように大きくなっている。まるで死んだ赤ぱちゅりーがありすを後押ししているかのように。
この群れは独り立ちする前に「がっこう」に入ることが慣わしになっている。
これは群れの作った教育機関であり、まだ狩りの仕方や危険な野草も知らない若造ゆっくり達を一人前のゆっくりにする所である。
当然、長の娘であり、次期長候補だと思われているありすもその「がっこう」へにゅうっがくっすることになった。
「すごいねぱちゅりー。あんなむずかしいもんだいをかんたんにこたえるなんて。」
「さすがおさのむすめなんだねー。わかるよー。」
「むきゅー・・・もりのけんじゃのしょうごうっはぱちゅりーにゆずらざるをえないわ・・・」
ここでもありすは人気者。成績も他のぱちゅりー達を押しのけトップだった。
元々ありす自身が優秀だった上、この群れで一番賢い母ぱちゅりーから色々な事を冬ごもり中も教わっていたのでこの結果も当然である。
ありすとしては自分が偽のぱちゅりーということもあり、あまり目立ちたくはない。
しかし生真面目で手を抜くと言うことを知らない上、もし自分の成績が悪ければ母ぱちゅりー達に恥をかかせてしまうと思っていたので気持ちとは裏腹にいつも成績はクラス一番だった。
「あら、おちびちゃん。もうがっこうはおわったの?」
「がっこう」の帰り、ありすは母ぱちゅりーに出会った。体の弱い母ぱちゅりーが外へ出るのは珍しい。
「まま・・・おそとあるいてだいじょうぶなの?」
「ええ。きょうはきぶんがいいの。ぜんそくもでないし。いっしょにかえりましょ。」
どうやら散歩がてら迎えに来てくれたらしい。2匹はそのまま巣へと戻る。
その様は仲の良いぱちゅりーの母娘の姿そのものだった。
「・・・・ゆぎぎぃ・・・・」
しかしありす達は知らなかった。そんな仲睦まじい親子の様子を歯軋りしながら見ているゆっくりがいることを。
翌日。
その日もありすは群れの広場で教師ぱちゅりーのじゅぎょうっを受けていたのだが、そこへ血相を変えて群れの若ちぇんがやってきた。
「たいへんだよ!!ぱちゅりー・・・おさが・・・ぱちゅりーのおとうさんたちがゲスにおそわれて・・・」
「えっ・・・」
若ちぇんの話によると2匹は家に居たところをゲスゆっくりに襲われたらしい。犯ゆんは悲鳴を聞きつけたみょん達によって既に取り押さえられたそうだが長夫婦は重症だという。
「きをしっかりもってぱちゅりー・・・」
耳元で何かちぇんが言っているがありすの耳には入らない。
大丈夫。大丈夫だ。あんな優しくてゆっくりしたお父さんとお母さんが死ぬわけない。
そう信じながらありすは自分の巣へ跳ねる。
「おさたちがさされたってほんとうなのぜ?」
「そのゲスはもうつかまったの?」
巣の周りには群れのゆっくり達が何頭も集まっていた。長夫婦を心配し様子を見に来ていたのだ。
きっと大丈夫。たいした事なんてなくてこんな血相を変えて戻ってきたありすを二人は笑ってくれるのだ。
そう信じながら群れのゆっくり達を掻き分け巣の中へ入る。
「ぱぱ・・まま・・・」
しかし現実は残酷だった。
「う・・・そ・・・」
ありすがそこで見たもの。
それは自分が父のように慕ってきた長まりさの死体。
そして母のように愛してきたぱちゅりーが半死半生で横たわっている光景だった。
「むきゅ・・・おちびちゃ・・ん・・」
弱々しくこちらを向くぱちゅりー。しかしその顔は紙の様に白い。
もう永くはないだろう事がありすにもわかった。
どうして・・・どうしてこんなことに・・・
「ゆふふふぅううう・・・ざまぁみろぉおお・・・このいながものぉどもめぇええ・・・ゆぐふふっふぅううう・・」
その時入り口で誰かの笑い声がした。 まるで地獄の底から聞こえてくるような笑い声にありすは鳥肌が立つ。
「あり・・す・・・?」
そこにいたのはボロボロになった一匹のありすだった。そのあまりの異様さにありすは息を呑んだ。
身体中傷だらけで枝が何本も突き刺さっており、髪の毛も使い古したモップのごとくグチャグチャ。右目も潰れている。
どう考えても死ぬ寸前の重症なのにその顔は鬼女のような笑みを浮かべており、残った左目だけはらんらんと不気味に輝いている。
「こいつ、にげやがって・・・」
「こら!!あばれるなみょん!!」
2匹のみょん達が傷だらけのありすを押さえつける。このみょん達は群れの警備を担当しているゆっくりだ。
どうやらこのありすが犯人らしい。
同族の犯行にありすは戸惑いを隠せない。
犯ゆんのゲスと言うのは食料目当てに来たでいぶかゲスまりさかと思っていたからだ。
「なにがおざのむすめだぁあああ・・・じぶんだけゆっぐりしやがってぇええええ・・・あでぃすたちばかりいじめやがってぇえええ!!!あでぃすだってすきでれいぱーのごにうまれたわけじゃないのにぃいいい・・・それなのにぃいいいい!!!」
2匹のみょんに押さえつけられながらもありすは叫ぶのをやめない。声を出すたびに、傷口から中身がボトボトと流れ出ているが、まるで痛みなど感じないかのようにゲスありすの敵意はありすに向けられている。
このありす、れいぱーの子として捨てられた赤ありすの生き残りだった。
ろくに食料もない中、今まで仲間の死骸や雑草、木の根を食べ、たまたま見つけた木のうろに住み生き延びていた。
そんな過酷な環境で生き続けたゲスありす。その殺伐とした毎日にゲスありすはすっかり妄想じみた悪意にとりつかれる。
その悪意の矛先が他のゆっくりしている者達へ向けられたのだ。
なんで自分はこんなにゆっくりできないのか。
あいつらはあんなにゆっくりしてるのに・・・
自分と同じくらいの年なのにこいつだけみんなからちやほやされやがって・・・
自分は母親の顔などろくに見た事もないのに家族でゆっくりしやがって・・・
そして偶然そのターゲットになったのが長まりさ一家、特に娘のぱちゅりー(ありす)だったのだ。
運命の皮肉としか言いようがない。元々は同じ捨て子のありすだったはずなのに。
「ゆふふぅふふぅ・・・じねぇ・・・じごぐにおぢろぉおおお・・・」
なおも呪詛の言葉を吐きながら、ゲスありすはみょん達に引きずられるように連れて行かれた。
「ああ・・・ああ・・・」
ありすはあまりのことに言葉も出ない。
先程のゲスありすの口ぶりから言って自分が原因でまりさとぱちゅりーが襲われたとしか思えない。
まさかこんな事になるなんて。
「おちびちゃん・・・こっちにきて・・ごほっ・・」
その時後ろから母ぱちゅりーの声がした。恐る恐るありすは母の元へ行く。
「まま・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
ただ泣きながら謝り続けるありす。他にぱちゅりーにかける言葉が見つからないのだ。
「まま・・・ほんとうはほんとうはわたし・・・」
ありすは全てを懺悔する事に決めた。
もちろん全てを話せばただでは済むまい。
最悪怒り狂った群れのゆっくり達に殺されることもあるだろう。
だがそれでいい。皆を欺き続けたあげく、恩ゆん二人を傷つけた罪は死を持って償うしかない。
むしろあの日、あのまま雨に打たれて死ぬべきだったのだ。自分など。
「いいのよ・・いいのよ・・おちびちゃん・・・」
そんなありすを母ぱちゅりーはそっと2本の髪の毛の束で抱きしめる。
「ありがとう・・おちびちゃん・・あなたがいてくれたおかげでとってもゆっくりできたわ・・・あなたはわたしのほこり・・・そしてきぼうよ・・・ありがとうおちびちゃん・・・うまれてきてくれて・・・ありがとう・・・」
「ゆう・・ううううう・・・うう・・」
涙でありすは言葉が出ない。ぱちゅりーの顔も涙がにじんでどんな顔をしてるのかもわからない。
違う、自分は貴女の愛する娘じゃない。感謝されるようなゆっくりでもない。
貴女をだまし続けたゲスで、汚らわしいいれいぱーの子なのだ。
そう喉元まで出かかった時。
「いままでほんとうにありがとう・・・・わたしのかわいい・・・・ありす。」
「・・・え。」
それだけありすの耳元でささやくと母ぱちゅりーは目を閉じ、そのまま永遠にゆっくりした。
ありすは呆然とした。母ぱちゅりーは全て知っていたのだ。
自分が本当の娘でないことを。お飾りを偽り群れのみんなを騙していたことを。
知っていながら全てを受け止め気づかぬふりをしてくれたのだ。
ありすは母の死に顔を見る。
その顔はとてもゆっくりした微笑みだった。
あの日、初めて自分に笑いかけてくれた時と変わらない笑顔。
ゆっくりできないれいぱーの子である自分に母のぬくもりを教えてくれたあの微笑み。
それまでなんの価値もないと思っていた自分に生きる意味を教えてくれたあの笑顔だ。
「ゆ・・・ゆああああ・・ああああああああああああああ・・・・」
ありすは泣いた。一生分の涙を流したのではないかというくらい泣いた。
誰よりも愛した義理の両親の死に。そして偽者と知りながら愛してくれた母ぱちゅりーの愛の深さに。
そして心の底から恥じた。
安易に死を選び、母の思いを台無しにしようとしていた自分を。
この時ありすは胸に誓う。
あの二人にもらったゆっくりの分だけ、この群れのゆっくり達をゆっくりさせることを。
その数日後ありすは群れの長に就任する。
死んでしまった先代長の残した一粒種であり、「がっこう」でも一番の成績だったありすが長になる事に反対するものなどいなかった。
「これでわたしのはなしはおわりよ・・・ あとはあなたもしってるとおり・・・このむれのおさとして・・・きょうまでがんばってきたつもり・・・みんなにうそをついてだけど・・」
ありすのその波乱万丈なゆん生を語り終えた。
口で語るにはごく短いゆん生だが実際には様々な苦労、悩み等もあっただろう。
顔に刻まれた無数のしわがそれを雄弁に物語っている。
「ずっと・・・つらかった・・・いつかばれるんじゃないかって・・・いつかわたしもあのおぞましいれいぱーになるんじゃないかって・・・・・そして・・・むれのみんなをだましてるんだって・・・」
ありすのしわだらけの頬に一筋の涙が流れる。
その涙をまりさはそっとおさげでぬぐってやった。
「なかなくていいんだぜ・・ありす。ぱちゅりーだろうがありすだろうがかんけいないのぜ・・・あんたはりっぱにおさをやりとげた・・・ただそれだけなのぜ。」
「ありがとう・・・まりさ・・・」
群れを数年間に渡り騙し続けてきたありす。この話が本当なら先代の長夫婦もそれを知りながら隠していたことになる。
しかしまりさはありすや先代に対し一片の怒りもわいてこなかった
まりさは知っている。ありすがどれだけこの群れを思い粉骨砕身してきたかを。
どれだけ自分のゆっくりを群れのために犠牲にしてきたのかも。
そんなありすを糾弾する権利などまりさにはないのだ。そうまりさには。
「それにしてもわたしは・・・わたしのゆんせいはありすだったのかしら・・・ぱちゅりーだったのかしら・・・」
徐々にありすの声から生気が失われていく。おそらくもう寿命が近いのだろう。
「とかいは・・・なんてことばきいてもぴんとこないし・・・おうちのこーでぃねーと・・にもきょうみないわ・・・むしろおべんきょうしていろんなことをしるほうがゆっくりできる・・おなまえよばれるときだって・・・ありすよりぱちゅりーのほうがしっくりくるわ・・・それなのにじぶんはありすっていえるのかしら・・?わたしは・・・わたしはだれなのかしら・・・?」
自嘲気味に笑うありすにまりさは何も言えない。
今、自分の目の前にいるゆっくりはぱちゅりーでも、そしてありすでもない。
その数奇な運命に翻弄され、ついには自分の名前まで忘れてしまった哀れなゆっくりなのだ。
「ねえまりさ・・・わるいんだけどひとつだけ・・ひとつだけあなたにおねがいがあるの・・・」
「ゆ!?なんなのぜ?あまあまさんがほしいのぜ?それともぴかぴかのいしさんなのぜ?まりさにできることならなんでもするからえんりょなくいってほしいんだぜ!!」
まりさは出来る限りのことをしてやりたかった。この哀れな名前を忘れたゆっくりに。自分の同族に。
「ありがたいもうしでだけど・・あまあまさんもぴかぴかのいしさんもいらないわ・・・」
しかしありすは小さくかぶりをふる。もうすぐあの世に旅立つ自分には不要だということだろう。
「・・・・?じゃあなんなんだぜ、ありすのおねがいって?」
「ただひとつ・・・ひとつだけあなたにおしえてほしいの・・・」
しばらくの逡巡の後、ありすはおもむろに口を開いた。
「まりさ・・・あなたはだれなの?」
数時間後、巣の中で永遠にゆっくりしている長ぱちゅりーが群れのちぇんによって発見された。
死因は中枢餡の賞味期限切れ。人間で言うところの老衰だ。
その殆どが天寿を全うできないと言われる野生のゆっくりのなかでは幸福な死に方をしたといえるだろう。
長ぱちゅりーの死体は帽子を被せたまま埋葬されたため、ありすとばれることもなく、葬儀はつつがなく終わった。
しかし群れのゆっくりにはひとつの疑問が残る。
「あのまりさはどこへいったの?」
最後に長と話していたはずのまりさの姿が見えないのだ。まりさの巣はもちろん群れ中探し回ったがどこにもいない。
ちぇんによると自分が長の様子を見に行った時には既に居なかったらしい。
様々な憶測、うわさが流れ、まりさを捜すものもいたが、結局その行方は分からずじまいだった。
一方その頃、群れに程近い山沿いの国道ではちょっとした騒ぎが起こっていた。
「すげー・・・はじめて見たよ、俺・・・」
「ちょっと・・誰かカメラ持ってない!!?カメラ!?」
突如空中に現れたそれに通行人、ドライバー、全てが目が離せない。
誰が呼んだのかTV局の人間まで来て、夕暮れの田舎町は騒然となった。
なぜならそれは珍しい。国内でも確認されている個体はゆーぶつ園や研究所で飼育されている十数頭のみ。
野生のそれを見ることができるのは宝くじに当たる並みの幸運が必要だと言われている。
誰もが興奮しカメラや携帯をかまえる中、双眼鏡でそれを見ていた一人の少年がつぶやいた。
「なんであのぬえ・・泣いてるんだろう・・」
ぬえは飛んでいく。夕暮れの山の中、紅く染まったうんざんのような入道雲を背に。
ぬえには分からない。
自分の頬をつたう物が何か。自分が今抱いている感情がなんなのか。
ぬえの一生は根無し草だ。
適当なゆっくりに擬態し、旅のゆっくりを装って群れに入る。
そしてその群れに飽きれば別の群れを探す。それの繰り返しである。
群れのゆっくり達に愛着も特別な感情も持ち合わせていない。そしてそれを寂しいともゆっくりできないとも思ったことはない。
あのありすへもそうだった・・・そうだったはずなのに。
ぬえは知らない。
この涙が同族を失った悲しみから来ていることに。
同じ自分の名前を忘れてしまったゆっくりの死を悼む物であることを。
山では今まで我が物顔で鳴いていた蝉時雨が徐々に陰りをみせるようになり、夕暮れに吹く風もどこか秋めいたものを感じさせる。
夏が終わろうとしていた。
後書き
かなり昔書いた 「誰も救われない話」の続編。久しぶりのある●●の一生シリーズでもあります。書いた当時「続編が読みたい」というコメントがあったので今頃書いてみました。「もう内容忘れてるよ」って人が大半でしょうが・・・
かなり昔書いた 「誰も救われない話」の続編。久しぶりのある●●の一生シリーズでもあります。書いた当時「続編が読みたい」というコメントがあったので今頃書いてみました。「もう内容忘れてるよ」って人が大半でしょうが・・・
ご意見、ご感想、ご要望は感想用掲示板(長月用スレ)でおねがいします。URLは下にある通りです。
ふたば系ゆっくりSS感想用掲示板(長月用スレ)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1274852907/
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1274852907/
今まで書いた作品はこちらに
http://www26.atwiki.jp/ankoss/pages/393.html
http://www26.atwiki.jp/ankoss/pages/393.html
面白かった、ゆっくりできた、と言う方は下の「ゆっくり!」ボタンを押していただければ幸いです。
挿絵: