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anko3872 しあわせ家族とお姉さん5 終
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『しあわせ家族とお姉さん5 終』 28KB
虐待 実験 越冬 家族崩壊 共食い 野良ゆ 現代 虐待人間 独自設定 これで終わりになります。読んで頂いた方はありがとうございます。
虐待 実験 越冬 家族崩壊 共食い 野良ゆ 現代 虐待人間 独自設定 これで終わりになります。読んで頂いた方はありがとうございます。
「「「おとうさん、ゆっくりおかえりさない」」」
「ゆっくりただいま。きょうは……はっぱさんがとれたよ」
「ゆっくりただいま。きょうは……はっぱさんがとれたよ」
路地の間に、その家族はいた。
冬も間近に迫り、越冬に適した場所は他のゆっくりが使っていたし、
今さらそこに新たな家族を引き入れる集落もありはしない。
今さらそこに新たな家族を引き入れる集落もありはしない。
父まりさが、なんとか一日を凌げる食糧をかき集めてくるのが精いっぱいで、それも限界が来ていた。
元々この季節は採れる物が少なく、越冬のためにゆっくりが我先にと持っていってしまう。
父まりさの狩りの技能は、膨大な獲物の中から良いものを効率的に選別できることであって、
わずかな獲物を一番最初に見つけることには、どれだけ走りまわっても運に左右される。
父まりさの狩りの技能は、膨大な獲物の中から良いものを効率的に選別できることであって、
わずかな獲物を一番最初に見つけることには、どれだけ走りまわっても運に左右される。
「むーしゃむーしゃ……しあわせー」
「あまあまさん、おいしいね……」
「れいむ、とってもゆっくりできるよ……」
「あまあまさん、おいしいね……」
「れいむ、とってもゆっくりできるよ……」
言葉では父まりさや母れいむを心配させまいと、
肯定的な言葉ばかりを意識して選んでいるが、れいむ達の表情は暗い。
肯定的な言葉ばかりを意識して選んでいるが、れいむ達の表情は暗い。
食糧の質と量が落ちていることも原因ではあるが、
何よりまりさと妹れいむを失ったこと。
それに加えて慣れ親しんだゆっくりプレイスから追われてしまったことが大きい。
何よりまりさと妹れいむを失ったこと。
それに加えて慣れ親しんだゆっくりプレイスから追われてしまったことが大きい。
ゆっくりという種は、その習性としてゆっくりしていることを好む。
またそれを生きる目的として活動していると思われているが、少し違う。
またそれを生きる目的として活動していると思われているが、少し違う。
ゆっくりにとって生きるという事は『ゆっくりした記憶』を作ることにある。
例えば善良なゆっくりがゆっくりするために行動し、
家族や見知った友ゆや人間をゆっくりさせようと行動しているのは、
例えば善良なゆっくりがゆっくりするために行動し、
家族や見知った友ゆや人間をゆっくりさせようと行動しているのは、
きっといい『記憶』がそのゆっくりの中にあるからに他ならない。
それがゆっくりの生きる力になり、いい『記憶』を次世代に託すことで、
ゆん生を全うしようとするのがゆっくりである。
それがゆっくりの生きる力になり、いい『記憶』を次世代に託すことで、
ゆん生を全うしようとするのがゆっくりである。
逆に、ゆっくりできる環境に無ければ、日に日に衰弱していく。
ゆっくりできる『思い出』を生産できなければ、過去の『記憶』に想いを馳せることしかできないのだ。
ゆっくりできる『思い出』を生産できなければ、過去の『記憶』に想いを馳せることしかできないのだ。
「みんなでかりにでかけたの……ゆっくりしてたね」
「ゆふふっ……れいむ、おねーちゃんと『はなわさん』つくってたんだ……」
「まりさのとってきたあまあまのきのみさん……またむーしゃむーしゃしたいよ……」
「ゆふふっ……れいむ、おねーちゃんと『はなわさん』つくってたんだ……」
「まりさのとってきたあまあまのきのみさん……またむーしゃむーしゃしたいよ……」
れいむ達の目は今を見ていない。
このまま冬が訪れれば、自分達が生きては行けないことを悟っている。
遠くない明日に終わりが待っているのであれば、今をゆっくりする必要がどこにあるだろうか。
そう思うのも無理はない。
このまま冬が訪れれば、自分達が生きては行けないことを悟っている。
遠くない明日に終わりが待っているのであれば、今をゆっくりする必要がどこにあるだろうか。
そう思うのも無理はない。
母れいむと父まりさに至っても、一日一日を凌ぐだけで精いっぱいだった。
本来ならば、ここに妹れいむとまりさがいて、
越冬の最中に幾度となく交わされる会話をしていたはずである。
本来ならば、ここに妹れいむとまりさがいて、
越冬の最中に幾度となく交わされる会話をしていたはずである。
『まだ『えっとう』ははじまったばかりなのぜ! さきがおもいやられるのぜ……』
『はるさんになったら、れいむおはなさんむーしゃむーしゃするよ! たくさんでいいよ!』
『はるさんになったら、れいむおはなさんむーしゃむーしゃするよ! たくさんでいいよ!』
そんな声が、今にも家族達には聞こえてくるようだ。
さらに遡り、何事もなかったなら、
面倒くさそうに妹を注意するれいむと、
やんわりと子ども達をいさめてまとめる姉れいむも、
越冬中の賑やかしになっていただろう。
さらに遡り、何事もなかったなら、
面倒くさそうに妹を注意するれいむと、
やんわりと子ども達をいさめてまとめる姉れいむも、
越冬中の賑やかしになっていただろう。
すでに父まりさを含めて、この状況にまいってしまっていた。
今日を生きるために、すでに今ゆっくりできていない。
今日を生きるために、すでに今ゆっくりできていない。
「まりさ……」
「れいむ。だいじょうぶだよ」
「れいむ。だいじょうぶだよ」
父まりさは軽快に笑って、れいむを励ます。
以前の通り、落ち着いた声。しかし、その表情は目に見えてやつれている。
一日のほとんどを狩りに使い、体を酷使しているので、
いつもより短くなった睡眠時間中も充分に眠れていない。
以前の通り、落ち着いた声。しかし、その表情は目に見えてやつれている。
一日のほとんどを狩りに使い、体を酷使しているので、
いつもより短くなった睡眠時間中も充分に眠れていない。
「ゆっくりするよ! ……みんないっしょ! だよ」
比べるまでもなく、一番ゆっくりできていないのは父まりさである。
しかし、疲れている素振りは見せず、母れいむにも子ども達にも優しく言葉をかけ続けている。
しかし、疲れている素振りは見せず、母れいむにも子ども達にも優しく言葉をかけ続けている。
「まりさ。……ゆっくりありがとう」
「どういたしまして。 れいむ。……ゆぅ?」
「どういたしまして。 れいむ。……ゆぅ?」
母れいむがいつまでも下を向いているで、父まりさが首を傾げる。
「……れいむ?」
「まりさ。……ゆっくりぷれいすにもどろう!」
「まりさ。……ゆっくりぷれいすにもどろう!」
れいむが懸命に訴えた。
「もうこわいにんげんさんはいないよ! あそこならまたやりなおせるよ!
あのゆっくりぷれいすで、もういちどゆっくりできるようにしよう!」
「れいむ、あそこは……」
「もしかしたら、おねえさんがいるかもしれないよ!
あまあまだって……えっとうだって! れいむたちのためにかんがえてくれるよ!」
あのゆっくりぷれいすで、もういちどゆっくりできるようにしよう!」
「れいむ、あそこは……」
「もしかしたら、おねえさんがいるかもしれないよ!
あまあまだって……えっとうだって! れいむたちのためにかんがえてくれるよ!」
お姉さんと聞いて、れいむ達の目がわずかに輝いた。
「ゆあ……? おねえさん!?」
「……ゆっくりぷれいすなら、みんなでゆっくりできるね!」
「れいむは、おねえさんとすーりすーりしたいよ……!」
「……ゆっくりぷれいすなら、みんなでゆっくりできるね!」
「れいむは、おねえさんとすーりすーりしたいよ……!」
れいむ達は、しっかりした声で母の提案に賛同した。
ここしばらく見ることのできなかったゆっくり顔で、それぞれ思いを馳せている。
ここしばらく見ることのできなかったゆっくり顔で、それぞれ思いを馳せている。
「……みんな、まりさについてきてね。ゆっくりかえるよ!」
まりさは、ゆっくりにしては長く間をあけて思案していたが、
やがて家族の先頭に立って号令をかけるのだった。
やがて家族の先頭に立って号令をかけるのだった。
* *
そこには何もなかった。
夕暮れ時も迫った頃、ようやくゆっくりプレイスに辿り着ついたまりさ達の視界には、
空き缶や破れたビニール傘、雨に濡れて乾いた漫画や雑誌が、
人間に捨てられたままになっている風景が映っていた。
空き缶や破れたビニール傘、雨に濡れて乾いた漫画や雑誌が、
人間に捨てられたままになっている風景が映っていた。
正確に言うなら、ゆっくりプレイスに
『家族の暮らしていた思い出』は何も無くなっていた。
『家族の暮らしていた思い出』は何も無くなっていた。
しーしーを流すために、雨水を溜めていた空き缶も、
ダンボール箱が濡れないように広がった傘も、
越冬のためにたくさん貯めておいた食料も、
お姉さんが袋に入れて置いてくれたあまあまも。
ダンボール箱が濡れないように広がった傘も、
越冬のためにたくさん貯めておいた食料も、
お姉さんが袋に入れて置いてくれたあまあまも。
およそゆっくりが生活をするためにまとめていたものは、もうありはしなかった。
母れいむを含めたれいむ達は口を小さく開けたまま、
ゆっくりプレイスだったものをぼんやりと眺め続ける。
ゆっくりプレイスだったものをぼんやりと眺め続ける。
「ゆふっ……ゆふふふっ……!」
「ま、まりさ……?」
「れいむ。……おぼえてる? はじめてゆっくりぷれいすにきたときのこと。
あきかんさんも、かささんも……あのときとおんなじだね……」
「ま、まりさ……?」
「れいむ。……おぼえてる? はじめてゆっくりぷれいすにきたときのこと。
あきかんさんも、かささんも……あのときとおんなじだね……」
まりさは、まだ赤ゆっくりだった姉れいむを帽子に入れて、
この場所をようやく探し当てた時のことを思い出していた。
この場所をようやく探し当てた時のことを思い出していた。
元のゆっくりプレイスを人間に追われ、
姉妹のれいむやまりさ、仲間のありすやぱちゅりーを殺され、
逃げるうちに最愛の赤ゆっくり達を失い、
絶望の淵から、このゆっくりプレイスを見つけたのだ。
姉妹のれいむやまりさ、仲間のありすやぱちゅりーを殺され、
逃げるうちに最愛の赤ゆっくり達を失い、
絶望の淵から、このゆっくりプレイスを見つけたのだ。
幼い姉れいむの世話をしながら狩りに行き、
人間の捨てて行ったものを少しずつ片付けて整えていったあの頃。
人間の捨てて行ったものを少しずつ片付けて整えていったあの頃。
そうして家族を築いていき、幸せを噛みしめて暮らしてきたゆっくりプレイス。
今はその名残もない。
今はその名残もない。
「あのときと、おんなじだよ……」
「ゆうっ……まりさ! これからまたみんなでゆっくりできるよ!
だいじょうぶだよ! みんないっしょ! ……でしょ!?」
「ゆうっ……まりさ! これからまたみんなでゆっくりできるよ!
だいじょうぶだよ! みんないっしょ! ……でしょ!?」
まりさはれいむの方に振り向けず、うつむいたまま小さく笑った。
人間にみつかないように草むらや路地に隠れ、
大きなすぃーに跳ね飛ばされないよう注意を払い、
わき道から野良猫が出てくればぷくぅーをして家族を守り、
堅くなさそうな葉っぱや人間の食べ残しを見つけては与える。
大きなすぃーに跳ね飛ばされないよう注意を払い、
わき道から野良猫が出てくればぷくぅーをして家族を守り、
堅くなさそうな葉っぱや人間の食べ残しを見つけては与える。
ここまで来る道を、疲労困憊の体で移動してきたまりさに、
れいむへ微笑みかけるに足る笑顔を作ることは出来なかったのだ。
れいむへ微笑みかけるに足る笑顔を作ることは出来なかったのだ。
「おうた……ききたいな」
まりさが消え入りそうな声で、ぽつりと一言もらした。
「おうたをうたってほしいよ。ゆっくりおねがいできるかな……?」
れいむ達の返事を待たず、金網フェンスの方へ這うように跳ねる。
そこは、狩りから帰って来た時にお昼寝をするお決まりの場所だった。
そこは、狩りから帰って来た時にお昼寝をするお決まりの場所だった。
れいむ達はうつろだった顔を急に輝かせると、同じようにいつも歌っていた場所で列を組んだ。
互いに小さく声を合わせてから、深呼吸をするやり方も以前のままだ。
互いに小さく声を合わせてから、深呼吸をするやり方も以前のままだ。
「「「……ゆっゆゆ♪ ゆっゆゆ♪ ゆゆっゆ~ん♪」」」
狩りから戻ってきたお父さんを労おうと、れいむ達がやろうと言い出したのが始まりで、
その声は、姉れいむ達がいなくなって3匹だけになってしまっても、
少しも損なわれてはいなかった。
その声は、姉れいむ達がいなくなって3匹だけになってしまっても、
少しも損なわれてはいなかった。
父まりさもれいむ達も、ゆっくりできなかった時とは一変して穏やかな表情になっている。
幸せだった過去をなぞっている行為に過ぎないとしても、
確かに今、家族は餡子の奥底からゆっくりできていた。
幸せだった過去をなぞっている行為に過ぎないとしても、
確かに今、家族は餡子の奥底からゆっくりできていた。
「「「ゆ~♪ ゆゆっゆっゆ~♪ ゆ~ゆゆ~……」」」
父まりさは、歌が終わるころには目を閉じていた。
体が透けて見えるほど薄くなった皮。それに包まれた餡子は小さくしぼんでしまっている。
帽子が無ければ、れいむ達よりも一回り小さく見えただろう。
体が透けて見えるほど薄くなった皮。それに包まれた餡子は小さくしぼんでしまっている。
帽子が無ければ、れいむ達よりも一回り小さく見えただろう。
「ゆふふっ……おとうさん、すーやすーやしちゃったよ……」
「れいむたちのおうただもん。とうっぜん、でしょ」
「……れいむもすーやすーやしたくなってきたよ……」
「れいむたちのおうただもん。とうっぜん、でしょ」
「……れいむもすーやすーやしたくなってきたよ……」
れいむ達は、いつかの穏やかな午後のように父まりさのそばに行き、
軽くすーりすーりをすると、目を閉じた。
軽くすーりすーりをすると、目を閉じた。
寝息は、耳を澄ましても聞こえない。
眼をよく凝らさなければ、呼吸をしているのかさえ判別できない。
眼をよく凝らさなければ、呼吸をしているのかさえ判別できない。
「よるさんがくるまでに、れいむはふわっふわのべっどさんをつくるよ……!
すーやすーやしてまっててね……ゆっくりおやすみなさい!」
すーやすーやしてまっててね……ゆっくりおやすみなさい!」
母れいむは、ゆっくりプレイスの草を口で引きちぎり始めた。
手入れのない伸び放題だった草が四方にあるので、集めて運ぶこと自体は難しくない。
手入れのない伸び放題だった草が四方にあるので、集めて運ぶこと自体は難しくない。
「ゆんせっ……ゆんせっ……!」
しかし、れいむも例外なく疲弊していた。
充分な食事も取れず、移動して来たばかりの体にはひどく堪える。
充分な食事も取れず、移動して来たばかりの体にはひどく堪える。
「まりさはゆっくりできなくなるまで、れいむたちのためにかりをしてくれたよ……
ゆっくりぷれいすまで、にんげんさんやねこさんからまもってくれたよ……!」
ゆっくりぷれいすまで、にんげんさんやねこさんからまもってくれたよ……!」
まりさ達は夢の中でまどろんでいるのか、微笑んでいるように思えた。
夢から覚めれば、今ある境遇は変わらないし不幸がなくならないのと同様に、
どんな境遇にあっても、幸せだった記憶は消えない。
夢から覚めれば、今ある境遇は変わらないし不幸がなくならないのと同様に、
どんな境遇にあっても、幸せだった記憶は消えない。
れいむもまりさ達に習って、楽しかった記憶に想いを馳せる。
餡子中に、その記憶をひとしきり巡らせると、大きく息をはいた。
餡子中に、その記憶をひとしきり巡らせると、大きく息をはいた。
「れいむは……れいむは、みんなといっしょにゆっくりするよ!
それから、たくさん……たくっさん! しあわせーって、まりさにいうんだ……!」
それから、たくさん……たくっさん! しあわせーって、まりさにいうんだ……!」
れいむはまた作業に戻ろうとして、空が急に薄暗くなったので見上げた。
くわえた草の束を取り落とし、口は開かれたまま動かない。
夕暮れの太陽はまだ沈まず、紅い光がれいむの周囲以外を染めている。
れいむの大分上の方から声がかかった。
くわえた草の束を取り落とし、口は開かれたまま動かない。
夕暮れの太陽はまだ沈まず、紅い光がれいむの周囲以外を染めている。
れいむの大分上の方から声がかかった。
「……れいむ?」
そこには、れいむと同じような表情で、
同じように鞄を取り落したお姉さんがいた。
同じように鞄を取り落したお姉さんがいた。
「おねっ……お゙ね゙え゙ざん!」
「れいむ! ……辛かったでしょう……」
「ゆっ…ゆぐっ……ゆ゙ゔゔゔぅ゙ぅ゙ぅ゙!」
「れいむ! ……辛かったでしょう……」
「ゆっ…ゆぐっ……ゆ゙ゔゔゔぅ゙ぅ゙ぅ゙!」
お姉さんがれいむを抱きしめると、思わず砂糖水が嗚咽とともに溢れた。
「……まりさ達も、こんなに痩せて……」
「お゙ね゙え゙ざん! れ゙い゙む゙だぢ、も゙ゔずっ゙どゆ゙っぐり゙じでな゙い゙んでず!
ごの゙ま゙ま゙だど『え゙っ゙どゔ』も゙でぎま゙ぜん! ゆ゙っぐり゙だずげでぐだざい゙ぃ゙!」
「んんー……落ち着いて。これでも食べてて?」
「お゙ね゙え゙ざん! れ゙い゙む゙だぢ、も゙ゔずっ゙どゆ゙っぐり゙じでな゙い゙んでず!
ごの゙ま゙ま゙だど『え゙っ゙どゔ』も゙でぎま゙ぜん! ゆ゙っぐり゙だずげでぐだざい゙ぃ゙!」
「んんー……落ち着いて。これでも食べてて?」
お姉さんはすがり付いて離れないれいむの口に、
ポケットから出した金平糖を突っ込んだ。
ポケットから出した金平糖を突っ込んだ。
「ゆ、ゆっほぉぉぉぉ! しあわちぇー……、ゆぅ?」
駄菓子の金平糖はビー玉より二回りも小さく、あっという間に口の中で融けてしまった。
れいむは物足りなさ気に、お姉さんに声をかけようとしたが、
お姉さんは眠ったままの弱ったまりさ達を眺めて、眉間にしわを寄せている。
れいむは物足りなさ気に、お姉さんに声をかけようとしたが、
お姉さんは眠ったままの弱ったまりさ達を眺めて、眉間にしわを寄せている。
「れいむ。よく聞いてね」
駄菓子の金平糖を四つ手のひらに出して、れいむと向きあう。
「今はこれだけしかないから、いろいろ用意して来るよ。少しだけ待ってて。
れいむは、この金平糖をまりさたちに口の中に入れてあげてね。
まりさ達には悪いけど、私が帰ってくるまでの、一時しのぎってことで」
れいむは、この金平糖をまりさたちに口の中に入れてあげてね。
まりさ達には悪いけど、私が帰ってくるまでの、一時しのぎってことで」
お姉さんはしゃがみ込み、真剣な面持ちでれいむと視線を合わせた。
「……お願いできる?」
「ゆっくりりかいしたよ!」
「ゆっくりりかいしたよ!」
金平糖を近くにあった葉っぱに乗せ、お姉さんはゆっくりプレイスを後にする。
カバンも取り落したままになっているが、すぐに戻ってくるという意思がれいむには感じられた。
カバンも取り落したままになっているが、すぐに戻ってくるという意思がれいむには感じられた。
「……これで」
__これでみんな、ゆっくりできる。
れいむは安心していた。
お姉さんが来たからには、もう大丈夫だ。
越冬や、ゆっくりプレイスのことは後で考えるとして、
今はまりさ達に金平糖をあげないといけない。
お姉さんが来たからには、もう大丈夫だ。
越冬や、ゆっくりプレイスのことは後で考えるとして、
今はまりさ達に金平糖をあげないといけない。
安心すると、れいむは急にお腹が空いてきた。
ずっとここまで移動してきて、休憩もせずにベッドを作っていたのだ。
ずっとここまで移動してきて、休憩もせずにベッドを作っていたのだ。
まりさとれいむ達は、幸せそうに眠っている。
以前のゆっくりプレイスでの記憶を思い返しているのだろう。
もうすぐ、その夢と現実が繋がることを知る由もない。
以前のゆっくりプレイスでの記憶を思い返しているのだろう。
もうすぐ、その夢と現実が繋がることを知る由もない。
「……まりさたちに、あまあまさんをゆっくりはこぶよ!」
れいむは金平糖を1つ選んで、口にくわえた。
そろーりそろーりと、みんなを起こさない様に跳ねた。
そろーりそろーりと、みんなを起こさない様に跳ねた。
まずはまりさに、と小さく開いているまりさの口に、
金平糖をちゅっちゅの要領で渡そうとする。
金平糖をちゅっちゅの要領で渡そうとする。
その時、金平糖がれいむの舌に触れ、再び痺れるような甘さが口中を走った。
「ゆうぅっ!?」
金平糖をまりさの口の中に押し込もうとすればするほど、舌先で砂糖の甘さが広がり、
れいむの思考はあまあまで包まれてしまう。
れいむの思考はあまあまで包まれてしまう。
思わず金平糖を舌ですくって、糖分の混じった唾液とともに飲み込んでしまった。
「ゆあああああっ!? し、しあわせえぇぇぇ!?」
最初は吐き出そうとえずいていたれいむだったが、体内に入ってしまっては後の祭り。
それよりも、先ほどお姉さんからもらった時以上の幸福な気持ちに酔いしれた。
もう少し金平糖が大きいものであったなら、
れいむは成ゆんにも関わらず、うれしーしーをしていたかもしれない。
それよりも、先ほどお姉さんからもらった時以上の幸福な気持ちに酔いしれた。
もう少し金平糖が大きいものであったなら、
れいむは成ゆんにも関わらず、うれしーしーをしていたかもしれない。
「ど、どぼじで……? まりさのあまあま、むーしゃむーしゃしちゃったよ……
でも、おかしいよ? さっきのあまあまさんとおなじあじなのに……」
でも、おかしいよ? さっきのあまあまさんとおなじあじなのに……」
れいむは困惑した。
衰弱している家族に対して、裏切ってしまったという後ろめたい感覚と
自分だけがあまあまを食べ、独占していることを誰にも知られていない優越感が、
れいむの中枢餡を巡っていた。
衰弱している家族に対して、裏切ってしまったという後ろめたい感覚と
自分だけがあまあまを食べ、独占していることを誰にも知られていない優越感が、
れいむの中枢餡を巡っていた。
それは、今までの幸せな家庭では味わったことのない種類の心地よさだった。
ごきゅり、と喉を鳴らす。
ごきゅり、と喉を鳴らす。
残った3つの金平糖。
言うまでもなく弱って眠っているれいむ達のために渡されたものである。
言うまでもなく弱って眠っているれいむ達のために渡されたものである。
「……はこばなくちゃ。あまあまを、ゆっくり……」
れいむは金平糖を3つ全部まとめて、口にくわえた。
さっきの行動を反省する気持ちはある。空腹だったとはいえ、あれはまりさのものだった。
家族に対して申し訳ないとれいむは思っている。
その一方で、別の考えが餡子の中で黒くもたげていた。
家族に対して申し訳ないとれいむは思っている。
その一方で、別の考えが餡子の中で黒くもたげていた。
__れいむは、かぞくためにふわっふわのべっどさんをつくってたよ。
__すーやすーやしているまりさたちより、あまあまさんをむーしゃむーしてとうっぜんだよ。
__すーやすーやしているまりさたちより、あまあまさんをむーしゃむーしてとうっぜんだよ。
それで、全てはゆっくりと収まる。まりさ達は、どちらにしてもあまあまを食べるのだ。
あまあまを食べるのが、
『すーやすーやしている時』か『起きておねーさんが戻って来る時』かの違いだけだ。
『すーやすーやしている時』か『起きておねーさんが戻って来る時』かの違いだけだ。
れいむがベッドを作り、お姉さんがあまあまを持ってきて、
まりさが家族を守り、れいむ達がおうたを歌う。
まりさが家族を守り、れいむ達がおうたを歌う。
変わりはない。問題なく全てゆっくりと収まっている。
「ゆっ……ゆっ……ゆはっ……!」
家族の前で金平糖を噛みしめた。その味は、やはり中枢餡を焼くように甘美で、
思わず開いた口から、うれしーしーの代わりに砂糖水が溢れた。
思わず開いた口から、うれしーしーの代わりに砂糖水が溢れた。
「むーしゃむーしゃ……しあわせえぇぇぇぇ!」
抑えようとしていた声も構わず、れいむは叫ぶ。
我慢の続いていた生活とは比べ物にならない、ゆっくりしている実感があった。
我慢の続いていた生活とは比べ物にならない、ゆっくりしている実感があった。
「まりさ……ゆっくりまってね! もうすぐゆっくりできるよ……
しあわせー! ってみんなでいえるようになるよ……!」
しあわせー! ってみんなでいえるようになるよ……!」
れいむはまりさに寄り添った。
あとわずかな時間。お姉さんが帰ってくるまで、この多幸感に浸っていたかった。
あとわずかな時間。お姉さんが帰ってくるまで、この多幸感に浸っていたかった。
しかし、たった今うまれたばかりの願いは叶わない。
まりさのうめき声で現実に引き戻され、れいむの夢は断たれることになる。
まりさのうめき声で現実に引き戻され、れいむの夢は断たれることになる。
「ゆぅっ!? ゆ゙っ……ゆ゙っ!?」
「ま、まりさ?」
「ま、まりさ?」
穏やかに眠っていた父まりさは、うっすらと苦しみの表情を浮かべている。
まりさ達には、お姉さんを待つわずかな時間も残されていなかったのだ。
まりさ達には、お姉さんを待つわずかな時間も残されていなかったのだ。
「まりさ……どうしたのっ!?」
「ゆ゙っ……れ゙い゙む゙……」
「ゆ゙っ……れ゙い゙む゙……」
まりさは身じろぎもできず、眼だけを動かしてれいむを見る。
体内の餡子も乾ききり、皮もボロボロになっても、まりさの瞳だけは以前のまま変わらない。
体内の餡子も乾ききり、皮もボロボロになっても、まりさの瞳だけは以前のまま変わらない。
「……れ゙い゙……む゙」
「まりさ! おねえさんがきてくれたよ! あまあまさんをたくっさん!
もってきてくれるって! だから……!」
「まりさ! おねえさんがきてくれたよ! あまあまさんをたくっさん!
もってきてくれるって! だから……!」
れいむの言葉の途中から、まりさは笑っていた。苦悶の表情を見せないよう笑顔を作っている。
それがどういうことか、れいむにはすぐに伝わった。
それがどういうことか、れいむにはすぐに伝わった。
「びすけっとさんも、あめさんも……
こなぺろも、むーしゃむーしゃできるよ……! だから……!」
こなぺろも、むーしゃむーしゃできるよ……! だから……!」
こなぺろと聞いて、今度はれいむ達が笑う。
「れいむ……おねえさんとゆっくりするよ……」
「ぺーろぺーろ……しあわせー……」
「とってもゆっくりだねぇ……ゆっくり……」
「ぺーろぺーろ……しあわせー……」
「とってもゆっくりだねぇ……ゆっくり……」
みるみる浅黒く変色していく家族。
それに比例してまりさ達から暖かさや、嗅ぎ慣れた匂いが消えていく。
それに比例してまりさ達から暖かさや、嗅ぎ慣れた匂いが消えていく。
「だから……! もうずごじ……ゆ゙っぐりじでまっでね゙……!
ゆっぐりじでいっで! ……ゆっぐり……ばりざぁ……」
「……ずーっとずっと、ゆっくりできたよ」
ゆっぐりじでいっで! ……ゆっぐり……ばりざぁ……」
「……ずーっとずっと、ゆっくりできたよ」
それだけ言って、まりさは満足そうに目を閉じた。
「お゙め゙め゙ざん、ゆ゙っぐり゙ひら゙い゙でね゙! ……づぶっぢゃだめ゙え゙え゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙!
ごれ゙がら゙も゙っ! み゙んな゙い゙っじょでじょ゙お゙お゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙!?」
ごれ゙がら゙も゙っ! み゙んな゙い゙っじょでじょ゙お゙お゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙!?」
まりさは、その泣き笑いの表情でいるれいむが見えているかのように、
小さく頷いた。
小さく頷いた。
「れいむと……もっど……ゆ゙っ、……ぐ…………」
それきり、まりさは何も言わなかった。
れいむが次の言葉をどれだけ待っても、静寂のみがまりさ達を包んでいる。
れいむが次の言葉をどれだけ待っても、静寂のみがまりさ達を包んでいる。
「ゆっ……まりさ……?」
れいむはまりさにすーりすーりをした。
いつだって返ってきた温かな反応はなく、まりさとはまるで違う固い感触に、
れいむの皮は震えだす。
いつだって返ってきた温かな反応はなく、まりさとはまるで違う固い感触に、
れいむの皮は震えだす。
「……ゆ゙んや゙あぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙! ばりざぁ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙!」
恐らくまりさは、幸せだったことを伝えたかったのだ。そこに偽りはないだろう。
叶うなら、幸せを終わらせたくない、生きてゆっくりしたいという執着もあった。
叶うなら、幸せを終わらせたくない、生きてゆっくりしたいという執着もあった。
それを、れいむは奪ってしまったのだ。
「どぼじでっ……! どぼじでぇぇぇぇぇっ!
ゆっ、ゆげっ……ゆげええぇぇぇ……!」
ゆっ、ゆげっ……ゆげええぇぇぇ……!」
すすり泣きながら、れいむは餡子を吐き出した。
吐いても吐いても、皮の中から気持ち悪さがこみ上げてくる。
吐いても吐いても、皮の中から気持ち悪さがこみ上げてくる。
なぜこんなことをしてしまったのだろう。
まりさ達は助かったはずなのに。
まりさ達は助かったはずなのに。
口からはもう砂糖水しか出ない。
多少の糖分で回復したとはいえ、れいむも衰弱していた。
その顔はしぼみ、涙とよだれでひどく歪んでしまっている。
多少の糖分で回復したとはいえ、れいむも衰弱していた。
その顔はしぼみ、涙とよだれでひどく歪んでしまっている。
咳と痙攣を繰り返しても、嫌悪感は無くならない。
「ゆ゙っ゙ゆ゙っ゙ゆ゙っ゙……」
「……れいむ」
「……れいむ」
はっきりと響いたのは、お姉さんの声だった。
眼の前に立って、顔をしかめている。
眼の前に立って、顔をしかめている。
「おね゙え゙ざ゙ん゙ん゙! ばり゙ざがぁ゙……れ゙い゙む゙の゙がぞぐがあ゙ぁ゙ぁ゙……!」
「ええ……かわいそうに」
「ええ……かわいそうに」
その一言が、不意にれいむの感情の堰を切らせた。
「がわ゙い゙ぞう? ……ふざっげる゙な゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ!
おね゙え゙ざんがはや゙ぐも゙どら゙な゙いがら、ばりざがぢんじゃ゙っだんでじょお゙ぉ!?
「っく……、どうして……」
おね゙え゙ざんがはや゙ぐも゙どら゙な゙いがら、ばりざがぢんじゃ゙っだんでじょお゙ぉ!?
「っく……、どうして……」
お姉さんは顔を手で覆い、震えながら否定した。
それを見て、れいむは声を感情のまま叩きつける。
それを見て、れいむは声を感情のまま叩きつける。
「お゙ま゙え゙がばり゙ざを゙ごろ゙じだんだ゙! れ゙い゙む゙の゙がげがえ゙のな゙い゙かぞくを!
なお゙じでね゙! い゙ま゙っ゙ずぐにも゙どどお゙り゙に゙もどぜえ゙え゙ぇ゙ぇ゙!
ばりざも、おぢびぢゃん゙も! ゆっぐりぶれいずも、……あまあまもだよ!」
「……うっ……っく……どうして」
「れいむのたいっせつなものもかえせないぐずなおねえさんは……
ゆっくりしないでさっととしんでね!」
なお゙じでね゙! い゙ま゙っ゙ずぐにも゙どどお゙り゙に゙もどぜえ゙え゙ぇ゙ぇ゙!
ばりざも、おぢびぢゃん゙も! ゆっぐりぶれいずも、……あまあまもだよ!」
「……うっ……っく……どうして」
「れいむのたいっせつなものもかえせないぐずなおねえさんは……
ゆっくりしないでさっととしんでね!」
お姉さんは覆っていた手を降ろして、れいむを見る。
「どうして……、本当のことを言わないの?」
「ゆっ……?」
「ゆっ……?」
その顔は満面の笑みを浮かべていた。
「うーん……最後だけ予想してた以上の展開だったな……
いろいろ思い出しちゃった」
いろいろ思い出しちゃった」
お姉さんは茫然としているれいむの横を通り、傍らに置いてあるバッグの中をまさぐる。
中からパックのオレンジジュースを取りだして、ゆっくりと一口吸った。
中からパックのオレンジジュースを取りだして、ゆっくりと一口吸った。
れいむはその光景を口を空けて眺めている。
そのバッグは、まりさ達がまだ生きている時にお姉さんが置いておいたものだ。
そのオレンジジュースを使えば、まりさ達は助かったはずだ。
まりさ達が、死ぬことはなかったはずだ。
お姉さんが慌てて忘れてしまっていたのだろうか?
そのバッグは、まりさ達がまだ生きている時にお姉さんが置いておいたものだ。
そのオレンジジュースを使えば、まりさ達は助かったはずだ。
まりさ達が、死ぬことはなかったはずだ。
お姉さんが慌てて忘れてしまっていたのだろうか?
「ど、どぼじで……? おねえさん」
しゃがれた声で、お姉さんに聞いた。
どうして、それをまりさ達に使ってくれなかったのか。
どうして、それを忘れていたことを言ってくれないのか。
どうして、そんな嬉しそうな笑顔でこちらを見ているのか。
れいむには一つも分からなかった。
どうして、それを忘れていたことを言ってくれないのか。
どうして、そんな嬉しそうな笑顔でこちらを見ているのか。
れいむには一つも分からなかった。
「私が昔、れいむを……ゆっくりを飼っていたって話、あなたは覚えてる?
そのれいむがね……、『さっきあなたがまりさ達にしていたこと』を私にしたの」
そのれいむがね……、『さっきあなたがまりさ達にしていたこと』を私にしたの」
お姉さんは眼を細めた笑顔で応える。
「ご、ごめんなざ……!」
れいむが瞬時に理解をして謝ろうとすると、
ああ、とお姉さんはれいむの言葉を切って、諭すように言う。
ああ、とお姉さんはれいむの言葉を切って、諭すように言う。
「別に怒ってるんじゃないの。私はちょっと懐かしかったんだ。
……いや、思えば最初から、あなたたち家族とのやりとりは懐かしかった」
「ゆっ……」
……いや、思えば最初から、あなたたち家族とのやりとりは懐かしかった」
「ゆっ……」
お姉さんの静かで、穏やかな雰囲気は変わらない。
れいむやまりさ達と遊んだり、話をしている時や、
以前の飼いゆっくりのことを話すときと違った所はない。
れいむやまりさ達と遊んだり、話をしている時や、
以前の飼いゆっくりのことを話すときと違った所はない。
「きっかけはただの暇潰しだった。……休憩中に家に帰るのも骨だしね。
私としては昼食を取れて、気晴らしになればそれでよかった」
「ゆっ、ゆっくり……」
「うん。ゆっくりできたよ。あなた達と一緒にいた時間は。
休憩時間以外にも、わざわざ用意や仕込みのために寄ったりしてたしね」
私としては昼食を取れて、気晴らしになればそれでよかった」
「ゆっ、ゆっくり……」
「うん。ゆっくりできたよ。あなた達と一緒にいた時間は。
休憩時間以外にも、わざわざ用意や仕込みのために寄ったりしてたしね」
それでもいつものお姉さんなら、静かでいられるはずがない。
まりさ達は死んでしまったのだから、穏やかでいられるはずがないのだ。
まりさ達は死んでしまったのだから、穏やかでいられるはずがないのだ。
こんなにゆっくりできないときに、なんでお姉さんはこんなにゆっくりしているのだろう。
れいむは中枢餡を締め付けられるような違和感を感じている。
れいむは中枢餡を締め付けられるような違和感を感じている。
「あなたは、まりさ達をすぐ助けなかったってことを聞いてるんだよね? それは……」
「ゆっくり……ゆっ!」
「ゆっくり……ゆっ!」
ゆっくりが、ゆっくりどうしで使う基本的なあいさつとは、違う言葉がある。
その言葉が出かかって、抑えようとしても、それ以上の疑問が湧いて出てくる。
その言葉が出かかって、抑えようとしても、それ以上の疑問が湧いて出てくる。
__あなたはゆっくりできる人間さん?
__それならゆっくりお返事してね?
__それならゆっくりお返事してね?
なぜ、初めて会った人間のように、声をかけようとしているんだろう?
「ゆっくりしていってね!」
「……ゆっくりしていってね」
「……ゆっくりしていってね」
どうして初めて会った人間にするような、あいさつをしているのだろう。
お姉さんの反応は、大多数のゆっくりがひとまず落ち着きを取り戻すものだった。
静かで、優しい女の人の声。
静かで、優しい女の人の声。
しかし、お姉さんをよく知るれいむには、
もう目の前にいる人間を、お姉さんと認識することはできなかった。
もう目の前にいる人間を、お姉さんと認識することはできなかった。
「んんー……しいていうならどっちでもよかったんだ。
まりさ達をどうするのか。それは決めていなかった。
……あなたがどうするのかを見ることが今日の目的だったからね。
行動次第では、私はすぐに助けたかもしれないし、助けなかったかもしれない」
まりさ達をどうするのか。それは決めていなかった。
……あなたがどうするのかを見ることが今日の目的だったからね。
行動次第では、私はすぐに助けたかもしれないし、助けなかったかもしれない」
人間は、先ほどとは目つきが変わったれいむを見て、
何かを察したように笑いかける。
何かを察したように笑いかける。
「あなたがどう行動するのかも、どっちでもよかった。
自分の大切なものを、自分の命を懸けて守ろうとする姿を観察するのも……
自分を守るために、かけがえのない家族を犠牲にする姿を見るのも。
そのゆっくりが善良かゲスかなんて、たいした違いじゃないもの」
自分の大切なものを、自分の命を懸けて守ろうとする姿を観察するのも……
自分を守るために、かけがえのない家族を犠牲にする姿を見るのも。
そのゆっくりが善良かゲスかなんて、たいした違いじゃないもの」
れいむは人間の言葉を半分ほども分からなかったが、
この人間は自分の興味対象に関心があっただけであって、
自分や家族に対し、もともと親愛や情の念など欠片も無いことだけはよく分かった。
この人間は自分の興味対象に関心があっただけであって、
自分や家族に対し、もともと親愛や情の念など欠片も無いことだけはよく分かった。
「じゃあ、そろそろ行くね。お仕事の時間だー」
「おねえさんみたいに……しゃべらないでね……!」
「おねえさんみたいに……しゃべらないでね……!」
オレンジジュースを持つ手をひらひらさせた人間に、
れいむは声をかける。
れいむは声をかける。
「おねえさんのふりをして……れいむを、れいむのかけっがえのないかぞくをうばって!
……ふざっけるなぁ! くずにんげんっ! おまえは……おねえさんじゃないよ!」
……ふざっけるなぁ! くずにんげんっ! おまえは……おねえさんじゃないよ!」
その声に、見覚えのある笑い方。
あの小さかった子れいむのように、人間は歯を見せて笑っている。
あの小さかった子れいむのように、人間は歯を見せて笑っている。
「……私には、とってもゆっくりできた時間だった。
あなたの掛け替えのない家族が、不幸や苦難を乗り越えて幸せに生きていくのも、
砂場の山を少しずつ少しずつ崩していくように、ゆっくりできなくなってしまうのもね」
「お、お姉さんは……! れいむたちをたすけてくれたよ!」
「雨に濡れないように、タオルを敷いたっけ」
「まりさも、おちびちゃんも……おねえさんのことがだいすきだったよ!」
「野良ゆっくりが来た時、見るのに夢中になっちゃって……れいむを助けられなかったね」
あなたの掛け替えのない家族が、不幸や苦難を乗り越えて幸せに生きていくのも、
砂場の山を少しずつ少しずつ崩していくように、ゆっくりできなくなってしまうのもね」
「お、お姉さんは……! れいむたちをたすけてくれたよ!」
「雨に濡れないように、タオルを敷いたっけ」
「まりさも、おちびちゃんも……おねえさんのことがだいすきだったよ!」
「野良ゆっくりが来た時、見るのに夢中になっちゃって……れいむを助けられなかったね」
話せば話すほど、この人間とお姉さんが中枢餡の中で繋がっていくのをれいむは感じた。
それと同時に、お姉さんとの幸せな思い出が、醜く汚れていく。
それと同時に、お姉さんとの幸せな思い出が、醜く汚れていく。
「れいむは……ゆっくりぷれいすをこわされたとき、
にんげんさんはゆっくりできないってゆっくりりかいしたよ!
でも、おねえさんみたいなゆっくりできるにんげんさんもい゙る゙がら゙っ゙!
だがら゙……! ゆ゙ゔぅ゙っ゙!」
にんげんさんはゆっくりできないってゆっくりりかいしたよ!
でも、おねえさんみたいなゆっくりできるにんげんさんもい゙る゙がら゙っ゙!
だがら゙……! ゆ゙ゔぅ゙っ゙!」
枯れた涙の代わりに、声が詰まる。
眼の前の人間に何か伝えようとしたが、その記憶は混濁してうまく思い出せない。
眼の前の人間に何か伝えようとしたが、その記憶は混濁してうまく思い出せない。
「んんー……今のゆっくりプレイスを壊すようにしたのは私だし、
多分、前のゆっくりプレイスも私が通報したんじゃないかな?
ゆっくりの群れはいくつか潰したし、団地の近くなら、割と思い当たるんだけど……」
多分、前のゆっくりプレイスも私が通報したんじゃないかな?
ゆっくりの群れはいくつか潰したし、団地の近くなら、割と思い当たるんだけど……」
大きなハサミ。バラバラに崩された木の実。
番のありす。いつも仲良しだったぱちゅりー。
子ありすをはたき潰した大きな手。
ぱちゅりーを踏みつぶしていった大きな足。
番のありす。いつも仲良しだったぱちゅりー。
子ありすをはたき潰した大きな手。
ぱちゅりーを踏みつぶしていった大きな足。
黒く変色したれいむとまりさ。
ゆっくりプレイスを守った家族に、棒を突き刺す人間。
ゆっくりプレイスを守った家族に、棒を突き刺す人間。
「ゆ゙、ゆ゙ゔゔぅ゙ぅ゙……!」
強くフラッシュバックした記憶に中枢餡は叩きつけられ、
思わず漏らしたしーしーで地面を湿らせる。
思わず漏らしたしーしーで地面を湿らせる。
「必死に逃げるゆっくりも、何かを守ろうとするゆっくりを見るのも……
……ああ、今のあなたの顔は携帯で撮っておきたいくらい。人間じゃ真似できないなー」
「う……ぞだ……」
「嘘?」
……ああ、今のあなたの顔は携帯で撮っておきたいくらい。人間じゃ真似できないなー」
「う……ぞだ……」
「嘘?」
お姉さんは、家族と一緒に幸せな時間を過ごしてきた。
だから、どんな理由があってもれいむ達の不幸を笑うはずがない。
だから、どんな理由があってもれいむ達の不幸を笑うはずがない。
眼の前にいる人間に、お姉さんがどれだけ遊んだり助けてくれたか、分かるはずがない。
よりによってこの人間は、大切なお姉さんとの記憶まで塗り替えようとしている。
今まで起きた悪い事が、お姉さんの仕業などと嘘を付いているのだ。
よりによってこの人間は、大切なお姉さんとの記憶まで塗り替えようとしている。
今まで起きた悪い事が、お姉さんの仕業などと嘘を付いているのだ。
「うそだ……おねえさんは、ゆぐっ……! お゙ばえ゙な゙んがに゙……
お゙ね゙え゙ざん゙の゙ごどが、ひどっづも゙! わ゙がる゙もん゙があ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!」
お゙ね゙え゙ざん゙の゙ごどが、ひどっづも゙! わ゙がる゙もん゙があ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!」
人間は急に困ったような表情を浮かべると、緩慢な動きでその場にしゃがみ込んだ。
そして、手をかざして来る。
その動作はひどくゆっくりしていて、いつか感じた懐かしさがある。
そして、手をかざして来る。
その動作はひどくゆっくりしていて、いつか感じた懐かしさがある。
「ええ嘘よ。……信じてたの? れいむ? 今まで言っていたこと。
そんなひどい事、できるわけないじゃない。だって……」
「ゆっ……? お、おねえさんっ……!?」
そんなひどい事、できるわけないじゃない。だって……」
「ゆっ……? お、おねえさんっ……!?」
お姉さんの手がれいむの頭へ撫でるようにかかり、
れいむは後ろを振り向くように誘導されられた。
れいむは後ろを振り向くように誘導されられた。
「……あなたが家族を殺したんでしょ? れいむ」
その言葉は、頭上からよく響いた。
れいむはお姉さんの言葉が『嘘』だったことを信じ、
思い出の中に混ざった汚れを完全に忘れ去ろうとしていた。
その消した隙間に、お姉さんの台詞がすっぽりと収まるように刻まれた。
れいむはお姉さんの言葉が『嘘』だったことを信じ、
思い出の中に混ざった汚れを完全に忘れ去ろうとしていた。
その消した隙間に、お姉さんの台詞がすっぽりと収まるように刻まれた。
「ゆっ……?」
次の瞬間、れいむの視界に入ったのは
浅黒く変わり果てた家族の姿だった。
浅黒く変わり果てた家族の姿だった。
「ゆうっ……!?」
れいむは眼前の光景は目に入っていないかのように、
まりさと初めて会った時のことを思い出していた。
それから、ゆっくりプレイスでの生活や、
紆余曲折あっての幸せな家族との記憶が中枢餡を駆け巡った。
まりさと初めて会った時のことを思い出していた。
それから、ゆっくりプレイスでの生活や、
紆余曲折あっての幸せな家族との記憶が中枢餡を駆け巡った。
同時に家族が被った、ゆん生で起こったほとんどの不幸は、
誰かの意思でなすり付けられたものだという思いが強く残る。
それが誰であれ、絶対に許してはならないと餡子は言っている。
誰かの意思でなすり付けられたものだという思いが強く残る。
それが誰であれ、絶対に許してはならないと餡子は言っている。
__かぞくをころしたのは。
お姉さんのせいにすることも、悪意ある人間に対する憎しみに向けることもできず
最愛のゆっくりと、子ども達を殺したのが疑いようもなく自分だと中枢餡が認識したとき、
最愛のゆっくりと、子ども達を殺したのが疑いようもなく自分だと中枢餡が認識したとき、
れいむは発狂した。
「ゆ゙ぎい゙ぃ゙ぃ゙い゙い゙や゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙
ゆ゙わ゙あ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙……!」
ゆ゙わ゙あ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙……!」
激しく声と皮を震わせて、のたうち回るれいむ。
お姉さんは携帯をひらいて、
休憩時間の間もなく終わる時間が記された画面とともにその様子を眺めている。
お姉さんは携帯をひらいて、
休憩時間の間もなく終わる時間が記された画面とともにその様子を眺めている。
「次の訪問、間に合うかなー……」
「ゆ゙ぼっ! ゆ゙べっ! ゆ゙べぇ゙! ……ゆ゙ゔゔぅ゙ぅ゙ぅ゙ぅ゙ぅ゙ゔゔっ゙!」
「ゆ゙ぼっ! ゆ゙べっ! ゆ゙べぇ゙! ……ゆ゙ゔゔぅ゙ぅ゙ぅ゙ぅ゙ぅ゙ゔゔっ゙!」
お姉さんの心配をよそに、れいむは何度かビクビクッと痙攣すると、
次第に小さくなる調子はずれな声とともに、れいむの体の動きも止まった。
横に転がったきり、ゆっ、ゆっ、と
弱い呼吸を繰り返しているれいむの眼はうつろで焦点が合っていない。
次第に小さくなる調子はずれな声とともに、れいむの体の動きも止まった。
横に転がったきり、ゆっ、ゆっ、と
弱い呼吸を繰り返しているれいむの眼はうつろで焦点が合っていない。
しばらく見続けていたお姉さんも、携帯をしまって大きく伸びをする。
紙パックに入ったオレンジジュースの残りをひと吸いにしようと口を付けた。
紙パックに入ったオレンジジュースの残りをひと吸いにしようと口を付けた。
「……ゆわぁー! れいむはゆっくりおきるよ!」
「んん?」
「ゆっ!? にんげんさん! ゆっくりしていってね!」
「……ゆっくりしていってね」
「んん?」
「ゆっ!? にんげんさん! ゆっくりしていってね!」
「……ゆっくりしていってね」
そう言うが早いか、れいむは意気揚々とまりさ達の死骸に跳ねていき、
大きく跳びあがってまりさを踏み潰した。
大きく跳びあがってまりさを踏み潰した。
「……何をしてるの?」
「ゆーん? あまあまだよ! にんげんさん!」
「ゆーん? あまあまだよ! にんげんさん!」
すでに父まりさの原型をなしていない饅頭を、さらに跳ねて細かく飛び散らせる。
「おねえさんがね! たっくさん! あまあまをもってきてくれたんだよ!
いまはおねえさんがいないから、れいむがぐーりぐーりするよ!」
「そう」
いまはおねえさんがいないから、れいむがぐーりぐーりするよ!」
「そう」
れいむ達にも飛び乗って、ゆんせ、ゆんせとリズムよくのしかかっていく。
その目や破れた皮から餡子が出て、平べったくなったものを重心を変えて引き剥がす。
その目や破れた皮から餡子が出て、平べったくなったものを重心を変えて引き剥がす。
「上手いものね。手慣れてる」
「おまんじゅうさん、ぐーりぐーりすると、みんなでゆっくりむーしゃむーしゃできるんだよ!
びすけっとさんも、こなぺろも……おねえさんにゆっくりおしえてもらったんだ!」
「……まりさとおちびちゃんは、どうしたの?」
「まりさはきのみさんをとりにでかけたよ! おちびちゃんは、
おねえさんに『ぷれぜんと』するはなわさんをつくりにいったよ!」
「おまんじゅうさん、ぐーりぐーりすると、みんなでゆっくりむーしゃむーしゃできるんだよ!
びすけっとさんも、こなぺろも……おねえさんにゆっくりおしえてもらったんだ!」
「……まりさとおちびちゃんは、どうしたの?」
「まりさはきのみさんをとりにでかけたよ! おちびちゃんは、
おねえさんに『ぷれぜんと』するはなわさんをつくりにいったよ!」
髪の付いたリボンや帽子など、割れにくい部分は噛みちぎりながら、
餡子まみれのれいむが答える。
餡子まみれのれいむが答える。
「そうなの。きっとそのお姉さん、プレゼントされたら喜ぶんじゃないかな」
「はなわさんのつくりかたはれいむがおしえたんだよ! とうっぜん! だよ!」
「……お姉さんは、いつ来るの?」
「いまは『きゅーけーじかん』さんだから、もうすぐくるよ!」
「はなわさんのつくりかたはれいむがおしえたんだよ! とうっぜん! だよ!」
「……お姉さんは、いつ来るの?」
「いまは『きゅーけーじかん』さんだから、もうすぐくるよ!」
まりさ達の細切れを口にくわえると、鼻歌を歌いながら周囲に並べていく。
どう見ても、適当に撒いているようにしかみえないが、
れいむの中では、等間隔で家族の人数分を盛っているようになっているのかもしれない。
どう見ても、適当に撒いているようにしかみえないが、
れいむの中では、等間隔で家族の人数分を盛っているようになっているのかもしれない。
「……おねえさんはね。れいむがであったにんげんさんのなかで、
いちっばん! ゆっくりできるにんげんさんなんだよ!」
「へえ。そうなんだ」
「れいむは、ゆっくりぷれいすをこわされたとき、
にんげんさんはゆっくりできないってゆっくりりかいしたよ!
でも、おねえさんみたいなゆっくりできるにんげんさんもいるから……」
いちっばん! ゆっくりできるにんげんさんなんだよ!」
「へえ。そうなんだ」
「れいむは、ゆっくりぷれいすをこわされたとき、
にんげんさんはゆっくりできないってゆっくりりかいしたよ!
でも、おねえさんみたいなゆっくりできるにんげんさんもいるから……」
一度すぅはぁと息継ぎをするために言葉を切ると、
れいむは子ゆっくりのような、屈託のない笑顔を見せた。
れいむは子ゆっくりのような、屈託のない笑顔を見せた。
「おねえさんのかいゆっくりは、ずっとずーっとゆっくりしてたとおもうよ!
れいむも、まりさとおちびちゃんたちとずっとずーっとゆっくりしてるよ!
まりさたちがかえってきたら、しあわせーって、みんなにいうんだ!」
「……れいむ達がそう思ってくれて、お姉さんは幸せ者ね」
「にんげんさんも、そうおもう? そうだとれいむはうれしいな!」
れいむも、まりさとおちびちゃんたちとずっとずーっとゆっくりしてるよ!
まりさたちがかえってきたら、しあわせーって、みんなにいうんだ!」
「……れいむ達がそう思ってくれて、お姉さんは幸せ者ね」
「にんげんさんも、そうおもう? そうだとれいむはうれしいな!」
体中、餡子でまみれているれいむの姿と、まるで不釣り合いな明るい表情。
目元や口元に衰弱の陰りが見えるので、
このまま何も飲まず食わずなら、夜まで持つかどうかだろう。
目元や口元に衰弱の陰りが見えるので、
このまま何も飲まず食わずなら、夜まで持つかどうかだろう。
「……てっきり制裁に走ってくるものと思ったんだけど。
正気をなくすケースって、根が善良な個体に多い傾向なのかな?」
正気をなくすケースって、根が善良な個体に多い傾向なのかな?」
先ほどの行動をふまえるならば、可能性はいくつかある。
たくさんの家族の欠片とともに、家族を待ちながら餓死するのか。
いくら待っても来ない家族に、なにかしらの理由を付けて納得し食事を始めるのか。
それ以前に、他のゆっくりに見つかって問答を待たず制裁されるのか。
たくさんの家族の欠片とともに、家族を待ちながら餓死するのか。
いくら待っても来ない家族に、なにかしらの理由を付けて納得し食事を始めるのか。
それ以前に、他のゆっくりに見つかって問答を待たず制裁されるのか。
家族をバラバラにして食卓に並べて、幸せそうに家族を待つ地獄絵図など、
発見してしまったゆっくりなどは、それだけで今後のゆん生に悪影響を及ぼしそうだ。
発見してしまったゆっくりなどは、それだけで今後のゆん生に悪影響を及ぼしそうだ。
なにかの拍子に正気に戻るということもなくはない。
いずれにしても、
いずれにしても、
「……仕事終わりの楽しみが残った。と考えるか」
完全にれいむから背を向けたお姉さんのつぶやきに、
れいむは軽く頭を傾けてなおも注目している。
れいむは軽く頭を傾けてなおも注目している。
お姉さんは返事がこないことも確信していたのか、
れいむの方を見向きもせず、弾けるように歩き出していた。
れいむの方を見向きもせず、弾けるように歩き出していた。
「ゆっくりかえってね! にんげんさん!」
オレンジジュースを飲み干しながら足早に団地の方へ歩いて行く人間を見て、
れいむはおさげをぴこぴこ振りながら、付着している大量の餡子を飛び散らせている。
れいむはおさげをぴこぴこ振りながら、付着している大量の餡子を飛び散らせている。
そして人間がいつふり向いてお別れの挨拶をするのかを心待ちにしながら、
ずーっとずっと、ゆっくりと眺めていた。
ずーっとずっと、ゆっくりと眺めていた。
(終わり)