ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko4205 れみりゃ修行する
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ankoss
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『れみりゃ修行する』 17KB
愛で ギャグ 飼いゆ 姉妹 失礼します
愛で ギャグ 飼いゆ 姉妹 失礼します
※ 「anko4058 まちょりーになりたい」のキャラが少し出てきます。
※ めーりん語は翻訳してあります。
※ めーりん語は翻訳してあります。
チートあきです。
「おねえさま、しね! しねー!」
「うー。いたいんだどー。やめるんだどー」
「うー。いたいんだどー。やめるんだどー」
ぽかぽかとれみりゃの頭を叩く胴付きのふらん。
れみりゃは必死に反撃しているが、ふらんの方が優勢である。幼稚園児のような体格で
の殴り合い。身体能力ではふらんはれみりゃよりも上だ。れみりゃでは分が悪い。というか
ふらんがほぼ一方的にれみりゃを叩いている。
れみりゃは必死に反撃しているが、ふらんの方が優勢である。幼稚園児のような体格で
の殴り合い。身体能力ではふらんはれみりゃよりも上だ。れみりゃでは分が悪い。というか
ふらんがほぼ一方的にれみりゃを叩いている。
「平和だなー」
その様子を眺めながら、飼い主の男はのんびりと麦茶を飲んでいた。
れみりゃとふらんのケンカはいつもの事であるし、今更気にするものではない。習性や本
能のようなものである。無理に止めるとかえってストレスが溜まってしまうらしい。殺し合い
になることは、あまりない。
れみりゃとふらんのケンカはいつもの事であるし、今更気にするものではない。習性や本
能のようなものである。無理に止めるとかえってストレスが溜まってしまうらしい。殺し合い
になることは、あまりない。
「いもうとのくせになまいきなんだどー!」
れみりゃが反撃に出るが、あっさりと突き倒された。
「あはははは! だらしないおにくのおねえさまは、ぶたのようにしね!」
マウントポジションを取り、ふらんは楽しそうに拳を振り回す。
みしり、とれみりゃの顔面に肘が打ち込まれた。
みしり、とれみりゃの顔面に肘が打ち込まれた。
そんなある日。
男の前にれみりゃが正座した。
男の前にれみりゃが正座した。
「うー。おにいさん、おはなしがあるんだど。れみぃはふらんにかちたいんだど。いもうとに
やられっぱなしは、いやなんだど」
「ふむ。そう言われてみればそうだな」
やられっぱなしは、いやなんだど」
「ふむ。そう言われてみればそうだな」
男は首を傾げる。
記憶にある限り、れみりゃがふらんに勝てたことはない。それどころか優位に立てたこと
すらない。連戦連敗。それは姉のプライドが許さないらしい。
生まれる順番からするとふらんの方が姉だった。余談であるが。
記憶にある限り、れみりゃがふらんに勝てたことはない。それどころか優位に立てたこと
すらない。連戦連敗。それは姉のプライドが許さないらしい。
生まれる順番からするとふらんの方が姉だった。余談であるが。
「じゃあ、修行してみるか?」
畳の上に正座をした男と、隣で同じく正座をしているれみりゃ。とある空手道場の練習場
だった。壁には『剛よく柔を断つ』と記された書が掲げられている。
だった。壁には『剛よく柔を断つ』と記された書が掲げられている。
「というわけでオヤジ。しばらくれみりゃを預けたい」
「くくく。そいつは面白れぇな」
「くくく。そいつは面白れぇな」
男とれみりゃの前に座っている、厳つい男。
空手着の上からでも分かる筋骨隆々な肉体。きれいに剃髪された頭は、その異様な空
気をさらに強めている。手や顔には古傷がいくつも見えた。全身から立ち上る気迫。男の
父親であり、空手の師範だった。
ふらんのれみりゃの関係を手短に説明し、鍛えるように説明してある。
空手着の上からでも分かる筋骨隆々な肉体。きれいに剃髪された頭は、その異様な空
気をさらに強めている。手や顔には古傷がいくつも見えた。全身から立ち上る気迫。男の
父親であり、空手の師範だった。
ふらんのれみりゃの関係を手短に説明し、鍛えるように説明してある。
「おねがいしますだど」
父の迫力に気圧されつつ、ぺこりと頭を下げるれみりゃ。
父はれみりゃの細目を見据え、
父はれみりゃの細目を見据え、
「れみりゃ。修行は辛く苦しいぞ? 途中で何度も挫けたり泣いたり家に帰りたくなったりす
るだろう。だけど、諦めず最後まで頑張ってくれるって、オレに誓ってくれるな?」
「うー。ちかうど」
るだろう。だけど、諦めず最後まで頑張ってくれるって、オレに誓ってくれるな?」
「うー。ちかうど」
れみりゃが頷いた。
「ぱちゅりー」
父が声を上げる。
その声に応えるように部屋の戸が開いた。
その声に応えるように部屋の戸が開いた。
「よんだかしら、しはん?」
「うーあー!? ばけものー!」
「うーあー!? ばけものー!」
正座を崩し両手を床に付き、れみりゃが悲鳴を上げる。
無骨な筋肉を持つ胴付きのぱちゅりー。まちょりーだった。身の丈二メートル近い長身に
紫色の服がきつくなるほどの分厚い筋肉。巨木、もしくは大岩。そんな表現の似合う体躯
である。腰に黒帯を巻き、袖は無く、スカートの左右にスリットが付けられていた。足とドロ
ワが見えているが、色気は無い。むしろ変な卑猥さがある。
まちょりーとしてもかなり規格外の体格だ。
父親の飼いゆっくり兼弟子である。
無骨な筋肉を持つ胴付きのぱちゅりー。まちょりーだった。身の丈二メートル近い長身に
紫色の服がきつくなるほどの分厚い筋肉。巨木、もしくは大岩。そんな表現の似合う体躯
である。腰に黒帯を巻き、袖は無く、スカートの左右にスリットが付けられていた。足とドロ
ワが見えているが、色気は無い。むしろ変な卑猥さがある。
まちょりーとしてもかなり規格外の体格だ。
父親の飼いゆっくり兼弟子である。
「バケモノとはしつれいね。ぱちぇはぱちぇよ。むっきゅりしていってね」
のしのしと足を進め、ぱちゅりーがれみりゃの傍らまでやってくる。身長で二倍、容積なら
十倍以上の差はあるだろう。バケモノという表現は間違っていない。
十倍以上の差はあるだろう。バケモノという表現は間違っていない。
「なかなかかわいいれみぃね。おにんぎょうさんみたい」
無造作に手を伸ばし、れみりゃの頭を掴んだ。
「うあああ!? つぶれるぅぅ!? つぶれるどおおお!」
ぱちゅりーの手を掴み返し、れみりゃが暴れる。
ぱちゅりーとしては軽く撫でる感覚だった。だが、れみりゃにしては万力で頭を挟まれた
ようなものだ。実際ぱちゅりーが少し力を込めれば潰れるだろう。豆腐のように。
腕組みしながら父が笑っていた。
ぱちゅりーとしては軽く撫でる感覚だった。だが、れみりゃにしては万力で頭を挟まれた
ようなものだ。実際ぱちゅりーが少し力を込めれば潰れるだろう。豆腐のように。
腕組みしながら父が笑っていた。
「んじゃ、ぱちゅりー。れみりゃの事は頼むぜ? 死なない程度にな」
「わかったわ」
「わかったわ」
ぱちゅりーが手を放した。
うつ伏せに倒れたれみりゃを見下ろし、
うつ伏せに倒れたれみりゃを見下ろし、
「はなしがまとまったところでさっそくだけど、トレーニングをはじめようかしら。まずはきそた
いりょくをつけるために、ぱちぇといっしょにマラソンね」
「まらそん……どれくらいだど?」
「10キロよ」
いりょくをつけるために、ぱちぇといっしょにマラソンね」
「まらそん……どれくらいだど?」
「10キロよ」
見上げるれみりゃにさらりと答えるぱちゅりー。
「じゅっきろって……どれくらいだどー?」
れみりゃは冷や汗混じりに男を見る。
10という数字が理解できないわけではない。kmという距離の単位が理解できないわけ
ではない。だが、10Kmという言葉は理解できなかった。
男は少し考えてから、笑顔で答える。
10という数字が理解できないわけではない。kmという距離の単位が理解できないわけ
ではない。だが、10Kmという言葉は理解できなかった。
男は少し考えてから、笑顔で答える。
「たくさんだ」
「………」
「………」
れみりゃが顔を引きつらせる。凄く多いという事は理解した。
「れみりゃ。今になって『やっぱやめる』ってのは無しだぜ?」
父が凶暴な微笑みとともに告げる。いつの間にか右手を持ち上げていた。拳ではない。
親指と人差し指、中指で何かを掴むような形。れみりゃは本能的に悟った。拳よりも危な
い手の形。もし迂闊な事を言えば、ここで死ぬ。
親指と人差し指、中指で何かを掴むような形。れみりゃは本能的に悟った。拳よりも危な
い手の形。もし迂闊な事を言えば、ここで死ぬ。
「ぜんはいそげ。いくいわよ、れみぃ」
「うーあー!?」
「うーあー!?」
ぱちゅりーに引きずられ、れみりゃは無力に泣いた。
ぱちゅりーのマラソンコースは近所の運動公園だった。マラソンやウォーキングができる
ように小さな道が造られている。一周およそ一キロ。コースにはマラソンをしている若者や
犬の散歩をしているおばさんの姿があった。
ように小さな道が造られている。一周およそ一キロ。コースにはマラソンをしている若者や
犬の散歩をしているおばさんの姿があった。
「むっきゅ、むっきゅ」
両手両足にパワーリストを巻き付け、ぱちゅりーは軽快な足取りで走っていた。
走る度にスリットの刻まれたスカートが翻り、丸太のような足が覗く。
マラソンするまちょりーという光景は異常なものだが、周りの人間は既に慣れてしまって
いるので、普通に道を開けたりしている。
走る度にスリットの刻まれたスカートが翻り、丸太のような足が覗く。
マラソンするまちょりーという光景は異常なものだが、周りの人間は既に慣れてしまって
いるので、普通に道を開けたりしている。
「ぅ……」
一方、のたのたと走るれみりゃ。視線は何もない空を彷徨い、足取りもおぼつかない。現
在二キロを過ぎたあたり。体力の限界はとうに越えていた。
在二キロを過ぎたあたり。体力の限界はとうに越えていた。
「さー、れみぃ。あとはっしゅうよ」
ゾンビのように走るれみりゃを、ぱちゅりーが追い抜いていく。
「あんしんしなさい。たおれたらたたきおこしてあげるわ」
「………」
「………」
れみりゃには呻く余力も無かった。
赤い空と広い河原。
その隅の方の石に三匹のゆっくりが腰掛けていた。身体の細い胴付きのぱちゅりー、れ
いむ。そしてれみりゃ。川岸に着けられた小舟の横でこまちが一匹眠っている。
その隅の方の石に三匹のゆっくりが腰掛けていた。身体の細い胴付きのぱちゅりー、れ
いむ。そしてれみりゃ。川岸に着けられた小舟の横でこまちが一匹眠っている。
「ところであなた、いったいなにをしてここにきたの?」
「まちょりーとまらそんしてたら、ここにいたんだどー。そこからよくおぼえてないんだど……。
ぱちゅりーとれいむはなんでここにいるんだど?」
「まちょりーとまらそんしてたら、ここにいたんだどー。そこからよくおぼえてないんだど……。
ぱちゅりーとれいむはなんでここにいるんだど?」
れみりゃが尋ねる。
「おふとんかけすぎておひるねしちゃったから、たぶんだっすいしょうじょうね」
「れいむはばななのかわさんで、すべってころんじゃったよ。うっかりしてたね!」
「それはさいなんだどー」
「れいむはばななのかわさんで、すべってころんじゃったよ。うっかりしてたね!」
「それはさいなんだどー」
ガバッ!
薄い布団をはね除け、れみりゃが起きる。
「なんだどー!? なんかざんすのかわっぽいところで、かいわれだいこんみたいなぱちゅ
りーとのうてんきそうなれいむと、しっぽりはなしこんじゃったどー!?」
「むきゅ。おきたのね」
りーとのうてんきそうなれいむと、しっぽりはなしこんじゃったどー!?」
「むきゅ。おきたのね」
ぱちゅりーが声をかけた。
道場にあるトレーニングルームである。今は人はいない。隅に置かれた椅子の上にれみ
りゃは寝かされていた。
横には回復に使ったらしいオレンジジュースの空パックが置いてある。
道場にあるトレーニングルームである。今は人はいない。隅に置かれた椅子の上にれみ
りゃは寝かされていた。
横には回復に使ったらしいオレンジジュースの空パックが置いてある。
「………。うー?」
かちゃり、かちゃりと金属の鳴る音。
ぱちゅりーがダンベルを持ち、腕を上下に動かしていた。ウエイトトレーニングらしい。鉄
の棒に巨大な円盤がよっつ付けられている鉄塊。それを両手にひとつづつ。腕が動くたび
に留め具が鳴っていた。動きはかなり速い。
ぱちゅりーがダンベルを持ち、腕を上下に動かしていた。ウエイトトレーニングらしい。鉄
の棒に巨大な円盤がよっつ付けられている鉄塊。それを両手にひとつづつ。腕が動くたび
に留め具が鳴っていた。動きはかなり速い。
「それ、なんキロなんだど?」
椅子に座り直しながら、れみりゃは聞いてみた。
「かたほう80キロよ」
「……はちじゅっきろって、どれくらいなんだどー?」
「……はちじゅっきろって、どれくらいなんだどー?」
80という数字が理解できないわけではない。kgという重さの単位が理解できないわけで
もない。だが、80kgという言葉は理解できなかった。
もない。だが、80kgという言葉は理解できなかった。
「たくさんよ」
そう説明してから、ぱちゅりーはダンベルを床に置いた。
「とりあえず、れみぃは10キロからね。むきゅ。ちょっとかるいかしら?」
近くに置かれていた小さなダンベルを掴む。銀色の棒の左右に小さい円盤をひとつづつ
取り付けたもの。ぱちゅりーが今使っていたものに比べると随分と小さく軽く見えた。
ぱちゅりーはおもちゃでも持つように軽々と持ち上げている。
だが、ゆっくり基準では十二分に重いことを、れみりゃは理解した。
取り付けたもの。ぱちゅりーが今使っていたものに比べると随分と小さく軽く見えた。
ぱちゅりーはおもちゃでも持つように軽々と持ち上げている。
だが、ゆっくり基準では十二分に重いことを、れみりゃは理解した。
「はい」
ぱちゅりーがダンベルを投げてくる。
「う!?」
れみりゃは目を見開いた。
緩い放物線を描いて飛んでくる鉄の塊。もしかしたら門下生と一緒に鍛錬をする時に軽
いバーベルは放って渡しているのかもしれない。ともあれ、れみりゃにとっては絶対に持て
ない代物だ。それを投げつけられた。受け止めたら危険、受け止めなくとも危険。
緩い放物線を描いて飛んでくる鉄の塊。もしかしたら門下生と一緒に鍛錬をする時に軽
いバーベルは放って渡しているのかもしれない。ともあれ、れみりゃにとっては絶対に持て
ない代物だ。それを投げつけられた。受け止めたら危険、受け止めなくとも危険。
「どおおおおお!?」
鈍化した時間の中で、れみりゃは滝のような涙を流した。
ダンベルを投げてはいけません。れみりゃとお約束だぞ☆
ぐちゃ。
夕暮れのような赤い空。湖のように広い川。丸い砂利が敷き詰められた河原。石に座っ
ている細い胴付きぱちゅりーと普通っぽいれいむ。
その前で、れみりゃは呆然と立ちつくしていた。
ている細い胴付きぱちゅりーと普通っぽいれいむ。
その前で、れみりゃは呆然と立ちつくしていた。
「あら、もうもどってきたの? きがはやいわね?」
「おかえりなさい、れみりゃ! ここがきにいったの? ゆっくりしていってね!」
「れみぃ、もうおうちかえるどおおおお!?」
「おかえりなさい、れみりゃ! ここがきにいったの? ゆっくりしていってね!」
「れみぃ、もうおうちかえるどおおおお!?」
両手を振り上げ、れみりゃは叫んだ。
「むっ、きゅっ!」
勢いよく空を切る正拳。
公園の端っこで、ぱちゅりーが正拳突きをしていた。足元から拳の先端まで流れるように
伝わっていく力。鮮やかな構えから突き出された拳が、重い風切り音を立てる。
公園の端っこで、ぱちゅりーが正拳突きをしていた。足元から拳の先端まで流れるように
伝わっていく力。鮮やかな構えから突き出された拳が、重い風切り音を立てる。
「うー……あー……」
その横でぎこちなく正拳突きをしているれみりゃ。全身から流れる汗と真っ青な顔色、焦
点の合っていない瞳、身体は小さく震えている。ぱちゅりーによる鍛錬のおかげで死にか
けていた。実際日に十回以上臨死体験を繰り返している。
点の合っていない瞳、身体は小さく震えている。ぱちゅりーによる鍛錬のおかげで死にか
けていた。実際日に十回以上臨死体験を繰り返している。
「ぱちゅりーのくせにおねえさまをいじめるなんて、なまいきだわ。おねえさまをいじめてい
いのは、ふらんだけなのに……」
いのは、ふらんだけなのに……」
二匹の修行の様子を、ふらんが物陰から伺っていた。嫉妬に歯を軋らせながら。
ふらんがれみりゃを虐めるのは、ふらんなりの愛である。自分以外の誰かられみりゃを
虐める。ふらんはそれが許せなかった。
もっとも、あのぱちゅりーにケンカを売って勝てるとは思っていない。
ふらんがれみりゃを虐めるのは、ふらんなりの愛である。自分以外の誰かられみりゃを
虐める。ふらんはそれが許せなかった。
もっとも、あのぱちゅりーにケンカを売って勝てるとは思っていない。
「こまったわ。おねえさまがつよくなったら、いじめられなくなっちゃう……」
そして最大の問題はれみりゃが強くなることだった。ふらんが見ても無茶苦茶と思える鍛
え方。だらしないれみりゃでもこの鍛錬を続ければ確実に強くなるだろう。れみりゃがふら
んよりも強くなっては虐めることができなくなってしまう。
え方。だらしないれみりゃでもこの鍛錬を続ければ確実に強くなるだろう。れみりゃがふら
んよりも強くなっては虐めることができなくなってしまう。
「そうだ」
ふらんはぽんと手を打った。
街外れにある古い日本家屋。日の光が差し込む客間で、男とふらんは座布団の上に正
座をしていた。床の間の壁には『柔よく剛を制す』と書かれた掛け軸が飾ってある。
座をしていた。床の間の壁には『柔よく剛を制す』と書かれた掛け軸が飾ってある。
「というわけで、婆ちゃん頼む」
「それは面白いのう。ふぇっへっへ」
「それは面白いのう。ふぇっへっへ」
ふらんの前には男の祖母である婆さんと、年老いた胴無しのめーりんがいた。
強くなったれみりゃに負けないように強くなりたい。その言葉を聞き、男が連れてきたの
が祖母の元だった。かつては柔術の達人と言われた女傑である。最近でも麓に下りてき
た熊を素手で仕留めたりと元気に暴れているが。
強くなったれみりゃに負けないように強くなりたい。その言葉を聞き、男が連れてきたの
が祖母の元だった。かつては柔術の達人と言われた女傑である。最近でも麓に下りてき
た熊を素手で仕留めたりと元気に暴れているが。
「それじゃあ、めーりんや。しばらくふらんを鍛えてやってくれ。まぁ、死ななきゃ何してもい
いわ。アタシが直してやるからのう。へっへっへ」
いわ。アタシが直してやるからのう。へっへっへ」
楽しそうに笑いながら、祖母がめーりんを見る。
「わかったじゃお」
頷くめーりん。
「めーりんが、ふらんをきたえる?」
ふらんは眉を寄せてめーりんを眺めた。一目で分かるほど老いている。ここまで老化した
ゆっくりはむしろ珍しいだろう。赤い髪は色褪せており、ほぼ白髪だ。帽子に付いた星マー
クもくすんでいる。顔にも沢山のシワが入っていた。
ゆっくりはむしろ珍しいだろう。赤い髪は色褪せており、ほぼ白髪だ。帽子に付いた星マー
クもくすんでいる。顔にも沢山のシワが入っていた。
「ふらん。そのかおだと、めーりんがつよいってしんじていないじゃお? まあ、とうぜんじゃ
お。ろんよりしょうこじゃお、おもてにでるじゃお」
「わかった」
お。ろんよりしょうこじゃお、おもてにでるじゃお」
「わかった」
ふらんは立ち上がった。
庭に出てふらんとめーりんが対峙する。
男と祖母は縁側に座って二匹を眺めていた。
男と祖母は縁側に座って二匹を眺めていた。
「相手はシロウトだ。うっかり殺すんじゃないよ?」
「わかってるじゃお」
「わかってるじゃお」
祖母の言葉にめーりんが頷く。
ふらんは地面を蹴った。ふらんは単純な身体能力ならゆっくりでも随一だ。胴付き化する
ことにより、人間の子供並まで上昇する。そこにふらん種特有の破壊衝動を加えれば、ゆ
っくりではほぼ最強となる。
ふらんは地面を蹴った。ふらんは単純な身体能力ならゆっくりでも随一だ。胴付き化する
ことにより、人間の子供並まで上昇する。そこにふらん種特有の破壊衝動を加えれば、ゆ
っくりではほぼ最強となる。
「めーりん、しね!」
めーりんめがけ、右手を振下ろす。五指を伸ばした狩りの動き。
「じゃお」
見たままを言うなら、めーりんがふらんの手に軽く体当たりをした。普通なら。普通のめー
りんが相手なら、ふらんの指と爪がその身体を抉り取っていただろう。
跳ね返ってきた衝撃は大きかった。
慌てて後ろに飛退くふらん。
りんが相手なら、ふらんの指と爪がその身体を抉り取っていただろう。
跳ね返ってきた衝撃は大きかった。
慌てて後ろに飛退くふらん。
「うあ。ふらんのうでが……」
右手が壊れていた。五指があらぬ方向にひしゃげ、前腕に新しい関節が増えている。肘
もおかしな方向に曲がっていた。裂けた皮から、餡子がこぼれている。右腕は動かない。
これでは治療するまで使い物にならないだろう。
不思議と痛みは無かった。意識が追い付いていないらしい。
もおかしな方向に曲がっていた。裂けた皮から、餡子がこぼれている。右腕は動かない。
これでは治療するまで使い物にならないだろう。
不思議と痛みは無かった。意識が追い付いていないらしい。
「じゃ~お」
ぽよん、と。
めーりんが跳んだ。
ゆっくりと。のんびりと。だが、ふらんの頭より高く跳び上がり、近付いてくる。それは風船
が動くような軽さだった。ぶつかっても痛みもないだろうと思わせるほど。
だが、そこに映るのは明確な死だった。
めーりんが跳んだ。
ゆっくりと。のんびりと。だが、ふらんの頭より高く跳び上がり、近付いてくる。それは風船
が動くような軽さだった。ぶつかっても痛みもないだろうと思わせるほど。
だが、そこに映るのは明確な死だった。
「もうこんてぃにゅーできなくなっちゃうわ!?」
ふらんは近くに落ちていた拳大の石を左手で掴み、めーりんに叩き付けた。
ガコッ。
粉々に割れた石が地面に落ちる。
ふらんは左手を下ろした。右腕のように目に見えたダメージはない。だが、肩から先の感
覚が全部消えていた。左腕が無くなってしまったかのように。
もし素手で受けていたら、どうなっていだろう。
ふらんは左手を下ろした。右腕のように目に見えたダメージはない。だが、肩から先の感
覚が全部消えていた。左腕が無くなってしまったかのように。
もし素手で受けていたら、どうなっていだろう。
「………」
唾を呑み込み、ふらんはめーりんを見る。絶対に勝てない。付け入る隙も無い。捕食種と
赤ゆっくり。それほど、いやそれ以上の差だった。理解を超えた圧倒的な強さ。
赤ゆっくり。それほど、いやそれ以上の差だった。理解を超えた圧倒的な強さ。
「これが『き』をつかうことじゃお」
赤い瞳をふらんに向け、めーりんが頷く。
「ひつようなとき、ひつようなすべを、ひつようなそくどでしようするじゃお。そのタイミングを
しることじゃお。かんぜんなタイミングをてにいれているなら、もはやそこにはそくどさえもい
らないじゃお」
しることじゃお。かんぜんなタイミングをてにいれているなら、もはやそこにはそくどさえもい
らないじゃお」
「うー……。おわった……ど……」
道場の玄関に手をつき、れみりゃは肩で息をしていた。流れ落ちた汗がコンクリートに小
さな染みを作る。父の元に預けられてから一週間が立っていた。
さな染みを作る。父の元に預けられてから一週間が立っていた。
「むきゅ。マラソンおわってもうごけるていどには、たいりょくついてきたわね」
れみりゃはぱちゅりーを見る。
最初は途中で気絶していた。だが、今は一応最後まで走り終えることができる。れみり
ゃの身体は、この地獄に適応しようとしていた。適応せざるをえない。
ぱちゅりーが空を見上げ、口を開く。
最初は途中で気絶していた。だが、今は一応最後まで走り終えることができる。れみり
ゃの身体は、この地獄に適応しようとしていた。適応せざるをえない。
ぱちゅりーが空を見上げ、口を開く。
「ふらんがしゅぎょうしているらしいわ」
「う?」
「う?」
れみりゃは妹を思い浮かべた。
妹のふらん。正確には姉だが、れみりゃにとって年齢は関係なくふらんは妹だ。可愛く元
気な妹だが、理不尽な暴力が玉に瑕だった。いつもいきなり思いついたように殴りかかっ
てくるふらん。思い返してみると、久しく殴られていない気がする。
妹のふらん。正確には姉だが、れみりゃにとって年齢は関係なくふらんは妹だ。可愛く元
気な妹だが、理不尽な暴力が玉に瑕だった。いつもいきなり思いついたように殴りかかっ
てくるふらん。思い返してみると、久しく殴られていない気がする。
「ふらん、が……? しゅぎょう……?」
嫌な予感がれみりゃの背を撫でる。
その予感は的中した。最悪な形で。
その予感は的中した。最悪な形で。
「おばあちゃんのところのめーりんにでしいりしたわ。むきゅ。あのめーりんはぱちぇのらい
ばるなの。とってもつよいわよ。ふらんもきっとものすごくなってくるわね」
ばるなの。とってもつよいわよ。ふらんもきっとものすごくなってくるわね」
重機のような腕を動かしながら、ぱちゅりーが獰猛な微笑を見せる。
「それはたいへんなんだど……」
ふらんよりも強くなろうとしているのに、ふらんはさらに強くなってしまう。必死に鍛えても、
ふらんがさらに強くなっていては、意味がない。
ぱちゅりーが大きく腕を振る。
ふらんがさらに強くなっていては、意味がない。
ぱちゅりーが大きく腕を振る。
「そうね、たいへんよ。だから、ぱちぇのとっておきをおしえてあげるわ。れみぃにおんそく
のせかいをみせてあげる。これでふらんもこなごなよ!」
「おん、そく……?」
のせかいをみせてあげる。これでふらんもこなごなよ!」
「おん、そく……?」
音速。
その単語に、れみりゃは嫌な予感しか覚えなかった。
その単語に、れみりゃは嫌な予感しか覚えなかった。
賽の河原にて。
れみりゃは石に座ってため息を付いていた。
れみりゃは石に座ってため息を付いていた。
「こぶしでおんそくこえるって、むちゃなんだど……」
ぱちゅりーが見せた音速。最大速度が音速に達する無茶苦茶な突きだった。曰く、全身
を無数の関節として加速する。ぱちゅりーが拳を突き出した瞬間大爆発が起り、れみりゃ
はまたここに来ていた。超音速拳の余波で吹っ飛ばされたらしい。
を無数の関節として加速する。ぱちゅりーが拳を突き出した瞬間大爆発が起り、れみりゃ
はまたここに来ていた。超音速拳の余波で吹っ飛ばされたらしい。
「というか、なんでれみぃはこんなことしてるんだど……? れみぃはただ、ふらんといっし
ょになかよくくらしたいだけなんだどー……」
ょになかよくくらしたいだけなんだどー……」
れみりゃの前にはこまちが座っていた。横に鎌が置いてある。
「まあ、こまちにはよくわからないけど、あんたもたいへんだねー。まいにちいったりきたり。
いまはてもあいてるしひまだから、ぐちくらいはきいてあげるよ」
「ありがとなんだどー」
いまはてもあいてるしひまだから、ぐちくらいはきいてあげるよ」
「ありがとなんだどー」
「どうしてこんなことになってるんだど……?」
れみりゃは小声で自問した。
一ヶ月半の鍛錬を経て、れみりゃの筋肉は成長していた。ぱちゅりーのような異様な形
ではないが、街路樹の枝程度には逞しくなっている。以前のふらんと戦ったらさほど苦労
もなく勝てる。その程度には成長していた。
一ヶ月半の鍛錬を経て、れみりゃの筋肉は成長していた。ぱちゅりーのような異様な形
ではないが、街路樹の枝程度には逞しくなっている。以前のふらんと戦ったらさほど苦労
もなく勝てる。その程度には成長していた。
「おねえさま、ひさしぶりね」
正面に目を向けると、ふらんがいた。前に見た時よりも一回り細くなっていた。どのような
修行をしたのかは分からない。痩せたとは違う。窶れたわけでもない。鋼鉄を削り、研ぎ、
一振りの刃に変えたような変化だった。
修行をしたのかは分からない。痩せたとは違う。窶れたわけでもない。鋼鉄を削り、研ぎ、
一振りの刃に変えたような変化だった。
「あのぶたまんじゅうが、ずいぶんとたくましくなったみたいだけど、ふらんはもーっとつよく
なったわ。だから、しね! ぶちまけてしね! ごみのようにしね! そしてもげろ!」
なったわ。だから、しね! ぶちまけてしね! ごみのようにしね! そしてもげろ!」
ふらんは満面の笑顔で親指を真下に向ける。
ぱたぱたと嬉しそうに羽を動かしていた。
ぱたぱたと嬉しそうに羽を動かしていた。
「がんばりなさい、れみぃ! たたきつぶしてやるのよ!」
「おう、れみりゃ。一応お前もうちの看板背負ってるんだ。負けるんじゃないぞ」
「おう、れみりゃ。一応お前もうちの看板背負ってるんだ。負けるんじゃないぞ」
れみりゃの後ろの応援している父親やぱちゅりー。
「ふぇっへっへ。試し割の相手としちゃぁ上等じゃないか。捻ってやりな、ふらん」
「ちゅーごくよんせんねんのれきし、そのちからをみせてやるじゃお」
「ちゅーごくよんせんねんのれきし、そのちからをみせてやるじゃお」
ふらんの後ろでは祖母と老めーりんが応援をしていた。
近くにある運動公園にて、れみりゃとふらんは対峙している。色々あった末に姉妹の決
着を付けると決闘の場が用意された。れみりゃは遠回しに止めさせようとしたが、誰も相手
にせず今に至る。もはや引き返せない。
ただならぬ雰囲気に野次馬も集まりつつあった。
近くにある運動公園にて、れみりゃとふらんは対峙している。色々あった末に姉妹の決
着を付けると決闘の場が用意された。れみりゃは遠回しに止めさせようとしたが、誰も相手
にせず今に至る。もはや引き返せない。
ただならぬ雰囲気に野次馬も集まりつつあった。
「審判は俺だ」
れみりゃとふらんの間には、飼い主の男が立っている。
「勝った方には洋菓子屋サクヤのカスタードプリンご馳走してやるぞ」
「さくやぷでぃ~んぐ……。ごくり」
「さくやぷでぃ~んぐ……。ごくり」
出てきた単語に、れみりゃは涎を呑み込んだ。
洋菓子屋サクヤ。近くにある有名なお菓子屋で、さくやがマスコットをしている。そのプリ
ンの味は絶品で、遠くから買いに来る者も多い。れみりゃとふらんは一口だけ食べた事が
ある。その時はあまりの美味しさに気絶しかけた。それほど美味しいのだ。
洋菓子屋サクヤ。近くにある有名なお菓子屋で、さくやがマスコットをしている。そのプリ
ンの味は絶品で、遠くから買いに来る者も多い。れみりゃとふらんは一口だけ食べた事が
ある。その時はあまりの美味しさに気絶しかけた。それほど美味しいのだ。
「あははは! ぷでぃーんぐはふらんがいただくわ!」
瞳に赤い輝きを灯し、ふらんが牙を見せる。
「わかったど……」
れみりゃは右手を握り込んだ。小指から人差し指まで、緩く握り締める。余計な力は入れ
ず、だが気は緩めずに。体内の謎肉が熱を帯びるのが分かった。
ず、だが気は緩めずに。体内の謎肉が熱を帯びるのが分かった。
「こうなったら、やってやるんだどおおおお! ふらんもたおして、おねえさまのカリスマをと
りもどすんだど! それから、さくやぷでぃ~んぐもいただくんだどおおお!」
りもどすんだど! それから、さくやぷでぃ~んぐもいただくんだどおおお!」
れみりゃが駆け出した。
胴付きれみりゃののたのた走りではない。しっかりと地面を踏みしめ、勢いよく地面を蹴
り、身体を前へと撃ち出す疾走。小さな羽がなびく。修行の成果だった。
胴付きれみりゃののたのた走りではない。しっかりと地面を踏みしめ、勢いよく地面を蹴
り、身体を前へと撃ち出す疾走。小さな羽がなびく。修行の成果だった。
「かくごしろおおお、ふらんんっ!」
「おねえさまああ、しねえええ!」
「おねえさまああ、しねえええ!」
ふらんが笑った。
過去SS
anko4193 BGM 真ゲッターロボ
anko4158 お帽子さん、外れてね
anko4147 ぐんまりさ迷子になる
anko4144 いたさなえ
anko4128 ちぇん CV:若本規夫
anko4109 ゆっくり・ボール・ラン 2nd STAGE
anko4108 ぱちゅりーの居場所
以下略
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