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anko4344 ゆっくり病院精神科 カルテ02
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『ゆっくり病院精神科 カルテ02』 57KB
虐待 制裁 自業自得 誤解 飼いゆ 現代 虐待人間 独自設定 暇つぶしにどうぞ
虐待 制裁 自業自得 誤解 飼いゆ 現代 虐待人間 独自設定 暇つぶしにどうぞ
- 登場するゆっくりの思考・体構造・医療に多分の独自解釈が含まれる仕様です。過去作の登場人物・ゆっくりが登場します。
- その他ネタ被り、独自設定、意味不明な箇所など書き捨て御免ということで。
- 暇つぶしにどうぞ。話のネタにしてくれたら幸いです。
ゆっくり病院精神科 カルテ02
「……ゆっくりが長時間ゆっくりできない精神状態に置かれた場合、様々な症例を引き起こす事が確認されています。
そうした一連の症例を総括して非ゆっくり症候群。一般的には簡単に、非ゆっくり症と呼ばれています」
そうした一連の症例を総括して非ゆっくり症候群。一般的には簡単に、非ゆっくり症と呼ばれています」
「あの、先生。それで、どうなんですか? 私のれいむは治るんですか!?」
「結論を先に言うと治療は可能です。ですが、今は飼い主の義務として飼いゆっくりの状態を把握して下さい。
そのうえで治療方法を選択していただきます」
そのうえで治療方法を選択していただきます」
「あ……、その、スミマセン……」
話の腰を折った若い女性は、先急いだ事を恥じる様に頭を下げる。
「先生」と呼ばれた、白衣をまとった白髪混じりの男性は、落ち着いた様子を崩そうともせず説明を再開する。
ここ、ゆっくり病院精神科の診察室では、今日も精神疾患に陥ったゆっくりの診断が行われていた。
カルテへの筆記と同時に続けられる「先生」の説明を、丸椅子に腰掛けた若い女性は落ち着かない様子で伺う。
「先生」と呼ばれた、白衣をまとった白髪混じりの男性は、落ち着いた様子を崩そうともせず説明を再開する。
ここ、ゆっくり病院精神科の診察室では、今日も精神疾患に陥ったゆっくりの診断が行われていた。
カルテへの筆記と同時に続けられる「先生」の説明を、丸椅子に腰掛けた若い女性は落ち着かない様子で伺う。
「広く知られているのは、体内の餡子を吐き出して自ら永遠にゆっくりしようとするショック症状なのですが、
程度の差はあれど幼児退行や精神逃避に至る事例もあるのです。
特に重度の精神逃避に陥った場合、自ら餡子を吐く事はおろか、一切の生体反射すら放棄してしまいます」
程度の差はあれど幼児退行や精神逃避に至る事例もあるのです。
特に重度の精神逃避に陥った場合、自ら餡子を吐く事はおろか、一切の生体反射すら放棄してしまいます」
「……先生、精神逃避、とは?」
女性の質問には答えず「先生」はゆっくり立ち上がると、机上の透明な箱に入れられていた1頭のゆっくりれいむを取り出した。
途端、静かな室内に溢れ出す奇声――。
途端、静かな室内に溢れ出す奇声――。
「ぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺ――」
「過去に、精神崩壊と呼ばれていた症例のことです。
あなたの飼いゆっくりであるれいむちゃんは、重度の精神逃避の状態に置かれています」
あなたの飼いゆっくりであるれいむちゃんは、重度の精神逃避の状態に置かれています」
そのれいむは、二つの眼球をバラバラに巡らし、身体を無作為に揺らしながら奇声を上げ続けていた。
涎や「しーしー」を滴らせつつも意図を感じさせる仕草は一切取らず、心ここに在らずといった状態を全身で表している。
赤いリボンのお飾りに据えられた金バッジは不似合いな輝きを放つばかり。
若い女性は、れいむの不気味極まりない姿に顔を背ける。
涎や「しーしー」を滴らせつつも意図を感じさせる仕草は一切取らず、心ここに在らずといった状態を全身で表している。
赤いリボンのお飾りに据えられた金バッジは不似合いな輝きを放つばかり。
若い女性は、れいむの不気味極まりない姿に顔を背ける。
「非ゆっくり症の要因は、外部から中枢餡に送られ続けたゆっくりできない情報によります。痛覚や刺激、恐怖などですね。
あまりにゆっくりできず絶望に至ったゆっくりの自我は、防衛本能を働かせて外部からの情報伝達を遮断する場合があります。
こうして精神逃避に成功したゆっくりの自我は、中枢餡内部で自ら想い描くゆっくりに浸り続けるのです」
あまりにゆっくりできず絶望に至ったゆっくりの自我は、防衛本能を働かせて外部からの情報伝達を遮断する場合があります。
こうして精神逃避に成功したゆっくりの自我は、中枢餡内部で自ら想い描くゆっくりに浸り続けるのです」
「つまり、私のれいむの心は、中枢餡の中に引きこもってゆっくりしてる、ということですか?」
「察しがいいですね。簡単に言うとそのとおりです。
一見精神崩壊してるように見えても、精神逃避に成功したゆっくりは自我を保ち続けている事が判明しているのです。
さ、れいむちゃん。お姉さんと話を続けるから、ゆっくりしててね」
一見精神崩壊してるように見えても、精神逃避に成功したゆっくりは自我を保ち続けている事が判明しているのです。
さ、れいむちゃん。お姉さんと話を続けるから、ゆっくりしててね」
「ぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱ――」
れいむは「先生」の手によって再び透明な箱に納められた。
診察室が静寂を取り戻すと同時に、女性はやや緊張の解けた表情を浮かべた。
診察室が静寂を取り戻すと同時に、女性はやや緊張の解けた表情を浮かべた。
「そ、それじゃあ先生、私のれいむは元に戻るんですか!? 壊れていないんですか!?」
「ええ。ここからは治療方法について説明しましょうか。
最も堅実なのは、最近認可された移植用ゆっくりを用い、中枢餡の記憶分野を表層から若干ずつ交換する方法です。
非ゆっくり症の要因となった記憶を交換中に混ぜ合わせて曖昧なものにし、防衛本能を解除させるのです」
最も堅実なのは、最近認可された移植用ゆっくりを用い、中枢餡の記憶分野を表層から若干ずつ交換する方法です。
非ゆっくり症の要因となった記憶を交換中に混ぜ合わせて曖昧なものにし、防衛本能を解除させるのです」
「記憶を交換、ですか? 以前の記憶に影響はないんですか!?」
「精神逃避の直前の記憶については若干失われます。ですが御安心ください、大部分の記憶は――」
「そ、それは困ります!! 記憶が無くならないように元に戻す事は出来ないんですかっ!?」
女性は激しい感情を顕わにしながら立ち上がる。遅れてガタンッ!と鳴り響く、椅子が倒れた音。
その取り乱し様に「先生」は一瞬怪訝な表情を浮かべるも、落ち着いた姿勢は崩さなかった。
その取り乱し様に「先生」は一瞬怪訝な表情を浮かべるも、落ち着いた姿勢は崩さなかった。
「もうひとつの治療方法は、れいむちゃんの自我に直接干渉する方法です。しかし、これは完全な治療法ではありません。
最悪の場合、れいむちゃん自身が存在を保てなくなる可能性があります。
この治療方法には、飼い主であるあなたの同意書が必要となります」
最悪の場合、れいむちゃん自身が存在を保てなくなる可能性があります。
この治療方法には、飼い主であるあなたの同意書が必要となります」
「記憶は……、大丈夫なんですか……?」
「現在までに、この治療法で記憶障害は報告されていません。
健康なゆっくりと同様、ゆっくりできなかった記憶を現実逃避しやすい程度で容易く思い出せます。
私からの説明は以上となります。他に質問があれば、御遠慮なさらずに」
健康なゆっくりと同様、ゆっくりできなかった記憶を現実逃避しやすい程度で容易く思い出せます。
私からの説明は以上となります。他に質問があれば、御遠慮なさらずに」
芯の通った「先生」の言葉に、しばしの間、女性は二の句を継ぐ事ができずにいた。
壁時計の長針が5分の経過を刻もうとした時、女性はようやく口を開く。
壁時計の長針が5分の経過を刻もうとした時、女性はようやく口を開く。
「先生、その方法で、是非お願いします!」
透明な箱の中では、れいむが視線をバラバラに巡らし、身体を不気味に揺らし続けていた。
自らの飼い主と「先生」のやり取りなど気に留める素振りも見せずに――。
自らの飼い主と「先生」のやり取りなど気に留める素振りも見せずに――。
れいむ:ゆ~~~ん!
れいむ:れいむ、とっっっっっても、ゆっくりしてるよぉぉぉ!!
れいむ:しあわせーーーーーっっ! だよぉ!!
れいむ:れいむ、とっっっっっても、ゆっくりしてるよぉぉぉ!!
れいむ:しあわせーーーーーっっ! だよぉ!!
れいむの自我は、何者にも侵されないゆっくり心地に包まれながら、想うままの「ゆっくり」を堪能していた。
そこはゆっくりできない事象は一切存在しない、れいむだけの「ゆっくりぷれいす」なのである。
そこはゆっくりできない事象は一切存在しない、れいむだけの「ゆっくりぷれいす」なのである。
自らの容姿がゆっくりしてると想えば、絶世の美ゆっくりとなったれいむ自身を外側から存分に堪能する事ができる。
ゆっくり遊びたいと想えば、数々のオモチャを自由自在に扱って楽しむ事ができる。
ゆっくり遊びたいと想えば、数々のオモチャを自由自在に扱って楽しむ事ができる。
空を飛びたいと想えば、自由自在に青空を舞い、白雲の上を舞い跳ねる事ができる。
賛辞が聞きたいと想えば、あらゆるゆっくり達や「にんげんさん」達が現れて、れいむをゆっくりしてると称え、跪く。
賛辞が聞きたいと想えば、あらゆるゆっくり達や「にんげんさん」達が現れて、れいむをゆっくりしてると称え、跪く。
家族が欲しいと想えば、その都度想い描いた美ゆっくり達との「おちびちゃん」をたくさん作り、皆でゆっくりできる。
ゆっくり落ち着きたいと想えば、山の頂にある巨大な神社の境内から世界を見降ろす事ができる。
ゆっくり落ち着きたいと想えば、山の頂にある巨大な神社の境内から世界を見降ろす事ができる。
そして「あまあま」が食べたいと想えば、視界を埋め尽くす程の甘味の数々を味わう事ができる。
れいむにとって、それは何よりもゆっくりできる「しあわせー」なのだ。
れいむにとって、それは何よりもゆっくりできる「しあわせー」なのだ。
れいむ:ゆふふ~っ! いちごさんがたっくさん!のったけーきさん、れいむにゆっくりたべられてね!
れいむ:むーしゃむーしゃっ! ……し、し、し、し・あ・わ・せぇ~~~~~っっ!! ぱねぇっ!!
れいむ:ゆぅ~~んっ! さすがはおねーさんがつくったけーきさんだねっ! おほしさまみっつあげるよぉ~!!
れいむ:さあ、どんどんつくってね! ぜんぶれいむがむーしゃむーしゃしてあげるからねえええっ!!
れいむ:むーしゃむーしゃっ! ……し、し、し、し・あ・わ・せぇ~~~~~っっ!! ぱねぇっ!!
れいむ:ゆぅ~~んっ! さすがはおねーさんがつくったけーきさんだねっ! おほしさまみっつあげるよぉ~!!
れいむ:さあ、どんどんつくってね! ぜんぶれいむがむーしゃむーしゃしてあげるからねえええっ!!
「ぱてぃしえさん」である飼い主の「おねーさん」。その手から生み出される「あまあま」は、れいむの大好物である。
その味は至高至極であり、飼いゆっくり教育による行儀よい食べ方では「しあわせー」を表現しきれず、苦痛ですらあった。
今や思うがままに「あまあま」を食し、ありったけの「しあわせー」を存分に叫び、れいむはとてもゆっくりする事ができるのだ。
その味は至高至極であり、飼いゆっくり教育による行儀よい食べ方では「しあわせー」を表現しきれず、苦痛ですらあった。
今や思うがままに「あまあま」を食し、ありったけの「しあわせー」を存分に叫び、れいむはとてもゆっくりする事ができるのだ。
そこでれいむは、さらにゆっくりしようと、ある物を思い浮かべた。
れいむ:ゆっふっふぅぅっ! ふうっいんをとくよ!! れいむのたからものさん、ゆっくりしていってねぇぇぇ!!
れいむの傍らに出現したその塊は、数々の安っぽい輝きを放つプラスチック製のアクセサリーや小物の数々であった。
「おねーさん」に飼われて以来、遊び道具のオモチャから取り分けたり、御褒美に与えられたりして集めた物である。
おもむろにれいむは、「たからものさん」の中から一つの輝きをもみ上げで取り上げた。
「おねーさん」に飼われて以来、遊び道具のオモチャから取り分けたり、御褒美に与えられたりして集めた物である。
おもむろにれいむは、「たからものさん」の中から一つの輝きをもみ上げで取り上げた。
れいむ:ゆふふふっ!! さいっこう!のたからものさんだよぉ!! これがあれば、あまあまたべっほうっだい!なんだよっ!
れいむ:さあおねーさん、さっさとあまあまをつくってね。たっっっくさん!でいいよおおおっっ!!
れいむ:さあおねーさん、さっさとあまあまをつくってね。たっっっくさん!でいいよおおおっっ!!
「せ、先生! こちらかられいむに話しかける事はできないんですか!? 画像は表示できないんですか!?」
「残念ながら、今の技術では思ってる事をモニターし、単純な情報を与えるだけで精一杯です。
複雑な情報は伝える事も表示する事も出来ません」
複雑な情報は伝える事も表示する事も出来ません」
「くっ!! れいむ……!!」
れいむの飼い主である若い女性、すなわち「おねーさん」の、もどかしい想いを込めた声が処置室内に響く。
「おねーさん」はれいむの「おつむ」側に据え置かれた機械のモニターを、苦々しい表情で睨み続けていた。
「先生」は「おねーさん」の激情に動じず、「ふわふわべっどさん」に固定されたれいむをひと撫でする。
「おねーさん」はれいむの「おつむ」側に据え置かれた機械のモニターを、苦々しい表情で睨み続けていた。
「先生」は「おねーさん」の激情に動じず、「ふわふわべっどさん」に固定されたれいむをひと撫でする。
フリル付きの「おようふく」を穿かされたれいむの周囲では、照明やBGM、匂いに至るまでゆっくりした雰囲気を演出している。
しかし、その「おつむ」には金属製のヘルメットがすっぽり被せられ、ある種の威圧感を放っていた。
しかし、その「おつむ」には金属製のヘルメットがすっぽり被せられ、ある種の威圧感を放っていた。
れいむは相変わらず視線をデタラメに巡らせ身体を震わせ続けていたが、奇声を発する事はなかった。
無言でさえずる度、喉奥にプラスチック製の丸い物体がチラチラと垣間見え、それが栓となり発声を阻害しているのだ。
無言でさえずる度、喉奥にプラスチック製の丸い物体がチラチラと垣間見え、それが栓となり発声を阻害しているのだ。
れいむ:むーしゃむーしゃむーしゃぁっ!! し、ししし、じ・あ・わ・ぜ~~~っ!! さいっこう!にうめぇっ!!
れいむ:おねーさん、なにをゆっくりしてるのぉ!? つぎはあっぽぅぱいさんをちょうだいね! いますぐでいいよっ!!
れいむ:おねーさん、なにをゆっくりしてるのぉ!? つぎはあっぽぅぱいさんをちょうだいね! いますぐでいいよっ!!
モニターにはれいむの体調を示す数々のグラフ類の他、れいむの思考を現すテキストが次々表示されていた。
新しい表示が現れる度、「おねーさん」は唇を血の気が引くほど噛み締める。
一通りの準備が終わったのか、手を休めた「先生」は「おねーさん」に向き直る。
新しい表示が現れる度、「おねーさん」は唇を血の気が引くほど噛み締める。
一通りの準備が終わったのか、手を休めた「先生」は「おねーさん」に向き直る。
「それでは改めて治療の説明をしましょう。
精神逃避中であるれいむちゃんの自我はモニターに表示される通り、中枢餡の内側で非常にゆっくりしています。
そこで、中枢餡の内側に向かって直接刺激を与え、自我をゆっくりできない状態に置きます」
精神逃避中であるれいむちゃんの自我はモニターに表示される通り、中枢餡の内側で非常にゆっくりしています。
そこで、中枢餡の内側に向かって直接刺激を与え、自我をゆっくりできない状態に置きます」
「直接、刺激……。できるんですか? そんなことが」
「おねーさん」の疑問に、無言で頷く「先生」。
「先生」は先程れいむを撫でた手で、鈍く輝く金属製のヘルメットを撫でる。
「先生」は先程れいむを撫でた手で、鈍く輝く金属製のヘルメットを撫でる。
「今回用いる治療法は、中枢餡電磁刺激法と呼ばれています。
これは数十種類の電磁波を中枢餡内部に向けて発信し、各波長の組み合わせによって擬似的に様々な刺激を感じさせます」
これは数十種類の電磁波を中枢餡内部に向けて発信し、各波長の組み合わせによって擬似的に様々な刺激を感じさせます」
「電磁波……。本当に安全なんですか?」
「出力自体は携帯電話よりも低いので問題ありません。
電磁波の組み合わせによる刺激で、れいむちゃんの自我に、中枢餡にこもったままではゆっくりできないと思考させます」
電磁波の組み合わせによる刺激で、れいむちゃんの自我に、中枢餡にこもったままではゆっくりできないと思考させます」
「ゆっくりできなくなると、どうなるんですか?」
「ゆっくりできなくなった自我は、今度はゆっくりの在りかを外側の現実世界に求めるのです。
その為に、現在れいむちゃんの身体の周囲は、ゆっくりにとって非常にゆっくりできる環境を整えてあります。
自我が遮断された情報伝達を回復させ、外部のゆっくりを感じ取ることができれば、治療は完了です」
その為に、現在れいむちゃんの身体の周囲は、ゆっくりにとって非常にゆっくりできる環境を整えてあります。
自我が遮断された情報伝達を回復させ、外部のゆっくりを感じ取ることができれば、治療は完了です」
「それでれいむは元に戻るんですね!」
「改めて言っておきますが、決して成功するわけではありません。
強すぎる刺激を与えたり、現実の方がゆっくりできないという思い込みが強すぎたりすれば、自我はショック状態に陥ります。
ショック症状に対する吐餡や排泄等の防止措置はしてありますが、自我が外部のゆっくりに気付かなければ――」
強すぎる刺激を与えたり、現実の方がゆっくりできないという思い込みが強すぎたりすれば、自我はショック状態に陥ります。
ショック症状に対する吐餡や排泄等の防止措置はしてありますが、自我が外部のゆっくりに気付かなければ――」
「気付かなければ、どうなるんですか!?」
説明の度に一喜一憂していた「おねーさん」は、思わず「先生」の言葉を遮ってしまう。
自らの大声にハッとする「おねーさん」の様子を伺いつつ、一呼吸おいて、「先生」は説明を締めくくる。
自らの大声にハッとする「おねーさん」の様子を伺いつつ、一呼吸おいて、「先生」は説明を締めくくる。
「れいむちゃんの自我は本当に崩壊し、れいむちゃんは、ただの饅頭になってしまうのです」
「――――!!」
全身を強張らせ、あたかも自我が崩壊したかの如く放心してしまう「おねーさん」。
「先生」は静かに深く息を吸い、「おねーさん」の緊張を解くように、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「先生」は静かに深く息を吸い、「おねーさん」の緊張を解くように、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「今からでもリスクの少ない治療方法を選んでいただいても構いません。
あなたにとって、れいむちゃんがあなたと育んだ記憶は、リスクと引き換えにしても大切なのですね?」
あなたにとって、れいむちゃんがあなたと育んだ記憶は、リスクと引き換えにしても大切なのですね?」
「……ハイ。れいむは、私の作るお菓子をとても美味しそうに食べて、私にパティシェとしての自信をつけさせました。
私のお菓子は勤め先のホテルでも認められて、夢だった独立への道も開けてきたんです。
そんな私と将来を共にしたいって人とも先日婚約して……。
でも、……ああ! このままれいむが元に戻らないと……!!」
私のお菓子は勤め先のホテルでも認められて、夢だった独立への道も開けてきたんです。
そんな私と将来を共にしたいって人とも先日婚約して……。
でも、……ああ! このままれいむが元に戻らないと……!!」
「…………」
「先生! 是非、この治療法でお願いします! れいむを元通りにして下さいっ!!」
大きく頭を下げた「おねーさん」に、「先生」は、それ以上は語りかけなかった。
れいむ:ゆっふふ~~~んっ! たいっぼう!のばけつぷりんあらもーどさんだよ~~!!
れいむ:むっちゃむっちゃむっちゃーっっ!! これうめぇ!! まじぱねぇーっ!!
れいむ:ぷはぁっ! とんねるさんのできあがりだよ~! し・あ・わ・せぇ~~~っっ!!
れいむ:むっちゃむっちゃむっちゃーっっ!! これうめぇ!! まじぱねぇーっ!!
れいむ:ぷはぁっ! とんねるさんのできあがりだよ~! し・あ・わ・せぇ~~~っっ!!
れいむは肥大した妄想が生んだ巨大なプリン・アラモードに身を埋め、存分に貪っていた。
全身「あまあま」と一体化したような快楽に、有頂天となるれいむの自我。
これが、れいむが浸ることができた、最後の「しあわせー」だった。
全身「あまあま」と一体化したような快楽に、有頂天となるれいむの自我。
これが、れいむが浸ることができた、最後の「しあわせー」だった。
「それではれいむちゃんの治療を開始します。
これから少しずつ、れいむちゃんの自我に様々な刺激を与えていきます。
れいむちゃんの自我が戻った瞬間の為に、側についていて下さい」
これから少しずつ、れいむちゃんの自我に様々な刺激を与えていきます。
れいむちゃんの自我が戻った瞬間の為に、側についていて下さい」
「わかりました」
「おねーさん」が頷くのを確認した「先生」は、ヘルメットから延びるケーブルでれいむの自我と繋がっている機械の前に立つ。
次いでコントロールパネル上に並んでいるダイヤルの一つを摘まみ、ほんのわずか右側に回す。
すると――、
次いでコントロールパネル上に並んでいるダイヤルの一つを摘まみ、ほんのわずか右側に回す。
すると――、
れいむ:めっちゃじ・あ・わ・ぜ~~~~~っっ!! さいっこうにぱねぇぇ!! もっとあまあまちょうだ…………ゆ?
れいむ:なにこれ? なんだかかゆいかゆいだよ? ゆっくりできないよ!?
れいむ:おねーさん! だれかぁ! れいむのかゆいかゆいをどうにかしてね! いますぐでいいよ!!
れいむ:なにこれ? なんだかかゆいかゆいだよ? ゆっくりできないよ!?
れいむ:おねーさん! だれかぁ! れいむのかゆいかゆいをどうにかしてね! いますぐでいいよ!!
れいむのゆっくりしきった精神状態を現していたテキスト表示が一変した。
明らかに不愉快である事を示すテキストが次々更新される。
「おねーさん」はモニターを眺めつつ、驚きを込めて声を上げた。
明らかに不愉快である事を示すテキストが次々更新される。
「おねーさん」はモニターを眺めつつ、驚きを込めて声を上げた。
「先生!」
「先ずは痛覚を微弱に与えて痒みを感じさせています。自我だけのれいむちゃんには対処する術がありません。
中枢餡の外側にゆっくりを求めるまで、こうやってじっくりと様々な刺激を与え続けます」
中枢餡の外側にゆっくりを求めるまで、こうやってじっくりと様々な刺激を与え続けます」
続いて「先生」は、最初のダイヤルを戻しつつ別のダイヤルを回し、その作業を繰り返していく。
モニター上では、れいむが与えられた新たな刺激でゆっくりできなくなる様子が表示されていった。
モニター上では、れいむが与えられた新たな刺激でゆっくりできなくなる様子が表示されていった。
もはやれいむの自我は、何の「ゆっくり」の姿も想像する事はできなかった。
周囲では様々な色の光が眩しく明滅し、その度に様々な苦痛が絶え間なく自我を揺さぶるのだ。
周囲では様々な色の光が眩しく明滅し、その度に様々な苦痛が絶え間なく自我を揺さぶるのだ。
れいむ:かゆいっ!かゆいかゆいがゆいいいいいっ!! ゆんやあああああああっ!!
れいむ:なにもないっ! なにもかくものがないよおおおっ!! ゆぴゃああああいいいいいっ!!
れいむ:なにもないっ! なにもかくものがないよおおおっ!! ゆぴゃああああいいいいいっ!!
最初に訪れたのは全身を包むような痒さだった。その瞬間全ての「ゆっくり」は消え失せ、想い描く事ができなくなった。
掻いて痒みを除こうにも、自身の立ち位置はおろか身体すら認識できず、ただ全身を侵す痒みに悲鳴を上げるしかなかった。
不意に、痒みが収まったと思えば、別の不快感が自身を包む。
掻いて痒みを除こうにも、自身の立ち位置はおろか身体すら認識できず、ただ全身を侵す痒みに悲鳴を上げるしかなかった。
不意に、痒みが収まったと思えば、別の不快感が自身を包む。
れいむ:な、なんだかつめたいよ! ぬれてるのぉ!? おみずさんはいやだよおおおおおっ!! とけるうううううっ!!
れいむ:やだやだいやぢゃあああああっ!! たすけてだずげでだじゅげでえええええっ!!
れいむ:やだやだいやぢゃあああああっ!! たすけてだずげでだじゅげでえええええっ!!
それは全身を冷水に浸された感触だった。ゆっくりにとって濡れ過ぎると言う事は、命にかかわる不快感の極みである。
脱出を図ろうにも、活路など一切見いだせない。れいむの自我は一時の間、溶けてしまう恐怖と共に冷たすぎる感触を味わった。
脱出を図ろうにも、活路など一切見いだせない。れいむの自我は一時の間、溶けてしまう恐怖と共に冷たすぎる感触を味わった。
れいむ:ゆんやぁ!? からいっ!! ゆげっぇぇぇぇっ!! ごれめっぢゃがれえええええっ!!
れいむ:おねーざあああんっ!! ゆっぐりじないであまあまもっでぎでええええっっ!! がれええええっ!!
れいむ:おねーざあああんっ!! ゆっぐりじないであまあまもっでぎでええええっっ!! がれええええっ!!
「あまあま」を食した時の柔らかい快感とは対極の、ピリピリと刺すような不快感がジワリと広がっていく。
何を食した訳でもないのだが、れいむは確かに辛味を感じ取り、その刺激の激しさに意識がグルグルと転がり回る。
何を食した訳でもないのだが、れいむは確かに辛味を感じ取り、その刺激の激しさに意識がグルグルと転がり回る。
何一つ「ゆっくり」する事ができない。ここはれいむの「ゆっくりぷれいす」なのに。
混乱するれいむは成す術の無いまま、新たな刺激に自我そのものを身悶いさせる――。
混乱するれいむは成す術の無いまま、新たな刺激に自我そのものを身悶いさせる――。
「……このように、れいむちゃんが刺激から逃れる想像をさせないため、次々と刺激の種類を変えていきます。
常にゆっくり出来ない状態に置かれたれいむちゃんの自我が外に意識を向けるまで、出力を上げながら続けていきます」
常にゆっくり出来ない状態に置かれたれいむちゃんの自我が外に意識を向けるまで、出力を上げながら続けていきます」
「それで、あとどのぐらいでれいむは元に戻るんですか?」
「れいむちゃん次第です。精神逃避を行った際のゆっくりできないという思い込みが強い程、より強い刺激が必要になるでしょう。
ですが、最初から強い刺激を与えると精神崩壊に至る危険があるので、弱い刺激から与えていき、数日をかけて――」
ですが、最初から強い刺激を与えると精神崩壊に至る危険があるので、弱い刺激から与えていき、数日をかけて――」
「そ、そんなっ!? 今すぐどうにかならないんですか!?」
「抜き差しならない事情があるようですが、この順序がリスクを最小にする方法で――」
ゴンゴンゴンッ!! ガチャンッ!!
「いよーう! ここかぁ!? またウチのまりさが壊れたから直してもらいに来たぜぇ!!」
「ぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱ――」
荒々しいノックに間を置かず、激しく開かれる扉。室内に反響する野太い声、次いで奇声。
開け放たれた処置室の入り口には、上品な色合いの黒いスーツを身にまとった大男が、力強く佇んでいた。
小脇にはボロボロのゆっくりまりさが抱えられており、目玉をグルグル回して奇声を上げる姿は治療中のれいむと同様だった。
開け放たれた処置室の入り口には、上品な色合いの黒いスーツを身にまとった大男が、力強く佇んでいた。
小脇にはボロボロのゆっくりまりさが抱えられており、目玉をグルグル回して奇声を上げる姿は治療中のれいむと同様だった。
突然の場違い極まる来訪者に、「おねーさん」は焦る気持ちを掻き消され、呆然としてしまう。
一方で「先生」は、大男の出現に慄くどころか、ツカツカと靴音を立てて処置室の入り口に向かう。
一方で「先生」は、大男の出現に慄くどころか、ツカツカと靴音を立てて処置室の入り口に向かう。
「こぉのバカ野郎ッッ! 受け付けはとっくに終わってるだろうが!! とっとと失せろ!!」
「まぁそう言うなって。急患だよ急患。頼むよ、なァ?」
「断固断るッ! 今は大事な治療中だ! 後日窓口を通せっ!!」
「固ぇ事言うなよぉ。次でいいからさ、オレとお前の仲だろぉ?」
「誰もお前さんのようなヤクザ者と慣れ合いたくは無いんだがなッ!」
「先生」と大男のやり取りは続く。
我を取り戻した「おねーさん」は、進展しない治療行為に再度焦りを募らせたか、奥歯を噛み締める。
居ても立ってもいられず視線を泳がせた「おねーさん」の目は、先程「先生」が操作していた機械のコンパネを視界に入れた。
我を取り戻した「おねーさん」は、進展しない治療行為に再度焦りを募らせたか、奥歯を噛み締める。
居ても立ってもいられず視線を泳がせた「おねーさん」の目は、先程「先生」が操作していた機械のコンパネを視界に入れた。
「……、…………、……………………ッ!!」
わずかな間を置いて、「おねーさん」の身体はユラリと立ち上がり、コンパネに向かって両手を伸ばした――。
一方で、罵り合いに夢中になっていた男2人であったが、不意に大男の方が「先生」の背後に気を引かれる。
一方で、罵り合いに夢中になっていた男2人であったが、不意に大男の方が「先生」の背後に気を引かれる。
「……ところでなあオイ、機械を操作してるあの姉ちゃん、新しい助手か?」
「うん? ここには治療中の飼いゆっくりの飼い主さんしか……、
…………!?」
…………!?」
慌てて振り返る「先生」。
その目に映ったのは、鬼気迫る表情でモニターを見つめつつ、コンパネ上の摘まみをデタラメに回す「おねーさん」の姿だった。
れいむの姿に変化は見て取れないものの、モニターに表示されるれいむの思考は、あまりにゆっくりできていない事を示していた。
その目に映ったのは、鬼気迫る表情でモニターを見つめつつ、コンパネ上の摘まみをデタラメに回す「おねーさん」の姿だった。
れいむの姿に変化は見て取れないものの、モニターに表示されるれいむの思考は、あまりにゆっくりできていない事を示していた。
れいむ:いだいいだいいだいいいlkcjっっ!! おぼにぜんじんがいだいいqwdふぇkvっっ!!
れいむ:ぶぢゅりゅうううdsfんldhjっっ!! ぢゅぶ、れ、りゅうううsdjんvbgfっっ!!
れいむ:ゆぎゃああああsdfgいfckどsっっ!! あぢゅいいいぢhfヴwfmふぉmっっ!!
れいむ:ぢぢぢぢぎれdふぇsfrっっ!! ねーじねーじざれでるみだいいいswdfwふぉfgpっっ!!
れいむ:ぶぢゅりゅうううdsfんldhjっっ!! ぢゅぶ、れ、りゅうううsdjんvbgfっっ!!
れいむ:ゆぎゃああああsdfgいfckどsっっ!! あぢゅいいいぢhfヴwfmふぉmっっ!!
れいむ:ぢぢぢぢぎれdふぇsfrっっ!! ねーじねーじざれでるみだいいいswdfwふぉfgpっっ!!
もはや刺激と呼ぶには生ぬるい、純粋な激痛の数々。それらが入れ替わり立ち替わりれいむの自我を弄り続けていた。
体表全てを削ぎ落されるような、大きな力に押し潰されるような、全身を焼かれるような、身体をねじ切られるような激痛の数々。
心理状態を現すテキストも、正確な表示が失われつつあった。
体表全てを削ぎ落されるような、大きな力に押し潰されるような、全身を焼かれるような、身体をねじ切られるような激痛の数々。
心理状態を現すテキストも、正確な表示が失われつつあった。
れいむ:だじゅげでえええljdschっっ!! だれがれいむをだじゅげでええjんbchyふぉdwっっ!!
れいむ:おねーざーnjxkっっ!! おねーざーnぽjwdめをmcっっ!!
れいむ:もうやだあああkぉmっっ!! おうぢがえりゅmdxもあこwめrlklcっっ!!
れいむ:おねーざーnjxkっっ!! おねーざーnぽjwdめをmcっっ!!
れいむ:もうやだあああkぉmっっ!! おうぢがえりゅmdxもあこwめrlklcっっ!!
もはやここは「ゆっくりぷれいす」などではない。地獄そのものだ。
果てなき激痛から逃れようと、れいむの自我はのたうち回りながら「ゆっくり」を探し続け、そして――。
果てなき激痛から逃れようと、れいむの自我はのたうち回りながら「ゆっくり」を探し続け、そして――。
「何て事をっ!! そんな強い刺激を与えては自我が崩壊してしまう! 止めなさい!!」
「やらせて下さい! 時間が無いんですっ!! やらせて下さいぃぃっ!!」
「おねーさん」は「先生」に腕を引かれるも、必死に抵抗してコンパネを操作し続ける。
力づくで引き離す事に早々見切りをつけた「先生」は、機械の裏側にある元電源スイッチに手を伸ばす。
パチンッ、と弾けるような音と共にモニターが黒一色に転じ、れいむの状態を示す情報も断ち切られる。
力づくで引き離す事に早々見切りをつけた「先生」は、機械の裏側にある元電源スイッチに手を伸ばす。
パチンッ、と弾けるような音と共にモニターが黒一色に転じ、れいむの状態を示す情報も断ち切られる。
「ぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴ――」
静寂が訪れた処置室に、大男が抱えるまりさの奇声だけが響き渡る。
「おねーさん」はしばし呆然としたが、突然跳ねるように立ち上がり、「ふわふわべっどさん」に横たわるれいむに掴みかかった。
「おねーさん」はしばし呆然としたが、突然跳ねるように立ち上がり、「ふわふわべっどさん」に横たわるれいむに掴みかかった。
「れいむ! れいむっ!! お願い! 元に戻ってっ! れいむ~~~っっ!!」
声を荒げてれいむの身体を激しく揺さぶる「おねーさん」の傍らに、「先生」が早足で駆け寄る。
そのままの勢いで「先生」は、れいむと「おねーさん」の間に横から身体を滑り込ませた。
次いで両手でれいむの身体を抑えつつ、「おねーさん」の身体を背中で押しのける。
そのままの勢いで「先生」は、れいむと「おねーさん」の間に横から身体を滑り込ませた。
次いで両手でれいむの身体を抑えつつ、「おねーさん」の身体を背中で押しのける。
「治療は強制的に中断しました。免許を持たない者の医療行為は法令違反ですので、下がっていて下さい」
「れいむっ! れいむっ!! れいむぅぅぅっ!!」
「検査をしますので一端離れていて下さ……む?」
背中越しに「おねーさん」の絶叫を聞きつつ、手元に視線を移した「先生」の動きが止まる。
押さえつけていたれいむと、目が合った瞬間の事であった。
れいむの両目は「先生」を真っすぐ見据えていた。おびただしい涙を流しながら。
押さえつけていたれいむと、目が合った瞬間の事であった。
れいむの両目は「先生」を真っすぐ見据えていた。おびただしい涙を流しながら。
「…………れいむちゃん、動かないで、じっとしてるんだよ。飼い主さんも、そのまま動かないで」
「れいむ! れいむぅっ! ……え?」
「先生」の一際落ち着いた神妙な発言に、取り乱していた「おねーさん」も我に返る。
れいむの正面で両手を揃えた「先生」は、ゆっくりと、れいむの口中深くに両手を差し入れる。
れいむの正面で両手を揃えた「先生」は、ゆっくりと、れいむの口中深くに両手を差し入れる。
「ゆ゛っ! がっ! ゆげぇっ!! ……ふひぃ、ふひぃ」
れいむの口から、いかにも苦しそうな濁った悲鳴が放たれた。「先生」はゆっくりと両腕を引く。
口中から抜き出された両手には、くびれた形をしたプラスチック製の丸い物体が掴み取られていた。
疲れきったような表情をしたれいむに、「先生」はそっと語りかける。
口中から抜き出された両手には、くびれた形をしたプラスチック製の丸い物体が掴み取られていた。
疲れきったような表情をしたれいむに、「先生」はそっと語りかける。
「れいむちゃん、ゆっくりしていってね」
「ゆっ……、ゆっくりしていってね!」
元気を絞り出すように、真っすぐ返される返事。
直後、れいむはキョトンと「先生」を見つめるばかりとなった。
直後、れいむはキョトンと「先生」を見つめるばかりとなった。
「どうやら、れいむちゃんの自我は、外側の世界に意識を向ける事ができたようです。奇跡的に、偶然にも、マグレで」
「あっ……、ああ、れいむ……!!」
最後の方は半ば投げやりになってしまった「先生」の言葉だったが、「おねーさん」は全く意に介さなかった。
「先生」と身体を入れ替える様に「おねーさん」はフラフラとれいむに近づき、そっと手を差しのべた。
れいむは、「おねーさん」の姿を確認するや、ブルッと身を震わせる。
「先生」と身体を入れ替える様に「おねーさん」はフラフラとれいむに近づき、そっと手を差しのべた。
れいむは、「おねーさん」の姿を確認するや、ブルッと身を震わせる。
「お、お、おねー、ざん……? ゆ、あ゛あ゛……!!」
「よかった、れいむ。とても怖い夢を見てたのね。もう大丈夫よ」
「おねーさん」はれいむの「おつむ」から金属のヘルメットを外し、れいむの身体を優しく胸元に抱き上げた。
れいむは安堵と恐怖が混ざったような複雑な泣き顔を「おねーさん」に向ける。
れいむは安堵と恐怖が混ざったような複雑な泣き顔を「おねーさん」に向ける。
「お、お、おねーざん、おねーざんおねーざんおねーざんおねーざあああああんっ!!
ごわがっだよおおおっ!! めっぢゃごわがっだよおおおおおっ!! ゆあああああああああああんっっ!!」
ごわがっだよおおおっ!! めっぢゃごわがっだよおおおおおっ!! ゆあああああああああああんっっ!!」
「本当に怖い夢だったのね、もう大丈夫よ。よかった、本当によかったわ。……れいむ」
「それでは、れいむちゃんの検査を致しますので、もう一度ベッドに――」
「結構ですっ!! れいむは元通りに治りました! 大丈夫ですから! 御支払いは受付でいいんですよねっっ!!」
「おねーさん」の傍らに近づき、れいむに手を伸ばす「先生」だったが、「おねーさん」は殺気立った表情を向けて動きを制した。
誰もが押し黙った処置室に、大男が小脇に抱えたまりさが紡ぐ奇声だけが響いた。
誰もが押し黙った処置室に、大男が小脇に抱えたまりさが紡ぐ奇声だけが響いた。
「なんか、大変だったなァ」
「毎度のことさ。今日のは大体お前さんのせいだが。
……ゆっくりを飼うってのは、飼い主か飼いゆっくり、あるいはそのどちらも平常心を失う事が多々ある。
ウチの客はそうした連中ばかりで、俺自身、平静を取り繕うのがバカバカしく感じる時もある」
……ゆっくりを飼うってのは、飼い主か飼いゆっくり、あるいはそのどちらも平常心を失う事が多々ある。
ウチの客はそうした連中ばかりで、俺自身、平静を取り繕うのがバカバカしく感じる時もある」
診察室の窓ガラスを多量の雨粒が打ち続けていた。
「先生」と黒スーツの大男は共に椅子に座り、机に片肘をつきながら脚を好き好きに投げ出している
その行儀の悪い姿勢のまま、2人は湯気の沸き立つカップを指にかけ、コーヒーの匂いと味に浸っていた。
「先生」と黒スーツの大男は共に椅子に座り、机に片肘をつきながら脚を好き好きに投げ出している
その行儀の悪い姿勢のまま、2人は湯気の沸き立つカップを指にかけ、コーヒーの匂いと味に浸っていた。
「ところでよぉ、あのまま帰して大丈夫だったのか? あのれいむ」
「何がだ?」
「いや、あの飼い主サン、どうも可愛がってるって雰囲気じゃなかっただろ」
「…………」
大男の質問に沈黙する「先生」。
若干の間をおいて、ゆっくりと深呼吸を行ってから、「先生」は返答した。
若干の間をおいて、ゆっくりと深呼吸を行ってから、「先生」は返答した。
「俺はな、飼いゆっくりの為に治療をしてるんじゃない。飼いゆっくりを必要としている飼い主の為に治療をしてるんだ。
だから、飼い主が治療の終わった飼いゆっくりをどう扱おうと、俺の管轄外だ」
だから、飼い主が治療の終わった飼いゆっくりをどう扱おうと、俺の管轄外だ」
「へぇ、そこは割り切ってんだな」
「そりゃあ飼い主と飼いゆっくりが互いにゆっくりできるに越したことはない。だが、それをできる関係は成立しにくいものさ。
俺にできる事は、精々ゆっくりしてない飼いゆっくりを治療するぐらいだ」
俺にできる事は、精々ゆっくりしてない飼いゆっくりを治療するぐらいだ」
「先生」はコーヒーを一息に飲み干し、立ち上がった。
そして、机上の透明な箱の中から、大男の飼いゆっくりであるゆっくりまりさを取り出した。
途端、静かな室内に溢れ出す奇声――。
そして、机上の透明な箱の中から、大男の飼いゆっくりであるゆっくりまりさを取り出した。
途端、静かな室内に溢れ出す奇声――。
「ぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱ――」
「さて、お前さんのまりさは先程のれいむと同様、過度の虐待によって重度の精神逃避を起こしている。
中枢餡の記憶を交換する方法が最もリスクは少ないが、移植用ゆっくりまりさを切らしていて治療できるまで2日かかる」
中枢餡の記憶を交換する方法が最もリスクは少ないが、移植用ゆっくりまりさを切らしていて治療できるまで2日かかる」
「マジか。手っ取り早くどうにかならねぇか?」
「じゃあ治療方法はアレしかないな。お前さんのまりさなら、ちょっとやそっとの刺激ぐらい問題ないだろう。
時間外労働の報酬は久しぶりに酒でも奢ってくれればいい。さ、ゆっくり治してやるか」
時間外労働の報酬は久しぶりに酒でも奢ってくれればいい。さ、ゆっくり治してやるか」
「ヒャア! アレってさっきのアレか!? 俺にもやらせろよ!」
「駄目だ。免許が無いなら後ろで見てろ。リクエストぐらいは応えてやらんでもないがな」
「ぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺぽぱぴぷぺ――」
「先生」は憂さ晴らしを見い出したかのようにニヤリと唇を歪め、ボロボロのまりさを抱えると処置室へ向かった。
まりさは二つの眼球をバラバラに巡らし、身体を無作為に揺らしながら奇声を上げ続けていた。
まりさは二つの眼球をバラバラに巡らし、身体を無作為に揺らしながら奇声を上げ続けていた。
「ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷ……。ゆぅぅ、あめさんはゆっくりできないよ……」
れいむは飼い主が引く飼いゆっくり用「きゃりーばっぐさん」の中から、雨に濡れる町並みを眺める。
申し訳程度に設けられた窓は雨粒で覆われ、外の景色を見る事を邪魔している。
申し訳程度に設けられた窓は雨粒で覆われ、外の景色を見る事を邪魔している。
本来、飼い主の手で引かれる「きゃりーばっぐさん」での外出は、「すぃー」の搭乗感と似た心地でとてもゆっくりできる。
それも満足に外が見えなくては、車輪が転がる事によって揺られるぐらいしか出来なかった。
れいむはこんな時の為に施していた「ふうっいん!」を解き、「おうち」に戻ってからの事を夢想することにした。
それも満足に外が見えなくては、車輪が転がる事によって揺られるぐらいしか出来なかった。
れいむはこんな時の為に施していた「ふうっいん!」を解き、「おうち」に戻ってからの事を夢想することにした。
「おうちにもどったら、おねーさんのつくったあまあまたっくさん!むーしゃむーしゃするんだよ!
れいむのたからものさんがあれば、たべっほうだい!だよ! ゆぅん、たのしみだよぉ~~~っ!!」
れいむのたからものさんがあれば、たべっほうだい!だよ! ゆぅん、たのしみだよぉ~~~っ!!」
一番のお気に入りの「たからものさん」。その魔力によって、れいむは「あまあま」を限りなく食べる事ができるのだ。
れいむは「たからものさん」を舌で弄びつつ、来たるべき「しあわせー」を想い、「ほっぺ」に涎を滴らせた。
れいむは「たからものさん」を舌で弄びつつ、来たるべき「しあわせー」を想い、「ほっぺ」に涎を滴らせた。
「ただいまー。着いたわよ、れいむ。今出してあげるからね」
「ゆぅぅん! まちっくたびれたよぉ~~~っ!! ゆっくりただいまっっ!!」
れいむは「ふうっいん!」を確かめると、「きゃりーばっぐさん」の中からゆっくりしないで這い出す。
そこは見慣れた光景。れいむと「おねーさん」が共に住むマンションの玄関である。
一刻も早く「あまあま」を貪りたいれいむは、「おねーさん」に意気揚々と申しつける。
そこは見慣れた光景。れいむと「おねーさん」が共に住むマンションの玄関である。
一刻も早く「あまあま」を貪りたいれいむは、「おねーさん」に意気揚々と申しつける。
「おねーさんっ! れいむおなかぺっこぺこだよぉ!! はやくあまあまつくってね!! とってもたっくさん!だよ!!」
「はいはい。ちょっと待ってて」
「おねーさん」は雨具を片付けながら、れいむにいい加減な返事を返す。
自分と向き合おうともしない「おねーさん」の態度に、れいむは気分を害され、ゆっくりできなくなる。
自分と向き合おうともしない「おねーさん」の態度に、れいむは気分を害され、ゆっくりできなくなる。
「なんなのぉ!? そのたいどさんは!! ぜんっぜんゆっくりしてないよ!!
ゆっくりあやまってね! そしたらあまあまをたっくさん!つくってね!! ましましだよぉ!!」
ゆっくりあやまってね! そしたらあまあまをたっくさん!つくってね!! ましましだよぉ!!」
辛抱堪らなくなったれいむは、声を荒げて「おねーさん」を急かす。「たからものさん」の魔力を信じて。
しかし、「おねーさん」紡いだ返答は、予想もしない形でれいむの期待を裏切るものであった。
しかし、「おねーさん」紡いだ返答は、予想もしない形でれいむの期待を裏切るものであった。
「あまあまどころじゃないのよ、れいむ。昨日おうちに泥棒サンが入っちゃって、れいむのお部屋がメチャメチャなのよ」
「ゆ? ……ゆぅぅぅう!? どういうことおおおおおっ!!?」
「自分のお目目で確かめて御覧なさい、ね」
れいむは「おねーさん」に抱き上げられ、共に廊下の先にあるれいむの「おへや」に向かった。
程無く「どあさん」の前に着いたれいむ達。「おねーさん」が易々と「どあさん」を開く。
毎日をゆっくりと過ごした、れいむのゆっくりできる「おへや」。
だがそこには、れいむが知っている「おへや」の姿ではなかった。
程無く「どあさん」の前に着いたれいむ達。「おねーさん」が易々と「どあさん」を開く。
毎日をゆっくりと過ごした、れいむのゆっくりできる「おへや」。
だがそこには、れいむが知っている「おへや」の姿ではなかった。
「な、な、な、……なにごれえええええっっ!!?」
とてもゆっくりできる寝心地の「ふかふかべっどさん」が滅茶苦茶に引き千切られていた。
滑り台と一体化した遊具である「はくれいのじんじゃせっとさん」がバラバラに砕かれていた。
お気に入りの「すぃー」のオモチャは無残に壊され、「おんみょーだま」を始め小物類は跡形も無くなっていた。
滑り台と一体化した遊具である「はくれいのじんじゃせっとさん」がバラバラに砕かれていた。
お気に入りの「すぃー」のオモチャは無残に壊され、「おんみょーだま」を始め小物類は跡形も無くなっていた。
徹底的に荒らされた「おへや」の中は、まるでゆっくりできない有様をれいむに見せつけた。
れいむはただ驚き、慄き、とてもゆっくりできない想いで身を震わせた。
れいむはただ驚き、慄き、とてもゆっくりできない想いで身を震わせた。
「泥棒サン、れいむが大事にしていた、とてもゆっくりできるものを盗んで行っちゃったみたいなの。
れいむの大事な宝物さんも盗まれちゃったわ」
れいむの大事な宝物さんも盗まれちゃったわ」
「そ、そそ、そんな……! ゆんやあああああああああっっ!! れいむのたがらものざあああああんっ!!
お、おろしてね! ゆっくりしないでれいむをおろしてねえええええっっ!!」
お、おろしてね! ゆっくりしないでれいむをおろしてねえええええっっ!!」
床に降ろされたれいむは、ゆっくりしないで跳ね出した。
「おへや」を出て、廊下を抜け、玄関に向かって。
そうして「きゃりーばっぐさん」の元へたどり着くと、後を追ってきた「おねーさん」に呼びかける。
「おへや」を出て、廊下を抜け、玄関に向かって。
そうして「きゃりーばっぐさん」の元へたどり着くと、後を追ってきた「おねーさん」に呼びかける。
「おねーさん! ばっぐさんをゆっくりしないであけてね!!」
「どこかへ出かけるの、れいむ? 泥棒サンを追いかけるの?」
「ちがうよおおおっ!! れいむのたからものさんがどろぼーさんでだいっぴんち!なんだよおおおおおっ!!
ゆっくりじないであげでええええええっ!!」
ゆっくりじないであげでええええええっ!!」
「ふぅん……。これでいいかしら?」
飼いゆっくり用「きゃりーばっぐさん」の扉は、事故防止の為ゆっくり自身では開ける事ができない。
その扉が「おねーさん」の手で開かれるや、中に向かって「おつむ」から突っ込むれいむ。
れいむは舌を繰り、急ぎ「ふうっいん」を解き、現れた「たからものさん」を口に仕舞いこんだ。
その扉が「おねーさん」の手で開かれるや、中に向かって「おつむ」から突っ込むれいむ。
れいむは舌を繰り、急ぎ「ふうっいん」を解き、現れた「たからものさん」を口に仕舞いこんだ。
「どう、れいむ? 宝物さんはあった?」
「ゆ、ゆん! だいじょうぶだったよ!! ちょっとまっててね!!」
再び廊下に這い出したれいむは、口中から安っぽい輝きを放つプラスチック製のアクセサリーや小物の数々をばら撒いた。
「おねーさん」はその中でただ一つ、洗練された輝きを放つ指輪に手を伸ばし、れいむの目前で奪い去った。
「おねーさん」はその中でただ一つ、洗練された輝きを放つ指輪に手を伸ばし、れいむの目前で奪い去った。
「れいむのたからものさん、ちゃんとあったよ!! ……どぼじでとっぢゃうのおおおおおっ!?」
「……あった。見つかったわ。本当に、良かった……!!」
「おねーさん」がれいむから奪い取ったその指輪は、歪み一つない銀色の輝きでダイヤのきらめきを引きたてていた。
指輪の無事を確かめた「おねーさん」は、そのまま指輪を自らの左手薬指に嵌め、祈るような姿勢のまま膝をついた。
指輪の無事を確かめた「おねーさん」は、そのまま指輪を自らの左手薬指に嵌め、祈るような姿勢のまま膝をついた。
「かえしてねっ!! れいむのたからものさん! きらきらゆびわさんかえしてねえええええっ!!
れいむのゆびわさんものがたりがおわっちゃうでしょおおおおおっ!?」
れいむのゆびわさんものがたりがおわっちゃうでしょおおおおおっ!?」
「……これは、世界で一番大事な人から、私だけに贈られた婚約指輪。れいむのものじゃないわ。
お義父様から明日までに見つからなければ婚約破棄だと言われて、どうなるかと思った。
ああ……、見つかって、本当に、……良かったわぁ」
お義父様から明日までに見つからなければ婚約破棄だと言われて、どうなるかと思った。
ああ……、見つかって、本当に、……良かったわぁ」
「ゆひぃっ!?」
安堵を口にした「おねーさん」が、ゆっくりとれいむに振り向いた。その表情は笑みを浮かべているものの、眼差しは冷たかった。
れいむは刺すような視線に射竦められ、身体を強張らせてしまった。
れいむは刺すような視線に射竦められ、身体を強張らせてしまった。
「まさかれいむが自分で開けられないはずの、外出用のキャリーバッグの中に隠してるなんて、考えもしなかった。
ああ、底のクッションが破れてる。お出かけの度にガラクタを少しずつ、その中に隠してたのね。
お粗末な封印に気付くことができれば、部屋中ひっくり返さないで済んだのに」
ああ、底のクッションが破れてる。お出かけの度にガラクタを少しずつ、その中に隠してたのね。
お粗末な封印に気付くことができれば、部屋中ひっくり返さないで済んだのに」
「ど、どどど、どういうことおおおっ?」
「泥棒サンとか、全部ウソ。れいむのお部屋を滅茶苦茶にしたのは、わたし。
婚約指輪を見つけるために、今までれいむに買ってあげたの、全部壊しちゃったわ。
見つからなかった時は途方にくれたけど、思い付いたウソにれいむが簡単に騙されてくれて、本当に良かった」
婚約指輪を見つけるために、今までれいむに買ってあげたの、全部壊しちゃったわ。
見つからなかった時は途方にくれたけど、思い付いたウソにれいむが簡単に騙されてくれて、本当に良かった」
「ゆ、ゆああああああああああああああああっ!?」
ここに及んでれいむは、自分が「おねーさん」に言われるがまま誘導された事を思い知った。
れいむは「おへや」のゆっくりできない光景に驚くあまり、自ら「たからものさん」の無事を確かめに行かされたのだ。
れいむは「おへや」のゆっくりできない光景に驚くあまり、自ら「たからものさん」の無事を確かめに行かされたのだ。
思い起こせば、先刻「おうち」に帰ってくるまで「たからものさん」を眺めていたではないか。
その「たからものさん」を、昨日「おうち」に押し入った「どろぼーさん」がどうやって盗むというのか。
その「たからものさん」を、昨日「おうち」に押し入った「どろぼーさん」がどうやって盗むというのか。
金バッジを取得した知能も、ゆっくりできない状態では宝の持ち腐れでしかなかった。
れいむは仕掛けられた虚実を見破る暇を与えられないまま、飼い主の言うがままを盲心してしまったのだ。
れいむは仕掛けられた虚実を見破る暇を与えられないまま、飼い主の言うがままを盲心してしまったのだ。
「お、おねーさんはうそつきさんだよ! うそつきさんはどろぼーさんのはじまりだよぉ!! とっってもゆっくりできないよ!!
ゆっくりしないでれいむにあやまってね!! いまならどげざでゆるしてあげるよ!!
ゆん! そのまえにれいむにきらきらゆびわさんをかえしてね!! すぐでい」
ゆっくりしないでれいむにあやまってね!! いまならどげざでゆるしてあげるよ!!
ゆん! そのまえにれいむにきらきらゆびわさんをかえしてね!! すぐでい」
バシィッ
それ以上の言葉をれいむは紡ぐ事ができなかった。
いつの間にか「おねーさん」が手にしていた雨傘が、れいむの「おつむ」に叩きつけられたのだ。
ジワジワと全身に広がる鈍痛はれいむをゆっくりできない想いで満たし、その表情を歪ませていく。
いつの間にか「おねーさん」が手にしていた雨傘が、れいむの「おつむ」に叩きつけられたのだ。
ジワジワと全身に広がる鈍痛はれいむをゆっくりできない想いで満たし、その表情を歪ませていく。
「ゆっ……、ゆあ、ゆああ……、ゆびゅあああああああああああっ!? いだいっ!! いだいいだいめっぢゃいだいいいっ!!
おもにおづむがいだいいいいいっっ!! ゆあっゆあっゆばああああああああああっ!!」
おもにおづむがいだいいいいいっっ!! ゆあっゆあっゆばああああああああああっ!!」
痛みに身体をのけ反らせ、涙を撒き散らしながらゴロンゴロンと転げ回るれいむ。
その無様を、「おねーさん」は微笑を浮かべたまま見下していた。
その無様を、「おねーさん」は微笑を浮かべたまま見下していた。
「……泥棒サンはれいむの方じゃない。
私が台所で昼食の後片付けとおやつの仕込みをしてる隙に、ドレッサーの上に置いた指輪を盗んで。
空気の入れ替えでドアを開けていた私の部屋に勝手に入ったんでしょ? この時しか考えられないわ。
リビングでゆっくりしててねって言いつけたのに、どうして守らなかったのかしら?」
私が台所で昼食の後片付けとおやつの仕込みをしてる隙に、ドレッサーの上に置いた指輪を盗んで。
空気の入れ替えでドアを開けていた私の部屋に勝手に入ったんでしょ? この時しか考えられないわ。
リビングでゆっくりしててねって言いつけたのに、どうして守らなかったのかしら?」
「いだいいだいいだいぃっ!! いだいよおおおおおっ!! ゆあああああああんっ!! おづむいだいいいいいっ!!
ゆあああああっ!! ゆああぶぎゅびぃぃっ!?」
ゆあああああっ!! ゆああぶぎゅびぃぃっ!?」
痛みに悶えるれいむには「おねーさん」の言葉が届かなかったか、質問に答えることができなかった。
「おねーさん」は転がり続けるれいむの横っ腹に、金属製である雨傘の先端を突き立て、一息に床まで刺し貫いてしまう。
叩かれた時とは打って変わった鋭い痛みを受け、れいむの意識が真っ白に染まる。
「おねーさん」は転がり続けるれいむの横っ腹に、金属製である雨傘の先端を突き立て、一息に床まで刺し貫いてしまう。
叩かれた時とは打って変わった鋭い痛みを受け、れいむの意識が真っ白に染まる。
「ゆぎゃあああああああああああっ!! なにごれなにごれなにごれえええええええええっ!!?
どっでぇ! どっでぇごれどっでえええええっっ!! いでええええええええっ!!」
どっでぇ! どっでぇごれどっでえええええっっ!! いでええええええええっ!!」
「動かないでよ。傷口が広がって身体が千切れちゃうわ。質問にちゃんと答えれば治してあげるから。
どうして言いつけを破って、私の部屋に入って、指輪を盗んだのかしら? さぁ答えなさい、れいむ」
どうして言いつけを破って、私の部屋に入って、指輪を盗んだのかしら? さぁ答えなさい、れいむ」
「ゆぴぃぃっ!?」
静かに紡がれた「おねーさん」の言葉に、れいむは途轍もなくゆっくりできないものを感じ取った。
返答しなければ永遠にゆっくりしてしまう――。
れいむはそう確信し、痛みを堪えて「おねーさん」に答えを返す。ありのままの事実を。
返答しなければ永遠にゆっくりしてしまう――。
れいむはそう確信し、痛みを堪えて「おねーさん」に答えを返す。ありのままの事実を。
「……ゆ、ゆびわさんは、れいむがぼうっけん!してみつけたんだよぉ……。だから、れいむのたからものさんなんだよぉ……。
れいむだけの、きらきらゆびわさんなんだよぉ……。ゆああ……」
れいむだけの、きらきらゆびわさんなんだよぉ……。ゆああ……」
「え? 私の部屋にある物は私の物だし、そもそも私の指に付けていたのをれいむも見ていたでしょ、あの指輪。
それでも自分の物だって言い張るわけ?」
それでも自分の物だって言い張るわけ?」
「……お、おねーさんのゆびわは、おねーさんのゆびさんのおかざりさんでしょお……?
あのゆびわさんはかってにはえてたんだよ? れいむがひろったんだかられいむのたからものさんだよぉ……」
あのゆびわさんはかってにはえてたんだよ? れいむがひろったんだかられいむのたからものさんだよぉ……」
「…………はぁ」
その日、「おねーさん」の休日に行われる昼食後の「おさんぽ」までの間、れいむは決死の「ぼうっけん!」を行ったのだ。
はるか高みに輝くドレッサーの鏡を目指し、階段を登る要領で低い椅子の上に精一杯の「のーびのーび」で登りつめた。
大きな鏡の袂に向けて、もう一度「のーびのーび」をしたその時、発見した物は光り輝く指輪。
間近で見るきらめきに心奪われたれいむは、指輪を口に入れて「ぼうっけん!」を終えた。
れいむは直後の「おさんぽ」中に、この指輪を「たからものさん」に加え、「ふうっいん!」したのである。
大きな鏡の袂に向けて、もう一度「のーびのーび」をしたその時、発見した物は光り輝く指輪。
間近で見るきらめきに心奪われたれいむは、指輪を口に入れて「ぼうっけん!」を終えた。
れいむは直後の「おさんぽ」中に、この指輪を「たからものさん」に加え、「ふうっいん!」したのである。
という意味合いが、先の言葉には含まれていた。
「ゆぎぃっ!? ゆぎゅあああああああっっ!! ゆぎいいいいいいいっっ!! ゆあがががががっああっっ!!」
突然、れいむの身体に激痛が走る。幾度も幾度も絶え間なく。
れいむの弁解を聞いていた「おねーさん」が、握っていた雨傘を左右に捻り込んだのだ。幾度も幾度も絶え間なく。
れいむの弁解を聞いていた「おねーさん」が、握っていた雨傘を左右に捻り込んだのだ。幾度も幾度も絶え間なく。
「物は勝手に生えて来ないって躾けられてるんじゃなかったの? 本当にゆっくりって幼稚でデタラメばっかり、何が金バッジよ。
……変な知恵を働かすだけ余計に性質が悪いわぁ」
……変な知恵を働かすだけ余計に性質が悪いわぁ」
「ど、どぼじげえええっ!? ぢゃっどごだえぢゃでじょぼおおおっ!? ゆぎっぴぃいいいいいっっ!!」
身体を貫いている雨傘が「ぐーりぐーり」と捻じり込まれる度、れいむの口から絶叫が溢れる。
傷口が広がり、ボタリ、ボタリ、とこぼれ落ちる自らの餡子を目にしたれいむは、痛みを堪え身体を強張らせるしかなかった。
そのような惨劇を目の当たりにしているはずの「おねーさん」は、一向に捻り込む手の動きを止めようとはしない。
傷口が広がり、ボタリ、ボタリ、とこぼれ落ちる自らの餡子を目にしたれいむは、痛みを堪え身体を強張らせるしかなかった。
そのような惨劇を目の当たりにしているはずの「おねーさん」は、一向に捻り込む手の動きを止めようとはしない。
「散歩から帰ってきて初めて指輪が無い事に気付いたわ。探しても探しても見つからなかった。
とても困っていた私に、れいむは何を言ったか覚えてる?」
とても困っていた私に、れいむは何を言ったか覚えてる?」
「や、やべぢぇ……!! いぎゃああああっ!! ゆびびぃいいいいっ!! おぎゃああああっっ!!」
「れいむとってもゆっくりできる宝物見つけたよ。お姉さんに特別に見せてあげる。
でもタダじゃないよ、御賽銭はあまあまましましでいいよと、そう言ったわよね。
……この時確信したわ。れいむが犯人だって」
でもタダじゃないよ、御賽銭はあまあまましましでいいよと、そう言ったわよね。
……この時確信したわ。れいむが犯人だって」
「あびぃいいいっ!! おねーざっ……!! どめでっ!! ぴぃいぴぃいいいいいっ!!」
「次の日は、あの人の実家に招かれてたのよ。あの人が指輪を付けた私を家族に披露したいからと言って。
早く取り戻したいと思って、色々と作ってはれいむに食べさせたけど、れいむは宝物を全然見せようともしない。
それどころか、見せて欲しかったらもっと沢山あまあまを寄越せって、強請り紛いの態度を取る始末……」
早く取り戻したいと思って、色々と作ってはれいむに食べさせたけど、れいむは宝物を全然見せようともしない。
それどころか、見せて欲しかったらもっと沢山あまあまを寄越せって、強請り紛いの態度を取る始末……」
「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!? あんござんがああっ!! ごぼれりゅううううううっっ!!」
今や雨傘の軌道は大きく揺らぎ、れいむの身体に開いた傷穴を大きく回し広げていた。
ドロリと身体を這い落ちる餡子の重い感触は、れいむに命の危険を感じ取らせ恐怖させるに十分だった。
ドロリと身体を這い落ちる餡子の重い感触は、れいむに命の危険を感じ取らせ恐怖させるに十分だった。
「ところでれいむ、今日病院で言ったわよね。怖い夢を見てたのね、って。
……あれもウソなのよ」
……あれもウソなのよ」
「ゆ゛……!?」
「怖い想いをしたのは夢じゃないわ。私はれいむを、とってもゆっくり出来なくさせたもの。
指輪がどこにあるか、それを聞き出すために。……忘れてたのかしらぁ?」
指輪がどこにあるか、それを聞き出すために。……忘れてたのかしらぁ?」
「ゆ、あああああっ!? ゆひっ!! ゆひいいいいいいいいいいいっっ!!」
今の今まで忘れていた。いや、忘れさせられていた。
途轍もなくゆっくりできない想いをした直後に「おねーさん」に抱かれ、ゆっくりできない事は夢だと言われ、疑う事もなかった。
れいむは思い出した。その時の事を。
途轍もなくゆっくりできない想いをした直後に「おねーさん」に抱かれ、ゆっくりできない事は夢だと言われ、疑う事もなかった。
れいむは思い出した。その時の事を。
一番のお気に入りとなった「きらきらゆびわさん」を「おねーさん」に見せたかった。
しかし危険な「ぼうっけん!」で手に入れた「きらきらゆびわさん」を、簡単に見せたくはなかった。
だから、いつも食べている「あまあま」を増量してもらい、それと引き換えに見せようと考えたのだ。
しかし危険な「ぼうっけん!」で手に入れた「きらきらゆびわさん」を、簡単に見せたくはなかった。
だから、いつも食べている「あまあま」を増量してもらい、それと引き換えに見せようと考えたのだ。
しかし、頼まれもしないのに「おねーさん」は次から次と「あまあま」を作っては、れいむに食べさせてくれた。
普段決められた時間にしか食べる事の出来ない「あまあま」の数々を貪るうち、れいむは思い至ったのだ。
これは「しあわせー」を呼ぶ「きらきらゆびわさん」の魔法の力だと。
そんな凄い「たからものさん」の拝観料は安いものではない。だかられいむは、当然の権利として更なる「あまあま」を要求した。
普段決められた時間にしか食べる事の出来ない「あまあま」の数々を貪るうち、れいむは思い至ったのだ。
これは「しあわせー」を呼ぶ「きらきらゆびわさん」の魔法の力だと。
そんな凄い「たからものさん」の拝観料は安いものではない。だかられいむは、当然の権利として更なる「あまあま」を要求した。
その直後だった。「おねーさん」の手によってゆっくり心地を打ち砕かれたのは。
あまりにゆっくりできない思い出が鮮明に蘇り、れいむは「おそろしーしー」を幾度も滴らせる。
あまりにゆっくりできない思い出が鮮明に蘇り、れいむは「おそろしーしー」を幾度も滴らせる。
「思い出した? いっぱい叩いて、いっぱい引っ張って、いっぱい投げつけて、いっぱい刺して、いっぱい踏んで……。
れいむったら悲鳴を上げるばかりで、ちっとも指輪の事を言わないんだから」
れいむったら悲鳴を上げるばかりで、ちっとも指輪の事を言わないんだから」
「ぴっ……! ゆひっ……! ゆぴぃいいい……!!」
「やりすぎて非ゆっくり症になった時は本当に困ったわ。もう話も出来なくなったんだもの。
オレンジジュースや菓子の材料でも中身は治らないし、ゆっくりを虐めた事がバレるのが怖くて、あの人にも相談できなかった。
次の日、お義父様に指輪を失くした事を厳しく咎められて、もう少しで婚約を解消させられるところだったわ。
……本当、精神科のお医者様には感謝しないとね」
オレンジジュースや菓子の材料でも中身は治らないし、ゆっくりを虐めた事がバレるのが怖くて、あの人にも相談できなかった。
次の日、お義父様に指輪を失くした事を厳しく咎められて、もう少しで婚約を解消させられるところだったわ。
……本当、精神科のお医者様には感謝しないとね」
「お、お、おねーざんは、れいむを、ど、どどうずるづもりなのぉ……!?
れいぶがわるいごどじだなら、ゆっぐりあやまるよぉ。ゆっぐりごべんなざい……」
れいぶがわるいごどじだなら、ゆっぐりあやまるよぉ。ゆっぐりごべんなざい……」
震える声で訴えるれいむには、今や「おねーさん」に対して一切の「ゆっくり」を感じ取ることができなかった。
暴力を振るう凶暴な「にんげんさん」を相手どり、れいむは抗する術の無い事を理解していた。
れいむは飼いゆっくり教育で覚えた謝罪を行い「おつむ」を下げた。自らの気持ちとは裏腹に、この窮地を脱する為だけに。
暴力を振るう凶暴な「にんげんさん」を相手どり、れいむは抗する術の無い事を理解していた。
れいむは飼いゆっくり教育で覚えた謝罪を行い「おつむ」を下げた。自らの気持ちとは裏腹に、この窮地を脱する為だけに。
「いいのよ、謝らなくて」
れいむの低姿勢を受け、微笑みを浮かべた「おねーさん」は、れいむに突き刺していた雨傘を抜く。
痛みに悶えるれいむは抱きあげられ、そのまま「おねーさん」と共にれいむの「おへや」に向かった。
痛みに悶えるれいむは抱きあげられ、そのまま「おねーさん」と共にれいむの「おへや」に向かった。
「さ、れいむ。気分はどう?」
「ゆ、ゆん! げんきひゃくっばい!だよ! ありがとー、おねーさん!!
じぶんがまちがってることにゆっくりきづいたんだね!!」
じぶんがまちがってることにゆっくりきづいたんだね!!」
「おねーさん」がリビングの冷蔵庫から持ち出したオレンジジュースをかけられ、れいむの傷はすっかり塞がった。
荒らされた「おへや」、壊れたガラクタの中で、れいむは身体の状態を確かめるように「のーびのーび」を繰り返す。
れいむの元気な様を見て、「おねーさん」は満面の笑みを浮かべた。
荒らされた「おへや」、壊れたガラクタの中で、れいむは身体の状態を確かめるように「のーびのーび」を繰り返す。
れいむの元気な様を見て、「おねーさん」は満面の笑みを浮かべた。
「いいのよ、お礼なんて」
バチィンッ!
突然の事だった。
何事かと思う間もなく、「ほっぺ」に広く熱を帯びたような痛みが走り、れいむの身体はガラクタを跳ね飛ばしながら転げ回る。
「おねーさん」が、「はくれいのじんじゃせっとさん」に付属していた滑り台の残骸を掴み、れいむの横っ面を引っ叩いたのだ。
何事かと思う間もなく、「ほっぺ」に広く熱を帯びたような痛みが走り、れいむの身体はガラクタを跳ね飛ばしながら転げ回る。
「おねーさん」が、「はくれいのじんじゃせっとさん」に付属していた滑り台の残骸を掴み、れいむの横っ面を引っ叩いたのだ。
「……い、い、いだああああああっ!? おもにほっべがいだいいいいいっ!!
ななななにずるのおおおおおっ!? どぼじでごんなごどずるのおおおおおっ!!」
ななななにずるのおおおおおっ!? どぼじでごんなごどずるのおおおおおっ!!」
悶絶しながらも、れいむは「おねーさん」に向き合って不条理な暴力を咎めた。
「おねーさん」は満面の笑みを崩さず、れいむに詰め寄る。
「おねーさん」は満面の笑みを崩さず、れいむに詰め寄る。
「お饅頭に、お饅頭なんかに私の人生が台無しにされるところだったのよ?
今さら反省の弁なんて聞きたくもないし、聞いても絶対に許さないわぁっ!!」
今さら反省の弁なんて聞きたくもないし、聞いても絶対に許さないわぁっ!!」
バチィンッ! バチィンッ! バチィンッ! バチィンッ! バチィンッ!
「ゆびゃあっ! ばびぃいっ! いぢゃあっ! やべっっ! ぴぎゃあっ!」
「おねーさん」は滑り台の残骸を両手で掴み、執拗にれいむを殴りつける。
れいむは逃れようにも続けざまの痛打で思考を寸断され、一方的に殴られ続ける事しか出来なかった。
れいむは逃れようにも続けざまの痛打で思考を寸断され、一方的に殴られ続ける事しか出来なかった。
一時が立つ頃、息を切らした「おねーさん」が滑り台の残骸を床に落とし、そのまま立ちつくした。
全身を満遍なく叩かれ続けたれいむは身動きもとれず、腫れ上がって涙と「しーしー」でビショビショになった身体を震わせる。
全身を満遍なく叩かれ続けたれいむは身動きもとれず、腫れ上がって涙と「しーしー」でビショビショになった身体を震わせる。
「……ゆ゛、ゆ゛ぁ……。も、いや、だ。もういやだ、よぉ。れいぶ、おうぢに、がえりゅううう……」
「あらぁ? ここがれいむのおうちでしょう? このガラクタだらけのお部屋が。
ホラ、もっと叫んでもいいのよ。ゆっくりが飼えるマンションって防音も完璧なのよね。誰にも邪魔されなくて、助かるわぁ」
ホラ、もっと叫んでもいいのよ。ゆっくりが飼えるマンションって防音も完璧なのよね。誰にも邪魔されなくて、助かるわぁ」
「い、いやだぁ……! れいぶ、じにだぐないよおお……!」
もはや自らの力では逃れる事も叶わない事を痛感したれいむは、永遠にゆっくりする事への恐怖心で満たされていた。
「おねーさん」は呼吸を整え、絶望に打ちひしがれるれいむに言葉を投げかけた。
「おねーさん」は呼吸を整え、絶望に打ちひしがれるれいむに言葉を投げかけた。
「……そうだ。フフフッ。
安心して、れいむ。こんなところであなたを殺したりしないわ」
安心して、れいむ。こんなところであなたを殺したりしないわ」
「ゆ……?」
命を奪わないと言う「おねーさん」の言葉に、若干の安堵を得たれいむ。
しかし、続いて紡がれた言葉は、れいむを決してゆっくりさせないという決意の表明であった。
しかし、続いて紡がれた言葉は、れいむを決してゆっくりさせないという決意の表明であった。
「余興を思い付いたの。せっかくだかられいむには、私達の門出を祝福してもらおうと思うの。れいむの身体でね」
――あづいいいいっっ!! がらだがもえるようにあづいいいいいいいいいっっ!! ゆぎゃあああああああああっっ!!
れいむが意識を取り戻した瞬間、全身を包んでいたのは身体が焼けるような感触だった。
全身を悶絶させようにも、身体が全く動かない。
悲鳴を上げようにも、口その物が無くなったかのように感触が無い。
周囲を探ろうにも、目の前が真っ暗で何も見えない。
悲鳴を上げようにも、口その物が無くなったかのように感触が無い。
周囲を探ろうにも、目の前が真っ暗で何も見えない。
只々、全身を燃え盛る炎で包まれたような苦痛に意識を支配され続けた。
「……聞こ…え…、……れ…む?」
どれほど闇の中で声にならない悲鳴を上げ続けたであろう。
れいむが自らを呼ぶ声で我に返った時、周囲は熱が引き、次いで身体を焼く痛みも引いていった。
れいむが自らを呼ぶ声で我に返った時、周囲は熱が引き、次いで身体を焼く痛みも引いていった。
「……オレンジジュースを霧吹きでかけたわ。どう、れいむ。聞こえるかしら。
ああ、返事は出来なかったわね。お口は取っちゃったから。まあいいわ」
ああ、返事は出来なかったわね。お口は取っちゃったから。まあいいわ」
鮮明に聞こえてきた「おねーさん」の声に、れいむは一欠けらの安堵も得る事は出来なかった。
何より「おくち」を取ったと言う部分が理解できなかったし、理解したくもなかった。
何より「おくち」を取ったと言う部分が理解できなかったし、理解したくもなかった。
「聞いてれいむ。いよいよ明日が結婚式なのよ。れいむにはね、披露宴のウェディングケーキになってもらおうと思って。
その為にれいむが治ったあの日、ラムネで眠らせて下ごしらえをして、冷凍庫で今日まで寝かせておいたの」
その為にれいむが治ったあの日、ラムネで眠らせて下ごしらえをして、冷凍庫で今日まで寝かせておいたの」
――れいむがうぇでぃんぐけーきさん!? けーきさんなられいむにちょうだいね!
その言葉の意味するところに、れいむは今一つ理解が追い付かず、安直な要求を心の声で求める。
れいむに話しかけられる「おねーさん」の声は、尚も紡がれる。
れいむに話しかけられる「おねーさん」の声は、尚も紡がれる。
「今はね、オーブンでじっくり表面を焼いて、オレンジジュースを振りかけながらサクサク感を出してるところよ。
リボンも髪の毛もお目目も取っちゃったから、今のれいむ、本当に大きなお饅頭みたい。
ゆっくりを調理するのは初めてだけど、とっても美味しそうな匂いがしてるわよ、れいむ。明日が楽しみだわぁ」
リボンも髪の毛もお目目も取っちゃったから、今のれいむ、本当に大きなお饅頭みたい。
ゆっくりを調理するのは初めてだけど、とっても美味しそうな匂いがしてるわよ、れいむ。明日が楽しみだわぁ」
バタン、ガチャリ
何か重い物が音を立てた途端、れいむの身体は再び焼けつく痛みにさらされた。
先程まで鈍っていたであろう感触は、より鋭敏に炎に包まれたような熱気を身体に沁み入らせる。
先程まで鈍っていたであろう感触は、より鋭敏に炎に包まれたような熱気を身体に沁み入らせる。
――ゆんやあああああああああああっっ!! めっぢゃあづいいいいいいいっっ!!
――おもにぜんっしんがあづいいいいいっ!! だれがだずげでえええええっっ!! ゆあぢゃあああああっ!!
――おねーざんごべんなざいいいっ!! ごべんなざいいいいいっ!! ごべんなざいいいいいっ!!
闇の中で、れいむは灼熱に焼かれ続け、心の声で絶叫を重ねた。
「――それでは御覧下さい、ウェディングケーキの入場ですッ!!」
歓声と拍手に迎えられ、台車に載せられたれいむは眩い光が散りばめられた広間に運び込まれる。
果てしない灼熱にさらされた後、れいむは「おねーさん」の手によって元通りの外観を取り戻していた。
果てしない灼熱にさらされた後、れいむは「おねーさん」の手によって元通りの外観を取り戻していた。
しかし、存分に焼き上げられた全身はピクリとも動かす事ができない。
「おめめ」も埋め戻されたが、固定されているのか真っすぐしか見る事ができない。
「おくち」は結局元に戻らなかった。れいむは声一つ上げる事ができないままだった。
「おめめ」も埋め戻されたが、固定されているのか真っすぐしか見る事ができない。
「おくち」は結局元に戻らなかった。れいむは声一つ上げる事ができないままだった。
れいむの身体は、甘い匂いを放つ色取り取りの「けーきさん」に取り囲まれていた。
食べたくても食べられない。れいむは目の前に居並ぶ「あまあま」を前にして生殺しの目に遭っていた。
食べたくても食べられない。れいむは目の前に居並ぶ「あまあま」を前にして生殺しの目に遭っていた。
「直系1m20cm! こちらの特盛りウェディングケーキッ! このホテルの厨房で大活躍中の新婦自身が作り上げました!!
中央に鎮座するは新婦の飼いゆっくりだったれいむちゃん!
残念ながら先日、お遊戯中の事故で永遠にゆっくりしてしまいました」
中央に鎮座するは新婦の飼いゆっくりだったれいむちゃん!
残念ながら先日、お遊戯中の事故で永遠にゆっくりしてしまいました」
――ゆぅぅ!? れいむまだいきてるよおおっ!! ここにいるよおおおおおっ!!
黒いタキシード姿の男性による解説に、れいむは心の声で呼びかける。
しかし、誰ひとりれいむの言葉に耳を貸す者は無かった。
しかし、誰ひとりれいむの言葉に耳を貸す者は無かった。
「生前、れいむちゃんは常々こう言っていたそうです。
もしれいむが永遠にゆっくりする時は、おねーさんに食べてもらいたいよ。
おたべなさいをするから、みんなにしあわせーになってもらいたいよ、と」
もしれいむが永遠にゆっくりする時は、おねーさんに食べてもらいたいよ。
おたべなさいをするから、みんなにしあわせーになってもらいたいよ、と」
――はぁぁぁあ!? れいむそんなこといってないでしょおおおおおっ!!
まるで覚えのない言葉に反論するれいむ。
黒いタキシードの男は、意にも介さず言葉を続ける。
黒いタキシードの男は、意にも介さず言葉を続ける。
「その気持ちを汲もうと、新婦は自慢の腕を振るい、れいむちゃんの身体をウェディングケーキとして生まれ変わらせました!!
お集まりの皆様にも振る舞おうと、れいむちゃん含めて全て食用! 出席者全員に取り分けられ、お持ち帰りも可能ですッ!!
新郎新婦の初めての共同作業! ゆっくり見守ってくださいねッ!! なお写真撮影は近づきすぎないようお願いします!」
お集まりの皆様にも振る舞おうと、れいむちゃん含めて全て食用! 出席者全員に取り分けられ、お持ち帰りも可能ですッ!!
新郎新婦の初めての共同作業! ゆっくり見守ってくださいねッ!! なお写真撮影は近づきすぎないようお願いします!」
一際盛大な歓声と拍手が広間に響き渡る。
視線を固定されたれいむの眼前に現れたのは「おねーさん」と、何度か見かけた事のある「おにーさん」の2人。
「おねーさん」は白いドレスで身を飾り、れいむの関心を引く。
視線を固定されたれいむの眼前に現れたのは「おねーさん」と、何度か見かけた事のある「おにーさん」の2人。
「おねーさん」は白いドレスで身を飾り、れいむの関心を引く。
――ゆわぁぁ。おねーさん、とてもゆっくりしてるよぉぉ。……ゆん? ふたりともなにもってるの……!?
直後、れいむは2人が手にするナイフの鋭い輝きに目を奪われ、たちまちゆっくりできない予感が湧き上がった。
2人に握られたナイフは、ゆっくりとれいむに近づいてくる。
2人に握られたナイフは、ゆっくりとれいむに近づいてくる。
「れいむ、今までありがとうね。私達、れいむの分まできっと幸せになるからね。さ、あなた」
「うん。れいむちゃん、僕達の事をゆん国でゆっくり見守っててね」
――まってね! れいむいぎでるよおおおっ!! どぼじできづいてくれないのおおおおおっ!?
れいむにとって縁起でもない言葉を紡ぐ2人。
2人は寄り添い合いながら、ギラギラと波打つナイフの輝きを、れいむの「おつむ」を分かつように当てた。
れいむと「おねーさん」の視線が交わったその一瞬、「おねーさん」は格別ゆっくりした笑みを浮かべた。
直後――、
2人は寄り添い合いながら、ギラギラと波打つナイフの輝きを、れいむの「おつむ」を分かつように当てた。
れいむと「おねーさん」の視線が交わったその一瞬、「おねーさん」は格別ゆっくりした笑みを浮かべた。
直後――、
――ゆっぎゃああああああああっっ!! ぎれるっ!! れいぶのおづむがぎれぢゃうううううっ!!
れいむの眼前でナイフの刃がゆっくり下ろされ、れいむの「おつむ」に激痛が一直線に走る。
ゆっくりと、ゆっくりと、もどかしい動きで刃が下がる度、ゆっくりと、ゆっくりと激痛の範囲は広がっていく。
ゆっくりと、ゆっくりと、もどかしい動きで刃が下がる度、ゆっくりと、ゆっくりと激痛の範囲は広がっていく。
――やだやだいやぢゃあああああっ!! れいぶおだべなざいじだぐないいいいいっ!! おねーざんだじゅげでえええっ!!
間近に迫った死の予感。もはや一寸たりとも「ゆっくり」を得る事無く、失われる自分。
とにかくゆっくりしたい。「ゆっくり」が欲しい。
この期に及んでれいむが求めるは、本能に裏付けられた「ゆっくり」の渇望であった。
とにかくゆっくりしたい。「ゆっくり」が欲しい。
この期に及んでれいむが求めるは、本能に裏付けられた「ゆっくり」の渇望であった。
――あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!! もういやぢゃあああっ!! れいぶおうぢにがえりゅううううううううっっ!!
この場を逃れたい一心で放った、無音の絶叫。
次の瞬間、れいむは自らの姿を取り戻し、フワフワと闇の中を漂っていた。
次の瞬間、れいむは自らの姿を取り戻し、フワフワと闇の中を漂っていた。
――ゆん……? ここ、れいむきたことあるよ。……とっっってもゆっくりできるゆっくりぷれいすだよおっ!!
この土壇場で、れいむは再度の精神逃避に成功したのだ。
全ての事象が思いのままとなる理想郷。
早速れいむは「ゆっくり」を得ようと妄想を膨らませる。現状がまるで好転していない事も気付かずに――。
全ての事象が思いのままとなる理想郷。
早速れいむは「ゆっくり」を得ようと妄想を膨らませる。現状がまるで好転していない事も気付かずに――。
一方、「おねーさん」達はれいむの「おつむ」を若干切り裂いたところで、入刀を一時中断していた。
れいむの身体が存外にも切り難い為である。
れいむの身体が存外にも切り難い為である。
「……案外固いんだね、焼けたゆっくりって。形が崩れちゃいそうだ」
「サクサクに焼き上げた皮が厚いから、ただ押し切ると切り口が潰れちゃうわ。
そう思って、ブレッドナイフみたいに刃が波打ってるナイフを選んだから、フランスパンを切る要領で押し引きするといいわ」
そう思って、ブレッドナイフみたいに刃が波打ってるナイフを選んだから、フランスパンを切る要領で押し引きするといいわ」
「なるほど。こうかい?」
「ええ、その調子よ。ゆっくりと、ゆっくりとね」
切り方のコツを共有した2人は、呼吸を合わせて入刀を再開する。ナイフをゆっくりと突き切り、ゆっくりと引き切る。
すると先程とは一転、れいむの身体を難なく両断するナイフの刃。
れいむは、ゆっくりと、ゆっくりと、真っ二つに切り開かれていった――。
すると先程とは一転、れいむの身体を難なく両断するナイフの刃。
れいむは、ゆっくりと、ゆっくりと、真っ二つに切り開かれていった――。
――ゆぅぅん!! たっくさんのやまもりあまあまたべっほうだいだよぉ!!
先ずれいむが妄想したのは、先程まで食べたくても食べられなかった「うぇでぃんぐけーきさん」であった。
肥大した妄想そのままに、何処を見渡しても地の果てまで続くほど巨大な「けーきさん」。
手始めに、生クリームの山に貪りつこうとした、その瞬間――、
肥大した妄想そのままに、何処を見渡しても地の果てまで続くほど巨大な「けーきさん」。
手始めに、生クリームの山に貪りつこうとした、その瞬間――、
――ゆん!?
れいむの眼前で、生クリームの山がズタズタに切り裂かれ、闇色の傷跡を残して消えた。
それだけに留まらない。れいむの周囲でケーキが次々と切り裂かれ、闇の中に消えていった。
それだけに留まらない。れいむの周囲でケーキが次々と切り裂かれ、闇の中に消えていった。
――どぼじでれいぶのげーぎざんがなぐなっぢゃうのおおおおおっっ!? まだひどぐぢもだべでないんだよおおおおおっ!!
れいむは妄想を切り裂くモノの正体が掴めず、不安に駆られて取り乱すしか出来なかった。
そうこうする暇も無く、「うぇでぃんぐけーきさん」は全て闇色に塗り潰され、れいむは立ち位置を見失って落下感に囚われる。
そうこうする暇も無く、「うぇでぃんぐけーきさん」は全て闇色に塗り潰され、れいむは立ち位置を見失って落下感に囚われる。
――ゆんやああああああああっっ!! ゆっくぢっ! ゆっぐぢいいいいいいっ!!
れいむは必死になってゆっくりできる妄想を作りだそうとするが、ことごとく闇色の傷跡に覆われ、消し去られた。
想い描いた「ゆっくり」も、ゆっくりできた記憶も、失われたまま二度と想い起こす事が出来なかった。
気が付けばれいむは、深い闇の中で喪失感に喘ぎ、孤独感に呻いていた。
想い描いた「ゆっくり」も、ゆっくりできた記憶も、失われたまま二度と想い起こす事が出来なかった。
気が付けばれいむは、深い闇の中で喪失感に喘ぎ、孤独感に呻いていた。
そして、遂にれいむ自身が闇色の傷跡に切り裂かれていく。
――れいむのゆっぐぢでぎるおりぼんざんっ!! ずでぎなおざげざんっ!! ゆっぐりじないでどっだきんばっじざあああん!!
れいむ自身の「ゆっくり」が、次々と闇に切り裂かれ、消え去った。
もはや自分の姿すら思い出せなくなった頃、遂にれいむそのモノが闇に切り裂かれていった。
もはや自分の姿すら思い出せなくなった頃、遂にれいむそのモノが闇に切り裂かれていった。
――ぱっぴっぷっぺっぽぉっ! ぱっぴっぷっぺっぽぉっ! ぱっぴっぷっぺっぽぉっ! ぱっぴっぷっぺっぽぉっ!
消滅していくれいむの自我は思考することも叶わず、ただ無意味な言葉を紡ぐだけであった。
もっとゆっくりしたかったと未練を連ねる事すら叶わなかった。
もっとゆっくりしたかったと未練を連ねる事すら叶わなかった。
――ぱっぴっ……! ぺっ……! ぷっ……! ……! ……! …… ……
こうしてれいむは、闇色の絶望を抱きながら消滅した。
「ハイッ! 見事初めての共同作業は大・成・功!! れいむちゃんはキレイにおたべなさい出来ましたッ!!
僭越ながら、後ほど私も御相伴にあずかろうかと思います。今一度盛大な拍手をッ!!」
僭越ながら、後ほど私も御相伴にあずかろうかと思います。今一度盛大な拍手をッ!!」
黒いタキシード姿の男の言葉に、拍手と歓声は最高潮に達する。
「おねーさん」は溜飲の下がった面持ちで夫に向き直り、誓いの言葉を紡いだ。
「おねーさん」は溜飲の下がった面持ちで夫に向き直り、誓いの言葉を紡いだ。
「あなたと歩む人生、どんなことがあっても、きっと守り抜くわ。……誰にも邪魔はさせないから」
まりさ:ゆんやああああああああああああああああああjhcふぁおsふぇfjっっ!!
まりさ:いだいいだいいだいいだいいだいだだだだだだっだだだうぇdふぉぁっ!!
まりさ:ゆっぎぴいいいいっっ!? あぢゅいあぢゅいあぢゅいあぢゅいいなふぇおあfいっ!!
まりさ:いだいいだいいだいいだいいだいだだだだだだっだだだうぇdふぉぁっ!!
まりさ:ゆっぎぴいいいいっっ!? あぢゅいあぢゅいあぢゅいあぢゅいいなふぇおあfいっ!!
「そういや、この間のれいむの飼い主サン、訪ねてきたかい? あのキレイなねーちゃん」
「ああ、ちょうど昨日、旦那さんと一緒に新婚旅行のお土産と手作りのケーキを持ってきたよ。
れいむちゃんは……、自室でお遊戯中に事故死したそうだ」
れいむちゃんは……、自室でお遊戯中に事故死したそうだ」
「ふーん。やっぱり上手くいかないもんだな。ところでケーキ、まだ残ってるかい?」
「ウチの看護師達に分けたが、俺の分は手をつけていない。後で食ってくれ。職業柄か甘い物は苦手になった」
「ヒャッハァーッ!! さすが先生サマは話が解るッ!」
ゆっくり病院精神科の処置室では、今日も大男の飼いゆっくりであるまりさの「治療」が行われていた。
元々は大男の虐待嗜好にそぐわない温厚で従順な性根を持っていたが、ゲス化した別のまりさと性根を入れ替えられた過去を持つ。
以降、まりさは大男に日々虐め倒され、いかに壊れようとも「先生」の手によって元通りに治され続けているのだ。
元々は大男の虐待嗜好にそぐわない温厚で従順な性根を持っていたが、ゲス化した別のまりさと性根を入れ替えられた過去を持つ。
以降、まりさは大男に日々虐め倒され、いかに壊れようとも「先生」の手によって元通りに治され続けているのだ。
まりさ:ぴぎゃああああああっ!! だずげ……!! だずげでええmんbうdふぇふぇっ!!
まりさ:ゆっぐぢ! ゆっぐぢざぜでぐだざsdけpfじぇfjdふぇwじょっ!!
まりさ:ゆっぐぢ! ゆっぐぢざぜでぐだざsdけpfじぇfjdふぇwじょっ!!
作業台上にベルトで固定され金属製のヘルメットを被せられたまりさは、中枢餡電磁刺激法による「治療」を受けている。
モニターに羅列されるのはまりさの思考を示すテキストで、全てゆっくりできない状態を現していた。
コンパネのダイヤルを操作するのは黒服の上に白衣をまとった大男。「先生」は椅子に座って見守っているだけである。
モニターに羅列されるのはまりさの思考を示すテキストで、全てゆっくりできない状態を現していた。
コンパネのダイヤルを操作するのは黒服の上に白衣をまとった大男。「先生」は椅子に座って見守っているだけである。
吐餡処置のつもりなのか、まりさの喉奥には帽子のお飾りを丸めて詰め込まれ、声一つ発せなくなっている。
念入りにも「あにゃる」には、引き千切られた「おさげ」が捻じり込まれている。
まりさは声一つ出せずに悶絶を繰り返し、辛うじて動く「おしり」でビッタンビッタンと作業台を叩き続けるしか出来なかった。
念入りにも「あにゃる」には、引き千切られた「おさげ」が捻じり込まれている。
まりさは声一つ出せずに悶絶を繰り返し、辛うじて動く「おしり」でビッタンビッタンと作業台を叩き続けるしか出来なかった。
「それにしてもお前さん、医療免許まで手に入れるとはな。……どうせ表ざたに出来ない手を使ったんだろうが」
「わざわざ面倒な手を使ったんだぜ? 力づくでも良かったんだがなぁ」
「フン、そこまでしてまりさを虐め抜きたいのか」
「当然。マンネリ打破に丁度いいかと思ってさ」
現在のまりさは正常な精神状態を保ったまま「治療」を受け続けていた。
強制的に身体を縛られ、何もされていないにも関わらず耐えがたい程の苦痛を与えられ続けていた。
突然、凄まじい快感が続けざまにまりさを襲う。意識が白い光で断ちきられ、餡子が焼け付きそうな衝撃が全身を駆け巡る。
強制的に身体を縛られ、何もされていないにも関わらず耐えがたい程の苦痛を与えられ続けていた。
突然、凄まじい快感が続けざまにまりさを襲う。意識が白い光で断ちきられ、餡子が焼け付きそうな衝撃が全身を駆け巡る。
まりさ:ず、ずずずっぎりずっぎりずっぎりずっぎりずっぎりずっぎりずっぎqsdcfrっぼっっ!!
まりさ:ずっぎりずっぎりずっぎりずっぎりずっぎりずっぎりずっぎりずっぎおdじえうhふぇっっ!!
まりさ:や、やべずっぎりずっぎりずっぎりずっぎりずっぎりずっぎりずっぎくぁscれgんめっっ!!
まりさ:ずっぎりずっぎりずっぎりずっぎりずっぎりずっぎりずっぎりずっぎおdじえうhふぇっっ!!
まりさ:や、やべずっぎりずっぎりずっぎりずっぎりずっぎりずっぎりずっぎくぁscれgんめっっ!!
激しい痙攣を始めたまりさの身体が大きく仰け反り、一気に膨張した「ぺにぺに」から多量の精子餡が噴出する。
同時に、額からは無数の茎が伸び、これまた無数の「おちびちゃん」を実らせる。
同時に、額からは無数の茎が伸び、これまた無数の「おちびちゃん」を実らせる。
「ヒャアッ! 強振動の刺激で勝手におちびちゃんが生えてきたぜ!! たまんねぇッ!!」
「オイオイ、やり過ぎだ。体内の餡子が空っぽになってしまうぞ」
「先生」は素早く医療用オレンジジュースの点滴を用意し、まりさに注入する。
「おちびちゃん」達に餡子を吸われ、萎みかけていたまりさの身体が危ういところで元通りに膨らんだ。
続いて「先生」は、まりさの額に生えた茎を無造作にむしり取り、傍らのゴミ箱に投げ捨てた。
「おちびちゃん」達に餡子を吸われ、萎みかけていたまりさの身体が危ういところで元通りに膨らんだ。
続いて「先生」は、まりさの額に生えた茎を無造作にむしり取り、傍らのゴミ箱に投げ捨てた。
まりさ:ゆあああああっ!? まりさにのすでぎなずでぎなおぢびぢゃんがああああああっ!!
まりさ:おぢびぢゃんはごみじゃないよおおおっ! ゆっぐりじないでがえぜぐぞじじいいいっ! ゆあああああんっ!!
まりさ:おぢびぢゃんはごみじゃないよおおおっ! ゆっぐりじないでがえぜぐぞじじいいいっ! ゆあああああんっ!!
大男が刺激を弱めに調整した為、まりさは苦痛以外の意思表示、悲しみを現すことができた。
身を震わせながら涙を流すまりさの全身を「先生」は隈なく観察する。
身を震わせながら涙を流すまりさの全身を「先生」は隈なく観察する。
「どうやら問題は無さそうだ。点滴を継続しておくから存分に治療するんだな。ただし急患が来るまでの話だ」
「ヒャッハーッ! 恩に着るぜぇッ!!」
抗う術も無いまま、弄ばれ続ける。
あまりにもゆっくりできない扱いに、まりさは「先生」に対し懇願の意思を表示する。
あまりにもゆっくりできない扱いに、まりさは「先生」に対し懇願の意思を表示する。
まりさ:ごろじでぐだざいいいっ!! おねがいじまずぐぞじじいいいっ! まりざをごろじでぐだざいいいいいっ!!
まりさ:ゆっぐりざぜでぐだざいいいっ!! おねがいでずぅ! ゆっぐりじないでごろじでぐだざいいいいいっ!!
まりざ:ごろじでぐだざいっ!! ごろじでぐだざいっ!! ごろじでぐだざいいいいいっ!!
まりさ:ゆっぐりざぜでぐだざいいいっ!! おねがいでずぅ! ゆっぐりじないでごろじでぐだざいいいいいっ!!
まりざ:ごろじでぐだざいっ!! ごろじでぐだざいっ!! ごろじでぐだざいいいいいっ!!
「ヒャーッハッハッハァッ!! 見ろよコイツの必死な頼みをよぉ! おぉ、無様無様!!」
「…………」
しばし無言で様子を伺っていた「先生」だったが、一つ頷くとまりさの傍らに立つ。
まりさは「先生」に対し、涙の溢れる目で訴える。欲しい「ゆっくり」はただ一つ。速やかなる死である。
「先生」は静かな声でまりさに語りかける。
まりさは「先生」に対し、涙の溢れる目で訴える。欲しい「ゆっくり」はただ一つ。速やかなる死である。
「先生」は静かな声でまりさに語りかける。
「……俺はな、飼いゆっくりの為に治療をしてるんじゃない。飼いゆっくりを必要としている飼い主の為に治療をしてるんだ。
俺にできる事は、精々ゆっくりしてない飼いゆっくりを治療するぐらいだ。
生きろ、まりさ。生きてお前の飼い主をゆっくりさせてやれ。それがお前に残された唯一の価値だ」
俺にできる事は、精々ゆっくりしてない飼いゆっくりを治療するぐらいだ。
生きろ、まりさ。生きてお前の飼い主をゆっくりさせてやれ。それがお前に残された唯一の価値だ」
その言葉をゆっくり理解したまりさは、無限に広がる絶望に囚われた。
それでもまりさは、ゆっくりする術を求め、一心に「ゆっくり」を求めた。
それでもまりさは、ゆっくりする術を求め、一心に「ゆっくり」を求めた。
まりさ:ゆっぐぢ! ゆっぐぢ! ゆっぐぢいいいいいいいいいっ!!
まりさ:やだやぢゃいやぢゃあああっ!! もうおうぢがえりゅううううううっ!!
まりさ:
まりさ:
まりさ:ゆ……? ここはどこなのぜ……? ふわふわしてて、とてもゆっくりできそうなのぜ!
まりさ:そうだぜ! きたことあるのぜ! ここはまりさのゆっくりぷれいすなんだぜ!!
まりさ:やだやぢゃいやぢゃあああっ!! もうおうぢがえりゅううううううっ!!
まりさ:
まりさ:
まりさ:ゆ……? ここはどこなのぜ……? ふわふわしてて、とてもゆっくりできそうなのぜ!
まりさ:そうだぜ! きたことあるのぜ! ここはまりさのゆっくりぷれいすなんだぜ!!
「……む、どうやらまた精神逃避したな」
「先生」はまりさの様子を一目見て診断を下す。
モニター上には、電磁波の出力が寸断されているという表示が大きくポップアップしている。
これは治療中のゆっくりの精神状態が途切れると同時に、電磁波の発信を遮断するブレーカー機能が正常に働いた事を示していた。
まりさの身体は小刻みに震え、左右の眼球それぞれをデタラメに回し、心ここにあらずの体を成していた。
モニター上には、電磁波の出力が寸断されているという表示が大きくポップアップしている。
これは治療中のゆっくりの精神状態が途切れると同時に、電磁波の発信を遮断するブレーカー機能が正常に働いた事を示していた。
まりさの身体は小刻みに震え、左右の眼球それぞれをデタラメに回し、心ここにあらずの体を成していた。
「おっとぉ! そうは問屋が卸さねえッ! 強烈なヤツを喰らわしてやる!!」
「この組み合わせを試してみろ。振動の出力と熱の出力を同時に上げていくんだ」
「ヒャアッ! そいつは楽しそうだぜッ! ありがとよ、セ・ン・セ・イ!!」
大男は電磁波の発信準備を整え、「先生」に指示された通り二つのダイヤルを同時に回す。
途端、中枢餡の内側に精神逃避したまりさの自我が、全身を過熱される様な激痛に襲われた。
途端、中枢餡の内側に精神逃避したまりさの自我が、全身を過熱される様な激痛に襲われた。
まりさ:ゆ゛!? あづいぃぃいっ!! おもにぜんしんがあぢゅいいいいえbふbdsっっ!!
まりさ:ゆぎゃあああああっ!! まるでまりざはでんしれんじざんにいれられだだいなまいどみぢゃいいいzxdいっ!!
まりさ:だじでっ! ごごがらだじでぇぇえ!! ゆんやあああtのvぢいえおfねっっ!!
まりさ:がえりゅ! もうおうぢがえりゅうううううっっ!! ごんなどごもういやぢゃああああふぇwあっ!!
まりさ:ゆぎゃあああああっ!! まるでまりざはでんしれんじざんにいれられだだいなまいどみぢゃいいいzxdいっ!!
まりさ:だじでっ! ごごがらだじでぇぇえ!! ゆんやあああtのvぢいえおfねっっ!!
まりさ:がえりゅ! もうおうぢがえりゅうううううっっ!! ごんなどごもういやぢゃああああふぇwあっ!!
まりさの自我は、以前電子レンジに閉じ込められて餡子の芯まで加熱されたと同様の刺激を与えられた。
激しく光が明滅する無音の灼熱地獄と化した精神の殻から、まりさはゆっくりする間もなく逃げ場を求める。
次の瞬間、まりさの視界に飛び込んだのは処置室の天井だった。
激しく光が明滅する無音の灼熱地獄と化した精神の殻から、まりさはゆっくりする間もなく逃げ場を求める。
次の瞬間、まりさの視界に飛び込んだのは処置室の天井だった。
まりさ:
まりさ:
まりさ:ゆひっ……! ゆひっ……! …………またもどっでぎだあああっ!!
まりさ:やだぁぁ……! もういやだぁぁ……っ! もうやべでよぉぉ……!!
まりさ:ゆっぐぢざぜでぐだざぃぃ……! ゆっぐぢぃぃ……! ゆっぐぢぃぃ……!!
まりさ:
まりさ:ゆひっ……! ゆひっ……! …………またもどっでぎだあああっ!!
まりさ:やだぁぁ……! もういやだぁぁ……っ! もうやべでよぉぉ……!!
まりさ:ゆっぐぢざぜでぐだざぃぃ……! ゆっぐぢぃぃ……! ゆっぐぢぃぃ……!!
「ヒャッハーッ! 流石プロの指示だぜッ! あっと言う間に治りやがったッ!!」
「7秒か。記録更新だな。流石なのはお前さんのまりさだよ。並みのゆっくりなら簡単に只の饅頭になってる」
「よぉし! 今度は口を出すなよ。オレの手で記録更新してやるッ!!」
作業台を涙と「しーしー」で濡らし、恐怖と絶望に震えるまりさ。2人のやり取りにまりさを思いやる感情は一切感じ取れない。
只々「ゆっくり」が欲しい。そう願わずにはいられなかった。
だが、与えられたのは一切の「ゆっくり」を許さない激痛の数々である。
只々「ゆっくり」が欲しい。そう願わずにはいられなかった。
だが、与えられたのは一切の「ゆっくり」を許さない激痛の数々である。
まりさ:ゆんやああああああああああっっ!! もうやべっべべっべっべっbsyつgほおpっ!!
まりさ:ゆあっぎぴいいいいいいいいいいっ!! かぴっ! くぴいいstrbっっ!!
まりさ:ゆがぁあっ!! ゆばりゃああbgdっっ! あぎゃあああっぜrtyvhbfdcxfghjっ!!
まりさ:ゆあっぎぴいいいいいいいいいいっ!! かぴっ! くぴいいstrbっっ!!
まりさ:ゆがぁあっ!! ゆばりゃああbgdっっ! あぎゃあああっぜrtyvhbfdcxfghjっ!!
この耐えがたい激痛の数々は、まりさの飼い主が飽きるまで、延々と与え続けられた――。
完