ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko4393 どんっ!
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『どんっ!』 13KB
観察 日常模様 野良ゆ 子ゆ よろしくお願いします
観察 日常模様 野良ゆ 子ゆ よろしくお願いします
夜空に大きくてきれいなお花が咲いた。
直後、そのお花に負けないくらい大きな音が、空き地に響く。
直後、そのお花に負けないくらい大きな音が、空き地に響く。
どんっ。
ぱらぱらぱらっ。
ぱらぱらぱらっ。
「たまやー! だよっ!」
まりさがお空に向かってそう叫ぶと、
「かぎやー! だよっ!」
隣のれいむも声を上げた。
「ゆゆ~ん! はなびさんはとってもゆっくりしているね!」
「そうだね、まりさ!」れいむがダンボールのおうちを振り返った。「おちびちゃん! いっしょにはなびさんをみようね! とってもきれいだよ!」
まりさも振り返る。
おうちの前では、おちびちゃんがお空を見上げて呆けていた。その小さな体はぷるぷると動いている。
初めてみるその光景に、感動して言葉もないのだろう。
昨日までは雨続きだったが、今日は朝からとてもいい天気だった。
お日さまさんありがとう。おかげでゆっくりと花火さんを見ることができる。
まりさが再び夜空を見え上げると、ちょうど新しいお花が開いたところだった。
まりさがお空に向かってそう叫ぶと、
「かぎやー! だよっ!」
隣のれいむも声を上げた。
「ゆゆ~ん! はなびさんはとってもゆっくりしているね!」
「そうだね、まりさ!」れいむがダンボールのおうちを振り返った。「おちびちゃん! いっしょにはなびさんをみようね! とってもきれいだよ!」
まりさも振り返る。
おうちの前では、おちびちゃんがお空を見上げて呆けていた。その小さな体はぷるぷると動いている。
初めてみるその光景に、感動して言葉もないのだろう。
昨日までは雨続きだったが、今日は朝からとてもいい天気だった。
お日さまさんありがとう。おかげでゆっくりと花火さんを見ることができる。
まりさが再び夜空を見え上げると、ちょうど新しいお花が開いたところだった。
どんっ。
ぱらぱらぱらっ。
ぱらぱらぱらっ。
「ゆぴいっ!?」
大きな音の後に聞こえた小さな声。
おちびちゃんの悲鳴だ。
まりさはぎょっとしておちびちゃんを振り返った。
見ると、おちびちゃんは金色のおさげでおめめを覆いながら、突っ伏してがたがたと震えていた。
いつもお手入れを欠かさない、まりさとお揃いのゆっくりしたお帽子さんが、地面に落ちてしまっている。
どうしたのだろう。おちびちゃんの身に何かあったのだろうか。
まりさとれいむは慌てておちびちゃんに駆け寄った。
「ど、どうしたの、おちびちゃん?」
「ぐあいがわるいの? ぽんぽんがいたいの?」
二人の呼びかけに、お顔を上げるおちびちゃん。そのおめめからは涙が流れていた。
「は、はなびしゃんが……」
大きな音の後に聞こえた小さな声。
おちびちゃんの悲鳴だ。
まりさはぎょっとしておちびちゃんを振り返った。
見ると、おちびちゃんは金色のおさげでおめめを覆いながら、突っ伏してがたがたと震えていた。
いつもお手入れを欠かさない、まりさとお揃いのゆっくりしたお帽子さんが、地面に落ちてしまっている。
どうしたのだろう。おちびちゃんの身に何かあったのだろうか。
まりさとれいむは慌てておちびちゃんに駆け寄った。
「ど、どうしたの、おちびちゃん?」
「ぐあいがわるいの? ぽんぽんがいたいの?」
二人の呼びかけに、お顔を上げるおちびちゃん。そのおめめからは涙が流れていた。
「は、はなびしゃんが……」
どんっ。
ぱらぱらぱらっ。
ぱらぱらぱらっ。
「ゆぎゃあっ!?」
叫んだおちびちゃんの体が大きく跳ねる。
「ど、どうしたの、おちびちゃん?」
「ぐあいがわるいの? おつむがいたいの?」
れいむがおちびちゃんのおつむを撫でる。
ふと見ると、おちびちゃんのあんよの下の黒い地面が、より黒々としているのが見えた。
しーしーだ。
おちびちゃんはしーしーを漏らしていた。
やはり何かおかしい。最近はおもらしもおねしょもしなくなり、少しだけお姉ちゃんになったおちびちゃんなのに。
「お、おちびちゃん! ゆっくりしていってね! おとうさんとおかあさんに、ちゃんとおはなししてね!」
「はなびしゃんが……」おちびちゃんの弱々しい声。「はなびしゃんが……まりしゃをいじめりゅのじぇ……」
「ゆっ?」
「ゆゆっ?」
まりさは思わずれいむと顔を見合わせた。
花火さんがおちびちゃんをいじめる?
まりさが見る限り、そんな様子はまったくないし、第一あのゆっくりとした花火さんがそんなことをするはずがない。
きっとおちびちゃんの勘違いだろう。
ああ、とまりさは合点がいった
もう夜も遅い。いつもならおちびちゃんはおねむの時間だ。
なるほど、おちびちゃんはちょっと寝ぼけているのだ。
まりさの頬が緩んだ。
れいむも同じ考えに至ったらしく――さすがはまりさの奥さん――にこにことしている。
まりさとれいむのおちびちゃんは、やはり可愛い。
落ちていたお帽子さんを、おちびちゃんのおつむに戻して、
「ゆふふっ! そんなことはないよ、おちびちゃん! ほーら! ゆっくりおそらをみあげてね!」
「とーってもゆっくりしてる、きれいなきれいなはなびさんだよ!」
まりさとれいむが優しく語りかけると、おちびちゃんは恐々とお顔を上げた。
ほぼ同時に、夜空に大きなお花が咲く。
「どう、おちびちゃん?」
「ゆわあ、とってもきれいなのじぇ……」
一瞬うっとりした表情になるおちびちゃん。しかし、
叫んだおちびちゃんの体が大きく跳ねる。
「ど、どうしたの、おちびちゃん?」
「ぐあいがわるいの? おつむがいたいの?」
れいむがおちびちゃんのおつむを撫でる。
ふと見ると、おちびちゃんのあんよの下の黒い地面が、より黒々としているのが見えた。
しーしーだ。
おちびちゃんはしーしーを漏らしていた。
やはり何かおかしい。最近はおもらしもおねしょもしなくなり、少しだけお姉ちゃんになったおちびちゃんなのに。
「お、おちびちゃん! ゆっくりしていってね! おとうさんとおかあさんに、ちゃんとおはなししてね!」
「はなびしゃんが……」おちびちゃんの弱々しい声。「はなびしゃんが……まりしゃをいじめりゅのじぇ……」
「ゆっ?」
「ゆゆっ?」
まりさは思わずれいむと顔を見合わせた。
花火さんがおちびちゃんをいじめる?
まりさが見る限り、そんな様子はまったくないし、第一あのゆっくりとした花火さんがそんなことをするはずがない。
きっとおちびちゃんの勘違いだろう。
ああ、とまりさは合点がいった
もう夜も遅い。いつもならおちびちゃんはおねむの時間だ。
なるほど、おちびちゃんはちょっと寝ぼけているのだ。
まりさの頬が緩んだ。
れいむも同じ考えに至ったらしく――さすがはまりさの奥さん――にこにことしている。
まりさとれいむのおちびちゃんは、やはり可愛い。
落ちていたお帽子さんを、おちびちゃんのおつむに戻して、
「ゆふふっ! そんなことはないよ、おちびちゃん! ほーら! ゆっくりおそらをみあげてね!」
「とーってもゆっくりしてる、きれいなきれいなはなびさんだよ!」
まりさとれいむが優しく語りかけると、おちびちゃんは恐々とお顔を上げた。
ほぼ同時に、夜空に大きなお花が咲く。
「どう、おちびちゃん?」
「ゆわあ、とってもきれいなのじぇ……」
一瞬うっとりした表情になるおちびちゃん。しかし、
どんっ。
ぱらぱらぱらっ。
ぱらぱらぱらっ。
「ゆびゃあっ!? ……ゆええええん! はなびしゃんが、おおきなおとでまりしゃをいじめりゅのじぇえええ!」
一転、今度は大声で泣き出した。
「どんっ! って! どんっ! って! ゆえっ、ゆええええん!」
「お、おちびちゃんっ?」
「おとなの? どんっ! っていうおとがこわいの? おちびちゃん?」
れいむのその言葉に、まりさははっとした。
「ゆええええん! こわいのじぇええええ! こわいのじぇええええ!」
なるほど。おちびちゃんは花火さんから少し遅れて聞こえる、あの大きな音が怖かったのだ。
「ゆええええん! ゆええええん!」
「おちびちゃん! ゆっくり! ゆっくりしていってね!」
「だいじょうぶだよ! こわくないよ!」
れいむと二人でおちびちゃんを宥めながら考える。
大人のまりさやれいむはともかく、まだ体の小さなおちびちゃんに、あの体に響くかのような音は確かに酷かもしれない。
そういえば、まりさがおちびちゃんだった頃も、同じように花火さんの音を怖がって――いただろうか? もう忘れた。
それにしても、花火さんも花火さんだ。
わざわざあんな大きな音を出すことはないだろう。もう少し、おちびちゃんに配慮してほしいものだ。
「はなびさああんっ! まりさとれいむのかわいいおちびちゃんがこわがっているよっ! もうすこししずかにしてあげてねええええっ!」
おちびちゃんを背中にかばいながら、まりさはお空に向かって大声でお願いした。
そこに新しい花火さんが上がった。暗い夜空が、昼間のように明るくなる。
一転、今度は大声で泣き出した。
「どんっ! って! どんっ! って! ゆえっ、ゆええええん!」
「お、おちびちゃんっ?」
「おとなの? どんっ! っていうおとがこわいの? おちびちゃん?」
れいむのその言葉に、まりさははっとした。
「ゆええええん! こわいのじぇええええ! こわいのじぇええええ!」
なるほど。おちびちゃんは花火さんから少し遅れて聞こえる、あの大きな音が怖かったのだ。
「ゆええええん! ゆええええん!」
「おちびちゃん! ゆっくり! ゆっくりしていってね!」
「だいじょうぶだよ! こわくないよ!」
れいむと二人でおちびちゃんを宥めながら考える。
大人のまりさやれいむはともかく、まだ体の小さなおちびちゃんに、あの体に響くかのような音は確かに酷かもしれない。
そういえば、まりさがおちびちゃんだった頃も、同じように花火さんの音を怖がって――いただろうか? もう忘れた。
それにしても、花火さんも花火さんだ。
わざわざあんな大きな音を出すことはないだろう。もう少し、おちびちゃんに配慮してほしいものだ。
「はなびさああんっ! まりさとれいむのかわいいおちびちゃんがこわがっているよっ! もうすこししずかにしてあげてねええええっ!」
おちびちゃんを背中にかばいながら、まりさはお空に向かって大声でお願いした。
そこに新しい花火さんが上がった。暗い夜空が、昼間のように明るくなる。
どんっ。
ぱらぱらぱらっ。
ぱらぱらぱらっ。
「ゆひっ! も、もういやなのじぇえええ! まりしゃ、おうちかえるのじぇええええ!」
「お、おちついてね、おちびちゃん! おちびちゃんのおうちはここだよ! こんなじかんにおそとにでたらあぶないよ!」
まりさは慌てておちびちゃんを制した。
こんな夜遅くに外に出て、人間さんのすぃーにぶつけられでもしたら大変だ。
先日事故死した近所のありすの最期を思い出し、まりさは身震いした。
彼女はまりさの目の前で死んだのだ。
「だいじょうぶだよ、おちびちゃん! おとうさんとおかあさんがついているからね!」
とは言ったものの、この空き地にいる限り、おちびちゃんはあの『どんっ』という爆音に怯え続けることになるだろう。
花火さんはとてもゆっくりしているが、反面、とても意地悪だ。先ほどのまりさのお願いも無視されてしまった。
困った。どうしたらいいのか。
ゆーんゆーんと悩んで、まりさは結論を出した。
花火さんから逃げる。それしかない。
毎日休みなく狩りに出ているまりさだ。この辺りの安全地帯もいくつか知っている。
「れいむ! まりさはおちびちゃんをつれてここからにげるよ!」
「ゆっ?」
「にげるがかち! だよ!」
言うや否や、まりさはもみあげを使って、おちびちゃんを持ち上げ、お帽子さんのつばに載せる。
「おしょらをとんでるみちゃいなのじぇ!」
「おちびちゃん、しっかりつかまっていてね! これから、あんっぜんっ! なばしょにひなんするよ!」
「わ、わかったのじぇ、おとうしゃん!」
そしてれいむに向かって、
「れいむ! おるすばんをたのんだよ!」
「ゆっ! ゆっくりまかせてね!」
万事心得たとばかりに、れいむが体を反らせた。
さすがはまりさのれいむ。頼りになる。
「お、おちついてね、おちびちゃん! おちびちゃんのおうちはここだよ! こんなじかんにおそとにでたらあぶないよ!」
まりさは慌てておちびちゃんを制した。
こんな夜遅くに外に出て、人間さんのすぃーにぶつけられでもしたら大変だ。
先日事故死した近所のありすの最期を思い出し、まりさは身震いした。
彼女はまりさの目の前で死んだのだ。
「だいじょうぶだよ、おちびちゃん! おとうさんとおかあさんがついているからね!」
とは言ったものの、この空き地にいる限り、おちびちゃんはあの『どんっ』という爆音に怯え続けることになるだろう。
花火さんはとてもゆっくりしているが、反面、とても意地悪だ。先ほどのまりさのお願いも無視されてしまった。
困った。どうしたらいいのか。
ゆーんゆーんと悩んで、まりさは結論を出した。
花火さんから逃げる。それしかない。
毎日休みなく狩りに出ているまりさだ。この辺りの安全地帯もいくつか知っている。
「れいむ! まりさはおちびちゃんをつれてここからにげるよ!」
「ゆっ?」
「にげるがかち! だよ!」
言うや否や、まりさはもみあげを使って、おちびちゃんを持ち上げ、お帽子さんのつばに載せる。
「おしょらをとんでるみちゃいなのじぇ!」
「おちびちゃん、しっかりつかまっていてね! これから、あんっぜんっ! なばしょにひなんするよ!」
「わ、わかったのじぇ、おとうしゃん!」
そしてれいむに向かって、
「れいむ! おるすばんをたのんだよ!」
「ゆっ! ゆっくりまかせてね!」
万事心得たとばかりに、れいむが体を反らせた。
さすがはまりさのれいむ。頼りになる。
どんっ。
ぱらぱらぱらっ。
ぱらぱらぱらっ。
「ゆええええん! おとうしゃああああん!?」
「そ、それじゃ、ゆっくりいってきます! れいむ!」
「にんげんさんのすぃーにきをつけて、ゆっくりいってらっしゃい! いってらっしゃいの、ちゅっちゅだよ! ちゅっ!」
ほっぺにれいむのちゅっちゅを受けて、まりさは空き地を飛び出した。
さて、どこに逃げようか。
とにかく遠くへ――あっちの路地裏へ行ってみよう。
「そ、それじゃ、ゆっくりいってきます! れいむ!」
「にんげんさんのすぃーにきをつけて、ゆっくりいってらっしゃい! いってらっしゃいの、ちゅっちゅだよ! ちゅっ!」
ほっぺにれいむのちゅっちゅを受けて、まりさは空き地を飛び出した。
さて、どこに逃げようか。
とにかく遠くへ――あっちの路地裏へ行ってみよう。
どんっ。
ぱらぱらぱらっ。
ぱらぱらぱらっ。
「ゆええええん! たしゅけて、おとうしゃああああん!」
「お、おちびちゃん! ゆっくり! ゆっくりしていってね!」
「はなびしゃん! もういじわりゅしないでほちいのじぇええええ!」
人間さんのすぃーをやりすごしながら、ようやく路地裏に逃げ込んだものの、それでも花火さんは追って来た。
お空に咲く大きなお花こそ見えなくなったものの、おちびちゃんが怖がる大きな音はいまだに届いてくる。
意地悪な人間さんや犬さんから身を隠すのに重宝するこの場所も、花火さんには通用しないようだ。
「おちびちゃん! いますぐいどうするよ!」
「ゆええええん! ゆええええん!」
早く別の場所に逃げよう。
今度はこっちの林だ。
「お、おちびちゃん! ゆっくり! ゆっくりしていってね!」
「はなびしゃん! もういじわりゅしないでほちいのじぇええええ!」
人間さんのすぃーをやりすごしながら、ようやく路地裏に逃げ込んだものの、それでも花火さんは追って来た。
お空に咲く大きなお花こそ見えなくなったものの、おちびちゃんが怖がる大きな音はいまだに届いてくる。
意地悪な人間さんや犬さんから身を隠すのに重宝するこの場所も、花火さんには通用しないようだ。
「おちびちゃん! いますぐいどうするよ!」
「ゆええええん! ゆええええん!」
早く別の場所に逃げよう。
今度はこっちの林だ。
どんっ。
ぱらぱらぱらっ。
ぱらぱらぱらっ。
「ゆええええん! たしゅけて、おとうしゃああああん!」
「お、おちびちゃん! ゆっくり! ゆっくりしていってね!」
「はなびしゃん! もういじわりゅしないでほちいのじぇええええ!」
人間さんのすぃーをやりすごしながら、ようやく林に逃げ込んだものの、それでも花火さんは追って来た。
お空に咲く大きなお花こそ見えなくなったものの、おちびちゃんが怖がる大きな音はいまだに届いてくる。
怖い人間さんや猫さんから身を隠すのに重宝するこの場所も、花火さんには通用しないようだ。
「おちびちゃん! いますぐいどうするよ!」
「ゆええええん! ゆええええん!」
早く別の場所に逃げよう。
今度はそっちの電柱の影だ。
「お、おちびちゃん! ゆっくり! ゆっくりしていってね!」
「はなびしゃん! もういじわりゅしないでほちいのじぇええええ!」
人間さんのすぃーをやりすごしながら、ようやく林に逃げ込んだものの、それでも花火さんは追って来た。
お空に咲く大きなお花こそ見えなくなったものの、おちびちゃんが怖がる大きな音はいまだに届いてくる。
怖い人間さんや猫さんから身を隠すのに重宝するこの場所も、花火さんには通用しないようだ。
「おちびちゃん! いますぐいどうするよ!」
「ゆええええん! ゆええええん!」
早く別の場所に逃げよう。
今度はそっちの電柱の影だ。
どんっ。
ぱらぱらぱらっ。
ぱらぱらぱらっ。
「ゆびゃああああん! ゆびゃああああん! もうやめちぇええええっ!」
「ゆひい……ゆひい……」
「ゆびゃああああっ! ゆぎゃああああんっ!」
「おび、ちゃん……ゆっくり、ゆっくりい……。はあ、ふう……」
恐怖と眠気と疲れで、おちびちゃんはもう手がつけられなくなっている。
そんなおちびちゃんをお帽子さんに載せてあちこち飛び回っているまりさも、もう限界だ。疲れた。
電柱の影にベンチの下。
家族でピクニックに行った野原、お散歩コースの公園、ゆっくりたちの寄り合い所――まりさたちの逃げ場はどこにも無かった。
あてもなくあちこち歩いた挙句、また最初の路地裏に戻ってきてしまった。
「ゆひい……ゆひい……」
「ゆびゃああああっ! ゆぎゃああああんっ!」
「おび、ちゃん……ゆっくり、ゆっくりい……。はあ、ふう……」
恐怖と眠気と疲れで、おちびちゃんはもう手がつけられなくなっている。
そんなおちびちゃんをお帽子さんに載せてあちこち飛び回っているまりさも、もう限界だ。疲れた。
電柱の影にベンチの下。
家族でピクニックに行った野原、お散歩コースの公園、ゆっくりたちの寄り合い所――まりさたちの逃げ場はどこにも無かった。
あてもなくあちこち歩いた挙句、また最初の路地裏に戻ってきてしまった。
どんっ。
ぱらぱらぱらっ。
ぱらぱらぱらっ。
「ごあいよおおおおっ! ごあいよおおおおっ!」
「ゆう、こまったよ……まりさ、ゆっくりこまったよ……」
道すがら出会った他のゆっくりの家族たちの中にも、同じように花火さんの音に泣き叫ぶおちびちゃんを――だけでなく、大人も――見かけた。
まりさやおちびちゃんだけでなく、ゆっくりみんなの危機だったらしい。
さっき会ったゆっくりの一人が言っていた。「これは、はなびさんによる『はるまげどんっ!』だよ!」と。
――はるまげどんっ!?
「ゆゆっ!? ゆっくりおもいだしたよ!」
思わず声に出す。
むこうを流れる川の対岸にある、人間さんが捨てていった『ものおき』。
それはおうちとして使うのに便利そうなゆっくりとした形をしているが、しかし誰も住んではいけないことになっている。
なぜなら、『はるまげどんっ!』――言葉の意味はわからない――の時にその『ものおき』を『しぇるたー』として活用しようと、この辺一帯のゆっくり達で決めたからだ。
まりさは知らなかったが、『しぇるたー』のことを教えてくれた物知りなゆっくりによると、それはとても凄いものらしい。
今は開きっぱなしになっているその入口の扉は、閉めたが最後、誰にも開けられないという。
小石を何個投げつけようと、ゆっくり数人がかりで体当たりしようと、扉はびくともしない。
しかも外側だけでなく、内側の守りも万全と聞く。
例えば『はるまげどんっ!』の最中、やんちゃなおちびちゃんがうっかり『しぇるたー』のお外に出ようとすることもあるだろう。
しかし、そんな困った時にも大丈夫。絶対に内側から扉を開けることはできないというのだ。
「ゆう、こまったよ……まりさ、ゆっくりこまったよ……」
道すがら出会った他のゆっくりの家族たちの中にも、同じように花火さんの音に泣き叫ぶおちびちゃんを――だけでなく、大人も――見かけた。
まりさやおちびちゃんだけでなく、ゆっくりみんなの危機だったらしい。
さっき会ったゆっくりの一人が言っていた。「これは、はなびさんによる『はるまげどんっ!』だよ!」と。
――はるまげどんっ!?
「ゆゆっ!? ゆっくりおもいだしたよ!」
思わず声に出す。
むこうを流れる川の対岸にある、人間さんが捨てていった『ものおき』。
それはおうちとして使うのに便利そうなゆっくりとした形をしているが、しかし誰も住んではいけないことになっている。
なぜなら、『はるまげどんっ!』――言葉の意味はわからない――の時にその『ものおき』を『しぇるたー』として活用しようと、この辺一帯のゆっくり達で決めたからだ。
まりさは知らなかったが、『しぇるたー』のことを教えてくれた物知りなゆっくりによると、それはとても凄いものらしい。
今は開きっぱなしになっているその入口の扉は、閉めたが最後、誰にも開けられないという。
小石を何個投げつけようと、ゆっくり数人がかりで体当たりしようと、扉はびくともしない。
しかも外側だけでなく、内側の守りも万全と聞く。
例えば『はるまげどんっ!』の最中、やんちゃなおちびちゃんがうっかり『しぇるたー』のお外に出ようとすることもあるだろう。
しかし、そんな困った時にも大丈夫。絶対に内側から扉を開けることはできないというのだ。
どんっ。
ぱらぱらぱらっ。
ぱらぱらぱらっ。
「ゆっぐ……! ゆっぐ……! もう、や、なのじぇ……ええ…!」
まりさは決断した。川を渡って『しぇるたー』まで行こう。
この花火さんから――『はるまげどんっ!』から逃げるには、もうそれしかない。
こんな夜に、おちびちゃんを連れて、しかも昨日までの雨で増水しているであろう川を渡るのは正直不安だ。
水の上を進む相棒であるまりさの大切なお帽子さんにも、きっと無理をさせてしまうだろう。
しかし、その先に安全でゆっくりできる場所が待っているというのなら、多少の無茶は承知の上だ。
とにかく急がなくては。
一足先に辿りついているであろうゆっくり達が、『しぇるたー』の入口をを閉ざしてしまう前に早く。
一度閉められた扉は、内側からも外側からも開けられないのだから。
「まりさとおちびちゃんがいくまで、ゆっくりまっててね!」
気合を入れて、まりさは路地裏から飛び出した。
そこに、一瞬の閃光。
花火さん?
まりさは決断した。川を渡って『しぇるたー』まで行こう。
この花火さんから――『はるまげどんっ!』から逃げるには、もうそれしかない。
こんな夜に、おちびちゃんを連れて、しかも昨日までの雨で増水しているであろう川を渡るのは正直不安だ。
水の上を進む相棒であるまりさの大切なお帽子さんにも、きっと無理をさせてしまうだろう。
しかし、その先に安全でゆっくりできる場所が待っているというのなら、多少の無茶は承知の上だ。
とにかく急がなくては。
一足先に辿りついているであろうゆっくり達が、『しぇるたー』の入口をを閉ざしてしまう前に早く。
一度閉められた扉は、内側からも外側からも開けられないのだから。
「まりさとおちびちゃんがいくまで、ゆっくりまっててね!」
気合を入れて、まりさは路地裏から飛び出した。
そこに、一瞬の閃光。
花火さん?
どんっ。
べしゃべしゃべしゃっ。
べしゃべしゃべしゃっ。
気がつくと地面に寝そべっていた。
「ゆぐぐ……いだいよう……いだいよう……」
何が起こったのだろう。
路地裏を飛び出した瞬間だ。
目の前が明るくなったと思ったら、大きくて硬い何かぶつかってきて、まりさとおちびちゃんはそのまま宙に投げ出された。
その時の衝撃で気を失っていたらしい。
「ゆぎいい……おづむがいだいよう……おめめがいだいよう……ほっぺがあ……いだいようううう」
体中が痛い。
特に左側のおつむが、おめめが、ほっぺが酷く痛む。
それらの部位が熱く焼け付くような、それでいて失われてしまったかのような感覚。
気を失いそう激痛の中で、まりさは先日事故死したありすのことを思い出した。
人間さんのすぃーに跳ね飛ばされ、体半分を吹き飛ばされたあのありす。
今の自分と同じように、苦しそうに身もだえしていたあの姿。
「ゆ……ああ……!」
そして、まりさは自分の置かれている状況を理解した。
先ほど自分にぶつかってきた大きくて硬いものは、人間さんのすぃーだ。
まりさはありすと同じように、人間さんのすぃーに撥ねられてしまったのだ。
「ゆぐう……ゆっぐううう……」
痛みよりも情けなさで涙が出てくる。
出かける前、れいむが「にんげんさんのすぃーにきをつけて」と言っていたではないか。
自分でもおちびちゃんに「おそとにでたらあぶないよ!」と注意しておきながらこの有様だ。
「ゆあっ……! おぢびぢゃっ……!」
そうだ。おちびちゃんだ。
まりさのお帽子さんの上にいたおちびちゃんは無事だろうか。まりさのように、痛く苦しい思いをしていないだろうか。
痛みをこらえて体を起こすと、あんよが、べちゃりと嫌な音を立てた。
おさげをついてバランスを取ろうとしたが無理だった。そこに存在していないかのように、おさげの感覚がまるでない。
右目を動かし――左目の前は真っ暗だ――辺りを見やる。
まりさの素敵なお帽子さんが見えた。
その横に、おちびちゃんはいた。
「おぢびぢゃっ……!」
おちびちゃんの体は薄く、平らになっていた。ぺしゃんこだ。
暗い夜の中にあってもそれとよくわかる黒い餡子の中に、おちびちゃんの体は沈んでいた。
真ん丸くてころころとしていた、まりさとれいむの可愛いおちびちゃんの面影はまるでない。
「おぢびっ……! いばっ……いぐよっ……! ずーり、ずーり……」
とにかく急いで側に行って、ぺーろぺーろしてあげよう。そうすれば、きっと元気になる。
ずーりずーりと地面を這っていると、急に辺りが明るくなった。
花火さん? ――いや違う。
「ゆぐぐ……いだいよう……いだいよう……」
何が起こったのだろう。
路地裏を飛び出した瞬間だ。
目の前が明るくなったと思ったら、大きくて硬い何かぶつかってきて、まりさとおちびちゃんはそのまま宙に投げ出された。
その時の衝撃で気を失っていたらしい。
「ゆぎいい……おづむがいだいよう……おめめがいだいよう……ほっぺがあ……いだいようううう」
体中が痛い。
特に左側のおつむが、おめめが、ほっぺが酷く痛む。
それらの部位が熱く焼け付くような、それでいて失われてしまったかのような感覚。
気を失いそう激痛の中で、まりさは先日事故死したありすのことを思い出した。
人間さんのすぃーに跳ね飛ばされ、体半分を吹き飛ばされたあのありす。
今の自分と同じように、苦しそうに身もだえしていたあの姿。
「ゆ……ああ……!」
そして、まりさは自分の置かれている状況を理解した。
先ほど自分にぶつかってきた大きくて硬いものは、人間さんのすぃーだ。
まりさはありすと同じように、人間さんのすぃーに撥ねられてしまったのだ。
「ゆぐう……ゆっぐううう……」
痛みよりも情けなさで涙が出てくる。
出かける前、れいむが「にんげんさんのすぃーにきをつけて」と言っていたではないか。
自分でもおちびちゃんに「おそとにでたらあぶないよ!」と注意しておきながらこの有様だ。
「ゆあっ……! おぢびぢゃっ……!」
そうだ。おちびちゃんだ。
まりさのお帽子さんの上にいたおちびちゃんは無事だろうか。まりさのように、痛く苦しい思いをしていないだろうか。
痛みをこらえて体を起こすと、あんよが、べちゃりと嫌な音を立てた。
おさげをついてバランスを取ろうとしたが無理だった。そこに存在していないかのように、おさげの感覚がまるでない。
右目を動かし――左目の前は真っ暗だ――辺りを見やる。
まりさの素敵なお帽子さんが見えた。
その横に、おちびちゃんはいた。
「おぢびぢゃっ……!」
おちびちゃんの体は薄く、平らになっていた。ぺしゃんこだ。
暗い夜の中にあってもそれとよくわかる黒い餡子の中に、おちびちゃんの体は沈んでいた。
真ん丸くてころころとしていた、まりさとれいむの可愛いおちびちゃんの面影はまるでない。
「おぢびっ……! いばっ……いぐよっ……! ずーり、ずーり……」
とにかく急いで側に行って、ぺーろぺーろしてあげよう。そうすれば、きっと元気になる。
ずーりずーりと地面を這っていると、急に辺りが明るくなった。
花火さん? ――いや違う。
どんっ。
べしゃべしゃべしゃっ。
べしゃべしゃべしゃっ。
金色の髪。もちもちお肌。餡子。
それらがそこかしこに飛び散っていて、どこにおちびちゃんがいるのか、どれがおちびちゃんなのかがわからない。
いや、あれはまりさ自身の体か?
わからない。まりさには判断できない。もう、おちびちゃんがどこにいるのかがわからない。
――ごめんね、おちびちゃん。情けないお父さんで本当にごめんね。
そう言おうとして、口が無くなっていることに気がついた。
ありすの最期を思い出す。
人間さんのすぃーによって体半分を失ってしまったありす。
まりさは彼女を救うために飛び出そうとしたが、それはできなかった。
すぐに別の人間さんのすぃーが走ってきたからだ。
そのすぃーは、苦しんでいるありすを踏んだ。
すぃーが走り去ると、また別のすぃーがありすの体を襲う。
ぶつけられ、撥ねられ、踏まれたありすの体は、どんどん小さくなっていった。
おちびちゃんよりも、ずっとずっと、小さく、小さく。
そして、ありすは死んだ。いつの間にか死んでいた。
それらがそこかしこに飛び散っていて、どこにおちびちゃんがいるのか、どれがおちびちゃんなのかがわからない。
いや、あれはまりさ自身の体か?
わからない。まりさには判断できない。もう、おちびちゃんがどこにいるのかがわからない。
――ごめんね、おちびちゃん。情けないお父さんで本当にごめんね。
そう言おうとして、口が無くなっていることに気がついた。
ありすの最期を思い出す。
人間さんのすぃーによって体半分を失ってしまったありす。
まりさは彼女を救うために飛び出そうとしたが、それはできなかった。
すぐに別の人間さんのすぃーが走ってきたからだ。
そのすぃーは、苦しんでいるありすを踏んだ。
すぃーが走り去ると、また別のすぃーがありすの体を襲う。
ぶつけられ、撥ねられ、踏まれたありすの体は、どんどん小さくなっていった。
おちびちゃんよりも、ずっとずっと、小さく、小さく。
そして、ありすは死んだ。いつの間にか死んでいた。
どんっ。
べしゃべしゃべしゃっ。
べしゃべしゃべしゃっ。
とにかく逃げなければならない。ここから離れなければならない。
れいむの元に帰って、おちびちゃんのことを謝らなければならない。
まりさはもっとゆっくりしたい。こんな所で死にたくない。
逃げなければ。逃げなければ。
路地裏に。
林に。
『しぇるたー』に逃げなければ。
れいむの元に帰って、おちびちゃんのことを謝らなければならない。
まりさはもっとゆっくりしたい。こんな所で死にたくない。
逃げなければ。逃げなければ。
路地裏に。
林に。
『しぇるたー』に逃げなければ。
そういえば、あれほど追いかけてきた花火さんの音が、いつの間にか聞こえなくなっていた。
ならばもう安心だ。
ならばもう安心だ。
――もう逃げなくても大丈夫だよ。良かったね、おちびちゃん。
どんっ。
(了)
作:藪あき