ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1567 口を開けると
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ankoss
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空に青。
庭に緑。
実に爽やかな朝だった。
その男は、朝の清涼な空気を満身にて堪能すべく、朝っぱらから、一人宴会を開催していた。
庭に緑。
実に爽やかな朝だった。
その男は、朝の清涼な空気を満身にて堪能すべく、朝っぱらから、一人宴会を開催していた。
彼は、若くして庭付き一戸建てに住んでいる。とはいっても、有してはいない。借家だった。
それに庭付きといっても、ブロック塀によって仕切られたその庭の面積は、猫の額ほどでしかない。
それでも、青々と茂る芝生や、子ぶりながらもよく整えられた花壇には、
庭に対する愛情がうかがい知れるのだった。
自慢の箱庭を見つめながらの一人宴会が、男にとって、この世のなかで二番目の娯楽だった。
縁側に座る男の右手には、ビール缶が持たれている。左手側には陶器皿が鎮座しており、
その皿には黒々としたタレが注がれ、焼き鳥の串が二本、ひたされていた。
男は深く嘆息した。
一人宴会はかれの趣味だ。
友人知人にも公言しているし、自慢もしている。
ところが、これは彼の人生における次席を占めているにすぎなかった。
それに庭付きといっても、ブロック塀によって仕切られたその庭の面積は、猫の額ほどでしかない。
それでも、青々と茂る芝生や、子ぶりながらもよく整えられた花壇には、
庭に対する愛情がうかがい知れるのだった。
自慢の箱庭を見つめながらの一人宴会が、男にとって、この世のなかで二番目の娯楽だった。
縁側に座る男の右手には、ビール缶が持たれている。左手側には陶器皿が鎮座しており、
その皿には黒々としたタレが注がれ、焼き鳥の串が二本、ひたされていた。
男は深く嘆息した。
一人宴会はかれの趣味だ。
友人知人にも公言しているし、自慢もしている。
ところが、これは彼の人生における次席を占めているにすぎなかった。
もうひとつ。
彼は、ゆっくりいじめも嗜んでいた。
彼は、ゆっくりいじめも嗜んでいた。
ただし、こちらは公言していない。
自慢もしてない。
「空からゆっくりが降ってこねえかなぁ……」
一見すれば生首が動いているようにも見える、不思議生物ゆっくり。
動く饅頭、ゆっくり。
あらゆる生きものの例外となった、ゆっくり。
人語を解する饅頭、罰あたり生きもの筆頭格、ゆっくり。
空から降ってきてもおかしくはない。
無謀なことを考えつつ、男は焼き鳥の刺さった竹串を手に取って、口にはこんだ。
自慢もしてない。
「空からゆっくりが降ってこねえかなぁ……」
一見すれば生首が動いているようにも見える、不思議生物ゆっくり。
動く饅頭、ゆっくり。
あらゆる生きものの例外となった、ゆっくり。
人語を解する饅頭、罰あたり生きもの筆頭格、ゆっくり。
空から降ってきてもおかしくはない。
無謀なことを考えつつ、男は焼き鳥の刺さった竹串を手に取って、口にはこんだ。
いままさに宴会が終わろうとしたときだった。
焼肉は終わっているし、ビールもすべて胃の腑に容れてしまっている。
門の方から、声がした。
「ゆゆ! くささんが、ぼーぼーだよ!」
男はその声を耳にして、歓喜の雄叫びを上げるの必死で耐えた。
なんという僥倖か。
一人宴会が終了したまさにそのとき、ゆっくりれいむがご登場だ。
「おちびちゃんたち! ここだよ! ここでむーしゃむーしゃができるよ!」
しかも家族連れだった。
男は縁側に座ったまま、闖入者を観察した。
一家のあるじと思わしきは成体れいむ。相変わらず、見ているだけで舌打ちしたくなるふてぶてしさだ。
ところが、その足もとと呼ぶべきところに群がっている子供を見たとき、男の苛立ちは吹き飛んだ。
(おお……)
大家族だった。れいむに付き従っている子供の数は、十匹もいた。
その種類としては、れいむ種とまりさ種がそれぞれ五匹ずつだった。
つがいの姿は見えなかった。
饅頭どもが言うところの、「しんぐるまざー」というやつかもしれない。もっとも、そうと決まったわけではないが。
「おちびちゃんたち!」
母れいむは、子供らに声をかける。
「ここにはにんげんさんが すんでいるかもしれないよ!
だから、そろーりだよ! いいかい、そろーりだよ!」
よし。
と、男はゆっくりに感謝した。制裁理由も提供してくれた。
「しょりょーりだよー!」
十匹の子供たちは母親の忠告に、声を揃えて答えるのだった。
その様子は、しっかりばっちり、この庭の占有者たる若者に観察されていた。
忠告が行き渡ったことを確認すると、れいむ一家は侵入に手を付けた。
「そろぉぉぉぉぉりぃぃッッ! すォろぉぉぉぉぉりぃぃッッ!」
母れいむは歌い上げながら這いだした。
その顔は自信に溢れている。口もとには微笑を浮かべているし、目は真っ直ぐに前方を向いている。勇ましいといえば、勇ましい。
男はゆっくりの視界の狭さに、いまさらながら、呆れた。
縁側に座っている人間が見えていないのだろうが。
(みえていないんだろうなあ……)
食いもの欲しさに視野狭窄に陥っているに相違ない。
母親の自信によって不安が打ち消されているのか、子供たちも声をあわせて、キャッキャと跳ねまわりながら母れいむの跡をつけた。
「しょりょーりー♪ しょりょーりー♪」
「しょりょーりー♪ しょりょーりー♪」
「しょりょーりー♪ しょりょーりー♪」
「しょりょーりー♪ しょりょーりー♪」
「しょりょーりー♪ しょりょーりー♪」
まるで大名行列だ。
それに十匹もの合唱となると、さすがにうるさい。
これで忍び足のつもりなのだから、手に負えない。
やがて、合計十一匹のゆっくりは、庭の真ん中にまでやってきた。
「おちびちゃんたち! もういいんだよ! ゆっくりぷれいすにごとうちゃくだよ!」
進軍が停止した。
焼肉は終わっているし、ビールもすべて胃の腑に容れてしまっている。
門の方から、声がした。
「ゆゆ! くささんが、ぼーぼーだよ!」
男はその声を耳にして、歓喜の雄叫びを上げるの必死で耐えた。
なんという僥倖か。
一人宴会が終了したまさにそのとき、ゆっくりれいむがご登場だ。
「おちびちゃんたち! ここだよ! ここでむーしゃむーしゃができるよ!」
しかも家族連れだった。
男は縁側に座ったまま、闖入者を観察した。
一家のあるじと思わしきは成体れいむ。相変わらず、見ているだけで舌打ちしたくなるふてぶてしさだ。
ところが、その足もとと呼ぶべきところに群がっている子供を見たとき、男の苛立ちは吹き飛んだ。
(おお……)
大家族だった。れいむに付き従っている子供の数は、十匹もいた。
その種類としては、れいむ種とまりさ種がそれぞれ五匹ずつだった。
つがいの姿は見えなかった。
饅頭どもが言うところの、「しんぐるまざー」というやつかもしれない。もっとも、そうと決まったわけではないが。
「おちびちゃんたち!」
母れいむは、子供らに声をかける。
「ここにはにんげんさんが すんでいるかもしれないよ!
だから、そろーりだよ! いいかい、そろーりだよ!」
よし。
と、男はゆっくりに感謝した。制裁理由も提供してくれた。
「しょりょーりだよー!」
十匹の子供たちは母親の忠告に、声を揃えて答えるのだった。
その様子は、しっかりばっちり、この庭の占有者たる若者に観察されていた。
忠告が行き渡ったことを確認すると、れいむ一家は侵入に手を付けた。
「そろぉぉぉぉぉりぃぃッッ! すォろぉぉぉぉぉりぃぃッッ!」
母れいむは歌い上げながら這いだした。
その顔は自信に溢れている。口もとには微笑を浮かべているし、目は真っ直ぐに前方を向いている。勇ましいといえば、勇ましい。
男はゆっくりの視界の狭さに、いまさらながら、呆れた。
縁側に座っている人間が見えていないのだろうが。
(みえていないんだろうなあ……)
食いもの欲しさに視野狭窄に陥っているに相違ない。
母親の自信によって不安が打ち消されているのか、子供たちも声をあわせて、キャッキャと跳ねまわりながら母れいむの跡をつけた。
「しょりょーりー♪ しょりょーりー♪」
「しょりょーりー♪ しょりょーりー♪」
「しょりょーりー♪ しょりょーりー♪」
「しょりょーりー♪ しょりょーりー♪」
「しょりょーりー♪ しょりょーりー♪」
まるで大名行列だ。
それに十匹もの合唱となると、さすがにうるさい。
これで忍び足のつもりなのだから、手に負えない。
やがて、合計十一匹のゆっくりは、庭の真ん中にまでやってきた。
「おちびちゃんたち! もういいんだよ! ゆっくりぷれいすにごとうちゃくだよ!」
進軍が停止した。
「ぎょはんしゃんが いっぴゃい~」
一匹のれいむが、辺りを見渡してそう言った。
ごはんとは、云うまでもなく芝生のことだ。庭の主の愛顧もひとしおの箱庭のことだ。
「おいちちょ~なんだじぇ~、いっぱいあるんだじぇ~」
別の子まりさは、とめどもなく涎を垂らし、来たるべき「ちあわちぇ」に身震いするのだった。
「くささんたち! きゃわいい れいみゅのために いっぱい はえてくれたんだね!」
別の子れいむは、嬉しさのあまり跳ねまわっている。
「しゅっきゅりぃ~~~」
さらに別の子まりさが、なんの脈絡もなく排泄を開始した。
「くちゃいぃぃぃぃ!」
その隣にいた子れいむは、突然のうんうんに驚き、泣きながら跳ねまわっていた。
「おちびちゃんたち!」
母れいむの一喝によって、子供たちは動きを止めた。この統率力を見たとき、男はほうと息を吐いた。
十一匹のゆっくりどもが、同時に息を吸い、そして、同時に声を張った。
「れいむの!」
「れいみゅの!」
「まりちゃの!」
『すーぱーな! みらくるな! はっぴぃな! むーちゃ! むーちゃ! たいむ! はっじまっるはっじまっるはっじまっるよ~~~♪』
妙な節回しだと、男は脱力しそうになった。
さて、これ以上放っておかれると丹精を籠めた庭が好き勝手に荒らされてしまう。
男は右手を動かした。
飲み干したビール缶が倒れて、金属音が奏でられた。
一匹のれいむが、辺りを見渡してそう言った。
ごはんとは、云うまでもなく芝生のことだ。庭の主の愛顧もひとしおの箱庭のことだ。
「おいちちょ~なんだじぇ~、いっぱいあるんだじぇ~」
別の子まりさは、とめどもなく涎を垂らし、来たるべき「ちあわちぇ」に身震いするのだった。
「くささんたち! きゃわいい れいみゅのために いっぱい はえてくれたんだね!」
別の子れいむは、嬉しさのあまり跳ねまわっている。
「しゅっきゅりぃ~~~」
さらに別の子まりさが、なんの脈絡もなく排泄を開始した。
「くちゃいぃぃぃぃ!」
その隣にいた子れいむは、突然のうんうんに驚き、泣きながら跳ねまわっていた。
「おちびちゃんたち!」
母れいむの一喝によって、子供たちは動きを止めた。この統率力を見たとき、男はほうと息を吐いた。
十一匹のゆっくりどもが、同時に息を吸い、そして、同時に声を張った。
「れいむの!」
「れいみゅの!」
「まりちゃの!」
『すーぱーな! みらくるな! はっぴぃな! むーちゃ! むーちゃ! たいむ! はっじまっるはっじまっるはっじまっるよ~~~♪』
妙な節回しだと、男は脱力しそうになった。
さて、これ以上放っておかれると丹精を籠めた庭が好き勝手に荒らされてしまう。
男は右手を動かした。
飲み干したビール缶が倒れて、金属音が奏でられた。
「ゆ?」
母親が音源のほうへと、すなわち男へと顔を向けた。
「ゆゆ?」
子ゆっくりたちもそれに倣う。
当然、ゆっくりたちの視線の先には人間の姿がある。
母れいむはいささか驚いていたが、恐怖はせずに、すかさず子ゆっくりたちに命じた。
「にんげんさんが いるよ! にんげんさんはゆっくりできないよ!
おちびちゃんたち!」
母れいむは大口を開けはなった。
「おちびちゃんたち、おかーさんのおくちのなかにはいってね!」
階段代わりに、べろりと舌を伸ばす。
「ゆゆ~♪」
子ゆっくりらは、従順に母の口のなかへと突き進んでゆく。
ただし、遅い。
これが非難かと逃亡かと疑わしくなるほどに、遅々としている。義務教育の避難訓練のほうが遥かにやる気がうかがえる。
「おかーさんのおくちにはいれば、あんっっぜんだよ!」
「ゆ~~♪」
たっぷりと時間をかけて、一匹目の子ゆっくり、まりさが母親の口内に納まった。
ところが、
「……むーちゃ、むーちゃ」
一匹の子れいむは、芝生を食っていた。空腹が危機感を打ち負かしたらしい。
ゆっくりにとっては別段、珍しくもなんともない。
「ちあわちぇ~」
涎を垂らし、目を輝かせて、誰にでもなく幸福感を宣言した。
それを見た他の子ゆっくりたちは、つづけとばかりに辺りの芝生を食みはじめた。
後は、まったくもって混沌とした様相が呈せられた。
「たべしゅぎちゃったよ! うんうんするよ! ……うんうんさん、でておいで~」
また別のれいむは、垂れ流しを宣言した。
「ちゅっきりー!」
垂れ流し完了。
「まけないのぜ! まりちゃはしーしーしゅりゅのぜ! いくのぜ! ゆっくりすぱーくなのぜ!」
別の一匹は、対抗意識を燃やして、
「ちゅっきりー!」
こちらも完了。
「ゆ! むしさんがいりゅよ! まちぇ~~~」
さらに別のれいむは、虫の気をとられた。
「そうだ! まりちゃは あいどるになるんだったんだぜ! おうたのれんしゅうなのぜ!」
突然に躍り出すまりさも出る始末。
「おちびちゃんたち! さっさとかくれてね!」
さすがの母れいむも、急かしにかかった。さすがに人間の存在を忘れてはいなかった。
「うりゅさいよ!」
ところが、戻ってきた反応は何とも反抗的なものだった。近くにいたまりさが抗議の声を上げた。
「むちゃむちゃなんだぜ! むちゃむちゃしか きょうみないんだぜ!」
勇ましい抗議だ。まりさに同調するゆっくりども多数。
避難勧告する母れいむ。避難完了の子れいむ。避難反抗の子まりさ。
その他、糞尿垂れ流し合戦に全力をつくす赤ゆっくり、虫追いを開始してしまった赤れいむ、睡眠する赤まりさ……。
なんともカオスな光景が展開されているのだった。
その後、紆余曲折がありながらも、結局は十分近くかかってから、子供たちは母の体内に避難を完了したのだった。
母親が音源のほうへと、すなわち男へと顔を向けた。
「ゆゆ?」
子ゆっくりたちもそれに倣う。
当然、ゆっくりたちの視線の先には人間の姿がある。
母れいむはいささか驚いていたが、恐怖はせずに、すかさず子ゆっくりたちに命じた。
「にんげんさんが いるよ! にんげんさんはゆっくりできないよ!
おちびちゃんたち!」
母れいむは大口を開けはなった。
「おちびちゃんたち、おかーさんのおくちのなかにはいってね!」
階段代わりに、べろりと舌を伸ばす。
「ゆゆ~♪」
子ゆっくりらは、従順に母の口のなかへと突き進んでゆく。
ただし、遅い。
これが非難かと逃亡かと疑わしくなるほどに、遅々としている。義務教育の避難訓練のほうが遥かにやる気がうかがえる。
「おかーさんのおくちにはいれば、あんっっぜんだよ!」
「ゆ~~♪」
たっぷりと時間をかけて、一匹目の子ゆっくり、まりさが母親の口内に納まった。
ところが、
「……むーちゃ、むーちゃ」
一匹の子れいむは、芝生を食っていた。空腹が危機感を打ち負かしたらしい。
ゆっくりにとっては別段、珍しくもなんともない。
「ちあわちぇ~」
涎を垂らし、目を輝かせて、誰にでもなく幸福感を宣言した。
それを見た他の子ゆっくりたちは、つづけとばかりに辺りの芝生を食みはじめた。
後は、まったくもって混沌とした様相が呈せられた。
「たべしゅぎちゃったよ! うんうんするよ! ……うんうんさん、でておいで~」
また別のれいむは、垂れ流しを宣言した。
「ちゅっきりー!」
垂れ流し完了。
「まけないのぜ! まりちゃはしーしーしゅりゅのぜ! いくのぜ! ゆっくりすぱーくなのぜ!」
別の一匹は、対抗意識を燃やして、
「ちゅっきりー!」
こちらも完了。
「ゆ! むしさんがいりゅよ! まちぇ~~~」
さらに別のれいむは、虫の気をとられた。
「そうだ! まりちゃは あいどるになるんだったんだぜ! おうたのれんしゅうなのぜ!」
突然に躍り出すまりさも出る始末。
「おちびちゃんたち! さっさとかくれてね!」
さすがの母れいむも、急かしにかかった。さすがに人間の存在を忘れてはいなかった。
「うりゅさいよ!」
ところが、戻ってきた反応は何とも反抗的なものだった。近くにいたまりさが抗議の声を上げた。
「むちゃむちゃなんだぜ! むちゃむちゃしか きょうみないんだぜ!」
勇ましい抗議だ。まりさに同調するゆっくりども多数。
避難勧告する母れいむ。避難完了の子れいむ。避難反抗の子まりさ。
その他、糞尿垂れ流し合戦に全力をつくす赤ゆっくり、虫追いを開始してしまった赤れいむ、睡眠する赤まりさ……。
なんともカオスな光景が展開されているのだった。
その後、紆余曲折がありながらも、結局は十分近くかかってから、子供たちは母の体内に避難を完了したのだった。
この間、男は混沌とした避難劇場をつぶさに見守っていた。
男はかすかに肩をすくめたのち、立ち上がって、母ゆっくりの前にしゃがみこむ。
「ゆ?」
れいむの頬はぷっくりと膨らんでいた。子ゆっくりや赤ゆとはいえ十匹もいる、体積もそれなりになるだろう。
男はれいむの頭に手をおいた。
「参ったな。これじゃあ手が出せないや」
軽くかぶりを振ってみせると、れいむは誇らしげに胸を張った。
「ゆっふ~!」
口にモノを詰めているから話せない。しかしその目はこう語っている。
どうだ糞人間。
手を出せるものなら出してみろ。
「せっかく、ゆっくりをいじめる機会がやってきたのに」
「ゆゆん♪」
れいむはますます増長する。
ゆっくりをいじめる?
弱い人間さんが?
本気で言っているの?
馬鹿なの?
死ぬの?
れいむの目は、そう言っていた。
「これじゃあ、これが使えないじゃないか」
と、言って呈示してみせたのは一本の串。タレが沁みこんでどす黒く変色してしまっていた。
さすがに、れいむは身を引いた。が、男の左手が頭を抑えこんでいるために動けない。
「ゆ、ゆゆ!」
「ああ。安心して。君をいじめるつもりは全然ないよ」
「ゆぅ~♪」
露骨に安堵するれいむ。
「興味があるのは……君がその口の中に詰め込んでいる子供たちだよ」
「ゆ!」
れいむは恐怖した。
が、それも一瞬のこと、すぐに恐怖が抵抗心にとって代わられた。
おびちちゃんたちには何もさせないよ。
と、全身で訴える。
「君がその大口を開いてくれれば……この串でゆっくりたちを貫けるのに……」
心底から残念がって、またも頭を横に振った。
「ゆゆん!」
れいむも再び頬を膨らませて鉄壁の守りを誇示するのだった。
意気盛んな眼光、盛り立つ髪の毛、抵抗心を露わにするオーラは、訴えている。
絶対に。
絶対に、口を開けてやるもんか、と。
男は微笑みを浮かべながら、その言葉を口にする。
男はかすかに肩をすくめたのち、立ち上がって、母ゆっくりの前にしゃがみこむ。
「ゆ?」
れいむの頬はぷっくりと膨らんでいた。子ゆっくりや赤ゆとはいえ十匹もいる、体積もそれなりになるだろう。
男はれいむの頭に手をおいた。
「参ったな。これじゃあ手が出せないや」
軽くかぶりを振ってみせると、れいむは誇らしげに胸を張った。
「ゆっふ~!」
口にモノを詰めているから話せない。しかしその目はこう語っている。
どうだ糞人間。
手を出せるものなら出してみろ。
「せっかく、ゆっくりをいじめる機会がやってきたのに」
「ゆゆん♪」
れいむはますます増長する。
ゆっくりをいじめる?
弱い人間さんが?
本気で言っているの?
馬鹿なの?
死ぬの?
れいむの目は、そう言っていた。
「これじゃあ、これが使えないじゃないか」
と、言って呈示してみせたのは一本の串。タレが沁みこんでどす黒く変色してしまっていた。
さすがに、れいむは身を引いた。が、男の左手が頭を抑えこんでいるために動けない。
「ゆ、ゆゆ!」
「ああ。安心して。君をいじめるつもりは全然ないよ」
「ゆぅ~♪」
露骨に安堵するれいむ。
「興味があるのは……君がその口の中に詰め込んでいる子供たちだよ」
「ゆ!」
れいむは恐怖した。
が、それも一瞬のこと、すぐに恐怖が抵抗心にとって代わられた。
おびちちゃんたちには何もさせないよ。
と、全身で訴える。
「君がその大口を開いてくれれば……この串でゆっくりたちを貫けるのに……」
心底から残念がって、またも頭を横に振った。
「ゆゆん!」
れいむも再び頬を膨らませて鉄壁の守りを誇示するのだった。
意気盛んな眼光、盛り立つ髪の毛、抵抗心を露わにするオーラは、訴えている。
絶対に。
絶対に、口を開けてやるもんか、と。
男は微笑みを浮かべながら、その言葉を口にする。
「ゆっくりしていってね!」
母れいむは条件反射でこう答えた。
「ゆっくりしていってね!」
本能のようなものだ。
ゆっくりにとって、ゆっくりしていってねと言われてゆっくりしていってねと答えるのは、人間で言えば息を吸ったあとにこれを吐くぐらい、当然のことだ。
れいむが口を開けると同時に、男は竹串をその大口へと突っ込んだ。もともとそのつもりだったので、実に手早く、口を閉じる隙さえ無かった。
「むぎゃっ!」
母れいむの口内から、豚の鳴声のような悲鳴がほとばしった。
れいむは発声に夢中になっていたので、何が起こったのかまるで見当がつかなかった。
それは、れいむの口内で同じようにゆっくりしていってねと答えた、子ゆっくりたちとっても同じだった。
だが、一部のゆっくりは気づいていた。自分のかたわらにいたはずの兄妹がいなくなっている、と。
男が、竹串をれいむに呈示した。
「いぢゃいよ、いぢゃぃ! ぬいちぇ!」
串の先端には、子まりさが突き刺さっていた。
竹串から逃れようともがいているが、あんよから深く突き刺さった串の前には成すすべもない。むしろ、動けば動くほど痛みが増し、体はのめりこんでゆく。
母れいむは目を剥いた。
そして子まりさに何かを言おうとした。が、男の言葉がそれを封じる。
「あ~あ。……君が口を開けなければねぇ」
母れいむは口を閉ざした。閉ざすしかない。
一方の子まりさはますます暴れている。その理由は、期待した母親の助けが無いからだった。
「おきゃぁしゃん! たちゅけてね! しゃっしゃと、まりちゃをたちゅけてね!」
助けてやりたいのはやまやまだった。
だが、髪を男に掴まれていて、何もできない。
「悪いのは君のお母さんだよ」
男が子まりさに声をかける。子まりさは痛みのあまり尿を垂れ流しはじめ、それが竹串に伝ってきていた。
「ひぎぃぃ……ゆぅ……?」
「君のお母さんが口を開けたばっかりに、君はこんなことになったんだ。……残念だね」
子まりさは、涙と尿を垂れ流しながらも、男の言葉を咀嚼した。
男の指摘が餡子脳に沁みわたったとき、
「なんでおぐちあげぢゃっだのぉ! ばがなにょぉ!?」
母れいむをなじりはじめた。
れいむは言い訳したかった。だが、口を開ければ次なる子供が犠牲になる。
「ちね! げすは、ちね!」
一方の子まりさは余計に暴れはじめていた。
「ふぅ……」
おもむろに、男は竹串の先端を地面につけた。
「ゆぶ」
子まりさが微かに押しつぶされた。男は子まりさを踏みつけたまま、竹串を抜いた。
れいむは安堵した。竹串さんが抜かれたから、子まりさが助かったと思ったのだ。
さあ、その足をどけてあげてね。
「ぶぎゅっ!」
が、男は足に力を籠めて、子まりさを踏みつぶした。呆気ない最期だった。
母れいむは、キレた。
付け加えるならば、男の予測どおりに。
ゆっくりにとって、ゆっくりしていってねと言われてゆっくりしていってねと答えるのは、人間で言えば息を吸ったあとにこれを吐くぐらい、当然のことだ。
れいむが口を開けると同時に、男は竹串をその大口へと突っ込んだ。もともとそのつもりだったので、実に手早く、口を閉じる隙さえ無かった。
「むぎゃっ!」
母れいむの口内から、豚の鳴声のような悲鳴がほとばしった。
れいむは発声に夢中になっていたので、何が起こったのかまるで見当がつかなかった。
それは、れいむの口内で同じようにゆっくりしていってねと答えた、子ゆっくりたちとっても同じだった。
だが、一部のゆっくりは気づいていた。自分のかたわらにいたはずの兄妹がいなくなっている、と。
男が、竹串をれいむに呈示した。
「いぢゃいよ、いぢゃぃ! ぬいちぇ!」
串の先端には、子まりさが突き刺さっていた。
竹串から逃れようともがいているが、あんよから深く突き刺さった串の前には成すすべもない。むしろ、動けば動くほど痛みが増し、体はのめりこんでゆく。
母れいむは目を剥いた。
そして子まりさに何かを言おうとした。が、男の言葉がそれを封じる。
「あ~あ。……君が口を開けなければねぇ」
母れいむは口を閉ざした。閉ざすしかない。
一方の子まりさはますます暴れている。その理由は、期待した母親の助けが無いからだった。
「おきゃぁしゃん! たちゅけてね! しゃっしゃと、まりちゃをたちゅけてね!」
助けてやりたいのはやまやまだった。
だが、髪を男に掴まれていて、何もできない。
「悪いのは君のお母さんだよ」
男が子まりさに声をかける。子まりさは痛みのあまり尿を垂れ流しはじめ、それが竹串に伝ってきていた。
「ひぎぃぃ……ゆぅ……?」
「君のお母さんが口を開けたばっかりに、君はこんなことになったんだ。……残念だね」
子まりさは、涙と尿を垂れ流しながらも、男の言葉を咀嚼した。
男の指摘が餡子脳に沁みわたったとき、
「なんでおぐちあげぢゃっだのぉ! ばがなにょぉ!?」
母れいむをなじりはじめた。
れいむは言い訳したかった。だが、口を開ければ次なる子供が犠牲になる。
「ちね! げすは、ちね!」
一方の子まりさは余計に暴れはじめていた。
「ふぅ……」
おもむろに、男は竹串の先端を地面につけた。
「ゆぶ」
子まりさが微かに押しつぶされた。男は子まりさを踏みつけたまま、竹串を抜いた。
れいむは安堵した。竹串さんが抜かれたから、子まりさが助かったと思ったのだ。
さあ、その足をどけてあげてね。
「ぶぎゅっ!」
が、男は足に力を籠めて、子まりさを踏みつぶした。呆気ない最期だった。
母れいむは、キレた。
付け加えるならば、男の予測どおりに。
「……なにやってんのぉッ!」
我が子の死が、母れいむを叫ばせた。とうぜん、むろん、その口が開く。
待ちかまえていたかのように、じっさい待ちかまえていたのだが、子ゆっくりどもがうじゃうじゃと蠢いている口の中に、竹串を突っ込んだ。
今度は子れいむだ。
「ばぎゃぁぁぁ! おくちあけちゃっだぁぁぁ!」
子れいむの絶叫を無視して、男は母れいむに告げた。ひどく優しい笑顔を浮かべていた。
「いいかい? 君が口を開けなければいいんだよ」
口の中にいる子ゆっくりにも聞こえるように、すこし声を張った。
効果はあった。
口内から鳴声が漏れてくる。
『おぎゃーじゃん、じぇったい、じぇったい、くちをあけちゃ だめなんだじぇ!』
『おくち あけないでね、きゃわいいれいむを まもってね、しんでもいいから まもってね!』
『ぎょわいよぉぉぉ! ゆっくりできないよぉ!』
『つぎに くちをあけたら、まりちゃが せいっさいっするんだぜ!』
『にんげんさん! おかあさんの おくちを あけないでね!』
わんわん、がやがや、実に効果的な反応だ。
「口を開けちゃったら……こうなるよ」
そう言って、足と右手を使って、子れいむから竹串を抜いた。子れいむは糞尿を漏らしているものの息は充分にある。
これを、右手の親指と人差し指で挟んだ。あんよに親指。頭上に人差し指が置かれている。
それを母れいむの眼前に持ってきた。
「はなちてね! れいみゅだから はなちてね! れいみゅするよ! はなちゃないと、れいみゅするよ!」
れいむは男の指から逃れようと暴れている。
具体的には、もみあげをぴこぴこさせている。
「みぎゃっ!」
指に力を加える。子れいむが潰れだす。母れいむは口に全力を注いでいた。
「はなぢでねっ、はなぢでね! れいみゅするりょ……れいみゅしちゃうよ……」
さらに力を加える。
それでも、見事にぴこぴこさせている。
「はなぜ……」
もっと力を加える。子れいむの口から餡子がこぼれる。
まだまだ、上下に律動させて、ぴこっぴこっさせている。
「ばな……」
遂に言葉が途切れた。
男は感嘆した。声を喪っても、まだ、まったくもってどうしようもなく、
我が子の死が、母れいむを叫ばせた。とうぜん、むろん、その口が開く。
待ちかまえていたかのように、じっさい待ちかまえていたのだが、子ゆっくりどもがうじゃうじゃと蠢いている口の中に、竹串を突っ込んだ。
今度は子れいむだ。
「ばぎゃぁぁぁ! おくちあけちゃっだぁぁぁ!」
子れいむの絶叫を無視して、男は母れいむに告げた。ひどく優しい笑顔を浮かべていた。
「いいかい? 君が口を開けなければいいんだよ」
口の中にいる子ゆっくりにも聞こえるように、すこし声を張った。
効果はあった。
口内から鳴声が漏れてくる。
『おぎゃーじゃん、じぇったい、じぇったい、くちをあけちゃ だめなんだじぇ!』
『おくち あけないでね、きゃわいいれいむを まもってね、しんでもいいから まもってね!』
『ぎょわいよぉぉぉ! ゆっくりできないよぉ!』
『つぎに くちをあけたら、まりちゃが せいっさいっするんだぜ!』
『にんげんさん! おかあさんの おくちを あけないでね!』
わんわん、がやがや、実に効果的な反応だ。
「口を開けちゃったら……こうなるよ」
そう言って、足と右手を使って、子れいむから竹串を抜いた。子れいむは糞尿を漏らしているものの息は充分にある。
これを、右手の親指と人差し指で挟んだ。あんよに親指。頭上に人差し指が置かれている。
それを母れいむの眼前に持ってきた。
「はなちてね! れいみゅだから はなちてね! れいみゅするよ! はなちゃないと、れいみゅするよ!」
れいむは男の指から逃れようと暴れている。
具体的には、もみあげをぴこぴこさせている。
「みぎゃっ!」
指に力を加える。子れいむが潰れだす。母れいむは口に全力を注いでいた。
「はなぢでねっ、はなぢでね! れいみゅするりょ……れいみゅしちゃうよ……」
さらに力を加える。
それでも、見事にぴこぴこさせている。
「はなぜ……」
もっと力を加える。子れいむの口から餡子がこぼれる。
まだまだ、上下に律動させて、ぴこっぴこっさせている。
「ばな……」
遂に言葉が途切れた。
男は感嘆した。声を喪っても、まだ、まったくもってどうしようもなく、
「ぴこッッッ!!! ぴこッッッ!!!」
させている。
母れいむは無言で我が子の死を見つめるしかなかった。
一方、子れいむの今わの際は、口内の子供たちにも伝わったらしく、狂騒を呈しつつあった。
『れいみゅがぢんじゃっだぁぁぁ!』
『ゆ? だれなんだぜ? まりさのおぼーしに、きたないしーしーをかけている、げーすげーすは、だれなんだぜ!』
『ゆんやー、ゆんやー』
『ぷくーするよ!』
『ぷくーはごわいよぉぉぉッ』
『ふごっ……おくちに……うんうん……』
『しゅっきりー!』
『れいみゅ! れいみゅ! れいみゅ! れいみゅ! れいみゅ! れいみゅ! れいみゅ! れいみゅ! れいみゅ! れいみゅ!』
『まけにゃいぜ! まりちゃ! まりちゃ! まりちゃ! まりちゃ! まりちゃ! まりちゃ! まりちゃ! まりちゃ! まりちゃ!』
とにかく混乱している。
「ゆ……ゆぅ!」
母れいむは口を真一文字に切り結ぶ。
その勇ましき様は、誓いを意味していた。
絶対に。
絶対に口を開かない。
何が起ころうとも。口は開かないと。
男は母れいむを持っている左腕に力を入れた。
そして、母れいむを持ちあげた。
母れいむは無言で我が子の死を見つめるしかなかった。
一方、子れいむの今わの際は、口内の子供たちにも伝わったらしく、狂騒を呈しつつあった。
『れいみゅがぢんじゃっだぁぁぁ!』
『ゆ? だれなんだぜ? まりさのおぼーしに、きたないしーしーをかけている、げーすげーすは、だれなんだぜ!』
『ゆんやー、ゆんやー』
『ぷくーするよ!』
『ぷくーはごわいよぉぉぉッ』
『ふごっ……おくちに……うんうん……』
『しゅっきりー!』
『れいみゅ! れいみゅ! れいみゅ! れいみゅ! れいみゅ! れいみゅ! れいみゅ! れいみゅ! れいみゅ! れいみゅ!』
『まけにゃいぜ! まりちゃ! まりちゃ! まりちゃ! まりちゃ! まりちゃ! まりちゃ! まりちゃ! まりちゃ! まりちゃ!』
とにかく混乱している。
「ゆ……ゆぅ!」
母れいむは口を真一文字に切り結ぶ。
その勇ましき様は、誓いを意味していた。
絶対に。
絶対に口を開かない。
何が起ころうとも。口は開かないと。
男は母れいむを持っている左腕に力を入れた。
そして、母れいむを持ちあげた。
「おそらをとんでいるみたいだよ!」
さけんだ。
口を開けた。
うれしそうに。
これ以上なく、堂々と。はっきりと。誇り高く。
あまつさえ、もみあげをぴこぴこさせている。
途端、口内から絶叫が聞こえてきた。
「ふぎょぉぉぉ!」
そして貫かれる三匹目。れいむ種だ。
「いぢゃぃっ、いぢゃぃ!」
暴れる暴れる。なんとも鮮度がよろしい。
れいむの怒りは早速、母れいむに向かった。
「なんでおぐぢあげだのぉぉぉ! あげるなっでいっだでじょぉぉぉ!」
母れいむは、屈辱にふるえた。
これもまた本能のようなもので、彼らは一秒でも滞空時間があれば叫んでしまうのだ。お空を飛んでいるみたいだよ、と。
さて、三匹目の犠牲となった子れいむは、二匹目のれいむと同じように、指の間に納まった。
揉みあげをワサワサさせている。
先ほどの子れいむとは違って、もみあげの巻紙が取れているのだった。
「れいみゅ! れいみゅ! れいみゅ! どとうのれいみゅ! とってもれいみゅ! いつまでもれいみゅ!」
わさわさしている。
とても、わさわさしている。
とてもとても、わさわさしている。
「ひっさつれいみゅ! えくすとりーむれいみゅ! あんあいでんてぃふぁいんどれいみゅ! いっつれいみゅ! ざっつれいみゅ! でぃしーずれいみゅ!」
とりあえず、何を言っているのかは無視していた。
無視されながらも、わさわさしている。
わっさわっさしている。
とにかく、無我夢中に、向う見ずに、
さけんだ。
口を開けた。
うれしそうに。
これ以上なく、堂々と。はっきりと。誇り高く。
あまつさえ、もみあげをぴこぴこさせている。
途端、口内から絶叫が聞こえてきた。
「ふぎょぉぉぉ!」
そして貫かれる三匹目。れいむ種だ。
「いぢゃぃっ、いぢゃぃ!」
暴れる暴れる。なんとも鮮度がよろしい。
れいむの怒りは早速、母れいむに向かった。
「なんでおぐぢあげだのぉぉぉ! あげるなっでいっだでじょぉぉぉ!」
母れいむは、屈辱にふるえた。
これもまた本能のようなもので、彼らは一秒でも滞空時間があれば叫んでしまうのだ。お空を飛んでいるみたいだよ、と。
さて、三匹目の犠牲となった子れいむは、二匹目のれいむと同じように、指の間に納まった。
揉みあげをワサワサさせている。
先ほどの子れいむとは違って、もみあげの巻紙が取れているのだった。
「れいみゅ! れいみゅ! れいみゅ! どとうのれいみゅ! とってもれいみゅ! いつまでもれいみゅ!」
わさわさしている。
とても、わさわさしている。
とてもとても、わさわさしている。
「ひっさつれいみゅ! えくすとりーむれいみゅ! あんあいでんてぃふぁいんどれいみゅ! いっつれいみゅ! ざっつれいみゅ! でぃしーずれいみゅ!」
とりあえず、何を言っているのかは無視していた。
無視されながらも、わさわさしている。
わっさわっさしている。
とにかく、無我夢中に、向う見ずに、
「わさッッッ!!! わさッッッ!!!」
している。
「れいみゅ! れいみゅ? ……れいみゅ! れっ! いッ! みゅぅッッ! ……れっ! いッ! みゅぅッッ!」
さすがに人間をフラストレーションを高める効率においては定評のあるれいむ種だ。見ているだけで胃に穴が空きそうだった。
「もぎゅっ!」
潰されるれいむ。かくして芝生には三つ目の死骸ができあがる。
母れいむの両眼から、一筋の涙がこぼれた。
その涙が、母れいむに三度誓いを上げさせた。
絶対に……絶対にだ!
口を開くものか!
あと七匹!
おちびちゃんは、護る!
何があっても!
なにをされても!
口は、開かないよ!
「さてと……」
男はおもむろに、竹串を母れいむの脳天に突き刺した。
あまりにもさりげない動作だった。母れいむは何がされたのか判らなかった。
「れいみゅ! れいみゅ? ……れいみゅ! れっ! いッ! みゅぅッッ! ……れっ! いッ! みゅぅッッ!」
さすがに人間をフラストレーションを高める効率においては定評のあるれいむ種だ。見ているだけで胃に穴が空きそうだった。
「もぎゅっ!」
潰されるれいむ。かくして芝生には三つ目の死骸ができあがる。
母れいむの両眼から、一筋の涙がこぼれた。
その涙が、母れいむに三度誓いを上げさせた。
絶対に……絶対にだ!
口を開くものか!
あと七匹!
おちびちゃんは、護る!
何があっても!
なにをされても!
口は、開かないよ!
「さてと……」
男はおもむろに、竹串を母れいむの脳天に突き刺した。
あまりにもさりげない動作だった。母れいむは何がされたのか判らなかった。
が、それも一瞬のことにすぎず、すぐさま激痛が母れいむを襲う。
「いじゃぁぁぁッ!」
竹串を使ったから、男の右手は空いていた。今度は、直接口の中に手を容れた。
口の中は、涙、糞尿、悲鳴が渾然一体となって混迷を極めていた。その中から、男は子まりさを選びだした。
「いぎっ……ぃぐっ……おぢびじゃんっ……」
れいむは自らの失態を悟り、涙と涎を流している。
「ふっふっー、にんげんさん。まりちゃがきにいったんだぜ?」
一方の赤ゆのまりさは、元気なものだ。
妙に自信ありげだ。その一方で臀部をぷりんぷりんさせている。何の主張なのだろうか。
「めがたかいんだじぇ!」
ますます、ぷりんぷりんさせている。
「まりさにほれちゃ、いけないんだじぇ!」
軽くウィンク。それでも、ぷりんぷりんさせている。
「この、ぷりちーぷりちーでんぶに、ほれちゃいけないんだじぇ!」
いつまでも、ぷりんっぷりんっさせている。男はああそういうことかと納得した。
「まりちゃの!」
どこまでも、ぷりんッッぷりんッッさせている。
「ぷりんぷりんたいむ!」
徹底的に、問答無用に、見事なまでに、
「いじゃぁぁぁッ!」
竹串を使ったから、男の右手は空いていた。今度は、直接口の中に手を容れた。
口の中は、涙、糞尿、悲鳴が渾然一体となって混迷を極めていた。その中から、男は子まりさを選びだした。
「いぎっ……ぃぐっ……おぢびじゃんっ……」
れいむは自らの失態を悟り、涙と涎を流している。
「ふっふっー、にんげんさん。まりちゃがきにいったんだぜ?」
一方の赤ゆのまりさは、元気なものだ。
妙に自信ありげだ。その一方で臀部をぷりんぷりんさせている。何の主張なのだろうか。
「めがたかいんだじぇ!」
ますます、ぷりんぷりんさせている。
「まりさにほれちゃ、いけないんだじぇ!」
軽くウィンク。それでも、ぷりんぷりんさせている。
「この、ぷりちーぷりちーでんぶに、ほれちゃいけないんだじぇ!」
いつまでも、ぷりんっぷりんっさせている。男はああそういうことかと納得した。
「まりちゃの!」
どこまでも、ぷりんッッぷりんッッさせている。
「ぷりんぷりんたいむ!」
徹底的に、問答無用に、見事なまでに、
「ぷりんッッッ!!! ぷりんッッッ!!!」
させている。
それも呆気なく終わった。
「ぐびょっ」
右手に力を籠めると、まりさの腹部が上半身と分離した。そのまま落下。
「ぃ……だ……」
まだ息はあったが、放っておいた。どうせ死ぬ。
「いぐっ、ひぐ……」
母れいむは度重なる子供たちの死に心抉られつつあった。
庭に散らばる三つの死骸と一つの瀕死体。
泣きたかった。
喚きたかった。
しかし、口は開けられない。
人間の魔の手から、おちびちゃんたちを護るために。
それも呆気なく終わった。
「ぐびょっ」
右手に力を籠めると、まりさの腹部が上半身と分離した。そのまま落下。
「ぃ……だ……」
まだ息はあったが、放っておいた。どうせ死ぬ。
「いぐっ、ひぐ……」
母れいむは度重なる子供たちの死に心抉られつつあった。
庭に散らばる三つの死骸と一つの瀕死体。
泣きたかった。
喚きたかった。
しかし、口は開けられない。
人間の魔の手から、おちびちゃんたちを護るために。
一方の口内では。
『くちをあけちぇー、ぐぢをあけちぇー!』
子ゆっくりどもは、母れいむに口を開けろとせがんでいた。
理由は、
『くちゃぃぃぃ』
悪臭にあった。
男の巨大な手が子まりさを天へと召し返したとき、ゆっくりたちは、恐怖のあまり脱糞合戦をしてしまったのだ。
それゆえ、母れいむの口の中には悪臭に満ち満ちていたのだった。
『ぐぢゃいよぉぉぉ……すっきりー』
『きちゃないよぉぉぉ……しゅっきりー』
『どぼじで……おくちあけてくれないのぉぉぉ……しゅっきり!』
どうやら、悪臭のストレスゆえに、また脱糞が強制されてしまうという悪循環に陥っているらしかった。
『くちをあけちぇー、ぐぢをあけちぇー!』
子ゆっくりどもは、母れいむに口を開けろとせがんでいた。
理由は、
『くちゃぃぃぃ』
悪臭にあった。
男の巨大な手が子まりさを天へと召し返したとき、ゆっくりたちは、恐怖のあまり脱糞合戦をしてしまったのだ。
それゆえ、母れいむの口の中には悪臭に満ち満ちていたのだった。
『ぐぢゃいよぉぉぉ……すっきりー』
『きちゃないよぉぉぉ……しゅっきりー』
『どぼじで……おくちあけてくれないのぉぉぉ……しゅっきり!』
どうやら、悪臭のストレスゆえに、また脱糞が強制されてしまうという悪循環に陥っているらしかった。
「わきゅっ」
「ゆきゃっ」
「ゆべぇっ」
子ゆっくりたちが、空の水槽に吐き出された。ついでにうんうんその他も吐き出された。
母れいむも含めて残り七匹となった家族は、男の家のなかへと、持ちかえられてしまっていた。
居間には、アクリル板を張り合わせた箱が置かれていた。
その透明な箱は、ゆっくりの愛好家や虐待家を問わずして、じつに重宝されている。
用途や好みに応じたデザインが可能だし、重さがあって中でゆっくりが暴れても何ともない。丈夫さも取り得だ。
家族は、その箱の中に容れられていた。
容れられた途端、悪臭に我慢しきれなくなった母れいむが、子供たちを吐き出したのだった。
「おちびちゃん、かくれてね!」
母れいむは、吐き出された子ゆっくりたちを、再び口の中にいれようとした。まだ安心できない。
だが、反応は無情だった。
「やじゃよ! おきゃーしゃんのおくちのなかはあんしんできにゃいよ!」
子れいむが反抗の狼煙を上げた。
「おきゃーしゃんのせいでおねーちゃんたちはちんだんだぜ!」
子まりさが同調する。
「はんせいしちぇね! りかいしちぇね! こうかいしちぇね!」
別の子れいむが追従した。
「れーみゅたち、おこっちぇるんだよ! ぷんぷん!」
三匹目の子れいむは怒りに震えていた。
「おきゃーしゃんはやくたたじゅなのじぇ。まったくつかいないのじぇ。なんでまりしゃたちをころちゅの? じぶんからちんでね?」
二匹目の子まりさは、その瞳に侮蔑を浮かべた。
「まったくなのじぇ。
おきゃーしゃんがおくちをあけたしぇいで、れいみゅとまりちゃはしんだのじぇ。にどと、そのきたないくちをあけるな、なのじぇ。
それに、おきゃーしゃんがおくちをとじたしぇいで、くさかったのじぇ。にどと、そのきたないくちをとじるな、なのじぇ」
最後の子まりさは無理難題を突きつけていた。
口々に抗議する子供たちに、母れいむも身を震わせて激怒した。
「どうしてそんなこというの! れいむは、あなたたちのことをおもって……!」
「うそつくな! くそれいむ!」
子れいむは、れいむの弁解を一蹴した。
ゆっくりたちは気付かなかった。
既に男の姿が無いことを。
家庭崩壊が演じられているところで、男は虐待グッズを準備しはじめていた。
「ゆきゃっ」
「ゆべぇっ」
子ゆっくりたちが、空の水槽に吐き出された。ついでにうんうんその他も吐き出された。
母れいむも含めて残り七匹となった家族は、男の家のなかへと、持ちかえられてしまっていた。
居間には、アクリル板を張り合わせた箱が置かれていた。
その透明な箱は、ゆっくりの愛好家や虐待家を問わずして、じつに重宝されている。
用途や好みに応じたデザインが可能だし、重さがあって中でゆっくりが暴れても何ともない。丈夫さも取り得だ。
家族は、その箱の中に容れられていた。
容れられた途端、悪臭に我慢しきれなくなった母れいむが、子供たちを吐き出したのだった。
「おちびちゃん、かくれてね!」
母れいむは、吐き出された子ゆっくりたちを、再び口の中にいれようとした。まだ安心できない。
だが、反応は無情だった。
「やじゃよ! おきゃーしゃんのおくちのなかはあんしんできにゃいよ!」
子れいむが反抗の狼煙を上げた。
「おきゃーしゃんのせいでおねーちゃんたちはちんだんだぜ!」
子まりさが同調する。
「はんせいしちぇね! りかいしちぇね! こうかいしちぇね!」
別の子れいむが追従した。
「れーみゅたち、おこっちぇるんだよ! ぷんぷん!」
三匹目の子れいむは怒りに震えていた。
「おきゃーしゃんはやくたたじゅなのじぇ。まったくつかいないのじぇ。なんでまりしゃたちをころちゅの? じぶんからちんでね?」
二匹目の子まりさは、その瞳に侮蔑を浮かべた。
「まったくなのじぇ。
おきゃーしゃんがおくちをあけたしぇいで、れいみゅとまりちゃはしんだのじぇ。にどと、そのきたないくちをあけるな、なのじぇ。
それに、おきゃーしゃんがおくちをとじたしぇいで、くさかったのじぇ。にどと、そのきたないくちをとじるな、なのじぇ」
最後の子まりさは無理難題を突きつけていた。
口々に抗議する子供たちに、母れいむも身を震わせて激怒した。
「どうしてそんなこというの! れいむは、あなたたちのことをおもって……!」
「うそつくな! くそれいむ!」
子れいむは、れいむの弁解を一蹴した。
ゆっくりたちは気付かなかった。
既に男の姿が無いことを。
家庭崩壊が演じられているところで、男は虐待グッズを準備しはじめていた。
「ゆ?」
親子喧嘩は天の恵みによって遮られた。
男が居間に戻ってくると、水槽の中にチョコレートをばら撒いた。
一口サイズに包装されたチョコレートが三十個ほど入った、徳用の品で、一袋二百円である。
「ゆゆ~、あまあまだ~」
早速、子供たちは黒い甘味に群がった。
食欲旺盛、記憶力絶無のゆっくりどもは、あまあま一発で、母れいむへの怒りはおろか、周囲の悪臭さえ忘れている。
それは母れいむにしても、似たようなものだったらしい。
「なんだ、にんげんさん、こころいれなおしたんだね!」
嬉しそうに、そして下品に涎を垂らした。
しかしながら手をつけようとする素振りはなく、子ゆっくりたちの様子を見守っている。
子ゆっくりらは、既にむしゃぶりついていた。
一心不乱にむさぼりまくる。
ある瞬間で、子ゆっくりたちは動きが止まった。
「ち、ち、ち……」
そして同時に動きだす。
親子喧嘩は天の恵みによって遮られた。
男が居間に戻ってくると、水槽の中にチョコレートをばら撒いた。
一口サイズに包装されたチョコレートが三十個ほど入った、徳用の品で、一袋二百円である。
「ゆゆ~、あまあまだ~」
早速、子供たちは黒い甘味に群がった。
食欲旺盛、記憶力絶無のゆっくりどもは、あまあま一発で、母れいむへの怒りはおろか、周囲の悪臭さえ忘れている。
それは母れいむにしても、似たようなものだったらしい。
「なんだ、にんげんさん、こころいれなおしたんだね!」
嬉しそうに、そして下品に涎を垂らした。
しかしながら手をつけようとする素振りはなく、子ゆっくりたちの様子を見守っている。
子ゆっくりらは、既にむしゃぶりついていた。
一心不乱にむさぼりまくる。
ある瞬間で、子ゆっくりたちは動きが止まった。
「ち、ち、ち……」
そして同時に動きだす。
「ちゅぃやわつぇ~~~」
母れいむは、生唾を呑み下した。
「どくは、はいってないんだね! あんしんしたよ!」
どうやら子ゆっくりを毒身にあてがったらしかった。
母れいむは足もとに転がっているチョコレート塊に目を向けた。
「いくよ! いっちゃうよ! ……れいむがおくる! れいむによる! れいむのための!
すーぱー! あるいは、ぱーすー! いやいや、すーぱー! むーしゃむーしゃ……これはおそらをとんでいるのかもしれないよ!」
最後まで云い切れなかったのは、男がれいむを水槽から取り出したからだった。
その足で彼は台所へと向かった。
台所のコンロの上には、フライパンが載せられていた。
一方の子ゆっくりたちは、意気揚々と餌付けられていた。
「どくは、はいってないんだね! あんしんしたよ!」
どうやら子ゆっくりを毒身にあてがったらしかった。
母れいむは足もとに転がっているチョコレート塊に目を向けた。
「いくよ! いっちゃうよ! ……れいむがおくる! れいむによる! れいむのための!
すーぱー! あるいは、ぱーすー! いやいや、すーぱー! むーしゃむーしゃ……これはおそらをとんでいるのかもしれないよ!」
最後まで云い切れなかったのは、男がれいむを水槽から取り出したからだった。
その足で彼は台所へと向かった。
台所のコンロの上には、フライパンが載せられていた。
一方の子ゆっくりたちは、意気揚々と餌付けられていた。
「ゆ……ゅ……ゆぅ……」
居間に戻ってきた、正確に言うと戻されたれいむの目は、泣き腫らしていた。
そのあんよはこんがりと焼かれて、なんとも食欲をそそる、香ばしい匂いをかもしている。
これで、母れいむは二度と動けない。少なくとも自然回復は望めない。
極上のあまあまをふんだんに摂取するか、患部に甘味たっぷりのジュースを沁みこませないかぎり、自分の足では歩けない。
「すーや……すーや……」
母れいむの惨状など露知らず、子ゆっくりたちは安らかに眠っていた。
「ゅっ……ゅっ……」
母れいむは声が出せなかった。
れいむの口は、小麦粉を溶いた水によって溶接されてしまっていた。
それは人間にとっての猿轡やガムテープではなく、口そのものが消滅したに等しい。
「さて……」
男は水槽の中に散らばっているチョコレートを片づけはじめた。
山のように積んであったチョコレートは、すでに半分が消え失せていた。
よく食ったものだ。
と、思いながらそれを片す。
掃除が終わると、水槽に母れいむを戻した。
「ん」
少し衝撃が強かったのかもしれない。焦げたあんよを痛めていた。
振動は、アクリル板に伝わって、子ゆっくりたちを覚醒させた。
子ゆっくりたちの意識は、早速、山と積まれていたはずのチョコレートの山の不在に向かった。
「なんで? あまあましゃんが、なくなっちぇるの?」
混乱する子ゆっくりたちだったが、ないものは仕方がない。
彼らは事前の手を思いついた。
人間を見上げて、こう言った。
「あまあまさんを、ちょうだい!」
甘味を食ったために舌の情報が更新されたゆっくりたちは、もはやチョコレート無しでは生きられない。
成体ならば話は別だが、子ゆっくりでは、概ね手に負えなくなる。
居間に戻ってきた、正確に言うと戻されたれいむの目は、泣き腫らしていた。
そのあんよはこんがりと焼かれて、なんとも食欲をそそる、香ばしい匂いをかもしている。
これで、母れいむは二度と動けない。少なくとも自然回復は望めない。
極上のあまあまをふんだんに摂取するか、患部に甘味たっぷりのジュースを沁みこませないかぎり、自分の足では歩けない。
「すーや……すーや……」
母れいむの惨状など露知らず、子ゆっくりたちは安らかに眠っていた。
「ゅっ……ゅっ……」
母れいむは声が出せなかった。
れいむの口は、小麦粉を溶いた水によって溶接されてしまっていた。
それは人間にとっての猿轡やガムテープではなく、口そのものが消滅したに等しい。
「さて……」
男は水槽の中に散らばっているチョコレートを片づけはじめた。
山のように積んであったチョコレートは、すでに半分が消え失せていた。
よく食ったものだ。
と、思いながらそれを片す。
掃除が終わると、水槽に母れいむを戻した。
「ん」
少し衝撃が強かったのかもしれない。焦げたあんよを痛めていた。
振動は、アクリル板に伝わって、子ゆっくりたちを覚醒させた。
子ゆっくりたちの意識は、早速、山と積まれていたはずのチョコレートの山の不在に向かった。
「なんで? あまあましゃんが、なくなっちぇるの?」
混乱する子ゆっくりたちだったが、ないものは仕方がない。
彼らは事前の手を思いついた。
人間を見上げて、こう言った。
「あまあまさんを、ちょうだい!」
甘味を食ったために舌の情報が更新されたゆっくりたちは、もはやチョコレート無しでは生きられない。
成体ならば話は別だが、子ゆっくりでは、概ね手に負えなくなる。
男はゆるやかに首を横に振った。
「残念だ。本当はね、もっとたくさんの、あまあまがあったんだけど……」
子ゆっくりたちは男の言葉に納得しない。実際嘘はついている。あまあまを隠したのは、この男だ。
「あみゃあみゃ~」
「あまあまよこちぇー」
子ゆっくりたちは抗議をはじめた。
「うん。あげたいのは、やまやまなんだけど……」
「ちゃっちゃとよこちぇー」
「おなきゃちゅいちゃー」
男は、おもむろに、母れいむを指差した。
「このれいむが、全部隠しちゃったんだ」
「ゆ!」
子ゆっくりの視線が、母れいむに向かった。
「口のなかにね」
「ゆゆ!」
母は驚愕にうち震えた。しかし抗議の声は上げられない。動きもとれない。
「一人占めだよ」
「ゆゆゆ!」
子ゆっくりの顔には、激怒と侮蔑、そして食欲が浮かんでいる。
ここで男は救いの言葉を伝えた。
「でもね。隠しているだけ、含んでいるだけなんだ。まだ口の中には残っているよ」
「ゆゆゆゆゆ~!」
「ただ……これならあるけどね」
と言って、男は草を水槽の片隅に山積みにした。
「こんなもの、たべられないよ!」
子ゆっくりたちは、見向きもしない。
もはや男の言うべき言葉は無かった。
六匹の子ゆっくりたちは、すかさず母れいむを包囲し、シュプレヒコールを上げはじめた。
「おきゃーちゃん、あまあま~」
「たべちゃいよ~」
母れいむには、どうしようもできない。
無いものは出せないし、口も利けない。その無反応を、子ゆっくりたちは母れいむの強欲とみなした。
「どうしてだしてくれないの? なんでひとりじめするの、まりさ、おなかちゅいてるんだよ? はずかしくにゃいにょ?」
「いじわりゅしにゃいで~! あみゃあみゃ~!」
母れいむは泣きはじめていた。
子ゆっくりたちは、言葉は無力だと感じとると、実力行使に及んだ。
「ちねっ、ちねっ」
子まりさが体当たりをかました。
普段ならば、子ゆっくりのぶちかましなど、成体には痛くも痒くもない。
ただし、あんよを焼かれて神経が過敏になっていなければ、の話だが。
「はけっ、はけっ」
他の子ゆっくりも、参戦した。
「あまーあま、あまーあまっ」
ぺちぺち。
と、もみあげではたいているのは子れいむだ。笑いながら虐めている。
ぽむ。ぽむ。ぽむ。
ふざけた音を立てている。母れいむへの包囲戦は持久戦の様相を呈しつつあった。
男は、水槽に厳重に蓋をすると、身支度を整えて、外出した。
「残念だ。本当はね、もっとたくさんの、あまあまがあったんだけど……」
子ゆっくりたちは男の言葉に納得しない。実際嘘はついている。あまあまを隠したのは、この男だ。
「あみゃあみゃ~」
「あまあまよこちぇー」
子ゆっくりたちは抗議をはじめた。
「うん。あげたいのは、やまやまなんだけど……」
「ちゃっちゃとよこちぇー」
「おなきゃちゅいちゃー」
男は、おもむろに、母れいむを指差した。
「このれいむが、全部隠しちゃったんだ」
「ゆ!」
子ゆっくりの視線が、母れいむに向かった。
「口のなかにね」
「ゆゆ!」
母は驚愕にうち震えた。しかし抗議の声は上げられない。動きもとれない。
「一人占めだよ」
「ゆゆゆ!」
子ゆっくりの顔には、激怒と侮蔑、そして食欲が浮かんでいる。
ここで男は救いの言葉を伝えた。
「でもね。隠しているだけ、含んでいるだけなんだ。まだ口の中には残っているよ」
「ゆゆゆゆゆ~!」
「ただ……これならあるけどね」
と言って、男は草を水槽の片隅に山積みにした。
「こんなもの、たべられないよ!」
子ゆっくりたちは、見向きもしない。
もはや男の言うべき言葉は無かった。
六匹の子ゆっくりたちは、すかさず母れいむを包囲し、シュプレヒコールを上げはじめた。
「おきゃーちゃん、あまあま~」
「たべちゃいよ~」
母れいむには、どうしようもできない。
無いものは出せないし、口も利けない。その無反応を、子ゆっくりたちは母れいむの強欲とみなした。
「どうしてだしてくれないの? なんでひとりじめするの、まりさ、おなかちゅいてるんだよ? はずかしくにゃいにょ?」
「いじわりゅしにゃいで~! あみゃあみゃ~!」
母れいむは泣きはじめていた。
子ゆっくりたちは、言葉は無力だと感じとると、実力行使に及んだ。
「ちねっ、ちねっ」
子まりさが体当たりをかました。
普段ならば、子ゆっくりのぶちかましなど、成体には痛くも痒くもない。
ただし、あんよを焼かれて神経が過敏になっていなければ、の話だが。
「はけっ、はけっ」
他の子ゆっくりも、参戦した。
「あまーあま、あまーあまっ」
ぺちぺち。
と、もみあげではたいているのは子れいむだ。笑いながら虐めている。
ぽむ。ぽむ。ぽむ。
ふざけた音を立てている。母れいむへの包囲戦は持久戦の様相を呈しつつあった。
男は、水槽に厳重に蓋をすると、身支度を整えて、外出した。
男が帰ってきたのは、もうじき日付も変わろうかという頃合いだった。
「おお……やってるな!」
置き去りにした水槽を確認すると、期待通りの結果が現れていた。
ふと、男は研究者の喜びとやらが分かったような気がした。
「しゅーや……しゅーや……」
六匹の子ゆっくりは、みな幸福そうに寝息を立てていた。その口もとは黒く汚れていた。
「ゅ……ゅ……」
対照的なのは母れいむだ。
あんよは破れ、餡子が漏れだしていた。眼球は痛みのためか疲れのためか深く窪んでいる。
思った通りだ。
子ゆっくりにおいては、母への愛情と、あまあまを食する欲望と、ふたつを天秤に置いて、どちらが深く沈むのだろうか?
答えは母れいむを見れば明らかだった。
もっとも、既に子ゆっくりたちには母れいむへの不信が植えつけられていたし、母れいむは口を利けない。
実験手段としては、信頼性に欠ける。
とはいえ、子ゆっくりが、母の言葉が聞こえないのならば、いさぎよく不信の母を食い散らかすことも確かめられた。
「聞こえるか?」
男は居間に腰を下ろし、水槽の中のれいむと向きあった。
「よかったな。二度と、口を開けなくて済むぜ」
れいむの眼球が飛び出した。
怒っているのだろう。
「口を開けたいか?」
れいむが一度、まばたきをした。
肯定のしるしか。
「なに。そのうち開けられるぜ」
と、男は言う。
れいむの瞳に疑念が宿る。
「俺は、こいつらに飯を与えるつもりはない」
男は、安らかに眠る子ゆっくりたちを指差した。
「だから……お前の口は、このガキどもが開けてくれるだろうよ。今日みたいなことが、繰りかえされてな」
れいむが何かを叫んだ。
言葉にならない嗚咽となった。
「おお……やってるな!」
置き去りにした水槽を確認すると、期待通りの結果が現れていた。
ふと、男は研究者の喜びとやらが分かったような気がした。
「しゅーや……しゅーや……」
六匹の子ゆっくりは、みな幸福そうに寝息を立てていた。その口もとは黒く汚れていた。
「ゅ……ゅ……」
対照的なのは母れいむだ。
あんよは破れ、餡子が漏れだしていた。眼球は痛みのためか疲れのためか深く窪んでいる。
思った通りだ。
子ゆっくりにおいては、母への愛情と、あまあまを食する欲望と、ふたつを天秤に置いて、どちらが深く沈むのだろうか?
答えは母れいむを見れば明らかだった。
もっとも、既に子ゆっくりたちには母れいむへの不信が植えつけられていたし、母れいむは口を利けない。
実験手段としては、信頼性に欠ける。
とはいえ、子ゆっくりが、母の言葉が聞こえないのならば、いさぎよく不信の母を食い散らかすことも確かめられた。
「聞こえるか?」
男は居間に腰を下ろし、水槽の中のれいむと向きあった。
「よかったな。二度と、口を開けなくて済むぜ」
れいむの眼球が飛び出した。
怒っているのだろう。
「口を開けたいか?」
れいむが一度、まばたきをした。
肯定のしるしか。
「なに。そのうち開けられるぜ」
と、男は言う。
れいむの瞳に疑念が宿る。
「俺は、こいつらに飯を与えるつもりはない」
男は、安らかに眠る子ゆっくりたちを指差した。
「だから……お前の口は、このガキどもが開けてくれるだろうよ。今日みたいなことが、繰りかえされてな」
れいむが何かを叫んだ。
言葉にならない嗚咽となった。
男の予言が達成されたのは、わずか二日後のことにすぎなかった。
その翌日、六匹は四匹になった。
さらに翌日、四匹は一匹になった。
殺害動機は食欲。
男が餌として与えた庭の芝生には一顧だにしなかった。
最後に残ったれいむは、男を見上げて叫んだ。
「おなきゃちゅいたよ! あまあまさん、なくなっちゃったよ! あまあまさん、ちょうだいね!」
男は日本酒をなめながら、そのれいむに告げた。
「草があるだろ」
水槽の隅には、芝生が山盛りになっている。
「くささんはおいしくないよ!」
「しるか」
結局、このれいむは芝生を口にして四日間生きつづけた。
どうやら、あまあまなしでも生存には問題なかったらしい。
特に栄養状態の変化もみられなかった。
それでも、あまあま要求は止まらなかった。
「そんなにあまあまが欲しいのか? じぶんの体を食えばいいだろう?」
と言うと、生き残りたる子れいむはその指摘に納得して、自殺した。
変な生きものだ。
と、男は思った。
(おわり)
投稿作品:
anko 1565 『れいむの義務』
挿絵: